香水戦士コロン(7)

それから少し前・・キューティー・コロンとプリティー・コロンはと言うと・・
いまだに気を失ったままのキューティー・コロンにプリティー・コロンがずっと付き添っていた。
あれから、二人は敵に発見されることを避けるため、使われていない研究室に入り込んで体力回復を図っていたのだ。
「っ・・う・・・ん・・・・・・みく・・ちゃん・・・?」
「っ?!お姉ちゃん、そうだよ・・みくだよ」
意識を取り戻したキューティー・コロンの呼びかけに答えるプリティー・コロン。
もし、このままお姉ちゃんが目を覚まさなかったら、それは私の責任だ――
絶対にありえないことだが、そのことが頭をずっとよぎっていたため、
その表情は安堵に満ちており、目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
「よかった・・よかったよぅ・・・ふえぇぇ・・・・」
「??・・・ごめんなさい。心配かけちゃいましたね・・」
最初はプリティー・コロンの涙の理由がわからなかったが、自分に抱きつくその姿を見て気づいたのか、そのままの状態で謝る。
「ぐすっ・・うぅん・・すっ・・・お姉ちゃんは悪くないよ・・・悪いのはみくだもん・・」
責任を自分ですべて背負い込んでしまい、すっかり落ち込んでしまった様子のプリティー・コロン。
しかし、キューティー・コロンはこれに困った表情を見せることなく言葉を続ける。
「でも、やっぱり謝らないといけませんね。みくちゃんを泣かせてしまったんですから」
「お姉ちゃん・・・」
この言葉で少しは気も落ち着いたのか、プリティー・コロンの表情は晴れる。
そして、ゆっくりと立ち上がりキューティー・コロンに手を差し伸べる。
「行こっ!レイナ先輩が心配だよ」
そう、プリティー・コロンにとってももうひとつの気がかりであるピクシー・コロン。
彼女が無事でいるまではプリティー・コロンの心配がなくなることはなく、一刻も早く探し出そうとしているのだ。
「そうですね・・でも、何処を探せば・・・」
探すと言っても落とし穴に落ちたピクシー・コロンが何処にいるかなど見当が付かない、
その上、移動している可能性もあるのだから、探し出すのは余計に困難である。
キューティー・コロンはそのことで考え込んでいるが、そこにプリティー・コロンが話しかける。
「レイナ先輩のいるところ、わかるかもしれない・・・」
「ほ、本当ですか?!一体、何処なんです?」
「ゼッタイとは言えないけどぉ・・うんっ♪付いてきて」
100%と言えずとも、高い可能性でそこにいるとなると一刻も早く合流しないといけないと、
プリティー・コロンの案内で走り出す。


そして、二人がたどり着いたところは不自然なまでに大きな扉の部屋・・つまりピクシー・コロンのいる部屋だ。
「付いたよ。ここにレイナ先輩がいるはずだよ」
「・・・・(レイナさん、お願いですから無事でいてください・・・)あ、開けますよ?みくちゃん、準備はいいですか?」
「もっちろん♪早くレイナ先輩と合流して、敵なんか倒しちゃって帰ろ」
扉に手を掛けて、確認するキューティー・コロンに軽い口調で返すプリティー・コロン。
本当はこの中に恐ろしい強敵が控えていて、ピクシー・コロンはすでにやられているかもしれないと予感しているが、
心配はかけさせまいと気を使っているようだ。
年下の気配りに気づいていないキューティー・コロンはそのまま扉を開ける。
「うっ・・臭い・・・」
「あぅっ・・」
まず二人への衝撃はこの悪臭・・ピクシー・コロンも洗礼を受けたこの匂いは、当然二人にも襲い掛かり、
二人は思わず鼻を覆って後ずさりしてしまう。
「(こんなところに本当にレイナさんが・・?と、とりあえず中に入ってみないと・・・)」
そして、中に入った二人の視線に第二の衝撃・・ピクシー・コロンの無残にやられてしまった姿が飛び込む。
不衛鬼はすでにピクシー・コロンから離れていたが、ガスマスクをした研究員と思しき数人が、
彼女の近くで何かを測定している。
「っ?!!そ、そんな・・・レイナさん・・・・」
「(やっぱり・・ごめんなさい、レイナ先輩・・みくのせいでこんな事になっちゃって・・)」
一つ目の衝撃とは比べ物にならない、大きなショックを受けてしまった二人。
プリティー・コロンにいたっては、これが自分の失態によって招いてしまったと思い、顔を俯けて震えている。
「なんじゃあ?!ようやくやってきたかぁ!!・・・ん?お前は・・娘っ子?なんじゃ、もう一度わしと戦うのか?」
「当然だよ・・レイナ先輩をこんなにしたの・・・ゼッタイに許さないんだからね・・」
話しかける不衛鬼に対し、静かではあるが怒りの篭った言葉と、睨みを利かせる。
その隣にキューティー・コロンも並び、不衛鬼を見つめる。
「二対一か!そうじゃないと相手にならんからな!さあ、かかって来い!!」


「言われなくたって・・・『スウィート』・・」
「ちょぉっと待ったぁ!!」
仁王立ちで攻撃を待っている不衛鬼に先制を仕掛けようとしたところで、横から割り込んで来るものが一名。
プリティー・コロンは攻撃の最中であったが、思わず攻撃を止めて声のあった方を向く。
声の主・・それは派手なシャツを着て、唇や鼻にピアスをつけた一見してチンピラのような男だった。
「もうっ!邪魔しないでよぉ!!」
「あ、あの・・ここは危険ですから下がっていてください」
「誰じゃい!?お前はぁ!!」
各々違った反応を示してはいるが、全員がこの男の登場に意表を突かれた様子である。
しかし、男は周りの空気をよそに無言で不衛鬼の元に歩いていく。
常人なら体臭で近づけば気絶・・悪臭にある程度耐性のあるコロンですら近づけば鼻を覆って顔を顰める程なのに、
この男は気絶するどころか眉一つ動いていない。
「あんたが不衛鬼の旦那だな?俺は舌鬼だ。よろしく頼むぜ」
「わしはお前なんぞ知らんぞ!」
「舌鬼は君の仲間だ、不衛鬼。さすがの君でもコロン相手に2対1は辛いだろうと思ってな」
舌鬼が名乗っても気を許しておらず、今すぐにでも攻撃をしようという空気を漂わせているが、
スピーカーからの所長の説明を聞くと、少なくとも敵意はなくなる。
と言っても、いまだに気は許していないが。、
「そういうことだから、旦那。ここは共同戦線ってことにしようや?」
「勝手にせい!!」


「うそぉ・・また敵が増えちゃったのぉ・・・?」
不衛鬼を相手にするには一対一では不利。そう思っていたからこそ、この舌鬼の登場はプリティー・コロンにとって大誤算。
一気に気が重くなり、肩を落とす。
「みくちゃん、辛くなってしまいますけど二人分かれて戦いましょう」
「あぅ・・それはそうだけど・・(お姉ちゃんが心配なんだよぅ・・うぅ・・・こうなったら、みくが不衛鬼と戦わなくちゃ・・・)」
一度染みつけられた恐怖があるため、出来れば一対一では戦いたくなかったが、
自分が受けたような不潔極まりない攻撃をキューティー・コロンには受けて欲しくないという気持ちが大きく、
覚悟を決めて不衛鬼にリベンジを挑もうとする。
「おおっと!そうは行かせねぇぜ?てめえは俺と戦ってもらうんだからなぁ」
しかし、少女の大きな覚悟をあざ笑うかのように、現実は障害を用意する。
不衛鬼とプリティー・コロンの間に舌鬼が立ちふさがったのだ。
「さっきから邪魔ばっかりして~~・・」
「そっちはお願いしますね!私はこっちを」
さらには、心配の種だったキューティー・コロンまでもプリティー・コロンの心配をよそに不衛鬼と一対一に持ち込もうと、
舌鬼が間に入らない角度から不衛鬼と対峙する。
「ぅぅ・・(お姉ちゃんまでぇ・・・じゃあ、いいよっ!みくがこんなやつをさっさと倒しちゃって、お姉ちゃんを助けに行くんだから)」
すべてが思うとおりに行かず、諦めて目の前の敵に集中することにしたプリティー・コロン。
油断だらけであったが、幸い舌鬼は様子を見ていただけだったため攻撃されずにすんだが、
プリティー・コロンに向く舌鬼の視線は様子見を超えているようにも見える。
「ひひっ・・期待通りの上物だなぁ・・こりゃあ、たぁっぷり舐めさせてもらうぜ?」
下卑た笑みを浮かべ舌なめずりをしながらのその発言に、プリティー・コロンは背筋に悪寒を感じる。
「っ!?変な目で見ないで!この、変態!!!」
露骨に不快感を示し、攻撃しようと構えを取ったプリティー・コロンだが、脚にピトッと何かが触れる。
そして、それはゆっくりとプリティー・コロンの体に沿って這い上がってくる。
「っ!?~~~~~!?!!」
その感触の気持ち悪さと言ったら、視線とは比べ物にならない。
全身に鳥肌が立つような感覚に襲われ、プリティー・コロンは身震いする。
彼女にとてつもない不快感を与えたものの正体は舌鬼の舌である。
優に10メートルは伸びたその舌がプリティー・コロンの体をいつでも舐めることが出来るように、彼女の体を囲んでいる。
「お、女の子の体を舐めるなんてぇ・・ゼッッッタイに許さない!!」
「許さなければどうするんだ?ほら、言ってみろ?」
怒りを露にするプリティー・コロンに対し、挑発するような口調で返した舌鬼は、
再び舌を動かして今度はプリティー・コロンの顔を舐め上げる。
「○;$Σ‡Ю≒?!!!?!!」
顔にべっとりと涎を塗りたくられ、先程以上の不快感と衝撃に顔色の悪くなったプリティー・コロンは硬直してしまう。
しかし、すぐに硬直が解けてその場にへたり込む。
「ち、力が・・・抜けて・・立てないよぅ・・・」
「どうよ?俺の嘗め回しは・・気持ちよかったろ?」
行動不能になったプリティー・コロンに歩み寄り、舌を見せ付けるようにして尋ねる。
気持ち悪いからこうなっているのであって、気持ちいいなど絶対にありえない。
たつことはできなくても、プリティー・コロンは睨み付けることで抵抗しようとする。
「気持ちよかったわけないよっ!!すっごく気持ち悪かったんだから・・・うぅっ・・思い出しただけでまた・・」
口に出したことであの感触が蘇ってきたのか、良くなりかけていた顔色がまた悪くなり、ブルブルッと体を震わせる。
「感触だけじゃないぜ、俺の舌はよぅ・・・ほら、そろそろ・・」
「え・・?っっ?!!く、くさああぁ・・なに、このにほい・・」
舌鬼の言葉に首を傾げるが、直後に悪臭が鼻を刺激する。鼻をつまみ匂いの正体を探すが、体の匂いを嗅がされてもなく、オナラをされた形跡もない。
「ひひっ・・このまま、涎まみれにしてやるよ」
「?!もしかして、この匂いって・・・や、やあああぁぁぁっ!!!」
涎というワードを聞いて、この悪臭が舌鬼の涎が乾いたために発生したものだと気づいたプリティー・コロン。
しかし、気づいたところですでに遅く、長い舌によって体を絡め取られる。


「やだっ・・!そこは・・だめぇ・・っ!!」
プリティー・コロンを絡め取った一本の舌は、わずかにスライドすることで彼女を不快感の地獄に落とした。
全身に走る言葉に出来ない感触。それが、敏感な場所ならなおさらダメージは大きい。
しかし、舌鬼はそれを知ってかプリティー・コロンを弄るように舌を動かし続ける。
「へへへっ・・気持ち言いのかぁ?気持ちいいよな?表情に出てるぜぇ」
「ち、違うもん・・気持ちよくなんかぁ・・んっ・・っ・・・!」
屈辱・・いや、かつてない恥辱に顔は赤くなり、目には涙が浮かびつつも、舌鬼の言葉に折れることなく必死に耐える。
だが、いくら耐えても舌鬼の責めは収まることはなく、舌は全身を満遍なくなぞっていき次第にプリティー・コロンの全身が涎に塗れる形となる。
「おう、こりゃあ涎も滴るいい女だな!」
「も、もう・・許してよぅ・・・ぐすっ・・」
全身から涎をたらしているプリティー・コロンに侮辱に取れる言葉を投げかけると、涙を流しながらプリティー・コロンは懇願する。
涎の悪臭は確かに強いが、不衛鬼の悪臭と比べたら軽いものである。
そのため、肉体的ダメージはたいしたことないかに思われる。しかし、精神的なダメージが大きすぎる。
こうなると、悪臭が多少弱くとも十分に彼女にダメージを蓄積させていくことが出来るのだ。
「おっ、いい表情するじゃねえか?でも、お前が俺を満足させるまでは離さねえよ」
「そんな・・(お姉ちゃんを助けに行かないといけないのに・・・)」
プリティー・コロンを拘束したまま何をするのかと思いきや、ただ彼女を宙吊りにしてひたすら体を舐めるだけ・・
これでは、今までとやっていることが変わらない。
しかしそれでも舌鬼はプリティー・コロンを舐めつづける。彼女が見せる反応をじっくり楽しむためだ。
下手に気絶させてしまっては反応など返ってこない・・責めすぎて混乱ししまってもいけない。
舌鬼は、相手が自分の攻撃に不快感と恐怖心を抱き表情をゆがめ、悲鳴を上げるところが見たいのだ。
そのためプリティー・コロンの苦しみはしばらく続くことになる。


時間は少し戻り、プリティー・コロンとキューティー・コロンが舌鬼の登場によって分断され、
一対一になったところ・・
「(隙がありません・・何処から攻めれば・・・・それに、レイナさんを倒した相手に私一人で戦えるんでしょうか?)」
先程、プリティー・コロンにそちらは任せたと言ったのだが、自分の方はというと目の前の強敵の威圧感に押されてしまい、
なかなか攻撃に転じることが出来ずにいた。
「なんじゃ?!そっちから来んなら、わしから行くぞ!・・すううぅぅぅぅ・・・ぷはあああああぁぁあぁ」
その様子を見ていた不衛鬼も、これ以上の待ちは無駄と判断して攻撃に移る。
大きく空気を吸い込んでからの口臭攻撃。以前、プリティー・コロンに対して使ったときには
大きな効果を発揮した汚染の風がキューティー・コロンに襲い掛かる。
「っ・・?!フ、『フローラル・シャボン』!!」
戦いから意識が外れていたこともあって反応は遅れるが、何とか間に合いシャボン玉に汚染された風を閉じ込める。
危なかった・・敵に先制を許してしまえば、底からどんどん攻められてしまうかもしれない。
そのため、先制を防いだキューティー・コロンは安堵の息を吐く。
「ぐぬぅ・・・わしの息が届かないとはのう・・」
ダメージを与えるどころか、攻撃がシャットされてしまった不衛鬼。
確かに、あのシャボン玉がある限り、息であろうとオナラであろうとすべて閉じ込められて彼女には届かないのだろう。
見た目とは裏腹に冷静に戦況を見ている不衛鬼は、シャットされない攻撃方法に変える。
「へ・・?きゃあっ!!?な・・何、してるんですか?」
突如不衛鬼の取った行動を目にしたキューティー・コロンは悲鳴を上げると、両手で目を覆う。
と言っても、完全に覆ってしまうと攻撃してくださいと言っているようなものなので、視野を極力必要最小限に抑えて前を見る。
「見てわからんか?!キ○玉袋を掻いとるんじゃ!」
「そうじゃなくて・・・その・・なんでそんなことをしているのかを聞きたいんです」
大声で言い張る不衛鬼に、もう一度顔を赤く染めながら尋ねる。
「それはのう・・こうするんじゃ!!」
少し間を空けた後、ズボンの中に入れていた手を出すと、
股間や尻の匂いがたっぷり染み付いたそれをキューティー・コロンに向かって突き出した状態で迫る!
巨漢に見合わぬ速度だ。
「っ?!・・・シャボン玉が気にならないんですか?」
しかし、その速度はあくまで巨漢に見合わぬものであって、一般的に見て決して早いとは言えない。
キューティー・コロンは危なげなく回避する。
だが、キューティー・コロンにとって攻撃自体よりも攻撃までの過程が驚きだった。
不衛鬼は突進の最中、いくつものシャボン玉を割っていた。悪臭モンスターを浄化する効果を持ったシャボン玉をだ。
それなのに、不衛鬼はわずかに表情が歪んだだけでそれ以外に変化がない。
これは、『フローラル・シャボン』が通用しないということだ。
「当たり前じゃ!まあ、ちっとは臭かったがな」
「そんな・・」
自分ひとりでは勝ち目がない・・そう思ったとき、頼みの綱のプリティー・コロンの悲鳴が響く。
「っ?!みくちゃん!!?」
「隙ありぃ!!!ようやく捕まえたぞ・・まったく!ちょこまかしおって」
「ん”っ!?んんぅ~~~!?!!?(く、くさあああぁぁぁぁい!!!!)」
プリティー・コロンの心配でわずかに戦いから意識が逸れたわずかな隙を突いて、不衛鬼はキューティー・コロンを捕らえる。
後ろ手で拘束され、鼻と口を股間の匂いがたっぷり染み付いた手で覆われてしまうと、
その匂いに悶絶し、届かない悲鳴を上げる。
暴れて逃げ出そうにも、圧倒的対格差の上に不利な体勢、おまけにこの悪臭とキューティー・コロンの脱出を妨害する要素が重なっており、
逃げ出すことなど万に一つもありえない。
そんなことは冷静になればわかる。しかし、不衛鬼の悪臭がキューティー・コロンの冷静さを失わせ、無駄な行動へと走らせているのだ。
「わしの匂いをたっぷり嗅がせてやるわ!」
「む・・うぅ・・っ・・・(い・・やぁ・・くさい・・です・・・・放して・・くだ・・さい・・・)」
無駄に動いた分、キューティー・コロンの体力は普通に嗅がされるよりも早く減り、最初は激しかった抵抗が完全におとなしくなっている。
だが、以前不衛鬼の手は離れることがなく、彼女を苦しめ続ける。


「では、屁鬼・・頼んだよ」
「わかった。おれ、マカサレタ」
不衛鬼たちが戦っているとき、別室でスピーカー越しに話してきた所長は誰かと話していた。
しかし、肝心の相手がいない・・所長は「屁鬼」と言ったが、所長よりも大きい屁鬼がそこにいるとはとても思えない。
だが、所長の言葉に対し返ってきた声は間違いなく屁鬼のものである。
そう、よく見るとそこには屁鬼がいたのだ。ただ、以前コロンたちと戦った屁鬼ではない。
羽虫のように小さく、背中に羽の生えた姿・・いわば「小屁鬼」である。
「おれ、あいつコウゲキする」
所長から任を受けた小屁鬼は換気扇の中に入って行き、そこから不衛鬼たちのいる部屋へと目指す。

一方、不衛鬼たちはというと・・
「よおしっ!!そろそろだいぶ嗅いだじゃろう?!」
「・・ん・・ぷはぁっ・・・はっ・・はあ・・はぁ・・・(死ぬかと・・思いました・・・)」
呼吸をするにも、入ってくるのは激臭と言う長い窒息責めから開放されたキューティー・コロンは、
今まで吸えなかった分の空気も一気に吸い込もうと息を荒くする。
「がっはっは!!どうじゃあ?!わしの匂いはぁ!!」
「はぁ・・はあ・・・ぅぅ・・(す、凄い匂い・・です・・・まだ、鼻に残って・・・)」
鼻にこびりついた悪臭をごしごしと擦り取ろうとする。その間、不衛鬼は高笑いをしているだけで攻撃されることはない。

「ここ、アイツいる・・いたっ!」
その間に部屋にたどり着いた小屁鬼。キューティー・コロンを見つけるなり、まっすぐ飛んでいき、小さな体を利用して彼女の鼻の穴の中に入る。
「っ?!(なんでしょう・・鼻に何か入ったような・・・)」
鼻に違和感を覚えるが、仮に何か入っていたとしてもこの場で指を突っ込んで調べることは少女としての恥じらいが妨げとなってしまう・・
そのため気のせいで済ませることにして、再びにおい取りのために奮闘する。
しかし、これが大きな間違いとなる。
「ここでオナラすれば、こいつくるしむ・・・ふっ・・」

ぷぅ

まずは軽いけん制なのか、極々小さなオナラを噴射する。
「っ?!・・・???(臭い・・でも、何ででしょう・・?何もされていないはずなのに・・)」
突然、嗅覚を刺激する悪臭。不衛鬼に攻撃されたわけでないため、原因不明の悪臭である。
この匂いが何であるのかわからないキューティー・コロンは、とりあえず鼻を覆っておけば、
ダメージは抑えられるだろうという安易な考えに至ってしまう。
「ヤッタ。もっと、オナラする・・」

ぶっ、ぶぶっぶううぅぅぅぅううぅぅぅぷすっ・・

効果があるとわかるや否や、ここぞとばかりにオナラを連発。
超至近距離どころではない、超々至近距離からキューティー・コロンの嗅覚を犯す。
「っっ?!!・・くさいっ!!(なんで・・?鼻を押さえてるのに・・)っ?!!あ、あつっ!!~~~~~~!!!?!」
またも襲い掛かる強烈な悪臭。鼻を押さえていた分、匂いは外に漏れることがなくダメージは大きい。
「んん?!!なんじゃい!!いきなり苦しみおって」
小屁鬼の存在を知らされていない不衛鬼からしてみれば、このキューティー・コロンの様子はおかしいと思う他無く、首をかしげる。
しかし、やられているキューティー・コロン本人はこの悪臭の正体に気づくことになる。
決め手は、先程感じた焼け付くような熱気である。
「(も、もしかして・・鼻の中から攻撃を・・?)っ!?!?~~~~~!!!!?(でも、このままじゃ鼻が・・頭がおかしくなってしまいそう・・・)」
ようやく正体に気づいても、対処しようと思考を張り巡らそうにも悪臭と言うノイズによって妨害される。
しかし、この妨害はマイナス方向に働くだけではなかった。
「や、ヤメロッ!あばれるな・・・う・・うわああぁぁ!!!」
苦しみから少しでも逃れようと、キューティー・コロンが無意識に首を大きく振った結果、
鼻の中にいた小屁鬼は外に放り出されることになる。
「くさい・・くさいですっ・・・・??あら?・・臭くない」
絶え間なく続いた悪臭が途切れると、キューティー・コロンは拍子抜けしたような表情を取る。
そして、それと同時に溜まっていたダメージが緊張の糸が途切れたことによってどっと溢れ出し、
両膝から崩れてしまう。
「っ・・はぁ・・はあ・・・(もう・・・限界・・かもしれません・・)」

「ふふっ・・予定とは少し変わってしまったが、ピクシー・コロン、プリティー・コロンに続いて、
これでキューティー・コロンも終わりだ。よくやったぞ、屁鬼」
モニターごしの所長はキューティー・コロンの姿を見て、にやっと笑みを作るとすでに勝ちを確信してモニターを切ってしまう。

「おかしな奴じゃのう!苦しんだり、疲れたりと・・じゃが、動けないのなら攻撃させてもらうだけじゃ!!」
満身創痍のキューティー・コロンに対し、不衛鬼が迫っていく。


「はぁ・・・っ・・(逃げないと・・また、やられちゃう・・・でも・・動けません・・・)」
迫り来る不衛鬼を前に、キューティー・コロンは何とか立ち上がろうとするが、
これまでのダメージが蓄積しており、上半身はかろうじて動かせるが下半身にはまったく力が入らない。
それでも諦めず、上半身だけで地面に這って離れようとする。だが、そんなことをしても無駄だと言うことは本人が一番良くわかっている。
どうせ、すぐに捕まってしまう――
しかし、予想に反してキューティー・コロンは不衛鬼に捕まることなく、10メートルほど移動してしまう。
「??(どうしたんでしょう・・?)・・っっ!!?!きゃああぁぁぁっ!!!」
倒すには絶好のチャンスである今、なぜ捕まえなかったのか、
不衛鬼の謎の行動に疑問を持ったキューティー・コロンはチラッと不衛鬼のいる方向へと顔を向ける。
彼女の視線に入ってきたのは、下半身下着姿の不衛鬼。この予想外にしてショッキングな出来事に当然のごとく悲鳴を上げる。
「まったく!わしの下着姿を見て悲鳴を上げるとは、失礼な奴じゃのう」
「・・・っ・・?!(だ、ダメです・・とてもじゃないけど見れません・・)」
先程、不衛鬼が股間を掻いていたときはまだ前を見れたが、今度ばかりは難しいようで、
目を覆っていた指をわずかに開き覗き見ようとしたところで、すぐに指を閉じてしまう。
「よぅしっ!!準備は完了じゃし、そろそろ行くぞ!!!」
キューティー・コロンが視線の確保に苦労していると、再び不衛鬼が迫っていく。
しかも、今度は途中で何かをするわけでもなく、キューティー・コロンをしっかり捕らえる。
「がっはっはっ!!覚悟せい!!!」
これから何かされる前に逃げ出さなくては――
そう思ったキューティー・コロンは逃げ出そうとするが、すでに遅かったようで・・
「(覚悟・・?に、逃げなくちゃっ・・!・・っ!!?)ん”ぅっ?!!く・・くっさああああぁぁぁぁああああいっっ!!!!!」
襲い掛かる激臭に悲鳴を上げながら苦しむキューティー・コロン。激臭と同時に生暖かい空気が顔や頭に触れるが、
今の彼女の意識は悪臭だけで精一杯のようで気づいていない。
しかし、自分が今どんな状況にさらされているのか、ふと覆っていた目で前を見ると一瞬だけ悪臭から意識が離れる。
そして、その次の瞬間には彼女は声に鳴らない悲鳴を上げる。
「ひっ・・っっっ!!!!!??」
彼女の目の前に広がっていたものは、汚らしい尻・・毛の処理などもちろんされているはずもなく、
まともに洗っていないのだろうその汚れはおぞましいと言えるほどである。
しかし、何より酷いのはやはり匂いだ。
キューティー・コロンの悲鳴が声にならなかったのは単にショックが大きかったからだけではない、
その悪臭のせいでまともに口を開けることが出来なかったのだ。
「(息が・・できない・・・です・・・)んぅぅ~~・・うぅ~~・・・」
不衛鬼のブリーフに頭を覆われてしまい、逃げ場のない状況で何とか匂いから逃れようと息を止め続ける。
幸い、目を閉じるために手で顔を覆っていたため、それが結果的に鼻も覆うことになり鼻への負担は減ったが、
それでもなお尻の匂いは強く彼女の嗅覚を刺激し続ける。


「ぬぅ?!手で顔を覆っとるとは・・往生際が悪いぞ!!」
キューティー・コロンの最後の防衛線である両手の存在に気づくと、すぐさまそれをパンツの中から引っ張り出そうとする。
「っっ?!(手が・・ダメです。この手だけは絶対に離しません・・・・)」
手を引っ張り出されると言うことは、すなわち不衛鬼の尻を顔で受け止めなくてはいけなくなるということである。
当然、何が何でも離すものかと力をこめて抵抗する。

「ぅ・・ぅぅぅ~~・・・(力が・・入りません・・・もう・・ダメ・・・)」
しかし、悪臭に満たされたパンツ内でほぼ無呼吸状態のキューティー・コロンと、ほぼ万全の状態の不衛鬼とでは勝負になるはずもなく、
あっけなく両手を引きずり出されてしまう。
そして同時に、汚れた尻がキューティー・コロンの顔を蹂躙する。
「~~~~~!!!?!!?んむぅ!!むううぅぅ~~~!!!!」
悪臭に不快感まで加わった責めに、キューティー・コロンは目に涙をためながら悲鳴を上げるが、不衛鬼の大きな尻にかき消されてしまっている。

「がっはっはっ!!わしの尻はさぞふろーらるじゃろう?!」
キューティー・コロンを尻に敷いた不衛鬼は、豪快に笑いながら尋ねるが、悲鳴すら届かない今の状態では返答があるはずがない。
それどころか、極限状態に追い込まれているキューティー・コロンには、今の不衛鬼の言葉が耳に入ってすらいない・・
「んぅ・・ぅぅ・・・(くさい・・です・・・それに、意識が・・だんだん遠く・・なって・・・)」
壮絶な悪臭攻めに、キューティー・コロンは限界が近づいてきているようで、体がピクピクと痙攣を始めている。

「がっはっはっはっはっ!!!むぅ?!」

ブホアァッッッッッッッ!!!!!!

笑い続けていた不衛鬼の表情が突然険しいものになった次の瞬間、その豪快な体に恥じない豪快な屁をこく。
その匂いたるや、硫黄の塊を直接鼻の中に入れられたかと錯覚するほどである。
「っっ!?!!?!!?!!・・・・・・・」
「すまんすまん!!するつもりはなかっんじゃがのう!・・・んん?!」
悪気がまったく感じられない様子でパンツの中のキューティー・コロンに謝ると、パンツから彼女を解放する。
出てきた瞬間、むわぁっと悪臭が舞い上がる。それだけ中で匂いが篭っていたのだ。
そして、中にいたキューティー・コロンはと言うと、完全に意識を失っていた。
気絶してもなお悪臭の苦しみから解放されていないのか、苦悶の表情を浮かべており、其の頬には涙の後が見える。


「いやぁ・・気持ち、悪いよぅ・・・」
「ひひっ・・おっ?おい、あっちを見てみろよ?」
プリティー・コロンを拘束した状態で、体中のあちこちを舐めまわしていた舌鬼だったが、
ふと舌を止めて指を向けた方向にプリティー・コロンの視線を向ける。

「あっち・・?っっ?!!お姉ちゃん!!」
素直に指された方向を見ると、視線の先には不衛鬼にやられてしまったキューティー・コロンが倒れている。
「は、離して・・ってばぁ!!!」
それまで力が入らなかったはずの体に力が戻ると、何とか舌鬼の拘束から抜け出そうと抵抗を始める。
「お前は黙ってな」
しかし、いくら力が戻ったところで舌鬼がそう簡単にプリティー・コロンを開放する筈もなく、
またも舌での攻撃によって彼女の力を奪い取る。

「◎д×~~~~~~!!?!?はぅ・・」
舌鬼はプリティー・コロンに止めを刺さんとばかりに、舌にダップリと唾液を溜めてから彼女の鼻を舐め上げたため、
プリティー・コロンの顔からは涎が垂れてきており、鼻の中にも涎が進入してしまっている。
そして、それは瞬く間に乾燥して悪臭を放つ。

「くさ・・・くさい・・よぅ・・・ぅぅ・・・」
不衛鬼の悪臭とは違って強烈ではないが、匂いの発生源が涎のしみこんだ自分の顔であるため、首を振ったところで変化はなく、
鼻を押さえようにも拘束されているため叶わない。
じわじわと毒のように握手が体を蝕み、体力を奪われていくプリティー・コロン。

「んん?!何じゃ、お前。その娘っ子を倒したのか?大したもんじゃのう!!」
「旦那、気が早えぇよ。まだ、終わっちゃいないぜ」
様子を見に来た不衛鬼は、二人の様子を見てもう戦闘は終わっていると判断する。
何せ舌鬼がまったくの無傷なのに対し、プリティー・コロンはいつ気絶してもおかしくない虫の息なのだから、そう思うのも仕方ない。
しかし、舌鬼はここまで勝敗がわかりきっていてもまだ終わらないと、再び責めを始めようとする。

「さぁて・・次はどうしてやろうか・・・?お、そうだ旦那。旦那がやってもいいんだぜ?」
もはや、舐めることが出来る場所はほとんど舐め尽したが、それでもこの目の前の弱りきった少女を責め続けようと、
彼女の体を舐めるように見回す。
すると、ふと思いつき隣にいる不衛鬼に任せることに・・
「わしにじゃと?うぅむ・・」
「え・・?(うそ・・でしょ・・・?不衛鬼に攻撃なんてされたら・・)」
満身創痍の今の状態で不衛鬼の強烈な攻撃を浴びてしまったら、どうなるかなどわかりきったこと。
考え込む不衛鬼を目にして、見る見る青ざめていくプリティー・コロン。
「(や・・助けて・・誰か・・・)」
もはや、キューティー・コロンもピクシー・コロンもいない・・助けてくれる者などいないのだが、
それでも藁をも掴む思いで祈る。

「その子から離れろ!!!」
そこに、思ってもいなかった人物・・一郎が現れる。
漂う匂いを吸い込まないようハンカチで鼻と口を覆いながら、香水のビンを不衛鬼たちに向かって投げつける。
「誰じゃ?!・・ぐわぁ!!何すんじゃい?!!げほっ・・うっ、おえぇ・・強烈じゃぁ・・・」
「何だこの匂い・・?ぁ・・体が透けて・・・・・・・・」
撒き散らされた香水から放たれる匂いも不衛鬼は悶絶するだけだったが、舌鬼はそのまま浄化されて消えてしまう。
そして、プリティー・コロンは拘束から開放される。

「イチローせんせ・・?どうして・・?」
「そんなことは後でいいから、今は逃げるぞ?!」
プリティー・コロンを担ぎ、ピクシー・コロンを担ぎ、そしてキューティー・コロンまでも背負ってその場から去っていく。
一見して無理なことのようにも思えるが、火事場の馬鹿力というものはこういった状況で発揮されるのだろう。
一番驚いているのは一郎だ。

「な、なぜだ?!なぜ侵入者に気づかなかった?!!」
そのころ所長のいる部屋では、所長が周りの所員に責任を問いている。
しかし、この侵入を察知できなかったことは他でもない所長の責任である。
彼が先程モニターを切ってしまったために、監視カメラからの映像まで見れなくなったことが原因なのだ。
「ぐぅ・・天草めぇ・・・とことん私達の邪魔をする気だな・・」

「はぁ・・はぁ・・・ここまで来たらもう大丈夫だな」
無事に研究所を抜け出した4人は、隠して停めてあった一郎の車に乗り込む。
いまだにキューティー・コロンとピクシー・コロンは気を失ったままだが、止めを刺されなかったプリティー・コロンは意識を保っている。
「イチローせんせ・・ありがと♪・・でも、ちょっと臭いよ?」
「仕方ないだろう?あんなところに突入するんだから、私のような常人にはそれなりの対策が必要だったんだ」
一郎の体から発せられる匂いにプリティー・コロンは鼻をつまむ。
それは、一郎が悪臭モンスターの悪臭に当てられないように自分の体にたっぷりと浴びせたコロンの変身用香水なのだが、
量が量なだけあって相当強烈な匂いを放っている。
「くんくん・・・しかも、この匂いはおねえちゃんのだ・・」
「なっ?!ち、違うぞ!決して意識してではない!ただ春菜君の香水が多く作り置きされていたから使っただけだ!!」
からかうようなプリティー・コロンの視線に慌てふためきながら誤魔化す一郎は、視線から逃れようと車を出す。
「(そこまで反応しなくてもいいのに・・)」
プリティー・コロンはそんな一郎の態度に呆れつつ、安心した様子で変身を解いてみくに戻ると、ゆっくりと眠りについていった。
最終更新:2008年12月21日 23:17
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