自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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解散命令に従って、隊員たちは艦のある港へと帰っていく。しかし司令部の
人員は、全員が別の方へと向かっていった。これを見た隊員もいたが、
命令内容に幹部は含まれていなかったため、特に気にはされなかった。

司令部の人員が向かった先には、軽装甲機動車一台と高機動車二台が止まっており、
そこには運転手を含む隊員と、事務官が待機していた。

「誰(タレ)か!」
立哨していた隊員の誰何に、望田が進み出て答えた。
「イラク派遣第二部隊司令、望田一佐だ」
「失礼しました望田一佐。司令部の皆様も、お待ちしておりました」

隊員は敬礼すると、他の隊員に「各員搭乗開始!」と怒鳴った。
それを聞いた隊員たちは、即座に待機を解いて車輛に乗り始めた。

前方の車輛に遅れて乗り込んだのは、停泊許可を貰いに行っていたあの事務官で
あった。彼は軽装甲機動車に乗り込み、そして最後に司令部要員が高機動車に
乗り込んだ。

全員の搭乗を確認した後、軽装甲機動車を先頭にして、三台の車輛は
出発していった。

先頭の軽装甲機動車には、ナビゲーター役に事務官が乗っていた。これは本来ならば
自衛官が行うべき任務だったが、事務官は倉庫の借り受けその他の交渉で、何度も街に
入っていた。だから周辺を今一番知っているのは、彼なのだ。

それに彼が入手した現地の地図もアラビア語なので、自衛官には簡単に扱えなかった。
そうした問題があったため、事務官が特別にナビを務める事になったのだ。

最後尾の車輛に乗っているのは、この車列の護衛部隊主力である。護衛部隊は64式
小銃で武装した一個小隊(運転手含む)と、他の車輛の搭乗員で構成されている。

そして中央の車輛には、護衛対象たる司令部要員が乗っていた。彼らは目的地まで
しばらく掛かると見て、車内で様々な打ち合わせをしていた。

「手土産は何になったと思う?」望田が隣に座る芝尾に、ざっくばらんに問いかける。
望田の言葉に苦笑しながらも、芝尾は返答した。
「手土産か。確かに手土産としか言い様はないが。まあ食べ物は戒律があるから、
道具か何かじゃないか?」

望田たちの口にした手土産とは、実は地元の有力者への贈答品の事である。
彼らが現在向かっているのも、市長(アミール)や名士の所なのだ。

現在の自衛隊の立場は遭難者だから、どうしてもこういった行動は必要になる。
要するに土地の権力者に根回しをすることで、今後の行動をスムーズにする訳である。

今回の行動に異論を挟む者は、誰もいなかった。しかしそれは緊急事態だからと
言うわけではなく、元々心構えが出来ていたためである。

自衛隊が本来行くはずだったイラクでは、土地の買収交渉などで部族長や市長との
折衝を行う必要があった。他にも土地の使用問題や、様々なトラブルを収める為に
色々と手を回さねばならないのは確実だった。

だからある意味、このような挨拶回りや根回しは予定行動だった。もっとも交渉
相手の背景が大きく変わったから、そこだけは悩みの種だったが。

「ま、とにかくへマをやらなきゃいいさ。今はそれだけでいい」
「そうだな。確実な成果が見込める訳でもないしな」

彼らがしばらく挨拶の巡や述べる言葉を検討している内に、最初の目的地に
到着した。そこにあったのは、大きな屋敷だった。それはこれから彼らが何軒も
渡り歩くであろう屋敷の、一軒目だった。

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