自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

08 修正版

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匿名ユーザー

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修正板を投下します。

遠くから黒っぽい軍艦がやって来た。目測でだいぶ離れたところからスピードを落とし始めた。
おそらく6000ぐらいからだろう。プラットンはそう判断した。
その軍艦はゆっくりとスピードを落とすと、ヴァイアン号から300メートル離れた所で停船した。
重巡洋艦のキャンベラは、ゆっくりとしたスピードで不審船に近づいていた。やがて
不審船の全体が明らかになってきた。
2本の帆つきマストに中央の船橋。まぎれもなく中世風の木造船だ。船首はやけに細い。
おおかた高速性を増すために細く作ったのだろうか。
艦長のブラッシュ・カー大佐は素っ頓狂な声を上げた。
「こいつぁたまげたぞ。ひどい旧式の帆船だ。これじゃせいぜい16ノットが限界だな。」
「16ノットですが・・・・輸送船並みですな。」
副長が相槌をうってくる。カー大佐はがっしりした体形に鼻の下にコールマン髭を生やしている。
その顔の左頬には6センチにも渡る傷跡が残っている。
一目で見るとどこぞかの戦場を潜り抜けてきた戦士の印象がある。
不審船少し過ぎた所でキャンベラは停止した。彼は砲術長に命令を下した。
「砲撃戦用意!目標は不審船。」
彼がそう叫ぶと、左舷の5インチ連装両用砲と各機銃が不審船にぴたりと狙いを定めた。
何か不審なそぶりを見せたら、例えば舷側から口を開けている大砲が火を噴いたら即座に
発砲する予定だった。
(5インチ砲や機銃が火を噴いたら、この近距離だ。まともに食らって穴だらけに
されるだろう。できれば撃ちたくないものだな。)
カー艦長は、そう心の中で思った。

「すごいぞこれは!たまげたもんだ!」
カー艦長と似たようなことを口走っている者がここにもいた。ヴァイアン号船長
プラットン船長である。
煙突からもうもうと煙を上げ、船特有の揺れが少ないその船は、全体的に黒く、
ごつごつとした感じだ。それでいて何かと美しい印象を持つ形をしていた。
細長い感じの大砲が1個の砲塔に3門つなげられ、それが前部2基、後部1基、
合計3基もある。砲の口径もこのヴァイアン号の7センチ砲より大きいだろう。
それだけではなく、さらに幾つもの副砲らしき物がある、大砲を2つずつ繋げた
砲塔が4個もある。恐るべき重火力だ。
その時、停船してきた船がいきなり小さな副砲を向けた。それに乗員らしきものが
何かのカバーを取り、そこから出てきたまたまた小さな砲を彼らに向けている。
「おいおい!俺達はなんもしてねえぞ!それなのに砲撃で沈める気か!?」
船員たちの声が聞こえた。いきなり大砲を向けられたことに驚いているようだ。
「おめえら!絶対に大砲に触れるんじゃねえぞ!相手はでかい。それに頑丈そうだ。
1発や2発食らわせても勝てっこねえ。逆にこっちがやられるだろう。いいか、絶対に
撃つんじゃねえぞ!」
プラットン船長は大声でそう叫んだ。浮き足立っていた船員も、彼の大渇に足を止め、
そして頷いた。
彼はすぐ右にいるリリアに声をかけた。
「おい、魔道師さん。アレを見てどう思う?」
「はあ、私が見た限り、アレは鉄でできていますね。」
「鉄だって!?」
彼は驚いた。鉄の船が浮くはずは無いとかれは反論した。
「いいえ。アレは見た限り鉄です。私も信じられない思いですが・・・・」
「まあ、俺も同じだ。ところで・・・・・あっちの言葉分かるのかい?あの、70
と数字の書いた船の乗員の言葉を。」
彼が聞くと、リリアは黙った。
「おい、もしや・・・・」
分からないのかい?と言おうとした時、不意に言葉が聞こえた。それも鉄の船のほうから。
「こちらはアメリカ合衆国海軍重巡洋艦キャンベラである。こちらの言葉が分かるか?分かるのなら
その白旗を4回振れ。」
聞こえそうも無いのだが、どことなく大きな声が鉄の船から聞こえてきた。よく見てみると船の甲板に
何人かの人が見える。それでも大声出して明瞭に聞こえる距離ではない。
(まあ、そんなのは後だ)
彼はそう思い、白旗を4回振った。
「なんだ。相手の言葉も分かるじゃないか。これなら問題ないな。」
彼はそう呟くと、またもや船、キャンベラから声が届いた。
「よし。これより貴船の臨検を行いたい。許可するなら旗を2回振れ。」
プラットン船長は旗を2回振った。
「それではこれより貴船に近寄る。」
この言葉を皮切りに会話は終わった。重巡キャンベラは舷側に用意してあった小さな
ボートを海に下ろし始めた。

その時、上空の鳥が右舷方向の海面に降下を始めた。エンジンの唸り声が響き渡り
猛禽のような勢いで海面に突っ込んでいく。
「なっなんだ!?」
プラットン船長は仰天した。まさか、海に突っ込むつもりか!?アベンジャーの降下に
驚いた乗員は誰もがそう思った。その時、胴体から何かが落とされた。
それは2個あった。それを胴体から落とすと、「鳥」は機首を上げて上昇に移った。2個
の小さな物体が海面に落下した。直後、猛烈な水柱が2個も上がった。
何かがバラバラになりながら吹き上げられた。そう、海竜だ!海竜とは、5月4日に第58・2任務郡の
護衛艦を襲ったあの巨大海蛇である。
時を置いてドーン!という爆発音が鳴り響いた。腹にこたえる音だ。乗員の誰もが、いきなりの
化け物退治に度肝を抜かれた。
「す・・・・・すげえ。」
プラットン船長も例外ではなかった。海竜はアベンジャーが爆弾を叩き込んだ1匹だけで他には見えなかった。

20分後、あたりは暗くなりつつあった。夕焼けがうっすらとオレンジ色の光を放つ中、上空には
星が見え始めていた。
重巡洋艦のキャンベラはヴァイアン号に向けて内火艇を発進させた。やがて、内火艇はヴァイアン号に到着した。
相変わらず副砲らしきものは向けられていた。臨検の武装兵が垂らされた縄梯子を使ってヴァイアン号に乗船した。
臨検班の班長であるアルバート・グレグソン少佐は、船長らしき人物に声をかけた。
「あなたが船長ですか?」
その人物は白いラフなシャツに黒いズボンらしきものを履いているが、その人物が部下を仕切っている姿
を見たグレグソン少佐は、彼だろうと思って聞いてみたのだ。
「そうです。私が船長のプラットンです。」
「私は臨検班長のグレグソン少佐です。これより貴船を臨検いたします。」
彼はカッと踵をあわせ、敬礼した。

その時、3人の男女が彼の前に現れた。1人は中年の男性で2人は若い女性だった。
「失礼だが、ちょっと質問してもいいですか?」
中年の男が聞いてきた。
「あなたは?」
「私はヴァルレキュア王国第5騎士団長、フランクス将軍です。」
「私はグレグソン少佐です。」
互いに紹介し合うと、いきなり女性の一人が聞いてきた。
「あの、グレグソン少佐。あなたは5日前に何か感じませんでした?」
「リーソン。いきなりどうした?ちょっと待て。」
フランクス将軍が止めに入る。
「将軍閣下、別に構いません。ええ、確かに何かを感じましたよ。あの時、視界が一瞬
真っ白になって、嵐がやんだら、あなた方の世界に連れてこられたのですよ。」
彼は口調に怒りを込めながら言った。内心ではこんな世界に連れてこられた事を恨んでいた。
「もしや、あなた方が・・・・・私たちを連れてきたのですか?」
「そうです。」
彼女は即答した。その時、彼は別の事に思い至った。普通ならこいつらを海に叩き込んでやりたい
と思うだろう。だが、それとは違う方向になった。
「あ、あの・・・・・どうかしました?」
唖然となった米海軍将兵を見て彼女は戸惑いを見せた。グレグソン少佐は後ろを振り返った。そして
誰もが同じように驚いた表情を見せた。
「少佐・・・・・・気づきましたか?彼女の声・・・・・・」
一人の下士官が声を忍ばせて言う。彼も頷いた。
「ああ・・・・・・これは、東京ローズの声だ。」
彼ははっとなってそれどころではないと言うと、彼女に向き直った。
「いえ、何でもありません。とりあえず、臨検を済ませてからあなた方の話は詳しく聞かせて
もらいます。」
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