艦隊はゆっくりと港の奥に進んでいった。周りの帆船では、マストや甲板に
上がった何人もの人が、二つの船を見つめている。
「しかしなんというか、恥ずかしくなる視線だな」
「大の大人がみんな目ぇ丸くしてますもんね。どうも照れます」
自衛官達は、奇妙な視線に戸惑っていた。注がれている視線からは、侮蔑や恐怖、
歓喜といった感情ではなく、純粋なまでの驚きだけが感じられるからだ。
今までの任務では、そうそう感じる事もない視線だった。
岸壁がコンクリートではなく石で固められているため、輸送艦は横付けに
苦労した。しかしなんとか岸に着けることに成功し、その横に幾らか離れて
護衛艦が留まった。
その頃艦橋では、スーツを脱いだ事務官と艦長が相談していた。
「荷揚げといっても、一体どこに物資を置くんだね。野ざらしはまずいが
基地なんてあるはずも無いし・・・」
「それなら心配ありません。遭難船への救済措置で空き倉庫を貸して
くれるそうですから、ある程度は捌けるはずです」
「で、その倉庫は一体どこにあるんだ?」
「港の中です。さっきの許可書を役人に見せれば、案内してくれるはずです」
「では、先に下りて案内と通訳に行ってきてくれ。頼んだぞ」
「分かりました」
その後事務官はいち早く下船し、そして荷揚げ作業が始まった。
岸壁につけた輸送艦は、作業を開始した。重苦しい作動音と共に
舷側の一部が左右に開いていき、暗い灰色をした舷側のそこだけが、
急に闇色になった。深い闇を覗かせているそこは、輸送艦の舷側扉だった。
その闇の中から、工事現場のコーンや踏切板のようなものを持った
自衛官が数人現れ、扉の前にそれらを設置していく。コーンが門の
両脇に置かれ、緑色の板が舷側扉と岸壁の間に橋渡しされる。
そして自衛官達が闇に向かって手を振ると、それに応えてエンジン音が
響き始めた。搭載車輛がエンジンをスタートさせたのである。
闇の向こうから最初に現れたのは、えぐれた鼻の軽装甲機動車である。
窓の真ん中に太い枠が通って、まるで太眉のように見える車だ。
機動車は港の幾らか奥に進んで停車し、その後も次々と輸送艦から
別の車輛が発進していった。
横幅の広い高機動車が現れ、巨大な73式大型トラックが一トン
水タンクを引き連れていく。ひょうきんな顔の73式中型トラックや、
地響きを立てる特大型トラックが港に並んでいく。
周囲が一杯になりだしたころ、ようやく事務官が帰ってきた。彼に倉庫の
場所を伝えられた自衛官の誘導により、車輛はまた別の所へ向かっていった。
移動がスムーズになりだした頃、艦からは今までと違う音が響き始めた。
鎖の鳴る音と、何かの機械の作動音である。その音は、甲板に係止されていた
車輛が、エレベーターによって艦内に下ろされていく音だった。
上がった何人もの人が、二つの船を見つめている。
「しかしなんというか、恥ずかしくなる視線だな」
「大の大人がみんな目ぇ丸くしてますもんね。どうも照れます」
自衛官達は、奇妙な視線に戸惑っていた。注がれている視線からは、侮蔑や恐怖、
歓喜といった感情ではなく、純粋なまでの驚きだけが感じられるからだ。
今までの任務では、そうそう感じる事もない視線だった。
岸壁がコンクリートではなく石で固められているため、輸送艦は横付けに
苦労した。しかしなんとか岸に着けることに成功し、その横に幾らか離れて
護衛艦が留まった。
その頃艦橋では、スーツを脱いだ事務官と艦長が相談していた。
「荷揚げといっても、一体どこに物資を置くんだね。野ざらしはまずいが
基地なんてあるはずも無いし・・・」
「それなら心配ありません。遭難船への救済措置で空き倉庫を貸して
くれるそうですから、ある程度は捌けるはずです」
「で、その倉庫は一体どこにあるんだ?」
「港の中です。さっきの許可書を役人に見せれば、案内してくれるはずです」
「では、先に下りて案内と通訳に行ってきてくれ。頼んだぞ」
「分かりました」
その後事務官はいち早く下船し、そして荷揚げ作業が始まった。
岸壁につけた輸送艦は、作業を開始した。重苦しい作動音と共に
舷側の一部が左右に開いていき、暗い灰色をした舷側のそこだけが、
急に闇色になった。深い闇を覗かせているそこは、輸送艦の舷側扉だった。
その闇の中から、工事現場のコーンや踏切板のようなものを持った
自衛官が数人現れ、扉の前にそれらを設置していく。コーンが門の
両脇に置かれ、緑色の板が舷側扉と岸壁の間に橋渡しされる。
そして自衛官達が闇に向かって手を振ると、それに応えてエンジン音が
響き始めた。搭載車輛がエンジンをスタートさせたのである。
闇の向こうから最初に現れたのは、えぐれた鼻の軽装甲機動車である。
窓の真ん中に太い枠が通って、まるで太眉のように見える車だ。
機動車は港の幾らか奥に進んで停車し、その後も次々と輸送艦から
別の車輛が発進していった。
横幅の広い高機動車が現れ、巨大な73式大型トラックが一トン
水タンクを引き連れていく。ひょうきんな顔の73式中型トラックや、
地響きを立てる特大型トラックが港に並んでいく。
周囲が一杯になりだしたころ、ようやく事務官が帰ってきた。彼に倉庫の
場所を伝えられた自衛官の誘導により、車輛はまた別の所へ向かっていった。
移動がスムーズになりだした頃、艦からは今までと違う音が響き始めた。
鎖の鳴る音と、何かの機械の作動音である。その音は、甲板に係止されていた
車輛が、エレベーターによって艦内に下ろされていく音だった。