午前11時50分 第58任務部隊
第58任務部隊がギルガメル諸島から西250マイル地点に達した時、レーダーにおびただしい機影が映った。
空母レキシントンのCICでは、その機影がどこから来ているのかが分かった。
「敵編隊接近!南西方面から我が機動部隊に向け進撃中!距離150マイル(240キロ)
!機数は140機以上!」
レーダーオペレーターの緊迫した声が響く。だが、機影はこれだけでなかった。
「あっ!さらに後方に敵編隊らしきもの確認!」
レーダーに新たな機影が映る。
先に現れた編隊の南10マイルほどの距離を置いて200機以上の飛空挺が移っており、
一部が重なってマージ状態になっている。
「奴ら、総力出撃できやがったな。」
班長のデイル・パーキンソン少佐は、忌々しそうな表情でそう呟いた。
額から冷や汗が滲んでいる。
「これは今までのよりも、最大級の激戦になるぞ。」
第58任務部隊がギルガメル諸島から西250マイル地点に達した時、レーダーにおびただしい機影が映った。
空母レキシントンのCICでは、その機影がどこから来ているのかが分かった。
「敵編隊接近!南西方面から我が機動部隊に向け進撃中!距離150マイル(240キロ)
!機数は140機以上!」
レーダーオペレーターの緊迫した声が響く。だが、機影はこれだけでなかった。
「あっ!さらに後方に敵編隊らしきもの確認!」
レーダーに新たな機影が映る。
先に現れた編隊の南10マイルほどの距離を置いて200機以上の飛空挺が移っており、
一部が重なってマージ状態になっている。
「奴ら、総力出撃できやがったな。」
班長のデイル・パーキンソン少佐は、忌々しそうな表情でそう呟いた。
額から冷や汗が滲んでいる。
「これは今までのよりも、最大級の激戦になるぞ。」
午後0時20分 第58任務部隊より南東80マイル
第58任務部隊は、午前中に合計で458機の攻撃隊を発艦させた。
そのうち、戦闘機は80機が護衛についている。
第1波、第2波、第3波の攻撃隊には常に30機以下の護衛機しかついておらず、
40機以上の護衛は、敵飛行場攻撃に向かった第4群の攻撃隊にしかつけられていない。
本来ならば、敵艦隊攻撃にむかった攻撃隊は、小数の護衛しか付いていないため、非常に危ない。
だが、今回、敵艦隊上空には護衛機がついておらず、第58任務部隊上層部は
少数の護衛で十分と判断して攻撃隊を向かわせた。
一方、敵戦闘機の迎撃の恐れがある敵飛行場爆撃隊には、ある程度、纏まった数の護衛機をつけて送り出している。
一見すると、戦闘機の数は少なく、攻撃機の数が多い。
本来なら、攻撃隊の3分の1、多くて半分ほどは護衛機が占めるものである。
だが、第4波を除いて比率は3分の1どころか、さらに下回っている。
これには理由がある。
第58任務部隊は、午前中に合計で458機の攻撃隊を発艦させた。
そのうち、戦闘機は80機が護衛についている。
第1波、第2波、第3波の攻撃隊には常に30機以下の護衛機しかついておらず、
40機以上の護衛は、敵飛行場攻撃に向かった第4群の攻撃隊にしかつけられていない。
本来ならば、敵艦隊攻撃にむかった攻撃隊は、小数の護衛しか付いていないため、非常に危ない。
だが、今回、敵艦隊上空には護衛機がついておらず、第58任務部隊上層部は
少数の護衛で十分と判断して攻撃隊を向かわせた。
一方、敵戦闘機の迎撃の恐れがある敵飛行場爆撃隊には、ある程度、纏まった数の護衛機をつけて送り出している。
一見すると、戦闘機の数は少なく、攻撃機の数が多い。
本来なら、攻撃隊の3分の1、多くて半分ほどは護衛機が占めるものである。
だが、第4波を除いて比率は3分の1どころか、さらに下回っている。
これには理由がある。
まず、この海域はバーマント軍継戦派の縄張りであり、いつ多数の飛空挺が襲い掛かってきても不思議ではない。
その大量の飛空挺を迎え撃つには、迎撃側も大量の戦闘機が必要になる。
だから、敵艦隊に敵の護衛機がいないと分かった米機動部隊は、僅かの護衛しかつけなかったのである。
この作戦に当たって、米機動部隊は、マーシャル諸島から持ち込んだ補充の艦載機と、
陸で待機状態にあったパイロットで定数を満たした。
正規空母1隻の艦載機の割合は、F6Fが40機、SB2Cが32機、TBFが24機である。
一方、軽空母にはF6Fが30機、TBFが15機となっている。
現在、機動部隊には攻撃隊に随伴していった96機を除き、全部で434機が残っており、
上空には各機動部隊から12機、計48機が上空警戒に当たっている。
この上空警戒機も間もなく燃料補給のため母艦に着艦するから、それらを除いて空戦に使える機は386機である。
敵編隊発見の報が届くと、直ちに全戦闘機に発進命令が下った。
その大量の飛空挺を迎え撃つには、迎撃側も大量の戦闘機が必要になる。
だから、敵艦隊に敵の護衛機がいないと分かった米機動部隊は、僅かの護衛しかつけなかったのである。
この作戦に当たって、米機動部隊は、マーシャル諸島から持ち込んだ補充の艦載機と、
陸で待機状態にあったパイロットで定数を満たした。
正規空母1隻の艦載機の割合は、F6Fが40機、SB2Cが32機、TBFが24機である。
一方、軽空母にはF6Fが30機、TBFが15機となっている。
現在、機動部隊には攻撃隊に随伴していった96機を除き、全部で434機が残っており、
上空には各機動部隊から12機、計48機が上空警戒に当たっている。
この上空警戒機も間もなく燃料補給のため母艦に着艦するから、それらを除いて空戦に使える機は386機である。
敵編隊発見の報が届くと、直ちに全戦闘機に発進命令が下った。
第4任務群から発艦したF6Fヘルキャット88機は、艦隊から南東80マイルの地点で待機した。
「こちらエックフォックスリーダー、エセックス聞こえるか?」
空母エセックス戦闘機隊の隊長であるデイビット・マッキャンベル中佐は無線機の向こうの管制官を呼び出した。
「こちらエセックス、聞こえる。現在敵編隊は君達の真正面の100マイル先を飛行中だ。
高度は4000メートル、時速は240マイル、数は160機だ。」
「了解。」
マッキャンベル中佐は無線機を置こうとした。その時、部下から無線通信が入った。
「隊長。敵機編隊はどの辺りまで来ていますか?」
「俺たちの真正面100マイル先をこっちに向かいながら飛んでる。あと少しで戦闘が始まるぞ。
あと数分で他の任務群の戦闘機も駆けつけると思うが、敵は戦闘機を伴っている可能性がある。
全員気を引き締めていけよ!」
「「ラジャー!」」
「こちらエックフォックスリーダー、エセックス聞こえるか?」
空母エセックス戦闘機隊の隊長であるデイビット・マッキャンベル中佐は無線機の向こうの管制官を呼び出した。
「こちらエセックス、聞こえる。現在敵編隊は君達の真正面の100マイル先を飛行中だ。
高度は4000メートル、時速は240マイル、数は160機だ。」
「了解。」
マッキャンベル中佐は無線機を置こうとした。その時、部下から無線通信が入った。
「隊長。敵機編隊はどの辺りまで来ていますか?」
「俺たちの真正面100マイル先をこっちに向かいながら飛んでる。あと少しで戦闘が始まるぞ。
あと数分で他の任務群の戦闘機も駆けつけると思うが、敵は戦闘機を伴っている可能性がある。
全員気を引き締めていけよ!」
「「ラジャー!」」
部下の声が一斉に聞こえる。
(それにしても、バンカーヒルのヘルダイバーを落とした飛空挺ってのはどんなものなのだろうか?
いずれにしろ、敵戦闘機が出張ってくる可能性はあるな。恐らく、スピードは310マイル以上は
出ているかも知れん。油断は禁物だな)
彼は心中でそう呟いた。
時間が5分・・・・10分・・・・20分と過ぎていく。天気は晴れだが、所々に雲がある。
だが、それもまばらであり、洋上が遠く見渡せる。
米戦闘機隊は次第に数が増えつつあった。第4群の戦闘機隊が80マイル地点に進出した時には、
既に300機のヘルキャットで上空が覆われていた。
そして、午後0時26分、南東の大空に、ついに敵機編隊が現れた。
「敵第1集団発見!高度は4000メートル。これより突撃する!」
全戦闘機隊の指揮を任されていたマッキャンベル中佐は、母艦にそう伝える。
「敵機は約160機、第4群隊、第3群隊は第1集団を攻撃する。
第2群隊、第1群隊は航続する別の集団を叩け。」
敵編隊は緊密な編隊を組んで味方機動部隊の方向に向かっている。
(ここから通るには通行料が必要だぜ)
マッキャンベル中佐は心でそう思った。
「第4群隊は前方から、第3群隊は後方から突撃せよ!」
右遠方にいる第3群隊の先頭のヘルキャットがバンクし、速力を上げた。
第3群隊が敵集団の右を一旦迂回するような針路を取る。
マッキャンベル中佐直率の第4群隊は前方から覆い被さるように進んでいく。
そして、両者の機影がそれぞれ横斜めに位置した時、
「攻撃開始せよ!」
マッキャンベル中佐は号令した。
1機のヘルキャットが翼を翻して降下し始める。
それが合図だったかのように、F6Fは次々と降下し始めた。
異変が起こったのはこの時だった。
不思議にも、前方に突出していた飛空挺の1機がバンクすると、いきなり急降下していった。
(それにしても、バンカーヒルのヘルダイバーを落とした飛空挺ってのはどんなものなのだろうか?
いずれにしろ、敵戦闘機が出張ってくる可能性はあるな。恐らく、スピードは310マイル以上は
出ているかも知れん。油断は禁物だな)
彼は心中でそう呟いた。
時間が5分・・・・10分・・・・20分と過ぎていく。天気は晴れだが、所々に雲がある。
だが、それもまばらであり、洋上が遠く見渡せる。
米戦闘機隊は次第に数が増えつつあった。第4群の戦闘機隊が80マイル地点に進出した時には、
既に300機のヘルキャットで上空が覆われていた。
そして、午後0時26分、南東の大空に、ついに敵機編隊が現れた。
「敵第1集団発見!高度は4000メートル。これより突撃する!」
全戦闘機隊の指揮を任されていたマッキャンベル中佐は、母艦にそう伝える。
「敵機は約160機、第4群隊、第3群隊は第1集団を攻撃する。
第2群隊、第1群隊は航続する別の集団を叩け。」
敵編隊は緊密な編隊を組んで味方機動部隊の方向に向かっている。
(ここから通るには通行料が必要だぜ)
マッキャンベル中佐は心でそう思った。
「第4群隊は前方から、第3群隊は後方から突撃せよ!」
右遠方にいる第3群隊の先頭のヘルキャットがバンクし、速力を上げた。
第3群隊が敵集団の右を一旦迂回するような針路を取る。
マッキャンベル中佐直率の第4群隊は前方から覆い被さるように進んでいく。
そして、両者の機影がそれぞれ横斜めに位置した時、
「攻撃開始せよ!」
マッキャンベル中佐は号令した。
1機のヘルキャットが翼を翻して降下し始める。
それが合図だったかのように、F6Fは次々と降下し始めた。
異変が起こったのはこの時だった。
不思議にも、前方に突出していた飛空挺の1機がバンクすると、いきなり急降下していった。
よく見ると、その1機だけ形が違う。
その1機が下方に消え去ると、残りの敵機が信じられない事に、ヘルキャット隊に立ち向かってきたのだ!
「敵編隊にファイター(戦闘機)が混じっているぞ!」
マッキャンベル中佐は部下に注意を喚起する。敵飛空挺もスピードを上げて上昇してくる。
マッキャンベル中佐は、1機の敵飛空挺に狙いをつけた。
形はややほっそりしているが、ずんぐりもしていない。
エンジンは空冷式で、3枚羽根だ。
全体的には、どことなくドイツのフォッケウルフFw190に似ている感じがするが、それと比べると少し大きい。
互いにハイスピードで迫ってくる。距離が800メートルと目測した彼は12.7ミリ機銃を放った。
ドダダダダダダ!というリズミカルな音が鳴り、6本の線が敵機に向かっていく。
目測500メートルで、敵機も両翼から機銃を撃ってきた。線は2本。
(敵機は2丁の機銃を持っているのか)
マッキャンベルは一瞬そう考える。6本の線が数秒ほど、敵機に注がれた。
次の瞬間、唸り声を上げて敵機の第一波が過ぎ去った。
「12番機、エンジンに被弾!出力が上がらない!」
「7番期被弾!されども損傷軽微!」
「畜生!腕をやられた!」
「イヤーッホウ!敵機を火達磨にしたぞ!!」
様々な声が無線機から流れ出してくる。敵機の新たな編隊が前方から突き進んでくる。
敵機は上昇、味方は下降という有利な条件にある。
マッキャンベル中佐は別の1機に狙いをつけ、距離700で機銃弾を叩き込んだ。
敵機も機銃を撃ってくる。
ガン!と何かがぶち当たる音が聞こえた。
今度の射撃は敵機の右横をかすらせただけに留まる。
その1機が下方に消え去ると、残りの敵機が信じられない事に、ヘルキャット隊に立ち向かってきたのだ!
「敵編隊にファイター(戦闘機)が混じっているぞ!」
マッキャンベル中佐は部下に注意を喚起する。敵飛空挺もスピードを上げて上昇してくる。
マッキャンベル中佐は、1機の敵飛空挺に狙いをつけた。
形はややほっそりしているが、ずんぐりもしていない。
エンジンは空冷式で、3枚羽根だ。
全体的には、どことなくドイツのフォッケウルフFw190に似ている感じがするが、それと比べると少し大きい。
互いにハイスピードで迫ってくる。距離が800メートルと目測した彼は12.7ミリ機銃を放った。
ドダダダダダダ!というリズミカルな音が鳴り、6本の線が敵機に向かっていく。
目測500メートルで、敵機も両翼から機銃を撃ってきた。線は2本。
(敵機は2丁の機銃を持っているのか)
マッキャンベルは一瞬そう考える。6本の線が数秒ほど、敵機に注がれた。
次の瞬間、唸り声を上げて敵機の第一波が過ぎ去った。
「12番機、エンジンに被弾!出力が上がらない!」
「7番期被弾!されども損傷軽微!」
「畜生!腕をやられた!」
「イヤーッホウ!敵機を火達磨にしたぞ!!」
様々な声が無線機から流れ出してくる。敵機の新たな編隊が前方から突き進んでくる。
敵機は上昇、味方は下降という有利な条件にある。
マッキャンベル中佐は別の1機に狙いをつけ、距離700で機銃弾を叩き込んだ。
敵機も機銃を撃ってくる。
ガン!と何かがぶち当たる音が聞こえた。
今度の射撃は敵機の右横をかすらせただけに留まる。
またもや互いに通り過ぎていく。
と思ったら、後ろでドカーン!という轟音が響き、一瞬オレンジ色の光がきらめき、すぐに消えた。
「18番機が敵機と衝突した!!」
この時、18番機は1機の敵機を撃墜し、さらにこの正面戦闘で1機に火を噴かせた。
その火を噴いた敵機が、自らを弾丸となして18番機に突っ込んだのだ。
時速1000キロ以上の相対速度が付いている中で、それは一瞬の出来事であった。
18番機と言えば、マッキャンベル中佐の隊の機で、気の荒い事で知られている
ゲリンスク兵曹長が操縦していた。
彼はエセックスの中では嫌われ者だったが、腕は良く、現世界で6機、この世界で5機、
計11機撃墜の記録を持つエースだった。
そして今日も敵機を叩き落した。
だが、任務後の彼の楽しみであった撃墜マークを描く事は、もはや2度と無い。
(ゲリンスク、貴様の敵は取ってやるぞ)
マッキャンベル中佐は、いかつい顔つきのゲリンスク兵曹長を思い出しながらそう呟いた。
高度は6000から3000メートルに下がっていた。
マッキャンベル中佐は上空を見てみた。そして彼は驚くべき光景を見た。
なんと、160機の敵機は、全てがヘルキャットに突っかかろうとしている。
そう、敵機の何割が護衛機ではなく、この編隊は“戦闘機のみ”で編成された攻撃隊なのだ。
つまり、彼らの獲物はこちら側の戦闘機であり、軍艦ではないのだ。
その思いがけない結果に、味方はやや苦戦しているようだ。
「こちら第2群隊リーダー、苦戦しているようだぞ!今そっちに行くから頑張れ!」
第2群の戦闘機隊指揮官が、泡を食ったような口調でまくしたてた。
普段なら、敵編隊を荒らし回っているはずだろう味方戦闘機隊、と思って視線を移すと、
予想とは違う彼我入り乱れた大乱戦が広がっている。
その光景に仰天した指揮官は、戦況を打開させるために、救援に駆けつけてきたのだ。
「やめろ!こっちは2個戦闘機群で充分だ!それよりも、君達は敵攻撃隊を迎え撃て!」
「そ・・・・そうか。分かった、君達の言うとおりに・・・・!こっちにも敵戦闘機がやってきたぞ!
10機以上はいる!悪いが俺達も少し加わらせてもらうぞ!」
と思ったら、後ろでドカーン!という轟音が響き、一瞬オレンジ色の光がきらめき、すぐに消えた。
「18番機が敵機と衝突した!!」
この時、18番機は1機の敵機を撃墜し、さらにこの正面戦闘で1機に火を噴かせた。
その火を噴いた敵機が、自らを弾丸となして18番機に突っ込んだのだ。
時速1000キロ以上の相対速度が付いている中で、それは一瞬の出来事であった。
18番機と言えば、マッキャンベル中佐の隊の機で、気の荒い事で知られている
ゲリンスク兵曹長が操縦していた。
彼はエセックスの中では嫌われ者だったが、腕は良く、現世界で6機、この世界で5機、
計11機撃墜の記録を持つエースだった。
そして今日も敵機を叩き落した。
だが、任務後の彼の楽しみであった撃墜マークを描く事は、もはや2度と無い。
(ゲリンスク、貴様の敵は取ってやるぞ)
マッキャンベル中佐は、いかつい顔つきのゲリンスク兵曹長を思い出しながらそう呟いた。
高度は6000から3000メートルに下がっていた。
マッキャンベル中佐は上空を見てみた。そして彼は驚くべき光景を見た。
なんと、160機の敵機は、全てがヘルキャットに突っかかろうとしている。
そう、敵機の何割が護衛機ではなく、この編隊は“戦闘機のみ”で編成された攻撃隊なのだ。
つまり、彼らの獲物はこちら側の戦闘機であり、軍艦ではないのだ。
その思いがけない結果に、味方はやや苦戦しているようだ。
「こちら第2群隊リーダー、苦戦しているようだぞ!今そっちに行くから頑張れ!」
第2群の戦闘機隊指揮官が、泡を食ったような口調でまくしたてた。
普段なら、敵編隊を荒らし回っているはずだろう味方戦闘機隊、と思って視線を移すと、
予想とは違う彼我入り乱れた大乱戦が広がっている。
その光景に仰天した指揮官は、戦況を打開させるために、救援に駆けつけてきたのだ。
「やめろ!こっちは2個戦闘機群で充分だ!それよりも、君達は敵攻撃隊を迎え撃て!」
「そ・・・・そうか。分かった、君達の言うとおりに・・・・!こっちにも敵戦闘機がやってきたぞ!
10機以上はいる!悪いが俺達も少し加わらせてもらうぞ!」
「おい!ちょ・・・・・・畜生!!」
マッキャンベル中佐はこの時、敵の意図が分かった。
つまり、この160機の戦闘機で味方戦闘機隊を引き付ける事で、攻撃隊の負担を軽くさせようというのだ。
そのためならば、何倍もの相手がいようと誰構わず喧嘩を吹っかけ、戦闘に引きずり込む。
これが、バーマント軍空中戦闘騎士団の策略だった。
今、上空には第4、第3群のF6F180機と、敵側の戦闘機160機が入り乱れての乱戦を繰り広げている。
そこに第2群の約半数である56機のF6Fが加わった。
数的には明らかに米側の優勢である。その証拠に、落ちていく機体は敵側のほうが多い。
だが、何も米側戦闘機も落ちていないわけではない。
墜落していく機には、明らかにF6Fと思わしき機影も混じっている。
それも1分経てば1、2機というものではない、30秒ごとに3、4機が黒煙を噴いたり、
あるいは真っ逆さまになって墜落している。
無線機には次第に罵声の混じった声が増えつつある。性能的にはこちらが上。腕前もこっちが上。
だが、敵機の気迫はこちらに勝るとも劣らないものが感じられた。
「くそ!今行くぞ!!」
マッキャンベル中佐は、新たな敵を求めて空戦域に突っ込んでいった。
やがて、1機の敵機がマッキャンベル中佐に向かってきた。
スピードは恐らく340ノットは出ているだろうか。
お互いに距離600で機銃弾を撃った。機体にガガン!と弾着の衝撃が走る。
一方、マッキャンベル中佐の機銃弾は左横を空しく通り過ぎていく。
「チッ!外したか。」
マッキャンベル中佐は舌打ちをする。両機はすれ違う。
マッキャンベルは急降下に移ろうと、操縦桿を押し込む。
F6Fのずんぐりとした機体が、猛スピードで急降下に入る。バーマント機もそれを追ってくる。
マッキャンベル中佐はこの時、敵の意図が分かった。
つまり、この160機の戦闘機で味方戦闘機隊を引き付ける事で、攻撃隊の負担を軽くさせようというのだ。
そのためならば、何倍もの相手がいようと誰構わず喧嘩を吹っかけ、戦闘に引きずり込む。
これが、バーマント軍空中戦闘騎士団の策略だった。
今、上空には第4、第3群のF6F180機と、敵側の戦闘機160機が入り乱れての乱戦を繰り広げている。
そこに第2群の約半数である56機のF6Fが加わった。
数的には明らかに米側の優勢である。その証拠に、落ちていく機体は敵側のほうが多い。
だが、何も米側戦闘機も落ちていないわけではない。
墜落していく機には、明らかにF6Fと思わしき機影も混じっている。
それも1分経てば1、2機というものではない、30秒ごとに3、4機が黒煙を噴いたり、
あるいは真っ逆さまになって墜落している。
無線機には次第に罵声の混じった声が増えつつある。性能的にはこちらが上。腕前もこっちが上。
だが、敵機の気迫はこちらに勝るとも劣らないものが感じられた。
「くそ!今行くぞ!!」
マッキャンベル中佐は、新たな敵を求めて空戦域に突っ込んでいった。
やがて、1機の敵機がマッキャンベル中佐に向かってきた。
スピードは恐らく340ノットは出ているだろうか。
お互いに距離600で機銃弾を撃った。機体にガガン!と弾着の衝撃が走る。
一方、マッキャンベル中佐の機銃弾は左横を空しく通り過ぎていく。
「チッ!外したか。」
マッキャンベル中佐は舌打ちをする。両機はすれ違う。
マッキャンベルは急降下に移ろうと、操縦桿を押し込む。
F6Fのずんぐりとした機体が、猛スピードで急降下に入る。バーマント機もそれを追ってくる。
後方900メートルに位置したバーマント機はしつこくマッキャンベル機に追いつこうとする、が、
「ふむ。急降下速度ではヘルキャットのほうが勝っているか。」
彼はそう呟いた。その証拠に、バーマント機はぐんぐん引き離されている。
やがて、高度1100になった所で操縦桿を引き、機体を上昇に転じさせた。
グオオオオーー!と、エンジンが轟音を上げる。
プラット&ホイットニー社製のエンジンがぐいぐいと、重そうなヘルキャットの機体を引っ張り上げる。
今度はバーマント機が正面から現れた。正面上方から被さるように向かってくる。
最初は点みたいだった機影が、あっという間に大きくなってくる。
距離500で機銃弾を放った。リズミカルな振動と共に、6本の線が敵機を捉えようとする。
敵機も2丁の機銃をぶっ放して、マッキャンベル機の息の根を止めようとする。
機銃弾は命中しなかった。何度目かになるお互いのすれ違いが起きる。
轟音と乱気流を振りまきながら、互いに通り過ぎる。
今度は近距離で旋回しようとしてきた。
「格闘戦か。厄介なもんに巻き込まれたな」
マッキャンベルはそうぼやきつつも、すぐに旋回に入る。
F6Fの後ろに付こうとしていたバーマント機だが、当のF6Fがすぐに旋回に移ったため、
バーマント機もそれを追いかける形で旋回を続ける。
お互いに列機はいない。マッキャンベルは先の正面戦闘で、不覚にも寮機とはぐれてしまっている。
(あのバーマント機はどういう経緯で単機になってしまったのだろうか?)
ふと、そう言う思いが頭をよぎった。それも一瞬で振り払って、操縦に専念する。
互いに一歩も譲らぬ巴戦が開始された。
ずんぐり系の機と引き締まった系の機がドッグファイトを繰り返す様は、
まるで太ったデブ犬と、中ぐらいの犬が行う犬闘のようだ。
1周 が過ぎ・・・・2周が過ぎ・・・・3周が過ぎ・・・・・
何回旋回しても、一向に収まる気配がない。ドッグファイト、日本で言う巴戦は忍耐の勝負でもある。
「ふむ。急降下速度ではヘルキャットのほうが勝っているか。」
彼はそう呟いた。その証拠に、バーマント機はぐんぐん引き離されている。
やがて、高度1100になった所で操縦桿を引き、機体を上昇に転じさせた。
グオオオオーー!と、エンジンが轟音を上げる。
プラット&ホイットニー社製のエンジンがぐいぐいと、重そうなヘルキャットの機体を引っ張り上げる。
今度はバーマント機が正面から現れた。正面上方から被さるように向かってくる。
最初は点みたいだった機影が、あっという間に大きくなってくる。
距離500で機銃弾を放った。リズミカルな振動と共に、6本の線が敵機を捉えようとする。
敵機も2丁の機銃をぶっ放して、マッキャンベル機の息の根を止めようとする。
機銃弾は命中しなかった。何度目かになるお互いのすれ違いが起きる。
轟音と乱気流を振りまきながら、互いに通り過ぎる。
今度は近距離で旋回しようとしてきた。
「格闘戦か。厄介なもんに巻き込まれたな」
マッキャンベルはそうぼやきつつも、すぐに旋回に入る。
F6Fの後ろに付こうとしていたバーマント機だが、当のF6Fがすぐに旋回に移ったため、
バーマント機もそれを追いかける形で旋回を続ける。
お互いに列機はいない。マッキャンベルは先の正面戦闘で、不覚にも寮機とはぐれてしまっている。
(あのバーマント機はどういう経緯で単機になってしまったのだろうか?)
ふと、そう言う思いが頭をよぎった。それも一瞬で振り払って、操縦に専念する。
互いに一歩も譲らぬ巴戦が開始された。
ずんぐり系の機と引き締まった系の機がドッグファイトを繰り返す様は、
まるで太ったデブ犬と、中ぐらいの犬が行う犬闘のようだ。
1周 が過ぎ・・・・2周が過ぎ・・・・3周が過ぎ・・・・・
何回旋回しても、一向に収まる気配がない。ドッグファイト、日本で言う巴戦は忍耐の勝負でもある。
旋回中はGがかなりかかるため、体の負担が大きい。
そのため、耐え切れぬものは旋回をやめて逃げようとする。
だが、不用意に旋回をやめようならば、あっという間に後ろに食いつかれて機銃弾を叩き込まれる。
それが分かっているからこそ、互いに引けない。
だが、ここでも性能の差は出てきた。
マッキャンベル中佐は、徐々にだが敵機の後ろに近づきつつある。
そして幾度目かの旋回を終えた時、マッキャンベル中佐はそのバーマント機の後ろに回っていた。
高度は2500から700まで落ちている。
バーマント機のパイロットが不意にマッキャンベル中佐を振り向く。
「もらったぞ!」
彼は発射ボタンを押した。ダダダダダ!という音と振動と共に、12.7ミリ機銃が撃ち出された。
敵機の未来位置に発射された機銃弾は、上から突き刺さるように敵機に命中した。
パッパッパッと、命中の火花が飛び散る。
さすがに頑丈なバーマント機は少し撃ち込んだだけでは火を噴かない。
さらに機銃弾を叩き込む。
機銃弾命中の火花が左主翼に多数飛び散った、と思うと、その主翼の真ん中からぼっきりと折れた。
数十発の機銃弾を集中して当てられたため、耐久構造に限界が生じ、ついに致命的な亀裂が主翼に広がった。
亀裂は風圧によってさらに広がる。
風は傷を押し広げ、ついには傷が真ん中を縦に広がり、そして新たなる被弾がこの翼の微かな生命を奪った。
片方の主翼が半分以上も叩き折られたバーマント機は、破片を撒き散らしながらバランスを崩して海面に落下していった。
やがて、破片と共に水柱が吹き上がる。
そのため、耐え切れぬものは旋回をやめて逃げようとする。
だが、不用意に旋回をやめようならば、あっという間に後ろに食いつかれて機銃弾を叩き込まれる。
それが分かっているからこそ、互いに引けない。
だが、ここでも性能の差は出てきた。
マッキャンベル中佐は、徐々にだが敵機の後ろに近づきつつある。
そして幾度目かの旋回を終えた時、マッキャンベル中佐はそのバーマント機の後ろに回っていた。
高度は2500から700まで落ちている。
バーマント機のパイロットが不意にマッキャンベル中佐を振り向く。
「もらったぞ!」
彼は発射ボタンを押した。ダダダダダ!という音と振動と共に、12.7ミリ機銃が撃ち出された。
敵機の未来位置に発射された機銃弾は、上から突き刺さるように敵機に命中した。
パッパッパッと、命中の火花が飛び散る。
さすがに頑丈なバーマント機は少し撃ち込んだだけでは火を噴かない。
さらに機銃弾を叩き込む。
機銃弾命中の火花が左主翼に多数飛び散った、と思うと、その主翼の真ん中からぼっきりと折れた。
数十発の機銃弾を集中して当てられたため、耐久構造に限界が生じ、ついに致命的な亀裂が主翼に広がった。
亀裂は風圧によってさらに広がる。
風は傷を押し広げ、ついには傷が真ん中を縦に広がり、そして新たなる被弾がこの翼の微かな生命を奪った。
片方の主翼が半分以上も叩き折られたバーマント機は、破片を撒き散らしながらバランスを崩して海面に落下していった。
やがて、破片と共に水柱が吹き上がる。
それは、乗員の無念の叫びを象徴しているかのようだった。
午後0時58分 第58任務部隊第4任務群
「敵大編隊接近!距離30マイル。機数120機!」
第4任務群旗艦、エセックスの艦橋で、CICから切迫した声が流れてきた。
「何てことだ。400機近いF6Fの防御が破られるとは・・・・・」
司令官席に座る第4任務群指揮官、ウイリアム・ハリル少将は顔を強張らせながら、小さな声で呟く。
防空戦闘機隊は、敵の戦闘機集団との乱戦で、約200機以上が戦闘に参加した。
残る機体は、後続してきたバーマント攻撃隊本隊に殴りこんだ。
バーマント攻撃隊は260機以上の大編隊で、これが本当の攻撃集団第1陣であった。
念の為に飛ばした策敵機の情報によると、この大編隊の後方に更なる敵攻撃隊、約200機、
という恐るべき報告がもたらされている。
つまり、バーマント軍は持てる限りの飛空挺を持って、米機動部隊と雌雄を決する腹積もりだ。
それも総力戦と言う形で。
米戦闘機隊は阿修羅のように奮戦し、攻撃隊の第1陣のうち、130機以上を叩き落していた。
だが、数の不足は如何ともしがたく、ついに攻撃集団に防御ラインを突破されてしまった。
その攻撃隊は、全てが第4群に向かっている。
「降りかかる火の粉は払わねばならない。」
ハリルは、南西の方角を睨みすえる。
現在、第4群にはエスコート艦として、戦艦サウスダコタ、重巡洋艦ウィチタ、
軽巡洋艦ヒューストン、マイアミ、ビンセンズ、駆逐艦スタンリー、コンバース、
スペンス、サッチャー、ダイソン、ランズダウンチャールズ・オスバーン、ラードナー、
マッカラ、エレット、ラング、スタレットウィルソン、ケイス、ストックハム、トワイニング。
計19隻が、エセックス、ランドルフ、カウペンス、ラングレーの周囲を取り囲んでいる。
エスコート艦のうち、戦艦サウスダコタ、重巡洋艦ウィチタ、駆逐艦ストックハム、
トワイニングは第7群から貸し与えられている。
それらが輪形陣を組んで、迫り来るであろうバーマント軍継戦派の攻撃に備えている。
第4群は、これが異世界に来て始めての対空戦闘である。
敵機の編隊は、半数が高度を上げ、半数が海面近くに高度を下げ始めた。
「敵大編隊接近!距離30マイル。機数120機!」
第4任務群旗艦、エセックスの艦橋で、CICから切迫した声が流れてきた。
「何てことだ。400機近いF6Fの防御が破られるとは・・・・・」
司令官席に座る第4任務群指揮官、ウイリアム・ハリル少将は顔を強張らせながら、小さな声で呟く。
防空戦闘機隊は、敵の戦闘機集団との乱戦で、約200機以上が戦闘に参加した。
残る機体は、後続してきたバーマント攻撃隊本隊に殴りこんだ。
バーマント攻撃隊は260機以上の大編隊で、これが本当の攻撃集団第1陣であった。
念の為に飛ばした策敵機の情報によると、この大編隊の後方に更なる敵攻撃隊、約200機、
という恐るべき報告がもたらされている。
つまり、バーマント軍は持てる限りの飛空挺を持って、米機動部隊と雌雄を決する腹積もりだ。
それも総力戦と言う形で。
米戦闘機隊は阿修羅のように奮戦し、攻撃隊の第1陣のうち、130機以上を叩き落していた。
だが、数の不足は如何ともしがたく、ついに攻撃集団に防御ラインを突破されてしまった。
その攻撃隊は、全てが第4群に向かっている。
「降りかかる火の粉は払わねばならない。」
ハリルは、南西の方角を睨みすえる。
現在、第4群にはエスコート艦として、戦艦サウスダコタ、重巡洋艦ウィチタ、
軽巡洋艦ヒューストン、マイアミ、ビンセンズ、駆逐艦スタンリー、コンバース、
スペンス、サッチャー、ダイソン、ランズダウンチャールズ・オスバーン、ラードナー、
マッカラ、エレット、ラング、スタレットウィルソン、ケイス、ストックハム、トワイニング。
計19隻が、エセックス、ランドルフ、カウペンス、ラングレーの周囲を取り囲んでいる。
エスコート艦のうち、戦艦サウスダコタ、重巡洋艦ウィチタ、駆逐艦ストックハム、
トワイニングは第7群から貸し与えられている。
それらが輪形陣を組んで、迫り来るであろうバーマント軍継戦派の攻撃に備えている。
第4群は、これが異世界に来て始めての対空戦闘である。
敵機の編隊は、半数が高度を上げ、半数が海面近くに高度を下げ始めた。
輪形陣外輪部に位置する駆逐艦ケイスが5インチ単装両用砲を撃ち始めた。
それをきっかけに、外輪部の駆逐艦、少し内側の軽巡が一斉に砲弾を放ち、戦いの火蓋を切った。
軽巡洋艦ヒューストン艦長であるドミニク・クランチ大佐は、艦橋で敵機を眺めていた。
ヒューストンの5インチ連装高角砲が7秒おきに砲弾を放っている。
たちまち、バーマント軍機の周囲に黒い炸裂煙が湧き上がる。
その弾幕に、高空、低空のバーマント機は突っ込んでくる。
「畜生め、敵機が高空、低空と同時に進んでこなければ、全部の砲を一箇所に撃ち込めるんだがなあ」
クランチ大佐は苦虫を噛み潰したような表情で嘆いた。
実は、敵機が高空、低空の両方で進撃してきたため、対空砲火が分散されているのである。
分散されると、その方面の敵機の弾幕は薄いものとなる。だが、
「敵機1機撃墜!続いてもう1機が爆発!」
見張りの弾んだ声が聞こえてくる。
対空砲火は分散されているが、VT信管付の砲弾は、仕事をこなしているようだ。
敵機の編隊は、輪形陣の距離を詰めるたびに、撃墜機が増えていく。
分散されているとはいえ、猛烈な弾幕だ。駆逐艦は対空機銃も撃ち出した。
弾幕がより一層激しくなる。
(この激烈な対空砲火の前に、突破できるバーマント機はいないだろう。
最も、敵機が俺達を無視してくれればだが・・・・)
しかし、敵機の編隊は、突然何機かが分離して、目の前のエスコート艦に襲い掛かった。
上空に来ている敵機は、すぐに急降下に移り、低空進入の敵機は、味方駆逐艦の方向に針路を向ける。
合計で20機の敵機が、それぞれ分散して輪形陣外輪部の駆逐艦に襲い掛かった。
自らが聞きに陥った駆逐艦群はすぐに回避行動を取る。
それをきっかけに、外輪部の駆逐艦、少し内側の軽巡が一斉に砲弾を放ち、戦いの火蓋を切った。
軽巡洋艦ヒューストン艦長であるドミニク・クランチ大佐は、艦橋で敵機を眺めていた。
ヒューストンの5インチ連装高角砲が7秒おきに砲弾を放っている。
たちまち、バーマント軍機の周囲に黒い炸裂煙が湧き上がる。
その弾幕に、高空、低空のバーマント機は突っ込んでくる。
「畜生め、敵機が高空、低空と同時に進んでこなければ、全部の砲を一箇所に撃ち込めるんだがなあ」
クランチ大佐は苦虫を噛み潰したような表情で嘆いた。
実は、敵機が高空、低空の両方で進撃してきたため、対空砲火が分散されているのである。
分散されると、その方面の敵機の弾幕は薄いものとなる。だが、
「敵機1機撃墜!続いてもう1機が爆発!」
見張りの弾んだ声が聞こえてくる。
対空砲火は分散されているが、VT信管付の砲弾は、仕事をこなしているようだ。
敵機の編隊は、輪形陣の距離を詰めるたびに、撃墜機が増えていく。
分散されているとはいえ、猛烈な弾幕だ。駆逐艦は対空機銃も撃ち出した。
弾幕がより一層激しくなる。
(この激烈な対空砲火の前に、突破できるバーマント機はいないだろう。
最も、敵機が俺達を無視してくれればだが・・・・)
しかし、敵機の編隊は、突然何機かが分離して、目の前のエスコート艦に襲い掛かった。
上空に来ている敵機は、すぐに急降下に移り、低空進入の敵機は、味方駆逐艦の方向に針路を向ける。
合計で20機の敵機が、それぞれ分散して輪形陣外輪部の駆逐艦に襲い掛かった。
自らが聞きに陥った駆逐艦群はすぐに回避行動を取る。
機銃や両用砲を撃ちまくりながら、敵機の急降下爆撃や、スキップボミングを外そうと必死に操艦する。
狙われたのは4隻だった。そのうちの1隻、駆逐艦ケイスに最初の爆弾が至近弾として落下した。
ケイスは高空から4機、低空から2機に襲われた。
急降下爆撃機を2機撃墜したが、2機に投弾を許してしまった。
1発目、2発目と水柱が上がる。だが、低空からの刺客も残っている。
すぐに目標を変更し、向けられるだけの対空砲火を撃ちまくる。
1機を叩き落したが、距離700で爆弾を投下、そのままは跳ね飛び、ケイスの艦尾に命中
狙われたのは4隻だった。そのうちの1隻、駆逐艦ケイスに最初の爆弾が至近弾として落下した。
ケイスは高空から4機、低空から2機に襲われた。
急降下爆撃機を2機撃墜したが、2機に投弾を許してしまった。
1発目、2発目と水柱が上がる。だが、低空からの刺客も残っている。
すぐに目標を変更し、向けられるだけの対空砲火を撃ちまくる。
1機を叩き落したが、距離700で爆弾を投下、そのままは跳ね飛び、ケイスの艦尾に命中
しなかった。
ケイスは危うく被弾から逃れた
。誰もが少し安堵した時、突然爆発音が轟いた。
それは、ケイスの後方900メートルで対空射撃を行っていた駆逐艦エレットだった。
エレットには高空から6機、低空から4機が襲い掛かり、そのうち高空の爆弾1発と、
低空からの反跳爆撃2発を食らってしまった。
たちまち重傷を負ったエレットは、力尽きたようにスピードを落とし、艦隊から落伍し始めた。
さらにその後方の駆逐艦ラングまでもが中央部に急降下爆撃の爆弾を叩きつけられてしまった。
爆弾は2本の煙突の間に命中し、最上甲板下の機関室で炸裂した。
働いていた機関科員のうち、24人が即死し、14人が重軽傷を負った。
人事不省に陥った機関室は徐々に回転速度を下げていき、艦のスピードが低下。
そしてケイスと同様に輪形陣から後ろに取り残されていく。
4隻が狙われ、2隻の駆逐艦が落伍したのである。
「敵は相当な手練だぞ!攻撃の仕方がうまい!」
その一部始終を目の当たりにしていたクランチ艦長は思わず感嘆するほど、敵の手際はあっさりしていた。
ケイスとラングの抜けた穴から、飛空挺集団24機が入りつつあった。
。誰もが少し安堵した時、突然爆発音が轟いた。
それは、ケイスの後方900メートルで対空射撃を行っていた駆逐艦エレットだった。
エレットには高空から6機、低空から4機が襲い掛かり、そのうち高空の爆弾1発と、
低空からの反跳爆撃2発を食らってしまった。
たちまち重傷を負ったエレットは、力尽きたようにスピードを落とし、艦隊から落伍し始めた。
さらにその後方の駆逐艦ラングまでもが中央部に急降下爆撃の爆弾を叩きつけられてしまった。
爆弾は2本の煙突の間に命中し、最上甲板下の機関室で炸裂した。
働いていた機関科員のうち、24人が即死し、14人が重軽傷を負った。
人事不省に陥った機関室は徐々に回転速度を下げていき、艦のスピードが低下。
そしてケイスと同様に輪形陣から後ろに取り残されていく。
4隻が狙われ、2隻の駆逐艦が落伍したのである。
「敵は相当な手練だぞ!攻撃の仕方がうまい!」
その一部始終を目の当たりにしていたクランチ艦長は思わず感嘆するほど、敵の手際はあっさりしていた。
ケイスとラングの抜けた穴から、飛空挺集団24機が入りつつあった。
120機の敵機と言えど、全部が固まっているのではなく、20機、または30機以上の
梯団に分かれて、それが1個梯団ずつ進撃しているのだ。
当然、やや間のあいた時間差攻撃となる。
エスコート艦が2隻撃破され、2隻が定位置から大きく離れた今、輪形陣の左上には大きな穴が開いてしまっている。
その穴から、第2梯団の飛空挺群が入りつつあるのだ。
そして、その一部は当然、エスコート艦を狙ってきた。
次なる目標は、空母の横2500メートルで対空砲火を撃ちまくる巡洋艦だ。
24機の敵飛空挺はまず、2隻の巡洋艦、ウィチタとヒューストンを狙ってきた。
ヒューストンには高空から5機、低空から4機。
ヒューストンには高空から8機、低空から7機が襲い掛かってきた。
「なんで俺たちに多く向かってくるんだ!?」
クランチ艦長は、自分達の艦だけに向かう敵機が多い事に腹を立てた。
5インチ連装高角砲が高めに仰角を取り、7秒おきにVT信管付の砲弾を放つ。
それに負けじとばかりに、40ミリ機銃が撃ちまくる。
あたりは高角砲の連続発射と、機銃の射撃音で騒然となった。
「敵機、左舷上方より8機、突っ込んでくる!」
敵飛空挺が、唸り声を上げてヒューストンに突っかかってくる。
高度3500メートルから、65度の角度でまっしぐらに向かってきている。
それに向けて高角砲、機銃が激しく撃ちまくる。
第58任務部隊が襲ったバーマント艦隊の対空砲火など、この激しい銃砲火に比べれれば子供と巨人の違いがある。
先頭の1機が40ミリ機銃弾に機首を叩き潰され、プロペラを砕かれる。
そのままコントロール不能に陥り、悲鳴のような音を立ててヒューストンの左舷600メートルの海域に墜落した。
2番機にVT信管付の高角砲弾が至近で炸裂する。
次の瞬間、燃料、爆弾に多数の破片を食らった敵飛空挺がひとむらの炎に早変わりし、あっという間に砕け散った。
「左舷低空より敵機接近!」
梯団に分かれて、それが1個梯団ずつ進撃しているのだ。
当然、やや間のあいた時間差攻撃となる。
エスコート艦が2隻撃破され、2隻が定位置から大きく離れた今、輪形陣の左上には大きな穴が開いてしまっている。
その穴から、第2梯団の飛空挺群が入りつつあるのだ。
そして、その一部は当然、エスコート艦を狙ってきた。
次なる目標は、空母の横2500メートルで対空砲火を撃ちまくる巡洋艦だ。
24機の敵飛空挺はまず、2隻の巡洋艦、ウィチタとヒューストンを狙ってきた。
ヒューストンには高空から5機、低空から4機。
ヒューストンには高空から8機、低空から7機が襲い掛かってきた。
「なんで俺たちに多く向かってくるんだ!?」
クランチ艦長は、自分達の艦だけに向かう敵機が多い事に腹を立てた。
5インチ連装高角砲が高めに仰角を取り、7秒おきにVT信管付の砲弾を放つ。
それに負けじとばかりに、40ミリ機銃が撃ちまくる。
あたりは高角砲の連続発射と、機銃の射撃音で騒然となった。
「敵機、左舷上方より8機、突っ込んでくる!」
敵飛空挺が、唸り声を上げてヒューストンに突っかかってくる。
高度3500メートルから、65度の角度でまっしぐらに向かってきている。
それに向けて高角砲、機銃が激しく撃ちまくる。
第58任務部隊が襲ったバーマント艦隊の対空砲火など、この激しい銃砲火に比べれれば子供と巨人の違いがある。
先頭の1機が40ミリ機銃弾に機首を叩き潰され、プロペラを砕かれる。
そのままコントロール不能に陥り、悲鳴のような音を立ててヒューストンの左舷600メートルの海域に墜落した。
2番機にVT信管付の高角砲弾が至近で炸裂する。
次の瞬間、燃料、爆弾に多数の破片を食らった敵飛空挺がひとむらの炎に早変わりし、あっという間に砕け散った。
「左舷低空より敵機接近!」
敵機は高空からだけではない。低空からも迫ってくる。
割り当てられた2基の連装高角砲と、機銃が釣瓶打ちを加える。
低空から接近した敵機も猛烈な銃砲火を浴びせられ、たちまち1機が爆砕される。
「敵機高度1200!」
「取り舵一杯!」
クランチ艦長はすかさず取り舵一杯を号令する。やや経って、艦首が左に振られる。
「敵機高度800!爆弾投下!」
「低空の敵機爆弾投下!」
高、低の敵が遂に爆弾を投下した。
まず、3番機が先に投弾する。その爆弾はヒューストンの右舷側海面に着弾し、空しく水柱を上げた。
20ミリ機銃も加わった対空防御は凄まじい。たちまち4、5番機が投下前に連続で撃墜される。
6番機が胴体から爆弾を投下した。6番機の爆弾は右舷中央側の海面に至近弾として落下した。
水柱によって破片が甲板上に飛び込み、機銃員6人が負傷した。
一方、ヒューストンから距離1000で放たれた爆弾は、既に600メートルの距離まで来ていた。
しかし、左回頭したヒューストンは、爆弾と向き合う形になっており、7発の爆弾のほとんどが、
ヒューストンから外れる事になった。
クランチ艦長は急降下爆撃よりも反跳爆撃を恐れていた。そこで彼は咄嗟に考えた。
横腹を見せて被弾面積を高めるよりも、爆弾投下と同時にその方向に向けて急回頭し、
対抗面積を一気に減らそうと考えたのである。
その考えは大分成功した。だが、1発がヒューストンの真正面に向き合う形になってしまった。
「舵戻せ!面舵30度!」
割り当てられた2基の連装高角砲と、機銃が釣瓶打ちを加える。
低空から接近した敵機も猛烈な銃砲火を浴びせられ、たちまち1機が爆砕される。
「敵機高度1200!」
「取り舵一杯!」
クランチ艦長はすかさず取り舵一杯を号令する。やや経って、艦首が左に振られる。
「敵機高度800!爆弾投下!」
「低空の敵機爆弾投下!」
高、低の敵が遂に爆弾を投下した。
まず、3番機が先に投弾する。その爆弾はヒューストンの右舷側海面に着弾し、空しく水柱を上げた。
20ミリ機銃も加わった対空防御は凄まじい。たちまち4、5番機が投下前に連続で撃墜される。
6番機が胴体から爆弾を投下した。6番機の爆弾は右舷中央側の海面に至近弾として落下した。
水柱によって破片が甲板上に飛び込み、機銃員6人が負傷した。
一方、ヒューストンから距離1000で放たれた爆弾は、既に600メートルの距離まで来ていた。
しかし、左回頭したヒューストンは、爆弾と向き合う形になっており、7発の爆弾のほとんどが、
ヒューストンから外れる事になった。
クランチ艦長は急降下爆撃よりも反跳爆撃を恐れていた。そこで彼は咄嗟に考えた。
横腹を見せて被弾面積を高めるよりも、爆弾投下と同時にその方向に向けて急回頭し、
対抗面積を一気に減らそうと考えたのである。
その考えは大分成功した。だが、1発がヒューストンの真正面に向き合う形になってしまった。
「舵戻せ!面舵30度!」
クランチ艦長はすかさず次の号令を下す。その間にも、爆弾は迫ってくる。
爆弾が艦首真正面にぶち当たるか、ヒューストンが艦首を振ってやりすごすか・・・・・
爆弾が艦首真正面にぶち当たるか、ヒューストンが艦首を振ってやりすごすか・・・・・
時間との競争だ。
やがて、艦首が右に振られ始めた時、7番機の投下した爆弾が右舷後部に至近弾となった。
ズーン!という下から突き上げるような強い衝撃がヒューストンを揺さぶった。
それが、右回頭をやや遅らせる結果となった。
「爆弾接近!避けられません!」
「総員衝撃に備えー!」
クランチ艦長は絶叫した。
爆弾が左舷側第1砲塔の舷側に消えた、と思うと、突然ドーン!という轟音が鳴り響いた。
その直後に後部にも強い衝撃が起こった。
8番機が炎上しながら爆弾を投下し、後部第3砲塔に400キロ爆弾を叩きつけたのだ。
左舷前部舷側に命中した爆弾は、第2甲板の兵員室で炸裂し、浸水を招いてしまった。
第3砲塔は天蓋を叩き割って砲塔内部で炸裂。
砲塔内部で6インチ砲弾が誘爆し、砲塔は台座から外れ、第4砲塔の旋回盤まで歪めてしまった。
わずか2発の被弾で、ヒューストンは速力が低下し、砲戦力の50%を失ったのである。
「おのれえ・・・・よくも俺のヒューストンを!!」
クランチ艦長は悔しそうに地団駄を踏んだ。だが、ヒューストンはまだましであった。
前方のウィチタは急降下爆撃を2発浴びた上、低空からの反跳爆撃を舷側に3発も頂戴してしまい、
海面をのた打ち回っていた。
ズーン!という下から突き上げるような強い衝撃がヒューストンを揺さぶった。
それが、右回頭をやや遅らせる結果となった。
「爆弾接近!避けられません!」
「総員衝撃に備えー!」
クランチ艦長は絶叫した。
爆弾が左舷側第1砲塔の舷側に消えた、と思うと、突然ドーン!という轟音が鳴り響いた。
その直後に後部にも強い衝撃が起こった。
8番機が炎上しながら爆弾を投下し、後部第3砲塔に400キロ爆弾を叩きつけたのだ。
左舷前部舷側に命中した爆弾は、第2甲板の兵員室で炸裂し、浸水を招いてしまった。
第3砲塔は天蓋を叩き割って砲塔内部で炸裂。
砲塔内部で6インチ砲弾が誘爆し、砲塔は台座から外れ、第4砲塔の旋回盤まで歪めてしまった。
わずか2発の被弾で、ヒューストンは速力が低下し、砲戦力の50%を失ったのである。
「おのれえ・・・・よくも俺のヒューストンを!!」
クランチ艦長は悔しそうに地団駄を踏んだ。だが、ヒューストンはまだましであった。
前方のウィチタは急降下爆撃を2発浴びた上、低空からの反跳爆撃を舷側に3発も頂戴してしまい、
海面をのた打ち回っていた。
「ヒューストン、ウィチタ被弾!」
艦橋に見張りの声が響く。左舷2500メートルの位置にいたヒューストンとウィチタが黒煙を噴出している。
特にウィチタの被害が酷いらしい。
ヒューストンは一旦後方に下がりかけたが、再び増速してランドルフとカウペンスの間に入る。
「ウィチタが落伍していきます。」
黒煙の量が多いウィチタは、スピードが出せないのか徐々に後ろに取り残されていく。
艦隊速力は戦艦サウスダコタが出せる28ノットの最高速度に合わせているから、
現在28ノットのスピードが出ている。
ウィチタは28ノットのスピードが出せないらしい。
「恐らく、機関部に損傷を受けたな。」
空母ランドルフ艦長、フランソワ・シアーズ大佐は眉をひそめた。
「敵第3梯団36機!本艦に向かってくる!」
よく見ると、3つめの攻撃集団が、全てランドルフの方向を目指している。
他のエスコート艦には目もくれない。
「あいつら、ついに大物食いをやろうと決めやがったな。」
シアーズ大佐の顔が忌々しげに歪む。
「それも、俺のランドルフを、だが、その前に叩き落してやる。」
艦橋前、後部の5インチ連装高角砲がガンガン音を立てて撃ちまくる。
敵機は現在、輪形陣の開いた穴から進撃してきている。
敵編隊の内容は、高空から26機、低空から10機の割合である。
距離は4000。5インチ砲の射程距離に充分入る。
高空からの1機がいきなり火を噴いて墜落する。
かと思えば、砲弾の炸裂を近くに受けた敵機が、直後にバランスを崩して錐もみ状態で落ちていく。
その敵機は目立った損傷は無いが、砲弾の破片が搭乗員を抹殺したのである。
エスコート艦は減ったものの、艦隊上空の対空砲火は激烈である。
上空には無数の黒い花が咲き、それらが一寸刻みにバーマント機の体力を奪っていく。
高空の敵機がさらに3機叩き落された。これで5機が戦列から消えた事になる。
特にウィチタの被害が酷いらしい。
ヒューストンは一旦後方に下がりかけたが、再び増速してランドルフとカウペンスの間に入る。
「ウィチタが落伍していきます。」
黒煙の量が多いウィチタは、スピードが出せないのか徐々に後ろに取り残されていく。
艦隊速力は戦艦サウスダコタが出せる28ノットの最高速度に合わせているから、
現在28ノットのスピードが出ている。
ウィチタは28ノットのスピードが出せないらしい。
「恐らく、機関部に損傷を受けたな。」
空母ランドルフ艦長、フランソワ・シアーズ大佐は眉をひそめた。
「敵第3梯団36機!本艦に向かってくる!」
よく見ると、3つめの攻撃集団が、全てランドルフの方向を目指している。
他のエスコート艦には目もくれない。
「あいつら、ついに大物食いをやろうと決めやがったな。」
シアーズ大佐の顔が忌々しげに歪む。
「それも、俺のランドルフを、だが、その前に叩き落してやる。」
艦橋前、後部の5インチ連装高角砲がガンガン音を立てて撃ちまくる。
敵機は現在、輪形陣の開いた穴から進撃してきている。
敵編隊の内容は、高空から26機、低空から10機の割合である。
距離は4000。5インチ砲の射程距離に充分入る。
高空からの1機がいきなり火を噴いて墜落する。
かと思えば、砲弾の炸裂を近くに受けた敵機が、直後にバランスを崩して錐もみ状態で落ちていく。
その敵機は目立った損傷は無いが、砲弾の破片が搭乗員を抹殺したのである。
エスコート艦は減ったものの、艦隊上空の対空砲火は激烈である。
上空には無数の黒い花が咲き、それらが一寸刻みにバーマント機の体力を奪っていく。
高空の敵機がさらに3機叩き落された。これで5機が戦列から消えた事になる。
やがて、高空の敵機がランドルフに向けて急降下を始めた。
「左舷前方上方より急降下!」
40ミリ機銃、20ミリ機銃も射撃を開始する。
右舷800メートルのエセックスも妹を救うべく、5インチ砲、40ミリ機銃を撃ちまくる。
無数の曳光弾がランドルフの上空に殺到し、たちまち空が機銃のアイスキャンデーに覆われた。
バーマント機はそれでも突っ込んできた。
まず、先頭の機がアッパーカットを食らったかのように機首を叩き壊される。
戦闘不能に陥ったその飛空挺に、さらに多量の機銃弾が、獲物の血をかぎつけたピラニアの如く殺到する。
その機銃弾に蜂の巣にされ、あっという間に空中分解を起こす。
2番機は高度2000付近で砲弾の破片を至近で食らい、直後に両翼から炎の尾を引きずる。
しばらくはそのまま急降下を続けていたが、高度1600付近で爆発した。
3番機は機銃弾に撃墜される事も無く、高度1000で爆弾を投下した。
「敵機爆弾投下!」
見張りが叫んだ。だが、シアーズ大佐は何も言わない。
そのまま、ランドルフは巨体を左右に振る事も無く、ひたすら28ノットのスピードで航行を続ける。
爆弾は艦首右舷側の海面に至近弾として落下した。ドーン!という音と共に水柱が立ち上がる。
下から突き上げるような振動がランドルフを揺さぶる。
至近弾は第1機銃群の機銃2丁を叩き壊し、兵員1人を戦死させ、3人を負傷させた。
4番機と5番機は撃墜され、6番機が弾幕を突っ切って爆弾を投下した。
その爆弾は、飛行甲板の中央に、綺麗に命中した。
ダーン!という轟音と共に再びランドルフが揺れる。爆煙でしばらく飛行甲板が覆い隠される。
「中央部に命中弾1!」
「うろたえるな!!」
シアーズ艦長は、興奮する見張りを叱咤する。
「大丈夫だ!1発や2発受けたって、飛行甲板には傷は付かん!!」
「左舷前方上方より急降下!」
40ミリ機銃、20ミリ機銃も射撃を開始する。
右舷800メートルのエセックスも妹を救うべく、5インチ砲、40ミリ機銃を撃ちまくる。
無数の曳光弾がランドルフの上空に殺到し、たちまち空が機銃のアイスキャンデーに覆われた。
バーマント機はそれでも突っ込んできた。
まず、先頭の機がアッパーカットを食らったかのように機首を叩き壊される。
戦闘不能に陥ったその飛空挺に、さらに多量の機銃弾が、獲物の血をかぎつけたピラニアの如く殺到する。
その機銃弾に蜂の巣にされ、あっという間に空中分解を起こす。
2番機は高度2000付近で砲弾の破片を至近で食らい、直後に両翼から炎の尾を引きずる。
しばらくはそのまま急降下を続けていたが、高度1600付近で爆発した。
3番機は機銃弾に撃墜される事も無く、高度1000で爆弾を投下した。
「敵機爆弾投下!」
見張りが叫んだ。だが、シアーズ大佐は何も言わない。
そのまま、ランドルフは巨体を左右に振る事も無く、ひたすら28ノットのスピードで航行を続ける。
爆弾は艦首右舷側の海面に至近弾として落下した。ドーン!という音と共に水柱が立ち上がる。
下から突き上げるような振動がランドルフを揺さぶる。
至近弾は第1機銃群の機銃2丁を叩き壊し、兵員1人を戦死させ、3人を負傷させた。
4番機と5番機は撃墜され、6番機が弾幕を突っ切って爆弾を投下した。
その爆弾は、飛行甲板の中央に、綺麗に命中した。
ダーン!という轟音と共に再びランドルフが揺れる。爆煙でしばらく飛行甲板が覆い隠される。
「中央部に命中弾1!」
「うろたえるな!!」
シアーズ艦長は、興奮する見張りを叱咤する。
「大丈夫だ!1発や2発受けたって、飛行甲板には傷は付かん!!」
彼の言うとおりだった。通常なら、めくれ上がって飛行甲板が見える。
しかし、爆煙が晴れた後に残っていたのは、なんら変わらない普通の飛行甲板であった。
「飛行甲板に損傷なし!」
その報告を聞くと、シアーズ大佐はニヤリと笑みを浮かべた。
「損傷なし・・・・か。」
この時、爆弾は中央部で炸裂していたが、飛行甲板に塗られた魔法塗料が被弾と同時に魔力を発揮。爆弾は飛行甲板を貫くことなく、瞬発弾のごとくその場で炸裂した。
爆発エネルギーも魔力によって減殺され、甲板は傷つかなかった。
7番機が火を噴きながらも、爆弾を投下する。爆弾は後部飛行甲板に叩きつけられ、ド派手な爆炎が湧き上がるが、みかけは損害を与えているように見えても、実際は無傷である。
8,9、10番機は降下中に連続で叩き落されてしまった。
11番機が弾幕を突破して爆弾を投下。これは左舷側に外れて、水柱を吹き上げる。
結局、高低同時攻撃にはならず、急降下爆撃だけが先に終わった。
ランドルフに投弾したのは26機中半数以下の12機で、そのうち命中したのが7発である。
敵飛空挺はいずれも新型攻撃機で、積んでいた爆弾も400キロ爆弾と、威力がアップしている。
被弾の内訳は、前部に2発、中央部に3発、後部に2発と、満遍なく叩き据えられていおる。
本来なら、7発被弾は完全に空母の機能を喪失してもいい数だ。
だが、ランドルフが被った損害は、わずかに40ミリ機銃座1基、2ミリ機銃4丁喪失のみ。
飛行甲板の損傷なしという軽微な損害だった。
リリア達が開発した魔法塗料が、しっかりと爆弾を受け止めてくれた結果である。
だが、まだ敵はいる。
それは、低空から敵だ。10機の敵機は、今は7機に減っているが、それでもランドルフに向かっている。
それらは、黒煙を上げながらも陣形に留まっているヒューストンを通り抜け、
ランドルフまであと1900メートル付近まで迫っていた。
すぐさま左舷側の全火器がこれを迎え撃つ。寮艦のものも混じった対空砲火は密度が高い。
1機、また1機と、次々と海面に叩き伏せられる。
しかし、爆煙が晴れた後に残っていたのは、なんら変わらない普通の飛行甲板であった。
「飛行甲板に損傷なし!」
その報告を聞くと、シアーズ大佐はニヤリと笑みを浮かべた。
「損傷なし・・・・か。」
この時、爆弾は中央部で炸裂していたが、飛行甲板に塗られた魔法塗料が被弾と同時に魔力を発揮。爆弾は飛行甲板を貫くことなく、瞬発弾のごとくその場で炸裂した。
爆発エネルギーも魔力によって減殺され、甲板は傷つかなかった。
7番機が火を噴きながらも、爆弾を投下する。爆弾は後部飛行甲板に叩きつけられ、ド派手な爆炎が湧き上がるが、みかけは損害を与えているように見えても、実際は無傷である。
8,9、10番機は降下中に連続で叩き落されてしまった。
11番機が弾幕を突破して爆弾を投下。これは左舷側に外れて、水柱を吹き上げる。
結局、高低同時攻撃にはならず、急降下爆撃だけが先に終わった。
ランドルフに投弾したのは26機中半数以下の12機で、そのうち命中したのが7発である。
敵飛空挺はいずれも新型攻撃機で、積んでいた爆弾も400キロ爆弾と、威力がアップしている。
被弾の内訳は、前部に2発、中央部に3発、後部に2発と、満遍なく叩き据えられていおる。
本来なら、7発被弾は完全に空母の機能を喪失してもいい数だ。
だが、ランドルフが被った損害は、わずかに40ミリ機銃座1基、2ミリ機銃4丁喪失のみ。
飛行甲板の損傷なしという軽微な損害だった。
リリア達が開発した魔法塗料が、しっかりと爆弾を受け止めてくれた結果である。
だが、まだ敵はいる。
それは、低空から敵だ。10機の敵機は、今は7機に減っているが、それでもランドルフに向かっている。
それらは、黒煙を上げながらも陣形に留まっているヒューストンを通り抜け、
ランドルフまであと1900メートル付近まで迫っていた。
すぐさま左舷側の全火器がこれを迎え撃つ。寮艦のものも混じった対空砲火は密度が高い。
1機、また1機と、次々と海面に叩き伏せられる。
敵機が距離900に迫った時には、敵機はわずか2機しかいなかった。
「敵機爆弾投下!2弾本艦に向かいつつあり!」
「取り舵一杯!」
シアーズ艦長はすかさず号令を発する。操舵員が素早く舵輪を回す。
スクリューのギヤレバーを調節し、回転数を変える。
やがて、左舷側のスクリューの回転が遅くなり、右舷側のスクリューがより一層、回転速度を上げる。
ランドルフは巨艦のため、回頭速度が遅い。
しかし、
「爆弾1発、艦尾に接近!」
敵機の爆弾はランドルフ乗員の努力を一瞬にして奪い去った。
次の瞬間ズドーン!という猛烈な衝撃が、艦尾を持ち上げた。
爆弾はランドルフの艦尾に食らい付くと、装甲を突き抜けれずにその場で炸裂、
爆圧がランドルフのケツを少し持ち上げた。
(艦尾方向から!?まさか・・・・・いや、まさかな)
シアーズ大佐はある事が頭をよぎった。だが、すぐにそれを振り払う。
シアーズ艦長はハンケチで汗をぬぐい、損害報告を聞こうとしたその時、
「艦長!」
操舵室から悲鳴じみた声が届けられた。
「どうした!」
「舵が・・・・・舵が、動きません!!」
シアーズ艦長は、一瞬のうちに顔から血の気が引いた。
(舵が動かない!?舵が・・・・だと?)
あまりの出来事に、彼は一瞬思考回路がストップした。
舵損傷という事態は、船乗りにとって最も忌むべき事態である。
現世界の大戦中にも、舵損傷がきっかけで悲劇を生んだ軍艦は何隻もいる。
「敵機爆弾投下!2弾本艦に向かいつつあり!」
「取り舵一杯!」
シアーズ艦長はすかさず号令を発する。操舵員が素早く舵輪を回す。
スクリューのギヤレバーを調節し、回転数を変える。
やがて、左舷側のスクリューの回転が遅くなり、右舷側のスクリューがより一層、回転速度を上げる。
ランドルフは巨艦のため、回頭速度が遅い。
しかし、
「爆弾1発、艦尾に接近!」
敵機の爆弾はランドルフ乗員の努力を一瞬にして奪い去った。
次の瞬間ズドーン!という猛烈な衝撃が、艦尾を持ち上げた。
爆弾はランドルフの艦尾に食らい付くと、装甲を突き抜けれずにその場で炸裂、
爆圧がランドルフのケツを少し持ち上げた。
(艦尾方向から!?まさか・・・・・いや、まさかな)
シアーズ大佐はある事が頭をよぎった。だが、すぐにそれを振り払う。
シアーズ艦長はハンケチで汗をぬぐい、損害報告を聞こうとしたその時、
「艦長!」
操舵室から悲鳴じみた声が届けられた。
「どうした!」
「舵が・・・・・舵が、動きません!!」
シアーズ艦長は、一瞬のうちに顔から血の気が引いた。
(舵が動かない!?舵が・・・・だと?)
あまりの出来事に、彼は一瞬思考回路がストップした。
舵損傷という事態は、船乗りにとって最も忌むべき事態である。
現世界の大戦中にも、舵損傷がきっかけで悲劇を生んだ軍艦は何隻もいる。
特に独戦艦のビスマルクの事件は、その悲劇の代名詞とも言える。
「艦長、聞いてますか!?」
シアーズ艦長は、その声で我を取り戻した。
「聞こえる。状態はどうなのだ?」
「舵が左10度に固定されたまま、全く動きません!」
よく見てみると、ランドルフは輪形陣からやや左側に逸れながら、真っ直ぐ驀進している。
先ほど、左に急回頭しようとしたため、着弾時に舵が左10度に固定されたまま損傷。
ランドルフは回頭を急にやめて艦隊針路からやや左斜めに向けて航行しているのだ。
このままでいくと、ランドルフはずっと緩やかに左回頭を続ける事になる。
それも、戦場と言う最悪の場所で・・・・・・ろう。」
「艦長、聞いてますか!?」
シアーズ艦長は、その声で我を取り戻した。
「聞こえる。状態はどうなのだ?」
「舵が左10度に固定されたまま、全く動きません!」
よく見てみると、ランドルフは輪形陣からやや左側に逸れながら、真っ直ぐ驀進している。
先ほど、左に急回頭しようとしたため、着弾時に舵が左10度に固定されたまま損傷。
ランドルフは回頭を急にやめて艦隊針路からやや左斜めに向けて航行しているのだ。
このままでいくと、ランドルフはずっと緩やかに左回頭を続ける事になる。
それも、戦場と言う最悪の場所で・・・・・・ろう。」