自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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7月5日午前3時 サイフェルバン沖北20マイル地点
米軍は橋頭堡の守りを固め、夜までに2万4千の将兵が、橋頭堡に上陸した。作戦の第1段階は成功であった。

この日の夜、輸送船団の警戒にあたっていた重巡洋艦サンフランシスコ軽巡洋艦ブルックリン、デンヴァー、モービル、
駆逐艦ルイス・ハンコック
ステファン、マグフォード、ドーチ、ガトリングは、サイフェルバンの北20マイル地点で行ったりきたりしていた。
部隊は2部隊に別れ、サンフランシスコ、ブルックリンとルイス・ハンコック、ステファンがAグループ。
デンヴァーとモービル、マグフォード、ドーチ、ガトリングがB部隊に分かれて警戒任務についている。

B部隊の司令官である軽巡洋艦モービル艦長のクルーズ大佐は、艦橋でコーヒーを飲んでいた。
「副長、警戒任務といっても、バーマント軍はまともな艦をもたないだろう?そんな海軍が、装備優秀な艦艇のいる輸送船団に攻撃
を仕掛けるとは思えんのだが。」
副長のロスワード中佐が苦笑する。
「まあ、いいたいことは分かりますよ。しかし、バーマント軍は鉄道も、油で動く船も持っていたそうですよ。予想以上に
科学力が進んでいるようです。ですからそんな国の海軍にも、それ相応の技術が詰め込まれているかもしれません。それに
いくら貧相な軍艦が襲ってきても、相手は本気ですから放っておくと危ないですよ。」
「まあ、確かにそうだろうな。だが、敵艦なんて鉄製といってもお粗末なものだろう。到底無茶するはずがないと思うのだがな。」
彼はそう言ってコーヒーをすすった。時間は午前3時。開けられた窓からひんやりとした夜風が、艦橋内に入ってくる。
それが艦長の眠気を加速させた。
(副長にゆずって2時間ほど仮眠するか)
彼がそう思い、副長に言いかけたとき、
「CICより報告!未確認艦発見!」

クルーズ艦長はすぐさまCICに確認の電話を取る。
「未確認艦だと?何隻いる?」
「合計で10隻です。うち6隻は巡洋艦クラス、4隻は駆逐艦クラス。25ノットのスピードで
南下しています。」
「南下・・・・・・もしや、バーマント海軍か?」

バーマント海軍第2艦隊は、時速25ノットのスピードでサイフェルバン沖に向かっていた。
艦隊の先頭を行く高速戦列艦ガスタークの艦上に、艦隊司令官であるデイトル・ワームリング少将
は、じっと前の海域を見つめていた。
バーマント海軍は、ヴァルレキュアの輸送船を、帆船の破壊船で行っていたが、帆船ではスピードが
あまり早いとは言えず、せいぜい20ノットまでが限界だった。
それに、最近ではヴァルレキュア海軍が、輸送船に擬した軍艦で破壊船を見つけるや否や、たちまち
撃沈したり、輸送船にも恒常的に大砲が積まれ、破壊船に反撃をしてくる。このため、破壊船の
損失が20隻、損傷が12隻と馬鹿にならない被害を受け、海軍司令官からは、より早く、より頑丈で
より大き目の大砲を積んだ船を、と言う性能が求められた。
そこで開発されたのが、ガスターク級高速戦列艦である。1097年に1番艦ガスタークが就役して以来
9隻が建造された。
そして実戦配備されているのが6隻である。14,3センチ砲を防盾式の連装砲にまとめて、
全部に2基、後部に2基配置し、さらに8センチ砲を12門搭載している。
艦の真ん中には小さな艦橋があり、そこで艦長が指揮をとっている。速力は28ノットまで出す
ことができ、世界で最速の軍艦である。
一方、後方の小型戦列艦も9センチ砲を4門搭載し、これも28ノットのスピードで航行できる。
この二つの艦種も、バーマントで初めて油を燃料とした軍艦である。その事から、今後の通商
破壊に大きな功績を残すものと期待されている。
そんな中、第8艦隊にサイフェルバン沖の異世界艦隊の攻撃を命じられたのである。
「正直、初めて戦う相手だ。どんな武器を使い、どんな方法で我々に対応してくるのだろうか。」
ワームリング少将は、不安そうにそう呟いた。
「なあに、司令官。この艦はかつてないほどに重装甲で出来ているのです。異世界軍の軍艦
ごときに引けはとりませんよ。」
楽天的な性格である艦長が、笑みを浮かべて彼を励ました。

「そうだな。調子に乗っている蛮族共を叩き殺してやるか。」
彼も獰猛な笑みを浮かべて答えた。その時、右横にいた中年の魔道師が表情を変えた。
「司令官、前方の海域に生体反応があります。」
「何?まだサイフェルバンまで30キロ以上あるぞ?」
「敵の警戒部隊のようです。」
「警戒部隊か。」
彼は腕を組んだ。そこですぐに思い立った。
「警戒部隊は前方遠くにいるのか?」
「はい。およそ20キロほどです。」
「砲の射程外だな。よし、迂回するぞ。」
ワームリング司令官は艦隊進路をいったん南東に向けて、警戒部隊をやり過ごすことにした。」
それから30分後、突如、右舷の海面から何かが光った。それは発砲の閃光だった。
ヒューッという空気を切り裂く音が極大に達した。と思った瞬間、右舷海面に水柱が立ち上がった。
ドーンという音と共に8本の水柱が、ガスタークの右舷600メートル付近で上がる。
「見つかったのか!?」
彼はなぜと思った。夜間なら、ある程度速度を落とし、近寄らず、ひっそりと進めば敵に発見
されずに済んだはずだった。現に何度かこの方法でヴァルレキュアの輸送船を襲って成功して
いる。今回も成功するはずだった。だが、彼らの艦隊はあっさり見つかっていたのである。

一方、こちらは軽巡モービル
「敵艦隊、わがB部隊を迂回しようとしています。」
CICからの報告に、クルーズ大佐は眉をひそめた。
「何だと?という事は、敵は我々を見つけたのかな?」
「敵にはレーダーがありませんが、魔道師が乗っているはずです。」
副長が助け舟を出す。
「ああ、魔法使いか。」
「はい。バーマントの魔法使いは、人間の生体反応を感知できるのが居ると聞いています。
おそらく、この魔法使いが、我々のレーダーのような役割を果たしているのでしょう。」
その答えは半ば違っていた。確かに反応は読み取って、数や船が居ることを探れることはできる
が、正確に米艦隊の位置を特定できるまではできない。
それに対して、モービルのレーダーは、しっかりとバーマント艦隊を捉えていた。距離はおよそ15マイル。
「もう少し様子を見てみよう。」
そう言いながら、彼はA部隊の旗艦、サンフランシスコに連絡を取った。

距離が10マイルになってもバーマント艦隊は発砲してこなかった。逃げるどころか、速度を
落としてこそこそと逃げるように前進を続けている。
「よし。発砲しよう。左砲戦!」
4基の3連装砲塔が左舷側に向く。砲身が生き物のように動き、狙いを定めている。
目標は、バーマント艦隊だ。
「敵艦の速力、16ノット、距離10マイル。」
CICからの報告が入る。そこへ、
「各砲塔、発射準備良し!」
の報告が入った。
「オープンファイア!」
クルーズ艦長が号令する。それを待っていたかのように、各砲塔の1番砲が火を噴いた。
ドドーン!という腹にこたえる様な音が響き、衝撃が艦橋に叩きつけられる。
後方のデンヴァーも6インチ砲を放った。デンヴァーは2番艦、モービルは1番艦に割り当て
を決めた。

「弾着、今!」
4発の砲弾は、全て敵艦の前に落ちた。距離は約800~600付近。
「まあまあかな。」
クルーズ艦長は双眼鏡で眺めながらそう呟いた。その時、敵1番艦に動きがあった。敵艦は
速力を上げ始めた。さすがに発見されたことに気付いたのだろう。
敵艦から光が放たれた。敵も発砲したのである。その時、敵艦の艦影が一瞬ながら見えた。
シルエットは、4つの砲塔らしきものの真ん中に小さな構造物と、3本の煙突である。傍目
では英海軍の巡洋艦に似ている。
その時、米艦隊の上空がぱあっと輝いた。
「照明弾!」
彼は思わずそう叫んだ。見つからないのなら視界を広げればいい。そんな意図が見えたような気がした。
「流石は文明国バーマント。虐殺だけが取り柄ではないようだ。」
その声を掻き消すかのように、2番砲が放たれた。ドーンという音と共に6インチ砲弾が敵艦に向かって
放たれる。
さらに20秒後に3番砲を放った。この間に敵艦も砲弾を撃ってきた。
砲弾特有の甲高い音が聞こえ、それが最も大きくなったとき、音はモービルを飛び越えた。
モービルの右舷側に8本の水柱が立った。距離は1000メートルほど。
「甘いな。」
クルーズ艦長は、敵の照準の甘さに嘲笑を浮かべた。20秒後に1番砲が再び火を噴いた。
そして、1番艦が発砲したとき、敵艦の左右に4本の水柱が立ち上がった。
夾叉弾を得たのだ。これは命中精度が高くなっていることを意味する。

一方、14キロ先の敵艦は8門全てを撃っているが、いっこうに当たらない。
先よりも弾着は近くなっているが、それでも艦を飛び越えたり、艦のはるか手前で空しく水柱を上げている事が多い。
2番砲が発砲された。相変わらずの振動と衝撃が、艦橋をひっぱたく。今度は左舷側に3本、
右舷側に1本の水柱が立ち上がった。
敵艦も負けじと撃ち返す。だが、モービルの優秀な弾着とは対照的に、敵1番艦の射撃はうまい
とはいえず、今度も手前の海面に空しく水柱を上げた。
「砲術!もう少しだぞ!!」
クルーズ大佐はそう叫んだ。そして、3番砲が発砲された。砲弾はまっしぐらに敵艦に向けて
落下していく。
次の瞬間、敵艦の中央部に発砲とは異なる閃光がきらめいた。だが、それと同時に薄緑色の
光も混じっていた。
「今のはなんだ?」
彼はふと、混じっていた異なる色が気になった。だが、それを吹き飛ばすかのようにさらに
1番砲が発砲され、交互撃ち方が続けられる。
後方の海域では、分離した駆逐艦と小型戦列艦の砲戦が行われている。戦闘能力が格段に劣る
異世界の軍艦とはいえ、乗っている乗員の錬度は高そうだ。
その証拠に、今に至っても発砲の光がさかんに起こっている。
敵主力艦6隻に対し、こちらは新鋭軽巡とはいえ、わずか2隻。明らかに不利だ。

またもや敵艦の艦上に閃光がきらめいた。今度は2発命中した。だが、今度も先の薄緑色の
光が混じっていた。
(まさか・・・・・・・・いや、この世界ではあり得ないことではない)
彼はある考えを思いついた。それと同時に頃合よし確信した彼は次の指令を下す。
「一斉撃ち方!」
しばらく調整のため、砲撃が止む。彼はその間、発砲を繰り返す敵艦を見つめていた。無い。
火災炎が無い。それに、着弾と同時に破片らしきものも飛び散るはずだが、その艦には目立った
損傷も無ければ火災を起こしたようにも見えない。
敵艦が照明弾を打ち上げる。光に照らされた艦影は、明らかに無傷だった。
(やっぱり・・・・バーマント軍は魔法というものを使っているな。だとすると、あの艦には
魔法使いが乗っているのか、こいつはかなりやばいぞ)
彼はそう思い立つと、背中がぞっとした。バーマント軍も、対応策として、防御強化のために
魔道師を乗せて、その放つ魔力で砲弾の威力を減殺しているのだろう。
(そんな事に頭を使っている暇があったら、さっさとその虐殺好きを直せ、馬鹿野朗)
彼は内心で敵艦を罵った。そしてモービルの12門の6インチ砲が一斉射撃を始めた。
ドドーン!!先の交互撃ち方とは比べものにならない衝撃が艦橋を揺さぶった。そして敵1番艦
の周囲に多数の水柱が吹き上がった。そしてその中に3つの閃光が走った。
後方のデンヴァーも一斉射撃に入ったのだろう。6インチ砲12門の一斉射撃を始めた。
形成は、米側に不利な状態にある。砲戦を行っているのは、バーマント軍の高速戦列艦6隻と、
米大型軽巡2隻、バーマント側は大型軽巡1隻に対し、3隻で砲撃を行っている。
弾着も、最初はお粗末なものであったが、今ではかなり精度を上げている。唯一、発射速度が
30秒に1発という遅さなのが救いである。これに対し、モービルとデンヴァーは20秒に1発
の速さで1分間に4斉射できる。

そして斉射開始から2分、既に敵1番艦には実に10発の6インチ砲弾が命中していた。まさに
連打である。だが、その好成績とは対照的に、敵1番艦は損傷した様子も無ければ火災炎を
上げる様子も無い。
「なんてこった!敵の防御は戦艦並みだぞ!」
クルーズ艦長は、敵の魔法防御の硬さに下を巻いた。距離は8マイルまで下がっていた。
「よし、5インチ砲射撃初め!!」
たまりかねたクルーズ艦長は、5インチ砲の射撃を許可した。艦橋前、後部、右舷の合計
4基の連装両用砲が敵艦に向けられた。そしてその第1弾を発射した直後、右舷側の海面に
3本の水柱が立ち上がった。
「夾叉されました!!」
見張り員の悲痛めいた声が艦橋に聞こえた。
「うろたえるな!!砲の発射速度ではこっちが勝っている!それにA部隊もまもなく来るはずだ。
このまま行けば負けんぞ!!」
彼の言葉を裏付けるかのように、
「CICより報告、A部隊わがB部隊後方10マイルに接近せり。」
「よし。騎兵隊がおいでなすったぞ。」
彼は額にかいた汗を拭った。5インチ砲弾も加わった砲撃は激烈だった。
敵1番艦の艦上には数秒ごとに5インチ砲弾が炸裂し、間断なく閃光が走っている。
そして9斉射目を放ったとき、敵1番艦の艦上に4発が命中した。そしてその閃光
のなかに何かが飛び散るのが見えた。破片だ。
「やったぞ!敵の魔法防御を打ち破ったぞ!!」
その光景に、艦橋内はわあっ!と歓声が上がった。続いて第10斉射目が放たれた。
新たに2発が命中し、敵1番艦の艦首からうっすらと火災煙らしきものが見えた。
「よし、その調子だ!一気に畳み掛けろ!!」
クルーズがそう叫んだとき、シャシャシャシャ!という砲弾特有のうなり声が聞こえた。
それも今度のばかりはかなり強かった。

「来る!」
そう確信したとき、ガーン!という衝撃に艦橋は揺さぶられた。ついに被弾したのだ。
「左舷1番両用砲損傷!40ミリ機銃座1基全壊!!」
被害報告が届けられた。今まで間断なく砲弾を送り続けていた5インチ砲塔が1基やら
れた。
「両用砲の兵員はどうなった?」
「2名戦死、3人が負傷しました。」
その答えに彼は眉をひそめた。だが、まだまだ行ける。彼がそう思ったとき、新たな被弾が
モービルを襲った。今度は3弾が命中した。1発はモービルの煙突の1本を叩き折った。
残りの2発は中央部で炸裂し、あたりをめちゃくちゃにした。
モービルも敵1番艦に負けじと撃ち返す。敵1番艦に6発が命中した。その時、後部に命中した
閃光が大きくなった。瞬間、猛烈な爆発が起こり、後部2基の砲塔が見えなくなった。
爆炎のなかには、細長いものが何本か吹き上がっていた。
「やった!砲塔を吹き飛ばしたぞ!」
彼は思わず拳を上げて笑みを浮かべた。しかし敵1番艦は相変わらず28ノットのスピードで
航行し、甲板上でいくつもの火災炎を上げながらも前部の砲塔でモービルに向けて撃ちまくっている。
最後の1門まで減っても戦いは絶対に止めない。そんな猛烈な闘志が、直に伝わってくるようだった。
さらに5弾がモービルを打ち据えた。このうち、3弾が後部にまとまって命中した。
そして恐るべき事態が起きた。
「第3砲塔損傷!旋回不能!」
「なんてこった!」
彼は思わず声を上げた。モービルの要とも言うべき6インチ砲が3基使い物にならなくなったのだ。
これで砲戦力の25%を失ったことになる。だが、まだ砲は9門ある。
お返しだ、と言わんばかりに9門の6インチ砲が斉射をし、砲弾を敵1番艦に叩き込んだ。

ズガーン!という衝撃がガスタークを襲った。ワームリング少将は足を踏ん張って耐えた。
既に旗艦ガスタークは魔法防御を破られてから、実に16発もの砲弾を浴びている。
それ以前に、多数の砲弾が艦上で炸裂したばかりに、魔道師の体力に限界が生じて、ついに
倒れてしまった。そもそも敵艦の砲弾の威力が強すぎたばかりに、魔道師の魔力切れを加速
させることとなった。
「諦めるな!見ろ、白星の悪魔の船も傷を負っている。このまま行けば敵艦を叩きのめす
ことができるぞ!」
左舷を航行する、スマートで精悍な感じの軍艦が、3連装の頑丈そうな砲塔がガスタークを
向いている。
艦橋と思われる鉄片には、四角の網を思わせるものがある。おそらく装飾のためにつけて
いるのだろう。
ガガーン!という衝撃がして、またもや揺さぶられた。その衝撃がやまぬうちに敵艦に対して
前部4門の14.3センチ砲が咆哮する。
砲弾は1発が艦橋の横の甲板に命中した。そして寮艦から放たれた砲弾のうち、6発が敵艦
に対して満遍なく叩きつけられた。
敵艦の火災が一層ひどくなった。特に中央部と、艦首のほうから黒煙が激しく噴出している。
なぜか敵艦は砲撃をしなくなった。
「どうしたんだ?30秒立っても発砲しないとは。」
彼は不思議に思ったとたんふざけるなとばかりに新たな発砲の閃光が走った。
「くそ、またあたるかも知れんな。」
ワームリング司令官はそう思った。だが、意外な事に敵艦の砲弾ははるか左舷海面に着弾し
空しく水柱を上げた。

続いて20秒後に斉射が放たれるが、今度は手前に落下した。先の驚異的な命中率とは
えらい違いだ。
「なるほど・・・・・被弾のダメージが蓄積して正確な照準が出来なくなっているな。」
ワームリング司令官はそう確信した。モービルからの射撃は甘いものだった。3斉射目も
遥か手前に落下している。
「ハハハハハ!何が最強の異世界軍だ!いくら強い軍艦でも沈むものは沈むのだ!その事を
思い知るがいい!!」
新たにガスタークから砲弾が発射される。今度も1弾が敵艦の前部の砲塔を叩いた。敵艦
も負けじと打ち返す。
「もうやめろ。貴様はさっさと体を休めていろ。」
彼は突き放したような口調でモービルに向けてそう言い放つ。だが、次の瞬間、既に経験した
6インチ砲弾の衝撃が、再び艦体を叩いた。
瞬間、目の前が真っ赤に染まったと思うと、ダダーン!という轟音が鳴り響いた。猛烈な衝撃に
ガスタークは打ち震えた。艦橋内の職員は全員が床を這わされた。
しばらくたって、ワームリング司令官が起き上がった。まず、目に入ったのが、既に沈黙した敵1番艦
であった。4基の砲塔は発砲炎を吹くことも無く。ただガスタークに指向されているだけだ。

機関部に損傷は無いのか、相変わらず高速で突っ走っているが、甲板のあちらこちらから火災が
発生していた。それの黒煙がもうもうとたなびき、モービルの無念を現しているかのようだ。
そしてモービルが”前方へ遠ざかりつつ”あった。
「ふん。思い知ったか。異世界軍め。」
そう思い、前部砲塔を見てみた。そして艦首が消えていた。彼は目を疑った。
「艦首が・・・・・消えた!?」
なんと、艦首がざっくりと切断されているではないか!
ガスタークは艦首が切断され、今にも沈没寸前の状態だったのだ。そして、現に沈みつつ
あった。彼は知らなかったが、モービルの放った砲弾は、ガスタークの第1砲塔をひき潰し、
艦内の弾火薬庫で炸裂、呼び弾薬が誘爆して、そのパワーが艦首をもぎ取ったのだ。
「俺の最新鋭艦が・・・・・自慢のフネが。」
艦長が放心状態でそう呟いている。その目には、涙が浮かんでいる。
「それよりも総員退去だ。このフネはもう助からない。」
ワームリング司令官は艦長にそう伝えた。艦長は頷くと、艦橋から飛び出していった。
と、突然前方からまばゆい光が発せられた。
その光は、バーマント公国軍の艦列の前方から発せられていた。

モービルとデンヴァーは善戦していた。まず、モービルが敵1番艦を、デンヴァーが2番艦
に多数の5インチ。6インチ砲弾を叩き込んで魔法防御を突き崩すと、敵艦はたちまち猛射
に捉えられ、鉄のぼろと化した。そして敵1番艦が弾薬庫誘爆で艦首を切断され、その場に
停止した。続いて2番艦が真ん中から真っ二つに割れて爆沈した。
デンヴァーとモービルは残された砲で敵3番艦を狙った。だが、この時モービルは6インチ砲
全てが使えなくなり、5インチ砲が3門使用できるのみで、デンヴァーは6インチ砲2門、
5インチ両用砲3基が叩き潰されていた。
特にモービルはレーダーが損傷して使用不能になると言う由々しき事態に陥っていた。
無傷の敵3番艦に猛射を与えているうちに。まずモービルが残りの5インチ砲を全て叩き潰
されてしまった。次いで速力が低下して落伍した。残るはデンヴァー1艦のみとなった。
既に驚異的な猛射で敵3番艦の魔法防御は崩されてており、既に5インチ砲2発、6インチ
砲6発が命中して砲塔1基に煙突1つをなぎ払ったが、すでにデンヴァー自体、満身創痍である。
「畜生、せっかくバーマント野朗を討ち取ったのに、ここでやられるのか・・・・・」
デンヴァー艦長、フェリル・リュート大佐はそう言った。その直後、ガガーン!という被弾音
が鳴り響いた。それも何かが壊れる音。
「第3砲塔損傷!使用不能!」

彼は青ざめた。そして絶望しかけたとき、急に影が敵の間に割って入ってきた艦があった。
それはルイス・ハンコックを初めとする駆逐艦部隊であった。
駆逐艦部隊は、まず2隻が敵の小型船戦列艦相手に激戦を繰り広げた。この戦闘で、マグフォード
が大破したものの、増援の3隻の駆逐艦が加わってからは形成が逆転した。
新たにガトリング、ドーチが損傷したものの、4隻の小型戦列艦を撃沈した。そしてその足で
苦境に陥るB部隊に加勢したのである。
37ノットのスピードで、5門の5インチ両用砲を乱射しながら、距離4000で53センチ魚雷
を投下した。
次の瞬間、敵3番艦の横腹に3本の水柱が立ち上がった。3番艦は一瞬、左舷側に仰け反った後、
その後、猛烈に右舷側に傾斜し、あっという間に転覆した。
4番艦は4本の魚雷をまともにくらって、一瞬で轟沈してしまった。5、6番艦はそれぞれ
魚雷1本ずつを食らい、速力が大幅に低下してしまった。
そこへやっと到着した重巡洋艦サンフランシスコ、軽巡洋艦ブルックリンが砲撃を行った。
「フェリル、聞こえるか?」
サンフランシスコ艦長アルア・リットマン大佐の声が聞こえてきた。
「ああ、聞こえるよ。アルア、遅すぎだ。」
彼は苛立ちまぎれにそう返事した。
「遅れてすまなかった。これからは俺達に任せてくれ。」
「もっと早く来てくれりゃあ、こんな酷い目に会わずに済んだのに。まあいい。後で一杯おごれよ。」
「分かった。約束する。」
そう言うと、無線が切られる音がした。リュート艦長は、頑張れよと心の中で声援を送った。

午前4時10分、海戦は終わった。米側は、迎撃に当たった軽巡洋艦モービル、デンヴァー、
駆逐艦マグフォードが大破し、ガトリングが中破、ドーチが小破するという被害を受けた。
またA部隊も重巡サンフランシスコ、軽巡モービルが敵弾を受けて小破した。
一方、バーマント第2艦隊は参加艦艇全てが撃沈されるという事態になった。この海戦で、
バーマント軍の艦艇は、全般的に米軽巡劣ると言うことがハッキリとなった。
逆に米海軍も、バーマント新鋭艦が魔法を使って強靭な防御力を得ていることに衝撃を受けた。。
この海戦は、後にサイフェルバン沖海戦と呼ばれることとなる。
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