自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

メクレンブルク王国編16・17

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671 名前:<平成日本召還> 投稿日:2006/08/17(木) 23:05:31 [ Nz0LbtT6 ]
    ○メクレンブルク王国編16 1/2
    ――1
     夜の帳が下りた航空基地。
     様々な建物と、広大な滑走路。
     それはロディニア大陸南部では最大規模の航空基地であった。
     フォアポンメル王国は王都近郊、王都の規模にも匹敵する広大な領域を占有する<大協約第14軍団>駐屯地、
    そのトッカータ航空団の基地である。

     歩哨を除き殆どが就寝しているが、その貴重な例外――煌々とランプの灯されている部屋があった。
     航空団隷下の戦闘部隊、第1411戦闘航空隊指揮官の執務室である。
     最も、指揮官は仕事をしていた訳では無い。
     暢気な表情で、アルコールの入れられたグラスを傾けていた。
     否。
     暢気とは云いがたいだろう。
     顔には酒精の影響が強く出ていたが、瞳は酷く醒めていたのだから。

    叩音

     入室許可を求める硬い響きに、手荒く「おう」と答えた隊司令。
     扉が開く。
     入ってきたのは、副官だった。

    「どうした? 先に寝てろと言った筈だが」

    「閣下がお休みになられないのに、我々が眠れる筈がありません」

    「ご苦労な事だな」

     生真面目に立つ副官に、座れと顎で示す隊司令。
     予備のグラスを出してやると、好きに飲め、と告げた。
     自分でも手酌をする。

    「ご機嫌がよろしくありませんね」

    「当たり前だ。明日からはロクでも無い事に成るのが判ってて、暢気に過ごせるか」

     明日には、この第1411戦闘航空隊の1個戦闘中隊(定数12騎)が、メクレンブルク王国へと進出した
    第1421歩兵大隊への支援として派遣される事となっているのだ。
     第1421歩兵大隊隷下の中隊が2個、さしたる情報も得られぬままに壊滅してしまった事からの、緊急措置だった。
     泥縄と言って良いだろう。

    「活躍する良い機会かと思いますが?」

    「本気かね? それとも私を馬鹿にしているのかね?」

     酒精の濁りの無い目で副官を睨みつける隊司令。

    「君とて知っているだろう。高高度を飛ぶ機械竜と思しき謎の影の事は」

     ワイバーン・ロードですらも届かぬ、神の座の如き虚空を往く影。
     大協約の列強諸国すらも生み出せぬソレは、正に伝説にて語られる“帝國”の機械竜としか思えなかった。

    「はい。ですがそれが“帝國”のものと限った訳では………」

    「本気で言っているのかね?」

    「失礼しました」

     自分の述べた楽観論に、隊司令が表情を険しくしたのを見て、副官は慌てて謝罪する。

672 名前:<平成日本召還> 投稿日:2006/08/17(木) 23:06:03 [ Nz0LbtT6 ]
    ○メクレンブルク王国編17 2/2
     副官とて、自分の言葉を信じていた訳では無いのだ。
     ただ隊司令の気分を盛り上げようと、口にしていたのだ。

    「“帝國”の機械竜の進歩は早かったと聞く。たった数年で格段に優れた機械竜が生み出されていた、と。
    それから既に60余年だ。どれだけの進歩をしているのか、想像も出来ん」

     敵の新型が、最大で800km/時に達していても驚かんぞ、と言う。
     現時点でワイバーン・ロードの最大速力は、高速特化種ですらも700km/時なのだ。
     無論、空戦は速力だけで決着が付く程に簡単なものでは無かったが、それでも重要な要素なのだ。

    「我々とて進歩をしている筈です。それでは足りませんか?」

    「………足りんな。確かに我々も努力はした。組織戦闘能力も高めた。竜騎士の戦闘能力の保全にも努力を払っている。
    だがそれらは全て、ワイバーン・ロードの周辺だ。そのものでは無い。私が現役の竜騎士だった頃に、
    “帝國”と戦った古強者に聞いたが、その戦争の全期間を通してもワイバーン・ロードの能力向上など
    微々たるものだったそうだ。それが今の平和の時代だぞ? 伸びなかったと言われた方がシックリと来る」

     吐き捨てる様に断言する。
     そんな隊司令の様子に、副官は慌てる。

    「それでは我々の竜騎士たちは………」

    「判らんさ、どうなるかなんてな。私の方が考えすぎなのかもしれん。如何に“帝國”が強大であったとは云え、
    そこまで無茶な発展をしているとは思えんからな」

    「ですよ司令。考えすぎです。明日、出撃させる戦闘中隊は精鋭揃いなんですから、同数の敵相手なら、
    伝説の“疾風”にすらも負けないと思います」

    「そうかもしれんな」

     そう呟いて、隊司令は飲み干したグラスをひっくり返した。

    「ふん、埒も無い事を言ったな」

    「いえ。ですが明日も大変ですので、早めにお休みになられては如何ですか」

    「そうさせて貰おうか」

     苦笑して立ち上がる隊司令。
     彼らは知らなかった。
     彼らの敵として立ちふさがる機械竜――F-2Cの性能は、彼らの空想すらも凌駕していると云う事を。
     それを知るのは、この7時間後であった。

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