なんでも屋(仮名)(1)

「あっ!その白 カンっ!」
私の名前は、アイシラ。
そして声の主である黒髪の女の子がクロエ
何故か、私はクロエに誘われて2人麻雀をしている
「・・で、何で麻雀なの?」
「だって、ここの事務所でゲームって麻雀しかないんだもんー カンっ!」
「ま、いいけど・・・って!何で白が8枚もあるのよっ!」
「ふっふっふー!8枚じゃないんだなぁ~こ・れ・が♪ カン! 更にもういっちょ!」
「・・・・・」
「そして、トドメ!ツモ 天地創世(ビギニングオブザコスモス)!」
麻雀を良く知らない私でもわかる
この子はイカサマを通り越して、アホをやってるのだと・・
「どーだっ!言葉も出ないだろー」
「そうね・・呆れて物も言えないって、こういう事を言うのね・・」
(コンコン)「あ、あの・・・」
不意に響いたノックの音に顔を向けると、扉の向こうには白髪の女の子が立っていた。
先程の事でクロエが不満顔をして何かを言っているが無視して、私はお客さんへの対応へあたる。
この怪しい何でも屋に訪れてくれた大事なお客様なのだから
「ようこそ、香月事務所へ 私はアイシラ こっちはクロエ・・それで、ご用件は何かしら?」
「え・・えっと、ここは何でも屋・・さんですよね・・?」
「そう、何でも屋・・物理的に不可能な事でなければ、報酬次第で何でもやっちゃう所」
「良かったぁ・・えっと、実は私の家・・この近くにあるんですけど、隣の部屋から・・時々、酷い匂いがして・・眠れなくて・・」
「でも、お隣さんに言い出す勇気は無いと・・おっけー、それ位お安い御用よ・・えっと?」
「あ、ごめんなさい!シオンと申します。」
「よろしく、シオンさん」
私が抱いたシオンさんへの第一印象は気弱で可愛い女の子 クロエとは別の意味で妹みたいな人だった
きっと、私より年上なんだろうけど それはそれとして気にしない
印象なんてものは、実際とはかけ離れがちなものだ 幻想やまやかしと思った方が正しい見解だと私は思っている。
まあ、それはそれとして 私とクロエは問題のシオンさん宅へとお邪魔する事になる
「今の所は、何の異常も無いみたいね・・」
シオンさんも言っていた通り、悪臭が発生するのは時々であって 今は、その発生時間では無いらしい
そう思っていた私達は、安心して案内された部屋で寛いで居た。
そして、数分が経過すると問題の物なのか 鼻を燻る悪臭が漂い始める
「シオンさん、悪臭というのはこれの事?」
でも、シオンさんの言うような眠れない程ではない 悪臭と言えば悪臭だが匂いの程度は薄く
気にしなければ問題無く、眠れるレベルのものだった。
「い、いえ・・この匂いは・・きっと、ちがいます・・」
「じゃあ、これは・・?」
「えへへ・・・ごめんなさい・・・」
クロエが匂いの原因について追求を始めようとしていた私達に照れ笑いを浮かべると急に謝る。
一瞬、何の事なのか理解できなかったが 次第に理解し始める。
シオンさんは、未だにわかっていないみたいで、首を左右に傾げているけど
人体から突然発せられる悪臭 その原因なんて物は、数えられるほどしかない
そして、この状況とクロエの性格を少し考えてみれば答えは導き出せる。
何の事も無い クロエの「すかしっぺ」だ。
答えが出た時には、怒るのも億劫なほどに疲労してしまった。
「ごめんねっ!本当にごめんね!」
そして、こういう時のクロエは真面目だ
何度も何度も、私やシオンさんに謝る 責めるのは可哀相なくらいに謝り倒す
「あ・・あの・・そんな、生理現象ですし・・気にしてないですから・・・」
「ほら、クロエ シオンさんもこう言ってる事だし・・顔をあげて、泣きそうにもならなくていいから」
「う、うん・・・ありがと、アイシラ・・シオンさん」
これで、とりあえずクロエの問題は解決 次は本題に入るのだけれども、シオンさんの言葉通りに悪臭が発生するのは「時々」 週に1~2度の頻度なのらしい。
そして。聞く所によっては、前回悪臭が発生したのは3日前 今日、依頼を解決する事は出来なさそうだ
「うぅ~・・ん・・アイシラぁ~・・・もう・・ねむい・・ふあぁぁ・・よ~」
クロエが言うのも無理は無い 「もしも」を考えた私達は午前3時まで起きているのだから
「ふぅ・・・そうね、今日は寝ましょうか」
「あ・・あの、ベッド良かったら・・」
「いえ、私は良いわ ああ・・シオンさん、もし良かったらクロエと一緒に寝てあげて下さい あの子、1人だと眠れない子なの」
シオンさんの使っているベッドを3人で使うのは、とてもではないが無理だ
いや、2人でも狭いかもしれない でも、クロエはちゃんとしたベッドで寝かせてあげたいし、持ち主であるシオンさんも当然ベッドで眠るべきだ 悪臭の件もあって寝不足気味でもあるだろう。
「でも・・・アイシラさんは・・・」
「私は平気 そうね、客間のソファーを借りてもいいかしら?」
「え・・は、はい・・良いですけど・・」
「ありがと、おやすみなさい」
私は、もう一度シオンさんに呼び止められる前に部屋を出た。
客間には誰も居なかった 勿論、それが当然だ 誰かが居たならば、それは大問題になる。
シオンさんは一人暮らしで、クロエは9割9分眠っていたからだ
でも、この時の私は部屋に居る何かを感じ取っていた
「・・・アホらし、寝よう・・」
私は、疲れて幻覚か何かを見たのだろうと心を落ち着かせるとソファに身を任せた。
深く沈むソファに優しく抱かれているような感覚を覚えながら、私は眠りに落ちていった。
その時居た何かが、この後の事件に大きく関わる事を 私は・・いや、私達は、まだ知る由もなかった。

今朝の目覚めは最悪だった。
それというのも、この悪臭で目覚めさせられたのだ
「むぅう・・・だ、だれか・・まど・・うきゅぅ・・」
シオンさんが眠れないと言ったのも、納得というよりも、これは酷い 近所迷惑というレベルを遥かに超える悪臭だ
正直、本当に死ぬ・・・
「(ダダダダッ)けほっ・・アイシラさん、大丈夫ですか!?」
意識も朦朧とし始めた中で、シオンさんの声を聞くと同時に何かを口と鼻に当てられる
「酸素・・缶・・?・・・助かったわ・・ありがとう、シオンさん」
新鮮な酸素を取り込みながらも、未だに鼻の中に残っている悪臭が不快感を生んでいる。
もし、この酸素缶が無ければ なんて、考えたくも無い事だ
「そういえば、クロエは?」
「えっと・・クロエさんは・・・まだ、眠ってます・・」
この悪臭の中を眠っている?
今だけは、クロエの図太さを羨ましくも思った。
「そう・・平気ならいいの・・でも、この匂いは酷いわね 近所迷惑とかってレベルじゃないわ・・少し行って来る」
「どこにですか・・?」
「勿論、依頼された事をやり遂げに隣の家へ・・」
「・・・今は止めておいた方が良いと・・思います・・外・・もっと酷いですから・・」
もっと酷い?これより? それこそ考えたくもない
でも、シオンさんが言うのならば間違いの無い事なのだろう
「そ、そう・・・じゃあ、匂いが引いてからね・・」
「はい・・多分、30分もすれば匂いも消えちゃうと・・思います」
それから何本目かの酸素缶を消費した所で、缶を使用しなくても匂いが気にならない程度まで薄まって来た
「もう・・大丈夫みたいね・・」
まだ若干の悪臭は残る物の我慢出来ないほどではなくなった
シオンさんも同じように缶を手放すと、私達は2人隣の家へと向かった
クロエはどうしたかって? まだ、眠っているみたい。
「これは・・・豪邸・・?」
シオンさんが今まで何も言えなかったのが、ここでようやく解決した。
私だって気圧されるような大豪邸だ
でも、ここで引く訳にはいかない あの悪臭を体感してしまったのだ
「(ぴんぽーん・・)意外と普通な呼び鈴ね・・」
「・・・普通じゃない呼び鈴ってどんなのでしょうか・・」
シオンさんは気を使って聞こえないように言ったのだろうけど、はっきり言って筒抜けだった。
でも、言い咎めるような私ではないし 何よりも目の前の問題を解決すべきだ。
だが、豪邸の主達は姿を見せる気配はない
「居ないのかしら・・・? (キィ・・)」
疑問を抱きながら門を押すと、簡単にそれは開いた
「無用心ね・・・でも丁度良いわ、確かめましょう」
「え、でも・・いいのでしょうか・・?」
「これだけの悪臭を撒き散らしておいて、居留守なんて通用しないわ・・それに、ここまで来て引き下がれないもの」
絶対に誰か居るという確信はあった
でも、不法侵入には変わりない シオンさんを連れて行くのは戸惑われたが、1人は正直不安だったりもした
結局は、2人 大豪邸へと侵入 全く人気の無い廊下を歩いていく
「おいっ!お前達、そこで何をしている!?」
油断していると突然、誰かに呼び止められる 声の主は女性のようだったが、凛々しい響きに思いっきり驚いた
「(ビクゥ!)そ、それは、こっちのセリフよ!朝っぱらから、あんな悪臭させてっ!」
それでも引く気は無い あくまで強気に私は打って出る
「お前達、あの悪臭を調査しているのか?」
「え・・?」
女性の雰囲気は、正に問答無用だったが悪臭の一言で雰囲気は180度の変化を見せた
「実は私達も困っていたのだ ああ、申し送れた 私はここでメイドをしているクリスだ」
クリスと名乗った女性は冗談にもメイドには見えなかった、どっちかというと王宮騎士のようだ
だけど、茶化すと怒られそうなのでそれは黙っておこう
「私はアイシラ 何でも屋よ そして、こっちはシオンさん 依頼主であり、ここの隣に住んでいるの」
シオンさんは礼儀正しくお辞儀をすると、クリスも同じように返した
うん、あの姿勢の正しさはメイドだ
「隣に・・そうか、迷惑を掛けたな・・」
「あ、いえ・・そんな・・」
「そうか・・隣に・・ならば・・いや・・でもな・・うーむ・・」
「・・・?」
独り言を始めたクリスに私達2人は首を傾げた
「今回の不法侵入は大目に見よう それと、悪臭の調査を行うのであれば屋敷への出入りも自由とする」
「いいの?メイドであるあなたがそんな勝手に決めて・・」
「我が主は、悪臭が原因で寝込んで居てな・・今は臨時で私が全権限を受け持っている 悪臭の原因を突き止めた際には私から報酬も出そう」
「・・・その話乗った 私にとってはこれ以上に無い条件だわ 任せておいて」
家の中をうろつき回るのを渋られず、更に報酬の上乗せなんて蹴る理由は無い
私は、クリスにシオンさんを任せると早速調査にあたる
クロエはですって? 起こすのは可哀相じゃない
調査はいきなり難航を示した
何しろ痕跡が無い、今朝あれだけ猛烈に漂っていた悪臭が綺麗さっぱり消え去っているのだ
でも、それで1つ導き出された答えもある
これは自然に起きている物ではなく人為的な物の可能性が高いという事だ
何故そう言えるかは匂いの消え方にある
少し今回の事を私の考えも添えて述べよう
『まず第一に悪臭の発生時期 これは最初が1ヶ月前であり、そこからは不定期に1週間に1~2回程度
 そして、悪臭の発生時間 これは毎回30分~40分程度と決まっているらしい
 この事から、発生する回数や時間が自然に起こった物と考えるよりは人為的に起こされていると考えた そういうのも、匂いの濃度が発生時間均一して一定である事 自然に起こった物であれば、薄まったり、濃いくなったりもするはずだ
 そして発生時間や回数 これは余りにも一定数を保ち過ぎだ 自然に同じ回数 同じ時間になっているとは、どうしても考え難い
 最後に匂いの消え方だ
 これは誰かが消臭剤のような物を撒いているとしか考えられない、あれだけの悪臭だ 繊維質の物にはたっぷりと染み込んでいて不思議は無い それにも関わらず、全く以って匂いは残っていなかった」
と、以上の事を考慮して、再び調査にあたる
まずは怪しい人物の聞き込みから始めよう。 手始めにクリスから
「ふむ・・怪しい者か・・いや、心当たりはないな・・」
まあ、期待はしていなかったし、しょうがない もし、心当たりがあったとしたら犯人は地下牢にでも入れられているでしょうし・・ 気を取り直して、シオンさんにも聞き込みを行う
こういう事例は得てして近くに答えがあったりするものだ。
「怪しい人・・ですか・・?う~ん・・・ごめんなさい、力になれそうにはありません・・」
心当たりは無しと、そんなに上手く行かないわね
念の為、屋敷に居た全員にも話を聞いてみたが 心当たりは無し
つまり、犯人は表立っての行動をしている可能性は低い どこかへ潜み、悪臭を漂わせている
安直な答えで、解決する為のヒントにすらならない考えだが、そう答える他無い
「・・・怪しい場所をしらみ潰しするしかないわね・・・怪しい場所・・?」
あるじゃない・・唯一、誰にも見つけられない守られた場所が・・
「クリス、1箇所調べてみたい部屋があるのだけど・・いいかしら?」
「ああ・・構わないが、どうして今更再確認するのだ?」
「そう・・じゃあ、調べさせて貰うわね 屋敷の主の部屋を・・」
「っ!?貴様、我が主を疑っているのかっ!?」
予想通りの反応をありがとう でも、
「違うわ・・この屋敷内で怪しい人物を見たと言う人は居なかった そして、誰も嘘をついていないという前提で話をすると・・まず、誰もそういう人を見てないというのはありえないのよ これだけの人数よ?下手な監視カメラよりも、ずっと信頼出来る情報だわ そう考えると、どこか見つからない場所に犯人は潜んでいるのよ・・そして、一番安全な隠れ場所は・・」
「・・・主の部屋か だが、私は主のお世話をしている もし、誰かが潜んでいるのならば・・」
「そうね・・あなたは優秀よ、一部の隙も無いもの・・でも、だからこそ「潜む」必要はないのよね」
「・・・どういう事だ?」
「簡単な事よ、悪臭を発生させたい時だけ、「お世話」をすればいいんだもの・・ね、犯人さん?」
クリスは笑っていた。
でも、その笑みは可笑しいから零れたものではない冷たい笑みだった
「ふふ・・なるほど、大胆ながらも素晴らしい答えだ 確かに犯人は私だ」
「どうして、こんな事をしたの?」
「・・・教えた所でどうなる?もう、私は奥の手を隠す必要はないのだぞ?」
      • しまった、抵抗される事とか考えてなかった。
「では少し眠ってもらおう・・・」
クリスは小さな玉を取り出すと手の平から零し、床へ落とす
床へ落ちた玉が破裂すると同時に、私は意識を失っていった。

「う・・うぅ・・・」
鼻の奥が重い どうやら、私の体は悪臭に耐えられず匂いを感じるよりも早く気を失ったらしい
そして、今頃になって悪臭が響いている
「くさ・・いぃ・・・うぅ・・」
「目を覚ましたか だが、暫くはそうして居て貰うぞ」
「っ!んっ!!ケホッ・・・私を・・ぅ・・どうする・・つもり・・?」
悪臭で精一杯だったが、クリスの声で自分が鎖に繋がれている事に気付く
「どうもしないさ、私が復讐を果たすまで、そこでじっとしていればな」
「復讐・・?何の事?」
「ふっ・・お前には関係の無い事さ」
聞いた所で、どうなる物でも無いけども クリスという人物を動かす復讐心
気になるわね・・
「とぉー!!正義の味方クロエさんじょう! アイシラ、媒介持って来たよ!」
「クロエー!そのまま、こっちに・・」
(カンっ・・こん・・こん・・)
「・・・・・」
クロエの持って来た媒介は虚しい音と共に床のどこかへと転がっていく
そして、クロエ本人もクリスに捕まり鎖に繋がれる
「・・・ねえ、クロエ あなた何しに来たの?」
「アイシラを助けに来たに決まってるじゃん!」
「助けられてはいなさそうだな・・」
クロエの間抜けさにクリスまでもが突っ込みを入れる
「まあ良い・・余りおかしな真似をするなよ?あのシオンという少女がどうなっても良いと言うなら別だがな」
「なっ!?シオンさんは関係無いじゃないっ!」
私の大声にもクリスは振り返らず、部屋唯一の扉から姿を消す
「クロエ・・媒介はもう無いの?」
「うん・・1個だけ・・」
「はぁ・・何で投げたのよ・・」
「こうぼーも素で謝るだよっ!」
      • はい? 誰がそんな言葉を教えたのよ・・それに
「全然違うわ・・それを言うなら弘法にも筆の誤りよ・・そして、クロエ あなたには、この言葉はあわないわ」
「どーしてだよぉ?」
「だって・・あなた元々ノーコンじゃない?」
(ぴろーん 『クロエは 称号:ノーコン を獲得した』)
「・・・何か出たんだけど・・」
「気のせいよ」
「どうやって脱出するかしらね・・」
両手両足は鎖に繋がれている
頼みの綱である媒介は、何かの物陰に隠れていて見つける事も出来ない
出口は2箇所 出入り口である扉と小さな小窓
ただ、そのどちらも鎖の届く範囲ではない
「んしょ・・んしょ・・」
「ん?何をしてるの?」
(グギッ!)
「ふぅ・・抜けれたぁ~」
無口だと思ったら、関節を外そうとしてたのね でも、これで突破口が見えたわ
「ナイスよ、クロエ 媒介を探して」
待っていなさいクリス
ここから、私達の反撃(ターン)よ!
「媒介あったよーアイシラ」
これでここから脱出出来るわ
「ふむ・・見張りをつけていて正解だったな・・」
「あはっ♪逃げられると思ったのぉ?」
「クリス・・!クロエ、媒介を外に向かって投げなさい!」
「え?う、うん!とぉおおおりゃああ!!」
クロエ、あなたは加減を知りなさい
でも狙い通り・・
「ナイスノーコンよ!」
媒介であるリングは私の方へ向かって飛んでくる
「ノーコンっていうなぁ!」
「くすくす・・2人くらいで勝てると思ってるのぉ?」
「あら・・?あなた達こそ、2人程度で「私」に勝てると思っているの?・・・そうだとしたら、余程おめでたい頭をしているようね」
「クリス様・・こいつ殺して良い・・?」
これ位の挑発で怒ってくれるなんて、扱い易い子ね
「いや、魔術師が相手ならお前では分が悪い ルゥ、お前はクロエの方をやれ」
「はぁ~い・・(クリス様がやった後で臭殺してやる・・)」
「では、いくぞ? 大人しくしていなかった事を後悔するが良い!」
鎖を引き千切った所で、私の体はクリスに押し倒される
このスピード、確かに魔術師殺しだわ
「媒介があっても詠唱しなければ魔法は使えまい・・」
何をするのかは知らないけれど、媒介さえあれば・・・
「んっ!?(お尻!?しかも、履いてな・・んああああ!!くっさぁぁぁい・・)」
「ふふっ・・あの玉の原料を知っているか?」
「んむむぅ・・(あの玉?・・私が気絶させられたやつの事ね・・)」
「知らんようだな・・では、教えてやろう」
(プウウウウッ!!)
「むああっっ!!!?・・・・ん・・ぅ・・ぅ・・・」
「もう、ギブアップか? この程度では魔術師としての位も知れているな」
好き勝手言ってくれるじゃない・・
でも・・
「その言葉は勝利を目前にして言うべきでは無いかしら?」
簡易転送に幻術
どちらも初級の魔術だけど、組み合わせれば便利なコンボを作れるのよね
「なっ!?いつだ!いつ入れ替わった!?」
「何時って・・押し倒されてすぐに決まっているじゃない・・クロエ、捕まえて・・」
「りょーかい、アイシラ!」
「クロエ!?では、私があれを嗅がせていたのは・・」
「ふえぇ・・・クリス様・・ひどぉ・・い・・・」
「少し仲間割れして貰ったわ・・じゃあ、「後悔」してもらうわね? この程度と言ったフラウディア家の魔術で!」
かくして、悪臭事件は解決しクリスの復讐は未完のまま終結した。
クリスを突き動かしていた復讐心の元凶へ辿り着く事は出来なかったが、後になって解決した事を屋敷の主から聞いた。
そのクリスも今では、一メイドとして屋敷で再び働いているらしい その表情は前にも増して輝いて見えた
何はともあれ依頼は解決した。
この香月事務所も、また暇で平和な日々が流れるだろう
「アイシラぁぁぁ!!でっかい依頼入ったよっ!!!」
      • どうやら、暇も平和な日々も今回ばかりはお預けのようだ。
「準備しなさい、クロエ 気合入れていくわよ?」

                 -1話 アイシラ編 End-
最終更新:2009年02月25日 01:08
ツールボックス

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