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薬局通

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【クラーク・ゲーブル】

あの男の中の男、レット・バトラーを演じたクラーク・ゲーブルも、
なにかの映画の撮影中に共演中の女優に口が臭いと言われてから、
一時間おきに歯をみがかなくてはいられない
病的強迫観念につきまとわれていたらしい。
『薬局通』P.79

ゲーブルの口が臭いと言ったのは、『風と共に去りぬ』で共演した
ヴィヴィアン・リー。
レット・バトラーの名前を出しておきながら詰めが甘い。
ゲーブルの口臭の原因は入れ歯をしていたためで、
ゲーブルに憧れていたグレース・ケリーが入れ歯のせいで幻滅したという話もあるらしい。


【ケロリン】

ところで、銭湯といえば思い出すのが、内外薬品の頭痛薬、
ケロリンの広告の入ったプラスチックの桶である。
不思議に他の薬でなく、ケロリンオンリーだった。
なぜだろうと思っていたら、あれは陸和商事という会社が、
PRのために、銭湯に安く桶を納入していたのだそうだ。
『薬局通』P.131

「陸和商事」ではなく「睦和商事」。
唐沢はこのことを町田忍『銭湯へ行こう』(TOTO出版)で知ったというから、
『銭湯へ行こう』でミスがあったのかも知れない。

ケロリンの桶にまつわる小ネタとして他には、
「桶の色は最初は白だったが汚れが目立つため黄色になった」
「ケロリンの桶は関東と関西では大きさが違う。関西の方がやや小さい」
というのがある。


【コウモリ】

なにしろ、哺乳類の総数の十分の六はコウモリなのだから。
『薬局通』P.137

哺乳類に含まれる動物についてのデータはいろいろあるが、
哺乳類の総数は4000〜5000種類とされている。
そのうち、コウモリ目に属する動物は1000種類前後。
つまり、正しくは「哺乳類の種数の四分の一はコウモリ」なのである。


【ミドリ十字】

それから、ミドリ十字という医療用薬品の大手のひとつが、
これもサンシーなる避妊錠を出していた。
「一姫二太郎三サンシー」
なるコマーシャルでだいぶ売りまくったと聞いている。
『薬局通』P.158

サンシーを発売していたのは、山之内製薬である。
現在は第一三共ヘルスケアから発売されている。

なお、この記述は薬害エイズ事件以前のものである。
あの事件を知っているとガセだと気づきやすいのだが、
唐沢も薬局に行ってサンシーを手に取って見れば
簡単にわかったはずなので、あまり同情できないミスである。


【マムシ】

しかし、なかにはこういうものはすべてウサン臭いと
思っている方もいらっしゃるだろうが、
たとえばマムシの皮は反鼻といって、
レッキとして漢方薬の一種なのである。
『薬局通』P.177

反鼻(ハンビ)は、マムシから皮と内臓を取り除いたもの。
まったくの逆である。
唐沢は『裏モノの神様』でも同じ間違いをしている。


【ジャコウ】

ジャコウというのはシベットともいって、ジャコウジカという動物の分泌液。
『薬局通』P.178

シベット(civet)は、ジャコウネコの分泌物のことで、別名は霊猫香という。
ジャコウジカの分泌物の別名はムスク(musk)である。


【牛】

ゴオウというのは牛の体内にできる腎臓結石。
『薬局通』P.178

ゴオウ(牛黄)は牛の胆石である。

・・・5行足らずの間に3つもガセがあるとは、
ある意味唐沢の処女作にふさわしいと言えるかもしれない。


【イモリ】

※別項目:イモリの惚れ薬
『薬局通』P.180〜181


【ハエ】

西洋では惚れ薬の代表はスパニッシュフライというハエの一種で、
これをワインにまぜて飲ませるとどんな高貴な女性でも
たちどころに恋のトリコになった、とある。
こういうハエが本当にいるのかどうかは知らないが、
いちおう服用させる形式であるところが日本とは違って本物らしい。
『薬局通』P.181

まず、スパニッシュフライ(spanish fly)という昆虫は実在する。
その時点で間違っているが、さらに間違っているのは、
スパニッシュフライはハエの一種ではなくツチハンミョウ科の昆虫である。
エキサイト辞書を引いてみる。
 fly2 /fl/
 1 【昆】 [しばしば複合語をなして]
 a ハエ.
 b 飛ぶ昆虫.
 2 (植物・家畜の)ハエや小虫の害,虫害.
 3 【釣】 擬似餌(え), 蚊針,毛針; 小昆虫の生き餌.

“butterfly”、“dragonfly”、“firefly”だってハエではないのだから、
“fly”がついているからといって、ハエの一種と決め付けるのは早計に過ぎるのである。

 さて、ツチハンミョウと来れば話はだいぶわかりやすくなる。
ツチハンミョウの体液にはカンタリジンが含まれているのだ。
カンタリジンは肌に付着すると水疱が生じる毒物であるが(だからツチハンミョウに
触るときには注意しなければならない)、その一方で催淫剤としても知られていて、
サド侯爵も使用したと言われている。
「本物らしい」もなにも実際に使用されていたのである。
さらに、ボルジア家は「カンタレラ」という毒を用いて政敵を次々とに暗殺したと言われているが、
「カンタレラ」とカンタリジンとは何らかの関係があるという説も唱えられている。
・・・なんだか澁澤龍彦みたいな話になってきた。
唐沢俊一もちゃんと調べておけば澁澤龍彦の真似事が出来たのに、残念な話である。


【薬師如来】

薬師如来という仏様がいる。須彌山の東方、浄瑠璃国の教主であり、
衆生の病患を救うというありがたい仏様だが、この像は左手に薬の壺を
持っているのが特徴である。
この様式が定着したのは平安時代以降で、この時代から薬物というのは
医療の中心として脚光を浴びてきた。
『薬局通』P.191

 薬師如来について説かれた「薬師経」には薬師如来の姿がはっきりと描写されていなかったため、
飛鳥時代・奈良時代初期に作られた薬師如来像は壺を持っていなかった。
それが変化したのは、唐の僧侶・不空がサンスクリット語の経典を翻訳した『薬師如来念誦儀軌』が
日本に伝来したためで、その中に「薬師如来像は左手に壺を持っている」と書かれていたことから、
薬師如来像の左手に壺を持たせる様式が定着したのである。
というわけで、日本における医療の発展と薬師如来像の変化にはあまり関係が無いものと思われる
(ちなみに、もともと壺を持っていなかった薬師如来像に後から壺を持たせたものも数多くあるという)。


最終更新:2017年05月25日 21:31