その時、
「敵第4梯団40機以上、向かってくる!」
敵の最後の梯団が姿を現したのである。そして、間の悪い事に、
「敵の大多数は低空侵入!」
この集団は反跳爆撃を行う攻撃機が主体である。
急降下爆撃機は4分の1の10機しかいない。
だが、ランドルフの危急を知ってか、輪形陣のエスコート艦の一部がランドルフの左右に付き始めた。
それらの中には、損傷しつつも任務を遂行している軽巡のヒューストンや、戦艦サウスダコタがいる。
戦友の負担を出来るだけ軽くしてやりたい。そんな思いが伝わってくるかのようだった。
駆逐艦2隻、軽巡1隻、戦艦1隻に護衛されたランドルフに、最後の攻撃集団が襲い掛かってきた。
小さな輪形陣を組んだランドルフ隊は持てる限りの火器を持って迎え撃つ。
まず、先行してきた6機が急降下爆撃を仕掛けてくる。高度2000付近で連続して3機が叩き落される。
そして1000付近でさらに2機が撃墜され、最後の1機が爆弾を投下した。
爆弾は右舷200メートルの海面に突き刺さって水柱を上げる。
今度は、低空から32機の飛空挺がわらわらとやってきた。
ランドルフの左舷1000メートルに布陣したヒューストンが、突如前部の6インチ砲を斉射した。
6本の水柱がバーマント機の前面に立ち上がる。
2機がかわし切れずに水柱に突っ込み、海面に引きずり落とされた。
「敵第4梯団40機以上、向かってくる!」
敵の最後の梯団が姿を現したのである。そして、間の悪い事に、
「敵の大多数は低空侵入!」
この集団は反跳爆撃を行う攻撃機が主体である。
急降下爆撃機は4分の1の10機しかいない。
だが、ランドルフの危急を知ってか、輪形陣のエスコート艦の一部がランドルフの左右に付き始めた。
それらの中には、損傷しつつも任務を遂行している軽巡のヒューストンや、戦艦サウスダコタがいる。
戦友の負担を出来るだけ軽くしてやりたい。そんな思いが伝わってくるかのようだった。
駆逐艦2隻、軽巡1隻、戦艦1隻に護衛されたランドルフに、最後の攻撃集団が襲い掛かってきた。
小さな輪形陣を組んだランドルフ隊は持てる限りの火器を持って迎え撃つ。
まず、先行してきた6機が急降下爆撃を仕掛けてくる。高度2000付近で連続して3機が叩き落される。
そして1000付近でさらに2機が撃墜され、最後の1機が爆弾を投下した。
爆弾は右舷200メートルの海面に突き刺さって水柱を上げる。
今度は、低空から32機の飛空挺がわらわらとやってきた。
ランドルフの左舷1000メートルに布陣したヒューストンが、突如前部の6インチ砲を斉射した。
6本の水柱がバーマント機の前面に立ち上がる。
2機がかわし切れずに水柱に突っ込み、海面に引きずり落とされた。
他の艦もこれらに猛射を浴びせる。ヒューストンを通り抜けるまで、実に10機が撃墜される。
だが、残りはヒューストンを突破すると、一心不乱にランドルフに向かった。
ランドルフ自身も4機を撃墜した。だが、奮闘もここまでだった。
生き残ったバーマント機16機は、距離600で次々と400キロ爆弾を投下した。
機銃の目標は、海面を飛び跳ねる爆弾に注がれる。
後部に向かっていた爆弾が機銃弾に捉えられて吹き飛ぶ。
次いで、中央部付近に向かっていた1弾が打ち抜かれて炸裂、その爆風が別の1弾も巻き込んで炸裂し、
大水柱が立ち上がった。
だが、もはやこれまでだった。
最初の1弾がランドルフの左舷側前部に叩き込まれた。ズドーン!という猛烈な衝撃に、
ランドルフは一瞬、前につんのめった。
左舷側の舷側にドカンドカンドカン!と次々と爆弾が命中し、爆炎が吹き上がる。
機銃員は四肢をちぎり飛ばされ、粉みじんに粉砕される。
飛行甲板の左端が所々まくれ上がり、凸凹上に歪む。
合計で13発もの400キロ爆弾を浴びたランドルフは、艦内を食い荒らされ、浸水が増大。
速度は低下し、みるみるうちに左舷側に傾斜し始めた。
被弾は全てが喫水線付近に命中し、艦体に穴を開けていた。
その穴から、大量の海水が浸入し、ランドルフの艦内を侵食している。
被弾の一部は機関室や機械室も叩き壊し、機関部の半分が使用不能となった。
その直後、上空から再び唸り声が響いた。それは、残るバーマント機4機による急降下爆撃だった。
右舷側の対空砲火が迎え撃つ。寮艦と共同で2機を撃墜したが、2機が投弾してきた。
だが、残りはヒューストンを突破すると、一心不乱にランドルフに向かった。
ランドルフ自身も4機を撃墜した。だが、奮闘もここまでだった。
生き残ったバーマント機16機は、距離600で次々と400キロ爆弾を投下した。
機銃の目標は、海面を飛び跳ねる爆弾に注がれる。
後部に向かっていた爆弾が機銃弾に捉えられて吹き飛ぶ。
次いで、中央部付近に向かっていた1弾が打ち抜かれて炸裂、その爆風が別の1弾も巻き込んで炸裂し、
大水柱が立ち上がった。
だが、もはやこれまでだった。
最初の1弾がランドルフの左舷側前部に叩き込まれた。ズドーン!という猛烈な衝撃に、
ランドルフは一瞬、前につんのめった。
左舷側の舷側にドカンドカンドカン!と次々と爆弾が命中し、爆炎が吹き上がる。
機銃員は四肢をちぎり飛ばされ、粉みじんに粉砕される。
飛行甲板の左端が所々まくれ上がり、凸凹上に歪む。
合計で13発もの400キロ爆弾を浴びたランドルフは、艦内を食い荒らされ、浸水が増大。
速度は低下し、みるみるうちに左舷側に傾斜し始めた。
被弾は全てが喫水線付近に命中し、艦体に穴を開けていた。
その穴から、大量の海水が浸入し、ランドルフの艦内を侵食している。
被弾の一部は機関室や機械室も叩き壊し、機関部の半分が使用不能となった。
その直後、上空から再び唸り声が響いた。それは、残るバーマント機4機による急降下爆撃だった。
右舷側の対空砲火が迎え撃つ。寮艦と共同で2機を撃墜したが、2機が投弾してきた。
唸り声が極大に達したと思うと、敵機の腹から爆弾が落ちてきた。
「・・・・・畜生、爆弾が丸く見えてるぜ。」
シアーズ艦長は、折れた右腕を抱えながら、爆弾の行く末を見守っていた。
「さきほどまで悠々と航行していたのに、舵が損傷して、射的の的よろしく、当てられ
まくってしまった・・・・・・」
なきたいと言うのを通り越し、彼は笑いたくなった。
爆弾の1発は、艦橋を指向している。
「さあ・・・・・来い!俺が受け止めてやる!!!!」
彼は大声でそう絶叫した。落ちてくる爆弾を睨み据える。
「・・・・・畜生、爆弾が丸く見えてるぜ。」
シアーズ艦長は、折れた右腕を抱えながら、爆弾の行く末を見守っていた。
「さきほどまで悠々と航行していたのに、舵が損傷して、射的の的よろしく、当てられ
まくってしまった・・・・・・」
なきたいと言うのを通り越し、彼は笑いたくなった。
爆弾の1発は、艦橋を指向している。
「さあ・・・・・来い!俺が受け止めてやる!!!!」
彼は大声でそう絶叫した。落ちてくる爆弾を睨み据える。
軽巡洋艦ヒューストン艦上からクランチ艦長は、ランドルフの艦橋に爆発が起きるのを見た。
その直後に中央部にも爆炎があがる。
「な・・・・なんてこった。ランドルフが・・・・・」
ランドルフの断末魔の状況を見て、彼は絶句した。
そしてたった今、最後の爆弾がランドルフを叩き据えた。
艦橋も被弾している。
飛行甲板の黒煙が晴れる。艦橋部は火災に包まれていて詳しく確認できない。
しかし、艦橋職員が全員絶望的である事は容易に想像できた。
そして、ランドルフ自体の生命も、それと同様に・・・・・・絶望的であった。
「ランドルフに近づけ!乗員を救助するんだ!」
クランチ艦長は次の命令を発する。
1分後、ヒューストンは、左舷に大きく傾き、黒煙を吹き上げるランドルフに向かった。
その直後に中央部にも爆炎があがる。
「な・・・・なんてこった。ランドルフが・・・・・」
ランドルフの断末魔の状況を見て、彼は絶句した。
そしてたった今、最後の爆弾がランドルフを叩き据えた。
艦橋も被弾している。
飛行甲板の黒煙が晴れる。艦橋部は火災に包まれていて詳しく確認できない。
しかし、艦橋職員が全員絶望的である事は容易に想像できた。
そして、ランドルフ自体の生命も、それと同様に・・・・・・絶望的であった。
「ランドルフに近づけ!乗員を救助するんだ!」
クランチ艦長は次の命令を発する。
1分後、ヒューストンは、左舷に大きく傾き、黒煙を吹き上げるランドルフに向かった。
午後1時10分 第58任務部隊第3任務群
第3任務群には110機のバーマント機が進軍してきた。
バーマント機は定石通りに一部を持ってエスコート艦を叩きに入った。
エスコート艦は5隻が狙われ、そのうち駆逐艦アンソニーが爆弾4発を受けて大破した。
エスコート艦を引っ掻き回した後、今度は敵の第2集団30機が侵入してきた。
第3群には第7群から戦艦ノースカロライナ、ワシントンが増派されており、猛烈な対空弾幕がバーマント機に襲い掛かる。
敵艦はまたしてもエスコート艦を狙いに来た。
そして、
「本艦に敵機12機、向かってくる!」
第5艦隊旗艦のインディアナポリスにも敵機は向かってきた。
高空から4機、低空から8機の割合で迫ってくる。
後方のモントピーリアには18機が向かった。
「長官、本艦が狙われているようです。ここはひとまず、作戦室にお戻りください。」
艦橋で対空戦闘を眺めていたスプルーアンスを、艦長のマックベイ大佐が万が一のことを考えて
非難するように勧めた。
「分かった。」
スプルーアンスはそれだけ言うと、艦橋から離れた。
物凄い量の機銃弾が、敵機に向かっていく。低空の敵機がたちまち2機続けて撃墜される。
「高空より敵機、急降下!」
艦橋、見張りが叫ぶ。
「取り舵45度!」
「取り舵45度、アイ・サー!」
マックベイ艦長の指示に従い、操舵員が舵を回す。
敵機が唸り声を上げて突っ込んできた。高角砲、機銃がガンガン撃ちまくる。
先頭の1機が高角砲弾の直撃を受けて四散する。
第3任務群には110機のバーマント機が進軍してきた。
バーマント機は定石通りに一部を持ってエスコート艦を叩きに入った。
エスコート艦は5隻が狙われ、そのうち駆逐艦アンソニーが爆弾4発を受けて大破した。
エスコート艦を引っ掻き回した後、今度は敵の第2集団30機が侵入してきた。
第3群には第7群から戦艦ノースカロライナ、ワシントンが増派されており、猛烈な対空弾幕がバーマント機に襲い掛かる。
敵艦はまたしてもエスコート艦を狙いに来た。
そして、
「本艦に敵機12機、向かってくる!」
第5艦隊旗艦のインディアナポリスにも敵機は向かってきた。
高空から4機、低空から8機の割合で迫ってくる。
後方のモントピーリアには18機が向かった。
「長官、本艦が狙われているようです。ここはひとまず、作戦室にお戻りください。」
艦橋で対空戦闘を眺めていたスプルーアンスを、艦長のマックベイ大佐が万が一のことを考えて
非難するように勧めた。
「分かった。」
スプルーアンスはそれだけ言うと、艦橋から離れた。
物凄い量の機銃弾が、敵機に向かっていく。低空の敵機がたちまち2機続けて撃墜される。
「高空より敵機、急降下!」
艦橋、見張りが叫ぶ。
「取り舵45度!」
「取り舵45度、アイ・サー!」
マックベイ艦長の指示に従い、操舵員が舵を回す。
敵機が唸り声を上げて突っ込んできた。高角砲、機銃がガンガン撃ちまくる。
先頭の1機が高角砲弾の直撃を受けて四散する。
2番機が胴体を真っ二つにちぎられ、別々に墜落していった。
3番機は耐え切れなくなったのだろうか、高度1600で爆弾を投下した。4番機もそれに続く。
爆弾はインディアナポリスを大きく外れ、左舷側800メートルの海面に連続して突き刺さり、
空しく水柱を上げる。
「及び腰では当たらんぞ。」
マックベイ艦長は、逃げ去る敵機を見ながらそう呟いた。
戦いは低空進入のバーマント機との対決に移った。
舷側の全力射撃が可能になったインディアナポリスの左舷が真っ赤に染まる。
40ミリ機銃6丁、20ミリ機銃19丁が、銃身も焼けよとばかりに機銃弾を大量に放つ。
残り6機となったバーマント機がさらに撃墜され、残存機の数がさらに減る。
敵機のがあと600メートルに迫った時には、さらに撃墜機が増え、ついに1機だけとなってしまった。
その最後の1機も、爆弾を投下しようとした矢先に炎に包まれた。
「敵機全機撃墜!」
艦橋に声援が上がった
だが、
「敵機・・・・墜落しません!そのまま向かってきます!!」
見張りは仰天した。
なんと!炎に包まれた敵機は墜落すことなく、まっしぐらにインディアナポリスに向かってきたのだ。
誰もが叩き落したと思っただけに、衝撃は大きい。
一旦中止されていた対空機銃の射撃が、再び開始される。
だが、敵機は400キロ近い猛スピードで、インディアナポリスに突進してきた。
次の瞬間、敵機は爆弾を投下した後、インディアナポリスの後部に激突した。
後部艦橋に命中した敵機はそのまま砕け散り、燃料がばら撒かれて火災が発生した。
激突した直後に、爆弾が左舷後部に突き刺さり、舷側を突き破って内部で炸裂した。
スプルーアンスは、作戦室の内部で対空戦闘が終わるのを待っていた。
「レイム君、継戦派の連中は総力で立ち向かってきているようだ。
第4群の空母ランドルフがだいぶやられている。」
「恐らく、継戦派もここが勝負時と」
3番機は耐え切れなくなったのだろうか、高度1600で爆弾を投下した。4番機もそれに続く。
爆弾はインディアナポリスを大きく外れ、左舷側800メートルの海面に連続して突き刺さり、
空しく水柱を上げる。
「及び腰では当たらんぞ。」
マックベイ艦長は、逃げ去る敵機を見ながらそう呟いた。
戦いは低空進入のバーマント機との対決に移った。
舷側の全力射撃が可能になったインディアナポリスの左舷が真っ赤に染まる。
40ミリ機銃6丁、20ミリ機銃19丁が、銃身も焼けよとばかりに機銃弾を大量に放つ。
残り6機となったバーマント機がさらに撃墜され、残存機の数がさらに減る。
敵機のがあと600メートルに迫った時には、さらに撃墜機が増え、ついに1機だけとなってしまった。
その最後の1機も、爆弾を投下しようとした矢先に炎に包まれた。
「敵機全機撃墜!」
艦橋に声援が上がった
だが、
「敵機・・・・墜落しません!そのまま向かってきます!!」
見張りは仰天した。
なんと!炎に包まれた敵機は墜落すことなく、まっしぐらにインディアナポリスに向かってきたのだ。
誰もが叩き落したと思っただけに、衝撃は大きい。
一旦中止されていた対空機銃の射撃が、再び開始される。
だが、敵機は400キロ近い猛スピードで、インディアナポリスに突進してきた。
次の瞬間、敵機は爆弾を投下した後、インディアナポリスの後部に激突した。
後部艦橋に命中した敵機はそのまま砕け散り、燃料がばら撒かれて火災が発生した。
激突した直後に、爆弾が左舷後部に突き刺さり、舷側を突き破って内部で炸裂した。
スプルーアンスは、作戦室の内部で対空戦闘が終わるのを待っていた。
「レイム君、継戦派の連中は総力で立ち向かってきているようだ。
第4群の空母ランドルフがだいぶやられている。」
「恐らく、継戦派もここが勝負時と」
言葉は続かなかった。いや、続けられなかった。
突然ガシャーン!という何かがぶち当たる音と、その2秒後にドーン!という物凄い衝撃が起きた。
作戦室にいたスプルーアンスやレイム、第5艦隊の幕僚は全員が飛び上がった。
インディアナポリスの艦体が傷みに耐え切れず、ガクガクと揺れる。
大きな振動が収まった後、小さな振動が続いた。
「後部からです。もしかして、推進器系統がやられたのかもしれません。」
フォレステル大佐が言う。やがて、その連続した振動も止んだ。
艦内には警報ブザーが盛んに鳴っていた。
「い・・・・今のは?」
床に投げ出されたレイムが、額を押さえながら呟いた。
「被弾したんだ。それよりもレイム君、大丈夫か!?」
デイビス参謀長はレイムを見て仰天した。レイムの顔の右半分が血に染まっていた。
「頭を少し切ったようです。血は結構出ていますが、傷は大した事ありません。」
「そうか・・・・だが、念のため軍医に見せるといい。」
デイビスは軍医の診察をすすめた。
「チャック!いるか!?」
「はい、長官なんでありますか?」
スプルーアンスは副官のチャック・バーバー大尉を呼んだ。
「大丈夫か?」
「ええ。左腕を机にぶつけてしまいましたが、なんとか大丈夫です。」
「そうか。それより、君に頼みたい事がある。」
「なんでしょうか?」
チャックはすぐに聞き返す。
「まず、この艦の損傷具合を調べてほしい。それが1つ。次に、激突してきた敵機を調べてほしい。
もし、何かの文書か、暗号長があったら、それを回収するのだ。」
「分かりました。」
バーバー大尉はスプルーアンスに敬礼すると、すぐさま作戦室から出て行った。
突然ガシャーン!という何かがぶち当たる音と、その2秒後にドーン!という物凄い衝撃が起きた。
作戦室にいたスプルーアンスやレイム、第5艦隊の幕僚は全員が飛び上がった。
インディアナポリスの艦体が傷みに耐え切れず、ガクガクと揺れる。
大きな振動が収まった後、小さな振動が続いた。
「後部からです。もしかして、推進器系統がやられたのかもしれません。」
フォレステル大佐が言う。やがて、その連続した振動も止んだ。
艦内には警報ブザーが盛んに鳴っていた。
「い・・・・今のは?」
床に投げ出されたレイムが、額を押さえながら呟いた。
「被弾したんだ。それよりもレイム君、大丈夫か!?」
デイビス参謀長はレイムを見て仰天した。レイムの顔の右半分が血に染まっていた。
「頭を少し切ったようです。血は結構出ていますが、傷は大した事ありません。」
「そうか・・・・だが、念のため軍医に見せるといい。」
デイビスは軍医の診察をすすめた。
「チャック!いるか!?」
「はい、長官なんでありますか?」
スプルーアンスは副官のチャック・バーバー大尉を呼んだ。
「大丈夫か?」
「ええ。左腕を机にぶつけてしまいましたが、なんとか大丈夫です。」
「そうか。それより、君に頼みたい事がある。」
「なんでしょうか?」
チャックはすぐに聞き返す。
「まず、この艦の損傷具合を調べてほしい。それが1つ。次に、激突してきた敵機を調べてほしい。
もし、何かの文書か、暗号長があったら、それを回収するのだ。」
「分かりました。」
バーバー大尉はスプルーアンスに敬礼すると、すぐさま作戦室から出て行った。
彼は左舷側の甲板に降りると、まず後部に向かった。
海上は相変わらず、寮艦の発射する対空砲火の喧騒でうるさかった。
後部の射撃指揮所には火災が発生しており、ダメージコントロールチームと乗員が、
共に消火作業に当たっていた。後部甲板には激突した敵機の破片が散らばっている。
担架に戦死者の遺体らしきものを運んできた兵とぶつかりそうになった。
「あ、すみません大尉。」
「ああ、こちらこそ悪かった。それは戦死した戦友の遺体か?」
すると、兵は首を横に振った。
「いいえ、敵機のパイロットです。右舷側の機銃座の近くに落ちてきたんです。
不思議な事に、原型を留めていますよ。」
兵は興奮した口調で言う。もう一人の兵が被されていた布の顔の部分をめくる。
それは、女性だった。まだ顔にはあどけなさが残っている。首には認識票らしきものがつけられている。
目は閉じられており、まるで眠っているかのようである。
「そこから下は見ないほうがいいですよ。胴体部分の損傷がひどいです。」
兵はバーバー大尉に見ないようにすすめた。
「認識票をとってもいいかね?」
「ええ、どうぞ。」
彼は認識票のヒモを引きちぎる。
「では、この遺体は別に運びますので。」
2人の兵は再び担架を持ち上げて、そそくさと去っていった。
バーバー大尉は、オブザーバーのマイントに少しだけバーマント語を教わっていたので、名前ぐらいは読み取れる。
「ライリン・・・・・フラッカル、22か・・・・・まだまだ若いのに。」
バーバー大尉は認識票をポケットに入れると、すぐに本来の任務に戻った。
海上は相変わらず、寮艦の発射する対空砲火の喧騒でうるさかった。
後部の射撃指揮所には火災が発生しており、ダメージコントロールチームと乗員が、
共に消火作業に当たっていた。後部甲板には激突した敵機の破片が散らばっている。
担架に戦死者の遺体らしきものを運んできた兵とぶつかりそうになった。
「あ、すみません大尉。」
「ああ、こちらこそ悪かった。それは戦死した戦友の遺体か?」
すると、兵は首を横に振った。
「いいえ、敵機のパイロットです。右舷側の機銃座の近くに落ちてきたんです。
不思議な事に、原型を留めていますよ。」
兵は興奮した口調で言う。もう一人の兵が被されていた布の顔の部分をめくる。
それは、女性だった。まだ顔にはあどけなさが残っている。首には認識票らしきものがつけられている。
目は閉じられており、まるで眠っているかのようである。
「そこから下は見ないほうがいいですよ。胴体部分の損傷がひどいです。」
兵はバーバー大尉に見ないようにすすめた。
「認識票をとってもいいかね?」
「ええ、どうぞ。」
彼は認識票のヒモを引きちぎる。
「では、この遺体は別に運びますので。」
2人の兵は再び担架を持ち上げて、そそくさと去っていった。
バーバー大尉は、オブザーバーのマイントに少しだけバーマント語を教わっていたので、名前ぐらいは読み取れる。
「ライリン・・・・・フラッカル、22か・・・・・まだまだ若いのに。」
バーバー大尉は認識票をポケットに入れると、すぐに本来の任務に戻った。
敵の第3集団28機は、空母エンタープライズに殺到してきた。
まず、急降下爆撃機6機がエンタープライズに突っかかる。
エンタープライズの左舷側第1機銃群の3番機銃を操作するジョニー・ウェイド1等水兵は、逆落としに突っ込んでくるバーマント機に向けて20ミリ機銃を放った。
ドガガガガガ!という振動が照準をつけにくくする。その反動を強引に抑えて、上空の敵機に叩き込む。
曳光弾がやや右にずれている。
「チッ、難しいもんだな。」
ウェイド1等水兵は断続的に引き金を引きながら、曳光弾を元に射線を修正する。
やがて、先頭の機が左主翼を叩き折られた。
次いで2番機が突っ込んでくる。これに向けてまた引き金を引く。
10発ごとに引き金から指を離し、1秒ほど間を置いて再び機銃を撃つ。これの繰り返しである。
2番機は両翼を叩き折られ、胴体のみとなる。その2番機が左舷側500メートルの海面に墜落する。
彼の射線が3番機の尾部を薙いだ、と思った瞬間、尾部が吹き飛んだ。
そのままきりもみ状態となって艦首前方の海面に墜落し、高々と水柱を跳ね上げた。
「やったぞ!撃墜した!」
彼は今日始めての戦果を喜んだ。
その時、吹き上がった水柱に視線を移した時、彼は恐ろしい光景を目の当たりにした。
吹き上げられた破片が、海面に落ちていく。その中に変わったものが破片と共に落ちてきた。
広げられた手足、そして前後に伸びた体。紛れも無く人間だった。
頭から落ちてきたその人影が、水柱の根っこに消える。
思わず吐き気をもよおしたウェイド1等水兵は、後ろに体を向けて嘔吐した。
まず、急降下爆撃機6機がエンタープライズに突っかかる。
エンタープライズの左舷側第1機銃群の3番機銃を操作するジョニー・ウェイド1等水兵は、逆落としに突っ込んでくるバーマント機に向けて20ミリ機銃を放った。
ドガガガガガ!という振動が照準をつけにくくする。その反動を強引に抑えて、上空の敵機に叩き込む。
曳光弾がやや右にずれている。
「チッ、難しいもんだな。」
ウェイド1等水兵は断続的に引き金を引きながら、曳光弾を元に射線を修正する。
やがて、先頭の機が左主翼を叩き折られた。
次いで2番機が突っ込んでくる。これに向けてまた引き金を引く。
10発ごとに引き金から指を離し、1秒ほど間を置いて再び機銃を撃つ。これの繰り返しである。
2番機は両翼を叩き折られ、胴体のみとなる。その2番機が左舷側500メートルの海面に墜落する。
彼の射線が3番機の尾部を薙いだ、と思った瞬間、尾部が吹き飛んだ。
そのままきりもみ状態となって艦首前方の海面に墜落し、高々と水柱を跳ね上げた。
「やったぞ!撃墜した!」
彼は今日始めての戦果を喜んだ。
その時、吹き上がった水柱に視線を移した時、彼は恐ろしい光景を目の当たりにした。
吹き上げられた破片が、海面に落ちていく。その中に変わったものが破片と共に落ちてきた。
広げられた手足、そして前後に伸びた体。紛れも無く人間だった。
頭から落ちてきたその人影が、水柱の根っこに消える。
思わず吐き気をもよおしたウェイド1等水兵は、後ろに体を向けて嘔吐した。
4番機が高度500で爆弾を投下する。爆弾は右舷後部に至近弾となって水柱を吹き上げる。
5番機、6番機も同様に爆弾を投下した。右舷艦首付近に5番機の爆弾が着弾し、水柱を吹き上げる。
右舷側の前部機銃員3名が海中に放り出されてしまい、20ミリ機銃2丁が壊された。
6番機の爆弾は後部に命中した。命中した瞬間、エンタープライズはぶるぶる震える。
黒煙が吹き上がると、そこには無傷の飛行甲板があった。
5番機、6番機も同様に爆弾を投下した。右舷艦首付近に5番機の爆弾が着弾し、水柱を吹き上げる。
右舷側の前部機銃員3名が海中に放り出されてしまい、20ミリ機銃2丁が壊された。
6番機の爆弾は後部に命中した。命中した瞬間、エンタープライズはぶるぶる震える。
黒煙が吹き上がると、そこには無傷の飛行甲板があった。
あわや損傷か!?と思った兵達だが、魔法塗料が働いたおかげで、飛行甲板は無事に済み、
心配した者達はやや安堵の表情を浮かべた。
心配した者達はやや安堵の表情を浮かべた。
急降下爆撃が終わると、今度は低空の敵機に銃口が向けられる。
既に距離1900まで迫ってきている。
エンタープライズの左舷側再び銃火に染まった。
敵機の爆弾を1発浴び、黒煙を吹き上げているモントピーリアも、機関に何ら損傷は無く、
定位置に留まって援護射撃行う。
エンタープライズ、モントピーリアから放たれる弾幕に、敵機の編隊は臆することなく突っ込んできた。
低空からの敵機は22機いたが、早くも4機が連続して撃墜される。
高角砲がガンガン唸り、機銃が狂ったように銃弾を弾き出す。目を覆うような対空砲火だ。
ウェイド1等水兵も気分を直して低空の敵機に向けて機銃弾を叩きつけた。
「これでも食らえ!」
ガガガガガガガ!という機銃発射時の振動が体をブルブル振るわせる。
彼だけではない、他の戦友の機銃も、敵機に向けて乱射している。
俯角をかけた5インチ両用砲が7秒おきに砲弾をぶっ放す。
海面は、無数の機銃弾が作る水しぶきと、砲弾炸裂時の水柱で熱く沸き立っている。
ウェイド1等水兵の20ミリ機銃弾が、一番右の敵機にしこたま注がれる。
たちまち、無数の火花と破片が飛び散る。
弾が無くなるまで撃ち続けると、敵機は急に炎を噴出して、そのまま機首から海面に突っ込んだ。
「おい、早く弾を補給してくれ!奴らの進撃を食い止めるんだ!!」
ウェイド1等水兵は給弾員を急かす。
既に距離1900まで迫ってきている。
エンタープライズの左舷側再び銃火に染まった。
敵機の爆弾を1発浴び、黒煙を吹き上げているモントピーリアも、機関に何ら損傷は無く、
定位置に留まって援護射撃行う。
エンタープライズ、モントピーリアから放たれる弾幕に、敵機の編隊は臆することなく突っ込んできた。
低空からの敵機は22機いたが、早くも4機が連続して撃墜される。
高角砲がガンガン唸り、機銃が狂ったように銃弾を弾き出す。目を覆うような対空砲火だ。
ウェイド1等水兵も気分を直して低空の敵機に向けて機銃弾を叩きつけた。
「これでも食らえ!」
ガガガガガガガ!という機銃発射時の振動が体をブルブル振るわせる。
彼だけではない、他の戦友の機銃も、敵機に向けて乱射している。
俯角をかけた5インチ両用砲が7秒おきに砲弾をぶっ放す。
海面は、無数の機銃弾が作る水しぶきと、砲弾炸裂時の水柱で熱く沸き立っている。
ウェイド1等水兵の20ミリ機銃弾が、一番右の敵機にしこたま注がれる。
たちまち、無数の火花と破片が飛び散る。
弾が無くなるまで撃ち続けると、敵機は急に炎を噴出して、そのまま機首から海面に突っ込んだ。
「おい、早く弾を補給してくれ!奴らの進撃を食い止めるんだ!!」
ウェイド1等水兵は給弾員を急かす。
敵機がエンタープライズまで700まで迫った時には、敵機の数は11機に減っていた。
敵機群は一斉に400キロ爆弾を投下した。
艦長のマイケル・ガードナー大佐は爆弾が投下される直前に取り舵一杯を号令した。
エンタープライズの艦首が、今まさに左舷に振られようとした時に、
「敵機爆弾投下!」
の報告が入ってきた。
一旦艦首が振られ始めると、後は早い。だが、タイミングはやや遅かった。
そのタイミングのズレが、エンタープライズに不本意な結果を残した。
11発投下された爆弾は、4発が射線からずれたが、7発がエンタープライズに向かってきた。
「くそ・・・・間に合わん!!」
ガードナー艦長は唇をかみ締めた。
1発が機銃によって爆破されたが、残りはエンタープライズに突進した。
左舷側の前部に1発が命中した。爆弾はバルジに命中すると、防水区画で炸裂した。
これを機に6発が次々に命中してしまった。
最後の同時に、後部機関部付近で突き刺さった1発は不発だった。
連続した轟音が鳴り響き、エンタープライズの艦体は飛び上がった。
「左舷中央部に浸水!」
「左舷前部に火災発生!」
「格納甲板で爆弾が炸裂、艦載機に延焼!」
被害報告が次々と艦橋に飛び込んでくる。
左舷の前部近くで作業をしていたロシア系アメリカ人のオットー・コワルスキー大尉は、
連続した爆発音に足を取られ、部下共々、床に這わされてしまった。
被弾の直後に、前から大量の水が流れ出してきた。
「浸水だ!全員逃げろ!!」
敵機群は一斉に400キロ爆弾を投下した。
艦長のマイケル・ガードナー大佐は爆弾が投下される直前に取り舵一杯を号令した。
エンタープライズの艦首が、今まさに左舷に振られようとした時に、
「敵機爆弾投下!」
の報告が入ってきた。
一旦艦首が振られ始めると、後は早い。だが、タイミングはやや遅かった。
そのタイミングのズレが、エンタープライズに不本意な結果を残した。
11発投下された爆弾は、4発が射線からずれたが、7発がエンタープライズに向かってきた。
「くそ・・・・間に合わん!!」
ガードナー艦長は唇をかみ締めた。
1発が機銃によって爆破されたが、残りはエンタープライズに突進した。
左舷側の前部に1発が命中した。爆弾はバルジに命中すると、防水区画で炸裂した。
これを機に6発が次々に命中してしまった。
最後の同時に、後部機関部付近で突き刺さった1発は不発だった。
連続した轟音が鳴り響き、エンタープライズの艦体は飛び上がった。
「左舷中央部に浸水!」
「左舷前部に火災発生!」
「格納甲板で爆弾が炸裂、艦載機に延焼!」
被害報告が次々と艦橋に飛び込んでくる。
左舷の前部近くで作業をしていたロシア系アメリカ人のオットー・コワルスキー大尉は、
連続した爆発音に足を取られ、部下共々、床に這わされてしまった。
被弾の直後に、前から大量の水が流れ出してきた。
「浸水だ!全員逃げろ!!」
彼は8名の部下にそう告げた。部下達は一斉にハッチの向こうへと逃げ始めた。
(俺も早くいかねえと)
コワルスキー大尉も駆け出した瞬間、後ろから何かがぶつかってきた。
足がゴキ!という嫌な音を立てて折れる音がし、何かが両足に乗っかった。
それは、水圧で破壊され、流されてきた太い鋼鉄製のパイプだった。
「くそ、足をやられた!」
コワルスキー大尉は苦痛に顔を歪めた。
体を動かそうとするが、その太いパイプはとても大きく、重い。
「おやっさん!今助けます!」
ハッチの向こうの部下達が血相を変えてコワルスキー大尉のもとに駆け出そうとした。
だが、
「来るな!」
彼は部下達を拒んだ。
「ここに来るんじゃねえ!それよりも、防水扉をしめろ!」
意外な言葉に誰もが仰天する。
「そ、それじゃあ、おやっさんが死んでしまいますよ!今助けますから!」
「馬鹿野郎!俺のような老いぼれはどうだっていいんだ!つべこべ抜かさずにさっさと閉めんかぁ!」
「出来ません!」
「やれ!」
コワルスキー大尉は物凄い形相で部下を睨み据えた。
「エンタープライズの戦友を殺してしまってもいいのか!?そのハッチを閉めなければ、
他の区画にも水が浸水して、艦のバランスが崩れるんだぞ!」
部下達はうっと、押し黙った。
「どうせ、俺は悪性の腫瘍であと1年しか寿命が無いんだ。」
コワルスキー大尉は、1940年からずっとエンタープライズに乗ってきた。
彼はエンタープライズの中でも古参の乗員で、年齢は42になる。
(俺も早くいかねえと)
コワルスキー大尉も駆け出した瞬間、後ろから何かがぶつかってきた。
足がゴキ!という嫌な音を立てて折れる音がし、何かが両足に乗っかった。
それは、水圧で破壊され、流されてきた太い鋼鉄製のパイプだった。
「くそ、足をやられた!」
コワルスキー大尉は苦痛に顔を歪めた。
体を動かそうとするが、その太いパイプはとても大きく、重い。
「おやっさん!今助けます!」
ハッチの向こうの部下達が血相を変えてコワルスキー大尉のもとに駆け出そうとした。
だが、
「来るな!」
彼は部下達を拒んだ。
「ここに来るんじゃねえ!それよりも、防水扉をしめろ!」
意外な言葉に誰もが仰天する。
「そ、それじゃあ、おやっさんが死んでしまいますよ!今助けますから!」
「馬鹿野郎!俺のような老いぼれはどうだっていいんだ!つべこべ抜かさずにさっさと閉めんかぁ!」
「出来ません!」
「やれ!」
コワルスキー大尉は物凄い形相で部下を睨み据えた。
「エンタープライズの戦友を殺してしまってもいいのか!?そのハッチを閉めなければ、
他の区画にも水が浸水して、艦のバランスが崩れるんだぞ!」
部下達はうっと、押し黙った。
「どうせ、俺は悪性の腫瘍であと1年しか寿命が無いんだ。」
コワルスキー大尉は、1940年からずっとエンタープライズに乗ってきた。
彼はエンタープライズの中でも古参の乗員で、年齢は42になる。
その風貌と、性格からおやっさんの愛称で呼ばれ、エンタープライズの事なら何でも知っている。
体格もがっしりしており、艦内の腕相撲退会では常にコワルスキーが優勝をかっさらっている。
体格もがっしりしており、艦内の腕相撲退会では常にコワルスキーが優勝をかっさらっている。
その頑健そうなコワルスキーも、今年の3月に医者に胃に悪性の腫瘍が出来ていると伝えられた。
それも末期の・・・・・・
彼はしばらくは何もかも嫌になったが、そんな彼を慰めたのが、エンタープライズの乗員達だった。
その事から、彼は倒れるまで艦隊勤務をやっていこうと決意したのである。
「このビッグEの命と、1人の古株の出来損ないの命に比べれば、やすい買い物さ。」
「・・・・おやっさん。」
「・・・・何してる!さっさと閉めねえか馬鹿野郎!」
彼は側にあった破片を投げつけた。破片が壁に当たって音を立てた。浸水は急激に広がりつつある。
既に彼を覆い隠さんばかりの水位まで上がっている。
「おやっさん・・・・・すいません!!」
部下の兵が泣きながらハッチを閉めた。扉の向こうでロックをする音が聞こえる。
ガチャン!という音と共に部下達の仕事は終わった。
ザー!という音が鳴り、水かさが増していく。
「ビッグEよ・・・・・おめえも痛いだろう?だが、安心しな。お前は絶対に生き残る。
俺が保障するぜ。」
コワルスキーは渋い顔に笑顔を浮かべながら、エンタープライズに問いかける。
思えば、エンタープライズは常に最前線で戦い、そして傷ついてきた。だが、傷つくたびに何度も何度も前線に姿を現し、味方将兵たちの勇気を与えてきた。
そして今回も致命的な損傷を負っている。だが、彼の判断で、浸水の拡大はひとまず、終わった。
「まっ、俺はどうにもならんがな。」
彼は自嘲めいた口調で言う。その時、防水扉の向こうから何かが聞こえてきた。
しゃくりあげるような音と、嗚咽の音・・・・・
「しみったれた奴らだな。いつもはまともに言う事も聞かん癖に。」
コワルスキー大尉は苦笑した。
水は彼の顔を完全に覆い隠し、次第に息苦しくなっていった。
それも末期の・・・・・・
彼はしばらくは何もかも嫌になったが、そんな彼を慰めたのが、エンタープライズの乗員達だった。
その事から、彼は倒れるまで艦隊勤務をやっていこうと決意したのである。
「このビッグEの命と、1人の古株の出来損ないの命に比べれば、やすい買い物さ。」
「・・・・おやっさん。」
「・・・・何してる!さっさと閉めねえか馬鹿野郎!」
彼は側にあった破片を投げつけた。破片が壁に当たって音を立てた。浸水は急激に広がりつつある。
既に彼を覆い隠さんばかりの水位まで上がっている。
「おやっさん・・・・・すいません!!」
部下の兵が泣きながらハッチを閉めた。扉の向こうでロックをする音が聞こえる。
ガチャン!という音と共に部下達の仕事は終わった。
ザー!という音が鳴り、水かさが増していく。
「ビッグEよ・・・・・おめえも痛いだろう?だが、安心しな。お前は絶対に生き残る。
俺が保障するぜ。」
コワルスキーは渋い顔に笑顔を浮かべながら、エンタープライズに問いかける。
思えば、エンタープライズは常に最前線で戦い、そして傷ついてきた。だが、傷つくたびに何度も何度も前線に姿を現し、味方将兵たちの勇気を与えてきた。
そして今回も致命的な損傷を負っている。だが、彼の判断で、浸水の拡大はひとまず、終わった。
「まっ、俺はどうにもならんがな。」
彼は自嘲めいた口調で言う。その時、防水扉の向こうから何かが聞こえてきた。
しゃくりあげるような音と、嗚咽の音・・・・・
「しみったれた奴らだな。いつもはまともに言う事も聞かん癖に。」
コワルスキー大尉は苦笑した。
水は彼の顔を完全に覆い隠し、次第に息苦しくなっていった。
午後2時30分 第58任務部隊旗艦インディアナポリス
「まず、先の空襲の被害の暫定報告を申し上げます。」
作戦参謀のフォレステル大佐が、左腕を三角巾で釣りながら、強張った表情で言い始める。
「沈没、正規空母ランドルフ、軽巡洋艦オークランド、駆逐艦エレット、クレイブン、給油艦ミシシネワ。
大破、正規空母エンタープライズ、重巡洋艦ウィチタ、駆逐艦ラング、アンソニー、ベル。
中破、正規空母ヨークタウン、重巡洋艦インディアナポリス、軽巡洋艦ヒューストン、駆逐艦ベルム。
小破、正規空母ホーネット、軽空母カウペンス、戦艦ニュージャージー、軽巡洋艦モントピーリア。
被撃墜、F6F48機。戦果は護衛機が380機、艦隊で200機であります。」
報告が終わると、作戦室に重苦しい雰囲気が流れる。
「続いて、攻撃隊の戦果です。まず撃沈が重武装戦列艦3隻、中型戦列艦2隻、小型戦列艦4隻、
撃破が小型戦列艦2隻、損害は29機です。飛行場攻撃隊は航空基地1つを完全破壊。
被撃墜は10機、戦果は戦闘機21機撃墜であります。」
「敵も腕を上げたな。」
スプルーアンスは怜悧な口調でそう呟いた。
「まず、先の空襲の被害の暫定報告を申し上げます。」
作戦参謀のフォレステル大佐が、左腕を三角巾で釣りながら、強張った表情で言い始める。
「沈没、正規空母ランドルフ、軽巡洋艦オークランド、駆逐艦エレット、クレイブン、給油艦ミシシネワ。
大破、正規空母エンタープライズ、重巡洋艦ウィチタ、駆逐艦ラング、アンソニー、ベル。
中破、正規空母ヨークタウン、重巡洋艦インディアナポリス、軽巡洋艦ヒューストン、駆逐艦ベルム。
小破、正規空母ホーネット、軽空母カウペンス、戦艦ニュージャージー、軽巡洋艦モントピーリア。
被撃墜、F6F48機。戦果は護衛機が380機、艦隊で200機であります。」
報告が終わると、作戦室に重苦しい雰囲気が流れる。
「続いて、攻撃隊の戦果です。まず撃沈が重武装戦列艦3隻、中型戦列艦2隻、小型戦列艦4隻、
撃破が小型戦列艦2隻、損害は29機です。飛行場攻撃隊は航空基地1つを完全破壊。
被撃墜は10機、戦果は戦闘機21機撃墜であります。」
「敵も腕を上げたな。」
スプルーアンスは怜悧な口調でそう呟いた。
第58任務部隊は、敵空中騎士団の総攻撃を受けた。
攻撃を受けたのは第58任務部隊の第4、第3、第1任務群、補給船団である。
損傷艦にはインディアナポリスも混じっている。
インディアナポリスは敵機の捨て身の爆撃を受けた結果、後部の機械室と後部射撃指揮所に損傷を受け、
戦死26、負傷32人の損害を出した。
攻撃を受けたのは第58任務部隊の第4、第3、第1任務群、補給船団である。
損傷艦にはインディアナポリスも混じっている。
インディアナポリスは敵機の捨て身の爆撃を受けた結果、後部の機械室と後部射撃指揮所に損傷を受け、
戦死26、負傷32人の損害を出した。
この被害は左舷側のスクリューにも損傷を与え、推進器が捻じ曲げられてしまった。
そのため、しばらくは小刻みな振動が続いた。
マックベイ艦長が左舷のスクリューの運転を止めてからは、振動は収まったが、
速力が21ノットまで低下してしまった。
第1群には92機の飛空挺が進入してきた。この敵機群も最初はエスコート艦を狙ってきた。
一番攻撃が集中したのは、軽巡洋艦のオークランドで、実に30機もの敵機が襲い掛かってきた。
オークランドは機銃や高角砲を撃ちまくったが、最終的に急降下爆撃からの爆弾6発と、
低空からの爆弾5発を受け炎上した。
オークランドは被弾から45分後に転覆。戦死者194名、負傷者227名の損害を出した。
正規空母ヨークタウンには23機が向かい、高空から爆弾1発、低空から爆弾2発と、
左舷側中央部への体当たりを受けて中破した。
しかし、ヨークタウン艦長ジェニングス大佐からは、母艦機能は健在と伝えられているから、
戦闘力は維持している。
ホーネットには低空から左舷前部舷側に爆弾1発が食らわされたものの、小破に留まっている。
一方、補給部隊には、ブリュンス岬方面から飛来したと思われる100機の飛空挺が襲い掛かった。
だが、護衛空母から発艦した60機のFM-2ワイルドキャットによって片っ端から叩き落され、
最終的に1機が給油艦ミシシネワに体当たりし、これを道連れにした。
バーマント機に体当たりされた不運なミシシネワは、大爆発を起こして爆沈。
戦死者は64名、負傷者87名を出した。
この100機の飛空挺は、FM-2の迎撃と、補給船団の対空砲火によって全て撃墜されている。
そのため、しばらくは小刻みな振動が続いた。
マックベイ艦長が左舷のスクリューの運転を止めてからは、振動は収まったが、
速力が21ノットまで低下してしまった。
第1群には92機の飛空挺が進入してきた。この敵機群も最初はエスコート艦を狙ってきた。
一番攻撃が集中したのは、軽巡洋艦のオークランドで、実に30機もの敵機が襲い掛かってきた。
オークランドは機銃や高角砲を撃ちまくったが、最終的に急降下爆撃からの爆弾6発と、
低空からの爆弾5発を受け炎上した。
オークランドは被弾から45分後に転覆。戦死者194名、負傷者227名の損害を出した。
正規空母ヨークタウンには23機が向かい、高空から爆弾1発、低空から爆弾2発と、
左舷側中央部への体当たりを受けて中破した。
しかし、ヨークタウン艦長ジェニングス大佐からは、母艦機能は健在と伝えられているから、
戦闘力は維持している。
ホーネットには低空から左舷前部舷側に爆弾1発が食らわされたものの、小破に留まっている。
一方、補給部隊には、ブリュンス岬方面から飛来したと思われる100機の飛空挺が襲い掛かった。
だが、護衛空母から発艦した60機のFM-2ワイルドキャットによって片っ端から叩き落され、
最終的に1機が給油艦ミシシネワに体当たりし、これを道連れにした。
バーマント機に体当たりされた不運なミシシネワは、大爆発を起こして爆沈。
戦死者は64名、負傷者87名を出した。
この100機の飛空挺は、FM-2の迎撃と、補給船団の対空砲火によって全て撃墜されている。
しかし、一番損害を出したのは第4群である。
エセックス級初の喪失艦となったランドルフは艦長以下289人が戦死。
左舷側に13発の直撃弾を受け、復旧活動も危険とみなされて中止。
午後1時30分に左舷側に転覆し、沈没している。
いくら頑丈なエセックス級空母とえども、一度に13発もの直撃弾を受けてはひとたまりも無かったのである。
エセックス級初の喪失艦となったランドルフは艦長以下289人が戦死。
左舷側に13発の直撃弾を受け、復旧活動も危険とみなされて中止。
午後1時30分に左舷側に転覆し、沈没している。
いくら頑丈なエセックス級空母とえども、一度に13発もの直撃弾を受けてはひとたまりも無かったのである。
「損害が大きすぎるな。まさか、正規空母にまで損害が及ぶとは。」
デイビス参謀長が頭を抱えながら言う。
「一気に多数の敵機が襲ってきたのだ。濃密な対空砲火を以ってしても、決して万全とは言えぬ。」
スプルーアンスは表情を変えずに、一句一句に重みを乗せて言い放つ。
「確かに機動部隊も無視できぬ損害を負っている。だが、空母の中で沈没艦はランドルフ1艦のみで、
戦闘不能に陥った空母もエンタープライズのみだ。他は全て母艦機能を有している。
逆に、来襲して来た敵機の大半を叩き落し、600機以上一大航空部隊を壊滅させる事が出来た。」
実際、この戦果はごり押しで生まれたようなもので、敵機が今日のように多数で、
しかも高空、低空と別々に分かれていなかったら、投弾前に撃墜できた敵機は多くなる。
それに対空砲火は分散されたものの、米艦隊の統制射撃は見事に機能し、多くの敵機を叩き落している。
デイビス参謀長が頭を抱えながら言う。
「一気に多数の敵機が襲ってきたのだ。濃密な対空砲火を以ってしても、決して万全とは言えぬ。」
スプルーアンスは表情を変えずに、一句一句に重みを乗せて言い放つ。
「確かに機動部隊も無視できぬ損害を負っている。だが、空母の中で沈没艦はランドルフ1艦のみで、
戦闘不能に陥った空母もエンタープライズのみだ。他は全て母艦機能を有している。
逆に、来襲して来た敵機の大半を叩き落し、600機以上一大航空部隊を壊滅させる事が出来た。」
実際、この戦果はごり押しで生まれたようなもので、敵機が今日のように多数で、
しかも高空、低空と別々に分かれていなかったら、投弾前に撃墜できた敵機は多くなる。
それに対空砲火は分散されたものの、米艦隊の統制射撃は見事に機能し、多くの敵機を叩き落している。
「結果的には、ランドルフを始めとする5隻が沈んでしまった。しかし、今回の戦闘で
少なめに見ても400機、いや、500機以上の敵機を撃墜した。それに比べて、
我が機動部隊には依然として、正規空母7隻、軽空母7隻を保有しており、
艦載機も800機以上を保有している。
諸君、我々はこの航空戦に負けてはいない。むしろ勝った、と言うべきであ
少なめに見ても400機、いや、500機以上の敵機を撃墜した。それに比べて、
我が機動部隊には依然として、正規空母7隻、軽空母7隻を保有しており、
艦載機も800機以上を保有している。
諸君、我々はこの航空戦に負けてはいない。むしろ勝った、と言うべきであ