『臨界者』。
総じて最大シンクロ率が100%となった者を指す。
数が少なく、年齢不詳の者が多い。
特徴として体質が人より神に近づき、老化速度の遅滞化や人格の希薄化が心身に現れる(個人差あり)。
数が少なく、年齢不詳の者が多い。
特徴として体質が人より神に近づき、老化速度の遅滞化や人格の希薄化が心身に現れる(個人差あり)。
私は一枚、また一枚、と資料をめくり、戻しを繰り返す。
並んでいるのはそれぞれの巫女個人の情報を纏めた資料。
イリス=A(アルター)=イルテリアス。
彼女の場合、見られる変化は老化速度の減衰とゼウス由来の安心感を与える強いカリスマ。しかしながら、精神面では本来の人格が塗り潰されかけて、ゼウスとの差がわからなくなってきていると供述している。『臨界者』は神の影響を大きく受けるというわかりやすい例。
彼女の場合、見られる変化は老化速度の減衰とゼウス由来の安心感を与える強いカリスマ。しかしながら、精神面では本来の人格が塗り潰されかけて、ゼウスとの差がわからなくなってきていると供述している。『臨界者』は神の影響を大きく受けるというわかりやすい例。
ヱリヲ。
不明づくしの神ではあるものの、強さは折り紙付きだろう。こちらも老化速度が遅い、またはそもそもしない。また、ゲリラライブしか行わず、所在が知れず資料内容もまばらなため神からの人格的影響度合いは不明。
不明づくしの神ではあるものの、強さは折り紙付きだろう。こちらも老化速度が遅い、またはそもそもしない。また、ゲリラライブしか行わず、所在が知れず資料内容もまばらなため神からの人格的影響度合いは不明。
グラロス=イポヴリキオン。
こちらも年齢不詳で老化速度が見た目と異なる。ノブレスオブリージュ精神に基づく面倒見の良さは、ポセイドン由来の可能性が高いのではないかと推測されている。
こちらも年齢不詳で老化速度が見た目と異なる。ノブレスオブリージュ精神に基づく面倒見の良さは、ポセイドン由来の可能性が高いのではないかと推測されている。
ネフェルティア=イチイタウイ。
『モノリス』メンバーであり、我々研究所とは基本敵対関係にあるため詳しい情報は無し。ただし、エジプトについて何かを知っているらしく、長きに渡って生存していることを匂わせている。
『モノリス』メンバーであり、我々研究所とは基本敵対関係にあるため詳しい情報は無し。ただし、エジプトについて何かを知っているらしく、長きに渡って生存していることを匂わせている。
カサンドラ=イプシランティス。
こちらも年齢不詳。女王様気質だが、人を見る目が確か。また、グラロス=イポヴリキオン曰く「昔は素直で可愛かった」という証言が残る。変貌した理由については宿した神性の影響によるものかは不明。
こちらも年齢不詳。女王様気質だが、人を見る目が確か。また、グラロス=イポヴリキオン曰く「昔は素直で可愛かった」という証言が残る。変貌した理由については宿した神性の影響によるものかは不明。
ゾイ=アンブロシア。
元『オリュンポス』メンバーにして現在は『モノリス』幹部。『モノリス』に属することとなった昨今の情報はあまり入ってきてはいないが、『オリュンポス』時代は感受性が強く人々のために龍と戦ってきた良き巫女だった。終わりなき責務が彼女を疲弊させたと思われる。
元『オリュンポス』メンバーにして現在は『モノリス』幹部。『モノリス』に属することとなった昨今の情報はあまり入ってきてはいないが、『オリュンポス』時代は感受性が強く人々のために龍と戦ってきた良き巫女だった。終わりなき責務が彼女を疲弊させたと思われる。
ネクタル・エウクラシア。
珍しい『臨界者』に至りながら、巫女を引退して完全な人へと戻り天寿を全うした人物。巫女を辞する意思を神へ相談し、身体が壊れないよう段々と信仰を抜いていったことが日記に書かれている。辞めた後も常に巫女医療に関わり続けていたらしく、影響は少なかったと推測されている。
珍しい『臨界者』に至りながら、巫女を引退して完全な人へと戻り天寿を全うした人物。巫女を辞する意思を神へ相談し、身体が壊れないよう段々と信仰を抜いていったことが日記に書かれている。辞めた後も常に巫女医療に関わり続けていたらしく、影響は少なかったと推測されている。
ティア・フェアリー。
こちらも年齢が不明で老化が遅くなっている。こちらも珍しい神装巫女の『臨界者』。
こちらも年齢が不明で老化が遅くなっている。こちらも珍しい神装巫女の『臨界者』。
ケルちゃん。……ケルちゃん?
シンクロ率向上に伴い本来の名を失っている神装巫女。記憶も混同しており、こちらも年齢不詳。美しい曲と蜂蜜と辛子の菓子に弱いのも『臨界者』になった影響であると考えられている。
シンクロ率向上に伴い本来の名を失っている神装巫女。記憶も混同しており、こちらも年齢不詳。美しい曲と蜂蜜と辛子の菓子に弱いのも『臨界者』になった影響であると考えられている。
ドロテア=ネグロトル。
こちらも年齢不詳。『臨界者』となってやはり神に近くなったことから、本来ならば死している権能の代償による身体の欠損及び侵食を耐え抜いている。
こちらも年齢不詳。『臨界者』となってやはり神に近くなったことから、本来ならば死している権能の代償による身体の欠損及び侵食を耐え抜いている。
「閲覧した資料をまとめるならば、やっぱり体への影響がでかいわね。老化をしないかしたとしてもとても遅く、本来ならば死に至る状態に陥ったとしても死なない。性格面についてはそれぞれ異なるけれど、やはり決して軽いものではない。これは『臨界者』になり得る候補者には伝えておくべきことでしょう。それと暴走事例についても、それこそ神と引き離す研究も進めないと。邪神・悪神、悪魔………いつ何時強制契約されてシンクロ率が上がり現代にやってきてもおかしくないもの」
影浦静は独り言をつぶやきながら、先程目を通した資料をすべて元の箇所へと戻した。候補者に伝えるべきことを考えながら、暴走を起こさない方法を探す新たな研究を考えながら。