自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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 俺はもう1度冷静に周囲を見回した。100名をくだらないドワーフっていう連中に俺以外の、大友、真理、ユリが捕まっている。そして連中のリーダーと名乗るドワルタスって男が俺にいろいろと質問してきているのだ。
「ええと、俺は真島裕太。福岡大学4年生。探検部のメンバーなんだけど・・・・」
 とりあえずこっちも自己紹介しとかないとな、と思って自分の名前や肩書きを名乗ったがドワルタスはよくわかっていないようだった。髭もじゃの顔をかしげている。彼の顔は真っ黒な髭だらけだ。他の連中も似たような感じだ。
「とにかく、名前はマシマっていうんだな。では、この「ドラゴンヘッド」に何の用で来た?モルドバ伯の間者か?」
 モルドバ伯って名前はあの官僚から聞いただけだ。ここはホントのこと言った方がいいんじゃないだろうか。
「いや、俺たちは日本人だから。その、モルドバ伯って人も知らないし。そもそもここには遊びに来ただけなんだけど・・・・。きれいな砂浜があるっていうから」
「遊びにきただと?」
「嘘だ!」
  口々に俺たちを取り囲む連中から声があがった。やっぱ信用してくれないようだ。無理もない。彼らにとってはここは紛争地帯だ。そんなところに、のこのこと 遊びに来るヤツがいるはずがない。こう考えているに決まってる。そう言えば日本人で少し前、イスラエル軍とパレスチナ武装勢力がガチンコでドンパチやって る街に観光に行ったカップルがいて世界から笑われたことがあったな。今の俺たちってまさしくそれなんじゃないだろうか・・・・。
「静まれ!」
 ドワルタスが口々にわめく連中を静かにさせた。そして少し俺に近寄ると、俺の服装やら外見をまじまじと観察し始めた。
「おまえ、やはり異世界の人間だな・・・・」
 いや、さっきからそう言っているつもりんなんだが、ってつっこみはできないが、心の中でそう思った。リーダーの言葉を聞いて再び周囲がどよめいた。俺は否定する理由もないので無言でうなずいた。
「殺せ!殺せ!」
「異世界人はモルドバ伯の味方だ!殺せ!」
 ドワルタスは勝ち誇ったような笑顔を浮かべると、ユリを捕まえている連中に合図した。ユリは無理矢理跪かせられた。

「さあ、マシマ!認めろ!おまえたちがモルドバの間者と言うことを!さもないとあの女を殺すぞ!異世界人はみんなモルドバの味方だ!遊びに来た?もうちょっとましな嘘を考えろ!」
 なんつーことを!怖がるユリの顔を見ているとこんな理不尽な状況に追いやられていること自体にだんだん腹が立ってきた。それに、このドワルタスの決めつけまくった顔が気にくわない。
「さあ!吐け!」
 再度吐き出された彼の挑発的な言葉に俺の頭の中で何かが切れた。気がつくと俺はドワルタスの胸ぐらをつかんでいた。背の低い彼は両足が完全に宙に浮いた状態になった。
「てめえ、さっきから聞いとったらふざけたことばっか言いよるのお!!」
 俺の予想外の行動に周囲の連中も彼らのボスが胸ぐら捕まれていることを実感できないようだ。呆然としている。俺は怒りにまかせて彼に顔をくっつけんばかりに近づけて叫んだ。
「勝 手に他人をスパイ扱いしとってから、ふざけんなこら!こっちはただ遊びに来ただけだって言っとるやろうが!モルドバかブルボンか知らんけどそんなヤツ関係 ねーし、おまえらが誰と紛争しようが知ったこっちゃないわ!だいたいあれや!俺がスパイなら惚れた女をいっしょに連れてくるはずなかろうもん!もうちょっ と考えてからモノ言えや、この野郎!」
 俺は逆切れして地元言葉で一気にまくし立てた。胸ぐらを掴みあげられて俺と同じ目線になったドワルタスはきょとんとして俺を見ている。その目がますます気にくわない。
「なんか文句あるか?こらぁ!わかったらさっさと俺の連れを離さんかい!」
 怒鳴られたドワーフたちは思わずユリたちを離した。ドワルタスは俺をまじまじと見ている。
「惚れた女ってあいつのことか?」
 彼はユリを顎で示しながら俺に尋ねた。まだ頭に血が昇っていた俺は間髪入れずに彼に答える。
「そうじゃ!やけ、さっきから言いよろうが!惚れた女をスパイ活動に連れてくるバカがどこにおるか!勝手に言いがかりつけとるんやないぞ、こら!・・・・・・あ・・・・」
 自分の叫んだ言葉を意味を理解して思わず、ドワルタスをつかんだ手をゆるめた。ユリは目をまん丸にして俺を見ている。俺と目があった瞬間、彼女は真っ赤になってしまった。ドワルタスはそんな俺とユリのリアクションを見て納得したらしい。集まった連中に大声で言った。

「どうやらこのマシマの言うとおりのようだ。彼らは遊びに来ただけみたいだ。彼の言うとおり、自分の愛する女を間者の任務に同行させるはずがない!」
 いや、改めてそんなこと宣言してくれなくてもいいから・・・。そんな俺の思いを置いてけぼりにして集まったドワーフたちから口々に声があがった。
「考えてみれば、そうだな」
「愛する女を連れて敵地に乗り込みはしないよな」
 今度は俺は慌てることになった。さっきとは正反対。すがるようにドワルタスにしがみついた。
「いや、あの、俺たちに敵意がないことをわかってくれたのはうれしいんだけど、最後の言葉あたりはなかったことにしてよ」
「マシマ、これも山の神のおぼしめしだ。おまえたちのあの態度を見ればわかる。まあいいではないか!さあ、皆の者!客人をお迎えする準備だ!」
 ドワーフのリーダーは俺の弁解を聞き流してメンバーと合流した。どうやら俺たちの歓迎会を始めてくれるようだ。それはホントにありがたいんだが・・・・。
「真島!」
「真島君!」
 大友と真理が解放されて駆け寄ってきた。
「死ぬかと思ったぞ。でも、あのタイミングでユリちゃんへの告白もやっちまうのはさすがだな!」
「さ、ユリちゃん。怪我はない?」
 真理に抱きかかえられるようにユリが俺たちのところにやってきた。目が合うが照れくさくてまともに見ることができない。彼女も同じみたいで俺と全然向かい合ってくれない。
「先輩、その・・・・ありがとうございました。真理さん、食材を準備しましょう」
 そう言うとユリは真理の手を取って車の近くにある簡易テーブルに小走りで行ってしまった。俺は思わずポケットからタバコを取り出して火をつけた。俺の落胆ぶりに大友が俺の肩を叩いた。

「まあ、照れ隠しなだけだよ・・・」
 ホントにそうだといいんだがな。俺はため息をついた。そこへドワルタスがやってきた。
「マシマ、君たちの歓迎会だ。ここに村の連中が来るから。今日は楽しくやろう!」
「ああ、どうもすいませんねえ」
  大友が呆然とする俺に変わって彼に答えた。ドワーフの村はここから数百メートル離れた街道の向こうにある岩山の麓に存在するようだ。ドワーフって人種は 元々山や岩の精霊ってことらいしから。山の近くに住み、山をこっちでいうところの「ご神体」としてあがめているようだ。そしてその「ご神体」ってのが、 ボーキサイト鉱山の「ドラゴンヘッド」ってわけだ。
「しかし、よくもまあ「ご神体」を採掘させる気になったな」
 大友が呆れるように言った。俺たちの眼前ではこっちの女性陣も交えてドワーフの村人が総出で宴会の準備にいそしんでいる。
「その対価としての採掘料なんだろうな。でも、その採掘料をモルドバ伯がちょろまかそうってんだから、彼らも怒ってるんじゃないのかな・・・」
  俺はそう答えながら考えていた。こんなややこしい情勢のところに入り込んで大丈夫なんだろうか。今日中に自衛隊の駐屯地に帰りたかったが、のこのこ日帰り してしまうと俺たちが不法入国したことがばれてしまう。入国前だと未遂ですむが、今はもうやらかしてしまっているのだ。ばれればよくて強制送還。最悪、大 学も退学処分で実刑もあり得る。
「やばいよな・・・」
 進も地獄、退くも地獄ってこういうことを言うんだろうか。俺は楽しげに食事の準備をするユリを見ながらため息をついた。
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