7月16日 サイフェルバン市街西端 午前8時
第4海兵師団は、サイフェルバン軍事都市と大陸奥地につながる境界線まで進出していた。
5日に始まったバーマント地上軍との戦闘は、いよいよ大詰めを迎えてきた。
バーマント側は幾度と無く米軍側に反撃を加えてきたが、その都度追い返された。
サイフェルバン攻略軍は、南側を第4海兵師団、中央を第27歩兵師団、北側を第2海兵師団が受け持ち、
両翼の第2、第4海兵師団が、サイフェルバンをぐるりと取り囲むように進み、中央から第27歩兵師団が
ぐいぐい押し上げる形となっている。
そしてこれらの後方には陸軍の第24砲兵旅団が各部隊の後ろに陣取り、進撃を支援している。
これまでの戦闘で第4海兵師団は140人の戦死者に800人の負傷者を出している。
だが、まだまだ海兵隊員の闘志は健在で、敵の障害を次々と排除しながら、順調に進撃していた。
第4海兵師団は、サイフェルバン軍事都市と大陸奥地につながる境界線まで進出していた。
5日に始まったバーマント地上軍との戦闘は、いよいよ大詰めを迎えてきた。
バーマント側は幾度と無く米軍側に反撃を加えてきたが、その都度追い返された。
サイフェルバン攻略軍は、南側を第4海兵師団、中央を第27歩兵師団、北側を第2海兵師団が受け持ち、
両翼の第2、第4海兵師団が、サイフェルバンをぐるりと取り囲むように進み、中央から第27歩兵師団が
ぐいぐい押し上げる形となっている。
そしてこれらの後方には陸軍の第24砲兵旅団が各部隊の後ろに陣取り、進撃を支援している。
これまでの戦闘で第4海兵師団は140人の戦死者に800人の負傷者を出している。
だが、まだまだ海兵隊員の闘志は健在で、敵の障害を次々と排除しながら、順調に進撃していた。
第25海兵連隊は、この日サイフェルバン西端にある宮殿付近の制圧を命じられた。
宮殿付近とは、貴族が住んでいたと見られる宮殿や、鉄道の駅、その他の施設や住宅地である。
北側には第2海兵師団が同じように展開している。これら2つの師団によって、サイフェルバンの輪を閉じようと言うのだ。
第4海兵師団の師団長ハリー・シュミット少将は、腕の時計に視線を移した。8時。攻撃開始は8時5分である。
「砲兵部隊は配置についたか?」
「配置につきました。」
「各部隊の様子はどうか?」
「予定通り、配置についています。皆意気軒昂です。」
若い士官に確認した彼は、満足そうに頷いた。
「今回は敵の有力な部隊が、これから進撃する地域にいるらしい。
恐らくこの戦いは、このサイフェルバンの戦いで最も激しい戦いになるだろう。
だが、我々マリーンなら、どんな敵でも打ち砕いてくれるだろう。」
シュミット少将は自信に満ちた口調でそう言った。時間は午前8時4分を指していた。
宮殿付近とは、貴族が住んでいたと見られる宮殿や、鉄道の駅、その他の施設や住宅地である。
北側には第2海兵師団が同じように展開している。これら2つの師団によって、サイフェルバンの輪を閉じようと言うのだ。
第4海兵師団の師団長ハリー・シュミット少将は、腕の時計に視線を移した。8時。攻撃開始は8時5分である。
「砲兵部隊は配置についたか?」
「配置につきました。」
「各部隊の様子はどうか?」
「予定通り、配置についています。皆意気軒昂です。」
若い士官に確認した彼は、満足そうに頷いた。
「今回は敵の有力な部隊が、これから進撃する地域にいるらしい。
恐らくこの戦いは、このサイフェルバンの戦いで最も激しい戦いになるだろう。
だが、我々マリーンなら、どんな敵でも打ち砕いてくれるだろう。」
シュミット少将は自信に満ちた口調でそう言った。時間は午前8時4分を指していた。
第25海兵連隊第3大隊A中隊は、物陰に隠れながらその時を待っていた。
「中隊長、まだですか?」
兵士が中隊長であるウイリアム・ワシントン大尉に聞いてきた。
「もう少しだ。我慢しろ。」
彼はそう言って部下を黙らせた。その時、後方から砲声が聞こえてきた。
シューという音も聞こえたと思うと、前方400メートル先の住宅地から爆炎が吹き出した。
ドカンドカンドカン!という銅鑼太鼓連続で鳴らしまくるような轟音が聞こえた。
次に地震のような振動が、カタカタと地面を揺らした。
木造の住宅地は、次々に吹き飛んだ。だが、その奥にある硬そうな施設や宮殿などは、
直撃でもされない限りすぐに壊れると言うことが無い。
砲撃は10分ほどで終わった。
「もう終わりか?本来なら1時間は撃ちまくるのに。」
部下の下士官が不満そうに言う。
「仕方が無いだろう。弾薬の補給が無いのだ。連隊長から聞いたが、前のようなやり方で撃ちまくったら、
弾薬は半年も持たずに使い果たしてしまうそうだ。だからこうして節約しているのさ。」
彼が部下に対してそう説明すると、今度は西側から爆音が響いてきた。
「味方機だ!」
ある兵士が叫ぶ。その機影は40機ほど。それは海兵航空隊第121航空隊のF4Uコルセアだった。
海軍工兵大隊は、戦線が橋頭堡から遠のいた10日に飛行場の建設を開始し、昨日の朝、1500メートルの滑走路が完成した。
その日の午後に第121海兵航空隊80機が進駐し、その1時間後には早速、地上部隊の支援に飛び立っている。
コルセアの胴体には500ポンド爆弾が1発抱かれている。
独特の逆ガル翼を翻えし、分散してそれぞれの地点に爆弾や機銃弾を見舞う。
大した損傷の無かった宮殿に1発の500ポンド爆弾が見舞われた。
「中隊長、まだですか?」
兵士が中隊長であるウイリアム・ワシントン大尉に聞いてきた。
「もう少しだ。我慢しろ。」
彼はそう言って部下を黙らせた。その時、後方から砲声が聞こえてきた。
シューという音も聞こえたと思うと、前方400メートル先の住宅地から爆炎が吹き出した。
ドカンドカンドカン!という銅鑼太鼓連続で鳴らしまくるような轟音が聞こえた。
次に地震のような振動が、カタカタと地面を揺らした。
木造の住宅地は、次々に吹き飛んだ。だが、その奥にある硬そうな施設や宮殿などは、
直撃でもされない限りすぐに壊れると言うことが無い。
砲撃は10分ほどで終わった。
「もう終わりか?本来なら1時間は撃ちまくるのに。」
部下の下士官が不満そうに言う。
「仕方が無いだろう。弾薬の補給が無いのだ。連隊長から聞いたが、前のようなやり方で撃ちまくったら、
弾薬は半年も持たずに使い果たしてしまうそうだ。だからこうして節約しているのさ。」
彼が部下に対してそう説明すると、今度は西側から爆音が響いてきた。
「味方機だ!」
ある兵士が叫ぶ。その機影は40機ほど。それは海兵航空隊第121航空隊のF4Uコルセアだった。
海軍工兵大隊は、戦線が橋頭堡から遠のいた10日に飛行場の建設を開始し、昨日の朝、1500メートルの滑走路が完成した。
その日の午後に第121海兵航空隊80機が進駐し、その1時間後には早速、地上部隊の支援に飛び立っている。
コルセアの胴体には500ポンド爆弾が1発抱かれている。
独特の逆ガル翼を翻えし、分散してそれぞれの地点に爆弾や機銃弾を見舞う。
大した損傷の無かった宮殿に1発の500ポンド爆弾が見舞われた。
宮殿は一瞬黒煙に覆われて見えなかったが、黒煙が晴れると、右側が叩き壊されていた。
コルセアの事前爆撃を、ワシントン大尉の側にいるある人物はじっと眺めていた。
「そんなに空襲がすごいのかな?オブザーバーさん。」
彼はその人物に声をかけた。
「勉強になりますから。」
海兵隊員と同じ服を着たオブザーバー、浅黒い肌をした耳長の女性は真摯な表情でそう言った。
ダークエルフのフランチェスカ・ラークソンは、米軍の戦場オブザーバー募集の噂を聞くと、
すぐにウルシーの米軍基地に向かい、申し込んだ。
アメリカ側はバーマントの言語が読めないため、バーマント語の堪能なヴァルレキュア人を
戦場オブザーバーとして5月20日、募集を開始した。その結果、4000人を超える志願者が米軍基地に押し寄せた。
米軍側は厳正な審査のもと、3900人をオブザーバーとして迎え入れ、5月23日から6月16日まで、
アメリカ軍の基礎訓練や作戦行動などを細かく教えた。
志願者の大部分は、予備兵力の登録を受けている人達で、どんなに厳しい訓練でもすぐに自分のものにした。
そして3日間の休暇のあと、志願者達は米兵と共に敵国の地に乗り込んだのである。
コルセアの事前爆撃を、ワシントン大尉の側にいるある人物はじっと眺めていた。
「そんなに空襲がすごいのかな?オブザーバーさん。」
彼はその人物に声をかけた。
「勉強になりますから。」
海兵隊員と同じ服を着たオブザーバー、浅黒い肌をした耳長の女性は真摯な表情でそう言った。
ダークエルフのフランチェスカ・ラークソンは、米軍の戦場オブザーバー募集の噂を聞くと、
すぐにウルシーの米軍基地に向かい、申し込んだ。
アメリカ側はバーマントの言語が読めないため、バーマント語の堪能なヴァルレキュア人を
戦場オブザーバーとして5月20日、募集を開始した。その結果、4000人を超える志願者が米軍基地に押し寄せた。
米軍側は厳正な審査のもと、3900人をオブザーバーとして迎え入れ、5月23日から6月16日まで、
アメリカ軍の基礎訓練や作戦行動などを細かく教えた。
志願者の大部分は、予備兵力の登録を受けている人達で、どんなに厳しい訓練でもすぐに自分のものにした。
そして3日間の休暇のあと、志願者達は米兵と共に敵国の地に乗り込んだのである。
フランチェスカは、ワシントン大尉から見れば時には寡黙で、時には明るい人柄だと思った。
そして何より勉強熱心であり、覚えが早い。
格闘術も持っており、輸送船では彼女にいやらしいことをしようとする兵が何人かいたが、
そんな事をしようものならば、すぐに叩きのめされた。
聞けば、彼女は過去にバーマント軍との戦闘にゲリラ戦ではあるが、何度も参加していると言う。
つまり海兵隊員と同じく、実戦を掻い潜ってきたのである。
さらに詳しく聞くと、志願者は全員が元軍人だったりする。
それはともかく、フランチェスカの勤勉さには、ワシントン大尉も下を巻いていた。
(もしバーマントと同じような武器を持っていたなら、ヴァルレキュアの運命は大きく変わっていただろう)
大尉は、彼女の横顔を見ながらそう思った。やがて、事前爆撃を終えたF4Uは引き返していき、辺りは静かになった。
「前進!」
ワシントン大尉は大声でそう叫ぶと、A中隊の将兵が立ち上がり、ぞろぞろと進み始めた。
右側から第4戦車大隊A中隊から派遣されたM4シャーマン戦車が現れた。
歩兵は戦車の後ろに隠れながら、ゆっくりと前進していく。
ここサイフェルバンでは何度も繰り返された戦法だ。
戦車を前面に押し、その後ろから歩兵がつき、敵の陣地に突入する。
戦車の支援を受けながら、歩兵は陣地の敵を掃討してそこを確保し、後続が来ればまた進む。
これの繰り返しである。
「オブザーバーさんはいつもの通り後ろからついてきてくれ。」
「わかりました。」
そして何より勉強熱心であり、覚えが早い。
格闘術も持っており、輸送船では彼女にいやらしいことをしようとする兵が何人かいたが、
そんな事をしようものならば、すぐに叩きのめされた。
聞けば、彼女は過去にバーマント軍との戦闘にゲリラ戦ではあるが、何度も参加していると言う。
つまり海兵隊員と同じく、実戦を掻い潜ってきたのである。
さらに詳しく聞くと、志願者は全員が元軍人だったりする。
それはともかく、フランチェスカの勤勉さには、ワシントン大尉も下を巻いていた。
(もしバーマントと同じような武器を持っていたなら、ヴァルレキュアの運命は大きく変わっていただろう)
大尉は、彼女の横顔を見ながらそう思った。やがて、事前爆撃を終えたF4Uは引き返していき、辺りは静かになった。
「前進!」
ワシントン大尉は大声でそう叫ぶと、A中隊の将兵が立ち上がり、ぞろぞろと進み始めた。
右側から第4戦車大隊A中隊から派遣されたM4シャーマン戦車が現れた。
歩兵は戦車の後ろに隠れながら、ゆっくりと前進していく。
ここサイフェルバンでは何度も繰り返された戦法だ。
戦車を前面に押し、その後ろから歩兵がつき、敵の陣地に突入する。
戦車の支援を受けながら、歩兵は陣地の敵を掃討してそこを確保し、後続が来ればまた進む。
これの繰り返しである。
「オブザーバーさんはいつもの通り後ろからついてきてくれ。」
「わかりました。」
フランチェスカは付き添いの海兵と共に後続部隊に下がり、ワシントン大尉は前方部隊に加わり、進撃していく。
軍事都市でありながら、以前は人が住んでいた住宅地は、砲兵隊やコルセアの事前攻撃で大部分が破壊しつくされている。
その建物を1つずつ丹念に調べる。中には運良く原型を留めた家屋もある。
そこには敵兵が生き残っている可能性が高いため、1個分隊の海兵が、慎重に調べていく。
その建物は1階建てで、意外に大きい。砲弾の破片によって酷く傷ついているものの、中は目立った被害は見当たらなかった。
「敵影なし!」
無線機から分隊長の声が聞こえた。ワシントン大尉は通信兵の無線電話を借りると、さらに命令をした。
「本当か?もう一度調べてみろ。念のためだ。」
5分後、分隊から報告が入った。
「敵影なしであります。」
「そうか、では隊列にもどれ。進撃を続ける。」
その後も住宅地の捜索が続けられたが、敵兵は1人もいなかった。
住宅地は1人の犠牲も出すことなく、無事に占領することができた。
次に木造住宅地より頑丈な施設区域に、A中隊は進撃した。施設区域は、2階建ての大小の建物が宮殿まで400メートルの
距離にびっしり並んでいる。半数ほどが崩壊しているが、残りは以前として、海兵隊員の進軍をふさぐように聳え立っている。
戦車が施設区域まであと30メートルまで迫ったとき、突如戦車の前方5メートルに青白い雷が落ちた、と思った瞬間、
バーン!という音を立てて地面が弾け飛んだ。
「敵だ!物陰に隠れろ!」
ワシントンはすかさずそう叫んだ。兵士は一斉に建物の壁や戦車の陰に隠れたり、地面に伏せたりした。
パパパパパパパパ!というバーマント軍の機関銃の発射音が聞こえ、多数の銃弾が彼らに向かって降り注いだ。
バスバスバス!という銃弾が地面に突き刺さる音が聞こえた。何人かの兵士が運悪く銃弾を手足に受け、昏倒する。
軍事都市でありながら、以前は人が住んでいた住宅地は、砲兵隊やコルセアの事前攻撃で大部分が破壊しつくされている。
その建物を1つずつ丹念に調べる。中には運良く原型を留めた家屋もある。
そこには敵兵が生き残っている可能性が高いため、1個分隊の海兵が、慎重に調べていく。
その建物は1階建てで、意外に大きい。砲弾の破片によって酷く傷ついているものの、中は目立った被害は見当たらなかった。
「敵影なし!」
無線機から分隊長の声が聞こえた。ワシントン大尉は通信兵の無線電話を借りると、さらに命令をした。
「本当か?もう一度調べてみろ。念のためだ。」
5分後、分隊から報告が入った。
「敵影なしであります。」
「そうか、では隊列にもどれ。進撃を続ける。」
その後も住宅地の捜索が続けられたが、敵兵は1人もいなかった。
住宅地は1人の犠牲も出すことなく、無事に占領することができた。
次に木造住宅地より頑丈な施設区域に、A中隊は進撃した。施設区域は、2階建ての大小の建物が宮殿まで400メートルの
距離にびっしり並んでいる。半数ほどが崩壊しているが、残りは以前として、海兵隊員の進軍をふさぐように聳え立っている。
戦車が施設区域まであと30メートルまで迫ったとき、突如戦車の前方5メートルに青白い雷が落ちた、と思った瞬間、
バーン!という音を立てて地面が弾け飛んだ。
「敵だ!物陰に隠れろ!」
ワシントンはすかさずそう叫んだ。兵士は一斉に建物の壁や戦車の陰に隠れたり、地面に伏せたりした。
パパパパパパパパ!というバーマント軍の機関銃の発射音が聞こえ、多数の銃弾が彼らに向かって降り注いだ。
バスバスバス!という銃弾が地面に突き刺さる音が聞こえた。何人かの兵士が運悪く銃弾を手足に受け、昏倒する。
物陰に隠れた海兵たちも、手持ちの銃で反撃する。
「不用意に頭を出すな!銃弾に吹き飛ばされるぞ!」
彼は頭を出しかけている後ろの海兵にそう叫んだ。カンカンカン!という金属音がワシントン大尉の
頭のすぐ側で鳴り、仰天した大尉が慌てて地面に伏せる。
M4戦車の砲塔が動き、無数の銃弾を吐き出すバーマント軍の銃座に向けられる。
ドン!という重々しい音が響き、盛んに光るマズルフラッシュの左に離れた位置で砲弾が炸裂した。
「へたくそ!ちゃんと狙え!」
海兵が戦車に文句をたれる。黙れと言わんばかりにM4戦車が再び咆哮した。
今度は右のすぐ側の2階で砲弾が炸裂した。煙が沸きあがり、銃座から機関銃の音が消えた。
「今だ!前進!!」
戦車がスピードを上げて進み、その少し離れた両脇から歩兵が進む。各分隊は施設区域に入ると、
それぞれの施設に突入を開始した。
施設内の中央にある2階建ての細長いレンガ造りの建物に、A中隊の第1小隊30名はジョン・スコット少尉
と共に突入した。
スコット少尉は、トミーガンを構えながら、第1分隊に指示を下した。
第1分隊が警戒しつつも素早く1回の最初の戸の両側の壁に張り付き、素早く引いた。
すると中から何十発という銃弾が放たれてきた。両側にいる先頭の兵2人が銃だけ中に突っ込み、撃ちまくった。
「手榴弾!」
1人が手榴弾を投げ込んだ。すかさず分隊の全員が窓を離れる。バーン!という音が鳴り、爆風が戸を吹き飛ばした。
「不用意に頭を出すな!銃弾に吹き飛ばされるぞ!」
彼は頭を出しかけている後ろの海兵にそう叫んだ。カンカンカン!という金属音がワシントン大尉の
頭のすぐ側で鳴り、仰天した大尉が慌てて地面に伏せる。
M4戦車の砲塔が動き、無数の銃弾を吐き出すバーマント軍の銃座に向けられる。
ドン!という重々しい音が響き、盛んに光るマズルフラッシュの左に離れた位置で砲弾が炸裂した。
「へたくそ!ちゃんと狙え!」
海兵が戦車に文句をたれる。黙れと言わんばかりにM4戦車が再び咆哮した。
今度は右のすぐ側の2階で砲弾が炸裂した。煙が沸きあがり、銃座から機関銃の音が消えた。
「今だ!前進!!」
戦車がスピードを上げて進み、その少し離れた両脇から歩兵が進む。各分隊は施設区域に入ると、
それぞれの施設に突入を開始した。
施設内の中央にある2階建ての細長いレンガ造りの建物に、A中隊の第1小隊30名はジョン・スコット少尉
と共に突入した。
スコット少尉は、トミーガンを構えながら、第1分隊に指示を下した。
第1分隊が警戒しつつも素早く1回の最初の戸の両側の壁に張り付き、素早く引いた。
すると中から何十発という銃弾が放たれてきた。両側にいる先頭の兵2人が銃だけ中に突っ込み、撃ちまくった。
「手榴弾!」
1人が手榴弾を投げ込んだ。すかさず分隊の全員が窓を離れる。バーン!という音が鳴り、爆風が戸を吹き飛ばした。
「行け!」
分隊指揮官の軍曹が叫ぶと、全員が素早く中に突入する。6人のバーマント兵が血を流して倒れていた。
4人が死亡し、2人は腹や胸を押さえながら呻いている。
もはや戦闘力は無かった。
「制圧完了!」
軍曹が部屋の外に向けて叫んだ。小隊は二手に分かれ、次々に部屋を制圧していった。
第5分隊は、1階最後の部屋に到達したときには、バーマント兵30名を死傷させていた。
「軍曹、なんかこの部屋・・・・・・」
先頭の兵が、嫌な顔をしながら言ってきた。軍曹もうすうす気付いていたが、
この部屋からは独特の雰囲気が流れている。何か、見てはいけないものがある。
この閉ざされた部屋の空気がそう言っていた。
「一応調べるんだ。この中に敵兵がいるかも知れんぞ。」
そう言いながら、いつもと同じようにドアの両側に3人ずつ壁に背中を張り付ける。
ドアの右側の兵が、木製のドアを足で勢いよく蹴破った。
すかさず横に跳ね除ける。
敵兵からの銃弾は飛んでこない。変わりに悲鳴が聞こえた。
「ひ、ひいぃぃーーーー!こ、殺しに来た!」
中から何か怯えたような声が聞こえる。いや、実際怯えていた。
「突然の出来事に海兵達は困惑した。」
「とりあえず入ろう。」
軍曹が先頭になって入ってきた。そこには、骨と皮だけになった人が3人牢屋に閉じ込められていた。
いずれも酷く痩せこけている。
分隊指揮官の軍曹が叫ぶと、全員が素早く中に突入する。6人のバーマント兵が血を流して倒れていた。
4人が死亡し、2人は腹や胸を押さえながら呻いている。
もはや戦闘力は無かった。
「制圧完了!」
軍曹が部屋の外に向けて叫んだ。小隊は二手に分かれ、次々に部屋を制圧していった。
第5分隊は、1階最後の部屋に到達したときには、バーマント兵30名を死傷させていた。
「軍曹、なんかこの部屋・・・・・・」
先頭の兵が、嫌な顔をしながら言ってきた。軍曹もうすうす気付いていたが、
この部屋からは独特の雰囲気が流れている。何か、見てはいけないものがある。
この閉ざされた部屋の空気がそう言っていた。
「一応調べるんだ。この中に敵兵がいるかも知れんぞ。」
そう言いながら、いつもと同じようにドアの両側に3人ずつ壁に背中を張り付ける。
ドアの右側の兵が、木製のドアを足で勢いよく蹴破った。
すかさず横に跳ね除ける。
敵兵からの銃弾は飛んでこない。変わりに悲鳴が聞こえた。
「ひ、ひいぃぃーーーー!こ、殺しに来た!」
中から何か怯えたような声が聞こえる。いや、実際怯えていた。
「突然の出来事に海兵達は困惑した。」
「とりあえず入ろう。」
軍曹が先頭になって入ってきた。そこには、骨と皮だけになった人が3人牢屋に閉じ込められていた。
いずれも酷く痩せこけている。
「おい、水だ。水をあげてやれ。」
ここは捕虜の牢屋だったのか。すると、奥にあるもう一つの扉は一体?
軍曹は不審に思った。
「あ、あんたら・・・は。い、一体?」
無精ひげの生えたやせた男が聞いてきた。
「アメリカ人さ。それよりも、あの奥の扉はなんだ?」
軍曹が聞くと、捕虜の怯えは余計にひどくなり、何も語らなくなった。
「スエンソン、ミルスキー。あの部屋を調べるぞ。」
3人は警戒しながら、ドアを蹴破り、中に突入した。
そこには、無数の人骨と、四肢が切断され、死亡した男の死体があった。
そしてその後ろには、解剖された無数の死体と内臓が散らばっていた。
あたりは言葉には想像を絶する光景が広がっていた。
軍曹は思わず戻しそうになったが、辛うじて抑えた。
2階部分は敵の抵抗に会いながらも、無事に制圧完了。第1小隊は捕虜20人を得た。
ここは捕虜の牢屋だったのか。すると、奥にあるもう一つの扉は一体?
軍曹は不審に思った。
「あ、あんたら・・・は。い、一体?」
無精ひげの生えたやせた男が聞いてきた。
「アメリカ人さ。それよりも、あの奥の扉はなんだ?」
軍曹が聞くと、捕虜の怯えは余計にひどくなり、何も語らなくなった。
「スエンソン、ミルスキー。あの部屋を調べるぞ。」
3人は警戒しながら、ドアを蹴破り、中に突入した。
そこには、無数の人骨と、四肢が切断され、死亡した男の死体があった。
そしてその後ろには、解剖された無数の死体と内臓が散らばっていた。
あたりは言葉には想像を絶する光景が広がっていた。
軍曹は思わず戻しそうになったが、辛うじて抑えた。
2階部分は敵の抵抗に会いながらも、無事に制圧完了。第1小隊は捕虜20人を得た。
第2小隊はそう簡単にはいかなかった。
突入した建物は第1小隊となんら変わらなかったが、1階に突入した瞬間、いきなり10人単位の騎士の反撃を受けた。
すぐさま猛烈な銃撃を浴びせられてこれらの騎士は全滅したが、今度は部屋から出てきたバーマント兵が多数、
小銃を乱射しながら突撃してきた。
たちまち敵味方入り乱れての白兵戦となった。白兵戦は、バーマント側のほうが優勢で、第2小隊は壊乱しかけたが、
B中隊が応援に駆けつけ、これらのバーマント兵を建物の中に押し返した。
この建物は40分で占領したが、なんと、この建物には80名のバーマント兵が立て篭もっていた。
事実を知った第2小隊長は仰天した。
午前10時までに、第25海兵連隊は施設区域の8割を占領した。
だが、バーマント兵も頑強に抵抗したため、戦死者80、負傷者200名を出す損害を負った。
突入した建物は第1小隊となんら変わらなかったが、1階に突入した瞬間、いきなり10人単位の騎士の反撃を受けた。
すぐさま猛烈な銃撃を浴びせられてこれらの騎士は全滅したが、今度は部屋から出てきたバーマント兵が多数、
小銃を乱射しながら突撃してきた。
たちまち敵味方入り乱れての白兵戦となった。白兵戦は、バーマント側のほうが優勢で、第2小隊は壊乱しかけたが、
B中隊が応援に駆けつけ、これらのバーマント兵を建物の中に押し返した。
この建物は40分で占領したが、なんと、この建物には80名のバーマント兵が立て篭もっていた。
事実を知った第2小隊長は仰天した。
午前10時までに、第25海兵連隊は施設区域の8割を占領した。
だが、バーマント兵も頑強に抵抗したため、戦死者80、負傷者200名を出す損害を負った。
午後0時 サイフェルバン西端
宮殿の地下にあるバーマント軍第5軍司令部は驚愕していた。
第5軍は第30歩兵師団、第22重装騎兵旅団、第46歩兵旅団から編成されている。
米軍の攻勢開始からわずか4時間で、第22、第46の2つの旅団は、支配区域から叩き出されてしまった。
両旅団の残兵はこの宮殿周辺に逃げ帰ってきたが、その数は驚くほど少なかった。
「増援部隊はどうした!?方面軍司令部は増援部隊を出すと言っていたぞ!」
第5軍司令官であるバリラー騎士中将は苛立ちまぎれに喚いた。
「実は、増援部隊も、敵の飛空挺の空襲によって進路を妨げられており到着は遅れるとのことです。」
「何分ほどだ?」
「3時間です。」
バリラー軍司令官は地図をじっと睨んだ。宮殿の両側から赤い線が向かってきている。
この赤い線は、アメリカ第2、第4海兵師団が進撃している証拠である。
バーマント軍の激烈な抵抗にあっているため、普段の進撃スピードではないが、
それでもじりじりとこの宮殿ににじり寄ってきている。
(この宮殿が占領されれば、本国に繋がる街道も抑えられてしまう。
そうすれば、わがサイフェルバン方面軍は輪の中に閉じ込められてしまうだろう。
なんということだ。こんな事になるなら、さっさと撤退すればいいものを・・・・・・)
これだから現場を知らない奴は!!
彼は、心の中で皇帝を罵った。
作戦室に伝令兵が息を切らしてやってきた。
「報告!敵兵が宮殿付近に進軍して来ました!」
宮殿の地下にあるバーマント軍第5軍司令部は驚愕していた。
第5軍は第30歩兵師団、第22重装騎兵旅団、第46歩兵旅団から編成されている。
米軍の攻勢開始からわずか4時間で、第22、第46の2つの旅団は、支配区域から叩き出されてしまった。
両旅団の残兵はこの宮殿周辺に逃げ帰ってきたが、その数は驚くほど少なかった。
「増援部隊はどうした!?方面軍司令部は増援部隊を出すと言っていたぞ!」
第5軍司令官であるバリラー騎士中将は苛立ちまぎれに喚いた。
「実は、増援部隊も、敵の飛空挺の空襲によって進路を妨げられており到着は遅れるとのことです。」
「何分ほどだ?」
「3時間です。」
バリラー軍司令官は地図をじっと睨んだ。宮殿の両側から赤い線が向かってきている。
この赤い線は、アメリカ第2、第4海兵師団が進撃している証拠である。
バーマント軍の激烈な抵抗にあっているため、普段の進撃スピードではないが、
それでもじりじりとこの宮殿ににじり寄ってきている。
(この宮殿が占領されれば、本国に繋がる街道も抑えられてしまう。
そうすれば、わがサイフェルバン方面軍は輪の中に閉じ込められてしまうだろう。
なんということだ。こんな事になるなら、さっさと撤退すればいいものを・・・・・・)
これだから現場を知らない奴は!!
彼は、心の中で皇帝を罵った。
作戦室に伝令兵が息を切らしてやってきた。
「報告!敵兵が宮殿付近に進軍して来ました!」
アメリカ第4海兵師団第25海兵連隊は、午後0時5分、ついに宮殿付近に姿を現した。
ここを守るのは、第30歩兵師団と、第22、46旅団の生き残りである。
第1砲兵中隊は、破壊された瓦礫の隙間に大砲を置き、進軍してくるであろう米軍を待ち構えた。
3番砲の射手であるレノール・クリッヅ軍曹は、じっと前を見つめながら、今か今かと待ち焦がれていた。
米軍の戦車は、バーマント兵達にとって死神に等しい存在である。
どんなに頑強に食い止めても、そこには必ず戦車が出張ってきて、すぐに味方の陣地を吹き飛ばすのである。
「いいか、まずは敵の戦車を狙え!その後は歩兵を撃て!」
中隊長の声が聞こえたが、緊張のせいで遠くから聞こえるようだ。喉がかわいてきた。
クソ、早く現れねえかな?
彼がそう思ったとき、何かが聞こえてきた。それは徐々に迫ってくる。彼らの目前には破壊されたレンガの塀がある。彼らが狙いをつけているのは、10メートルに渡って崩れた塀の穴である。
地面がカタカタと揺れる。間違いない、話に出てきた戦車とやらだ。彼は確信した。
キュルキュルキュルという耳障りの音がすぐ近くに来た、と思ったとき、塀の穴から敵の戦車がぬうっと出てきた。
「撃て!」
指揮官の叫び声と共に、彼は7センチ砲を撃った。バン!という音が鳴り、砲弾が放たれた。
ここを守るのは、第30歩兵師団と、第22、46旅団の生き残りである。
第1砲兵中隊は、破壊された瓦礫の隙間に大砲を置き、進軍してくるであろう米軍を待ち構えた。
3番砲の射手であるレノール・クリッヅ軍曹は、じっと前を見つめながら、今か今かと待ち焦がれていた。
米軍の戦車は、バーマント兵達にとって死神に等しい存在である。
どんなに頑強に食い止めても、そこには必ず戦車が出張ってきて、すぐに味方の陣地を吹き飛ばすのである。
「いいか、まずは敵の戦車を狙え!その後は歩兵を撃て!」
中隊長の声が聞こえたが、緊張のせいで遠くから聞こえるようだ。喉がかわいてきた。
クソ、早く現れねえかな?
彼がそう思ったとき、何かが聞こえてきた。それは徐々に迫ってくる。彼らの目前には破壊されたレンガの塀がある。彼らが狙いをつけているのは、10メートルに渡って崩れた塀の穴である。
地面がカタカタと揺れる。間違いない、話に出てきた戦車とやらだ。彼は確信した。
キュルキュルキュルという耳障りの音がすぐ近くに来た、と思ったとき、塀の穴から敵の戦車がぬうっと出てきた。
「撃て!」
指揮官の叫び声と共に、彼は7センチ砲を撃った。バン!という音が鳴り、砲弾が放たれた。
それは80メートル離れた敵戦車のすぐ側に着弾し、土ぼこりを上げた。
だが、他の砲弾が1発、敵戦車に命中した。戦車の砲塔が白煙に包まれた。
「やったぞ!」
彼は喝采を叫んだ。だが、恐ろしいことに、敵戦車はまだ動いている!
「次!急げ!!」
グリッヅ軍曹は装填係をせかした。装填係は緊張しているのか、砲弾を落としそうになった。
「何してる、この間抜け!さっさと装填しろ!!」
彼の怒声に、気を取り戻した装填手は素早く弾を込めた。
狙いをつけ、砲弾を放とうとしたとき、敵戦車が大砲を放った。
シュー!という音が鳴ったと思った瞬間、30メートル横の4番砲が吹き飛ばされた。
「死ね!白星の悪魔!」
3番砲が第2弾を放った。砲弾は前進してくる敵戦車の右キャタピラに命中した。
爆煙が収まると、敵戦車の下部が破壊されていた。
彼らは知らなかったが、このシャーマン戦車は、キャタピラを破壊されていた。
敵戦車は急におかしな動きをし始めた。なんと右側に旋回して、次に止まってしまったのである。
「いい所に命中したかも知れんぞ。よし、止めを刺すぞ!」
足回りを破壊したことで満足した彼は、この瀕死のシャーマンに息の根を止めてやろう思い、
新たに砲弾を撃とうとした。
だが、他の砲弾が1発、敵戦車に命中した。戦車の砲塔が白煙に包まれた。
「やったぞ!」
彼は喝采を叫んだ。だが、恐ろしいことに、敵戦車はまだ動いている!
「次!急げ!!」
グリッヅ軍曹は装填係をせかした。装填係は緊張しているのか、砲弾を落としそうになった。
「何してる、この間抜け!さっさと装填しろ!!」
彼の怒声に、気を取り戻した装填手は素早く弾を込めた。
狙いをつけ、砲弾を放とうとしたとき、敵戦車が大砲を放った。
シュー!という音が鳴ったと思った瞬間、30メートル横の4番砲が吹き飛ばされた。
「死ね!白星の悪魔!」
3番砲が第2弾を放った。砲弾は前進してくる敵戦車の右キャタピラに命中した。
爆煙が収まると、敵戦車の下部が破壊されていた。
彼らは知らなかったが、このシャーマン戦車は、キャタピラを破壊されていた。
敵戦車は急におかしな動きをし始めた。なんと右側に旋回して、次に止まってしまったのである。
「いい所に命中したかも知れんぞ。よし、止めを刺すぞ!」
足回りを破壊したことで満足した彼は、この瀕死のシャーマンに息の根を止めてやろう思い、
新たに砲弾を撃とうとした。
だが、彼らが弾を込め、砲を撃とうとした時には、そのシャーマンが彼らを見つけ、先に砲弾を叩き込んだ。
次の瞬間、グリッヅ軍曹は宙に吹き飛ばされたと思うと、そのまま意識が暗転した。
機関銃手であるオデレ・マルス2等兵は、塀の近くの砲陣地を吹き飛ばし、分離してきた米兵めがけて引き金を引いた。
ダダダダダダダ!という軽快な発射音が鳴り、米兵の集団に向けて銃弾が飛ぶ。
目標の米兵はすぐさま遮蔽物に隠れるが、機銃弾は1人の足を撃ちぬいた。
動きが止んだその米兵に対して他の兵も小銃を撃ちまくり、その米兵を射殺した。
遮蔽物に隠れた米兵は、タイミングを見計らいながら盛んにこっちに向けて撃ちまくってくる。
ヒューンという音が耳の近くでなり、彼は思わずぞっとした。
窓際の壁に銃弾が命中し、石の破片が辺りに撒き散らされる。それにめげずに、マルス2等兵は撃ち続けた。
10分ほどこの状態が続いた。
「やったぞ、米軍を足止めしている。」
彼はそう思うと、表情が緩んだ。今、都市の中央から増援部隊が向かっている。増援部隊が来るまで持ちこたえれば俺たちの勝ちだ。
米兵が居座っている遮蔽物に爆発が起きた。魔道師が爆破系の魔法でも使ったのだろう。少しだが火力が弱まった。
何人かの米兵が、その仲間に抱えられて行くのが見えた。
その時、どこからともなく爆音が聞こえてきた。彼はそれに見向きもせずに機銃を撃ちまくる。
しかし、爆音が大きくなると、ただならぬ予感がしてきた。
次の瞬間、ダーン!という耳を劈く轟音が鳴り響き、次いで体が一瞬、ふわりと浮き上がった。
ゴー!という猛烈な爆風に吹き飛ばされ、彼は背中から壁に叩きつけられた。叩きつけられた瞬間、彼は一瞬息が止まった。
次いで意識を失った。
しばらくして目が覚めた。耳がキンキン鳴っている。周りにいた10人の仲間は、ほとんどが死ぬか、ひどい重傷を負っていた。
まともに動けるのは彼1人ぐらいだった。彼は、転がっている機銃に取り付こうとしたが、破壊された壁の穴から米兵がにゅっと入り込んできた。
すかさず腰につってある長剣を抜こうとしたが、すぐに米兵に殴り倒された。
次の瞬間、グリッヅ軍曹は宙に吹き飛ばされたと思うと、そのまま意識が暗転した。
機関銃手であるオデレ・マルス2等兵は、塀の近くの砲陣地を吹き飛ばし、分離してきた米兵めがけて引き金を引いた。
ダダダダダダダ!という軽快な発射音が鳴り、米兵の集団に向けて銃弾が飛ぶ。
目標の米兵はすぐさま遮蔽物に隠れるが、機銃弾は1人の足を撃ちぬいた。
動きが止んだその米兵に対して他の兵も小銃を撃ちまくり、その米兵を射殺した。
遮蔽物に隠れた米兵は、タイミングを見計らいながら盛んにこっちに向けて撃ちまくってくる。
ヒューンという音が耳の近くでなり、彼は思わずぞっとした。
窓際の壁に銃弾が命中し、石の破片が辺りに撒き散らされる。それにめげずに、マルス2等兵は撃ち続けた。
10分ほどこの状態が続いた。
「やったぞ、米軍を足止めしている。」
彼はそう思うと、表情が緩んだ。今、都市の中央から増援部隊が向かっている。増援部隊が来るまで持ちこたえれば俺たちの勝ちだ。
米兵が居座っている遮蔽物に爆発が起きた。魔道師が爆破系の魔法でも使ったのだろう。少しだが火力が弱まった。
何人かの米兵が、その仲間に抱えられて行くのが見えた。
その時、どこからともなく爆音が聞こえてきた。彼はそれに見向きもせずに機銃を撃ちまくる。
しかし、爆音が大きくなると、ただならぬ予感がしてきた。
次の瞬間、ダーン!という耳を劈く轟音が鳴り響き、次いで体が一瞬、ふわりと浮き上がった。
ゴー!という猛烈な爆風に吹き飛ばされ、彼は背中から壁に叩きつけられた。叩きつけられた瞬間、彼は一瞬息が止まった。
次いで意識を失った。
しばらくして目が覚めた。耳がキンキン鳴っている。周りにいた10人の仲間は、ほとんどが死ぬか、ひどい重傷を負っていた。
まともに動けるのは彼1人ぐらいだった。彼は、転がっている機銃に取り付こうとしたが、破壊された壁の穴から米兵がにゅっと入り込んできた。
すかさず腰につってある長剣を抜こうとしたが、すぐに米兵に殴り倒された。
午後6時30分 宮殿内地下壕
パパパパパン!ドン!ドン!
けたたましい銃声が地下壕内にも聞こえてきた。地下壕の入り口では米兵と味方の間で壮絶な戦いが繰り広げられている。
「司令官、もはや最善は尽くしました。ですが、宮殿の南側、北側とも敵に占拠されてしまいました。」
主席参謀は、憔悴しきった表情で言った。
増援部隊は、宮殿にたどり着く前に米艦載機の猛烈な空襲にあって引き返していった。
いまや宮殿のいたるところに、海兵達が陣取り、最後の戦いがあちらこちらで繰り広げられている。
「・・・・・・・・・・」
第5軍司令官であるバリラー騎士中将は、何も言わなかった。ただ腕を組み、地図を睨んでいるだけである。
重い沈黙が流れた。
外に聞こえる銃声が、どこか遠くに聞こえるようだった。
パパパパパン!ドン!ドン!
けたたましい銃声が地下壕内にも聞こえてきた。地下壕の入り口では米兵と味方の間で壮絶な戦いが繰り広げられている。
「司令官、もはや最善は尽くしました。ですが、宮殿の南側、北側とも敵に占拠されてしまいました。」
主席参謀は、憔悴しきった表情で言った。
増援部隊は、宮殿にたどり着く前に米艦載機の猛烈な空襲にあって引き返していった。
いまや宮殿のいたるところに、海兵達が陣取り、最後の戦いがあちらこちらで繰り広げられている。
「・・・・・・・・・・」
第5軍司令官であるバリラー騎士中将は、何も言わなかった。ただ腕を組み、地図を睨んでいるだけである。
重い沈黙が流れた。
外に聞こえる銃声が、どこか遠くに聞こえるようだった。
午後7時10分 宮殿は第25海兵連隊によって占領された。また同時刻、街道も第2海兵師団によって占領された。
この戦闘で、米側は戦死者340名、負傷者2400名を出した。
バーマント側は戦死者2200名、負傷者9600名、捕虜1万名を出す大損害を被り、バーマント第5軍は壊滅した。
ここにして、バーマント1の優良な港を持つサイフェルバンは、米上陸軍によって包囲されたのであった。
この戦闘で、米側は戦死者340名、負傷者2400名を出した。
バーマント側は戦死者2200名、負傷者9600名、捕虜1万名を出す大損害を被り、バーマント第5軍は壊滅した。
ここにして、バーマント1の優良な港を持つサイフェルバンは、米上陸軍によって包囲されたのであった。
7月18日 午後5時30分 サイフェルバン沖北東200キロ
空母レキシントンに所属するTBFアベンジャーは、定期哨戒から戻る途中だった。
この日、偵察機がサイフェルバン北600キロの沿岸に港を発見した。
その港にはバーマント軍の軍艦らしきものが何隻も停泊していた。数は10隻ほど。第58任務部隊はすぐに攻撃隊を発艦させようとしたものの、時刻は既に5時を回っており、夜間での着艦作業になる可能性が高く、攻撃は明日黎明に延期された。
空母レキシントンに所属するTBFアベンジャーは、定期哨戒から戻る途中だった。
この日、偵察機がサイフェルバン北600キロの沿岸に港を発見した。
その港にはバーマント軍の軍艦らしきものが何隻も停泊していた。数は10隻ほど。第58任務部隊はすぐに攻撃隊を発艦させようとしたものの、時刻は既に5時を回っており、夜間での着艦作業になる可能性が高く、攻撃は明日黎明に延期された。
そんな中、帰路についていたアベンジャーは、とんでもないものを見つけてしまった。
なんと、アベンジャーの真下には、20隻以上の艦隊が、陣形を作って航行していたのである。
そう、この艦隊こそ、根拠地グランバールを出港したバーマント第3艦隊であった。
アベンジャーはすぐに第2報を第58任務部隊に送った。
なんと、アベンジャーの真下には、20隻以上の艦隊が、陣形を作って航行していたのである。
そう、この艦隊こそ、根拠地グランバールを出港したバーマント第3艦隊であった。
アベンジャーはすぐに第2報を第58任務部隊に送った。