「皆の者!明日はおそらくエルフ達が攻め込んでくる。今日は明日に備えてたくさん食べておくんだ!!」
森深くに住む部族スクンティ族は長年土地を奪い合い、その度に敗北を続けて来た。しかし、そんなスクンティ族も今度こそは勝つと入念な作戦を組んでエルフとの戦いに挑もうと、盛大な料理を作って夜をすごした。
時と場所は移って昼のエルフの集落に・・・スクンティ族が負け続きでも長年に渡って戦いを挑んだだけあって、そこは水に恵まれた静かで美しい土地であり、そこに住んでいるエルフ達もまた静かで美しい者である・・・はずだが、今日は様子が違う。
「スクンティ族・・・なんて事を・・・」
集落の奥、木造の重厚な建物に何人ものエルフ達が集まっている。そこには、2、3人のエルフが倒れており、皆神妙な面持ちである。彼女たちの服装はかなりの露出があり、胸と股間を覆うビキニのような衣装に肩当てと緑色のマント・・後は少し眺めのブーツを履いているが、それ以上は何も身にまとっていない。
「これは、スクンティ族の私たちに対する挑戦状ですね・・・皆さん、今すぐ戦いの準備をしてきてください。明日の朝・・・奴らが目を覚ます前に仕掛け、なんとしてもあれを奪い返しますよ!」
エルフたちの集団の中で1番前に立っていた女性が声を掛けると、後ろにいたほかのエルフたちは一斉に建物から出て行く。エルフたちが集まっていた建物は、王族の宝物庫であり
「エレーナ様、私も戦いの準備をして参ります。まだ、スクンティ族が隠れているかもしれませんのでエレーナ様は私にご同行を願います。」
現在、建物内に残った女性は2人。一人は先ほどのエルフたちとほぼ同じ格好の女性、違うところといえば衣装や肩当ての装飾がほかのエルフたちよりも華美であること。彼女の名はエステア、エルフの集落を守る魔法騎士団の団長である。長い金髪にルビーのような翠の瞳、抜群のプロポーションを誇る彼女は、美しいエルフたちの仲でひときわ目立っており、華美な衣装がそれを更に引き立てている。そして、彼女の目の前にいる人物。エステアがエレーナと呼んだ彼女はこの建物似合った宝の所有者。そう・・エルフの女王である。エステアと比べると身長は低いが、人形のように白い肌を誇る彼女も女王の名に恥じない美しさを持っている。
「そうですね。それではエステア、よろしくお願いします」
自分に仕える者に対しても決して敬意を忘れず、エステアに手を差し伸べるエレーナ。エステアはその手を取って一礼すると2人並んで歩いてエレーナの住む城に行く。
「エレーナ様、私はこれにて失礼します」
「ありがとう、エステア。宝のほうもあなた達なら必ず取り戻してくれると信じてますよ」
2人は別れ、エステアは自宅に戻って戦いの準備を行う。
翌朝・・・スクンティ族の戦士達は、これから攻めて来るであろうエルフの魔法騎士団がやってくるのに備えて集落の一箇所に集まって話し合っている。彼女達は褐色の肌もつ、いかにも森に暮らしているといった体であり。その美しさはエルフにも見劣りしない、それどころかスタイルではエルフよりも上をいっているかもしれない。
「良いか?今日の戦に勝つことができれば、我々がやつらの土地を奪える可能性は飛躍的に上がる。そのためにも、我々戦士以外の者まで協力しているのだ。我等はその期待に応えるぞ!」
スクンティ族の戦士達も、エルフ魔法騎士団と同じく、女性のみで構成されている。その戦士達を束ねるリーダーのライナは全員の士気を高めるように声を掛け、高々と手を挙げる。それに続いて、回りの戦士達も一斉に手を挙げ、大声で自ら士気を更に高めていく。
「ふぅ・・薄気味の悪い場所ですね・・・皆さん、ここからはスクンティ族がいつ襲ってくるかわかりません。必ずはぐれないように気をつけてください」
ライナたちが士気を高めてから少し後、エステアたちは馬から下りて森を歩き始める。ここは、スクンティ族の狩場であり、エルフ達はまったく近寄らない場所であるため、地理の面で圧倒的に不利。その上スクンティ族は昔から正面での戦闘を避けてゲリラ戦法を多く取っていたため、このように暗く、隠れる場所の多い森ではその戦法が十分に発揮される。そうなったためにも、全員で凌ぐ為にエステアは他の騎士達に注意を促す。
「団長~、そんなに注意しなくてもスクンティ族相手に私達が苦戦するなんて思えませんよ?警戒のしすぎじゃないですか・・?っ?!ムグッ!!むぐぐぐぐぐぐ!!!」
騎士団に入隊したばかりで最年少のリエナは用心深いエステアに意見する。すると、他の団員が慌ててリエナの口を塞ぎに入る。
「リエナ、あなたはスクンティ族との戦いの経験が無いから解らないのでしょうが、彼女達は決して弱くはありません。私は今までに何度も戦い、その度に苦しめられてるのですよ。ここにいるあなた以外の全員がそれを経験しています」
リエナの失礼な発言にも怒ることなく、諭すように説明すると、団員一人ひとりに視線を回す。すると、団員達はエステアの話を聞いて過去の戦いを改めて思い出したようで、表情が一変する。それを目の当たりにしたリエナはようやく自分の失言に気付き反省したようで顔をうつむける。
「はい・・ごめんなさい、団長」
「あなたが謝る必要は無いですよ。それより、絶対に油断をしないでください」
「はいっ!わかりました」
エステアの言葉でリエナもようやく気合が入ると、いよいよ敵の本拠地であるスクンティ族の集落が見えてくる。
「皆さん、正面からでは危険です・・・ここは裏に回りましょう」
エルフは正面では負けない自信があるが、それはあくまで自陣でのこと。リエナはもちろん、団長であるエステアですら、スクンティ族の集落に攻め入ることは初めてなのだ。そのため、エステアは万が一に備えて正面突破を避けて集落の裏へと移動する。
「団長、風の音のハープはどこにあるんでしょう?」
「私にもわかりません。ですが、あれほどの宝を一般の住居に置いておく筈がありません」
「そっか♪ということは、1番大きな建物の中ですね?」
裏に回ったところで、リエナはエステアの耳に近づいて素朴な質問をする。ちなみに「風の音のハープ」というものは、弾けばどんな猛獣ですら穏やかになるほどの美しい音色を奏でる宝である。そんなリエナにエステアが返した答えは曖昧なものだったが、リエナは納得したようで手をぽんと叩く。
「それでは、行きますよっ!」
しばらく街の様子を見るが誰も出てこない。時刻はかなり早く、先ほどようやく日が明けたため誰も起きていないと判断したようで、全員で一気に集落へと入っていく。
「団長、あそこ・・・あれが、隠し場所じゃないですか?」
「・・・確かに、怪しいですね。では、全員で行きましょう」
リエナはすぐに大きな屋敷を見つけると、エステアに報告する。そこは確かにほかの家屋とは違い、二階建で立派なつくりである。これを見てエステアは宝がここに隠されていると判断して、全員を率いて入っていく。
エステアを含む全員が屋敷の中に入る。しかし入ってみるとそこは扉以外何も無い部屋・・・とても、外見からは想像もつかないような内装である。
「団長、ここ何かおかしいですよ」
「そうですね・・・この部屋もそうですが、何より見張りがいないという事が気になります。もしかしたら、これは罠かもしれませんね。いったん戻りましょう」
不審な屋敷にこれ以上残るのは危険と、全員で外に出ようとするが・・
ガタンッ!!ガチャッ・・・・
何者かによって開いていた扉を閉められ、更には鍵を掛けられてしまう。これで、エステアたちは前に進むかその場に残るしか選択肢がなくなってしまう。しかし、さすがにエルフたちの精鋭部隊だけあって、閉じ込められただけでは動揺しない。一人のエルフは呪文の詠唱を始めて扉を破ろうとしている。しかし・・
「(エルフ達め・・・あたしたちの長年の苦しみを少しでも解らせてやるよ・・・)」
エステアたちのいる部屋の壁の向こう・・・ここは二重構造になっており、外壁と内壁の間に人が入れるスペースがあるのだ。今そこに30人ほどの女性たちが壁に顔をつけて中の様子を覗き込んでいる。
「(魔法なんて使えないようにしてやるさっ・・・)」
エルフが今まさに呪文を唱え終えようというところで、スクンティ族の女性たちは壁に尻を当てる。よく見ると、尻が当てられている部分の壁には小さな穴ができている。そして・・・
むわああぁぁぁぁぁぁぁあああん・・・
押し当てられた尻からはすかしっ屁が噴射される。壁の向こうの部屋は瞬く間に濃厚な屁の霧に包まれ、エルフたちもその被害に遭う。
「っ?!くさあぁぁいっっ!!」
「ブツブツブツ・・・・っ・・げほっげほっ・・・」
「うっ・・・ひ、酷い・・匂いです・・・」
新人のリエナはもちろん、呪文を唱えていたエルフやエステアまでも悪臭には適わずに鼻を覆って悪臭に堪える。しかし、ここは密閉された空間、匂いが拡散することは無く、エルフたちの体力は削られる一方である。
「(この匂いは間違いなくスクンティ族の物ですね・・・だとすると、これはやはり罠でしたか・・・くっ・・私としたことが、判断が甘かったです・・・)」
漂う悪臭がかつての戦いの経験からスクンティ族の物であると解ると、エステアは自らの判断を公開する。しかし、そんな余裕はあまり無いようで戦いの経験の少ないリエナはすでに相当なダメージを受けてしまっているらしく、足が笑っている。
「(このままではリエルが・・いえ、全員がやられてしまうかもしれません・・・ここはあの扉の向こうに行くしかないようですね)」
こうやって誘い込まれ、更には悪臭責めを受け、間違いなく罠があるとわかっているが、やむを得ないと判断して扉を開けようと手をあてる。
「うっ・・・(やはり酷い悪臭です・・ですが団長としてここは堪えないといけません)」
息を止めても容赦なく襲ってくる悪臭にくじけそうになるが、責任感で自分を奮い立たせる。しかし、扉はかなり大きく、もともと非力な上に悪臭で弱ってしまったエステア一人の力では開けられない・・・すると、エルフたちは皆エステアの横に並んで力を合わせて扉を開けようとする。
「(団長だけに頼ってられないわ)」
「(これくらいでやられたりなんかしません)」
全員で力を込めて扉を押していると、なぜか急に扉が軽くなる。すると、前傾姿勢だったエルフたちは当然前のめりに扉の向こうの部屋に入ることに・・
「え・・?きゃあっ!!?・・・な、何ですか・・急に扉が・・・・・う”っ・・!!」
扉が急に軽くなったことに戸惑っていると、強烈な悪臭・・・それも、先ほどいた部屋の匂いすら上回る激臭が鼻を刺激する。
「こ、ここはっ!」
エルフたちが入った場所にはたくさんの牛と、10名ほどの女性がいる。牧草などが撒かれていることからここが牛舎であると理解すると、エルフたちはこのすさんだ環境に嫌悪する。なにせ、足元に牛糞が落ちているのだ。美しい環境下で生きているエルフは綺麗好きであるため、これには耐えられないらしく、すぐに引き返そうとするが入ってきた扉はすでに閉められている。
「ようやく、来たな。エステア!ん?どうした・・?お前ほどの戦士がまさかここに来て口を開けられないというのか?」
最初から中にいた女性たち・・・スクンティ族の戦士たちは、悪臭が漂う牛舎の中にいても鼻を覆うどころか表情もいたって自然で、まるで匂いを感じていないようだ。その1番前に立っていたライナは、エステア話し掛ける、しかしエステアは悪臭によって口を開けられないため返事を返さないでライナを睨みつけていると、ライナから挑発が・・・
「・・っ!・・・ふ、ふざけないで・・・ください・・・・このような、不潔な場所に・・私たちを誘い込んで・・・(でも、これほどの悪臭・・・入る前に気付けたはずでは・・)」
「ふんっ!お前たちのような種族にはここが最もふさわしいと思うがな・・・なんだ?怪訝そうな表情をしているな?もしかしたら、この牛小屋のことか・・?ここは、以前から我々スクンティ族が全員でお前たちのために作り上げた処刑場だ」
そう、ここはエステアたちを誘い込むために作った・・・というより改装した牛舎なのだ。先ほど、女性たちが潜んでいたスペースは、壁の裏から攻撃するだけが目的ではなく、そうすることによって牛舎の悪臭を外に漏れないようにしていたのだ、また必要以上に重たかった扉も、厚くすることで匂い漏れを防いでいたのだ。
「今日は積年の恨みを晴らさせてもらうぞ。行くぞ!皆の者っ!!」
ライナの掛け声とともに、戦士たちは匂いに苦しんでいるエルフを襲いにかかる。
エルフたちは魔法を使うにも呪文を唱える暇が無く、持っていた武器で応戦しようとする。エルフたちは、万が一にも魔法が使えなくなったときのために、弓矢と短いメイスを持ち歩いている。しかし、非力なエルフにメイスは向かないようで、普段は弓矢しか使用せず、今回も案の定全員が弓矢で応戦しようとする。対するスクンティ族はというと、魔力を一切持たず、狩りや生活に関わる事をすべて自らの力で行っているため、かなりの力自慢がそろっており、エルフと比べると大人と子供くらいの違いになる。そんな状態のため、接近戦に持ち込まれたエルフは押し込まれており、牛糞の転がっている床に倒されそうになっているものもいる。そんな中、エルフ騎士団の中では最も筋力に優れたイリアが、漂う悪臭をできるだけ嗅がないように呼吸を抑えながらも、逆に相手を押し返そうと力を込めて踏み込む。
ヌチャッ・・
しかし、踏み込んだところでイリアの足に嫌な感触が走る。足元を見ると、イリアは白いブーツで牛糞を踏んでしまっている。
「い、いやっ・・汚いッ!」
「・・・隙ありっ!!」
「しまっ・・・!!・・く・・・ぐぐぐ・・」
糞を嫌がって意識が目の前の敵から離れると、その隙に押し込まれてしまい、苦しい体勢に持っていかれる。普通ならここから更に押し込んで、牛糞の転がった床にイリアを倒すのだろうが、相手のスクンティ族のアルマはそうしないで、イリアの体を抱擁してしまう。
「あははっ!!この体勢になれればこっちのもんだね!!」
「ぅっ・・・笑わないで・・ただでさえ・・・近くにいて・・臭いのに・・」
水に恵まれていないため風呂どころか水浴びすらめったにできないスクンティ族の体臭は牛舎の匂いすら上回るほどのもの。そこに、口臭までプラスされるとイリアは反撃するにも力が抜けてしまい、ただただ匂いを嗅がないように必死に首を逸らし続けるだけ。
「顔を逸らしたぐらいじゃ、ダメだってことくらいわかってるんじゃないの?!ぷはあぁぁぁ~~~・・」
「んっ・・・・・・・・・・っは・・?!?!?臭いッ!!」
匂いから逃れようとするイリアに容赦なく息を吐きかけていくが、イリアは呼吸を止めてこれを嗅がないようにする。しかし、息を吐きかけ続ければいいだけのアルマは途中で息継ぎできるが、イリアのほうはいつ来るかわからない悪臭の息に備えて、常に呼吸を止めなくてはならないため、根負けして息を吸ってしまう。すると、イリアは悪臭の息も一緒に嗅いでしまい、めまいに襲われて膝が曲がる。
「なんだ、一発でギブアップなんて・・いつもならもっと耐えれたんじゃないの?」
「く・・くさ・・ぅぅ・・(なんで・・・確かに、いつもはこれぐらい耐えれたのに・・)」
アルマの言葉と同じ事をイリアも考えていたようで、不調の原因がわからずに困惑する。しかし、それは簡単なことで、いつもは万全の状態でスクンティ族を攻撃を受けてきたのだ。だが、今回は最初に密室空間でオナラ責めに遭い、更にはこの常に悪臭の漂う牛舎の中に閉じ込められ、すでにイリアの体にはダメージが蓄積されていた・・・それが、不調の原因である。
「息を止めたって無駄だよ!このまま嫌ってほど嗅がせてやるんだからね!!すぅぅ~~・・ぷはああああぁぁぁ・・」
「ゃ・・やめ・・・いやああぁぁぁ!!くさいいいぃぃぃ~~~~!!!!」
イリアが匂いのダメージで脱出不可能になったこの状態。アルマはここぞとばかりと息を吐き続けてイリアが気絶すると、牛糞の転がる床に背中から落ちるように投げ捨てる。
「このっ・・!(これくらい魔法で・・・)」
「いけませんっ!魔法を使ってはダメです!!」
一方的に押されている現状。ティアナは反撃に出ようと、牛舎の悪臭も堪えて詠唱をし、今まさに魔法を放つ瞬間でエステアに制止される。ティアナはなぜ止められたのかわからなかったが、その理由はすぐに判明する。ティアナは魔法は詠唱が完成しているところを無理矢理止めたのだが、気を抜いてしまい蝋燭の火のような小さな火の玉が発生する。すると・・・
ボンッッ!!
「きゃあああっ!!」
火の玉は一瞬で爆発、ティアナは轟音に驚いて思わず耳を塞いでしゃがみ込む。エステアは火属性の魔法が得意なティアナが、牛糞から発生するガスが充満したこの空間内で誤って魔法を使ってしまうと、大爆発が起きると予測して止めたのだ。
「戦っている最中に敵から目を離すなんて・・アンタ、バカ?」
「うっ、うるさい!いつも勝ってるんだから少しハンデをあげただけよ」
スクンティ族の戦士ラミアにバカにされると、顔を赤くしながら反抗して立ち上がる。
「ふぅん・・ハンデ?そんなに余裕がないように見えるけど・・・」
「~~~~!!!うるさーーいっ!!・・きゃああッ!!」
ラミアの態度で頭に血が上ってしまい、考え無しに攻撃しようと突っ込んで行くが、横から何かがぶつかって来てティアナは倒されてしまう。
「なっ、なんなのよ一体!?」
「モオォォォ・・・」
急に邪魔が入ったことでティアナは声を荒げてぶつかってきたものを睨みつける。すると眼前には
自分を見詰めている牛の顔が・・・牛舎の中なので牛がいることは当たり前なのだが、ティアナは目を白黒させてしまう。すると牛は何気なく舌をティアナの顔に伸ばしていく。
「や・・やめっ、やめてよ!!汚いッ!!」
牛を制止しようと手を出すが跨がられているこの状況では抵抗など無に等しく、ティアナの顔は牛の舌によって蹂躙される。牛が舌を止めた頃には顔中が臭いよだれ塗れになり、ショックで零れた涙がわからない程になっている。
「ぁ・・・あぁぁ・・・」
臭く汚い舐め回し地獄から開放されたティアナだが、今だ顔には舌の感触が残っており、露出した肌を見ると鳥肌が立っている事がわかる。
「あははっ♪ショックで言葉もでないって感じ?ハンデなんて余裕こいてるからそうなるのよ」
ティアナが反撃出来ない状態であるとわかっているため、警戒無しに近付いてティアナを見下す。対するティアナは反撃どころか言い返すことすら出来ずにいる。
「なぁんだ、もうそこまで弱っちゃったの?まぁ、いいか・・・とっととトドメ刺して他の奴を虐めよう」
パチンッ!
ラミアが指を鳴らすと牛がティアナの顔に近付いていき、再び舐め回し地獄が始まるのかと思いきや、口を開けてただけで舌は伸ばさない。しかし・・・
「グエェェップ!!」
ティアナの鼻先で口を開けた牛はあろうことかその状態でゲップをする。生暖かく強烈な臭いのゲップを浴びせられたティアナは意識が一瞬途切れる。
「ふぅん・・まだ、耐えるんだ。でもいつまでも粘ってたって苦しむだけなのに」
牛の隣に立っていたラミアは、拳をティアナの顔面に突き出し、命中する直前で止めて手を開く。すると・・・
ぷううぅぅぅん
開かれた手のひらから猛烈な腐卵臭が放たれ、ティアナの鼻孔を襲う。
「ッッ!!!???・・・」
ビクンと体が反応すると、その場に崩れてそれきり一切動かない。しかし、悪臭責めの恐怖が残っているようで
「臭い、臭い・・」
とうなされている。
プウウゥゥ~~~
「んぅっ!?・・く、くっさぁ・・・」
「ゴホッ・・ゴホッ・・・酷い、匂い・・・」
敵の手の平の中であるためどこから襲われるかわからない。そこでリリィとエリスは固まって戦う事でそういった危険性を裂けようとしたが、それが仇となったようで二人まとめてオナラの餌食になる。まともな空気を吸えずに噎せ返っている二人にオナラをしたスクンティ族ターニャが離れたところから二人の様子を観察する。
「馬鹿な奴らだ。固まってしまったら私達の思う壷だというのに」
「くっ・・(悔しいけどここは一旦離れてからじゃないと反撃出来ない・・)」
エリスとアイコンタクトを取ってオナラ滞留地帯から離れる。しかしターニャはなぜか笑みを浮かべている。
「よしっ!匂いも薄まって来たし、これなら反撃出来そう」
そう思ったエリスは攻撃に転じようと走りだす。しかし、横から大きな何かが割り込んでくると、その次の瞬間にはエリスの視界が暗闇に閉ざされる。
「あらぁ・・いきなりアタシの胸に飛び込んでくるなんて、ずいぶん度胸があるのね」
横から割り込んで来たものとはスクンティ族のナナル。そうエリスはナナルの胸に挟まれたために視界が閉ざされたのだ。
ツ~~~~ン・・・
「んぐうぅぅぅっ~!!んぅぅぅぅッッ!!!!」
スクンティ族の胸の谷間は、猛獣すら一嗅ぎで悶絶する程の恐ろしい悪臭を誇る。その悪臭の強さはいかに谷間に汗が溜まるかで決まる。そのため、胸の大きい者は一族の中で見ても強烈な匂いを持つ者が多い。ナナルはその頂点に立っており、胸の臭いだけなら戦士長の〇〇すら上回るのだ。そんな匂いを嗅がされているエリス、何人何十もの人間の汗を凝縮して布に染み込ませたかのような激臭に当然悲鳴を上げる。しかし、ナナルの大きな胸に声が遮断され、くぐもった声になってしまう。
「エリスっ!?」
「お前はよそ見などしている余裕があるのか?」
エリスがナナルの胸の中で悶絶しているなか、助けに入りたいリリィだが、目の前にターニャが立ち塞がり、それ以上前に進めない。「くぅ・・・(こうなったら臭いを我慢して魔法で倒すしかない)」
一度詠唱を始めると、暫くの間この牛舎の匂いを嗅がなければならないが、エリスを放ってはおけず、覚悟を決める。だが、普通の魔術士のように一カ所に立った状態で詠唱をしては悪臭攻撃の的になるようなもの。しかしエルフ達もそれでは大事な土地を奪われてしまうということで、長年の戦いから、激しい運動の中でも詠唱を可能にしたのだ。
「ふむ・・仲間のためにこの匂いにも堪えるか・・・だが、ここはいつもの戦場とは違うぞ」
「ぶつぶつぶつぶつ・・・」
詠唱を間違えないように、かつターニャの攻撃を受けないように注意しているリリィ。ターニャの忠告などまったく耳にしてないか゛・・
「っ!!?きゃああッ!!!」
リリィは足元に落ちていた牛糞で滑ってしまう。何せいつもと同じ感覚で移動していたのだ、こうなってしまうのも頷ける。
「いっつぅ・・・」
「だから忠告したというのに・・馬鹿な奴だ」
床に打ち付けた箇所を摩っているリリィにターニャが近付いていく。その手には何かが握られている。
「これで決まったな・・」
最後にターニャがそう告げると、手に握っていたものをリリィの顔に押し当てる。
ぷうううぅぅぅ~~~ん・・
「ンッッ!!?(く、くさあああぁぁぁぁいぃっっ!!!!)」
押し当てられたものから発せられる激臭。ターニャが握っていたものとは布切れ、それもただの布切れではない。おそらく長年使い続けて洗わなかったのだろう、スクンティ族であるターニャの汗を十分に吸い取っており、更には汗拭き用の布らしからぬ黄色と茶色のグラデーションカラーになっている。これは、ターニャがこの布を対エルフ用の武器として十分な威力を持つように、溜め込んであった糞尿に何ヶ月もつけていたためにこういう色となったのだ。そしてこの結果、布には汗の匂いにプラスして糞尿の匂いまで加わり、相乗効果によっておぞましい悪臭を放つ、エルフにとっては殺人兵器・・いや、殺エルフ兵器と言っても良い物となったのだ。殺エルフ兵器によってリリィは見る見る弱っていき、先に悪臭責めをされていたエリスも同じように抵抗の力が弱まって、動かなくなっていく・・・
「あら・・?もうお寝んね?それじゃ、ぐっすりここで休んでいてね」
「ふぅ・・・いかにエルフと言えど、この状況下では形無しだな・・」
気絶してようやく悪臭責めから解放された二人。しかし、その顔や鼻の粘膜にはしつこく悪臭が残り、気絶した今も2人の顔に安堵の色は見えない・・それどころか、苦しそうな表情で呻いている。
「リリィさんとエリスさんまで・・これは本格的にマズイよ・・・」
倒されたエリス達の姿を見たリエルは、戦闘経験の少なさからすっかり動揺してしまう。そんな隙をついて一人とのスクンティ族アイシャが攻撃を仕掛ける。
「君もすぐにあの人達のようになるよ・・ボクにやられてねっ!!」
「むっ!カッコイイこと言ってるけど・・・・・さっきから自分の力で戦ってないじゃん!?そんな人にリエルは負けないよッ!!」攻撃をするのはアイシャ自身ではなく牛達。何頭かがリエルの周りを囲んでいくと、完全に包囲される前にリエルではその場から逃げる。しかし、牛舎の中にいる牛は2,30頭、逃げてもまた別の牛達が迫って来る。
「うぅ・・・しつこいな~~・・こうなったら、牛さん達にはかわいそうだけど、魔法で追っ払っおう」
執拗な牛の追い掛けによって、牛舎の隅に追いやられたリエル。やむを得ず魔法でこの状況を打開しようと詠唱を始める。しかし、漂う臭いは経験の少ないリエルにとっては大きな障害・・
「ぶつぶつ・・・うっ・・・だ、ダメェ・・臭くてくらくらしてきたよ・・」
詠唱を途中で止めて鼻を覆う。しかしすでに臭いのダメージを受けているようで、体がふらついており戦えるようには見えない。
「なんだ・・カッコイイ事言っておいてダメなのは君の方じゃないか」
「ぅっ・・リエルは自分の力で戦うもん・・だから、ダメなんかじゃないよ・・・」
「へぇ・・だったら君がダメじゃないって事を証明してもらおうか」
「へ・・証明?・・・ひゃうんっ!!や、やだっ・・!」
匂いとアイシャに気を取られていると、お尻を牛に舐められてしまう。気持ち悪さに身をよじり、すぐに牛から離れようとするが、時すでに遅くリエルは数頭の牛に四方を囲まれ、身動きできない状況になってしまう。
「そのまま、全身をよだれ塗れにしてあげるよ・・」
アイシャがそう言うと、リエルを囲んでいた牛達が一斉に舐め始める。
「ひゃっ・・!どこ舐めて・・・っ?!そこは、ダメェ!!」
腰・胸・足・お尻といくつもの舌がリエルの綺麗な肌を蹂躙していく。
「ぅ・・うええぇぇ・・・ベトベトして気持ち悪いよぉ・・・それに、くっさぁい・・」
首から下をよだれ塗れにされたリエル。全身から悪臭を放ち、体から垂れたよだれはブーツの中に貯まり、歩く度にニチャックチャッと音を立てている。そのとてつもなく不快な感触に、リエルは涙で目を潤ませる。
「さぁ、その状態でボクっと戦えるかな?」
よだれの感触が気になってまともに動けないリエルの弱みに付け込んで、アイシャは初めて自ら攻撃を仕掛けに行く。今まで牛を操って戦っていたアイシャだが、決して実力がないわけではない。むしろ、スクンティ族の中から選ばれた戦士なのだから、相当の実力を持っているのだ。
「ぅぅ・・・卑怯者ぉ・・」
そんなアイシャを相手に戦わなければならないリエル、牛舎の臭いもあってかなり不利な状況であるため一方的に押されている。
「さっきから弓で防御してばかりだね。そんなんじゃ、君がダメじゃない事を証明できないよ」
「(く、悔しいよ・・こんな卑怯者にやられてるなんて・・)」
何時いかなる時にスクンティ族が攻めて来るかわからないため、エルフ騎士団は日頃から訓練を欠かさない。リエルもその一員であるから訓練を行っており、入団したばかりなのでエステアから指導されていた。リエルはそこで教わった事を全てここで出そうと考えていた。しかし、実際の戦いは教わった事などまったく通用せず、リエルは悔しくて震えている。そんなリエルの隙を突いてアイシャは歩み寄っていく。
「捕まえたよ。やっぱり君はダメだったね・・」
「やっ、やだっ!!離してよぉ!!(うっ・・息がかかってくる・・)」
アイシャはリエルに攻撃をしないで抱擁する。よだれ塗れのリエルに対して何の躊躇もなく、むしろ口臭を嗅がされているリエルの方が嫌がっている。
「スクンティ族の戦士の中で1番弱いボクにやられちゃうなんて・・君にはお仕置きが必要だね」
「お仕置き?・・・んぅッ!?」
アイシャは舌を出し、まるで牛のようにリエルの顔をぺろりと舐める。牛の時ほど嫌悪感は無いが、人に・・特に相手がスクンティ族であるであるため屈辱感は牛より大きい。
「ひぁっ・・やあぁぁぁぁぁ!!!!」
アイシャの舐め回しは数分間続き、全てが終わったときにはリエルは完全に心を折られてしまったようで、涙を零しながら両膝を床に付ける。
「うっ・・うっ・・・酷いよ・・こんな、ここまでするなんて・・・」
「へぇ・・これだけ責めてもまだ気絶しないんだ。前言は撤回させてもらうよ。君はダメじゃないね・・・だから、安心して眠りなよ」
満身創痍のリエルにせめてもの情けなのだろうか、とどめを刺そうとお尻をリエルの顔に向けて突き出し・・
ぷううううぅぅぅぅぅぅ
強烈なオナラをリエルの鼻先で噴射する。そこでようやくリエルは気絶しる。しかし、気絶したくらいでは顔にべったりついたよだれの匂いからは開放されないのだが、アイシャはリエルの顔を布で拭う。拭く際に布の匂いが鼻を刺激して顔をしかめるが、ターニャと違い武器にしているものではないため苦しむ程ではない。顔のよだれが大分落ちるとようやくリエルの表情は穏やかなものになる。
最終更新:2008年12月21日 22:54