7月3日 午前6時 ララスクリス沖12キロ
アメリカ艦隊から分派されてきた砲撃部隊は、二手に分かれてそれぞれの所定位置に向かっていった。
このうち、ララスクリス砲撃部隊は、戦艦ニュージャージー、重巡洋艦キャンベラ、ニューオリンズ、
ウィチタ、軽巡洋艦モービル、ビロキシ、駆逐艦ブラッドフォード、ブラウン、バーンズ以下3隻で
編成されている。上空には護衛役のF6F30機が旋回している。
この世界は元の世界と違ってこの時間はまだ暗めである。太陽が昇りかけているため、明るくなりはじ
めているが、それでも大分暗い。
艦隊は20ノットのスピードでララスクリスの南から砲撃を始めようとしていた。
戦艦ニュージャージ艦長のアロート・グリーンウッド大佐は双眼鏡を下げて命令を発した。
「左砲戦用意!」
彼がそう叫ぶと、命令を受け取った砲術長が各部に伝える。艦橋より前にある16インチ(40センチ)
長砲身砲3連装2基、後部の3連装1基がゆっくりと左側の陸地に向けられる。
目標は海岸付近にある簡易式の要塞である。この要塞は上陸してきた敵に対して作られたもので、ここから
防御壁沿いに弓矢や石といった物を上陸してきた敵にはなって迎え撃つというものだ。
今で言うとトーチカ群のようなものだ。その簡易要塞に向けて、9門の16インチ砲が向けられた。
観測機からの報告がCICに届けられ、そこから砲術長に伝達される。それを元に、測的が進められる。
従来ならばレーダー射撃でやりたいのだが、レーダー射撃は敵の水上艦に対して行うものだから、陸上
砲撃では使えない。手間は掛かるがこのように測的をしながらやるしかない。
「発射準備よし!」
砲術長の声が電話から聞こえた。そして彼は命令を発した。
「撃ち方はじめぇ!!」
グリーンウッド大佐が叫ぶと、16インチ砲が待ってましたとばかりに砲撃を始めた。ズドォーン!!という
猛烈な轟音が響き、各砲塔の1番砲が閃光と共に火を噴いた。
最初は弾着観測のため、各砲塔の1門ずつを撃つ。このやり方は交互撃ち方と呼ばれる方法である。
この交互撃ち方で目標を完全に捉えたら、次は9門全てを使っての一斉撃ち方に入る。
アメリカ艦隊から分派されてきた砲撃部隊は、二手に分かれてそれぞれの所定位置に向かっていった。
このうち、ララスクリス砲撃部隊は、戦艦ニュージャージー、重巡洋艦キャンベラ、ニューオリンズ、
ウィチタ、軽巡洋艦モービル、ビロキシ、駆逐艦ブラッドフォード、ブラウン、バーンズ以下3隻で
編成されている。上空には護衛役のF6F30機が旋回している。
この世界は元の世界と違ってこの時間はまだ暗めである。太陽が昇りかけているため、明るくなりはじ
めているが、それでも大分暗い。
艦隊は20ノットのスピードでララスクリスの南から砲撃を始めようとしていた。
戦艦ニュージャージ艦長のアロート・グリーンウッド大佐は双眼鏡を下げて命令を発した。
「左砲戦用意!」
彼がそう叫ぶと、命令を受け取った砲術長が各部に伝える。艦橋より前にある16インチ(40センチ)
長砲身砲3連装2基、後部の3連装1基がゆっくりと左側の陸地に向けられる。
目標は海岸付近にある簡易式の要塞である。この要塞は上陸してきた敵に対して作られたもので、ここから
防御壁沿いに弓矢や石といった物を上陸してきた敵にはなって迎え撃つというものだ。
今で言うとトーチカ群のようなものだ。その簡易要塞に向けて、9門の16インチ砲が向けられた。
観測機からの報告がCICに届けられ、そこから砲術長に伝達される。それを元に、測的が進められる。
従来ならばレーダー射撃でやりたいのだが、レーダー射撃は敵の水上艦に対して行うものだから、陸上
砲撃では使えない。手間は掛かるがこのように測的をしながらやるしかない。
「発射準備よし!」
砲術長の声が電話から聞こえた。そして彼は命令を発した。
「撃ち方はじめぇ!!」
グリーンウッド大佐が叫ぶと、16インチ砲が待ってましたとばかりに砲撃を始めた。ズドォーン!!という
猛烈な轟音が響き、各砲塔の1番砲が閃光と共に火を噴いた。
最初は弾着観測のため、各砲塔の1門ずつを撃つ。このやり方は交互撃ち方と呼ばれる方法である。
この交互撃ち方で目標を完全に捉えたら、次は9門全てを使っての一斉撃ち方に入る。
待つ事少し。陸地に3つの閃光が走った。
「目標付近に1弾命中。」
観測機からの報告が入る。その後に2番砲が発射される。
「目標付近に命中なし。」
グリーンウッド大佐は双眼鏡で陸地を眺める。バーマント側の要塞がある海岸付近は、薄暗くて少し見えにくい。
「6発中1発か。まあ最初はこなもんだろう。」
彼はそう呟いた。その呟きをかき消すかのようにドーン!という音と共に3番砲が火を噴く。
交互撃ち方をこの後3回やったとこで、命中弾は3発に2発が簡易要塞の所に着弾していた。
「一斉撃ち方!!」
艦長は頃合良しと決め、砲術長にそう命じた。そして待つ事40秒。
ズドドドーーーン!!9門の16インチ砲は一斉に放たれた。その衝撃はさきの交互撃ち方と比べ物に
ならない。衝撃でニュージャージーは右舷側に少し傾いた。
そして少しの時間が経ち、海岸地点が9個の閃光に包まれた。その後、猛烈な噴煙が火山の爆発の
ように湧き上がった。
その時、ニュージャージーから3000メートル左舷側に水柱が立ち上がった。合計で6つの水柱が立ち上がる。
よく見ると、海岸陣地の南側の一角から閃光が走っている。
「敵の砲弾だ。バーマントの奴ら、我慢できなくて撃ってきやがったな。」
その閃光めがけて、軽巡洋艦のモービル、ビロキシが6インチ砲弾を叩き込んだ。合計で24門の
速射砲の威力は凄まじかった。一分間の間にモービル、ビロキシは4回一斉砲撃を行った。
発射された砲弾は合計で120発にも上る。
たちまちバーマント軍の砲台は沈黙を余儀なくされた。その直後、砲兵陣地が大爆発を起こした。
砲弾の1発は弾薬庫を直撃し、呼び弾薬を粉みじんに粉砕してのである。
重巡キャンベラ、ニューオリンズ、ウィチタ、駆逐艦も加わった艦砲射撃は一層苛烈さを増した。
今やバーマント軍の海岸要塞は、着弾の噴煙で見えなくなっていた。
「目標付近に1弾命中。」
観測機からの報告が入る。その後に2番砲が発射される。
「目標付近に命中なし。」
グリーンウッド大佐は双眼鏡で陸地を眺める。バーマント側の要塞がある海岸付近は、薄暗くて少し見えにくい。
「6発中1発か。まあ最初はこなもんだろう。」
彼はそう呟いた。その呟きをかき消すかのようにドーン!という音と共に3番砲が火を噴く。
交互撃ち方をこの後3回やったとこで、命中弾は3発に2発が簡易要塞の所に着弾していた。
「一斉撃ち方!!」
艦長は頃合良しと決め、砲術長にそう命じた。そして待つ事40秒。
ズドドドーーーン!!9門の16インチ砲は一斉に放たれた。その衝撃はさきの交互撃ち方と比べ物に
ならない。衝撃でニュージャージーは右舷側に少し傾いた。
そして少しの時間が経ち、海岸地点が9個の閃光に包まれた。その後、猛烈な噴煙が火山の爆発の
ように湧き上がった。
その時、ニュージャージーから3000メートル左舷側に水柱が立ち上がった。合計で6つの水柱が立ち上がる。
よく見ると、海岸陣地の南側の一角から閃光が走っている。
「敵の砲弾だ。バーマントの奴ら、我慢できなくて撃ってきやがったな。」
その閃光めがけて、軽巡洋艦のモービル、ビロキシが6インチ砲弾を叩き込んだ。合計で24門の
速射砲の威力は凄まじかった。一分間の間にモービル、ビロキシは4回一斉砲撃を行った。
発射された砲弾は合計で120発にも上る。
たちまちバーマント軍の砲台は沈黙を余儀なくされた。その直後、砲兵陣地が大爆発を起こした。
砲弾の1発は弾薬庫を直撃し、呼び弾薬を粉みじんに粉砕してのである。
重巡キャンベラ、ニューオリンズ、ウィチタ、駆逐艦も加わった艦砲射撃は一層苛烈さを増した。
今やバーマント軍の海岸要塞は、着弾の噴煙で見えなくなっていた。
海岸陣地を守備していたのは、バーマント軍第45歩兵師団であった。第45歩兵師団第2騎士連隊
に所属する歩兵のジョア・レーリは、突然の轟音に跳ね起きた。
まるで近くに雷が落下したような音だ。彼女はそう思った。
「おい、ジョア。今のはなんだ!?」
同僚の男性兵が彼女に聞いてきた。壕内は埃が舞い上がっていて視界が悪かった。
「知らない。」
彼女はそう言ってかぶりを振った。一体何が起きたの?彼女の頭はその疑問で一杯になった。
だが、ヒュルルルルルルルという甲高い音が響いてきた、と思うと、いきなりダーン!!という
猛烈な轟音と、衝撃が大地を揺さぶった。
「きゃあ!」
ジョアは悲鳴を上げてその場に倒れこんだ。
「畜生、一体なんだってんだ!?」
同僚の男性兵は苛立ちまぎれに喚いた。ジョアは立ち上がると、海が見渡せる穴をのぞいた。
すると、沖合いから閃光が光った。ピカッと一瞬明るくなったそこに、何かの影が見えたが、
すぐに分らなくなった。
(今のは?)
彼女は見えた影に疑問に思った。すると、またもや甲高い音が聞こえてきた。そしてそれが大きくなった時に
ドーン!!という音と衝撃に揺さぶられた。
今度派ばかりはジョアは踏ん張って耐えた。着弾はジョアたちよりも左側に集中しているようだ。
(あそこに何かがある。その何かが、あたし達に攻撃を加えている!)
に所属する歩兵のジョア・レーリは、突然の轟音に跳ね起きた。
まるで近くに雷が落下したような音だ。彼女はそう思った。
「おい、ジョア。今のはなんだ!?」
同僚の男性兵が彼女に聞いてきた。壕内は埃が舞い上がっていて視界が悪かった。
「知らない。」
彼女はそう言ってかぶりを振った。一体何が起きたの?彼女の頭はその疑問で一杯になった。
だが、ヒュルルルルルルルという甲高い音が響いてきた、と思うと、いきなりダーン!!という
猛烈な轟音と、衝撃が大地を揺さぶった。
「きゃあ!」
ジョアは悲鳴を上げてその場に倒れこんだ。
「畜生、一体なんだってんだ!?」
同僚の男性兵は苛立ちまぎれに喚いた。ジョアは立ち上がると、海が見渡せる穴をのぞいた。
すると、沖合いから閃光が光った。ピカッと一瞬明るくなったそこに、何かの影が見えたが、
すぐに分らなくなった。
(今のは?)
彼女は見えた影に疑問に思った。すると、またもや甲高い音が聞こえてきた。そしてそれが大きくなった時に
ドーン!!という音と衝撃に揺さぶられた。
今度派ばかりはジョアは踏ん張って耐えた。着弾はジョアたちよりも左側に集中しているようだ。
(あそこに何かがある。その何かが、あたし達に攻撃を加えている!)
彼女はそう思うと、ある一つの事を思い出した。それは異世界軍が強力な大砲を持った軍艦を何隻
も持っているということ。もしや、その強力な大砲を持つ軍艦が、ここに来ているとしたら。
彼女は確信した。ここに異世界軍の軍艦がいることを。
「これは異世界軍の軍艦の砲撃よ!」
彼女がそう叫んだ時、新たな弾着音が轟いた。砲撃はますます苛烈さを増しているようだ。弾着音が
多くなっている。
「異世界軍は上陸前にここを綺麗さっぱり吹き飛ばすつもりなんだわ。」
ジョアはそう思うと、何かの思いが、頭の中で駆け巡るような感触がした。今までの思い出が
脳裏に浮かんでいる。父や母に一生懸命育てられた事、学校で男子に告白されたこと、村中の
中で一番の美人に選ばれた事、軍に入って厳しい訓練をマスターした事。
彼女が歩んできた20年の思い出が駆け巡っていた。その時、右側から何かの発射音が響いた。
はっとなって右側を見た。そこには砲兵部隊が沖合いの閃光に向かって砲弾を放っていた。
「撃っては駄目!」
ジョアはそう叫ぶと、200メートル先にある砲兵部隊の陣地に向かって走ろうとした。
その時、沖合いから多数の砲弾の飛翔音がした。
「ま、まさか・・・・・」
狙われた。そう思い立った時、無数の砲弾がドカドカと砲兵陣地の周りに落下してきた。
ドカンドカンドカン!!という爆発音が響き、ジョアは爆風で吹き飛ばされた。
彼女は知らなかったが、この時、軽巡モービルとビロキシはこの砲兵陣地に向かって実に120発
の6インチ砲弾を叩き込み、この砲兵陣地は完膚なきまでに叩き潰された。
も持っているということ。もしや、その強力な大砲を持つ軍艦が、ここに来ているとしたら。
彼女は確信した。ここに異世界軍の軍艦がいることを。
「これは異世界軍の軍艦の砲撃よ!」
彼女がそう叫んだ時、新たな弾着音が轟いた。砲撃はますます苛烈さを増しているようだ。弾着音が
多くなっている。
「異世界軍は上陸前にここを綺麗さっぱり吹き飛ばすつもりなんだわ。」
ジョアはそう思うと、何かの思いが、頭の中で駆け巡るような感触がした。今までの思い出が
脳裏に浮かんでいる。父や母に一生懸命育てられた事、学校で男子に告白されたこと、村中の
中で一番の美人に選ばれた事、軍に入って厳しい訓練をマスターした事。
彼女が歩んできた20年の思い出が駆け巡っていた。その時、右側から何かの発射音が響いた。
はっとなって右側を見た。そこには砲兵部隊が沖合いの閃光に向かって砲弾を放っていた。
「撃っては駄目!」
ジョアはそう叫ぶと、200メートル先にある砲兵部隊の陣地に向かって走ろうとした。
その時、沖合いから多数の砲弾の飛翔音がした。
「ま、まさか・・・・・」
狙われた。そう思い立った時、無数の砲弾がドカドカと砲兵陣地の周りに落下してきた。
ドカンドカンドカン!!という爆発音が響き、ジョアは爆風で吹き飛ばされた。
彼女は知らなかったが、この時、軽巡モービルとビロキシはこの砲兵陣地に向かって実に120発
の6インチ砲弾を叩き込み、この砲兵陣地は完膚なきまでに叩き潰された。
ジョアが目を開けたとき、周りはすっかり明るくなっていた。姿勢を起こすと、腹に激痛が
走った。腹に触れて見ると、何かが濡れていた。
手のひらを見ると、赤い液体、血がべっとりと付いていた。右頬にも横に深い切り傷が刻まれ、
彼女の美貌を血に染めていた。
「う・・・っ。」
痛みに顔をしかめ、目をつぶった。そして目を開けてみた。そこには、完全に叩き潰された6門
の大砲があった。大きな大砲は全てひしゃげ、砲兵の死体が散乱している。
砲兵陣地の右側に大きな穴が開いていて、そこから猛烈な火炎と黒煙が噴出している。弾薬庫が
爆発したのである。50人の砲兵は全員が戦死していた。
「そ、そんな・・・・・こんな事が。」
ジョアは悲しげな表情を浮かべてそう呟いた。その時、口からがふっと血を吐き出した。彼女は
そのまま仰向けになって目をつぶった。
走った。腹に触れて見ると、何かが濡れていた。
手のひらを見ると、赤い液体、血がべっとりと付いていた。右頬にも横に深い切り傷が刻まれ、
彼女の美貌を血に染めていた。
「う・・・っ。」
痛みに顔をしかめ、目をつぶった。そして目を開けてみた。そこには、完全に叩き潰された6門
の大砲があった。大きな大砲は全てひしゃげ、砲兵の死体が散乱している。
砲兵陣地の右側に大きな穴が開いていて、そこから猛烈な火炎と黒煙が噴出している。弾薬庫が
爆発したのである。50人の砲兵は全員が戦死していた。
「そ、そんな・・・・・こんな事が。」
ジョアは悲しげな表情を浮かべてそう呟いた。その時、口からがふっと血を吐き出した。彼女は
そのまま仰向けになって目をつぶった。
ララスクリス砲撃部隊は、戦艦ニュージャージーが16インチ砲弾90発。重巡キャンベラ、
ニューオリンズ、ウィチタが8インチ砲弾360発、軽巡モービル、ビロキシが6インチ砲弾
400発、駆逐艦部隊が500発の砲弾を海岸要塞に叩き込んだ。
このわずか20分の砲撃で海岸要塞は甚大な損害を被った。クロイッチ方面でも米艦隊の艦砲射撃で
海岸陣地は壊滅してしまった。
この日以来、米艦隊の艦砲射撃はバーマント軍将兵にとって恐怖の的となっていった。
ニューオリンズ、ウィチタが8インチ砲弾360発、軽巡モービル、ビロキシが6インチ砲弾
400発、駆逐艦部隊が500発の砲弾を海岸要塞に叩き込んだ。
このわずか20分の砲撃で海岸要塞は甚大な損害を被った。クロイッチ方面でも米艦隊の艦砲射撃で
海岸陣地は壊滅してしまった。
この日以来、米艦隊の艦砲射撃はバーマント軍将兵にとって恐怖の的となっていった。