自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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匿名ユーザー

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7月11日、午前10時 サイフェルバン東沖230マイル付近
レキシントンの艦尾に向けて、1機のF6Fが最終アプローチラインに入った。
そのF6Fは失速することもなく、見事な着艦を見せた。
「司令官、戦闘機隊の収容終わりました。」
参謀長のアーレイ・バーク大佐がミッチャー中将に報告した。
「うむ。」
ミッチャーは頷いた。今回の空中戦は、敵バーマント軍の飛空挺の大多数をサイフェルバンに
たどり着く前に多数のF6Fで叩き落したことで、米側が完勝した。
空中戦では8機のF6Fを失ったが、敵の飛空挺300機以上を撃墜した。
この戦果は昨夜の空襲で少なからぬ犠牲を出し、敗北感に打ちのめされていた第58任務部隊の
気分を明るくさせた。
「これでサンジャシントとドーチの仇は取れましたな。」
「敵さんも、わが機動部隊を怒らせたらどうなるか、骨身に染みただろう。
だが、まだ仕事は残っているぞ参謀長。偵察機が敵の飛行場を探している。
見つけたらすぐに待機していた攻撃隊で叩くのだ。」
午前9時ごろからサイフェルバン内陸に向けて8機のアベンジャーが飛び立った。
今のところまだ報告は入っていないが、第3、第4任務群の格納庫には合計で240機の攻撃隊が
既に装備を終えて待機している。
今は戦闘機の収容が終わったから、じきに飛行甲板上に上げられていつでも発艦できるように準備が始まるだろう。
「お返しはたくさんしないといけないからな。」
ミッチャーはぶすりとした表情でそう呟いた。
午前10時50分、ランドルフの偵察機からサイフェルバン西300キロの地点に敵の本格的な飛行場があると報告してきた。
第58任務部隊の第3、第4群から合計で240機の攻撃隊が発艦したのは、これから30分後の事である。

午後2時30分、グリルバン郊外 バーマント軍航空基地
グリルバンの航空基地に米艦載機が来襲したのは午後0時を少し過ぎた後である。
グリルバンに司令部を置いているサイフェルバン方面航空隊統括司令官のライクル騎士中将は、
未帰還機の余りの多さに愕然としていた。
360機の大編隊で送り出したのに、わずか28機しか戻らなかったのだ。
ライクル司令官はしばらく執務室から出てこなかった。
その悲しみなどどうでもいいとばかりに来襲した米艦載機はグリルバンの飛行場を傍若無人に
荒らしまわった。
米艦載機の空襲によって、2000メートルの滑走路はたちまち穴だらけにされ、主要な建物、
指揮所や整備部品が置かれている倉庫、宿舎、弾薬、燃料タンクなどは片っ端から銃爆撃を受け、
見るも無残な姿に変わり果てた。
特に、燃料タンク、弾薬庫の大爆発は5キロ南に離れたグリルバンの住民たちまでも仰天させた。
空襲の間、パイロットやライクル司令官らはすぐさま地下壕や物陰などに隠れて難を逃れようとした。
米艦載機は思う存分暴れまわった後、塩が引くようにいつの間にかいなくなっていた。
そしてその後に残されたのは、破壊しつくされた飛行場だった。
今は消火活動や後片付けに基地の兵士たちは従事している。その破壊された基地を見ると、
いかに米艦載機がこの手のプロであるか理解できた。
激しく燃え盛っている燃料タンクに消火隊が群がり、必死に水をかけている。
弾薬庫の消火は既に終了していたが、2階建ての施設は跡形も無く吹き飛んでしまっている。
滑走路は小さいもので5メートル、大きいものでは10メートル以上の穴が無数に開いており、
最低でも2週間は使えないだろう。

飛空挺の生き残りは、退避させる暇も無かったため、全機が機銃弾によって
ただの鉄製のぼろに成り代わってしまっていた。
パイロットが無事だったのが不幸中の幸いである。
「うまいものだな。」
破壊された基地を見渡しながらライクル司令官は呟いた。彼の自信に満ちた闘志は、
今ではすっかり消え失せていた。顔は10年分は老けたように見えた。
懐から思い出したように一枚の紙を取り出した。それは飛空挺を全機送り出した20分後に入ってきた
魔法通信の内容を書き写したものだ。
「サイフェルバン南東に敵機動部隊あり。敵艦隊は高速でサイフェルバン方面に向かいつつあり」
ライクル中将は紙をくしゃくしゃにすると、残骸の中に捨てた。
顔にはやりきれない怒りが浮かんでいた。
「この通信が、出発前に届いていたら・・・・・・・・・・・多くのパイロットを死なせずに済んだものを・・・・・・・」
そう、海竜情報収集隊はアメリカ機動部隊の欺瞞行動に嵌められたのだ。
これまで、海竜情報収集隊は多くの有力な情報をバーマント軍に送ってきた。その情報は常に正確だった。
だが、今回はそれを逆手に取られたのである。
(敵が海竜の存在を知ったとなると、今後は正確な情報が届きにくくなるな)
彼はそう思った。そしてこれからは海竜自体も敵によって次第に数を減らされていくだろう。
「敵に与えた損害はわずかで、我がほうの損害は極大とは・・・・敵将はかなり頭が切れるな。」
ライクルは内心で敵将を褒めた。
(一度、敵の総司令官、スプルーアンスとやらに会ってみたいものだ)
これまで縦横無尽に活躍してきた、バーマント軍の空の精鋭を壊滅させた敵将に対し、
僅かながら尊敬の念が沸き起こった。
その時、若い魔道将校が紙を持って彼の側にやってきた。空襲が終わった10分後に、
ライクル司令官は被害の実情を報告していた。
その返事がやってきたのだろう。
「司令官、先ほどの報告の返事が来ました。」
「読め。」
彼は魔道将校に背を向けたまま答えた。
「ハッ。サイフェルバン方面の全空中騎士団は、至急作戦行動を中止せよ。
後の指示は追って連絡する。とのことです。」

7月12日 午前7時 バーマント公国首都ファルグリン
公国宮殿にある大会議室に、陸軍と海軍、それに空中騎士団の総司令官、そ
れに皇帝と直属の将官が集まっていた。
この他に皇帝の娘であるエリラ・バーマント皇女もなぜか席に座っていた。
「さて、サイフェルバン方面の詳しい話を聞かせてもらおうか。」
玉座に座るグルアロス・バーマントの冷たい声音が凛と響いた。彼の機嫌はかなり悪かった。
(これは皇帝陛下の雷が落ちるぞ)
海軍最高司令官のネイリスト・グラッツマン元帥は内心でそう呟いた。
戦況が悪くなると、時たま何人かの高級将官が罰を受けるのである。
死刑になることは滅多に無いが、その代わり一生牢獄に放り込まれ、
日の目を見ることなくそこで息絶えることになる。
「わが陸軍は、敵異世界軍の侵攻に対し、勇敢に戦っております。しかし、サイフェルバン駐留軍は、
既に6万を超える死傷者が出ており、敵上陸軍はサイフェルバンのわが軍を包囲しようとしています。
現状から行きますと、包囲された場合、サイフェルバンは持って3週間ほどです。」
「なぜだ?敵の蛮族共なぞ、我が強大なバーマント陸軍の前には蟻と獣でしかない。すぐに増援を送るのだ。」
「しかし、肝心の鉄道は敵飛空挺によって各所が寸断されており、今現在も修理中です」
「海軍は?海軍はどうなのだ。まだ主力部隊が突入していないぞ。」
皇帝のその言葉に、グラッツマン元帥は口を開いた。
「我々海軍も高速艦10隻をサイフェルバン沖に突入させようとしました。
しかし、突入した第2艦隊は1隻も帰ってきていません。
恐らく敵の有力な艦隊と交戦した後、全滅したようです。
海竜隊の報告では、敵の大型艦2隻と小型艦1隻が南に避退して行ったとあるので、
第2艦隊は3隻の敵艦を撃破したようですが。」

「そうか・・・・・・・・・」
皇帝は気持ちを落ち着かせようと、腕を組んで下にうつむいた。その表情には怒りが渦巻いている。
グラッツマンはちらっと皇帝の側に座る皇女のエリラに視線を移した。
(なんでこいつがいるんだ。)
グラッツマンは苦々しい気持ちでそう思った。
顔立ちは美しいながらも精悍で、体つきはとても良い。
普段は格闘や剣術といった武芸もたしなむため、肌は小麦色に焼けている。
一見美人のこの皇女だが、グラッツマンは彼女が大っ嫌いだった。
エリラは時折、このような会議に姿を現すかと思えば、彼らの言うことにあれこれ口を出すのである。
実は彼女はこのバーマント公国の次期皇位継承者で、父であるグルアロスは彼女が勝手に進言するのは
何も気に留めていない。
それどころか、勉強になるからいいという始末である。
1ヶ月前などは、まだ準備が整っていないのに、
「王都に侵攻したほうがいいんじゃないの?」
と皇帝に進言した。その事がきっかけで王都侵攻が皇帝によって決められ、2個空中騎士団が
侵攻するまでの間、王都を爆撃しようとした。
だが、この時王都には異世界の航空隊が進出しており、これらに襲撃された空中騎士団は全滅してしまった。
この時はまだいい。しかし、彼女は以前にもこういう横槍を入れては勝手に軍を動かすときがあった。
成功するときは成功するが、失敗するときは目も当てられない結果になる。
将軍連中の頭越しにあれこれ指図するエリラは、今では彼らに嫌われていた。
(今日は珍しく黙っているが、いずれ口を出してくるかもしれんな)
彼は内心で心配していた。できればこのまま彼女には黙ってもらいたい。

皇帝はしばらく考え込んでいた。その間、不気味な静寂が辺りを包み込む。
飛空挺の戦力も壊滅し、サイフェルバンの陸軍は劣勢、そして海軍部隊は最新鋭の
高速艦を参加艦艇全滅という悲運に見舞われている。
しかし、殴られたままでは引き下がれない。
「だが、打つ手は打たねばなるまい。我が軍だって敵に被害を与えている。
第13空中騎士団は敵の空母を撃沈したし、惨敗した航空戦でも、
機銃で少ないながらも敵機を撃墜している。それに前にも言ったが敵はわずか15万の少数だ。
今はサイフェルバンで苦戦しているがいずれ、我が軍は大軍を送り込んで目に物を見せてやれる。
だからサイフェルバンは当分の間、持ちこたえねばならん。」
「しかし、鉄道の修理がまだ済んでおりません。」
「なら早く直したまえ。」
皇帝は有無を言わさぬ表情でそう言った。オール・エレメント騎士元帥は、蛇に睨まれた蛙のように押し黙った。
「皇帝陛下、空中騎士団の増援についてですが、現状では新たに空中騎士団を送り込むのは自殺行為も同然です。」
バーマント空中騎士軍司令官のジャロウウス・ワロッチ騎士大将は、哀願するような口調で話し始めた。
「立て続けに起こったアメリカ軍との戦闘で、我が空中騎士団のこれまで被った損害は飛空挺886機、
パイロットは1508名を失っており、もはや半分の戦力しかありません。それにあてになるのは首都にいる
4個空中騎士団400機のみで、残りは訓練中か、編成を終えたばかりの新米です。この4個空中騎士団を失えば、
我々バーマント航空部隊は壊滅します。」
「ふむ。で、君は何が言いたいのかね?」
「サイフェルバン方面の増援中止です。」
しばらく会議室はしーん、と静まり返った。

その静寂を破ったのは皇帝だった。
「そうであれば・・・・・仕方が無かろうな。空中騎士団は陸軍や海軍と違い、数も人員も少ない。
よろしい、増援中止を許可しよう。」
(さすがに、皇帝陛下も空中騎士団を失うのは痛いのだな)
グラッツマンは恐らく、空中騎士団の増援を断行させるだろうと考えていたが、これまでの優位は、
空中騎士団があったからこそ実現したものだった。
もし空中騎士団を失えば、バーマントの大陸統一は遠のくだろう。
皇帝陛下はそれを恐れ、空中騎士団の温存を決めたのだ。彼はそう確信した。
(賢明な判断です。皇帝陛下)
彼は内心で喜んだ。だが、そこへある人物が口を開いた。エリラ皇女である。
「お父様、まだ手があるじゃないですか。海軍はたかだか10隻の軍艦を失っただけです。
まだ主力は敵船団に突入してはいませんよ?」
会議室の司令官たちは、電撃が走ったかのような感覚に見舞われた。
またいらぬ事を!!このまま黙っていればいいものを!!
誰もが口や表情に表さなかったが、内心ではそう思っていた。
「そう言えば、確かにそうであるな。夜間に突入した第2艦隊は、確か3隻の敵艦を撃破したと言ったな?」
グラッツマン元帥は内心しまったと思った。報告に敵艦3隻撃破したと言ってしまったのだ。

アメリカ軍の艦艇は我がバーマント軍より勝っているものの、数が揃えればそれを撃破、うまくいけば
撃沈できることも不可能ではない。皇帝はそう思っている。
エリラはむしろ皇帝より強く思い込んでいるに違いない。
畜生、次期皇位継承者だからといって調子に乗りおって!皇帝も皇帝だ!
グラッツマンは内心で2人を罵った。既に皇帝は乗り気になっている。
「皇帝陛下、私もそれはいい案だと思います。重武装戦列艦5隻を擁する第3艦隊は最強です。
これらを投入すれば、敵アメリカ軍の艦隊と5分に渡り会えるはずです。」
皇帝直属将官であるミゲル・アートル騎士中将も頷きながらそう言った。
彼は35歳で中将に上り詰めた実力派の将官だが、常に皇帝のイエスマンであるために、
グラッツマンは彼のことを皇帝の腰巾着と陰で罵っている。
(貴様まで口を出すな!)
彼は怒声を上げかけたが、寸前のとこで抑えた。
彼自身もバーマントの大陸統一を熱心に願っている。あの馬鹿皇女も、腰巾着の言う事も全てが間違いではない。
時には2人の皇帝に対する助言がきっかけで大勝利を得たこともあった。
(たまたま通りかかった破壊船が第2艦隊の乗員を救出し、事情を調べたが、敵の警戒艦は思ったより少なく、
数は10隻程度しかいなかったと聞く。ならば、今回第3艦隊を送れば、10隻しかいない敵艦を蹴散らして、
サイフェルバン沖の貧弱な武装の敵輸送船を叩き沈められるかも知れん。)
考えれば意外に出来なく無さそうでもない。彼はそう思った。
その時、皇帝が声をかけた。
「グラッツマン元帥、第3艦隊をサイフェルバン沖に突入させられないかね?」

7月13日 午前0時 バーマント公国首都ファルグリン郊外
ここはファルグリン郊外の森の中にある墓場。普段は誰も通らないひっそりとした場所である。
その墓場のすぐ近くにある貧相なボロ屋に、髭面の男は待っていた。
「来るのが遅いですね。」
髭面に対して、敬語で痩身の男がそう話した。
「あの人は普段忙しいからな。それに遅いのはいつものことだろう。」
髭面の男はニヤリと笑みを浮かべながらそう言った。
「それにしても、毎回思うことなのですが、集合場所が墓場の近くというのはもう止しませんか?
なんか幽霊が出てきそうで嫌なのですが。」
「馬鹿野郎。幽霊が何だ、むしろ幽霊なんかかわいいほうだ。本当に怖いのは人間なのだよ。
命令ひとつで何の罪も無い国を潰そうとするのだからな。」
髭面の男が淡々とした口調で言う。
「馬鹿げている。全く馬鹿げている。疑心暗鬼で他国に攻め込むなんて、愚か者のすることだ。
いくらヴァルレキュアの技術革新が進んでいようと、明らかにバーマントに攻め込もうとはしなかった。
しかし、統一したい欲望に皇帝陛下は溺れて、この国の歴史に大きな影を作ってしまった。
そんな時に異世界軍が現れるのは、神が天罰を与えたからさ。」
「その天罰を、我々が味合わされているというわけですね。」
「ああ、そうだ。たかが欲望のために、外国民や臣下を狂気に等しい戦争で殺しまくる。
本当に馬鹿げている。」

髭面の男はそう言うと、深くため息をついた。
その時、ドアを叩く音が聞こえた。
「誰だ?」
痩身の男が聞くと、外から返事があった。
「皇帝陛下は大逆人だ。」
髭面と痩身は互いに顔を見合わせ、頷いた。
「いいぞ、入れ。」
髭面がそう言うと、ドアがぎいっと音を立てて開いた。ひんやりとした夜風が吹き込んだ。
黒いフード帽をつけた男が入ってきた。
「待たせて申し訳ありません。」
「いや、いいんだ。あんたは重要な職種についているんだからね。どうだ、何かバレた兆候はないか?」
「いえ、今のところ何もありません。それにしても毎回ここの集合場所は何かいるのかといつも心配になりますよ。」
「なあに、今のところ幽霊なんか出ていないよ。心配しなさんな」
そう言うと、髭面はガッハッハッ!と豪快に笑った。
「おーい!君の兄さんが来たぞ!」
髭面は大きな声で奥を呼びかけた。奥からは長髪の女性が出てきた。
「兄さん!」
長髪の女性は、フード帽を見るなり走りより、抱きついた。
「お前か。久しぶりだな、元気だったか?」
「ええ、元気よ。兄さんこそ元気そうね。」
長髪の女性はニカっと笑い、互いの再会を喜んだ。再会の喜びもそこそこに、髭面の男が本題を切り出した。

「所で、宮殿のほうはどうなのだね?」
「ひどいです。」
フード帽は、途端に苦々しい表情でそう言った。
「昨日の会議で、皇帝陛下は空中騎士団の増援を中止しましたよ。」
「なんだ、それなら別に酷くは無いと思うが?」
「問題はここからです。空中騎士団の増援は中止になりましたが、代わりに海軍の第3艦隊が、
サイフェルバンに派遣されることになりました。」
「第3艦隊だって!?」
髭面は驚いた表情でそう叫んだ。
「そうです。さらに詳しく言うと、第3艦隊派遣の原因はエリラ皇女にあります。」
「またあの馬鹿娘が口を出したのか。」
髭面はため息混じりにそう呟いた。第3艦隊とは、バーマント公国屈指の打撃艦隊で、
重武装戦列艦ザイリン級5隻を基幹に中型戦列艦6隻、最近配備されたばかりの高速戦列艦3隻、
小型戦列艦12隻、小型高速戦列艦8隻、合計34隻の大艦隊である。
ザイリン級は米海軍で言う戦艦の艦種で、速度は燃料が石炭であるにもかかわらず23ノットという
信じられないスピードを出せる。
主砲は33・8センチ砲10門を持ち、ヴァルレキュア戦では、第3艦隊が、当時ヴァルレキュア領
だったクロイッチの要塞砲と激しい撃ち合いを演じ、これに勝利している。
その他の艦も26ノットのスピードを出せ、高速戦列間にいたっては、先の第1次サイフェルバン沖海戦で
数の優位性もあるが、米軽巡モービルとデンヴァー、駆逐艦マグフォードを叩きのめした侮れない敵である。
だが、いくら優秀な艦が揃っている第3艦隊でも、それをさらに上回る艦を山ほど持っている米艦隊相手には、無謀もいいところである。

「既に皇帝陛下が作戦の立案を命じました。」
「・・・・・・・・」
髭面は目を覆った。これでまた多くの命が散ってしまうだろう。いくら重職にあるフード帽でも、
むやみに反対意見を唱えれば、たちまち投獄されてしまう。
「こうなる犠牲がまた新たに出る前に、早く革命をやらなければ!」
痩身の男が拳をあげて髭面に言う。
「だからこうして集まっているのだ。だが、最初はこのように少数のほうがいい。そうじゃないと、
官憲に見つかって終わりだ。」
「焦りは禁物です。今は徐々にやっていくしか。」
長髪の女性もそう言う。
「そうです。今しばらくは辛抱するべきです。」
フード帽も同じことを言った。
「そうだな。そのためには、まずは情報だ。さて、次の情報だが・・・・」
髭面はフード帽から新たな情報を聞き出そうとした。

密会は40分続いた。
「とりあえず、今日はこれまでにしておこう。」
髭面は今日の密会を終わることを告げた。
「これからも苦難の連続になるだろう。だが、革命の成就まで我々が、他の同志達と共に味わった事は、
これからのバーマント、そして大陸にとってもかけがえの無いことになるだろう。バーマント公国に栄光あれ。」
髭面がそう言うと、他のメンバーも最後の言葉を唱和した。
4人はそれぞれバラバラになって散っていった。夜はまだまだ深い。
(革命のため、そして俺と妹のためにも、失敗は許されない。)
フード帽の男、ミゲル・アートルは改めてそう決心した。
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