自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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機器類がどこも破損していない、ということは発信源の方に何か有ったと
言うことになる。うんともすんとも言わないGPSを前に、艦橋の全員が
恐怖に包まれていた。

「ふ、副長、これからどうする?」
艦長の顔は少し青くなっていたが、幸い艦橋の誰も気付かなかった。
人の発言という事実に多少の安堵が起こる。

「まず、他の艦にも問い合わせてみた方が良いでしょう。本艦のコンピュータ
か何かが特にエラーを起こしたのかもしれません」
副長の言葉に、艦長は気を入れられた。何もしないよりは、何か行った方が良い。
少なくとも気が紛れる。

「よし、連絡を取ってみよう」
現在は戦闘中では無いので、通信は無線電話で行う。艦長は一番近くにいた
輸送艦と連絡を取り、通信状況に付いて問い合わせた。しかしそこから
帰ってきた答えは、艦長を失望させる物だった。

「何?そちらも長距離通信が全滅?他の艦には?・・・・そうか、分かった。」
艦長の言葉を聞き、場の空気が幾らか重くなる。艦長もまた、その空気を察して
重々しい声を作った。

「通信の結果、どうやら全艦の長距離通信施設が死んでいる事が分かった。
それと、この事態に対応するため、幹部会議を開くことになった」

幹部会議、その言葉に艦橋がざわめく。何故ならこのような事態は、
自衛隊史上始まって以来の出来事だからだ。

米ソ冷戦時代ならばまだしも、こんにち外部との連絡がこれほど完璧に、
しかも大規模に途絶するような事態など考えられなかった。
状況確認も出来ず、通信も出来ず、かといって現在は核パトロールなぞを
やっている訳でもない。つまり行動ドクトリンが存在しないのだ。

艦長も不安だった。彼は戦闘時には艦の全てを掌握する男であっても、
艦隊の行動、作戦目的を動かせるような立場にはない。
これからどうなるかは、彼にも全く分からないのだった。

艦隊司令、陸自司令、艦長級を召集しての幹部会議は、大荒れに荒れた。
状況が不明瞭な以上、一度日本へ帰国すべきだとの意見が上がったからだ。

この意見にも理が無いわけではない。幾ら嵐が起こったとはいえ、インド・アラブ
方面や衛星、更には展開しているはずの米英加等の艦隊とも連絡が取れないのは
普通ではない。印パ核戦争が勃発したにしても奇妙すぎた。

現状のままイラクに向かうことが、果たして正しいのか?それが主張者の
意見であった。ある意味、当然と言えた。

しかしたった一つの現実が、その意見を完全に封じた。
「燃料がない」この一言が全てであった。インドが戦争中ならば、
ボンベイやらコロンボ港などの使用は望むべくも無い。

東南アジアへ自力航行で帰るのは無理だから、クウェートかどこかで
燃料を求めた方が確実だとされた。最終的には帰国意見者が折れ、
自衛隊はそのままイラク方面へと向かうことになった。

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