自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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「まず、初めにお断りしておきます。これから話すことは荒唐無稽に聞こえる
かも知れませんが、嘘ではありません。それだけはご承知いただきたい」
望田はそう前置きすると、それまでの事情を語り始めた。

「我々が日本から来た、というのは本当なのです。しかしその日本というのは、
貴方の知るどんな国にも当てはまらないのです」
「それはどういうことなのだ?どんな国でも無いというのは・・・」

シャーリーフの顔に疑念が浮かんだ。前置きされていたとはいえ、やはり妙な話だ。
どんな国にも当てはまらない、そんな国があるのだろうか。

「実は、我々は未来から来たのです。私の生きていた時代からすると、
この時代はおよそ1200年前と言うことになるのです」

望田の声はこわばっていた。無理もない。自分自身理解しても納得は
していないのだ。他人が信じるなどとはとても思えない。

だがシャーリーフの返答は、意外にもあっさりとしていた。
「1200年か。確かにそのくらい時間が経てば、こういった小さな物も
作れるようになるかも知れない。しかし、何故あなた達はこの時代に来る必要が?」

質問はとても真っ当だったし、確認の意味もあるのだろう。ここで言葉に
詰まったなら、言っていることは嘘だろうからだ。

それは望田にも分かったから、すぐに回答した。
「我々が大嵐に巻き込まれてここに来た、というのも本当です。しかしまだ話して
いないことが有りました。実は嵐の前に仲間と取れた連絡が、嵐を抜けた後から全て
出来なくなったのです」

「と言う事は、嵐に巻き込まれた時に何かがあって、ここに来た。つまり事故か」
彼の言葉にはまだ疑念が有ったが、それも幾らかは薄らいでいた。

「だが嵐で時を飛んだなどという話は、全く聞いたことがないな。まあ神の力の
現れなのだから、何もないとは言い切れないが」
「我々が巻き込まれた嵐は、普通では有りませんでした。海に慣れた船員も
かなり酔って倒れる始末でしたから、例外的なものだったのかも知れません」

それを聞いた彼の顔には、別の疑問が浮かび上がった。
「なるほど、極端に強い嵐なら、我々の知らない何かがあるのかも知れない。
しかしどうやってそんな大嵐を乗り切ったのだ?普通なら船が沈むと思うのだが」

すると望田は、僅かに微笑みながら
「我々の乗ってきた船は、あなた方の船の何十倍もの重さがあります。それに
外海を渡るための船ですから、そう簡単には沈まないように出来ているのです」
と告げた。

「何十倍も重いとなると、随分大きいのだろうな。素材は何で出来ているのだ?
しかしどうやって外海に・・・」
そこまで疑問を投げかけて、彼は瞬間停止したようになった。頭のなかで
何かを繋げているような、そんな表情をしていた。

「どうかされましたか?理解できない所が有れば説明を」
「いや、そうではない。ところであなた達の船はどんな船なのだ?
色形や大きさ、何でもいい。教えて欲しい」

「は、はあ。分かりました」
突然の話題の転換に、望田は驚いた。しかしこれは何かあると思い、
質問に答えることにした。

「我々の船は二隻あります。一隻は上が平たく、マストが片側に寄った船です。もう一隻は
細長い形で、丸い椀から筒が出たようなものが乗っています。大きさは、両方ともこちらの
単位で150メートル以上です。寝ころんだ人間の百倍くらいですね。色は灰色です」

それを聞いた彼は、急にニヤリと笑った。閃きを得た時に出る
ような、そんな笑い顔だった。
「よろしい、では次の質問をしよう。あなた達の船の船員は、何色の服を着ている?」
「海の色に合わせて、青色を着ています」

「積み荷の箱には何を使っている?木か?何で運んだ?」
「箱に使っているのは木や鉄や、さっきの紙もそうです。運んだのは車やトラックです。
まあ馬車や荷車みたいな物だと思ってください」

望田は不思議な気分で、上のような質問にいくつも答えていった。中には帆や舵に
付いてなどの質問も有ったが、それにも正直に答えた。

「ではもう質問はやめだ。あなた達を未来人だと信じよう」
その内彼は質問を打ち切り、笑顔で答えた。しかし望田は疑問を隠せなかった。
「信じてくださるのですか?しかし、今の質問には何の意味が有ったのですか」

望田がそう聞くと、彼はさらに大きく笑いながら答えた。
「いやーからかって済まなかった。今聞いた質問の答えは、本当は最初から
知っていたのだ」

「一体どういう事で・・・ああ!そういう事ですか!」
ここまで言われて、ようやく望田にも状況が理解できた。要するにシャーリーフは、
港で陸揚げしているのを見ていたのだろう。確かに考えてみれば、あれほど目立つ物が
街に知れ渡っていない方がおかしいと言っても良い位だ。

「答えにほとんど淀みが無かった、つまりあなた達はあの船に乗っていた訳だ」

港に来た大きな船は、他のどの船よりも遙かに巨大で頑丈そうだった。あれに乗って
来たというならば、未来から来たというのも嘘ではないだろうし、今までの話とも
全てつじつまが合う。ここに来て二つの物が繋がったのだ。

「未来からようこそ、日本の方々よ」
彼のその言葉に、望田たちはほっとしたような笑顔を浮かべた。
取り敢えず友好という目的は、この時点で達成されたと喜んだのだ。

こうして最初の訪問は成功を収め、一抹の希望を自衛官達に与えたのだった。

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