自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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屋敷の人間を驚かせないために、車列は屋敷の近くに止まった。塀の外側に
最後尾の高機動車が待機し、隊員が降車して周辺へ配置に付く。

配置が完了したところで、中央と前の車輛からも人が降りてくる。
中央からは司令部の面々と、空いた席に乗っていた隊員(荷物運び兼護衛)が、
前からは事務官が出てきた。全員が降車した事を確認し、彼らは一団となって
屋敷の門前へと足を運んだ。

門の前には黒く厳つい顔をした、一目でそれとわかるような門番が二人立っていた。
ここで揉めてもしようがないので、事務官に話を通して貰うことにした。

「こちらはシャーリーフ氏の邸宅でしょうか?我々は外国から来た商人の一団
なのですが、こちらのご主人にご挨拶したく参りました。お取り次ぎ願えますか?」

二人は顔を見合わせ、その後で不思議そうな顔をした。しかしそれも無理はない。
彼らも門番として外国の客は見てきたが、今目の前にいるような連中は初めて
見る姿だったのだから。

シナの国の商人にも似ているが、全く服装が違う。服装は白人商人の方が
まだ近いが、人種は白人ではないし、何よりも彼らは貧相だった。

シナや西方など、様々な国の商人に共通なのは、着飾るのが大好きな連中と
言うことだ。特にこの屋敷は貴族の家なのだから、念入りに着飾って
財や力を印象付けたがる。その意味では、彼らはどう見ても商人には見えない。

門番の男は、思い切り目の前の男を怪しんだ。
男は何の飾りもない白い服を纏い、下履きはただ黒いだけの無粋なものを
履いている。しかも太り気味な上に、妙な物を顔にぶら下げている。
どこを取っても見た目を重んずる商人とは思えない。

しかしそれでいて、男の言葉は異様にいんぎんなものだった。役人か何かが
話しているような、やたらと堅苦しいしゃべり方をする。

これでは不思議がられても、というか怪しまれても無理はなかった。実際
二人の内の片方は、彼らを完全に詐欺師か泥棒だと思っていた。

「おい、このみすぼらしい連中が商人に見えるか?俺は泥棒か何かの類だと思うぞ」
男を怪しんだ彼は、小声で相棒に話しかけた。その言葉に相棒も少し頷き、
同意を示した。それに彼は安心し、男たちを追い返そうとした。

「悪いがお引き取りを・・・」
「我々がみすぼらしい格好なのは、ここに来る途中で船が遭難したためなのです。
商品は守り通たのですが、礼装は使えなくなってしまったのですよ」

その言葉を聞いて、思わず彼は言葉に詰まった。言葉の内容からすると、今の陰口は
完全に聞かれていたようだ。そこで思わず戸惑っていると、更に男は言葉を続けた。

「しかし証拠がなければ、我々を信じられはしないでしょう。ではこちらの
ご主人にお渡しする贈り物を、あなた方に少しお見せしましょう」

その言葉に、思わず相棒共々彼は驚いた。異国の品、それも貴族に贈られる
ような品物を、この目で間近に見せて貰える。この欲求は彼を動かした。

知識を得る、というのはムスリムとして最高の喜びの一つである。無知は罪であり、
知は徳と言って良い。だから外国の珍しい物には、二人とも純粋に興味が湧いた。

思わず二人は、猜疑心を失って男に話しかけてしまう。
「一体どんな物なんだ?外国の商品なのだから、さぞ珍しいのだろうが」
「それではお見せいたしましょう」

そう言うと男は、後ろにいたごつい男数人を呼んだ。彼らは皆体格が良かったが、
どこにも用心棒然とした空気を漂わせていない。むしろ軍人や殺し屋の空気を
纏っているたちの連中だった。

二人の期待はいやが上にも高まり、そして最高潮に達した所で-思い切り
裏切られた。男たちが地面に置いたのは、とても醜い箱だったのだ。

茶色い色をしたその箱は、どうみても貴重品を入れる物とは思えない醜さだった。
市場の腐りかけた野菜でさえ、もう少しマシな箱に入っているほどだ。
表面が妙なしわを持っているから、紙で包んであるようだった。

「これが外国の貴重品か?こんな箱には普通入れないだろう。お前らやっぱり」
彼は再び疑念を持ち始めたが、その言葉をあっさり男は否定した。

「さっき言ったでしょう、船が遭難したと。その時貴重品は空き箱に詰めて、
安全なところに置いたのです。貴重品用の箱だと重いですから」
「ふーむ、そんなものか。まあ箱だけ見ていてもしょうがないし、
取り敢えず中身を見せて貰おう」

いい加減先程の期待感は失せ、二人は冷静さを取り戻していた。もし中身が
がらくただったら、その時こそこいつを袋叩きにしてやればよい。後ろの
男どもは面倒そうだが、その時は他の守衛も呼び寄せればいい。

二人はそんな事を考えつつ、特に期待しないで箱の開封を待った。
しかしそこから出てきた物は、彼らの期待をいい意味で裏切ってくれた。

「こ、これは・・・こんなものがこの世にあるとは」
「凄い!この中にはどれほどのジンが入っているんだ?」

二人は箱の中に詰め込まれた、様々な異国の物を堪能した。どれもこれも
知らない物と言うよりは、想像すらしたこともない物ばかりだった。

二人が箱の物を戻すと、男はにこやかに言葉を掛けてきた。
「ご主人にお取り次ぎ願えますか?」

さすがにここまでやられては、取り次がない訳には行かない。
「先程は疑って済みませんでした。どうぞお通り下さい、異国の商人の方々」

こうして、シャーリーフ氏の元に異国の商人が訪れた。時は夕闇も超え、
既に夜の世界、宴の時間へと突入していた。

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