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さる☆かに

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だれでも歓迎! 編集
 昔々あるところに、二匹のサルとカニがおりました。
「誰がカニだ!」
 いきなり怒鳴らないでください。
「なに怒ってんだよひーらぎ」
 そんなカニを、サルがなだめます。
「そんなコトよりもさ、ひーらぎ、そのミートボールとこの柿の種、交換してくれよ」
「イヤよ。なんでそんなことしなきゃなんないのよ」
「えー。だって台本にそう書いてあんだもん」
「台本言うな」
 カニの冷たい声を無視して、手にした薄い冊子をパラパラめくりながらサルが言います。
「えーっと……ミートボールは食べたら終わりだけど、柿の種は植えて育ててを繰り返したら
ずーっと柿を食べ続けられる、だって。だから交換してくれ、ひーらぎ」
「だったらアンタがずっと柿を食べればいいじゃない」
「うぅ、あやのぉ。ひーらぎが冷たいぃ……」
 サルが、隣にいたもう一匹のサルに泣きつきます。
「よしよし」
「なんでサルが二匹いるんだ……」
「あら、柊ちゃん。最初に『二匹のサル』と『カニ』って言ってたわよ?」
「サルとカニあわせて二匹だと思うでしょ普通!」
 それは文法的におかしいです。
「そんなことよりも、柊ちゃん。私からもお願い。交換してあげて?」
「あー、もう。わかったわよ。今回だけだからね」
 カニはかすかに紅潮させた顔を斜めの角度に逸らしつつ、無造作な手つきでミートボールを
 サルに突き出しました。
「やったー! ありがとなひーらぎ!」
「べ、別にアンタのためじゃないわよっ。ただ、柿の方が美味しそうかなって思っただけよ。それに、
カロリーも低そうだし。アンタもお肉ばっかりじゃなく、ちゃんと野菜も食べなさいよねっ」
「おーおー、絵に描いたようなツンデレだねぇかがみ」
 と、そこに一匹のハチが飛んできました。
「うっ、うるさいわね! ……ってゆーかアンタ、ハチなの?」
「そだよ。……うぅ~~ゅうぅ~~ぅうぅうぅうぅ~~ぅゅうぅぅ~~~~……」
 訝しげなカニの問いに答えるように、ハチはエンジン音のような羽音を響かせ飛びまわります。
 そしてその向こうには一台の臼が、
「お……重いぃ~、動けない~……助けてお姉ちゃぁん……」
「何やってんのよアンタは……」
 地面に半分埋もれてもがいていました。
「いや、ってゆーかつかさが臼? さすがに脈絡がなさすぎない?」
「お……おもちうにょ~ん……熱いぃ」
 臼の中ではつきたてのお餅がほっかほかの湯気を立てています。
「あー、はいはい……」
 カニは頭を抱えてしまいました。
 と思ったらパッと立ち直ります。
「ってゆーか! アンタたちの出番はもっとあとでしょうが!」
「だって退屈なんだもん。ぅうぅ~~んぅん~んぅ~んぅ~~うぃゅうぅぅうぅぅ~~」
「耳元で飛び回るなうっとうしい!」
「きゃあ~、シザーハンズが怒ったぁ~」
「誰がジョニーデップだ!」
 仲がよろしいですね。
「そだね……ってゆーかゆきちゃん、助けてぇ。重いぃ、熱いぃ……」
 そうして差し上げたいのはやまやまなのですが……何せ今の私は声を出すしかできないものでして。
 申し訳ありません。
「うぇえ~ん」
「あ、ナレーションてみゆきさんだったんだ」
 ええ、お恥ずかしながら。
 ……最大の特徴と言っても過言でない“敬語”をフル活用していましたのに、つかささんにしか
 気付いていただけませんでした……
「いや、だって昔話の語りなんてだいたい敬語だから。――ってゆーか何の話だこれ!」
 知るもんですか!
「なんで逆ギレだよ!」
「……てぇかさー、なんかあたしらさながら背景じゃね?」
「まぁまぁ」
 と、忘れてました。
 二匹のサルは仲良くミートボールを半分こしてほおばっています。
「分けあってるのかよ」
「あったりまえじゃん」
 お二人ですからね。
 とまあ、そんなこんなを言っているうちに、柿の木はすくすく育ち、
 大きくて立派な実をたわわに実らせていました。
「おー! すっげーな、さすがひーらぎ!」
「いや、植えた覚えすらないんだけど」
 気にしないでください。
「なんだかな……ま、いいわ。それじゃさっそく……って、あれ? の、登れない!?」
 それはそうですよ。
 カニが木に登れるはずがないじゃないですか。
「そんな! カニはカニでも私はヤシの実を食べて生きているヤシガニなのよ!
木の登れないはずがないわ!」
 そんな設定ありませんよ。
 それにヤシガニというのは、カニと名付けられてはいますが、ヤドカリの一種であって、
 カニとはまったく別の生き物です。
「そ、そんな……」
 カニは愕然となりました。
 このままではせっかく苦労して育てた柿が食べられません。
「いや、つーか勝手に生えたんだけど……こなた!」
「へ? なに、かがみ?」
「アンタ飛べるでしょ! 取ってきて!」
「んゅ~~、花粉だけでいいなら」
「いいわけないでしょ! ってか実に花粉なんか付いてないわよ! ――つかさ!」
「……おもち、食べる?」
「いらないわよ! おもちはカロリー高いんだから!」
「あー、マッチ箱の大きさでお茶碗一杯分、だっけ」
 ええ、その通りです。
 ちなみに柿のカロリーはおもちの四分の一程度だそうです。
「じゃ、みゆき! あんたが取って!!」
 はい?
 いえ、ですから私は…
「ナレーターでしょっ。だったらこう――実が勝手に落ちてきたーとか言えばそのとおりになるはずよ!」
「おー、なるほど」
「お姉ちゃん頭いいー」
 無理ですよ。
 私にできるのはその場の状況を描写することだけです。できるならとっくに臼さんを助けてますよ。
「ああ~~! だったらどうしろってゆーのよ!」
「諦めておもちにすれば? つかさの」
「それじゃ意味ないでしょーが!」
 カニは地団太を踏んで悔しがりました。
「実況すんな!」
 ひゃあっ、ごめんなさいっ。
「や、やつあたりは駄目よ、柊ちゃん」
「そーだぜー。ホントなにやってんだよひーらぎ」
 と、そこにミートボールを食べ終えた二匹のサルが割り込んできました。
「今まで食ってたのか……」
「あたしに頼みゃいーじゃん。木登りならサルに任せとけって」
 言うが早いか、サルはするすると柿の木を登っていきます。
「ああっ! ま、待ちなさい日下部!」
「だいじょぶだいじょぶー。落ちゃしねーって」
「アンタの心配なんかしてないわよ!」
 カニは怒鳴り声を上げると、その場にへたり込んでしまいました。
「ううっ……私はこのまま青くて硬い実をぶつけられて死んでしまうのね……あんまりだわ……」
「ひっでーなぁ。んなコトするわけねーじゃん」
「へ?」
 すぐ真上からかけられた声に、カニは伏せていた顔を上げます。
 すると両手一杯に美味しそうな柿を抱えたサルが、不満そうに見下ろしてきていました。
「はい」
 そして、サルはその一つをカニに手渡します。
「は……」
「ほら、ちびっ子と妹さんも」
 茫然とするカニを置いて、サルは他の人たちにも柿を配り始めます。
「おー、サンキュー」
「ありがとう、みさちゃん」
「ありがと……でも、乗せないで……」
 あ、私にもいただけるのですか? ありがとうございます。
「ちょっと!」
 カニが跳ね起きました。
「何やってんのよ日下部! 何素直に取ってきてんのよ! それもきっちり人数分!
台本持ってんならちゃんと書いてある通りにやりなさいよ! 話が成り立たないじゃない!」
 茹でられたみたいに真っ赤になって、カニは声を張り上げます。
「ええ? ちゃんとやってるってば。ひーらぎこそちゃんと読んだのか?」
「読まなくても知ってるわよ! 『さるかに合戦』の筋書きぐらい!」
 え?
 あの、カニさん?
「誰がカニよっ!!」
 さっきご自分でヤシガニ宣言なさったじゃないですかぁ!
「あ、あんなのはちょっとした勢いよっ! ……それで、何よ」
 ええと、カニさんは勘違いをしていらっしゃいます。
 このお話は『さるかに合戦』ではありません。
「はあ?」
 サルさんの持っている台本の表紙に書かれたタイトルをよく見てください。
「ん? コレか?」
「タイトルって……『さる☆かに』?」
「あれ? 『合戦』がついてないよ?」
「え?」
 はい、臼さんの仰るとおりです。
「……どういうことよ」
 ですから、別に争う必要はないんです。
 これは、みなさんで仲良く柿を食べるという、ただそれだけのお話なんです。
「な……」
「おー、ホントだ。書いてある」
「そうなの? ……あら、ほんとう」
「なるほど。私たちらしいオチっちゃオチだね」
「そうだったんだぁ」
 というわけで、カニさん。
 ご一緒に柿をいただきましょう。ほら、とっても美味しそうですよ?
「……な」
 な?
「納得いかねえーーーーっ!!」


     ☆


 ぱち、ぱち、ぱち。
 焚き火の薪がはぜる音。
 「イメージだよイメージ」という、こなたのよくわからない主張のもと、私たちは夜の浜辺で
 焚き火を囲んで柿をぱくついている。
 なにやってんだろう、って気分だわ。
 ちなみにみゆきも一緒。
 ナレーターのままでは食べられない、ということで、今はこうしてみんなの前に姿を現している。
 どっからどうやって出てきたのかしら。
 ってゆーかサルやらカニやらに混じって一人だけ普段着な人間なもんだから、違和感が酷い。
 そもそもコレってどういう世界なのよ。
 日下部と峰岸のサルとつかさの臼は微妙に着ぐるみっぽいけど、
 カニの私とハチのこなたは、リアルに考えたらかなり気持ち悪い人面生物だし。
 いや、まあ、それもどーでもいーっちゃどーでもいーんだけど。

「――かがみ?」
「え?」
 物思いから回復すると、ハチのこなたが私の顔のすぐ前を飛んでいた。
「どったの? ボーっとして」
「……別に」
 そっぽを向く。
 けど小回りの利くこなたは、ひょいと簡単に回り込んでくる。
「ねぇねぇ」
「……なんでもないわよ。ちょっとボーっとしてただけ」
「ぅう~~ぃゅいゅいゅぅ~~」
「だから耳元を飛ぶな!」
 ハサミで追っ払うと一旦離れるけど、またすぐに戻ってくる。
「じゃぁさ、じゃぁさ。さっきはなんで、あんなに『合戦』にこだわってたの?」
「……」
「ひょっとして、みさきちに殺されたかったとか? それなんてヤンデレ?」
「そんなわけないでしょ! ……別にこだわってないわよ。ちょっと、そう思い込んでただけ」
「ホントにぃ~?」
 ハチの姿でも変わらない猫口が、ニヨニヨと笑う。
「ホントよ。ってかアンタも知らなかったじゃない」
「そうだけどさぁ~……怪しいなぁ?」
「何も怪しくなんかないっての」
 まったく。
 言えるわけがないじゃない。
 アンタが私のために戦ってくれると思った、なんて。
「うぅうう~ん、ツンデレの香りがするんだけどなぁ~? ぁぅうぅゅうぅうぅうぃゅぉ~~」
「だーっ! もぉアッチ行けー!」




















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  • ・・・あれ?栗は? -- 名無しさん (2009-02-19 20:06:24)
  • みんなの個性が出てるし、笑えたw楽しく読めるSSっていいなあ。 -- 名無しさん (2009-02-19 03:45:30)
  • つつましくタラバ -- 名無しさん (2009-02-17 17:53:18)

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