【track 10 : 逆転勝利と原点回帰】
「ギャーっス! 刑務所行きー!」
「ちょおー! ナニやってんのひよりーん!!」
岩崎家、というかむしろみなみ家の広い広いリビングに二人分の絶叫がコダマする。
ツイてない。
なんかもう、とことんツイてない。
「ちょおー! ナニやってんのひよりーん!!」
岩崎家、というかむしろみなみ家の広い広いリビングに二人分の絶叫がコダマする。
ツイてない。
なんかもう、とことんツイてない。
あのあと。
かがみの……例のアレが一件落着した、そのあと。
ゆーちゃんのモノポリーを早速みんなでやることになった。何故かチーム戦で。
や、何故かってゆーか人数が多すぎたからなんだけどね。
このモノポリーの最大プレイ人数は八人。
しかも、それも同梱されてるコマが八つだってだけで、実際にスムーズにプレイするには
せいぜい六人が限度らしい。By みゆきさん。
というわけでその結果、私はひよりんのカード運のなさに泣かされるハメになってると、そんな感じ。
本当はかがみと組みたかったんだけど、みさきちと取り合いになっちゃって。
すったもんだの末にクジで公平にってことになったってわけ。
いや、でもさ。
方法は公平かも知れないけど、結果が全然不公平だよ。
もともとある程度の不幸属性の持ち主ではあったけど、ひよりん、今のツキのなさは異常だよ。
覚醒前のカイジってレベルですらねぇぞ。
「ゆーちゃん、みゆきさぁん。釈放カード持ってたよね? 売って?」
「えっと……いいですか、先輩?」
「ええ、構いませんよ」
何の特にもならないはずの私の要求に快く応じてくれる最強萌え要素コンビ。
ちなみに現在、ってゆーかほぼ序盤からぶっちぎりで一位独走中。
勝負らしい勝負は仕掛けず、普通に物件を買って手堅くコツコツ育ててるだけなんだけど、
とにかく失敗をしない。気が付いたら全ての陣地がドル箱の超優良物件に化けてしまっている。
この二人が組んだらスゴイコトになりそうだと前から思ってはいたけど、ここまでとはね……
私たちも同じ戦法取ってるはずなのになぁ……
「ええと、ええと……こ、ここはどうしようか?」
「……」
「ど、どっち? 首だけ振られてもわかんないよぅ」
「……パス、しましょう」
そんな感じで、微妙にコミュニケーション不全で不利を強いられているはずの
つかさ・みなみちゃんコンビにすら遅れを取ってるのは何故なんでしょう。
「お! じゃー競売だな! 乗った!」
「ミナサンはドゥしますカ?」
止まったマス目の土地をプレイヤーが買わなかった場合は競売になる。
真っ先に名乗りを上げたみさきち・パティのハイテンションユニットに、誰も続かなかった。
当然といえば当然だ。
だってこの二人、自分たちが勝つまで金額を吊り上げ続けるんだもん。
スタート直後からずっとそんな感じに強引な買い付けと仮破産を繰り返していて、
ずっと底辺を這いずってたのに、今では脅威の追い上げを見せて二位にまで浮上している。
もちろん、運なんかじゃない。
「ここは……買っておくべきよね?」
「待って柊ちゃん。もう少しで向こうの一帯が買い占められるわ。今は資金を温存しましょう」
「でも、それじゃこっちのゾーンが日下部たちに……」
「大丈夫。あんな無茶なやり方、いつまでも続くはずないわ。それにみさちゃんなら、私にならいつでも
止められる」
「……わかった。信じるわ、峰岸」
信じちゃダメだよかがみ。
明らかにみさきちを勝たせるための布石だよ、それ。
たぶん、ゆーちゃんたちには敵わないことを悟って自ら捨石になる道を選んだんだ。
「へっへん。言ってくれんじゃんあやの」
「あら? みさちゃん、本気の私に勝てたこと、一度でもあった?」
「一対一での話だろ。こっちにはパトリシアもついてんだ」
「Yes! Tag match だというコトを忘れてイマセンか?」
「そっちこそ。私を無視しないでよね」
「そういうこと。負けないわよ、みさちゃん」
よくもまあ……
そんなこと言って、さっきからみさきちたちの不利になる動きを一切してないじゃん。
まあ自分たちもしっかり利益を上げてるから、疑ってかからないと気付けないかなぁ……と、
「……」
生温かい視線を送っていると、かがみと目が、
「……」
「……」
一瞬だけ合って、すぐに逸らされた。
思わず眉が寄る。
怒ってる。
たぶん、さっき、手紙の差出人をしつこく訊いたこととかが原因だ。
かがみのことを私がからかうなんてそれこそ日常茶飯事だけど、やっぱ材料がマズかったかなぁ。
空想でないリアルで具体的な色恋沙汰を突くのは初めてだったからサジ加減がわからなかったよ。
ってゆーか。
あのとき私がしたかったのは、本当に「からかうこと」だったんだろうか。
最後の方はそのつもりになってたけど、最初は。
かがみの告白を聞いたその瞬間は、私は何を想ったんだろうか。
かがみの……例のアレが一件落着した、そのあと。
ゆーちゃんのモノポリーを早速みんなでやることになった。何故かチーム戦で。
や、何故かってゆーか人数が多すぎたからなんだけどね。
このモノポリーの最大プレイ人数は八人。
しかも、それも同梱されてるコマが八つだってだけで、実際にスムーズにプレイするには
せいぜい六人が限度らしい。By みゆきさん。
というわけでその結果、私はひよりんのカード運のなさに泣かされるハメになってると、そんな感じ。
本当はかがみと組みたかったんだけど、みさきちと取り合いになっちゃって。
すったもんだの末にクジで公平にってことになったってわけ。
いや、でもさ。
方法は公平かも知れないけど、結果が全然不公平だよ。
もともとある程度の不幸属性の持ち主ではあったけど、ひよりん、今のツキのなさは異常だよ。
覚醒前のカイジってレベルですらねぇぞ。
「ゆーちゃん、みゆきさぁん。釈放カード持ってたよね? 売って?」
「えっと……いいですか、先輩?」
「ええ、構いませんよ」
何の特にもならないはずの私の要求に快く応じてくれる最強萌え要素コンビ。
ちなみに現在、ってゆーかほぼ序盤からぶっちぎりで一位独走中。
勝負らしい勝負は仕掛けず、普通に物件を買って手堅くコツコツ育ててるだけなんだけど、
とにかく失敗をしない。気が付いたら全ての陣地がドル箱の超優良物件に化けてしまっている。
この二人が組んだらスゴイコトになりそうだと前から思ってはいたけど、ここまでとはね……
私たちも同じ戦法取ってるはずなのになぁ……
「ええと、ええと……こ、ここはどうしようか?」
「……」
「ど、どっち? 首だけ振られてもわかんないよぅ」
「……パス、しましょう」
そんな感じで、微妙にコミュニケーション不全で不利を強いられているはずの
つかさ・みなみちゃんコンビにすら遅れを取ってるのは何故なんでしょう。
「お! じゃー競売だな! 乗った!」
「ミナサンはドゥしますカ?」
止まったマス目の土地をプレイヤーが買わなかった場合は競売になる。
真っ先に名乗りを上げたみさきち・パティのハイテンションユニットに、誰も続かなかった。
当然といえば当然だ。
だってこの二人、自分たちが勝つまで金額を吊り上げ続けるんだもん。
スタート直後からずっとそんな感じに強引な買い付けと仮破産を繰り返していて、
ずっと底辺を這いずってたのに、今では脅威の追い上げを見せて二位にまで浮上している。
もちろん、運なんかじゃない。
「ここは……買っておくべきよね?」
「待って柊ちゃん。もう少しで向こうの一帯が買い占められるわ。今は資金を温存しましょう」
「でも、それじゃこっちのゾーンが日下部たちに……」
「大丈夫。あんな無茶なやり方、いつまでも続くはずないわ。それにみさちゃんなら、私にならいつでも
止められる」
「……わかった。信じるわ、峰岸」
信じちゃダメだよかがみ。
明らかにみさきちを勝たせるための布石だよ、それ。
たぶん、ゆーちゃんたちには敵わないことを悟って自ら捨石になる道を選んだんだ。
「へっへん。言ってくれんじゃんあやの」
「あら? みさちゃん、本気の私に勝てたこと、一度でもあった?」
「一対一での話だろ。こっちにはパトリシアもついてんだ」
「Yes! Tag match だというコトを忘れてイマセンか?」
「そっちこそ。私を無視しないでよね」
「そういうこと。負けないわよ、みさちゃん」
よくもまあ……
そんなこと言って、さっきからみさきちたちの不利になる動きを一切してないじゃん。
まあ自分たちもしっかり利益を上げてるから、疑ってかからないと気付けないかなぁ……と、
「……」
生温かい視線を送っていると、かがみと目が、
「……」
「……」
一瞬だけ合って、すぐに逸らされた。
思わず眉が寄る。
怒ってる。
たぶん、さっき、手紙の差出人をしつこく訊いたこととかが原因だ。
かがみのことを私がからかうなんてそれこそ日常茶飯事だけど、やっぱ材料がマズかったかなぁ。
空想でないリアルで具体的な色恋沙汰を突くのは初めてだったからサジ加減がわからなかったよ。
ってゆーか。
あのとき私がしたかったのは、本当に「からかうこと」だったんだろうか。
最後の方はそのつもりになってたけど、最初は。
かがみの告白を聞いたその瞬間は、私は何を想ったんだろうか。
「――センパイ。泉センパイ」
「……え?」
我に帰る。
ひよりんが顔を覗き込んできていた。
「なに呆けてるんスか。諦めたらそこで試合終了っスよ」
「ああ、うん」
そしてサイコロを手渡してくる。さすがに懲りちゃったか。
って言ってもねぇ……
ここからたっぷり二十マス近く、激高物件が軒を連ねる逆回復ゾーンが続いているわけで。
気合なんか入るはずもないってもんよ。サイコロよりもサジを投げたいよ。
「あー、もぉ……よっと」
力なく宙を舞ったサイコロは、ボードの上を転がることすらなく、ぺたりと止まった。
ピンゾロ……
よりにもよって最低値ですか……っと?
「みゆきさん。ゾロ目ってもっかい振れるんだっけ?」
「ええ。止まったマスは無視できませんが」
おぉ……!
マスはみゆきさんたち所有の電力会社。公共会社なのでショバ代はサイコロの出目で決まる。
つまり最安値だ。……それでもじゅうぶん高いけど。
「どうやら、まだ完全にツキに見放されたわけじゃないみたいだね」
「せ、センパイ! 行くっス! 今度は六ゾロ出して一気に地雷原を抜けるっス!」
「や、無茶言わないでよ」
でも、確かに。このチャンスを逃すわけにはいかない。
途絶えかけた気合を再燃させ、握り締めたサイコロ――否。
「ダイスっ――」
を、
「――っローーーールっ!!」
解き放つ!
さっきとは打って変わって勢いよくボードの上を転がる二つの六面体。その目は――まず、六。
そして…………六っ!?
「ぉ……」
一瞬、空気が静止して。
次に大きくざわめいた。
「すっ――すごい! ホントに出た!」
「おおおおおっ! グッジョブっス、センパイ!」
思わずひよりんと抱き合う。こめかみにメガネが当たったけど痛くない!
「お姉ちゃん、すごーい」
「あ、ありえねー……」
ゆーちゃんとみさきち、他のみんなも目を丸くしている。
でもたぶん一番驚いてるのは私だね!
止まった場所も比較的安いつかさたちの土地だ。
行ける!
これは、行ける!
「せ、センパイっ、次っ! 次行くっス! でも六だけは――」
「ストップひよりん! 口に出すのは死亡フラグだよ……!」
そう。ここから六つ先は『GO TO JAIL』のマス。問答無用の刑務所行き。
“お約束”としてはじゅうぶんに有り得る。
めんどくさいから計算はしないけど、少なくとも二連続のゾロ目よりはよっぽど高確率のはずだ。
とにかく、こういうときは流れを断ち切らないためにもひたすらポジティブシンキングで行くべし!
「うーっ! やーっ! ったぁーーーーっ!!」
投擲!
三度――いや再びか。盤上を回りだすダイス。
永遠に続くかと思われたその回転も、やがて収まり、示されたその目は――
我に帰る。
ひよりんが顔を覗き込んできていた。
「なに呆けてるんスか。諦めたらそこで試合終了っスよ」
「ああ、うん」
そしてサイコロを手渡してくる。さすがに懲りちゃったか。
って言ってもねぇ……
ここからたっぷり二十マス近く、激高物件が軒を連ねる逆回復ゾーンが続いているわけで。
気合なんか入るはずもないってもんよ。サイコロよりもサジを投げたいよ。
「あー、もぉ……よっと」
力なく宙を舞ったサイコロは、ボードの上を転がることすらなく、ぺたりと止まった。
ピンゾロ……
よりにもよって最低値ですか……っと?
「みゆきさん。ゾロ目ってもっかい振れるんだっけ?」
「ええ。止まったマスは無視できませんが」
おぉ……!
マスはみゆきさんたち所有の電力会社。公共会社なのでショバ代はサイコロの出目で決まる。
つまり最安値だ。……それでもじゅうぶん高いけど。
「どうやら、まだ完全にツキに見放されたわけじゃないみたいだね」
「せ、センパイ! 行くっス! 今度は六ゾロ出して一気に地雷原を抜けるっス!」
「や、無茶言わないでよ」
でも、確かに。このチャンスを逃すわけにはいかない。
途絶えかけた気合を再燃させ、握り締めたサイコロ――否。
「ダイスっ――」
を、
「――っローーーールっ!!」
解き放つ!
さっきとは打って変わって勢いよくボードの上を転がる二つの六面体。その目は――まず、六。
そして…………六っ!?
「ぉ……」
一瞬、空気が静止して。
次に大きくざわめいた。
「すっ――すごい! ホントに出た!」
「おおおおおっ! グッジョブっス、センパイ!」
思わずひよりんと抱き合う。こめかみにメガネが当たったけど痛くない!
「お姉ちゃん、すごーい」
「あ、ありえねー……」
ゆーちゃんとみさきち、他のみんなも目を丸くしている。
でもたぶん一番驚いてるのは私だね!
止まった場所も比較的安いつかさたちの土地だ。
行ける!
これは、行ける!
「せ、センパイっ、次っ! 次行くっス! でも六だけは――」
「ストップひよりん! 口に出すのは死亡フラグだよ……!」
そう。ここから六つ先は『GO TO JAIL』のマス。問答無用の刑務所行き。
“お約束”としてはじゅうぶんに有り得る。
めんどくさいから計算はしないけど、少なくとも二連続のゾロ目よりはよっぽど高確率のはずだ。
とにかく、こういうときは流れを断ち切らないためにもひたすらポジティブシンキングで行くべし!
「うーっ! やーっ! ったぁーーーーっ!!」
投擲!
三度――いや再びか。盤上を回りだすダイス。
永遠に続くかと思われたその回転も、やがて収まり、示されたその目は――
「「おおおおおおおぉおおぉぉおおおおぉぉぉーーっっ!!」」
天を衝く、八つの黒点。
それすなわち、二つの四。四と四!
これを奇跡と言わずしてなんと言おうか!
まさかのゾロ目、三! 連! 発!
「きたぁああああぁっ! 見事に地雷原を突破! そして!」
「まだまだ私たちのバトルフェイズは終わらないっス!」
「ずっと私のターン! ふははははっ、神だ! 神が降りてきた!」
「最高に“ハイ”ってヤツっスぅーっ!!」
盛り上がりまくる私たち。
と、そこに、
それすなわち、二つの四。四と四!
これを奇跡と言わずしてなんと言おうか!
まさかのゾロ目、三! 連! 発!
「きたぁああああぁっ! 見事に地雷原を突破! そして!」
「まだまだ私たちのバトルフェイズは終わらないっス!」
「ずっと私のターン! ふははははっ、神だ! 神が降りてきた!」
「最高に“ハイ”ってヤツっスぅーっ!!」
盛り上がりまくる私たち。
と、そこに、
「……あのさぁ」
何やら投げかけられる低い声。かがみだ。
「ん?」
「知らないみたいだから教えてあげるけど、三回連続のゾロ目は、刑務所行きよ」
「「へ?」」
なんですって?
思わず視線を転じる。
みゆきさんは、申し訳なさそうに頷いた。
「ええ……残念ながら、そういうルールになっています」
「あ、ホントだ。書いてある」
ルールブックを眺めながら、つかさ。
「……」
「……」
「そんな馬鹿なああああああああああああああああああああああああ!!」
「何やってんスかあああああああああああああああああああああああ!!」
「ん?」
「知らないみたいだから教えてあげるけど、三回連続のゾロ目は、刑務所行きよ」
「「へ?」」
なんですって?
思わず視線を転じる。
みゆきさんは、申し訳なさそうに頷いた。
「ええ……残念ながら、そういうルールになっています」
「あ、ホントだ。書いてある」
ルールブックを眺めながら、つかさ。
「……」
「……」
「そんな馬鹿なああああああああああああああああああああああああ!!」
「何やってんスかあああああああああああああああああああああああ!!」
……で。
地雷原のスタート地点に再び戻された私たちは、今度は突破することなく破産して、
見事にイチ抜けを果たしましたとさ。ああ、こめかみが痛い。
ホント、何やってんだよ私。
地雷原のスタート地点に再び戻された私たちは、今度は突破することなく破産して、
見事にイチ抜けを果たしましたとさ。ああ、こめかみが痛い。
ホント、何やってんだよ私。
……何やってんだ、か。
昨日だってそうだよ。
なんで私は、かがみからの着信を無視しちゃったんだろう。忘れちゃってたんだろう。
いや、違うか。
昨日の時点ではもう手遅れだったんだ。
むしろヘンな疑いを吹っかけられて下手したらケンカになってたんだし、問題は三日前だね。
ちょうど、あの学食遭遇戦があった日になるのか。
その放課後って言ったら、私は……そっか。ゆーちゃんのところに行っちゃってたんだ。
みさきち関係のことを聞くために。
今にしてみれば、ソレってそんなに大事なことだったのかなぁって思うよね。
いや、まあ、ソレ関係のアレコレで結果的にみさきちたちと仲良くなれたわけで。
そのこと自体は純粋に嬉しいけど、ソレとコレとは別のハナシで。
そうすれば、かがみともまた前みたいに毎日一緒にいられるって思ったのに。それなのに……
なにラブレターって?
なんでそんなことになってるの?
彼氏なんかできちゃったら意味ないじゃん! かがみ今度はそっち行っちゃうじゃん!
……いや、まぁ。
まだできるって決まったわけじゃわけじゃないけど。
それにかがみの性格なら、いきなりその相手とベッタリになって私たちのことを見向きもしなくなる、
なんてことはないと思うけど。
……思うけど、でも。
実際はどうなんだろう。
みさきちの件では私たちのこともキッチリと均等に扱ってくれたけど、友達と恋人とじゃ違うだろうし。
真面目系のツンデレは尽くすタイプに化けやすいしねぇ。
実際、ラブレターなくしたってだけで泣いちゃったらしいし、素質は十分か。
……むぅ。
なんか、ヤだな。ヤな気分だ。
かがみが自分じゃない誰かに尽くすなんて。
……って。
何ソレ。別にイーじゃん。かがみが誰とどうしようと。
からかいのネタも増えるってモンだよ。
そりゃ、かがみは私のヨメで、私もかがみのヨメだけど、ソレとコレとは別だよ。
別にそんな真剣な意味で言ってるわけじゃないよ。だって私、リアルで同性趣味はない……ってゆーか、
ナニコレ?
何この思考? これじゃまるで私の方がツンデレみたいじゃん。
あぁもう。
なんだかなぁ。
本当に、何をやっているんだろう。
なんで私は、かがみからの着信を無視しちゃったんだろう。忘れちゃってたんだろう。
いや、違うか。
昨日の時点ではもう手遅れだったんだ。
むしろヘンな疑いを吹っかけられて下手したらケンカになってたんだし、問題は三日前だね。
ちょうど、あの学食遭遇戦があった日になるのか。
その放課後って言ったら、私は……そっか。ゆーちゃんのところに行っちゃってたんだ。
みさきち関係のことを聞くために。
今にしてみれば、ソレってそんなに大事なことだったのかなぁって思うよね。
いや、まあ、ソレ関係のアレコレで結果的にみさきちたちと仲良くなれたわけで。
そのこと自体は純粋に嬉しいけど、ソレとコレとは別のハナシで。
そうすれば、かがみともまた前みたいに毎日一緒にいられるって思ったのに。それなのに……
なにラブレターって?
なんでそんなことになってるの?
彼氏なんかできちゃったら意味ないじゃん! かがみ今度はそっち行っちゃうじゃん!
……いや、まぁ。
まだできるって決まったわけじゃわけじゃないけど。
それにかがみの性格なら、いきなりその相手とベッタリになって私たちのことを見向きもしなくなる、
なんてことはないと思うけど。
……思うけど、でも。
実際はどうなんだろう。
みさきちの件では私たちのこともキッチリと均等に扱ってくれたけど、友達と恋人とじゃ違うだろうし。
真面目系のツンデレは尽くすタイプに化けやすいしねぇ。
実際、ラブレターなくしたってだけで泣いちゃったらしいし、素質は十分か。
……むぅ。
なんか、ヤだな。ヤな気分だ。
かがみが自分じゃない誰かに尽くすなんて。
……って。
何ソレ。別にイーじゃん。かがみが誰とどうしようと。
からかいのネタも増えるってモンだよ。
そりゃ、かがみは私のヨメで、私もかがみのヨメだけど、ソレとコレとは別だよ。
別にそんな真剣な意味で言ってるわけじゃないよ。だって私、リアルで同性趣味はない……ってゆーか、
ナニコレ?
何この思考? これじゃまるで私の方がツンデレみたいじゃん。
あぁもう。
なんだかなぁ。
本当に、何をやっているんだろう。
「……あの、センパイ」
「うん?」
物思いに沈み込んでいた意識が、不意の呼びかけに引き上げられる。
目を向けると、私と並んでソファに腰掛けているひよりんが、再び私の顔を覗き込んできていた。
「どうかしたんスか?」
「ん、ちょっとね。理不尽な運命を嘆いてたトコ」
「あー……」
テキトーにはぐらかしたつもりだったのに、ひよりんは妙に納得したようにうなずいた。
「アレは酷いっスよねぇ」
「……。だねぇ」
違和感を覚えながらも相槌を打つ。
「どうせ五回も六回も続くわけじゃなし、双六じゃないんスからどんだけ進もうが有利になるわけでもなし。
わけわかんないルールっスよ」
「うん……うん?」
「まぁソレがなかったところで――なんスか?」
そか、さっきのモノポリーの話か。
ちょーどいーや。
訂正も説明もなんだか面倒だし、ってゆーか自分でもよくわかんないし。ハナシを合わせとこう。
「なんでもないよ。ってゆーか、ネタにはなったんじゃない?」
「いやぁ、極端すぎる確率ネタは使いどころが難しいんスよ」
「ふぅん」
そんなもんか。やっぱり大変なんだねぇ創作活動って。
「そーいや、みゆきさんのマンガ描いてんだよね? そっちはどんな感じ?」
「ん、高良センパイってゆーか生徒会長モノですけどね。まだ構想段階の序盤も序盤で、どんなとか
言えるコトは何もないっス」
「まぁ、そうなんですか?」
お?
「あまり無理はなさらないでくださいね?」
「ありがとうございますっス」
「あれ? みゆきさん?」
と、ゆーちゃん。それにつかさとみなみちゃん。
その四人がいつの間にかこっちに来ていた。思わず部屋の真ん中に視線を飛ばす。
「しぶといわね、日下部……」
「こっちのセリフだぜ、ひーらぎぃ」
「うふふ」
まだゲームは続いている。ということは……
「え? みゆきさんとゆーちゃん、負けたの?」
「ええ。精一杯がんばってみたのですけど、やっぱりダメでした」
さして悔しがる素振りも見せず、みゆきさんは小首をかしげて微笑んだ。
やっぱりってなにさやっぱりって。めちゃくちゃ番狂わせですよ。いったい何が。
「えっと……なんだかいきなりパティちゃんとかがみさんが協力し始めて、一気に攻められちゃったの」
「私たちも……その煽りを……」
ゆーちゃんとみなみちゃんが、凹んでるというより呆れてる感じで解説してくれる。
ふぅむ、かがみとってゆーか、峰岸さんとだろうね実際は。
パティもなんだかんだで器用な子だし、峰岸さんと二人でならみゆきさんをも上回れるわけか。
いや、ってゆーかむしろ考えてみれば、これはこれで順当な結果なのかも知れない。
もともとモノポリーってのは他者を蹴落としてナンボなゲームだから、
みゆきさんたちはちょっと優しすぎて向いてないんだ。
逆に、
「お姉ちゃん容赦ないよ~」
つかさの言うとおり、ゲームにおいては容赦のないかがみこそが勝者の条件を備えていると言える。
ま、あくまで対等な条件なら、だけど。
「しっかしこれ……わかんなくなってきたっスねぇ。どうなると思うっスか?」
「え? そんなの――」
ひよりんの言葉に、答えかけて、止める。
そっか。峰岸さんの狙いには気付いてないんだ。たぶん、他のみんなも。
ニヤリ。
「――……そだねぇ。普通に考えたらかがみたちだろうけど、みさきちたちも勢いに乗ってるし」
「そうですね。これは少々、予想がつきませんね」
みゆきさん、そしてゆーちゃんやつかさもうなずく。よし。
「じゃあ――賭けてみる?」
「賭け? ……ですか?」
みゆきさんが驚いたように振り返った。
「別にお金とかモノとかじゃなくって……そだね。勝った人は後片付け免除、とかどうかな?」
軽い調子で人差し指を振ってみる。
「はぁ……」
「いいっスね。じゃぁ、私はかがみセンパイと峰岸センパイの方で」
予想通り、まずひよりんが食いついた。
予想通り、かつ計画通りだ。
「よし、それじゃ私はパティとみさきちだ」
「――ちょっと。何言い出してんのよアンタたち」
っと、かがみが半眼で睨んできた。さすがに声が届いちゃったか。
「だって退屈なんだもん。負け組には負け組の楽しみがあってもいーでしょ?」
「……勝手にしろ」
む……やっぱ、なんか冷たいね。
ま、いーや。今は。
「よぉっし、お許しが出たよ。ゆーちゃんはどうする?」
振り返って尋ねると、ゆーちゃんはかなり迷った末、かがみたちを選んだ。
つかさとみなみちゃんも(それぞれ別の意味で)当然、同じ選択。
「みゆきさんは?」
「う、うぅ~ん……」
賭けという行為そのものに抵抗を感じていたらしいみゆきさんも場の空気には逆らえず、
最終的に参加してくれた。
「ぶぅ~、ちびっ子だけかよぉ~」
「ヒヨリも冷たいデス……」
「あらあら」
「ふん、こりゃますます負けられないわね」
得意げだね、かがみ。
でも無理だよ。
普通なら、公平で対等な勝負ならともかく、裏で峰岸さんがみさきちに味方してる以上はね。
実質的に三対一のこの状況。かがみが勝てるわけがないのだよ。ふふふ、一人勝ちはもらったZE。
や、別にサボりたいわけじゃないんだけどね。
今日はなんかいいトコなしだからさ、ちょっとばかり楽させてもらってもいーじゃん?
「むぅ~……よし、じゃーひーらぎ」
「何よ」
「こっちも賭けよーぜ。あたしが勝ったら、ラブレターの相手、教えてもらうっ」
「なっ!?」
おお?
「みさちゃん、まだそんなこと……」
「だって気になるじゃん」
「……知ってどうするってのよ」
「どーもしねーよ。ただ知りたいの。ひーらぎのことだから」
ま、まっすぐだね、みさきち。
でも、いい。ますますいいよコレは。
「また恥ずかしいことを……」
「みさきち~、ダメだよ? かがみが可哀そうじゃん」
「んなっ!?」
大安売りもいいところの挑発に、かがみはわかりやすく顔を紅潮させる。
「……外野は黙ってろ! ――いいわよ、日下部。それで? 私が勝ったら何をしてくれるわけ?」
「柊ちゃんっ?」
「んじゃ、もー二度とこのハナシはしねーよ。それで足りなきゃ土下座でもなんでしてやるっ」
「……オーケー。その言葉、忘れんじゃないわよ」
「い、いいの柊ちゃん?」
「負けなきゃいいんでしょ」
「ワタシに merit がナイのデスが……」
よっしゃ! パティと、あと峰岸さんには悪いけど、よっしゃ!
思わぬ収穫だよ。ナイスみさきちっ。
いや、まぁ、確かに知ってどうするって話なんだけど、そんなことは知ってから考えればいいのサ。
「よぉし、そんじゃがんばれみさきちー。かがみの秘密を暴くんだー」
「おうっ、任せとけ!」
うお。
絶対「うるせー」とか言われると思ったのに、めちゃくちゃ真正面から打ち返されたよ。
……ホントにまっすぐなんだね。
なんか……なんだろう。
なんかヘコむよ。
思えば、みさきちのこのまっすぐさに私は負けたんだよね。
いや、負けることすらできなかったのか。それ以前の問題で、最初から勝負になってなかったんだ。
私のことなんかまるで無視してまっすぐにかがみへと向かったみさきち。
嫌いなはずの勉強まで頑張って。
それに比べて私はどうだろう。
なんて言うか、小ざかしいよね。
峰岸さんを懐柔しようとしたり、イカサマで楽しようとしたり、みさきちの尻馬に乗っかったり。
そんなふうに小ざかしく立ち回って、私は何がしたいんだろう。
……うん。
そりゃもちろん目的はかがみだけどさ。かがみを、私は、どうしたいんだろう。
かがみと、どうなりたいんだろう、私は。
私は、かがみに何を望んでいるんだろう。
ってゆーか。
私にとって、かがみって、何?
物思いに沈み込んでいた意識が、不意の呼びかけに引き上げられる。
目を向けると、私と並んでソファに腰掛けているひよりんが、再び私の顔を覗き込んできていた。
「どうかしたんスか?」
「ん、ちょっとね。理不尽な運命を嘆いてたトコ」
「あー……」
テキトーにはぐらかしたつもりだったのに、ひよりんは妙に納得したようにうなずいた。
「アレは酷いっスよねぇ」
「……。だねぇ」
違和感を覚えながらも相槌を打つ。
「どうせ五回も六回も続くわけじゃなし、双六じゃないんスからどんだけ進もうが有利になるわけでもなし。
わけわかんないルールっスよ」
「うん……うん?」
「まぁソレがなかったところで――なんスか?」
そか、さっきのモノポリーの話か。
ちょーどいーや。
訂正も説明もなんだか面倒だし、ってゆーか自分でもよくわかんないし。ハナシを合わせとこう。
「なんでもないよ。ってゆーか、ネタにはなったんじゃない?」
「いやぁ、極端すぎる確率ネタは使いどころが難しいんスよ」
「ふぅん」
そんなもんか。やっぱり大変なんだねぇ創作活動って。
「そーいや、みゆきさんのマンガ描いてんだよね? そっちはどんな感じ?」
「ん、高良センパイってゆーか生徒会長モノですけどね。まだ構想段階の序盤も序盤で、どんなとか
言えるコトは何もないっス」
「まぁ、そうなんですか?」
お?
「あまり無理はなさらないでくださいね?」
「ありがとうございますっス」
「あれ? みゆきさん?」
と、ゆーちゃん。それにつかさとみなみちゃん。
その四人がいつの間にかこっちに来ていた。思わず部屋の真ん中に視線を飛ばす。
「しぶといわね、日下部……」
「こっちのセリフだぜ、ひーらぎぃ」
「うふふ」
まだゲームは続いている。ということは……
「え? みゆきさんとゆーちゃん、負けたの?」
「ええ。精一杯がんばってみたのですけど、やっぱりダメでした」
さして悔しがる素振りも見せず、みゆきさんは小首をかしげて微笑んだ。
やっぱりってなにさやっぱりって。めちゃくちゃ番狂わせですよ。いったい何が。
「えっと……なんだかいきなりパティちゃんとかがみさんが協力し始めて、一気に攻められちゃったの」
「私たちも……その煽りを……」
ゆーちゃんとみなみちゃんが、凹んでるというより呆れてる感じで解説してくれる。
ふぅむ、かがみとってゆーか、峰岸さんとだろうね実際は。
パティもなんだかんだで器用な子だし、峰岸さんと二人でならみゆきさんをも上回れるわけか。
いや、ってゆーかむしろ考えてみれば、これはこれで順当な結果なのかも知れない。
もともとモノポリーってのは他者を蹴落としてナンボなゲームだから、
みゆきさんたちはちょっと優しすぎて向いてないんだ。
逆に、
「お姉ちゃん容赦ないよ~」
つかさの言うとおり、ゲームにおいては容赦のないかがみこそが勝者の条件を備えていると言える。
ま、あくまで対等な条件なら、だけど。
「しっかしこれ……わかんなくなってきたっスねぇ。どうなると思うっスか?」
「え? そんなの――」
ひよりんの言葉に、答えかけて、止める。
そっか。峰岸さんの狙いには気付いてないんだ。たぶん、他のみんなも。
ニヤリ。
「――……そだねぇ。普通に考えたらかがみたちだろうけど、みさきちたちも勢いに乗ってるし」
「そうですね。これは少々、予想がつきませんね」
みゆきさん、そしてゆーちゃんやつかさもうなずく。よし。
「じゃあ――賭けてみる?」
「賭け? ……ですか?」
みゆきさんが驚いたように振り返った。
「別にお金とかモノとかじゃなくって……そだね。勝った人は後片付け免除、とかどうかな?」
軽い調子で人差し指を振ってみる。
「はぁ……」
「いいっスね。じゃぁ、私はかがみセンパイと峰岸センパイの方で」
予想通り、まずひよりんが食いついた。
予想通り、かつ計画通りだ。
「よし、それじゃ私はパティとみさきちだ」
「――ちょっと。何言い出してんのよアンタたち」
っと、かがみが半眼で睨んできた。さすがに声が届いちゃったか。
「だって退屈なんだもん。負け組には負け組の楽しみがあってもいーでしょ?」
「……勝手にしろ」
む……やっぱ、なんか冷たいね。
ま、いーや。今は。
「よぉっし、お許しが出たよ。ゆーちゃんはどうする?」
振り返って尋ねると、ゆーちゃんはかなり迷った末、かがみたちを選んだ。
つかさとみなみちゃんも(それぞれ別の意味で)当然、同じ選択。
「みゆきさんは?」
「う、うぅ~ん……」
賭けという行為そのものに抵抗を感じていたらしいみゆきさんも場の空気には逆らえず、
最終的に参加してくれた。
「ぶぅ~、ちびっ子だけかよぉ~」
「ヒヨリも冷たいデス……」
「あらあら」
「ふん、こりゃますます負けられないわね」
得意げだね、かがみ。
でも無理だよ。
普通なら、公平で対等な勝負ならともかく、裏で峰岸さんがみさきちに味方してる以上はね。
実質的に三対一のこの状況。かがみが勝てるわけがないのだよ。ふふふ、一人勝ちはもらったZE。
や、別にサボりたいわけじゃないんだけどね。
今日はなんかいいトコなしだからさ、ちょっとばかり楽させてもらってもいーじゃん?
「むぅ~……よし、じゃーひーらぎ」
「何よ」
「こっちも賭けよーぜ。あたしが勝ったら、ラブレターの相手、教えてもらうっ」
「なっ!?」
おお?
「みさちゃん、まだそんなこと……」
「だって気になるじゃん」
「……知ってどうするってのよ」
「どーもしねーよ。ただ知りたいの。ひーらぎのことだから」
ま、まっすぐだね、みさきち。
でも、いい。ますますいいよコレは。
「また恥ずかしいことを……」
「みさきち~、ダメだよ? かがみが可哀そうじゃん」
「んなっ!?」
大安売りもいいところの挑発に、かがみはわかりやすく顔を紅潮させる。
「……外野は黙ってろ! ――いいわよ、日下部。それで? 私が勝ったら何をしてくれるわけ?」
「柊ちゃんっ?」
「んじゃ、もー二度とこのハナシはしねーよ。それで足りなきゃ土下座でもなんでしてやるっ」
「……オーケー。その言葉、忘れんじゃないわよ」
「い、いいの柊ちゃん?」
「負けなきゃいいんでしょ」
「ワタシに merit がナイのデスが……」
よっしゃ! パティと、あと峰岸さんには悪いけど、よっしゃ!
思わぬ収穫だよ。ナイスみさきちっ。
いや、まぁ、確かに知ってどうするって話なんだけど、そんなことは知ってから考えればいいのサ。
「よぉし、そんじゃがんばれみさきちー。かがみの秘密を暴くんだー」
「おうっ、任せとけ!」
うお。
絶対「うるせー」とか言われると思ったのに、めちゃくちゃ真正面から打ち返されたよ。
……ホントにまっすぐなんだね。
なんか……なんだろう。
なんかヘコむよ。
思えば、みさきちのこのまっすぐさに私は負けたんだよね。
いや、負けることすらできなかったのか。それ以前の問題で、最初から勝負になってなかったんだ。
私のことなんかまるで無視してまっすぐにかがみへと向かったみさきち。
嫌いなはずの勉強まで頑張って。
それに比べて私はどうだろう。
なんて言うか、小ざかしいよね。
峰岸さんを懐柔しようとしたり、イカサマで楽しようとしたり、みさきちの尻馬に乗っかったり。
そんなふうに小ざかしく立ち回って、私は何がしたいんだろう。
……うん。
そりゃもちろん目的はかがみだけどさ。かがみを、私は、どうしたいんだろう。
かがみと、どうなりたいんだろう、私は。
私は、かがみに何を望んでいるんだろう。
ってゆーか。
私にとって、かがみって、何?
……いや、いやいや。
ちょっと、待って。なにそれ。おかしいって。
なんで私がこんな乙女な思考してんのさ。そんな回路なんか組み込まれてないはずだよ。
ああもう、かがみがラブレターなんて乙女なアイテム持ち出すからだ。
ってか、そう。かがみってゆーか、相手が悪い。かがみに渡した、その相手の男子が。
ひとこと文句言ってやんなくちゃ。
キミのおかがで私の乙女回路がきゅいんきゅいんになっちゃったよ……って!
なんか違うし!
告白イベントみたいになってるし! しかも電波系入ってるし!
で、でも僕はかがみさんが――ってなんか主人公がリアクション取り始めた! ってか主人公!?
ちょっと何やってんのよアンタたち! うわぁ、かがみ登場!? お約束すぎる! ちょっと待って!
そうだよ待ってよ誤解だよ。何が誤解なのよ、アンタ私だけじゃなくこなたにまで! 修羅場!?
ちょっと待って落ち着いて、かがみ。私は落ち着いてるわよ! おかしいのはアンタの方でしょ!
うん、まあ。確かに。――違うよ、悪いのは僕なんだ。いたのか主人公。でも二人とも好きなんだ。
なんか凄いこと言い出したし。――二人ともって、そんなの二又じゃない! ちゃんと選んでよ!
いや、かがみも落ち着こう。……選べないよ。うわ、こいつ最低。なんでこんなのが私の脳内に。
もういいよ。こんなの放っとこ。そうね、私にはこなたがいれば十分だわ。かがみ……。こなた……
……って。
なんで私がこんな乙女な思考してんのさ。そんな回路なんか組み込まれてないはずだよ。
ああもう、かがみがラブレターなんて乙女なアイテム持ち出すからだ。
ってか、そう。かがみってゆーか、相手が悪い。かがみに渡した、その相手の男子が。
ひとこと文句言ってやんなくちゃ。
キミのおかがで私の乙女回路がきゅいんきゅいんになっちゃったよ……って!
なんか違うし!
告白イベントみたいになってるし! しかも電波系入ってるし!
で、でも僕はかがみさんが――ってなんか主人公がリアクション取り始めた! ってか主人公!?
ちょっと何やってんのよアンタたち! うわぁ、かがみ登場!? お約束すぎる! ちょっと待って!
そうだよ待ってよ誤解だよ。何が誤解なのよ、アンタ私だけじゃなくこなたにまで! 修羅場!?
ちょっと待って落ち着いて、かがみ。私は落ち着いてるわよ! おかしいのはアンタの方でしょ!
うん、まあ。確かに。――違うよ、悪いのは僕なんだ。いたのか主人公。でも二人とも好きなんだ。
なんか凄いこと言い出したし。――二人ともって、そんなの二又じゃない! ちゃんと選んでよ!
いや、かがみも落ち着こう。……選べないよ。うわ、こいつ最低。なんでこんなのが私の脳内に。
もういいよ。こんなの放っとこ。そうね、私にはこなたがいれば十分だわ。かがみ……。こなた……
……って。
ちっがあああああああああああああああああああああああああああああああああああああうっっ!
なにコレ? 今のなに? なんかすんごい超展開だったんだけど?
いつの間にこんな酷いことになってたの私の脳。エロゲのやりすぎとかそういうレベルじゃないよ。
あぁびっくりした。
ってゆーか、ええっと。
……なに考えてたんだっけ。
思考を遡ろうとした、そのとき。
いつの間にこんな酷いことになってたの私の脳。エロゲのやりすぎとかそういうレベルじゃないよ。
あぁびっくりした。
ってゆーか、ええっと。
……なに考えてたんだっけ。
思考を遡ろうとした、そのとき。
「「「――おぉっ!?」」」
空気がざわめいた。
意識が引き戻される。
「くっそおぉぉぉ……負けたぁぁぁ……!」
どうやら決着がついたらしい。かがみが頭を抱えて唸っていた。
ということは……
「みゅうぅぅぅ……も少しだったのにぃぃぃ……」
あれ?
みさきちの方も項垂れてる。ということは、ということは……
「あらあら~、勝っちゃったわねぇ~」
「ごめんなさいね?」
ゆかりおばさんと、……えっと? そーいや名前知らないけど、とにかくみなみちゃんのおばさん。
その二人が――さっきから「あらあら」とか「うふふ」とかしか喋ってなくているんだかいないんだかすら
曖昧だった二人が、穏やかな、しかし紛れもない勝者の笑みを浮かべていた。
「見事な漁夫の利っスね……」
「ゆきちゃんの一人勝ちだね……」
「まさか本当に勝つとは思いませんでした……」
「お母さん……」
「そんな……」
そんな、馬鹿なァ……!
意識が引き戻される。
「くっそおぉぉぉ……負けたぁぁぁ……!」
どうやら決着がついたらしい。かがみが頭を抱えて唸っていた。
ということは……
「みゅうぅぅぅ……も少しだったのにぃぃぃ……」
あれ?
みさきちの方も項垂れてる。ということは、ということは……
「あらあら~、勝っちゃったわねぇ~」
「ごめんなさいね?」
ゆかりおばさんと、……えっと? そーいや名前知らないけど、とにかくみなみちゃんのおばさん。
その二人が――さっきから「あらあら」とか「うふふ」とかしか喋ってなくているんだかいないんだかすら
曖昧だった二人が、穏やかな、しかし紛れもない勝者の笑みを浮かべていた。
「見事な漁夫の利っスね……」
「ゆきちゃんの一人勝ちだね……」
「まさか本当に勝つとは思いませんでした……」
「お母さん……」
「そんな……」
そんな、馬鹿なァ……!
「――みなさん、今日は本当にありがとうございました」
結局、後片付けは全員でやることになった。
まぁ勝ったのみゆきさんだけだし、そりゃそうだよねって感じ。
で、ソレも無事終わって、名残惜しいけどそろそろ解散しましょうかねといった空気になったところで、
みゆきさんがおもむろに頭を下げた。
「いやいや、礼を言われるほどのコトは何も。ってか私たちも楽しかったしね。――ね?」
なんとなく。
かがみではなく、つかさに同意を求める。
「え? ……あ、う、うん。そうだね」
微妙に反応が鈍かった。
「? どしたの?」
「な、なんでもないよ。ちょっと……眠い、のかな? 疲れちゃったのかも」
「お料理、頑張ってたもんね、妹ちゃん」
峰岸さんが柔らかく割って入った。
「う、うん……」
「そーいやなんだかんだで半分近く作ってたよねぇ。うん、がんばったがんばった」
あと、かがみのこともずっと心配してたみたいだし。そりゃ疲れもするか。
ぺちぺちと肩を叩いてあげると、つかさは照れ笑いを浮かべる。
「ええ、どれもとっても美味しかったです」
「ありがと、ゆきちゃん。私も、ふだん作らないようなのいっぱい作れて楽しかったよ」
「そうよね。改めてお礼なんて言わなくていいわよ、みゆき」
かがみも頷いて、それから自嘲気味に笑った。
「それに私は、どっちかって言ったら迷惑かけちゃったし……」
「い、いえ。そんなことは……私の方こそ、問い詰めるような真似をしてしまって……」
あ……
話が、ソッチの方に流れてしまった。
なんとなく、加わりづらい。目を逸らした。ゆーちゃんたちの方を見ているフリをする。
「――デス――」
「――あははっ――」
「――うん。来年も――」
「――そう――」
「――いーな――」
ゆーちゃんたち一年生、プラスみさきち。
微妙に距離があるから会話の内容は切れ切れにしか聞こえないけど、楽しそうな様子は伝わってくる。
みさきちは、もう気にしてないのかな。かがみのこと。
そんなはずはないとは思うけど、でも、だったらどうしてあんなに普通に楽しそうなんだろう。
割り切ってる、のかな。とりあえず今はって感じで。
それとも、モノポリーで負けちゃったから本当に諦めたのか。
みなみちゃんの陸上部入りを諦めたみたいに。
……ああ、そういえば、ということは、昨日の契約はどうなるんだろう。
果たせなくなっちゃったけど、何もなしってわけにはいかないよね。適当に何かおごればいいかな。
ってゆーか、それよりも。
さっきのモノポリーは、アレはなんだったんだろう。
パティと峰岸さん――最強萌え要素コンビすら押しのけた二人の補助との後押しを受けてなお、
ずっと三位と四位の間をフラフラしてただけのママさんコンビに、なんでみさきちは負けたんだろう。
おかげでかがみのお相手を知る機会も失われてしまった。
思い当たるのは、峰岸さんのこと。
みさきちがかがみから封筒を奪い取ったときに見せた、必死の形相。
あの人があんな顔をするなんて、昨日のアレを見た私ですら、未だに信じられない。
そんなにも、悪いことなのかな、人の色恋沙汰に首を突っ込むのって。
かがみが言ったみたいに、恋人がいるとそんなふうに考えてしまうものなのかな。
ということは、かがみもそうなっちゃうってこと?
私には理解できないことを考えて、私には理解できない行動をとるような人間に。
……やだな。
そんなの、やだよ……
結局、後片付けは全員でやることになった。
まぁ勝ったのみゆきさんだけだし、そりゃそうだよねって感じ。
で、ソレも無事終わって、名残惜しいけどそろそろ解散しましょうかねといった空気になったところで、
みゆきさんがおもむろに頭を下げた。
「いやいや、礼を言われるほどのコトは何も。ってか私たちも楽しかったしね。――ね?」
なんとなく。
かがみではなく、つかさに同意を求める。
「え? ……あ、う、うん。そうだね」
微妙に反応が鈍かった。
「? どしたの?」
「な、なんでもないよ。ちょっと……眠い、のかな? 疲れちゃったのかも」
「お料理、頑張ってたもんね、妹ちゃん」
峰岸さんが柔らかく割って入った。
「う、うん……」
「そーいやなんだかんだで半分近く作ってたよねぇ。うん、がんばったがんばった」
あと、かがみのこともずっと心配してたみたいだし。そりゃ疲れもするか。
ぺちぺちと肩を叩いてあげると、つかさは照れ笑いを浮かべる。
「ええ、どれもとっても美味しかったです」
「ありがと、ゆきちゃん。私も、ふだん作らないようなのいっぱい作れて楽しかったよ」
「そうよね。改めてお礼なんて言わなくていいわよ、みゆき」
かがみも頷いて、それから自嘲気味に笑った。
「それに私は、どっちかって言ったら迷惑かけちゃったし……」
「い、いえ。そんなことは……私の方こそ、問い詰めるような真似をしてしまって……」
あ……
話が、ソッチの方に流れてしまった。
なんとなく、加わりづらい。目を逸らした。ゆーちゃんたちの方を見ているフリをする。
「――デス――」
「――あははっ――」
「――うん。来年も――」
「――そう――」
「――いーな――」
ゆーちゃんたち一年生、プラスみさきち。
微妙に距離があるから会話の内容は切れ切れにしか聞こえないけど、楽しそうな様子は伝わってくる。
みさきちは、もう気にしてないのかな。かがみのこと。
そんなはずはないとは思うけど、でも、だったらどうしてあんなに普通に楽しそうなんだろう。
割り切ってる、のかな。とりあえず今はって感じで。
それとも、モノポリーで負けちゃったから本当に諦めたのか。
みなみちゃんの陸上部入りを諦めたみたいに。
……ああ、そういえば、ということは、昨日の契約はどうなるんだろう。
果たせなくなっちゃったけど、何もなしってわけにはいかないよね。適当に何かおごればいいかな。
ってゆーか、それよりも。
さっきのモノポリーは、アレはなんだったんだろう。
パティと峰岸さん――最強萌え要素コンビすら押しのけた二人の補助との後押しを受けてなお、
ずっと三位と四位の間をフラフラしてただけのママさんコンビに、なんでみさきちは負けたんだろう。
おかげでかがみのお相手を知る機会も失われてしまった。
思い当たるのは、峰岸さんのこと。
みさきちがかがみから封筒を奪い取ったときに見せた、必死の形相。
あの人があんな顔をするなんて、昨日のアレを見た私ですら、未だに信じられない。
そんなにも、悪いことなのかな、人の色恋沙汰に首を突っ込むのって。
かがみが言ったみたいに、恋人がいるとそんなふうに考えてしまうものなのかな。
ということは、かがみもそうなっちゃうってこと?
私には理解できないことを考えて、私には理解できない行動をとるような人間に。
……やだな。
そんなの、やだよ……
「――えっ? そ、そうだったの……?」
と?
かがみが何か、上ずった声を挙げた。
「ああもう……ごめん、私てっきり……」
「い、いえ。最初にきちんと説明しなかった私も悪いんです」
「私も、お姉ちゃんには言うの忘れてたよ。ごめん」
目を向けると、なにやら頭を抱えて呻くかがみを、みゆきさんとつかさがなだめていた。
なんぞ?
「……かがみ?」
「! ――な、なによっ!」
うお?
なんか睨まれた。
「何か文句あるのっ? 悪かったわねっ。ちょっと勘違いしただけじゃないっ」
そして怒鳴られた。声かけただけなのに。
「えーっとぉ……何が?」
「え?」
お?
止まった?
「……聞いてなかったの?」
「うん。……ってゆーか、何が?」
「な、なんでもないわよ!」
赤くなってそっぽを向くかがみ。
いや、あの、前後の文脈抜きでツンデられても困るんですけど。聞いてなかった私もアレだけど。
「……なんなの?」
「ええと、ですね……」
仕方なくみゆきさんに尋ねると、苦笑いを返された。
「みゆきっ! 言うんじゃないわよっ!」
「は、はい。それは言いません。ですが……」
噛み付いてきていたかがみを振り切って、みゆきさんがこちらに向き直る。
かがみのことは、つかさと峰岸さんが抑えてくれた。
「この間の……木曜日のお昼休みに、わがままを言って抜けさせていただいた件で……」
うん? と一瞬頭を捻って、すぐに思い当たる。
「ああ、ひよりんの」
「ええ。そちらのお詫びとお礼もまだですのに、今日も協力していただいて……といった話です」
お詫びとお礼、か。
みゆきさんらしいね。そんなの必要ないと思うけど。
「そーなんだ。でも、だったら私は関係ないかな。木曜だったら私もいなかったから」
「そうなんですか?」
「うん。学食で峰岸さんと一緒だったんだ」
「……え?」
うん?
かがみの顔が訝しげに固まった。
「……そうなの?」
そして私ではなく峰岸さんに疑問を向ける。
「……、うん。偶然、ばったり合っちゃって。せっかくだから一緒に、って。ごめんね?」
「誘ったのは私の方だけどね」
少し気になったけど、とりあえず話を続ける。
今の言い方だと峰岸さんの方から誘ったみたいじゃん。どっちでもいーっちゃいーんだけど。
「そうだったかしら? 声をかけたのは私の方からだったと思うけど……」
「ん? それは、挨拶だけじゃなかった?」
……と、
ふと視線を感じて振り返ってみると、かがみが変な顔をしていた。
悔しそうな、悲しそうな。
でもそれも、目が合った瞬間に掻き消える。
「……なんで黙ってたのよ」
そして冷たい、とげとげしい視線と声が向けられる。
「そうならそうとちゃんと言いなさいよ。何がおなかが空いて動けない、よ。つかさが心配してたんだからね」
「お、お姉ちゃん。私もう気にしてないから……」
そか、そんなふうに言ったんだった。
えっと……
かがみが何か、上ずった声を挙げた。
「ああもう……ごめん、私てっきり……」
「い、いえ。最初にきちんと説明しなかった私も悪いんです」
「私も、お姉ちゃんには言うの忘れてたよ。ごめん」
目を向けると、なにやら頭を抱えて呻くかがみを、みゆきさんとつかさがなだめていた。
なんぞ?
「……かがみ?」
「! ――な、なによっ!」
うお?
なんか睨まれた。
「何か文句あるのっ? 悪かったわねっ。ちょっと勘違いしただけじゃないっ」
そして怒鳴られた。声かけただけなのに。
「えーっとぉ……何が?」
「え?」
お?
止まった?
「……聞いてなかったの?」
「うん。……ってゆーか、何が?」
「な、なんでもないわよ!」
赤くなってそっぽを向くかがみ。
いや、あの、前後の文脈抜きでツンデられても困るんですけど。聞いてなかった私もアレだけど。
「……なんなの?」
「ええと、ですね……」
仕方なくみゆきさんに尋ねると、苦笑いを返された。
「みゆきっ! 言うんじゃないわよっ!」
「は、はい。それは言いません。ですが……」
噛み付いてきていたかがみを振り切って、みゆきさんがこちらに向き直る。
かがみのことは、つかさと峰岸さんが抑えてくれた。
「この間の……木曜日のお昼休みに、わがままを言って抜けさせていただいた件で……」
うん? と一瞬頭を捻って、すぐに思い当たる。
「ああ、ひよりんの」
「ええ。そちらのお詫びとお礼もまだですのに、今日も協力していただいて……といった話です」
お詫びとお礼、か。
みゆきさんらしいね。そんなの必要ないと思うけど。
「そーなんだ。でも、だったら私は関係ないかな。木曜だったら私もいなかったから」
「そうなんですか?」
「うん。学食で峰岸さんと一緒だったんだ」
「……え?」
うん?
かがみの顔が訝しげに固まった。
「……そうなの?」
そして私ではなく峰岸さんに疑問を向ける。
「……、うん。偶然、ばったり合っちゃって。せっかくだから一緒に、って。ごめんね?」
「誘ったのは私の方だけどね」
少し気になったけど、とりあえず話を続ける。
今の言い方だと峰岸さんの方から誘ったみたいじゃん。どっちでもいーっちゃいーんだけど。
「そうだったかしら? 声をかけたのは私の方からだったと思うけど……」
「ん? それは、挨拶だけじゃなかった?」
……と、
ふと視線を感じて振り返ってみると、かがみが変な顔をしていた。
悔しそうな、悲しそうな。
でもそれも、目が合った瞬間に掻き消える。
「……なんで黙ってたのよ」
そして冷たい、とげとげしい視線と声が向けられる。
「そうならそうとちゃんと言いなさいよ。何がおなかが空いて動けない、よ。つかさが心配してたんだからね」
「お、お姉ちゃん。私もう気にしてないから……」
そか、そんなふうに言ったんだった。
えっと……
『――かがみ、もしかしてヤキモチ?』
『――かがみは心配してくれなかったの?』
『――かがみは心配してくれなかったの?』
ピロン、とSEを立てて選択肢が浮かび上がる。ご丁寧に半透明のウインドーと指差しマーク付きだ。
私は……
「……いやぁ、あとで教えておどかすつもりだったんだけど……ゴメン忘れてた♪」
しかし、どちらも選ばなかった。
選べなかった。
怖くて。
またかがみに冷たい反応をされてしまうのが、なぜだか酷く恐ろしくて。
「ごめんね、つかさ」
「う、ううん。いいの」
「みゆきさんも……そんなわけだし、気にすることないと思うよ。どっちかって言ったら私たちの方が
普段からよっぽどお世話になってるんだしさ」
「はぁ……」
私の言葉に、みゆきさんは困ったように頬に手を添える。説得に身が入ってなかったかな。
なら、悪いけど殺し文句を使わせてもらおう。
「もぉ、そんな堅苦しく考えなくていーじゃん。友だちでしょ? そんなんじゃみなみちゃんのこと言えないよ?」
「あ……」
「そうだよ、ゆきちゃん。こなちゃんの言うとおりだよ」
「……そう、ですね。分かりました。それでは、お言葉に甘えさせていただきます」
よし、効いた。
つかさと、三人で笑いあう。
かがみは、
「……」
しかし、何も言わなかった。
私は……
「……いやぁ、あとで教えておどかすつもりだったんだけど……ゴメン忘れてた♪」
しかし、どちらも選ばなかった。
選べなかった。
怖くて。
またかがみに冷たい反応をされてしまうのが、なぜだか酷く恐ろしくて。
「ごめんね、つかさ」
「う、ううん。いいの」
「みゆきさんも……そんなわけだし、気にすることないと思うよ。どっちかって言ったら私たちの方が
普段からよっぽどお世話になってるんだしさ」
「はぁ……」
私の言葉に、みゆきさんは困ったように頬に手を添える。説得に身が入ってなかったかな。
なら、悪いけど殺し文句を使わせてもらおう。
「もぉ、そんな堅苦しく考えなくていーじゃん。友だちでしょ? そんなんじゃみなみちゃんのこと言えないよ?」
「あ……」
「そうだよ、ゆきちゃん。こなちゃんの言うとおりだよ」
「……そう、ですね。分かりました。それでは、お言葉に甘えさせていただきます」
よし、効いた。
つかさと、三人で笑いあう。
かがみは、
「……」
しかし、何も言わなかった。
“――あんたが言うと胡散臭いけどね”
“――良いこと言うじゃない、たまには”
“――良いこと言うじゃない、たまには”
いつもなら、ちょっとだけ意地悪っぽく笑いながら、そんなふうに言ってくれるのに。
だけど今のかがみは何も言ってくれなかった。目も合わせてくれない。
既に変化は始まっているのだろうか。
だとしたら……
だけど今のかがみは何も言ってくれなかった。目も合わせてくれない。
既に変化は始まっているのだろうか。
だとしたら……
……どうしようもないよね。
もちろんイヤだけど、そんなの絶対イヤだけど、でも。
文句なんか言えない。
私にそんな権利なんてない。
考えてみれば、私はかがみにずっと甘えっぱなしだった。
宿題とか寄り道とかもそうだけど、それだけじゃなく、もっと日常的に、慢性的に。
例えば普段のちょっとした会話なんかでも、
かがみのツッコミが入ることを前提とした言動のなんと多いことかと思う。
今まで当然のようにそうしてきたけど、ダメだよね、それじゃ。
かがみがラブレターの相手と付き合うことになったら……ううん。仮にそうはならなかったとしても。
今のままじゃいけない。自重しないと。
だってかがみは、かがみなんだから。
「私のヨメ」なんていう都合のいい存在なんかじゃなく、一人の生きた人間なんだから。
って、今さらなに言ってんだか。そんなの当たり前じゃん。
とにかく、もっとちゃんと考えなきゃ。かがみだけでなく、つかさやみゆきさんのことも。
天然だとかメガネだとかじゃなく、ちゃんと人格を見て、付き合い方を考えなくちゃ。
……はぁ。
めんどくさいなぁー。
これだから三次元はイヤなんだ。
文句なんか言えない。
私にそんな権利なんてない。
考えてみれば、私はかがみにずっと甘えっぱなしだった。
宿題とか寄り道とかもそうだけど、それだけじゃなく、もっと日常的に、慢性的に。
例えば普段のちょっとした会話なんかでも、
かがみのツッコミが入ることを前提とした言動のなんと多いことかと思う。
今まで当然のようにそうしてきたけど、ダメだよね、それじゃ。
かがみがラブレターの相手と付き合うことになったら……ううん。仮にそうはならなかったとしても。
今のままじゃいけない。自重しないと。
だってかがみは、かがみなんだから。
「私のヨメ」なんていう都合のいい存在なんかじゃなく、一人の生きた人間なんだから。
って、今さらなに言ってんだか。そんなの当たり前じゃん。
とにかく、もっとちゃんと考えなきゃ。かがみだけでなく、つかさやみゆきさんのことも。
天然だとかメガネだとかじゃなく、ちゃんと人格を見て、付き合い方を考えなくちゃ。
……はぁ。
めんどくさいなぁー。
これだから三次元はイヤなんだ。
「おーい、なんのハナシしてんだー?」
みさきちが近寄ってきた。ゆーちゃんたちも後ろに続いている。
何かを感じ取ったのか。それとも単に、向こうで話題が尽きただけか。
「ん、ちょっとユージョーについてアレコレと」
「ふーん」
「……」
「……」
どっちにしても、特に助け舟になってくれるってわけじゃなさそうだ。
や、別に救援を求めるようなシーンじゃないけど。
「……それじゃ、そろそろ解散、かな?」
なんとなく空気が止まったところに、峰岸さんが控えめにつぶやく。
「そーだな。ちょっと名残惜しーけど」
みさきちを始め、みんなもうなずいた。私にも異議はない。みゆきさんがもう一度頭を下げた。
「それでは、みなさん。お疲れ様でした」
「「「お疲れ様でしたー」」」
そうして。
「みなみちゃんの誕生日を祝う会」は、終わった。
みさきちが近寄ってきた。ゆーちゃんたちも後ろに続いている。
何かを感じ取ったのか。それとも単に、向こうで話題が尽きただけか。
「ん、ちょっとユージョーについてアレコレと」
「ふーん」
「……」
「……」
どっちにしても、特に助け舟になってくれるってわけじゃなさそうだ。
や、別に救援を求めるようなシーンじゃないけど。
「……それじゃ、そろそろ解散、かな?」
なんとなく空気が止まったところに、峰岸さんが控えめにつぶやく。
「そーだな。ちょっと名残惜しーけど」
みさきちを始め、みんなもうなずいた。私にも異議はない。みゆきさんがもう一度頭を下げた。
「それでは、みなさん。お疲れ様でした」
「「「お疲れ様でしたー」」」
そうして。
「みなみちゃんの誕生日を祝う会」は、終わった。
――あ。
しまった、みなみちゃんに西校の制服着てもらうの、忘れてた……
しまった、みなみちゃんに西校の制服着てもらうの、忘れてた……