大陸暦1098年 7月1日 ウルシー 午前6時30分
まだウルシーの現地人が眠りについているこの時間に、広大の泊地内にラッパの稜々たる
音色が響き渡った。
アメリカ海軍の軍歌、「錨を上げて」が軍楽隊によって鳴らされる。それを聞いて勇みをかけ
られたかのように、戦闘艦艇群が次々と出航していく。甲板には、乗員が登舷礼で立ち並んでいる。
出港は露払い役の駆逐艦から巡洋艦、そして戦艦、空母と艦が大きくなっていく。
重巡洋艦インディアナポリスの戦闘艦橋から出港の様子を見ているマイント・ターナー魔道師は、
珍しく頬をやや上気させていた。
「どうしたんだね、魔法使いさん。」
彼の右隣に立っていた作戦参謀のフォレステル大佐が、微笑みながら聞いてきた。
「いつもはクールな君が、今日は少々違うように見えるのだが。」
「はあ、やっぱりそう見えますか。」
ターナーは苦笑しながらそう言った。
「こんな大規模な艦隊が出航していくのを見るのは初めてでして。」
「そうか。でも、私も艦隊が出航する時はいつも心が躍るものだよ。海軍に奉職して以来、
ずっとさ。」
彼はそう言いながら、出航しつつある艦艇に視線を向けた。インディアナポリスも外海に出ようとしている。
インディアナポリスの左400メートルには空母のエンタープライズが、同じようにゆっくりとした
スピードで外海に向かっている。
「我が第5艦隊は、まさに無敵艦隊さ。このインディアナポリスも歴戦の艦だ。大船に乗ったつもりで
いてくれ。」
フォレステル大佐は、彼にニヤリと笑みを浮かべながら言った。
(俺からしたら、この船でも十分に大船だけどな)
彼は内心でそう思いながら、出航していく艦艇群に視線を移した。
まだウルシーの現地人が眠りについているこの時間に、広大の泊地内にラッパの稜々たる
音色が響き渡った。
アメリカ海軍の軍歌、「錨を上げて」が軍楽隊によって鳴らされる。それを聞いて勇みをかけ
られたかのように、戦闘艦艇群が次々と出航していく。甲板には、乗員が登舷礼で立ち並んでいる。
出港は露払い役の駆逐艦から巡洋艦、そして戦艦、空母と艦が大きくなっていく。
重巡洋艦インディアナポリスの戦闘艦橋から出港の様子を見ているマイント・ターナー魔道師は、
珍しく頬をやや上気させていた。
「どうしたんだね、魔法使いさん。」
彼の右隣に立っていた作戦参謀のフォレステル大佐が、微笑みながら聞いてきた。
「いつもはクールな君が、今日は少々違うように見えるのだが。」
「はあ、やっぱりそう見えますか。」
ターナーは苦笑しながらそう言った。
「こんな大規模な艦隊が出航していくのを見るのは初めてでして。」
「そうか。でも、私も艦隊が出航する時はいつも心が躍るものだよ。海軍に奉職して以来、
ずっとさ。」
彼はそう言いながら、出航しつつある艦艇に視線を向けた。インディアナポリスも外海に出ようとしている。
インディアナポリスの左400メートルには空母のエンタープライズが、同じようにゆっくりとした
スピードで外海に向かっている。
「我が第5艦隊は、まさに無敵艦隊さ。このインディアナポリスも歴戦の艦だ。大船に乗ったつもりで
いてくれ。」
フォレステル大佐は、彼にニヤリと笑みを浮かべながら言った。
(俺からしたら、この船でも十分に大船だけどな)
彼は内心でそう思いながら、出航していく艦艇群に視線を移した。
この日、アメリカ海軍第5艦隊に所属する機動部隊、第58任務部隊はウルシー泊地を出港した。
そして午前10時からは艦載機補充用の護衛空母セント・ロー、キトカン・ベイ、カリーニン・ベイ
ファーション・ベイを中心とした艦載機補充部隊が。
午後1時からはターナー中将指揮下の第52任務部隊の輸送船団が、護衛空母を始めとする
エスコート部隊に守られながら次々に出撃して行った。
そして午前10時からは艦載機補充用の護衛空母セント・ロー、キトカン・ベイ、カリーニン・ベイ
ファーション・ベイを中心とした艦載機補充部隊が。
午後1時からはターナー中将指揮下の第52任務部隊の輸送船団が、護衛空母を始めとする
エスコート部隊に守られながら次々に出撃して行った。
アメリカ第5艦隊は、前衛に高速機動部隊、中央に補充部隊、後方に輸送船団という配置で18ノット
のスピードでゆっくりと、そして確実に北に向かっていった。
のスピードでゆっくりと、そして確実に北に向かっていった。
7月1日 午後8時 ウルシーより東北の岩島
この日の午前10時、偵察に出ていた海竜の1匹目から報告が入った。敵異世界軍の高速
機動部隊が全てウルシーから出航し、北に向かっているとの情報である。
バーマント軍は、30ノット以上のスピードで高速機動する第58任務部隊を高速機動部隊と呼称している。
その高速機動部隊がウルシーから出てきたという事は、敵はララスクリスかクロイッチを空襲するつもり
なのか?
第23海竜情報収集隊の指揮官であるロバルト・グッツラ騎士中佐はそう考えた。だが、その後の報告が
彼の考えを改めた。
報告は2つ送られてきた。1つは小型の飛空挺母艦を中心とする機動部隊が出航した事。そしてもうひとつは
大輸送船団を伴った大艦隊が出航したことである。
すぐさま彼は思い立った。
(輸送船には地上部隊が乗っているはず。敵異世界軍、アメリカという奴らは、どこかに侵攻しようとしている!)
そして彼は、侵攻地域がどこにあるかをすぐさま見抜いた。ララスクリスとクロイッチ・・・・・
敵艦隊の進路は北を指している。そして北にある根拠地といえば、被害を受けたこの2箇所だ。今は戦力が激減して
いるこの2箇所は、合計で20万ほどの兵員が居座っている。
だが、敵機動部隊の飛空挺の猛爆を受ければその兵員の数も減る。それに装備も我がバーマントよりも優秀なものを備え
ている異世界軍が総力でかかれば・・・・・・・・・
グッツラ中佐は至急、部隊の幹部将校を集めて会議を開いた。そしてこの日の午後8時、一本の魔法通信が
岩島より西北に700キロ離れた本国の根拠地、サイフェルバンに向けて放たれた。
この日の午前10時、偵察に出ていた海竜の1匹目から報告が入った。敵異世界軍の高速
機動部隊が全てウルシーから出航し、北に向かっているとの情報である。
バーマント軍は、30ノット以上のスピードで高速機動する第58任務部隊を高速機動部隊と呼称している。
その高速機動部隊がウルシーから出てきたという事は、敵はララスクリスかクロイッチを空襲するつもり
なのか?
第23海竜情報収集隊の指揮官であるロバルト・グッツラ騎士中佐はそう考えた。だが、その後の報告が
彼の考えを改めた。
報告は2つ送られてきた。1つは小型の飛空挺母艦を中心とする機動部隊が出航した事。そしてもうひとつは
大輸送船団を伴った大艦隊が出航したことである。
すぐさま彼は思い立った。
(輸送船には地上部隊が乗っているはず。敵異世界軍、アメリカという奴らは、どこかに侵攻しようとしている!)
そして彼は、侵攻地域がどこにあるかをすぐさま見抜いた。ララスクリスとクロイッチ・・・・・
敵艦隊の進路は北を指している。そして北にある根拠地といえば、被害を受けたこの2箇所だ。今は戦力が激減して
いるこの2箇所は、合計で20万ほどの兵員が居座っている。
だが、敵機動部隊の飛空挺の猛爆を受ければその兵員の数も減る。それに装備も我がバーマントよりも優秀なものを備え
ている異世界軍が総力でかかれば・・・・・・・・・
グッツラ中佐は至急、部隊の幹部将校を集めて会議を開いた。そしてこの日の午後8時、一本の魔法通信が
岩島より西北に700キロ離れた本国の根拠地、サイフェルバンに向けて放たれた。
翌日の午前7時、第58任務部隊はララスクリスとクロイッチを空襲した。空襲は第1、第2群がクロイッチ、
第3、第4群がラリスクリスと前回と同じ割り当てで行った。
第58任務部隊は双方の都市に各3波、合計で700機以上の艦載機を持って空襲した。この空襲で、
補修を受けた宿舎や城壁などは完膚なきまでに叩き潰された。
飛行場には飛空挺の姿は無かったが、飛行場も米艦載機に荒らされまくり、またもや穴だらけとなって
しまった。
この日の空襲では、前回の時とは違った変化が見られた。変化とは、バーマント軍が占領していた
建物などにこれ見よがしに旗を立てることが無かった事である。
これには米艦載機もやや戸惑ったが、怪しいところにF6Fが機銃弾を撃ち込むと、バーマント兵は必ず
慌てながら出てきた。その建物めがけてヘルダイバーやアベンジャーは爆弾を叩き込んで木っ端微塵に吹き飛ばした。
結果、前回の空襲よりはやや成果が得られなかったように思えたではあるが、それでも両都市は再び黒煙に
包まれていた。それは、バーマントの空襲対策は無駄であったと言っているかのようだった。
第3、第4群がラリスクリスと前回と同じ割り当てで行った。
第58任務部隊は双方の都市に各3波、合計で700機以上の艦載機を持って空襲した。この空襲で、
補修を受けた宿舎や城壁などは完膚なきまでに叩き潰された。
飛行場には飛空挺の姿は無かったが、飛行場も米艦載機に荒らされまくり、またもや穴だらけとなって
しまった。
この日の空襲では、前回の時とは違った変化が見られた。変化とは、バーマント軍が占領していた
建物などにこれ見よがしに旗を立てることが無かった事である。
これには米艦載機もやや戸惑ったが、怪しいところにF6Fが機銃弾を撃ち込むと、バーマント兵は必ず
慌てながら出てきた。その建物めがけてヘルダイバーやアベンジャーは爆弾を叩き込んで木っ端微塵に吹き飛ばした。
結果、前回の空襲よりはやや成果が得られなかったように思えたではあるが、それでも両都市は再び黒煙に
包まれていた。それは、バーマントの空襲対策は無駄であったと言っているかのようだった。
サイフェルバンにはヴァルレキュア侵攻軍の総本山であるヴァルレキュア殲滅軍総司令部は、突然の米軍
侵攻に激論が交わされていた。
「今すぐ飛空挺部隊をクロイッチに派遣し、異世界軍の機動部隊を撃滅すべきです!」
「撃滅するだと?君は過去に起こった出来事を知らんのか?異世界軍に攻撃を受けた飛空挺
部隊はほとんど全滅しているのだぞ!」
「それならば5~6個空中騎士団の飛空挺を一気に飛ばせばいいではないですか。数百機の
飛空挺で飽和攻撃を行えば、せめて敵の飛空挺母艦の何隻かは撃沈できるはずです。」
「それまでに何機の飛空挺が犠牲になる?飛空挺のパイロットは工場では作れんのだぞ!」
ヴァルレキュア殲滅軍総司令官バリッチ・ロークレル騎士元帥は、正面で激しくやりあう幹部士官
の話を聞いて欝な気分だった。
侵攻に激論が交わされていた。
「今すぐ飛空挺部隊をクロイッチに派遣し、異世界軍の機動部隊を撃滅すべきです!」
「撃滅するだと?君は過去に起こった出来事を知らんのか?異世界軍に攻撃を受けた飛空挺
部隊はほとんど全滅しているのだぞ!」
「それならば5~6個空中騎士団の飛空挺を一気に飛ばせばいいではないですか。数百機の
飛空挺で飽和攻撃を行えば、せめて敵の飛空挺母艦の何隻かは撃沈できるはずです。」
「それまでに何機の飛空挺が犠牲になる?飛空挺のパイロットは工場では作れんのだぞ!」
ヴァルレキュア殲滅軍総司令官バリッチ・ロークレル騎士元帥は、正面で激しくやりあう幹部士官
の話を聞いて欝な気分だった。
当初、バーマント軍は、王都爆撃部隊が全滅した事に衝撃を受け、皇帝が直々にヴァルレキュア領の侵攻
を4ヶ月延期すると各軍に命じた。この4ヶ月という期間は、前線部隊が最新式の装備に切り替えが
終わる期限で、剣や盾に代わって新兵器である銃器が支給される予定であった。
その更新期間中にいきなり米軍がやってきたのである。
このため、ララスクリスとクロイッチに駐留する部隊はまだ剣や盾、弓矢や槍といったものしかない。
そこを、銃器も完全に取り揃えているであろう異世界軍が侵攻してきたら、目も当てられない惨状となるだろう。
既に、異世界軍の高速機動部隊は数百機以上の飛空挺を繰り出し、空襲を行っている。被害は両方の都市で
暫定だけで戦死3280人、負傷13780人と馬鹿にならないものである。
実に2個師団相当の兵員が死ぬか、使い物にならなくなったのである。米軍の仮借ない空襲が功を奏した結果
である。
その忌々しい高速機動部隊だけでなく、今度は上陸部隊を乗せた輸送船が多数後方で待機していると、海竜情報
収集隊の報告により判明している。
殲滅軍司令部の幕僚達は、この異世界軍の機動部隊と輸送船団を撃滅しようと作戦会議を開いたのであるが、
話は全然決まらなかった。
「今出さなければそれ以上の兵員が死ぬ事になります!今は損害に目をつぶってでも敵艦隊に被害を与えて
退散ささせるべきです!」
「君、敵の機動部隊は何百機という我々よりも高性能の飛空挺を持っているんだ。そこに突っ込ませても
あっという間にたかられて全滅するのが落ちだ!第一、猛訓練を行っている水切り爆撃を行う飛空挺も
あの猛烈な対空砲火相手には何機が投弾に成功するか分らんぞ。前回、敵艦に被害を与えたのは運がよか
っただけだ!」
を4ヶ月延期すると各軍に命じた。この4ヶ月という期間は、前線部隊が最新式の装備に切り替えが
終わる期限で、剣や盾に代わって新兵器である銃器が支給される予定であった。
その更新期間中にいきなり米軍がやってきたのである。
このため、ララスクリスとクロイッチに駐留する部隊はまだ剣や盾、弓矢や槍といったものしかない。
そこを、銃器も完全に取り揃えているであろう異世界軍が侵攻してきたら、目も当てられない惨状となるだろう。
既に、異世界軍の高速機動部隊は数百機以上の飛空挺を繰り出し、空襲を行っている。被害は両方の都市で
暫定だけで戦死3280人、負傷13780人と馬鹿にならないものである。
実に2個師団相当の兵員が死ぬか、使い物にならなくなったのである。米軍の仮借ない空襲が功を奏した結果
である。
その忌々しい高速機動部隊だけでなく、今度は上陸部隊を乗せた輸送船が多数後方で待機していると、海竜情報
収集隊の報告により判明している。
殲滅軍司令部の幕僚達は、この異世界軍の機動部隊と輸送船団を撃滅しようと作戦会議を開いたのであるが、
話は全然決まらなかった。
「今出さなければそれ以上の兵員が死ぬ事になります!今は損害に目をつぶってでも敵艦隊に被害を与えて
退散ささせるべきです!」
「君、敵の機動部隊は何百機という我々よりも高性能の飛空挺を持っているんだ。そこに突っ込ませても
あっという間にたかられて全滅するのが落ちだ!第一、猛訓練を行っている水切り爆撃を行う飛空挺も
あの猛烈な対空砲火相手には何機が投弾に成功するか分らんぞ。前回、敵艦に被害を与えたのは運がよか
っただけだ!」
今激しくやり合っているのは、第1航空軍司令官ののクローン・アイク中将と、司令部参謀長のマヌエル・ジュレイ
中将である。アイク中将が彼より後任なので、敬語口調である。
「私が思うには、空中騎士団は上陸して間もない異世界軍の上陸部隊に対して使うべきだと思う。いくら優れた
兵器を持つ異世界の兵士とはいえ、上陸直後を狙われたらたまらんだろう。だからこの際、飛空挺部隊は上陸まで
待機させるのだ。」
「ですが異世界軍の機動部隊は遠くまで進出できるそうではありませんか。当然重要拠点のこちらも上陸作戦の
前に叩き、戦力支援を妨害しに来ます。その前にありったけの飛空挺を飛ばして、接近してくる敵機動部隊に向かわせる
しかありませんよ。」
2人の議論はこの議題に入った直後から始まり、既に10分間も続いている。彼らの議論にいつしか幹部士官達が加わり、
会議室は喧々轟々の騒ぎとなった。騒ぎの元である2人にいたっては掴み合い寸前の激論になっている。あまりの騒がしさに、
ロークレル騎士元帥は
「静まれ!!」
と一喝して机を思い切り叩いた。バダン!!という音が室内に響き、騒がしかった室内はシーンと静まり返った。
「今は敵の侵攻に対して対抗手段を考えるのが先決である。だからここは罵りあいの場ではない。」
彼はそう言いながら、内心では彼らの思っていることを理解していた。なんせ、異世界軍は強すぎるが故に、画期的な
対抗手段が浮かび上がらない。その事に、上級士官達はイライラしているのだ。
そしてアイデアが浮かんでも、それはすぐに破綻するという結論に到ってしまう。もはや手詰まり状態なのである。
だが、出来る限りの手段はとらねばならない。だが、その出来る限りの手段がなかなか思いつかなかった。
「こうなれば・・・・・・」
ロークレル騎士元帥は苦りきった表情で口を開いた。
「ララスクリスとクロイッチの将兵には現地の死守命令を伝えるしかないだろう。」
「で・・・・・ですが。」
中将である。アイク中将が彼より後任なので、敬語口調である。
「私が思うには、空中騎士団は上陸して間もない異世界軍の上陸部隊に対して使うべきだと思う。いくら優れた
兵器を持つ異世界の兵士とはいえ、上陸直後を狙われたらたまらんだろう。だからこの際、飛空挺部隊は上陸まで
待機させるのだ。」
「ですが異世界軍の機動部隊は遠くまで進出できるそうではありませんか。当然重要拠点のこちらも上陸作戦の
前に叩き、戦力支援を妨害しに来ます。その前にありったけの飛空挺を飛ばして、接近してくる敵機動部隊に向かわせる
しかありませんよ。」
2人の議論はこの議題に入った直後から始まり、既に10分間も続いている。彼らの議論にいつしか幹部士官達が加わり、
会議室は喧々轟々の騒ぎとなった。騒ぎの元である2人にいたっては掴み合い寸前の激論になっている。あまりの騒がしさに、
ロークレル騎士元帥は
「静まれ!!」
と一喝して机を思い切り叩いた。バダン!!という音が室内に響き、騒がしかった室内はシーンと静まり返った。
「今は敵の侵攻に対して対抗手段を考えるのが先決である。だからここは罵りあいの場ではない。」
彼はそう言いながら、内心では彼らの思っていることを理解していた。なんせ、異世界軍は強すぎるが故に、画期的な
対抗手段が浮かび上がらない。その事に、上級士官達はイライラしているのだ。
そしてアイデアが浮かんでも、それはすぐに破綻するという結論に到ってしまう。もはや手詰まり状態なのである。
だが、出来る限りの手段はとらねばならない。だが、その出来る限りの手段がなかなか思いつかなかった。
「こうなれば・・・・・・」
ロークレル騎士元帥は苦りきった表情で口を開いた。
「ララスクリスとクロイッチの将兵には現地の死守命令を伝えるしかないだろう。」
「で・・・・・ですが。」
アイク中将は額に汗を浮かべながら彼に翻意を促そうとした。
「皇帝陛下が撤退を許すはずが無い。ケルベス事件を思い出して見ろ。」
彼はある事を思い出した。それは4年前のケルベス王国での侵攻作戦の時、一時バーマント軍は
指揮下の一部隊が敵に占領地を包囲されそうになった。その時の部隊の指揮官は劣勢の味方部隊を後方に
引き上げさせようとしたが、バーマント皇は現地の死守命令を命じ続けた。
結局、現地部隊の司令官は命令に逆らう事が出来なく、部隊は全滅した。バーマントでは皇帝に逆らう
者は一生日の当てられない独房に閉じ込められるか、死刑になるのが常であった。
もし勝手にララスクリス、クロイッチの部隊を撤退させれば・・・・・・・・
彼は身の毛のよだつ思いがした。せめて、異世界軍さえいなければ、こんな思いをしなくて済んだのに。
異世界軍のせいで、何もかもがメチャクチャだ!!
彼は内心で米軍を呪った。
「ララスクリスとクロイッチは断固として死守しろと命じてくれ。」
彼の言葉は、会議室に重く響いた。
そして10分後、魔法通信はクロイッチの司令部に放たれていった。
「皇帝陛下が撤退を許すはずが無い。ケルベス事件を思い出して見ろ。」
彼はある事を思い出した。それは4年前のケルベス王国での侵攻作戦の時、一時バーマント軍は
指揮下の一部隊が敵に占領地を包囲されそうになった。その時の部隊の指揮官は劣勢の味方部隊を後方に
引き上げさせようとしたが、バーマント皇は現地の死守命令を命じ続けた。
結局、現地部隊の司令官は命令に逆らう事が出来なく、部隊は全滅した。バーマントでは皇帝に逆らう
者は一生日の当てられない独房に閉じ込められるか、死刑になるのが常であった。
もし勝手にララスクリス、クロイッチの部隊を撤退させれば・・・・・・・・
彼は身の毛のよだつ思いがした。せめて、異世界軍さえいなければ、こんな思いをしなくて済んだのに。
異世界軍のせいで、何もかもがメチャクチャだ!!
彼は内心で米軍を呪った。
「ララスクリスとクロイッチは断固として死守しろと命じてくれ。」
彼の言葉は、会議室に重く響いた。
そして10分後、魔法通信はクロイッチの司令部に放たれていった。