おはようセックス@小説まとめ
白鳥裕也の夢時雨は今日も
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「白鳥ィ!学校に行くぞ!!!」
なんで子乃ちゃんは朝からこんなに元気でいられるのだろうか。
早速布団から出る気力を失った少年は、同じくらいの少女に引き摺られていく。
“白鳥裕也”は今をときめく普通の中学三年生であることは言わずもがなである。
またその実境遇などのおかげて全然普通じゃないことも、これまた言わずもがなだ。
早速布団から出る気力を失った少年は、同じくらいの少女に引き摺られていく。
“白鳥裕也”は今をときめく普通の中学三年生であることは言わずもがなである。
またその実境遇などのおかげて全然普通じゃないことも、これまた言わずもがなだ。
「…何先刻から独り言を言ってるんだ?」
「いやいやいやいやこれはアレ、詠唱的な?」
「貴様魔法が遣えたのか。初耳だが。」
「え、あ、いやーははは、俺も伊達に夢幻学園通ってないって言うか」
「…何故私に教えなかった……」
「えっ」
「いやいやいやいやこれはアレ、詠唱的な?」
「貴様魔法が遣えたのか。初耳だが。」
「え、あ、いやーははは、俺も伊達に夢幻学園通ってないって言うか」
「…何故私に教えなかった……」
「えっ」
子乃ちゃんが物騒にも拳銃を懐から取り出し、俺の頭に突き付けた。
まあしかし、流石にこれくらいの危機には慣れっこである。
まあしかし、流石にこれくらいの危機には慣れっこである。
「いやーあはははは、ちょ、ちょっとその銃下ろしてくれない?」
「…………」
「ついでにさっきから掴んでる手が痛い…痛い痛い痛い!折れる!小指以外全部折れる!!」
「……なあ、白鳥。」
「…………」
「ついでにさっきから掴んでる手が痛い…痛い痛い痛い!折れる!小指以外全部折れる!!」
「……なあ、白鳥。」
子乃は手を突然離し、銃を仕舞い、虚空に向かって呟いた。
「……ん、何?」
「お前、は……」
「お前、は……」
え?何?マジで何?
白鳥裕也は困惑していた。
今まで見たことのない顔を子乃がしていたからだ。
白鳥裕也は困惑していた。
今まで見たことのない顔を子乃がしていたからだ。
しかし。
その言葉は、突如として現れた有象無象に遮られることになる。
その言葉は、突如として現れた有象無象に遮られることになる。
「おやおやおやおやァ?お邪魔でしたかぁ……?」
そこには漆黒の髪をした、見慣れない男が居た。
「誰だ貴様。用事がないならさっさと去れ。さもなくば死ぬぞ。去っても殺すが。」
子乃ちゃんが相変わらず物騒な事を言っている。
男は全く動じず、口の端を吊り上げて笑った。
乾いた笑みだった。
男は全く動じず、口の端を吊り上げて笑った。
乾いた笑みだった。
「くっけっけっけ……いいねェ。そうこなくっちゃ面白くない。」
「そうか。じゃあ死ね。」
「そうか。じゃあ死ね。」
子乃は男へ向けて、何の躊躇いもなく引鉄を引いた。
こういう光景に遭遇する度、俺は今生きていることを後悔して家で首でも吊りたくなるのだが、今回ばかりは後悔が先に立たないようだった。
こういう光景に遭遇する度、俺は今生きていることを後悔して家で首でも吊りたくなるのだが、今回ばかりは後悔が先に立たないようだった。
「……なーんだぁ…へたっぴだなァ、“若林子乃”。」
「……!?」
「……!?」
男は発砲されても身じろぎ一つしなかった。
銃弾は男の右へ左へ、スレスレを撫ぜていった。
子乃は弾丸を続けて放つが、動揺したのか、男には全く当たらず、また男もまるで意に介していなかった。
──さながら、当たらないことが分かっているかのように。
前進、前進。
男は子乃の目の前まで迫った。
銃弾は男の右へ左へ、スレスレを撫ぜていった。
子乃は弾丸を続けて放つが、動揺したのか、男には全く当たらず、また男もまるで意に介していなかった。
──さながら、当たらないことが分かっているかのように。
前進、前進。
男は子乃の目の前まで迫った。
「く……そ……っ」
「玉切れかァ、無様だな。」
「玉切れかァ、無様だな。」
…それにしても、妙だった。
子乃ちゃんがこんなに弱い筈はない。
それはずっと虐待され続けていた俺が一番良く知っている。たぶん。
子乃ちゃんがこんなに弱い筈はない。
それはずっと虐待され続けていた俺が一番良く知っている。たぶん。
「さって…残念ながらお前は獲物じゃないんだよねぇ。」
「……っ」
「……っ」
男は子乃に一瞥をくれると、俺に向かって歩き出した。
……って、え?もしかしてこれヤバい?白鳥裕也人生最大の危機?
ヒャア!解説なんかしてる場合じゃねえ!さっさととんずらぶっこ……
……って、え?もしかしてこれヤバい?白鳥裕也人生最大の危機?
ヒャア!解説なんかしてる場合じゃねえ!さっさととんずらぶっこ……
「さァて、俺はお前を連れてこいって言われてるんだが……」
「…………」
「生死は問わない、って話なんだよねェ……」
「…………」
「生死は問わない、って話なんだよねェ……」
子乃を置いて逃げるのか?
本当にそれでいいのかよ、白鳥裕也。
本当にそれでいいのかよ、白鳥裕也。
「それじゃ、御休み。」
瞬間、頭に衝撃。余波。途絶える意識。
「……これにて任務完了、ッと。
ったく、あのババァもなんだってこんないかにも普通なガキを……
おい、土器。転送宜しく。」
ったく、あのババァもなんだってこんないかにも普通なガキを……
おい、土器。転送宜しく。」
「……っ!?おい!白鳥、白鳥ィ!何処だ……?出てこないとぶっ殺すぞ☆……白鳥…………」
薄らぼんやりとした意識の中で、俺はどこかの境界を越えた気がした。
今日は妙な日だ。
何時にも増して、厄日である。
白鳥裕也の明日はどっちだ。
今日は妙な日だ。
何時にも増して、厄日である。
白鳥裕也の明日はどっちだ。
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「おーぅい、もしもーし!」
「…だから、生きてる人にボクらの声は普通聞こえないって……」
「しかしこれは…生きているのか?」
「生きていなかったら、尚更聞こえないでしょう。」
「あ!もしかしたら私たちみたいにユーレイになって、仲間になってくれるかも!」
「縁起でもないことを……」
「おや、どうやら……」
「……」
「…だから、生きてる人にボクらの声は普通聞こえないって……」
「しかしこれは…生きているのか?」
「生きていなかったら、尚更聞こえないでしょう。」
「あ!もしかしたら私たちみたいにユーレイになって、仲間になってくれるかも!」
「縁起でもないことを……」
「おや、どうやら……」
「……」
薄闇の視界が、ぼんやりとだが晴れるに至って、ひとまずは目覚めが来たということが明らかになった。
何か変な声を聞いた気もする。
空耳にしてはやけにハッキリとしていた。
頭の中でその女の子と男の子とおじさんの声を反響させながら、俺は頭を回し始める。
ようやく、ぼんやりとした視界が回復してきた。
目の前には青い空が広がっていた。
とどのつまり俺は仰向けになったいた訳だ。この硬さはアスファルトか?
何がなんだか分からない。
ここは…どこだ?
何か変な声を聞いた気もする。
空耳にしてはやけにハッキリとしていた。
頭の中でその女の子と男の子とおじさんの声を反響させながら、俺は頭を回し始める。
ようやく、ぼんやりとした視界が回復してきた。
目の前には青い空が広がっていた。
とどのつまり俺は仰向けになったいた訳だ。この硬さはアスファルトか?
何がなんだか分からない。
ここは…どこだ?
「……そうだ、子乃は………!」
俺は、白鳥裕也は悠然と立ち上がった。
辺りには、子乃はおろか、他の人間も、あの男も見えなかった。
辺りには、子乃はおろか、他の人間も、あの男も見えなかった。
「一体何処に……!」
「おっす、元気?」
「おっす、元気?」
突然、後ろから男に声をかけられた。
あの時の、俺を気絶させた漆黒の髪の男だ。
俺は咄嗟に身構える。
あの時の、俺を気絶させた漆黒の髪の男だ。
俺は咄嗟に身構える。
「はっは!そんなに構えるなよ。安心しろ。若林子乃には手出ししない。お前もすぐ返してやる。
……ただ、少しだけ遊んでこればいい。」
……ただ、少しだけ遊んでこればいい。」
じゃあな、と言い残して、男は空間の狭間に消えていった。
そこに俺が手を触れても、ただ空を切るだけだった。
そこに俺が手を触れても、ただ空を切るだけだった。
「なんだってんだ…?これは……」
再び、辺りを見渡すが、見事に何もない。
見えるのは精々田んぼと森と山くらいなものだった。
こんな場所は見たことがなかった。
見えるのは精々田んぼと森と山くらいなものだった。
こんな場所は見たことがなかった。
「……動かざるを得ない、ってことか。」
俺はそう決意し、取り敢えず歩き始めた。
つくたく、つくたく。
道は果てしなくも、すぐ終わるようにも思えた。
俺にとって、この土地は未知だった。
故に、どこの誰々さんがいつ出てきても、その人物も知らないという訳である。
しばらく歩いていると、古い民家から、若い女性が飛び出してきた。
いや、飛び出してきたというのは相応しくないか、普通に出てきたんだ。
女性は金の髪に金の瞳をして、華奢だった。
出てきて俺に気付くと、足を止めて会釈した。
つくたく、つくたく。
道は果てしなくも、すぐ終わるようにも思えた。
俺にとって、この土地は未知だった。
故に、どこの誰々さんがいつ出てきても、その人物も知らないという訳である。
しばらく歩いていると、古い民家から、若い女性が飛び出してきた。
いや、飛び出してきたというのは相応しくないか、普通に出てきたんだ。
女性は金の髪に金の瞳をして、華奢だった。
出てきて俺に気付くと、足を止めて会釈した。
「こんにちは。」
「あ、はい、えっと、こんにちは。」
「どなた?」
「ゑ?」
「この辺りで見ない子だから、どなたかな、と思って。まさかこんな辺鄙に旅行ってこともないでしょ?」
「いや…その…取り敢えず、俺は白鳥裕也と言います。」
「あ、はい、えっと、こんにちは。」
「どなた?」
「ゑ?」
「この辺りで見ない子だから、どなたかな、と思って。まさかこんな辺鄙に旅行ってこともないでしょ?」
「いや…その…取り敢えず、俺は白鳥裕也と言います。」
…なんだか、普通の人が新鮮だ。感動すら覚える。
俺がしどろもどろに自己紹介すると、女性も名乗り返した。
彼女の名は「梔々子」というらしい。
俺がしどろもどろに自己紹介すると、女性も名乗り返した。
彼女の名は「梔々子」というらしい。
「……それで、こんなところまで何をしに?」
「いや、それが…なんだか知らないけど見知らぬ男に気絶させられて、気が付いたらこんなところに……」
「あらあら、大変。きっと親御さん、『ウチの裕也が家出しちゃったわッ!』とか言って大騒ぎよ」
「はは…親は大丈夫なんですが……」
「?」
「厄介ながーるふれんどが一人……」
「ああ、モテそうだものね、白鳥くん。」
「えっ!そ、そうですかぁ?」
「ええ。顔なんか赤くしちゃって…可愛いわねぇ」
「かかかかからかわないでくださいよ!もう!」
「照れなくてもいいのに~」
「いや、それが…なんだか知らないけど見知らぬ男に気絶させられて、気が付いたらこんなところに……」
「あらあら、大変。きっと親御さん、『ウチの裕也が家出しちゃったわッ!』とか言って大騒ぎよ」
「はは…親は大丈夫なんですが……」
「?」
「厄介ながーるふれんどが一人……」
「ああ、モテそうだものね、白鳥くん。」
「えっ!そ、そうですかぁ?」
「ええ。顔なんか赤くしちゃって…可愛いわねぇ」
「かかかかからかわないでくださいよ!もう!」
「照れなくてもいいのに~」
……俺はッ
白鳥裕也はッッ
猛烈にッッッ
感動しているゥゥゥゥッ!!
これこそ俺の夢見た日常生活!普通の!それでいて夢のある!!
落ち着け白鳥…素数を数えて落ち着くんだ……
このままでは帰れなく…もとい、帰りたくなくなってしまうッ!!
しかし……この梔々子さんの甘ーい声!そしてその豊満な…胸……
いや駄目だ白鳥裕也。落ち着くんだ白鳥裕也。
そうだ思い出せ。あのまったく嬉しくないヒロインのことを。
ああ、思い返せばあの邪悪な声が……
白鳥裕也はッッ
猛烈にッッッ
感動しているゥゥゥゥッ!!
これこそ俺の夢見た日常生活!普通の!それでいて夢のある!!
落ち着け白鳥…素数を数えて落ち着くんだ……
このままでは帰れなく…もとい、帰りたくなくなってしまうッ!!
しかし……この梔々子さんの甘ーい声!そしてその豊満な…胸……
いや駄目だ白鳥裕也。落ち着くんだ白鳥裕也。
そうだ思い出せ。あのまったく嬉しくないヒロインのことを。
ああ、思い返せばあの邪悪な声が……
「白鳥くん?」
「ひょごわぁぁぁぁ!?!?」
「ど、どうしたの?」
「い、いやなんでも!なんでもありません!…ちょっとその…記憶を取り戻したと言うか……」
「思い出し笑いみたいなものかしら」
「そうそう!それです!思い出し笑い!」
「……何を思い出したのか気になるけれど、立ち話も何ですから、どこかへ歩きながら話しましょう?」
「はいッ!」
「ひょごわぁぁぁぁ!?!?」
「ど、どうしたの?」
「い、いやなんでも!なんでもありません!…ちょっとその…記憶を取り戻したと言うか……」
「思い出し笑いみたいなものかしら」
「そうそう!それです!思い出し笑い!」
「……何を思い出したのか気になるけれど、立ち話も何ですから、どこかへ歩きながら話しましょう?」
「はいッ!」
その後、梔々子さんの用事である買い物に俺は追従した。
……あの男の言うことを信用した訳ではないが、きっと子乃ちゃんなら大丈夫だ。
というか、俺より強い人を心配してどうするんだ白鳥。馬鹿だなぁ白鳥。
けれど取り敢えず言わせてもらうと、買い物超楽しかったですすいませんでした。
俺が「荷物持ちますよ」とか言うと「まあ、いいの?」なーんて返してきちゃったりして。
そこで俺は「なぁに、男ですから」とかなんとか言っちゃってキャッキャウフフムーチョムーチョワッフルワッフル大洪水であった訳である。
……あの男の言うことを信用した訳ではないが、きっと子乃ちゃんなら大丈夫だ。
というか、俺より強い人を心配してどうするんだ白鳥。馬鹿だなぁ白鳥。
けれど取り敢えず言わせてもらうと、買い物超楽しかったですすいませんでした。
俺が「荷物持ちますよ」とか言うと「まあ、いいの?」なーんて返してきちゃったりして。
そこで俺は「なぁに、男ですから」とかなんとか言っちゃってキャッキャウフフムーチョムーチョワッフルワッフル大洪水であった訳である。
その帰り道の事である。
梔々子さんが一人の男を見て、ぴたりと足を止めた。
梔々子さんが一人の男を見て、ぴたりと足を止めた。
「────藍鉄くん?」
「…………梔々子か。」
風が一陣凪いだ。
場が静まり返る。
突然修羅場っぽくなった空気について行けない白鳥裕也。
見つめ合う二人。
けれどそこには穏やかな空気は漂っていなかった。
場が静まり返る。
突然修羅場っぽくなった空気について行けない白鳥裕也。
見つめ合う二人。
けれどそこには穏やかな空気は漂っていなかった。
「…………えーっと……」
「…………………」
「…………………」
俺はどうすればいいんですかね、神様。
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「修羅場ですね……」
「あの二人は一体どういう関係なんだ?」
「白鳥ってひとはかんけーなさそーだよね」
「どうしたものですかね……」
「決まってるでしょ!助けなきゃ!」
「……誰を?」
「えっ」
「どうやって……?」
「うぐぐっ」
「……まあとりあえず静観しましょうか」
「それしかないようだ」
「むぐぐぐ……」
「あの二人は一体どういう関係なんだ?」
「白鳥ってひとはかんけーなさそーだよね」
「どうしたものですかね……」
「決まってるでしょ!助けなきゃ!」
「……誰を?」
「えっ」
「どうやって……?」
「うぐぐっ」
「……まあとりあえず静観しましょうか」
「それしかないようだ」
「むぐぐぐ……」
藍鉄と呼ばれた男はしばらくこちらを睨みつけるように見ていたが、やがて再び口を開いた。
「……で、何か用か?」
その様子は半ば呆れたようにも、こちらを小馬鹿にしているようにも見えた。
梔々子さんは語調を強くして答える。
梔々子さんは語調を強くして答える。
「……ええ。」
先程まで買い物をしていた人物と同一とは思えないほど、梔々子さんの表情は険しく、だがどこか憂いを含んでいた。
穏やかさを押し殺したような顔に見えた。
親の葬式に出席する息子のような顔だと思った。
穏やかさを押し殺したような顔に見えた。
親の葬式に出席する息子のような顔だと思った。
「……要件は?」
「……まずは謝らせて」
「……謝る?」
「今更、って思うでしょうね。もう何年前になるかしら。」
「……まずは謝らせて」
「……謝る?」
「今更、って思うでしょうね。もう何年前になるかしら。」
そう言うと、梔々子さんは一種哀しそうに眉を歪めた。
藍鉄と呼ばれた男は依然、こちらを軽蔑したような、品定めでもするような顔で、ただ一直線にこちらを見ている。
藍鉄と呼ばれた男は依然、こちらを軽蔑したような、品定めでもするような顔で、ただ一直線にこちらを見ている。
「数えちゃいないが……なんだ?時が洗い流してくれたとでも言うつもりか?」
「違うわ!」
「違うわ!」
梔々子さんは髪を振り乱して反駁した。
相手を殺してしまいそうな目をしていた。
俺はどうすればいいのか分からぬまま、ただ必死にこの二人の因縁めいたものをどうにか想像していた。
相手を殺してしまいそうな目をしていた。
俺はどうすればいいのか分からぬまま、ただ必死にこの二人の因縁めいたものをどうにか想像していた。
「違う……確かにあの時、私は逃げた。どうにもならない現実を見るのがとても怖くなって、自分に嘘をついた。
貴方にも……源氏くんにも、酷いことを言ったわ。」
「…それを今更償うとでも言うのか」
貴方にも……源氏くんにも、酷いことを言ったわ。」
「…それを今更償うとでも言うのか」
藍鉄と呼ばれた男はこの世の全てを蔑むように言った。
季節は葉が茂る頃だろうか、風が吹いていた。
生温いようで冷たいような、半端で丁度真ん中の風だった。
梔々子さんは少しだけたじろいで、けれど怯まずに言葉を紡ぎ出す。
季節は葉が茂る頃だろうか、風が吹いていた。
生温いようで冷たいような、半端で丁度真ん中の風だった。
梔々子さんは少しだけたじろいで、けれど怯まずに言葉を紡ぎ出す。
「……何を言っても、貴方には言い訳にしか聞こえないと思うわ。
でもこれだけは言わせて。…私は、貴方を恨んでいるけれど、仲直りしたいってずっと……思ってる、から。」
「…………言いたいことはそれだけか。」
「……ええ、それだけ。」
でもこれだけは言わせて。…私は、貴方を恨んでいるけれど、仲直りしたいってずっと……思ってる、から。」
「…………言いたいことはそれだけか。」
「……ええ、それだけ。」
梔々子さんはそう言い終えると、行きましょ、白鳥くんと言って俺の手を引いて歩き出した。
白鳥くん、というのが自分を指しているのだということに気付くのに、しばらくかかった。
藍鉄と呼ばれた男はそのまま立ち尽くしていた。
梔々子さんはその隣を、俺と共に歩き抜けていった。
しばらく歩いて、後ろを振り返ると、男はまだ、その場所で立ち尽くしていた。
こちらから見えなくなるまで、男は立ち尽くしていた。
表情はもう読み取れなかった。
白鳥くん、というのが自分を指しているのだということに気付くのに、しばらくかかった。
藍鉄と呼ばれた男はそのまま立ち尽くしていた。
梔々子さんはその隣を、俺と共に歩き抜けていった。
しばらく歩いて、後ろを振り返ると、男はまだ、その場所で立ち尽くしていた。
こちらから見えなくなるまで、男は立ち尽くしていた。
表情はもう読み取れなかった。
俺はどうにも気まずかった。
梔々子さんは既にさっきの険しい表情をほとんどやめていたが、誰だってあんな修羅場チックなものを見せられたあとに声をかけるのって辛いはずだ。
……こういう時、俺の周りの連中だったら全然気にしないんだろうなぁ。
少しだけ、学園の仲間……仲間と呼んでいいのかどうかは分からないが、それが恋しくなった。
普通は普通で、大変なのだ。
それはそれで、煩わしいのだ。
そんなことを考えて、俺は無言で歩き続けた。
先刻の男のことは聞きたかったけれど、流石に完全なる部外者の俺が聞くのは憚られた。
梔々子さんは既にさっきの険しい表情をほとんどやめていたが、誰だってあんな修羅場チックなものを見せられたあとに声をかけるのって辛いはずだ。
……こういう時、俺の周りの連中だったら全然気にしないんだろうなぁ。
少しだけ、学園の仲間……仲間と呼んでいいのかどうかは分からないが、それが恋しくなった。
普通は普通で、大変なのだ。
それはそれで、煩わしいのだ。
そんなことを考えて、俺は無言で歩き続けた。
先刻の男のことは聞きたかったけれど、流石に完全なる部外者の俺が聞くのは憚られた。
つくたく、つくたく。
かつこつ、かつこつ。
俺の足音と梔々子さんの足音が、木霊するようだった。
車の音はおろか、人っ子一人いないこの辺りというのは、ひどく静かだった。
時折風が草を揺らす音が聞こえ、また虫の鳴く声が微かに聞こえた。
それ以外に響いているのは、この足音のみだった。
どちらから何を話すこともなく、ついに梔々子さんの家まで来てしまった。
かつこつ、かつこつ。
俺の足音と梔々子さんの足音が、木霊するようだった。
車の音はおろか、人っ子一人いないこの辺りというのは、ひどく静かだった。
時折風が草を揺らす音が聞こえ、また虫の鳴く声が微かに聞こえた。
それ以外に響いているのは、この足音のみだった。
どちらから何を話すこともなく、ついに梔々子さんの家まで来てしまった。
「今日は付き合ってくれてどうもありがとうね」
「あっ、いえいえ、俺なんかで良ければ」
「あっ、いえいえ、俺なんかで良ければ」
しばらくの間の後に、梔々子さんは語り始める。
「……ごめんね、嫌だったでしょ、あの時。」
「……いえ、大丈夫ですよ。慣れてますから。」
「……いえ、大丈夫ですよ。慣れてますから。」
そう言って、俺は苦笑した。
それが可笑しかったのか、梔々子さんも笑った。
それが可笑しかったのか、梔々子さんも笑った。
「大変そうなのね」
「はは、それはもうイロイロと。」
「はは、それはもうイロイロと。」
二人で家の前でしばらく笑った。
それから持っていた袋を渡すと、梔々子さんはじゃあね、と言い残して、手を振りながらドアを閉めた。
俺は手を降ろすと、ふ、と息をついた。
さて、これからどうしようか、と思った時、突如として背後から声が響いた。
あの漆黒の髪の男か、と一瞬思ったが、明らかにその声は女性だった。その上何故か媚び媚びだった。
それから持っていた袋を渡すと、梔々子さんはじゃあね、と言い残して、手を振りながらドアを閉めた。
俺は手を降ろすと、ふ、と息をついた。
さて、これからどうしようか、と思った時、突如として背後から声が響いた。
あの漆黒の髪の男か、と一瞬思ったが、明らかにその声は女性だった。その上何故か媚び媚びだった。
「御悩みかな?少年。」
「誰だっ……!?」
「誰だっ……!?」
咄嗟に振り返ると、そこにはどうにも形容し難いその場にミスマッチな少女がいた。
「だっ……誰だお前は!?」
「……巨乳妖精はっぴぃにゃん。」
「いや、そうでなくて。」
「なんだ、気に食わないのか?折角御前さんの御好みに合わせてやったのに。」
「いや気に食わないっていうか……それじゃただのコスプレ少女だと」
「喋り方も真似した方がいいかにゃ?☆」
「いや、結構です。」
「またまた、無理しちゃってぇ~☆」
「はははは(棒読み)」
「……巨乳妖精はっぴぃにゃん。」
「いや、そうでなくて。」
「なんだ、気に食わないのか?折角御前さんの御好みに合わせてやったのに。」
「いや気に食わないっていうか……それじゃただのコスプレ少女だと」
「喋り方も真似した方がいいかにゃ?☆」
「いや、結構です。」
「またまた、無理しちゃってぇ~☆」
「はははは(棒読み)」
取り敢えず、そろそろ家に帰りたい白鳥裕也であった。
「ぬぅ……まあ、困った時はいつでも呼んでにゃ☆」
「その格好でぬぅ……とか言って唸るのはやめてください」
「それじゃ……」
「その格好でぬぅ……とか言って唸るのはやめてください」
「それじゃ……」
ふっ、と、コスプレ少女は突然その場から消えた。
空間の狭間に消える、とかそんなチャチなもんじゃ断じてなかった。
俺が冷や汗を禁じ得ない状況に困惑していると、また後ろから声がした。
空間の狭間に消える、とかそんなチャチなもんじゃ断じてなかった。
俺が冷や汗を禁じ得ない状況に困惑していると、また後ろから声がした。
「──困った時はいつでも呼んでにゃ?」
そう、妖しい声を残して、少女は跡形もなく消えた。
前にも後ろにも、やもすればこの世界にいないような気すらした。
俺がしばらく立ち尽くして、「厄日だ……」とかどこぞのそげぶさんの如く呟いていると、道の前方、小柄な人が杖をついて歩いてくるのが見えた。
その人物はこちらまで来て立ち止まり、俺を見上げるようにして話し始めた。
前にも後ろにも、やもすればこの世界にいないような気すらした。
俺がしばらく立ち尽くして、「厄日だ……」とかどこぞのそげぶさんの如く呟いていると、道の前方、小柄な人が杖をついて歩いてくるのが見えた。
その人物はこちらまで来て立ち止まり、俺を見上げるようにして話し始めた。
「お疲れさん。」
「はい?」
「はい?」
俺は素っ頓狂な声を上げた。
瞬間、背後にデジャヴ。衝撃。薄れる意識、感覚。
「……で、こんな実験、何の役に立つんだ?」
「さあね」
「さあねっておま……」
「今様に聞いてやれ。それか土器にな。」
「……どっちも俺より強ぇじゃねぇか」
「さあね」
「さあねっておま……」
「今様に聞いてやれ。それか土器にな。」
「……どっちも俺より強ぇじゃねぇか」
「この人、よっぽどショックだったのかなぁー」
「立ち尽くしたまま動きませんね。」
「少し観察してみようか。悩みを抱えてるようだ。」
「大方あの女性絡みのことでしょうが……」
「なんだっていいよ!私たちでなんとかする!」
「そういう台詞は一回でも策を出してから言って欲しいね」
「うぐっ」
「まあまあ、あ、ほら、動き出したぞ。」
「追跡しますか」
「いえっさーっ!」
「立ち尽くしたまま動きませんね。」
「少し観察してみようか。悩みを抱えてるようだ。」
「大方あの女性絡みのことでしょうが……」
「なんだっていいよ!私たちでなんとかする!」
「そういう台詞は一回でも策を出してから言って欲しいね」
「うぐっ」
「まあまあ、あ、ほら、動き出したぞ。」
「追跡しますか」
「いえっさーっ!」
薄れた意識が境界を繋いで、時の狭間に世界が移ろい……むにゃむにゃ
「……とり、白鳥…………」
ん?なんだ、もう起きる時間か?
「白鳥ィ!」
目を開けると、最早見慣れた少女が、見慣れない顔をして、聞き慣れないトーンで、聞き慣れた俺の名を呼んでいた。
「子乃…ちゃん……?」
「────」
「────」
どうにも、まだ夢を見ているらしい。
だって、こんなに無抵抗に子乃ちゃんが俺に寄りかかってくるはずがない。
泣きそうな顔で、声にならない声を上げて、女の子のように……いや、そういえば女の子だったけど。
なんだか分からないが、夢なら夢で、満喫しなければ損というものだ。
だって、こんなに無抵抗に子乃ちゃんが俺に寄りかかってくるはずがない。
泣きそうな顔で、声にならない声を上げて、女の子のように……いや、そういえば女の子だったけど。
なんだか分からないが、夢なら夢で、満喫しなければ損というものだ。
「……ただいま。」
「…………おかえり。」
「…………おかえり。」
ああ、やっぱり夢だ。
まともな問答が出来たことなんて、これまで一回もなかったし。
俺は不意に手を子乃の頭の上に置く。
……これで抵抗しないということは、やっぱりゆm……
まともな問答が出来たことなんて、これまで一回もなかったし。
俺は不意に手を子乃の頭の上に置く。
……これで抵抗しないということは、やっぱりゆm……
「熱っっ!!」
「うぅ……しらとりぃ…………」
「うぅ……しらとりぃ…………」
その後、学園の保健室で治療を受けた子乃ちゃんに俺がフルボッコにされたのは言うまでもない。