自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

086 外伝4

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tapper

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16 :外伝(またはパラレル):2007/11/03(土) 08:39:42 ID:OiXF2z220
デビッド・E・ウォレス曹長の手記
爆弾を目一杯抱え込んだB-24D 42-78243“ダイヤモンド・リル”は
切り立ったV字型の回廊を妊娠した牝牛のようによろめきながら飛んでいた
先行する爆撃機のプロペラ後流が容赦無く機体を揺さぶる
暴れ馬の様に跳ね回る爆撃機の下っ腹にぶら下がった直径1.2メートルのアルミと強化
ガラスで出来たボールターレットの中に50口径の機関銃二挺と弾薬、K-4射撃照準器と一緒に詰め込まれた私の体はシェーカーの中の氷さながらだった
股の間から覗く正面パネルからは後続のB-24が翼端を左右の山肌にぶつけそうに
なりながら縦一列になって飛行する身の毛もよだつ姿がよく見える
本番前の訓練で嫌というほどお馴染みの光景だが何度見ても心臓に悪いことこの上ない
『目標まで二分』
機長のオッズ大尉の声が流れると同時に渓谷を抜けた“ダイヤモンド・リル”は機首を
下げる
超低空で突進する爆撃機の一番地面に近い位置にいる私は今にも砲塔が赤土に覆われた
大地を擦るんじゃないかと気が気ではない
砲塔を正面に回すとハンドレバーとフットペダルを細かく操作し、進行方向でオレンジ色
の火を吹く対空砲陣地に狙いをつけトリガーボタンを押し込む
砲塔内に苦い味の硝煙が篭り、熱い空薬莢と連結環が腹の上に落ちてくる
自分が銃撃した陣地の真上を通過したとき破壊された高射砲の脇で50口径弾に
引き裂かれた人影を認めた私は少し憂鬱になった
目標の工場に爆弾を投下し中隊ごとに帰路についたところで遂に敵に食いつかれた
相手はいつもの飛びトカゲではなくこちらのムスタングに似たシルエットの戦闘機だ
目まぐるしく砲塔を旋回させ円形の正面パネルの中を飛び交う機影に弾丸を叩き込もうと
躍起になっているうちに遂に“ダイヤモンド・リル”も被弾した
左翼のエンジンが二基同時に火を吹き、みるみるうちに翼全体が松明のように燃え上がる
私の目の前をパラシュートを背負った人影が飛び去っていく
なんてこった、側面銃手のハミルじゃないか!
慌てて砲塔を引っ込め“栗鼠の檻”から飛び出すと後部区画に残っているのは私だけだ
超特急でパラシュートを身に付け窓から身を乗り出したもののすでに安全に降下するには
高度が下がり過ぎている
仕方が無いので外したパラシュートを頭に被せ体を丸めて床に蹲った
時速二百マイルで岩だらけの荒地にヘッドスライディングを決めた“ダイヤモンド・リル”
は円を描くように横滑りしながらバラバラに分解していった
ピンボールの玉さながらにあちこち飛び回り機内に突き出した隔壁やら機材やらに
嫌というほど体をぶつけた私は飛行機が止まった時には正直自分が生きているとは
信じられなかった
あちこち悲鳴を上げる体に鞭打って目茶苦茶になった機内を機首に向って這っていくと
いつの間にか足元の感触が草と石ころに変わっていた
哀れ“ダイヤモンド・リル”は主翼の付け根から真っ二つに千切れ
操縦席を含めた機首区画はたっぷり100ヤードは離れた場所に転がっている
ふらつく足取りで機首に辿り着くと天地逆転したコクピットでシートベルトに宙吊り
にされたオッズ大尉とリーマン中尉は傷一つ負っていなかった
呆然自失といった態のリーマン中尉の隣りで左手に嵌めたブライトリングの腕時計に
耳を当てていたオッズ大尉は私に気が付くと憮然として言った。
「くそ、時計が壊れた」
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