7月5日 午前10時 サイフェルバン沖東30マイル地点
第58任務部隊第3任務群は洋上補給を行っていた。給油艦の側に大型は空母、小型は駆逐艦
といった艦が、順番に舷側に近づき、給油パイプから燃料を受け取る。
その間、順番待ちの機動部隊の各艦は、停止する給油艦の周囲を回りながら、高角砲や機銃を
空に向けて将兵が空中を睨んでいる。上空には上空警戒のF6F50機が、上空をぐるぐる旋回
して、バーマント側の襲撃に備えていた。
インディアナポリスの艦橋に若い士官が入ってきた。
「艦長、本艦の給油作業が終わりました。」
艦長のマックベイ大佐は頷くと、次の指示を下した。
「機関始動、前進微速!」
「アイアイサー!」
生きのいい返事が伝わり、命令が伝達されていく。やがて、9800トンの艦体がゆっくりと
給油艦の近くから離れていく。
インディアナポリスが給油艦から離れた後に、今度は軽空母のプリンストンがその給油艦に
近づいていった。
艦橋で給油作業の様子を見ていたスプルーアンスはふとある事を思いついた。彼は右隣に居る
ターナー魔道師に声をかけた。
「ターナー君、甲板で散歩でもしないかね?」
突然の彼の言葉に、マイントは思わず耳を疑った。
「え?さ、散歩ですか?」
「そうだ。君はここ数日、ずっと緊張してばかりだろう。」
実際そうだった。彼はここ連日、ずっと緊張していた。それのせいで夜は眠れなくなるという
事まで起きてしまった。彼の顔は、インディアナポリスに乗艦した時と比べると、やつれている
ように思えた。その反面、第5艦隊司令部幕僚も疲れてはいたが、マイントのように急激に疲れては
いない。
「気分転換にどうだね?」
流石に断っちゃまずいかな・・・・・・・・
第58任務部隊第3任務群は洋上補給を行っていた。給油艦の側に大型は空母、小型は駆逐艦
といった艦が、順番に舷側に近づき、給油パイプから燃料を受け取る。
その間、順番待ちの機動部隊の各艦は、停止する給油艦の周囲を回りながら、高角砲や機銃を
空に向けて将兵が空中を睨んでいる。上空には上空警戒のF6F50機が、上空をぐるぐる旋回
して、バーマント側の襲撃に備えていた。
インディアナポリスの艦橋に若い士官が入ってきた。
「艦長、本艦の給油作業が終わりました。」
艦長のマックベイ大佐は頷くと、次の指示を下した。
「機関始動、前進微速!」
「アイアイサー!」
生きのいい返事が伝わり、命令が伝達されていく。やがて、9800トンの艦体がゆっくりと
給油艦の近くから離れていく。
インディアナポリスが給油艦から離れた後に、今度は軽空母のプリンストンがその給油艦に
近づいていった。
艦橋で給油作業の様子を見ていたスプルーアンスはふとある事を思いついた。彼は右隣に居る
ターナー魔道師に声をかけた。
「ターナー君、甲板で散歩でもしないかね?」
突然の彼の言葉に、マイントは思わず耳を疑った。
「え?さ、散歩ですか?」
「そうだ。君はここ数日、ずっと緊張してばかりだろう。」
実際そうだった。彼はここ連日、ずっと緊張していた。それのせいで夜は眠れなくなるという
事まで起きてしまった。彼の顔は、インディアナポリスに乗艦した時と比べると、やつれている
ように思えた。その反面、第5艦隊司令部幕僚も疲れてはいたが、マイントのように急激に疲れては
いない。
「気分転換にどうだね?」
流石に断っちゃまずいかな・・・・・・・・
彼はそう思った。
「では、お言葉に甘えて、そうさせてもらいます。」
「では、お言葉に甘えて、そうさせてもらいます。」
甲板上に降りた彼はスプルーアンスを待っていた。そして降りてきたスプルーアンスは短パンに
半そでというかなりの軽装だった。その姿で見る彼は、意外にスプルーアンスががっしりとした
体つきなのに少し驚いた。普段、軍服を付けているスプルーアンスは痩身のようで、体重も
軽いのでは?とマイントは何度も思った。しかし、こうして見ると印象はかなり違った。
「さて、歩くかね。」
そう言うと、スプルーアンスは甲板上を歩き始めた。マイントはスプルーアンスという人物が
どんなものであるかと言うのを最近分かり始めてきた。
ある時、第5艦隊の司令部幕僚がせわしなく働いていたとき、スプルーアンスは時計を見るなり、
「時間なので私は寝る。」
と言っていきなり自室に戻って行った時があった。時間を見るとまだ夜の9時。
「え?いいんですか!?」
彼は仰天して参謀長のデイビス少将に聞いたが、彼は苦笑して、
「いいさ。あれが長官なんだ。」
と言いながら作業にとりかかった。この時のマイントは、納得できないとばかりに首をかしげた。
半そでというかなりの軽装だった。その姿で見る彼は、意外にスプルーアンスががっしりとした
体つきなのに少し驚いた。普段、軍服を付けているスプルーアンスは痩身のようで、体重も
軽いのでは?とマイントは何度も思った。しかし、こうして見ると印象はかなり違った。
「さて、歩くかね。」
そう言うと、スプルーアンスは甲板上を歩き始めた。マイントはスプルーアンスという人物が
どんなものであるかと言うのを最近分かり始めてきた。
ある時、第5艦隊の司令部幕僚がせわしなく働いていたとき、スプルーアンスは時計を見るなり、
「時間なので私は寝る。」
と言っていきなり自室に戻って行った時があった。時間を見るとまだ夜の9時。
「え?いいんですか!?」
彼は仰天して参謀長のデイビス少将に聞いたが、彼は苦笑して、
「いいさ。あれが長官なんだ。」
と言いながら作業にとりかかった。この時のマイントは、納得できないとばかりに首をかしげた。
スプルーアンスは、それ以降も毎日夜の9時には自室にとじこもって眠りについた。
それとは別に第5艦隊の司令部幕僚は、マイントも交えながらバーマント軍の出方や味方機動部隊の行動日程など、色々な問題について議論を重ねた。
一見、スプルーアンスは怠けているのではないか?と思ったマイントだが、スプルーアンスは的確に指示を下し、直すべきところは直すように言い、それでその案が正しいのなら、幕僚と協議を重ねてその案をさらに煮詰める、という事をやっている。
怠けるときはあるが、司令長官としての仕事は十二分にこなしている。マイントは心の中で、スプルーアンスは頭のよい怠け者なのだ、と思い始めている。
ヴァルレキュアにはこういう軍人は全くといっていいほど存在しなかった。
それとは別に第5艦隊の司令部幕僚は、マイントも交えながらバーマント軍の出方や味方機動部隊の行動日程など、色々な問題について議論を重ねた。
一見、スプルーアンスは怠けているのではないか?と思ったマイントだが、スプルーアンスは的確に指示を下し、直すべきところは直すように言い、それでその案が正しいのなら、幕僚と協議を重ねてその案をさらに煮詰める、という事をやっている。
怠けるときはあるが、司令長官としての仕事は十二分にこなしている。マイントは心の中で、スプルーアンスは頭のよい怠け者なのだ、と思い始めている。
ヴァルレキュアにはこういう軍人は全くといっていいほど存在しなかった。
(アメリカという国は、人材の育て方もうまいのかもしれない)
甲板上で柔軟体操をするスプルーアンスを見ながら、マイントは内心でつぶやいた。
スプルーアンスが柔軟体操を終えて立ち上がった。
「さあ、歩こうか。気分がすっきりするぞ。」
スプルーアンスはやけに晴れ晴れとした表情で、マイントにそう言った。2人はインディアナポリスの甲板上を歩き始めた。20分ほど歩くと、服が汗で体に張り付いた。
「マイント君、船酔いの方はもう慣れたかね?」
「はい。もうすっかり慣れました。」
マイントはけろりとした表情でそう言った。彼はインディアナポリスにオブザーバーとして乗艦したその3時間後に、早々と船酔いでダウンしてしまった。
彼はバイアン号で、マーシャル諸島に向かう時もずっとベッドで苦しんでいたほど、船は苦手だった。これを見たインディアナポリスの乗員は、彼を「船酔い魔法使い」と影であだ名した。
甲板上で柔軟体操をするスプルーアンスを見ながら、マイントは内心でつぶやいた。
スプルーアンスが柔軟体操を終えて立ち上がった。
「さあ、歩こうか。気分がすっきりするぞ。」
スプルーアンスはやけに晴れ晴れとした表情で、マイントにそう言った。2人はインディアナポリスの甲板上を歩き始めた。20分ほど歩くと、服が汗で体に張り付いた。
「マイント君、船酔いの方はもう慣れたかね?」
「はい。もうすっかり慣れました。」
マイントはけろりとした表情でそう言った。彼はインディアナポリスにオブザーバーとして乗艦したその3時間後に、早々と船酔いでダウンしてしまった。
彼はバイアン号で、マーシャル諸島に向かう時もずっとベッドで苦しんでいたほど、船は苦手だった。これを見たインディアナポリスの乗員は、彼を「船酔い魔法使い」と影であだ名した。
彼の船酔いは予想以上にひどく、その日に行われた会議ではずっと青い顔をしたままで参加していた。翌日は午前中ずっと倒れていた。
「あの魔法使いは本当に使えるのか?船酔いで伸びちまってるぞ。」
参謀長のデイビス少将は本気でそう心配したほどである。それも4日目にはすっかり直り、普通に船内で生活できるまでになった。
一方、レキシントンⅡに乗り込んだリリアのほうは、なぜか全く船酔いをしなかった。
「そうか、それは良かった。」
スプルーアンスは頷きながら言った。
「船になれていない頃は誰でもそうなる。私だって最初はひどかった。だが、人間とは不思議なものだな。長時間同じ環境にいると体がそれに順応してしまうのだ。」
「とすると、私はもう海の環境に順応する体になったのですね。」
「うむ、おそらくそうだろうな。」
スプルーアンスはさっきと同じように頷く。彼はさらに言葉を続けた。
「しかし、それは普通の海での話だ。これが波の荒れる嵐の海なら環境大きく違ってくる。
私が若いころ、軍艦に乗って世界一周の遠洋航海に出た事があった。ある日、ひどい嵐の中に艦隊がまともに突っ込んでね、
船はカヌーのように揺れまくったよ。軍艦の乗員はほとんどが海に慣れたものばかりだったが、人間限界はあるものさ。その時ばかりは
皆がひどい船酔いになった。あちらこちらで乗員は吐きまくるし、備品も揺れで散らかり放題。艦内は最悪だったな。私もひどく気分が悪くなって、海に飛び込みたいと何度も思ったよ。」
彼は笑いながら過去の体験談を話した。
「それはひどい災難でしたね。」
「ああ、災難だったな。」
「あの魔法使いは本当に使えるのか?船酔いで伸びちまってるぞ。」
参謀長のデイビス少将は本気でそう心配したほどである。それも4日目にはすっかり直り、普通に船内で生活できるまでになった。
一方、レキシントンⅡに乗り込んだリリアのほうは、なぜか全く船酔いをしなかった。
「そうか、それは良かった。」
スプルーアンスは頷きながら言った。
「船になれていない頃は誰でもそうなる。私だって最初はひどかった。だが、人間とは不思議なものだな。長時間同じ環境にいると体がそれに順応してしまうのだ。」
「とすると、私はもう海の環境に順応する体になったのですね。」
「うむ、おそらくそうだろうな。」
スプルーアンスはさっきと同じように頷く。彼はさらに言葉を続けた。
「しかし、それは普通の海での話だ。これが波の荒れる嵐の海なら環境大きく違ってくる。
私が若いころ、軍艦に乗って世界一周の遠洋航海に出た事があった。ある日、ひどい嵐の中に艦隊がまともに突っ込んでね、
船はカヌーのように揺れまくったよ。軍艦の乗員はほとんどが海に慣れたものばかりだったが、人間限界はあるものさ。その時ばかりは
皆がひどい船酔いになった。あちらこちらで乗員は吐きまくるし、備品も揺れで散らかり放題。艦内は最悪だったな。私もひどく気分が悪くなって、海に飛び込みたいと何度も思ったよ。」
彼は笑いながら過去の体験談を話した。
「それはひどい災難でしたね。」
「ああ、災難だったな。」
スプルーアンスはふと、妻のマーガレットのことを思い出した。今頃、マーガレットはどうしているだろうか・・・・・・・
きっとマーシャルごと無くなった私をひどく心配しているだろう。この異世界で戦っているとは思わないだろう。
ビル・ハルゼーやニミッツ長官もどうしているだろうか。それに日本やドイツはどうなっているだろうか。
頭の中には元の世界で深く関わった人達や、出来事が次々に思い浮かんだ。
きっとマーシャルごと無くなった私をひどく心配しているだろう。この異世界で戦っているとは思わないだろう。
ビル・ハルゼーやニミッツ長官もどうしているだろうか。それに日本やドイツはどうなっているだろうか。
頭の中には元の世界で深く関わった人達や、出来事が次々に思い浮かんだ。
散歩はその後、30分ほど続いた。
「よし、これぐらいにしよう。どうだな、気分は?」
「一汗かいたおかげでしょうか、なかなか良いです。」
マイントは爽快な顔立ちでスプルーアンスに言った。それを聞いたスプルーアンスは満足そうに頷いた。
「それなら誘った甲斐があったな。私は時々、気分を落ち着けるためにこうして散歩をしているのだ。こういう時は何もかも
頭から追い出して、ただひたすら散歩に集中するんだ。君もむしゃくしゃしたら散歩に行くといい。すっきりするぞ。」
彼の散歩好きは広く知られている。スプルーアンスが少々に昇進し、プエルトリコの基地司令官に任ぜられた時、基地の幹部が
「今度の休日に何かイベントを催したいのですが、閣下は何がいいですか?」
と聞くと、スプルーアンスは冷めた表情で
「私は散歩が好きだね」と言い、部下が唖然としたことがあるほどである。
マイントは時には散歩も悪くないなと思った。
「そうですね。これからは時たま、そうしてみます。」
マイントはニカッと笑みを浮かべて彼に答えた。
「よし、これぐらいにしよう。どうだな、気分は?」
「一汗かいたおかげでしょうか、なかなか良いです。」
マイントは爽快な顔立ちでスプルーアンスに言った。それを聞いたスプルーアンスは満足そうに頷いた。
「それなら誘った甲斐があったな。私は時々、気分を落ち着けるためにこうして散歩をしているのだ。こういう時は何もかも
頭から追い出して、ただひたすら散歩に集中するんだ。君もむしゃくしゃしたら散歩に行くといい。すっきりするぞ。」
彼の散歩好きは広く知られている。スプルーアンスが少々に昇進し、プエルトリコの基地司令官に任ぜられた時、基地の幹部が
「今度の休日に何かイベントを催したいのですが、閣下は何がいいですか?」
と聞くと、スプルーアンスは冷めた表情で
「私は散歩が好きだね」と言い、部下が唖然としたことがあるほどである。
マイントは時には散歩も悪くないなと思った。
「そうですね。これからは時たま、そうしてみます。」
マイントはニカッと笑みを浮かべて彼に答えた。
2人は一通り休んでから艦橋に上がろうとしたが、インディアナポリスの左舷から3隻の船が現れた。それらはゆっくりとしたスピードで近づいてきた。
そして、その姿が明らかになった時、マイントは思わず息を呑んだ。3隻はひどく損傷していた。
「ひどくやられたな」
スプルーアンスがそう言った。その3隻は、未明に行われた海戦を戦った軽巡洋艦のモービルとデンヴァー、駆逐艦のマグフォードであった。
未明の夜に、3隻の艦は寮艦と共に泊地突入を狙うバーマント第2艦隊を捕捉、追跡した後に猛烈な撃ち合いとなった。結果、バーマント側の艦艇10隻を撃沈するという大戦果をあげた。
だが、米側の被害も馬鹿にならなかった。モービルとデンヴァーは、まだ増援艦が来ないうちに戦端を開いたため、両軽巡は、1隻で3隻を相手取らなければならなかった。
だが、6対2という劣勢の中、モービルとデンヴァーは善戦し、1番艦をモービルが、2番艦をデンヴァーが撃沈し、3番艦を中波させたが、モービルが12門の6インチ砲弾
を全て使用不能にされた挙句、機関出力が低下して落伍、そしてデンヴァーも12門中9門を使用不能された。モービルは32発、デンヴァーは24発の砲弾を受けていた。
いくら頑丈で、優秀なクリーブランド級軽巡も、物量にはかなわなかったのである。
この後に増援のサンフランシスコとブルックリンを始めとする部隊が到着し、敵艦を砲雷撃で海底に送り込んだ。
最後の駆逐艦マグフォードは、バーマント軍の小型千列艦の猛射を浴びて10発が被弾。3基の5インチ砲が使えなくなり、速度は25ノットに低下している。
そして、その姿が明らかになった時、マイントは思わず息を呑んだ。3隻はひどく損傷していた。
「ひどくやられたな」
スプルーアンスがそう言った。その3隻は、未明に行われた海戦を戦った軽巡洋艦のモービルとデンヴァー、駆逐艦のマグフォードであった。
未明の夜に、3隻の艦は寮艦と共に泊地突入を狙うバーマント第2艦隊を捕捉、追跡した後に猛烈な撃ち合いとなった。結果、バーマント側の艦艇10隻を撃沈するという大戦果をあげた。
だが、米側の被害も馬鹿にならなかった。モービルとデンヴァーは、まだ増援艦が来ないうちに戦端を開いたため、両軽巡は、1隻で3隻を相手取らなければならなかった。
だが、6対2という劣勢の中、モービルとデンヴァーは善戦し、1番艦をモービルが、2番艦をデンヴァーが撃沈し、3番艦を中波させたが、モービルが12門の6インチ砲弾
を全て使用不能にされた挙句、機関出力が低下して落伍、そしてデンヴァーも12門中9門を使用不能された。モービルは32発、デンヴァーは24発の砲弾を受けていた。
いくら頑丈で、優秀なクリーブランド級軽巡も、物量にはかなわなかったのである。
この後に増援のサンフランシスコとブルックリンを始めとする部隊が到着し、敵艦を砲雷撃で海底に送り込んだ。
最後の駆逐艦マグフォードは、バーマント軍の小型千列艦の猛射を浴びて10発が被弾。3基の5インチ砲が使えなくなり、速度は25ノットに低下している。
近づいてくるモービルは、4基の宝塔が全て左舷を向いたままで、艦体の傷やすすけた後がかなり痛々しい。デンヴァーやマグフォードも同様である。
「浮きドッグで修理できるとはいえ、少なくとも1ヶ月以上はリタイア確実だな。」
スプルーアンスはそう言った。マイントの目には、いかにも廃艦寸前のボロ船に見えたが、それでも直せると聞いた彼は、いかにアメリカという国の技術力が優れているか、
彼の言葉を聞いてやや驚いた。スプルーアンス本人の表情は、いつもと変わらない冷静なものである。
「浮きドッグで修理できるとはいえ、少なくとも1ヶ月以上はリタイア確実だな。」
スプルーアンスはそう言った。マイントの目には、いかにも廃艦寸前のボロ船に見えたが、それでも直せると聞いた彼は、いかにアメリカという国の技術力が優れているか、
彼の言葉を聞いてやや驚いた。スプルーアンス本人の表情は、いつもと変わらない冷静なものである。
サイフェルバン軍事都市の攻防は、バーマント側にとって非常に厳しいものだった。上陸初日に行った騎兵突撃は
騎兵が全滅したため失敗に終わっている。この時、米側も24人が同士撃ちで死傷してしまった。
7月5日にはバーマント第2歩兵師団と、第3重装騎士旅団が、米側橋頭堡に対して夜間強襲をかけた。バーマント軍は米橋頭堡に何度も何度も押し寄せてきた。
特に第3波の重装騎士による突撃は壮絶で、陸軍第27歩兵師団の第1線陣地を突破し、その際に陸軍兵多数を負傷させて第2線陣地に追いやるという奮迅ぶりだった。
だが、バーマント側が想像もしなかった化け物が姿を現した。それはM-4シャーマン戦車である。見方の苦境を聞いて駆けつけてきたM-4シャーマン戦車は、
増援の歩兵と共にバーマント兵を叩きのめした。
シャーマンの主砲がうなると、一塊のバーマント兵が吹きとぶ。機銃が一薙ぎし、たちまちバタバタと打ち倒されて死屍累々と敵兵が転がった。最後にはほうほうの体でバーマント兵は逃げ散っていった。
攻撃は第7波まで続いたが、いずれも猛烈な(彼らからして)銃砲火の前に力尽きた。最も、米側に関して言うと、重火器はいつもと違って少なめの使用だった。
米側は戦死78名、負傷者240名を出したが、バーマント側は戦死12000、負傷5000を出して2つの戦闘団は壊滅し、作戦地図から消えた。
翌6日、米側はついにサイフェルバンを落としにかかった。まず、サイフェルバンの北にある精油所に第4海兵師団が襲い掛かった。
精油所は、橋頭堡に年へと繋ぐ道を分断されていたため、増援が来なかった。ここの守備隊は銃器装備の第64歩兵旅団7000人だった。このバーマント兵たちも勇敢に戦ったが、夕方には装備優秀な米海兵隊に押され、
現地司令官はついに精油所の爆破を敢行した。だが、油タンク1つか爆発を起こしたのみで、残りの爆破チームや仕掛け済みの爆薬は、海兵隊に確保されていた。隣接していた2個のタンクが誘爆で吹き飛んだが、製油施設に被害は無く、
他にも大小12個の油タンクが米側の手に落ちた。
バーマント側の残兵3000は米側に降伏し、捕虜となった。
8日午前には、米側は年の30%を確保し、軍港も奪取された。バーマント側は5万以上の死傷者を出す甚大な損害を被っており、サイフェルバンの総司令部では、増援が得られなければ、少なくとも2ヶ月で陥落すると判断した。
騎兵が全滅したため失敗に終わっている。この時、米側も24人が同士撃ちで死傷してしまった。
7月5日にはバーマント第2歩兵師団と、第3重装騎士旅団が、米側橋頭堡に対して夜間強襲をかけた。バーマント軍は米橋頭堡に何度も何度も押し寄せてきた。
特に第3波の重装騎士による突撃は壮絶で、陸軍第27歩兵師団の第1線陣地を突破し、その際に陸軍兵多数を負傷させて第2線陣地に追いやるという奮迅ぶりだった。
だが、バーマント側が想像もしなかった化け物が姿を現した。それはM-4シャーマン戦車である。見方の苦境を聞いて駆けつけてきたM-4シャーマン戦車は、
増援の歩兵と共にバーマント兵を叩きのめした。
シャーマンの主砲がうなると、一塊のバーマント兵が吹きとぶ。機銃が一薙ぎし、たちまちバタバタと打ち倒されて死屍累々と敵兵が転がった。最後にはほうほうの体でバーマント兵は逃げ散っていった。
攻撃は第7波まで続いたが、いずれも猛烈な(彼らからして)銃砲火の前に力尽きた。最も、米側に関して言うと、重火器はいつもと違って少なめの使用だった。
米側は戦死78名、負傷者240名を出したが、バーマント側は戦死12000、負傷5000を出して2つの戦闘団は壊滅し、作戦地図から消えた。
翌6日、米側はついにサイフェルバンを落としにかかった。まず、サイフェルバンの北にある精油所に第4海兵師団が襲い掛かった。
精油所は、橋頭堡に年へと繋ぐ道を分断されていたため、増援が来なかった。ここの守備隊は銃器装備の第64歩兵旅団7000人だった。このバーマント兵たちも勇敢に戦ったが、夕方には装備優秀な米海兵隊に押され、
現地司令官はついに精油所の爆破を敢行した。だが、油タンク1つか爆発を起こしたのみで、残りの爆破チームや仕掛け済みの爆薬は、海兵隊に確保されていた。隣接していた2個のタンクが誘爆で吹き飛んだが、製油施設に被害は無く、
他にも大小12個の油タンクが米側の手に落ちた。
バーマント側の残兵3000は米側に降伏し、捕虜となった。
8日午前には、米側は年の30%を確保し、軍港も奪取された。バーマント側は5万以上の死傷者を出す甚大な損害を被っており、サイフェルバンの総司令部では、増援が得られなければ、少なくとも2ヶ月で陥落すると判断した。
7月10日、午後4時 グリルバン
ここグリルバンは、サイフェルバンの東350キロにある内陸で、人口34000人が住む草原に囲まれた町である。ここの郊外には、バーマント軍の航空基地があった。
ここに駐留する部隊は第3、第4、第7、そして今日到着した援軍の第13と第14空中騎士団である。合計で400機以上の航空兵力が集結している。
指揮所でそれを眺めていた初老の男がつぶやいた。
「あれが、今日私が同行することになっている第13空中騎士団、通称夜の悪魔か」
よく見ると、第13空中騎士団のパイロットはどれもこれもくせのありそうな顔立ちをしている。中には悪魔がそのまま姿を現したかのような、恐ろしい顔つきのものもいる。
彼らこそ、夜間爆撃専門の特殊技能を持つ者達だ。彼らは開戦以来もっぱら夜間空襲を行ってきた。任務内容は夜間の都市爆撃から戦場支援、航行中の船撃滅など様々で、
彼らはその困難な任務を次々とこなしていた。また、攻撃方法が通常は一撃で十分なのを何度も何度も繰り返し反復爆撃して、相手の完全撃滅を徹底することから、
味方から夜の悪魔、敵からは吸血鬼とあだ名されている。
それに機体もこれまでとは違う機体だ。他の機体と比べると、少し大きく、かつ早そうに見える。
「まるで血に飢えた獣を見る目ですな?」
ふと、男の声が聞こえてきた。どこか陽気な声である。振り返ると、士官の服を着た男がいた。顔は端整ながらよく日焼けしている。顔を真一文字に横切る傷跡が、
その男の雰囲気をすごいものにしている。体つきはがっしりしており、総合的にたくましく見える。
ここグリルバンは、サイフェルバンの東350キロにある内陸で、人口34000人が住む草原に囲まれた町である。ここの郊外には、バーマント軍の航空基地があった。
ここに駐留する部隊は第3、第4、第7、そして今日到着した援軍の第13と第14空中騎士団である。合計で400機以上の航空兵力が集結している。
指揮所でそれを眺めていた初老の男がつぶやいた。
「あれが、今日私が同行することになっている第13空中騎士団、通称夜の悪魔か」
よく見ると、第13空中騎士団のパイロットはどれもこれもくせのありそうな顔立ちをしている。中には悪魔がそのまま姿を現したかのような、恐ろしい顔つきのものもいる。
彼らこそ、夜間爆撃専門の特殊技能を持つ者達だ。彼らは開戦以来もっぱら夜間空襲を行ってきた。任務内容は夜間の都市爆撃から戦場支援、航行中の船撃滅など様々で、
彼らはその困難な任務を次々とこなしていた。また、攻撃方法が通常は一撃で十分なのを何度も何度も繰り返し反復爆撃して、相手の完全撃滅を徹底することから、
味方から夜の悪魔、敵からは吸血鬼とあだ名されている。
それに機体もこれまでとは違う機体だ。他の機体と比べると、少し大きく、かつ早そうに見える。
「まるで血に飢えた獣を見る目ですな?」
ふと、男の声が聞こえてきた。どこか陽気な声である。振り返ると、士官の服を着た男がいた。顔は端整ながらよく日焼けしている。顔を真一文字に横切る傷跡が、
その男の雰囲気をすごいものにしている。体つきはがっしりしており、総合的にたくましく見える。
「いや、そうではないよ。精鋭とはこういうものかな、と思ってな。」
「そうですか。私は第13空中騎士団飛行隊長のミロウル・ダルキア中佐と申します。あなたがかの有名な。」
「クリル・グロルズだ。別に有名にはなりたくなかったさ。ただ探知魔法系がよくできるかの違いだけだよ。」
初老の男、クリル・グロルズは苦笑しながら、白髪交じりの頭をかいた。彼は生命反応の探知魔法が人よりもかなり使えることができ、
その筋ではバーマント1とうたわれているほどで、彼自身、何度も地上戦を渡り歩いている。グロルズは現在、魔法使いながら、騎士中将の位を持っており、
2ヶ月前までは士官学校の教頭を務めていた。
「それでも、私はかの有名なグロルズ中将に会えることを光栄に思っております。」
「そうか。まあ、老いた今となっても、このような重要な作戦に参加できるということは私もうれしいよ。」
彼は本心でそういった。
「グロルズ閣下、まもなく作戦の説明がありますので移動しましょう。」
ダルキア中佐は、グロルズを外に連れ出した。第13空中騎士団が装備する機体は、BA-2と呼ばれる飛空挺で、6月に生産が始まったばかりの新型機である。
BA-1と呼ばれる飛空挺は、これまで使われた機体で、一部を除いて防御力強化型のBA-1B型が既に前線に配備されている。
それでも性能が不足している考えた上層部は、BA-1Bの生産を終了し、後継機であるBA-2を生産し、一部の部隊に既に引渡しを始めた。
このBA-2は、スピードが400キロ、航続距離1800キロ、爆弾搭載量が450キロで、前の機種のBA-1と比べて性能が大幅にアップしている。
しかし、故障もまだ多く、墜落事故も何件か起きている。
第13空中騎士団も、司令官がテスト飛行中に墜落事故が起きてしまい、司令官は全治半年の重傷を負っているので、副司令官のイーレル大佐が指揮を執っている。
指揮所の前に立っているダルキア中佐とグロルズ中将を取り囲むようにパイロット全員が集まった。パイロットは第13空中騎士団の兵員のみである。
「そうですか。私は第13空中騎士団飛行隊長のミロウル・ダルキア中佐と申します。あなたがかの有名な。」
「クリル・グロルズだ。別に有名にはなりたくなかったさ。ただ探知魔法系がよくできるかの違いだけだよ。」
初老の男、クリル・グロルズは苦笑しながら、白髪交じりの頭をかいた。彼は生命反応の探知魔法が人よりもかなり使えることができ、
その筋ではバーマント1とうたわれているほどで、彼自身、何度も地上戦を渡り歩いている。グロルズは現在、魔法使いながら、騎士中将の位を持っており、
2ヶ月前までは士官学校の教頭を務めていた。
「それでも、私はかの有名なグロルズ中将に会えることを光栄に思っております。」
「そうか。まあ、老いた今となっても、このような重要な作戦に参加できるということは私もうれしいよ。」
彼は本心でそういった。
「グロルズ閣下、まもなく作戦の説明がありますので移動しましょう。」
ダルキア中佐は、グロルズを外に連れ出した。第13空中騎士団が装備する機体は、BA-2と呼ばれる飛空挺で、6月に生産が始まったばかりの新型機である。
BA-1と呼ばれる飛空挺は、これまで使われた機体で、一部を除いて防御力強化型のBA-1B型が既に前線に配備されている。
それでも性能が不足している考えた上層部は、BA-1Bの生産を終了し、後継機であるBA-2を生産し、一部の部隊に既に引渡しを始めた。
このBA-2は、スピードが400キロ、航続距離1800キロ、爆弾搭載量が450キロで、前の機種のBA-1と比べて性能が大幅にアップしている。
しかし、故障もまだ多く、墜落事故も何件か起きている。
第13空中騎士団も、司令官がテスト飛行中に墜落事故が起きてしまい、司令官は全治半年の重傷を負っているので、副司令官のイーレル大佐が指揮を執っている。
指揮所の前に立っているダルキア中佐とグロルズ中将を取り囲むようにパイロット全員が集まった。パイロットは第13空中騎士団の兵員のみである。
「諸君!今回の作戦はこれまで以上にきわめて困難なものになるだろう!」
中佐の明瞭な声が響き渡った。
「今回、我々が討ち取るべき敵は、これまでとは全く次元が違うものである。今夜、日没を合図に、我が第13空中騎士団は、
稼動全機をもって洋上の異世界軍、あのにくきアメリカ機動部隊を攻撃する!」
その言葉を聞いたパイロット達は、全員が緊張した顔つきになった。
これまでの3週間、彼らは新鋭の機体を使って彼らは必死に水切り爆撃の訓練を海で行ってきた。先日の航空戦で壊滅した
フラッカル少尉から聞いた話では、たまたま敢行した水きり爆撃で、異世界軍の飛空挺母艦にかなりの損傷を与えたと言っていた。
それで、パイロット達は必死に水切り爆撃、米軍呼称、スキップボミングを訓練してきたのである。
訓練はとても厳しいもので、事故機も出た。実に6機が事故で失われ、5人が帰らぬ身となっている。
だが、パイロットは3週間というかなり短い期間で夜間水切り爆撃をマスターしたのである。すべては空から味方を苦しめ続ける
あの卑劣な飛空挺母艦を叩き沈めるため・・・・
その思いが、血を吐くような猛訓練を耐え続ける原動力となった。
そして、ついにその宿敵との対決が来た。くるべきものがついに来たのである。
「アメリカ第5艦隊という異世界軍が、数日前にサイフェルバンに来襲したことは知っているだろう。そのサイフェルバン沖には、今もあの憎き
敵高速機動部隊が居座り続けている。今回の作戦では、我々は夜間にこの敵艦隊を襲う。なぜ夜に襲うのかと、不思議に思うものもいるだろう。
昼間、敵の高速飛空挺は常に艦隊や上陸部隊の上空を多数がうろうろしている。だが、夜間にはその飛空挺が全く上がっていないことが、
海竜情報収集隊によって明らかになった。」
どよめきがパイロットの間で起きた。米機動部隊の上空援護を任されているF6Fは、バーマントのパイロットに白星の毒蜂とあだなされ、恐れられている。
その高速性能を持つF6Fにたかられれば、戦闘機を持たない空中騎士団はばたばた落とされてしまう。
中佐の明瞭な声が響き渡った。
「今回、我々が討ち取るべき敵は、これまでとは全く次元が違うものである。今夜、日没を合図に、我が第13空中騎士団は、
稼動全機をもって洋上の異世界軍、あのにくきアメリカ機動部隊を攻撃する!」
その言葉を聞いたパイロット達は、全員が緊張した顔つきになった。
これまでの3週間、彼らは新鋭の機体を使って彼らは必死に水切り爆撃の訓練を海で行ってきた。先日の航空戦で壊滅した
フラッカル少尉から聞いた話では、たまたま敢行した水きり爆撃で、異世界軍の飛空挺母艦にかなりの損傷を与えたと言っていた。
それで、パイロット達は必死に水切り爆撃、米軍呼称、スキップボミングを訓練してきたのである。
訓練はとても厳しいもので、事故機も出た。実に6機が事故で失われ、5人が帰らぬ身となっている。
だが、パイロットは3週間というかなり短い期間で夜間水切り爆撃をマスターしたのである。すべては空から味方を苦しめ続ける
あの卑劣な飛空挺母艦を叩き沈めるため・・・・
その思いが、血を吐くような猛訓練を耐え続ける原動力となった。
そして、ついにその宿敵との対決が来た。くるべきものがついに来たのである。
「アメリカ第5艦隊という異世界軍が、数日前にサイフェルバンに来襲したことは知っているだろう。そのサイフェルバン沖には、今もあの憎き
敵高速機動部隊が居座り続けている。今回の作戦では、我々は夜間にこの敵艦隊を襲う。なぜ夜に襲うのかと、不思議に思うものもいるだろう。
昼間、敵の高速飛空挺は常に艦隊や上陸部隊の上空を多数がうろうろしている。だが、夜間にはその飛空挺が全く上がっていないことが、
海竜情報収集隊によって明らかになった。」
どよめきがパイロットの間で起きた。米機動部隊の上空援護を任されているF6Fは、バーマントのパイロットに白星の毒蜂とあだなされ、恐れられている。
その高速性能を持つF6Fにたかられれば、戦闘機を持たない空中騎士団はばたばた落とされてしまう。
しかし、そのF6Fが夜間に飛べないとすれば、敵艦隊に取り付けられる飛空挺の数は一気に多くなる。
願っても無い好機。そしてその任をこなせるのは、俺たち第13空中騎士団しかいないではないか!
パイロット達は最初、休暇を取り消されてすぐにここに移動したため、ぶうぶう不平を言っていたが、
この話を聞いて気持ちが入れ替わった。
「そこで、わが空中騎士団が、明日の航空総攻撃に先立ち、敵に痛撃を与えようというのだ。
攻撃隊の誘導は、ここにおられるグロルズ閣下を私が乗せ、閣下の探知魔法を頼りに敵に向かう。
知っているものもいると思うが、閣下は探知魔法系の権威でもある。」
「私がグロルズだ。今回、勇猛の誉れ高い君たちと再び戦えることができ、私もうれしい。
私は飛空挺は初めてだが、諸君らの足は絶対に引っ張りはしない。私の持つ魔法で、諸君らを必ず、
敵艦隊まで誘導する。共に敵艦が沈む姿をながめようではないか!」
パイロットたちは頬を紅潮さえながら話を聞いていた。その目の奥には熱い炎が燃えたぎっていた。
願っても無い好機。そしてその任をこなせるのは、俺たち第13空中騎士団しかいないではないか!
パイロット達は最初、休暇を取り消されてすぐにここに移動したため、ぶうぶう不平を言っていたが、
この話を聞いて気持ちが入れ替わった。
「そこで、わが空中騎士団が、明日の航空総攻撃に先立ち、敵に痛撃を与えようというのだ。
攻撃隊の誘導は、ここにおられるグロルズ閣下を私が乗せ、閣下の探知魔法を頼りに敵に向かう。
知っているものもいると思うが、閣下は探知魔法系の権威でもある。」
「私がグロルズだ。今回、勇猛の誉れ高い君たちと再び戦えることができ、私もうれしい。
私は飛空挺は初めてだが、諸君らの足は絶対に引っ張りはしない。私の持つ魔法で、諸君らを必ず、
敵艦隊まで誘導する。共に敵艦が沈む姿をながめようではないか!」
パイロットたちは頬を紅潮さえながら話を聞いていた。その目の奥には熱い炎が燃えたぎっていた。
7月10日 午後10時 サイフェルバン沖西150マイル
「ふぁああ~、今日もつかれたな~。」
あてがわれた個室に入ってくるなり、リリア・フレイド魔道師は猫のように背をのけぞらせて姿勢を伸ばした。
彼女はこの第58任務部隊旗艦である空母レキシントンⅡに、オブザーバーとして乗り込んでいる。
オブザーバーとしての仕事はかなり重労働である。連日、レキシントンの飛行長や艦長、
あるいは司令官のミッチャー中将やバーク参謀長と連日話し合いをしている。そのため、朝早くから夜遅くまで
艦橋やCIC、格納甲板などに移動を繰り返すため、かなり疲れる。
最初は簡単だと楽観していたが、それはとんでもない。むしろあれこれ神経を使うため大変である。
だが、同時にやりがいのある仕事でもあった。疲れはするが、意外と楽しい。それが彼女の印象だった。
「明日もまた忙しくなりそうだわ。」
そう言いながら、彼女はメガネをはずし、寝間着に着替えるとベッドに大の字になって寝込んだ。
やがて、彼女の意識は、まどろみの底へと落ちていった。
「ふぁああ~、今日もつかれたな~。」
あてがわれた個室に入ってくるなり、リリア・フレイド魔道師は猫のように背をのけぞらせて姿勢を伸ばした。
彼女はこの第58任務部隊旗艦である空母レキシントンⅡに、オブザーバーとして乗り込んでいる。
オブザーバーとしての仕事はかなり重労働である。連日、レキシントンの飛行長や艦長、
あるいは司令官のミッチャー中将やバーク参謀長と連日話し合いをしている。そのため、朝早くから夜遅くまで
艦橋やCIC、格納甲板などに移動を繰り返すため、かなり疲れる。
最初は簡単だと楽観していたが、それはとんでもない。むしろあれこれ神経を使うため大変である。
だが、同時にやりがいのある仕事でもあった。疲れはするが、意外と楽しい。それが彼女の印象だった。
「明日もまた忙しくなりそうだわ。」
そう言いながら、彼女はメガネをはずし、寝間着に着替えるとベッドに大の字になって寝込んだ。
やがて、彼女の意識は、まどろみの底へと落ちていった。
だが、突然耳障りな音が彼女を眠りの底からたたき起こした。
「なっ、何!?」
リリアははっとなってベッドから跳ね起きた。けたたましい音が艦内中に鳴り響き、ドアの外では怒号や、
ドタドタという何かが慌ただしく走り去っていく音が聞こえた。
何かよからぬものが迫っている!彼女はそう思うと、眠気が綺麗さっぱり吹き飛んだ。
「敵編隊接近!総員戦闘配置!総員戦闘配置!」
スピーカーから緊迫した声が鳴り響いた。
「なっ、何!?」
リリアははっとなってベッドから跳ね起きた。けたたましい音が艦内中に鳴り響き、ドアの外では怒号や、
ドタドタという何かが慌ただしく走り去っていく音が聞こえた。
何かよからぬものが迫っている!彼女はそう思うと、眠気が綺麗さっぱり吹き飛んだ。
「敵編隊接近!総員戦闘配置!総員戦闘配置!」
スピーカーから緊迫した声が鳴り響いた。