影 - おはようセックス＠小説まとめ

kage
soreha

oi

nihongoutenai

oi

あ

おい

影
それは
光の届かない場所
人の目に光を届けない場所
人の目に映らない場所

そして
影は光を遮る物の背中にあり
それを挟んで対極に光がある

一般的な影とは目に見えるものである
この広い世界には至るところから光が跳ね返されて
遮られた場所も薄く照らされる
明暗の差はあれど、影は目に見える。

比喩表現として使われる影は目に見えないものである。
光の届かない、目に見えない、見られたくない負の感情が籠められている。
心が影に入り込み、人を避けるようになる。
陰鬱とした気持ちは孤独を誘い、流れに身を委ねると楽になれる。
孤独には恐怖が潜み、されども目下に迫る危険はない。いや、あったとしても気が付かないでいられる。
毎日が平和だ。例えそれが1秒後に壊れてしまうとしても、ここが影でなければもう気付いてしまっている。
気がついた時にそれは既に平穏でなくなる。どうせ滅ぶのならばその瞬間まで何も知らずにいたいのだ。

俺はそうして生きている。
いつからだったかはもう思い出せない。もちろん本当は思い出せるはずだが、そんなことをするはずもない。
心が影に入り込み、時を忘れた。時計の針は同じ盤の上を回り続けている。24時間経てばそれが何週目のことなのか誰にもわからない。
繰り返すことは平穏をもたらす。繰り返さなければいずれどこかで悲しみが空を支配し、憎悪の涙は排水溝から溢れ出し、俺の感情を錆びつかせて破壊するだろう。

何度も何度も繰り返した。これが俺の生き方だ。
それでも繰り返さないこともある。たまに本音が漏れることもある。

こんな風になることを最初から望んで生まれ堕ちたわけでないことを、ふと思い出す。
擦り剥いた膝から血を流しながら未来を探して駆けずりまわった。
努力や苦労には僅かな対価が支払われ、等価交換には遠く及ばなくても満足したこともあった。
そして今も、そんな割に合わない世界にかつて見た夢が眠っていると信じてしまっている。
失った時を清算することはもう難しい。中途半端に過去を見つめてもがき、這い上がることはできず、落ちぶれた自分を認めることもできず、
腐っていく。

左足から腐っていく。
皮膚が剥がれていく。
こんな風になることを最初から望んでいたわけじゃない。
自らの甘さを叱咤する強さが無い。
「手遅れだ」と呟く口元が溶けていく。
それが俺の見た世界の全てだった。