おはようセックス@小説まとめ
ちょっと長い話になりますが
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ohayousex
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わたくし、二人羽織亜麻露が、不思議な女の子に出会った時の話をしようと思います。
あれは私が買い物に行こうとマンションから出て、しばらく行った公園での事です。
あれは私が買い物に行こうとマンションから出て、しばらく行った公園での事です。
「あ、いいとこに来たね姉ちゃん。火ィくれねぇかい」
「はい?」
「はい?」
そこには車椅子に腰掛けた少女の横顔がありました。そして幼い顔には不釣り合いな煙草を咥えていて、それをこっちに向けてきたのです。
「いや、今丁度手が居なくてね、困っていたところなんだ」
私は少女の言葉を聞きながら、彼女の全身を見渡して、思わずギョっとしました。
先程まで見えなかった片目には顔を半分覆う程の眼帯を付けていました。そして、彼女の着ている服の袖は、不自然に垂れています。更に長いスカートの下に少しだけ覗く脚の片方には、何か関節のようなものが露出していたのです。
先程まで見えなかった片目には顔を半分覆う程の眼帯を付けていました。そして、彼女の着ている服の袖は、不自然に垂れています。更に長いスカートの下に少しだけ覗く脚の片方には、何か関節のようなものが露出していたのです。
「おい姉ちゃん、火はまだかい」
「あっ!え、ええと、すみません。煙草は吸わないもので……」
「なんだい。だったらあっしの服のポケットにライターが入ってるから、それを出して貰えんかね」
「あっ!え、ええと、すみません。煙草は吸わないもので……」
「なんだい。だったらあっしの服のポケットにライターが入ってるから、それを出して貰えんかね」
私は異質な雰囲気を放つ少女の言葉通りに、彼女の服の胸ポケットからライターを取り出すと、不慣れながらもなんとか火を付けて、煙草の先にあてがいます。最中、服の袖が気になって仕方がありませんでした。
ちりちりと煙草が音を立て始めたところで、少女は顔を引くと、器用に煙草を加えたまま煙を吐き出します。
ちりちりと煙草が音を立て始めたところで、少女は顔を引くと、器用に煙草を加えたまま煙を吐き出します。
「有難うね。見ての通りの成りだもんだから、一人じゃ火も付けられなんだ」
「い、いえ……」
「……何か訊きたい事でもあるかい?」
「へっ!?」
「い、いえ……」
「……何か訊きたい事でもあるかい?」
「へっ!?」
そりゃああります、とは、中々言い出せないのでした。
しかし恐る恐る「あります」と口にしてみると、「何でも訊いていいよ、手が戻ってくるまで暇だから」と案外好意的な返事が。
お言葉に甘えて質問攻めにする事に。
しかし恐る恐る「あります」と口にしてみると、「何でも訊いていいよ、手が戻ってくるまで暇だから」と案外好意的な返事が。
お言葉に甘えて質問攻めにする事に。
「その……お身体は、何故そのような事に?」
「ん?どれの事だい?来ると思ってたんだけど、目か、腕か、脚か……どれも別の原因で失くしてしまった」
「え、えええと……では、目の方から……」
「ん?どれの事だい?来ると思ってたんだけど、目か、腕か、脚か……どれも別の原因で失くしてしまった」
「え、えええと……では、目の方から……」
本当にこんな質問をしていいのだろうかという不安に駆られる私をよそに、少女は親しげに煙草の煙を吐いて語り始めます。
「……この目はね、医者にやられたのさ。あっしの生まれた国とその向こうの国が戦争してた時期があってね、まあ今は一応和解してるんだけど……掛かった医者が悪かったねぇ。向こうの国から出てきたらしいんだけど、なんでもあっしの国の軍人さんに親兄弟皆殺しにされたとかで、あっしの出身を知った途端に人懐っこい笑顔をやめて、いきなり私を縛り付け始めた……。まあ、結構抵抗したんだけどね、所詮子供の力さ。あえなく捕まって、強酸性の薬品を顔にぶっ掛けられたんさ。どうにか避けようとしたんだけど、この右目だけはモロにかかっちまってねえ。そこで他の医者が助けてくれなかったら、他のところもやられてたんだろうね。最悪死んだかもしれん。はっはっは!」
すみません、壮絶過ぎて笑えないです。
目が酸で溶ける苦しみなんて想像もつきませんが、それで失明する恐怖は、いかにも私でも想像する事ができます。
それ以前に、よもや医者に危害を加えられるなど考えた事もありませんでしたから、今私の鳥肌はすごいことになっています。
少女の顔をよく見れば、右耳に僅かに皮の変色を確認する事ができました。
目が酸で溶ける苦しみなんて想像もつきませんが、それで失明する恐怖は、いかにも私でも想像する事ができます。
それ以前に、よもや医者に危害を加えられるなど考えた事もありませんでしたから、今私の鳥肌はすごいことになっています。
少女の顔をよく見れば、右耳に僅かに皮の変色を確認する事ができました。
「あ、何ならこの眼帯取ってよく見てもいいよ。グチャグチャのまま縫っただけだから汚くて申し訳ないけど」
「い、いやいや、さっきのお話だけでお腹いっぱいです」
「あ、そう?……じゃあ、腕の話の前に煙草替えてくれないかね。灰皿は車椅子についてるし、新しいのはこっちで咥えるからさ」
「あ、はい、ただいま」
「い、いやいや、さっきのお話だけでお腹いっぱいです」
「あ、そう?……じゃあ、腕の話の前に煙草替えてくれないかね。灰皿は車椅子についてるし、新しいのはこっちで咥えるからさ」
「あ、はい、ただいま」
何故か、少女の言葉には威圧感というか、人を従わせる凄味を感じます。明らかに歳下なのに、何故か圧倒する雰囲気があるのです。
確かに車椅子に設置してある灰皿に私が少女の口から取り上げた煙草を棄てると、少女は突然脚を振り上げて何かを弾き飛ばしました。
ぽかんと口を開ける私を尻目に、少女は振り上げられた何かを首を傾げて器用に口で捉えます。見ると、そこには真新しい煙草が咥えられていました。
確かに車椅子に設置してある灰皿に私が少女の口から取り上げた煙草を棄てると、少女は突然脚を振り上げて何かを弾き飛ばしました。
ぽかんと口を開ける私を尻目に、少女は振り上げられた何かを首を傾げて器用に口で捉えます。見ると、そこには真新しい煙草が咥えられていました。
「……とまあこんな具合で、どうにか脚だけで煙草は咥えられるようになったんだが、やはり火を点けるのは厳しいな。壁に激しく擦り付けるというのも考えたんだが……あ、火ィ貰えるかね」
「はい」
「はい」
段々驚きという感覚が麻痺してきた私は、言われるままに先程のライターで、少女の煙草に火を点けました。
少女は目を閉じて、ゆっくりと煙を吸い込むと、一拍置いてから、これまたゆっくりと吐き出します。目を開けて、立ち昇る煙をぼんやりと眺めながら、少女は懐かしむように口を開きます。
少女は目を閉じて、ゆっくりと煙を吸い込むと、一拍置いてから、これまたゆっくりと吐き出します。目を開けて、立ち昇る煙をぼんやりと眺めながら、少女は懐かしむように口を開きます。
「うん、それじゃあ、腕の話をしようか。……腕は、ちょっと言えないような理由であっしが捕まって、拷問を受けた時にやられちまった。あんまりあっしが強情張って、叩かれても刺されても音を上げないもんだから、奴輩痺れを切らしてあっしの左腕を切っちまいやがった。それでもあっしが黙ってたら、そのうち右腕も切られちまった。さあ次は残った脚かな……ってところで、仲間が助けに来た。いやはや、報われたやねえ。あっしが仲間の場所をあっさり吐いてたら、きっとみんな殺されてただろうさ。だからこの両腕は、あっしのささやかな誇りなのさ。……まあちっと、臭いがなぇ」
貴方は軍人か!?と言いたくなる気持ちを、今私は必死で抑えています。
捕まって、拷問って。映画でしか見た事ないですよそんなの。一体何に従事していればそんな状況に晒されるのでしょう。それも、こんな小さな少女が!
しかしその少女の身体は圧倒的な存在感で事実を主張してきて、少女の話す事の真実味を否が応でも高めます。
少女が再び煙草の替えを要求なされたので、先程と同じように煙草を替えます。思えば、幼い少女が煙草を嗜んでいる時点で大分おかしいのですが、恐るべきはそれが霞む程のオーラでしょうか。
捕まって、拷問って。映画でしか見た事ないですよそんなの。一体何に従事していればそんな状況に晒されるのでしょう。それも、こんな小さな少女が!
しかしその少女の身体は圧倒的な存在感で事実を主張してきて、少女の話す事の真実味を否が応でも高めます。
少女が再び煙草の替えを要求なされたので、先程と同じように煙草を替えます。思えば、幼い少女が煙草を嗜んでいる時点で大分おかしいのですが、恐るべきはそれが霞む程のオーラでしょうか。
「さて、最後は脚だねえ。脚は、最初にあっしが失くしたところさね。脚だけに。……なんつって」
笑えません。二つの意味で。
「…………」
「ははははは!マアマア、そりゃいいや。脚はわりとあっさりしたもんだよ。あっしがまだ小さい小さい頃に、ちょっと遠くに遊びに行って……水を汲んでくるだけのつもりだったんだけどね、気付いたら朦朧とした意識の中で土を嘗めてた。どうも地雷を踏んでしまったらしい、と分かったのは、うまく立ち上がれない理由に気付いた時ってわけさ。……あんまり面白くなくってすまないね」
「いえ、滅相も……」
「ははははは!マアマア、そりゃいいや。脚はわりとあっさりしたもんだよ。あっしがまだ小さい小さい頃に、ちょっと遠くに遊びに行って……水を汲んでくるだけのつもりだったんだけどね、気付いたら朦朧とした意識の中で土を嘗めてた。どうも地雷を踏んでしまったらしい、と分かったのは、うまく立ち上がれない理由に気付いた時ってわけさ。……あんまり面白くなくってすまないね」
「いえ、滅相も……」
絶句せざるを、得ませんでした。
彼女の出身がどこかは分かりません。日本ではないでしょう。中東かもしれません。何にせよ、壮絶かつ凄絶で、私には及びもつかない非凡な人生を歩んできたのでしょう。
彼女の出身がどこかは分かりません。日本ではないでしょう。中東かもしれません。何にせよ、壮絶かつ凄絶で、私には及びもつかない非凡な人生を歩んできたのでしょう。
「ああ、でも脚は代わりを造ってくれた人が居てね。ほら」
言って、少女はスカートを膝まで捲りました。そこには、複雑に組まれた義足が顔を出します。
「小さい頃から使っているから、本当の脚みたいに動かせるよ」
「はぁー……すごいですね、初めて拝見しました」
「はぁー……すごいですね、初めて拝見しました」
少女が右に左に義足を動かすのを見て、思わず感心してしまいます。私も脚が無くなったら義足にしましょうか。
「残念ながら、義手はまだ合わせてる途中で、今はないんだけどね」
「へええ……あれ?でも、どうして脚が動くのに車椅子に?」
「ああ、それは……貧血症でね、立って歩くのが辛いのと……あと、手が過保護だからな」
「手?」
「あっしの……おや、丁度その『手』がやってきたようだ」
「へええ……あれ?でも、どうして脚が動くのに車椅子に?」
「ああ、それは……貧血症でね、立って歩くのが辛いのと……あと、手が過保護だからな」
「手?」
「あっしの……おや、丁度その『手』がやってきたようだ」
耳を澄ますと、どこからか車の走ってくる音が聞こえます。それは徐々に近付き、あっという間に公園に隣接しました。
その黒塗りの巨大な車に私が奇異の眼差しを向けていると、中から髭を蓄えた筋肉隆々の大男が現れて、ずんずんとこちらに歩み寄ってきます。
その黒塗りの巨大な車に私が奇異の眼差しを向けていると、中から髭を蓄えた筋肉隆々の大男が現れて、ずんずんとこちらに歩み寄ってきます。
「フィオル、迎えに来たぞ」
大男はその風格に則した、渋味の強い低く唸るような声で少女に告げました。
「うむ、ご苦労様」
「……このお方は?」
「民間人だ。あっしの話に付き合って貰った」
「ほう」
「……このお方は?」
「民間人だ。あっしの話に付き合って貰った」
「ほう」
大男は私に向き直ると、「有難う御座いました、フィオルの暇潰しに付き合って頂いて」と深々とお辞儀をしました。
「いえいえそんな、私も楽しませてもらいましたし……」と答えると、大男は笑顔で応えました。
「いえいえそんな、私も楽しませてもらいましたし……」と答えると、大男は笑顔で応えました。
「さあ、帰るぞフィオル」
「まあちょっと待ていミッグ。そういえばこの女性にまだ名乗っていなかった」
「まあちょっと待ていミッグ。そういえばこの女性にまだ名乗っていなかった」
言って、少女はこちらに向き直ります。
「改めて、あっしはフィオル・グリーンズ。こっちはミッグ・グリーンズ。あっしの下僕だ」
「夫の事を下僕と呼ぶものではない」
「はっはっ!固い事を言うでない。……さて、あっし達はもう行ってしまうが、最後に姉ちゃんの名も聞かせてくれないかね」
「……二人羽織亜麻露と言います。二人羽織が苗字で、亜麻色の髪の乙女の亜麻に、朝露の露で、亜麻露です」
「二人羽織亜麻露……変わった名だな」
「愚妻の暇潰しに付き合ってくれて有難う。亜麻露」
「こら、妻の事を愚かだと?」
「言葉の綾だ……」
「あはは……」
「夫の事を下僕と呼ぶものではない」
「はっはっ!固い事を言うでない。……さて、あっし達はもう行ってしまうが、最後に姉ちゃんの名も聞かせてくれないかね」
「……二人羽織亜麻露と言います。二人羽織が苗字で、亜麻色の髪の乙女の亜麻に、朝露の露で、亜麻露です」
「二人羽織亜麻露……変わった名だな」
「愚妻の暇潰しに付き合ってくれて有難う。亜麻露」
「こら、妻の事を愚かだと?」
「言葉の綾だ……」
「あはは……」
正直、もうギリギリついていけてないです。
「煙草、有難うな亜麻露」
「また会う日まで」
「また会う日まで」
バタン、と車の扉が閉まると、二人は瞬く間に見えなくなってしまいました。
私は買い物に行くのも忘れて、しばらく呆然と、そこや立ち尽くしてしまいました。
彼女達は何者なのでしょうか?もしかしたら、近所に引っ越してきたのかもしれません。
いずれにせよ、あの少女があれだけの身体的ハンデを負いながら、それを引きずっていない様子であることには、尊敬と畏怖の念が湧きます。
何故彼女達は日本に来たのでしょう。もしや危ない仕事?確かめたところで、私にどうこうする事はできそうにありませんが。
あれから何日か経って、フィオルという少女を思い出す度に、彼女の壮絶な体験談が思い起こされて、身震いします。
ですがこうも思うのです。眼帯の下、見せて貰えば良かったかもなぁ、と、どうせ見たら後悔していた癖に、我ながら天邪鬼なものです。
私は買い物に行くのも忘れて、しばらく呆然と、そこや立ち尽くしてしまいました。
彼女達は何者なのでしょうか?もしかしたら、近所に引っ越してきたのかもしれません。
いずれにせよ、あの少女があれだけの身体的ハンデを負いながら、それを引きずっていない様子であることには、尊敬と畏怖の念が湧きます。
何故彼女達は日本に来たのでしょう。もしや危ない仕事?確かめたところで、私にどうこうする事はできそうにありませんが。
あれから何日か経って、フィオルという少女を思い出す度に、彼女の壮絶な体験談が思い起こされて、身震いします。
ですがこうも思うのです。眼帯の下、見せて貰えば良かったかもなぁ、と、どうせ見たら後悔していた癖に、我ながら天邪鬼なものです。