香水戦士コロン(4)

「さあ、着いたぞ。君たち、準備は良いかい?」
車を走らせること数時間・・時刻は午前4時を回り、ようやく敵の本拠地にたどり着くと、
目立たないところに車を止めて、後部座席に座っている春菜とレイカに一郎が話しかける。
「ひとつ、約束をしてくれないか?確かに、みく君を取り戻すことは大事だが、無茶だけはしないでくれ」
敵の本拠地。相手はこうなることを呼んで罠を仕掛けている可能性だってある。
その危険な地にか弱い女の子たちを向かわせてしまうのだ。一郎は罪悪感を感じるが、悪臭モンスターに太刀打ちできるのは彼女たちコロンしか居ない・・
それを考えると、せめてもの罪滅ぼしにと、屁鬼の爆裂屁に巻き込まれて使用不能になった香水を新たしく作り、その瓶を二人に渡す。

「天草先生・・はい。約束します」
「もう二度とあんな失態はしませんわ。だから、先生は安心なさって?」
香水の瓶を手に二人は研究所に向かう・・
「「クロス・フレーバー!!」」
研究所の敷地に入る前に物陰で変身を済ませる。幸い山の中の研究所とあって、隠れる場所に困ることはなく、
変身時に発する光にも気付かれずに済んだ。
そして、研究所の入口付近まで接近して中の様子をのぞく。
研究所は一見して悪臭モンスターが出入りするとは思えない、いたって何の特徴もないどこにでもありそうな建物だが、
ひとつだけ違和感があるとすれば、あまりにも人の気配がしないというところ。
この不気味な空気を感じ取った二人はお互いの顔を見る。
「春菜、覚悟はよろしくて?」
「もちろんです。さあ、行きましょう!」
「それは、私が言うセリフですわ!」
罠の危険性にも躊躇わず積極的に進む春菜を、いつも先に進むレイナが追いかける。
そして、一気に敷地を走り抜けて建物の中へと入っていく。


「どこに罠が隠れてあるかわかりません・・レイナさん、気をつけましょう」
建物内に入った二人。やはり中にも人はおらず、長い廊下を二人だけが歩いている。
その二人の様子を監視カメラが追っている。
「それくらいあなたに言われなくてもわかってますわ!それにしても、さっきからカメラでわたくしたちを監視しているなんて不愉快ですわね」
監視カメラに気づいている二人は、自分たちの存在が研究所の人間たちにばれているとわかっているため、
罠にだけ注意して歩き続ける。
廊下を歩いている間も、どこにプリティー・コロンが拘束されているかわからないため、部屋という部屋を片っ端から調べていく。
そして、廊下もつきあたりに差し掛かり、最後の部屋の扉を開けると・・
「・・え?・・・レイナ先輩!お姉ちゃん!」
ようやく、プリティー・コロンの元にたどりつく。プリティー・コロンは両手足を壁に拘束された状態で放置されていたため、
中に入っても敵が現れることはない。
キューティー・コロンはすぐにプリティー・コロンの拘束を解く。
「みくちゃん、大丈夫だった?何か酷い事されなかった?」
「も~・・お姉ちゃんは心配性すぎだよぉ。ほらっ♪見ての通りみくは全然平気だよっ」
過度に心配するキューティー・コロンに疲れが混ざったような表情を浮かべるが、
すぐにいつもの調子で平気であることを主張する。
その様子を見たレイナは面白くないのか、入口に先に一人向かってしまう。
「まったく!心配して損しましたわ。二人とも、早くここを出ますわよ?!」
「レイナ先輩もありがとう♪みくの事、心配して来てくれたんだよね?」
そのレイナを見てみくはにやっと笑みを漏らすと、いきなりレイナに抱きついてお礼を言う。
「きゃっ!?・・みく、甘えすぎですわよ」
とは言いつつ、レイナにとってみくは可愛い後輩。その後輩にこうやって抱きつかれていることは悪い気がせず、
何より、幼馴染である春菜より自分を優先したということが嬉しかったのか、これから脱出するというのに、
いつまでも抱きつかれたままの状態でみくから顔を逸らしている。
「ホントーにありがと・・罠にかかってく、れ、て♪」
「っ?!レイナさん、逃げてください!!」
抱きつく前と別の笑みを浮かべるとプリティー・コロンのコスチュームの色が、パステルイエローから黒へと変色していく。
完全にコスチュームの色が変わったところでピクシー・コロンを押し倒して、そのおなかの上に馬乗りする。
「きゃあっ?!・・な、何のつもりですの?それに、そのコスチュームは・・」
「ストーップ!まずはレイナ先輩にやってもらうことがあるから、質問はそのあとにね?」
ピクシー・コロンの質問を一言で一蹴すると、軽くお尻をあげてわずかに位置をずらし、再び落とす。
プリティー・コロンのお尻の先は当然、ピクシー・コロンの顔の上。
「え・・?きゃ・・っ!むっ!むぐううぅぅぅ~~~!!(このっ!みく!!おどきなさい?!!)」
小ぶりなプリティー・コロンのお尻、匂いこそ全くないが上手くピクシー・コロンの鼻と口を塞いでいるのだろう、
呼吸が苦しくなって暴れるピクシー・コロン。
それに対し、絶妙なバランスを保ち振り落とされることなくフェイスシットを続けるプリティー・コロン。
「もー!レイナ先輩、そんなに喜ばなくったっていいのにぃ♪」
「ん”っ!?むうぅぅううぅぅ!!(ち、違っ!喜んでなんていませんわっ!!)」

むすううぅぅ

言葉でピクシー・コロンを動揺させると、その隙に強烈なすかしっ屁を放つ。
「っっ?!!ぅんっ!んんんんうぅぅぅーーーーー!!!(お、おどきなさい!!早く!!早く!!!)」
隙を突かれたこと、そしてお尻との密着度が高く、口と鼻が噴射口とほぼゼロ距離だったこともあって、
プリティー・コロンの放った一発は大きさ以上の効果を発揮し、ピクシー・コロンに大きなダメージを与える。
「えへへ~♪レイナ先輩、みくのおならはどーだったかなぁ?とっても臭かった?」
動きが鈍っているピクシー・コロンに、お尻を擦りつけることで屈辱と残り香によるダメージを与える。
「ん・・・ぅぅ・・・ぅ・・(これが・・みくの・・・ですの?臭くて全身の力が抜けそうですわ・・)」
しかし、こんなことをキューティー・コロンがいる前でそう長く続けられる筈がない・・
プリティー・コロンに接近して、後ろから羽交い絞めにするとそのまま引き剥がそうとする。
「みくちゃん!!レイナさんを離して?!!」
「お姉ちゃん、ジャマするならお仕置きしちゃうよ?」
羽交い絞めにされた状態から、無理に手をキューティー・コロンの鼻先に持っていく。
そして、握った手を開くとキューティー・コロンは自分からプリティー・コロンを開放する。
「うっ!・・臭いっ!!・・・・(みくちゃん・・やっぱり、ここで何かをされたのね・・)」
プリティー・コロンの掌から放たれた握りっ屁。それをわずかに嗅いだだけで軽いめまいに陥ると、迂闊に近づけずに距離を置いてしまう。
「どう?みくのオ、ナ、ラ♪お姉ちゃんとレイナ先輩に嗅いでもらうために、臭くしてもらったんだよぉ」
キューティー・コロンの予想通り、プリティー・コロンはここに捕らえられた後、数時間の間様々な実験が行われた・・
ありとあらゆる悪臭を嗅がされて、そのときの反応を観察され、持っていた変身用香水に手を加えられたのち、無理やりかけられたり・・
その結果、プリティー・コロンは悪の香水戦士に生まれ変わり、強烈なオナラ・・それも香水戦士には効果が抜群の悪臭を誇るオナラを手に入れたのだ。

「そ、れ、じゃ・・二人にはみくが満足するまでたぁ~っぷり嗅いでもらうね?覚悟は良いかな?特にレイナ先輩♪」
どうやら、先に嗅がせるのは今現在ベストポジションで拘束しているピクシー・コロンのようで、下を向いて声をかける。
「(じょ、冗談じゃ・・ありま・・せんわ・・・こんな匂い・・嗅ぎ続けたら・・・)」
キューティー・コロンが攻撃を仕掛け、反撃を食らった時も、プリティー・コロンが自慢げにオナラの自慢をしている時も、
ずっと薄れない残り香に苦しめられ続けていたピクシー・コロンは、もう抵抗する力が出ないようで、
これから行われるのであろう、恐ろしい責めに恐怖する。
「それじゃあカウントダウンはじめるよ?・・・さーん・・・にぃーー・・・・いぃーち・・・・・」
意地の悪いことに、プリティー・コロンは恐怖をより強くしようとカウントダウンをはじめる。
笑みを浮かべ、長いカウントダウンが終わりを迎えようとしたところ・・
突然、キューティー・コロンが消える。
「えっ?!ど、どこ行っちゃったの?!!お姉ちゃ~ん!」
予想もしていなかった出来事に動揺して、立ち上がりキューティー・コロンを探す。
しかし、探すまでもなく落とし穴を発見してどこに行ったか理解する。
「なぁんだ・・ま、ドジなお姉ちゃんなら落とし穴に落ちちゃうのもナットクかな。
それじゃ、改めて・・レイナ先輩♪」
本当ならピクシー・コロンに嗅がせた後にキューティー・コロンにも嗅がせたかったのだろうが、居なくなったのなら仕方ない。
諦めてピクシー・コロンにだけでも嗅がせようと迫っていく。
しかし、振り返った先・・ピクシー・コロンがいたはずのそこには、ピクシー・コロンの姿はなく、
あるのは落とし穴だけだった・・
「んもーー!!せっかく良い所だったのにぃーー!!!」


「つぅ~・・(なんですのっ!!と言いたいところでしたけど、助かりましたわ・・
あのままでしたら、みくに何をされていたことか・・)?クンクン・・・こ、この匂いは・・」
落とし穴の底にたどりつき、尻もちをついたピクシーコロン。罠への怒りもあったが、プリティー・コロンの攻めから解放されたため、逆に感謝する。
しかし強烈な匂いを嗅ぎ取るとその感謝の気持ちは半減してしまう。
その匂いは彼女が日本に来て第一に嫌いになった物の匂い・・嫌な予感に顔が青ざめる。
「っ!?な、納豆?!!なんで、こんなところに納豆があるんですの?!」
当たらないでほしかった予感は見事に的中。落とし穴の底にはピクシー・コロンもとい、レイナが最も嫌いな食べ物である納豆が敷き詰められていた。
その大嫌いな納豆の匂い、感触・・それらから早く逃れるため、立ち上がろうとするが、
ネバァ~~と身体にくっ付いて糸を引く納豆を見ると、声にならない悲鳴をあげて、へなへなと脱力してしまう。
「~~~~~!!??・・ぅぅ・・・最悪ですわ・・この匂いと言い感触と言い・・・」
精神的ダメージから、気力を削がれてしまったピクシー・コロンはしばらく立ち上がれずに、納豆の匂いが籠る落とし穴でへたり込んでいる。
すると、穴の外から人の気配が近づいてくる。ゆっくりだが確実に穴へ向かってきている気配。
しかし、あるところで止まると、ピクシー・コロンは何事かと上を向く。すると、それを見計らったかのように穴の中へと大量の納豆が投入される。
「え・・?きゃああああぁぁぁっ!!!?」
今まではお尻や手足にしか付いていなかった納豆だが、頭上から浴びせられると当然全身が納豆まみれに・・
すれ違った男性なら誰でも振り返るような美しさと香りを兼ね揃えた彼女自慢の金髪も、納豆に塗れてはその魅力も台無し。
そして顔は勿論、露出の多いコロンのコスチュームが災いして、胸の一部にまで納豆が絡みつく。
「酷いですわ・・わたくし、納豆は・・納豆だけはダメですのに・・・それなのに、こんなこと・・・・あんまりですわよ・・」
普段気が強くても、これには参った様で半泣きの状態で体を震わせる。
だが、それに追い打ちをかけるかのように落とし穴にふたをされる。
今まで納豆の匂いは籠っていたが、わずかに穴の外へと逃げていってた。しかし、ふたをされてしまうと真っ暗なその空間内に納豆の匂いが充満。
「うっ・・(匂いが・・こもって・・・息ができませんわ・・・)」
いつも嗅いでいる匂いと比べたら、可愛いものなのだろうが、嫌いな匂いは嗅ぎたくないようで呼吸を我慢する。
「(こんなところ、一秒も長くいたくありませんわ・・・まずはふたを・・)」
しかし、ピクシー・コロンが行動を始めると、それを妨害するかのように、空間内にガスが噴射される。
それは、世界一臭い食べ物と恐れられているシュール・ストレミング、、ドリアン、くさや、そして納豆といった、
臭い食べ物の匂いを最も強烈になるように混合したものである。
当然、その匂いは想像を絶するものであり、刺激も強い。息を止めているピクシー・コロンは鼻より先に目にダメージを負う。
「(なっ!?なんですの、これは!ぅぅ・・目に沁みますわ・・)」
何も見えない空間でいきなり刺激に襲われたため、動揺してしまい吸ってはいけない空気を吸ってしまう。
「ぅ”っっ!!!?!!くさああああぁぁぁぁぁぁいぃ!!!!!んぅ~~!!!んんんんんーーー!!!!」
一嗅ぎで体が硬直し、匂いを感知した次の瞬間には鼻を押さえて絶叫・・そして、顔をぶんぶんと振ってのたうち回る。


「きゃあっ!?・・・い、痛い・・です・・・」
時間は戻り、ピクシー・コロンが罠に落ちて納豆の存在に気付いたころ。
同じように落とし穴に落とされたキューティー・コロンはというと、別のところに落とされたようで、
何やら薄暗い部屋にたどりつく。
打ち付けたお尻を摩りながら立ち上がるが、何があるかわからない部屋・・それに一度落とし穴に落ちているため、
警戒心が強まっており、無暗に動こうとしない。
すると、何か・・それも一つではなくたくさんの何かが動く音が聞こえ、部屋の中に異臭が立ち込めると、キューティー・コロンは一層警戒心を強める。
「(早くレイナさんと合流しないと・・ここで孤立するのは危険です)」
そう判断すると、わずかな明かりを頼りに歩き出し、出口を探し始める。
その間にも部屋の中の何かは動き続けており、キューティー・コロンは姿の見えないものを不気味に感じながらも探し続ける。
しかし、一回り部屋を回ったところでキューティー・コロンは足を止める。
「そんな・・どこにもないなんて・・・」
部屋の壁すべてを見て回ったが、ドアどころか出入りできそうな窓すらない。
いったいどうやってこの部屋から抜け出せばよいのか・・もしかして、ここは自分を閉じ込めるガス室で、
今現在漂っている異臭はそのガスなのではと不安が募っていく一方・・
しかし、その不安も部屋に明かりがつくとわずかではあるが薄れる。
「明かり・・?でもどうしてでしょう・・?」
なぜ急に明かりがついたはわからないが、深く考えずに再び出口を探そうと明るくなり、探しやすくなった部屋の中を見回す。
「あら・・ここは・・・」
すると、小さな穴を見つける。先ほどは薄暗かったせいで見逃していたのだろう・・
しかし、あまりに小さいその穴は人間が通れるはずが無く、せめて何処に繋がっているか確認しようと覗き込む。
「暗くて何も見えません・・・ぅっ?!」
穴の中をよく見ようと顔を近づけたところ、強烈な匂いが鼻を襲い、キューティー・コロンは鼻を押さえて、慌ててその場から離れる。
「(この穴・・やっぱり、ここはガス室なんでしょうか・・)」
消えかけていた不安が再び募り始めるが、穴の中からあるものが出てくると不安は解消される。
それは、毒ガスや悪臭ガスではなく一匹の愛らしい小動物。
「か・・かわいいっ♪こっちにいらっしゃい?」
見たことの無い種類だが、魅力に負けて警戒を解いてしまう。
目の前の動物もまた、キューティー・コロンに対して一切警戒しておらず、
誘われるがままに彼女の手に近づいていき、おとなしく掴み上げられる。
「この子・・一体どこから来たんでしょうか?・・っ?・・こ・・この匂い・・・・まさか?」
悪臭モンスターを作り出しているような研究所に不釣合いなその動物が、なぜここにいるのかと首を傾げつつ、
両手でただ掴んでいる状態から、安定するために胸のほうに寄せて抱こうとすると、臭気が鼻を掠める。
それは、穴を覗いたときに嗅いだ匂い・・つまり、匂いの発生源は間違いなく今抱いているこの動物ということになる。
「こんなにかわいいのに・・」
匂いに若干落胆するが、それほど酷い匂いではないため抱きしめた状態で動物の頭をなでる。
きっとこの子もプリティー・コロンと同じように実験によってこんな体にされたのだ・・
そう思い、
「可哀想」という気持ちが「臭い」という気持ちに勝ったのだろう。
「きっとここから出してあげますから・・それまで、ここで待っててくださいね?」
この研究所での目的が洗脳された新たにひとつ増えると、俄然やる気が出たようで、抱きしめていた動物をそっと下ろして再び出口を探し始める。
「あ、あの・・あっちで待っててください」
一度離れたはずが、再度寄ってきて体を擦り付けて甘えてくる動物を可愛いと思いながらも引き離して元の位置まで戻す。
すると、様子を察知したのか動物も今度は諦めたようで穴の中へと戻っていく。
「ふぅ・・」
障害がいなくなり、出口探しを再開するが、明るくなった部屋の中を調べても何も出てこない。
どうしたものかと考えていると、小さな穴から先ほどの動物が仲間を連れて戻ってくる。
それも半端な数ではない。百は軽く超えているだろう・・
「うっ・・(これは・・あの子だけだったら、良かったですけど・・)」
ここまで数が揃うと、個体の持っている悪臭が弱くても十分脅威となるだけの匂いへとなる。
そのためキューティー・コロンは匂いから少しでも逃れようと鼻を覆って動物の群れから離れようとするが、
先ほどの一匹が先頭となって、キューティー・コロンに向かって群れを率いてくる。
「だ、だめですっ!こっちにきたら・・・んぅっ・・!」
百匹以上の可愛い小動物に囲まれる・・これが普通の状況なら良いのだろうが、悪臭を発する動物なら話は別。
いくら拒否してもいなくなるどころか、どんどんキューティー・コロンに集まっていき、
次第には足元だけでなく、体によじ登る者も出てくる。
「(こ、こうなったら『フローラル・シャボン』で・・・でも、もしこの子達が悪臭モンスターと同じだとしたら・・」)」
コロンの攻撃を受けた悪臭モンスターは浄化される・・それが頭をよぎると、キューティー・コロンを躊躇させる。
しかし、そうしている間にも動物たちは体をよじ登り、キューティー・コロンの体のあちこちに動物がしがみついている状態になっていく。
「(すこし・・少しだけでも空気を・・・)すぅ・・げほっごほっ・・・ぅ・・うぅ・・」
呼吸が苦しくなり、わずかに息を吸おうとしても、周りの空気は動物たちの匂いに支配されてしまい、
キューティー・コロンはただむせ返るだけで、ほとんど酸素を補給できない・・
ここで、モンスターを引き剥がして逃げれば、わずかだが新鮮な空気が吸えるのだろうが、
動物たちには悪気がない・・という彼女の優しさがその選択を避け、ここまで自分を追い込んでしまっているのだ。
しかし、動物たちはその愛情に気づいているのか気づいていないのか・・キューティー・コロンに頬ずりしたり、
舐めたりと純粋な瞳を向けているだけである。
ただ、それだけならよかった。あまつさえ、集団の中の一匹がおならを漏らしてしまう。

ぷう・・・・ぶっ ぷすぅ ぼふっ すうぅ プー ブホッ

一匹のオナラに釣られ、集団全体がオナラを漏らし始める・・こうなると、密室だった空間は一気にガス室と化す。
「っっ!??(お・・オナラ・・・しまっ・・まだ息をしてなかったのに・・・)」
360度見渡しても、完全に黄色く靄のかかった室内。もしこの状態で息をしてしまえば、
先ほど以上にダメージを負うことは確実である。
そのため、キューティー・コロンはまだオナラで室内が満たされていなかったころに呼吸しなかったことを後悔する。
「(・・・さ、さすがに・・息が・・続かなくなってきました・・・・そ、そろそろ・・・)ぷはぁっ・・!っ?!!!!?あぅっ!!?」
キューティー・コロンが耐え切れなくなってとうとう空気を吸い込んでしまう。
しかし、彼女が呼吸を耐えていた間も動物たちはガスを漏らし続けていたため、その匂いは想像を超えるもの・・
一嗅ぎで膝がが崩れ、鼻を覆って蹲る。しかし、このままではいつ気絶してもおかしくない・・

「もー!世話が焼けるんだから♪・・その子達は浄化なんてされないよ!!」
キューティー・コロンの絶体絶命のピンチのとき、天井の一部がはずされ、その上からアドバイスが出る。
「っ!?(この声・・いえ、それより・・・)ふ・・・ごほっ・・げほっ・・・・『フローラル・シャボン』!!!」
声の主に気を取られるが、心配事が消えたキューティー・コロンはオナラに苦しみながらも『フローラル・シャボン』を繰り出す。
掛け声とともに現れたシャボン玉は、汚染された部屋の空気と動物たちをその中に拘束する。
「ごめんなさい・・でも、必ず助けに来ますから・・それまでその中で我慢しててください」
ほとんどのオナラをシャボン玉の中に収めたため、普通に話すことができるようになったキューティー・コロンは、
動物たちに謝ると、天井から下ろされたロープを上って声の主の下に向かう。
「探したんだよ?お姉ちゃん♪」
「やっぱり、みくちゃんだったんですね・・」
最終更新:2008年12月21日 23:12
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