【愛宕山太郎坊(あたごやまたろうぼう)】

愛宕山にすまう天狗で、強力な神通力を持つ。「日羅坊」や「栄術太郎」とも呼ばれる。

太郎坊をはじめとした天狗たちは、愛宕権現の配下に当たる星から生まれた天狗たちであるとされている。愛宕権現の本体は勝軍地蔵であるとされており、そこに属する天狗たちは他にも広く各地の山々に存在している。

古くから強力な天狗であると言われており、悪左府頼長が近衛院を呪うために祈願を掛けた天狗も、愛宕山太郎坊であったとされている。

日羅星(愛宕法)の天狗たち

太郎坊や三尺坊などの勝軍地蔵に属する天狗には「ヒラヒラヤソワカ」という「日羅」に由来すると考えられる真言が見られる。飯綱権現の真言には「オンチラチラヤソワカ」という智羅永寿にも見られる「智羅」という言葉が見られ、飯綱権現に属する天狗たちの系統が異なる事がうかがえる。

九州の日隠太郎は直接の関係がある天狗で、太郎という名は愛宕山太郎坊が与えたものであるとされる。

「ヒラヒラ」という天狗真言*1は金毘羅(コンピラ)天狗たちの信仰にも見られる。コンピラが本来は水をつかさどる神であるのにも関わらず天狗と結びつけられているのは、「ヒラ」という日羅星の天狗たちの信仰に後から音の近いコンピラが護法神として祀られた流れがあるのではないかとも考えられている。

愛宕法の天狗たちは太陽をはじめとした星に親しむとされる。

太郎坊

愛宕山太郎坊の「太郎」は日羅星の天狗たちの長であることを示している。富士太郎も同様に「太郎坊」の名を持っている。

【愛宕八天狗】

太郎坊、火乱坊、天南坊、観喜坊、普賢坊、光井坊、東金坊、三密坊

【愛宕の法】

愛宕法を修めて用いていたとされる人物には細川政元などがいる。


最終更新:2024年04月19日 21:51

*1 「オンヒラヒラケンヒラケンノウソワカ」と唱える。修験密教などで用いられる