自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

72 外伝08

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午後3時20分 ウィザードリィ4号機
空母エセックスを発艦したヘルダイバー、ウェザードリィ4号機は、ギルアルグの東方10マイル付近に到達した。

「機長。」
「ん?なんだ?」

機長のボルス・プラウンズ少尉が聞き返した。

「どうも、今回の偵察はやりにくいですなあ。」
「お前も思うか?」
「はい。ギルアルグ以外は、あたり一面緑の森ばっかりですよ。」
「同じ光景だと、なんか暇になってくるよな。ただ色が緑に変わっただけだな。」

長い洋上飛行になると、飛行中の光景はだだっ広い青い海しか見るものが無い。
それが、今では海から森、そして色が青から緑になっただけで、普段の偵察につきものである、単調さは全く変わってない。
それに、味方のパイロットを見つけると言っても、こう森が広がっていると、何がどれだか判断がつきにくい。
それ以来、彼らは押し黙って、周りを見渡す。
最初こそは、

「よし!早めに戦友を見つけて、元の世界に連れ帰ってやるぞ!」

と意気込んだプラウンズ少尉であったが、今ではその意気込みも少しばかり萎えていた。

それから5分後。

「機長!」
後部座席の部下が声を上げた。

「何か見つかったか?」
「あそこだけがなんか・・・・・森の木々が無いですよ。」

彼は、言われた右方向を見てみた。
約5、6マイル離れたところに、そこだけ森の途切れている部分がある。
それは横に細長く途切れている。
一瞬飛行場か?と思ったが、飛行場にしてはかなり短い。
せいぜい横に200メートルぐらいしかない。
200メートルでは、飛行機の発着は難しい。
ちなみに、200メートルの距離では、空母の艦載機ならば発着が可能である。
だが、それは空母の行進時の合成速力と兼ね合わせながらのものだ。
合成速力が作れない地上基地でやるとなると、200メートルでは足りない。
航空機発進用作るとすれば、せめて500。欲を取って800メートルは欲しい所である。

「様子を見てみよう。」

プラウンズ少尉はそう言うと、機首をその怪しげな空き地に向けた。
スピードを速めて到達時間を早くした。
5分ほどで上空にやってきた。彼らは旋回しながら、その開けた空き地を眺めた。
空き地には、いくつかの建物があり、人も何人か見受けられたが、航空機や対空火器といった戦闘に必要なものは見受けられない。
農民らしき人が集まって、高度600付近で旋回しているヘルダイバーを見つめている。

「なんかの集落ですかね?」
「たぶん・・・・・・そうだろうな。」

プラウンズ少尉はそう思った。しかし、なぜか引っ掛かる要素もある。
その要素というのが、農民達の中に、ほんの一瞬だけだが、きびきびとした動きをする者がいたのだ。
次の瞬間にはそのようなものはいなかったが・・・・・・
(どうも臭いな)
プラウンズ少尉はやや、不審に思った。
30分ほど、その空き地と、その周辺数キロ四方を偵察したものの、これと言ってめぼしいものは見当たらなかった。

「何もないようですね。」
「・・・・・・元のコースに戻るか。」

上空を旋回していた米軍機は、やっと南の方角に去っていった。

「くそ!あの白星のせいで、ワイバーンロードの出撃が大分遅れたぞ!」

森の中に隠蔽されたワイバーンロードの側にいた、クランベリン少佐は呪詛を吐くような口調で呻く。
本当ならば、空中騎士旅団のワイバーンロードは40分前には出撃している筈だった。
だが、出撃1時間前になって、耳慣れぬ爆音が聞こえてきた。
北に20キロ離れた所にある監視小屋から、

「敵飛空挺接近!」

の、緊急信が届けられ、旅団の施設には慌しく偽装が施された。
ワイバーンロードはあらかじめ用意してあった、森の中にある専用の囲いに入れられた。
偽装が終わった時には、米軍機は既に1,2キロも離れていない上空に来ていた。

農民に化けた者は、何食わぬ顔で施設を出たり入ったりしたり、農具を馬車に入れて運んだりした。
完全に無視すると、いらぬ疑いをもたれるかも知れないから、一部の者は、わざとらしく飛空挺を見て驚くふりをする。
といっても、正直言って、驚くふりではなく、本当に驚いていた。

なにせ、行方知らずであった敵機動部隊の艦載機が、突然姿を現したのだ。
しつこく偵察する米軍機に苛立つものは、口々にさっさと叩き落してしまえ、などと、罵声をあげた。
だが、米軍機を撃墜でもしようものならば、後が怖い。
31日の戦いでは、戦闘飛空挺がアメリカ軍の偵察機を撃墜している。

これで基地の所在を隠し通せたと思われたが、しばらくすると、100機以上の大編隊が押し寄せてきた。
この時、ギルアルグの第3飛行場が猛烈な爆撃を受けて、瞬く間に壊滅してしまった。

「アメリカ軍の飛空挺にも、魔法通信を送る魔道師が乗っているのかもしれない。
それに手を出そうものならば、真っ先に通信が送られ、こちらの所在がばれてしまう。」

部隊の全員が、この事を痛感しているため、上がりたくても上がれなかった。
米軍機は30分ほど、上空を旋回して去っていったが、彼らにとって、この30分間は数時間分ほどの長さに感じられた。

「これで、やっと出撃できるな。」

クランベリン少佐はほっと、胸をなでおろした。一時はどうなるかと思ったが、敵飛空挺は南に去っていった。
これからは本来の仕事ができる。

「カウェルサントの敵を消し炭にしてやる。」

少佐はニヤリと笑みを浮かべたが・・・・・・・・・

5分待っても、10分待っても、肝心の出撃命令が来ない。
それに、森の中からワイバーンロードを出そうともしない。

「なぜ出撃しないんだ?」

彼が首をかしげた時、指揮所から副司令がやってきた。
副司令は彼らのもとにやってくると、大声で言葉を発した。

「出撃は中止だ!戦闘区域は大雨が降っているため、ワイバーンロードの支援は出来ない。
出撃は現地の天候が回復次第行う!」

その日の継戦側は、とことんツキに恵まれていなかった。

戦況地図(10月4日)


                                                      ゝ
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                  ●第58.4任務群                        ヾ
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                                 ノ丶ヾヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽ
丶ヽ                              ヽ
   丶丶                        丶 ヽ
      ヽ                      丶
       丶ゝ`´丶丶ヽO`ヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽ
             ガレンスアロ軍港  


                                                    ヌーメア
       ○ギルアルグ                                        。    カウェルサント
                                                             。


                     第68空中騎士旅団航空基地
                          。

  。グレンドルス城
           O継戦軍総司令部

    第67空中騎士旅団航空基地
          。
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