「以上が、新たに分かった情報だ」
セシリアに、エーテルに与えたのと同じ情報を渡すイクトミ
ついでに、エーテルとともにたてた推察も伝える
ついでに、エーテルとともにたてた推察も伝える
USBのデータに目を通し、二人分の推察を聴いて……セシリアは小さく、ため息をついた
「「教会」の救世主候補直々の部下が、本当に悪魔だとしたら……「教会」の大スキャンダルだな」
「俺達としちゃあ、大分自信のある推理なんだがね」
「……そうだな。私としても、お前達の推察が当たっていると思うよ」
「俺達としちゃあ、大分自信のある推理なんだがね」
「……そうだな。私としても、お前達の推察が当たっていると思うよ」
パソコンからUSBメモリを引き抜き、立ち上がるセシリア
にじみ出る疲れを振り払うように、頭を振る
にじみ出る疲れを振り払うように、頭を振る
「このデータ、ローゼ達の元に持っていく。ついでに、お前達の推察も伝えるが、かまわんか?」
「あぁ、別にいいけど…そういう仕事は、俺がやるぜ?」
「…ローゼは、少々、警戒心が薄いところがあるから、な」
「あぁ、別にいいけど…そういう仕事は、俺がやるぜ?」
「…ローゼは、少々、警戒心が薄いところがあるから、な」
じろりと睨まれ、肩をすくめるイクトミ
……この部屋に来た時、スカートの中身を覗こうとした事を根に持っているようだ
……この部屋に来た時、スカートの中身を覗こうとした事を根に持っているようだ
「それに、もし、本当に…「アイスマン」 メルセデスが、クローセルだったと言うのなら。能力説明は私の方が向いている」
「まぁ、それもそうか」
「まぁ、それもそうか」
悪魔関連の知識は、セシリアの方が豊富だ
ソロモン王72柱の悪魔の一体を使い魔に持っているだけの事はある
ソロモン王72柱の悪魔の一体を使い魔に持っているだけの事はある
「…クローセルの溶けない氷の剣は、傷つけた相手に重度の凍傷を引き起こさせる。正直、その能力が危険だからな。レクイエムがあの男と再戦するつもりがあるならば、伝えたほうがいいだろうしな」
「……ごもっとも」
「……ごもっとも」
蜘蛛の足のような、編みこまれた長い髪がゆらゆらと揺れる
「んじゃあ、任せたわ。俺は、もうちょい調べる事があるんでな」
「あぁ、任せろ」
「あぁ、任せろ」
すぅ、と、小さな蜘蛛へと姿を変えたイクトミ
蜘蛛は、すぐにイクトミの能力影響下から解放されて、ただの小さな蜘蛛となる
イクトミの気配が消えた事を確認し、セシリアは己の執務室を後にしたのだった
蜘蛛は、すぐにイクトミの能力影響下から解放されて、ただの小さな蜘蛛となる
イクトミの気配が消えた事を確認し、セシリアは己の執務室を後にしたのだった
「組織」本部から、遠く離れたどこか
かさり、小さな蜘蛛が姿を現す
それは、瞬時にイクトミへと姿を変えた
かさり、小さな蜘蛛が姿を現す
それは、瞬時にイクトミへと姿を変えた
……そこは、資料室のようだった
無数の資料が本棚に収められている
無数の資料が本棚に収められている
「ここなら………エイブラハムに関する資料が、ある。常に傍らにいる女共の資料も……」
すでに、目星はついている
何度か忍び込んで、場所だけはすでに確認済みだ
目当ての資料を引き抜き、目を通す
何度か忍び込んで、場所だけはすでに確認済みだ
目当ての資料を引き抜き、目を通す
(……エイブラハム・ヴィシャス。サリエルとイロウルの多重契約者。のちに救世主とも多重契約。飲まれて人間ではなくなる……』
資料でも、一応はそういう事になっている
だが、実際は違うだろうと、イクトミは確信していた
彼自身が神であるからこそ……あれは救世主などではない、と言い切れる
だが、実際は違うだろうと、イクトミは確信していた
彼自身が神であるからこそ……あれは救世主などではない、と言い切れる
(救世主に飲まれた、とされている時の状況は…………病床に伏していて、当時の医療技術で助かる見込みなし………そこからの奇跡的な回復、聖痕の出現が根拠、か……)
だが…聖痕は、その気になればでっちあげられる
病床から復活した奇跡とて、その気になればほかの都市伝説でいくらでもどうにかなる
病床から復活した奇跡とて、その気になればほかの都市伝説でいくらでもどうにかなる
(こっちは、メルセデスの資料………元々「教会」所属のバルディエル契約者だった事になってるが………極秘任務の際、バルディエルに飲まれた状態で帰還。記憶の大半を失った、だぁ?……よく信じたもんだ)
この時、エイブラハムは既に人ではなくなっていた
…さては、一枚かんだな
…さては、一枚かんだな
そのまま、エイブラハムの資料を古い順から確認していく
……その資料の、全て
その、全ての時代に
エイブラハムの片腕として、必ず、美しい女性がいる事に気付く
時代ごとに全く違う女性であるし、契約都市伝説も違う
すべてが人間であり、飲まれた形跡は全くないが……
……その資料の、全て
その、全ての時代に
エイブラハムの片腕として、必ず、美しい女性がいる事に気付く
時代ごとに全く違う女性であるし、契約都市伝説も違う
すべてが人間であり、飲まれた形跡は全くないが……
(……肉体を入れ替えて言っている可能性が高いな。使えなくなった肉体を捨てて、別の肉体に乗り換えている可能性が)
契約なしで他者の肉体を乗っ取れる都市伝説は意外と多い
有名どころでは、九尾の狐がそうだろう
他にも………
有名どころでは、九尾の狐がそうだろう
他にも………
(………………まさか)
常に、エイブラハムの傍にいて
次々と女の肉体を乗り換え、今、ゲルトラウデの中にいる可能性が高いのは………
だとしたら
まさか
次々と女の肉体を乗り換え、今、ゲルトラウデの中にいる可能性が高いのは………
だとしたら
まさか
(……いや、でも、そんな大物、「教会」に気付かれないはずが……)
待てよ?
エイブラハムの奇跡的復活、それ以降の不死性
記憶の大半を失ったと言うメルセデスの主張が通った事実
記憶の大半を失ったと言うメルセデスの主張が通った事実
まさか
エイブラハムの多重契約の一つは……
エイブラハムの多重契約の一つは……
……答えにたどり着こうとした
その、瞬間だった
その、瞬間だった
「-----っ!?」
感じた、殺意
ここまで近づかれるまで、気づけなかった
ここまで近づかれるまで、気づけなかった
イクトミが振り返った時
目前まで、その槍は迫ってきていて
目前まで、その槍は迫ってきていて
その輝く槍は容赦なく、イクトミの体を貫いた
to be … ?