【竜宮城】

海の底に存在する水をつかさどる世界の中心地。竜の宮(たつのみや)竜の都(たつのみやこ)海宮(わたつみのみや)とも呼ばれる。

海の中に存在すると考えられているものであり、多くは海神あるいは水にまつわる神などがその場の主(ぬし)として存在している。多くの言い伝えに共通する点に、おもむいた者へ宝物(多くは礼品として)を与えるという点がある。

「上は非想の雲の上。下は下界の竜神」*1など、下界(げかい)という言葉が使われたりもする。これは上界(浄土や天道)との対語であり竜の世界が欲界に属するということに由来する。

大海原を示す潮八百重(しおのやおえ)も竜宮の世界の総称として用いられる。

綿津見神宮(わたつみのかみのみや)

「わたつみ」は「海の神霊」の意味で、海宮また海神宮、海童宮*2とも書かれ「わたつみのみや」とも称される。

乾闥婆城

海中の蜃(しん)が発生させる蜃気楼(しんきろう)の中に出て来る城郭や高楼は乾闥婆城の様子が描かれているという。蜃気楼が常に生じる海として、魚津(越中国)桑名(伊勢国)厳島(安芸国)が名高いが、特に厳島は竜宮との関連が深い。

淵や池と竜宮城

海洋以外にも竜宮城は広く繋がっており、各地の淵や池、滝、奥深い井戸などにも、その底や穴の先に竜宮城が存在するという言い伝えが多数存在する。

【光と竜】

海底に住む竜たちは太陽の光を嫌うものだとされる。海底に住んでいるのも、光を避けるため*3だという。

【燕と竜】

特に水中に暮らしている竜たちは、ツバメを好んで食するとされる。竜たちの捕食からツバメを守護しているのが金翅鳥たちでもあり、金翅鳥は竜を喰い殺す。

【神龍(じんりゅう)】

海の深い底に住んでいるとされる存在で、これが大海の潮の満ち引きを起こしているとされる。辰の刻に目を醒まして動きはじめ、子の刻にすっかり眠りに就くとされる。

【無底海・無底谷】

無底谷(無底の谷)というものが地の底には存在しており、川や海の水はすべてそこに流れ込んでいる。もっとも深い大壑である。そのため、無底谷は海の底に存在しており、無底海と称されている。

「地は東南に傾き天は西北に高し」と言われており、地は東南にかたむいており地上の水や塵は東南に向かって流れ込んで行く*4とされている。この点からうかがうと、無底海は東南の海にあると言える。天地が傾いたのは共工が不周山を打ち砕いたためで、その結果、太陽の動きにもかたむきが生じて夏と冬の差が発生した。

さらに地底は底津磐根(そこついわね)と呼ばれる。

【大壑(たいがく)】

「大壑」は海原を示す言葉である。壑は谷を意味しており、大地のくぼみをあらわす。大地のくぼみに水が集まったものが海であり、地上にあればそれは川や湖沼となる。

日東そのものを、東鯷*5あるいは鯷壑*6とも書くことがある。「鯷」(てい)は列島の大地、「壑」(がく)はそれを取り囲む大海を示しておりナマズのことを示している。つまり、国々の大地(堅磐)自体がナマズなのである。地震を起こすのはナマズであるという考え方も、ここに由来している。

最終更新:2024年04月07日 21:57

*1 『和布刈』

*2 b 『原中最秘抄』上巻「彦火々出見尊、海にてつり針を失ひて、海童宮へ尋ねおはしましたりけるに、龍王めでて、御娘玉依姫に合せ奉りて、聟になし給ひし」

*3 『和漢雑笈或問』には「日の光を畏れて海底に伏隠れて眠臥す」とある。

*4 『淮南子』天文訓

*5 『漢書』の地理志呉地には「會稽海外有東鯷人、分為二十餘國、以歲時來獻見云。」とある。

*6 鯷海・鯷瀛も同様の語義で用いられており、東方に位置する大海であると解釈されている。