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【インハリット】オリジナルスタンドSSスレ「宝石の刻(とき)」【スターズ】第十七話

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orisuta

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かつて、イタリアからは多くの人間が新天地へと希望を求めて、アメリカへと移住していった。ベルベット・フチーレの祖父もその一人であったが、夢破れて家族と共に故国へと戻っていった。
が、アメリカ育ちの息子は、父母の故国になじむことが出来ず、常にアメリカを懐かしんでいた。
その影響を受け、アメリカ風のファッションを好むようになったベルベットであるが、彼女のモットーは「人生楽しんだ者が勝ち」であった。
ピザを食べることを楽しみ、映画を見ることを楽しみ、男と寝る快楽を存分に享受する。金がなければ、むかつく顔をしたやつの股間を蹴っ飛ばして財布を奪い取る。
時には見つかり、警察から慌てて逃げる一幕もあったが、概して本人としてはハッピーな人生だったと言える。
頭が軽い、と思われがちであったが、一々細かく考えるくらいなら動く方が手っ取り早い。彼女はそう考えてきた。

だが、ある時彼女は『定まった運命は、人間には変えることが出来ない』ということを知る。
その夜、彼女は金で自分との逢瀬を買いたい、という一人の男とホテルの一室で寝ていた。が、突如ドアをこじ開けて入ってきた男が、つい先ほどまでセックスしていた相手の脳天に銃弾をぶちこんだのだ。
後にしてわかったことだが、彼女が寝ていた相手は、指名手配中の銀行強盗団の一員であり、盗金を一人占めして高跳びした為に仲間に命を狙われていたのである。
噴き出す血潮に飛び散る脳漿。あまりの急展開に、彼女は悲鳴すら上げる事が出来なかった。それに、「顔を見られたからには生かしておけない」とでも言わんばかりに銃を突きつけた男だが、なんと引き金を引いても弾丸が発射される事はない。
不発だ! そう判った時、生きようとする本能からか、ベルベットの身体は頭脳よりも先に動いていた。体を覆っていたブランケットをはねあげて、動揺した相手にかぶせると共に、飛び起きる勢いに乗って喰らわせた足蹴りで銃を叩き落とす。
拾い上げたリボルバーを拾い上げ、ブランケットにくるまれてもがいていた相手の心臓を無造作にぶち抜く。奪い取った銃が、たとえ不発があったとしても、引き金を引けばシリンダーが回転して次の銃弾が発射される構造のリボルバーであった事が彼女に幸いした。
人間、極限状態へと陥っちまえば、案外落ち着きが出るもんだねぇ。そんな事を益体もなく思いながら、ベルベットは弾倉を確認し、念には念を入れて死体から弾丸を奪い取り、服も着ないで部屋の外に飛び出す。
当然のことだが、部屋の外には見張りとして二人の男が銃を片手に待機していたが、彼らは二発目の銃声の後出てきたのが仲間でなく、全裸の女であった事に驚愕し、慌てて彼女へと銃を向ける。
が、銃は打てば当たるというものではない。照準をつけもせずに、ガク引きしてしまえば、発射の衝撃で銃身が大きく動き、明後日の方向へと弾丸は飛んでいく。この時もそうであった。全裸の女の出現という異常な出来事に、彼らの手元は狂っていた。
弾丸は彼女の頬を、太腿をかすめて壁へと着弾し、ベルベットは何事もなかったかのように近づいていく。その驚きで、更に手元は狂いがちになり、弾丸は奇跡を通り越して悪夢のように彼女をことごとくかすめて着弾していく。
その中で、彼女は弾切れになって慌てる一人の男に接近するや、罵声を言いかけた口へと銃口をつっこみ、
「ちったぁ落ち着いたらどうなんだい? このタマ無し野郎が!」
と言うや否や、頭をふっ飛ばし、更に緩んだ掌から落下するグリップを蹴りあげ、左手で掬い取ったリボルバーに弾丸を込め直し……
「お楽しみを邪魔するもんじゃないよ。このドアホ!」
死体越しに、最後の一人の脳天めがけてありったけの弾丸をぶち込んだ。
 
 
 




**

ベルベット・フチーレが逮捕され、銀行強盗団の一員として刑務所にぶち込まれる事になった時、耳を疑ったのは彼女だけであった。自分が相手を撃ち殺したのは正当防衛ってやつじゃないのかい?
だが、薄暗いとはいえ、夜道よりは確実に明るいホテルの廊下で弾丸を外す人間が、そして飛び交う弾丸の中で冷静に動ける人間がいるはずがないというのが常識的な見解だというもの。そして、元が手配中の強盗団の内輪もめだったのが災いした。
おまけに、証言をしてくれる人間なんて一人もいない。ベルベットは頭を抱えた。もう人生を楽しむなんて無理なんだ……
しかし、すぐに忘れ去られるであろうこの事件に注目していた人間達がいた。
「この事件何だがよー、どーも俺が組織に入るきっかけとなった事件に似てんだよなぁ。内容からして、この女はスタンドを身に着けていたとは思えねぇけどよ。てめーは如何思うんだ、ステッラ」
「正当防衛だとすると、この女は相当な銃の才能を持ち合わせているという事になりますね。この手の人間が刑務所に入れば、何か問題を起こさないはずがないので、今すぐ判決を覆す必要があるでしょう」
事件に着目したのは、パッショーネの参謀と、ボスのお膝元であるネアポリスを統括する幹部であった。彼らの下には、勢力下にある南イタリア全土での事件が、細大漏らさず情報管理チームからもたらされている。
報告内容に二人が色めき立った事に、情報管理チーム担当の幹部は、「これはボスの下にも連絡を通すべき大事になったな」と思いつつ、確認の言質を取ろうとした。
「ならば、『試験』を受けてもらうという事で構わないということですか? それならば、ボスの『矢』を使用出来るかお伺いを立てておきますが」
「いや、『矢』を突き刺すより、『コインロッカー・ベイビーズ』を仕込ませた箱の方が、向こうも気が楽だろう。……どちらにせよ、命の危険がある事だけは伝えねばならないだろうが」
「どうなるにせよ、それが彼女の運命でしょう。『コインロッカー・ベイビーズ』も、試験場所を用意すれば、ポルポの試験と違って余計な犠牲は出ませんからね」
こうして、無罪判決を勝ち取った彼女は、組織の試験を受け、合格したのであった。

**

「ステッラ・テンぺスタ、ウォーヴォ・クルード、スカリカーレ・ストゥラーダ、ベルベット・フチーレ、この4名は私の敵ではない。だが、新入りのスタンド使い、ジョルナータ・ジョイエッロの能力は警戒が必要かもしれん……」
ヴィルトゥのボスは、配下が差し出したステッラチームの報告書に目を通し、眉を顰めた。他のメンバーは経験豊富であるがゆえに、逆にこれまでの戦歴を元に実力を判断出来るが、新入りの人間に関してはそうはいかない。
「『体の一部を植え付ける』能力だけならばさしたる脅威ではない。だが、フルトを斃した際に見せた『敵の肉体から離れた一部を掌握することで、そのスタンド能力の一部をも掌握する』能力と、躊躇いもなく自身の肉体を作り変えて戦える異常な思考は侮れん。
真っ先に命を奪うべき相手かもしれん……」
本能的な直感で危険と認識した相手へと思いを馳せる男の背に、何時の間にか地下空間へと現れた部下が静かに声をかける。不快気な表情で振り向いた男に、部下は物静かに語り始めた。
「ボス、『エイジャの赤石』をフェリータが確保いたしました。只今、こちらへと向かっておりますが、あの女は復命のついでに、出来る限り多くの敵を『事故死』させる、と言っておりました」
『赤石』の入手は大功ではあるが、増長にも程がある。復命するならば、それを先に行えばいい! 益々不快感を募らせたボスであったが、やがて彼は思い直したのか、
「ならば、ジョルナータ・ジョイエッロを真っ先に狙うように、と伝えろ。治療役を消去すれば、敵チームは自滅するからな」
と、ズマッリートに命じた。
 
 
 




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真っ暗な闇の中、一台の車が走っている。乗っているのはジョルナータとベルベットだけだ。残りのメンバーより先行し、遠回りしてローマへと向かっている為に周囲に人気は殆どないようだが、暗いからはっきり判らない。
家もまばらな田舎道を走りながら、しきりに背後を警戒していたベルベットは、その様子に安堵の吐息をついた。
「ベルベットさん、私達は『ヴィルトゥ』の刺客を撒いたんでしょうか? もちろん、今朝倒した相手が最後の刺客でない、と仮定しての話ですが」
運転していたジョルナータが問うのに、ベルベットは、
「まだ判んないねぇ。捲いたとしてもこの先はやつらの本拠地。前から向かって来るって可能性もあるさ」
「挟み撃ちになる可能性があるってことですね。なら、いっそのこと追手を待ちかまえて、返り討ちにして、それからローマに向かった方がいいのではないでしょうか。今なら、私達が何処からローマに侵入するかは判別できませんから」
そう、ジョルナータが提言した時だった。
『おもしれぇじゃねぇか。返り討ちにしてみろよ。ったく、フルト様が殺された付近での防犯カメラや何やらの画像をしらみつぶしに調べて、てめーらを探すのは大変だったんだぜ?』
ベコン、と凹んだ天井の上から声がしたのは。どうやら、後部座席の後ろ側の屋根に、何時の間にか敵が乗り込んでいたらしい。
「「!」」
その言葉に、反射的にスタンドで銃撃するベルベットであったが、彼女は信じられないものを目にした。着弾した場所から、屋根が極小規模な爆発を起こして吹っ飛んでいったのである。
規模が規模だから車内の自分らには怪我がないのが救いだった。吹っ飛んだ後部ガラスから、せせら笑うスタンドの頭が見えた。それの手には、こちらと対話する為か携帯電話が握られている。おそらく、遠隔操作型のスタンドなのだろう。
『おっと、これ以上車をブッ壊そうとするのはやめた方がいいぜぇ? 俺様の”ボンバー・キング”の能力は、”体から流した微弱な電流で感電させたものの数字を爆弾化させる能力”だ。
この車はボディの強度も窓の開閉の度合いも、それどころか”速度”まで爆弾化されてるのさ。速度計が”デジタル表示”に変わってるのがその証拠さぁ。つまりはよぉ、爆死を防ぐためには、俺様の言う通りに車を走らせて、目的地で能力を解除してもらうしかねぇってことだぁっ!
亀を連れていねぇようだけど、残りの連中は』
調子に乗って、電話越しに得々と語る相手に、ベルベットは渋い顔で舌打ちをしたが、ジョルナータは軽くため息をつき、
「貴方が忘れている事が一つあります。ガラスは絶縁体ですから、感電させようがないんです。つまり、パワーウインドは爆弾化できても、窓を破壊するのは可能だということです!」
『ア゛ぁ?』
「要は、こういうことです!」
インハリット・スターズの拳が、いきなり窓ガラスを叩き割って、車上へと伸びる。いきなりの攻撃に、『ブゲェっ!』と、叫び声を残して、車の上からスタンドが落下していった。
が、振り向いたベルベットが見たのは、即座に体勢を立て直して、猛然と追いかけるスタンドと、これまでどうやって姿を隠していたのか、爆音を上げて追跡してくる一台のバイク。
「ちっ、隠れて追跡しやがったのかい。面倒くさいやつだねぇ」
「どうやら、相手の能力射程はかなり広いみたいですね。叩き落としたのに、まだ能力は解除されてないみたいです」
二人は申し合わせたかのように苦い顔になった。ともかく、この車に残っていてもしょうがない。脱出して、やつを仕留めないといけない!
「いくよ、ジョルナータ。あんた、如何すりゃいいのか判ってんだろ?」
「当然です!」
頷き交わし、ベルベットは先程インハリット・Sが叩き壊した窓から外へ二発銃弾を放った。が、放った弾丸は当然彼女のスタンド『ベルベット・リボルバー』のスタンド弾である。銃の師のスタンドとは違って、実弾ではない。
故に、インハリット・スターズからしてみれば、この銃弾は「スタンドの身体の一部を生やす事が可能」なものであった。
弾丸が飛来していく勢いを借り、生やした腕に引っ張られて車を脱出する二人。その先にあるのは、川だ! 二人の動きに、最後の追手、ヴィストーソは却ってにやりと笑った。やつらは、俺のスタンド能力を真に理解していねぇ。川の中なら、こっちの方が有利だ!
彼は、バイクの速度を上げ、一気に川へと突っ込んでいった。
 
 
 




**

刺客が、自分から川へと飛び込んでいこうとする様に、ベルベットは何か不吉なものを感じた。自分達も弾丸ごと川へと着水して衝撃を緩和するつもりだったが、そのままではまずい!
「ジョルナータ、近くの木でも引っ掴んで、落下する速度を落としな!」
そう言いつつ、自分もちょうど目の前を過ぎた木の枝を掴みとる。一瞬遅れてジョルナータが枝を掴むのが視界の端で見えた。弾が飛び去る勢いによって、枝はすぐに折れてしまうが、少なくとも勢いを殺す事は出来た。おかげで二人が着水したのは敵より後となる。
バシャン! 二人が着水した為に、波が水面全体へと広がっていき……、ドン! ドン! ドン! 何かが、連続して炸裂した。水を伝わって衝撃波が二人を襲う。やられる! ベルベットが思わず目を瞑った時、
「きゃぁっ!」
と、ジョルナータが悲鳴を上げた。目を開けたベルベットは見た。ジョルナータが自身に体の一部を生やし、衝撃を肩代わりした姿を。

**

「ベルベットたちの連絡がないな……。敵との戦闘があったかもしれない」
ジョルナータらよりはるか後方、ステッラ達は同じルートを別の車でたどっていた。こうすれば、敵が先行するジョルナータらを襲えば逆に挟撃する事が出来るはずだった。
だが、突然の車両トラブルが災いし、新たな車を手に入れるまでの間に先行するジョルナータらの車と思った以上に距離が開いてしまった。
おまけに彼女らからの連絡もないから余計にまずい。焦燥するステッラであったが、
「心配ねーよ。ベルベットのやつは結構いい加減だからよー、忘れてるだけだって」
と、ストゥラーダは呑気に構えていた。
 
 
 




** 

一歩先んじて着水したヴィストーソは、その際に川全体に放電していた。故に、ジョルナータ達が着水した衝撃で、水面に浮かぶ泡から川底を泳ぐ魚に至るまでの全ての『爆弾』が連鎖して誘爆していったのである。
流石に、衝撃波を無効化する事は出来ないがために、ヴィストーソ自身も負傷はしたが、あらかじめ備えが出来ていた為にさほどダメージはない。精々、岸へと打ち上げられた際の打ち身程度のものだ。
より痛手が深いのはベルベット達の方であった。
「じょ、ジョルナータ!」
ベルベットは、衝撃で気絶したジョルナータを抱え、生やしたリボルバーを足場に死に物狂いで岸をよじ登った。死んではいないようだが、このままでは不味い! 水中での戦闘では、今度は自分まで爆弾化させられかねないし、なにより意識を失ったジョルナータが足手纏いだ!
やっとの思いで岸へと上がったベルベットは、反対側の岸にいる敵を憎々しげに見やった。相手の方が早い、そしてこちらのスタンドは遠距離での戦闘に向いたスタンド。敵に川を越えられたら勝ち目はない。せめて、仲間が追いついてくるまで今の状況を保たなくては!
ベルベットは自らのスタンドを構えた。その様子に、ヴィストーソは笑った。
「やめときな、ベルベット・フチーレ。てめーの『弾丸が着弾した場所からリボルバーを生やす』スタンド如きじゃ、俺に対抗するのはまず無理だ。降参して、残りの仲間の居場所を吐くんなら、見逃してっやっからよォ。ほれ、銃を下せや」
「なめてんじゃないよ! あたしら『パッショーネ』の人間が、敵に尻尾を振ったりするもんかい!」
叫び声と共に連射される弾丸、それを『ボンバー・キング』の拳が迎撃する。ヴィストーソのスタンドは、弾丸を打ち落とすほどのパワーすらない。しかし、スピードでは勝るが故に、拳を当てて弾丸の軌道をずらす事などいとも容易い。
そして、彼の後方で続々と生えてくるリボルバーについても話は同じだ。一つだけ違うのは、生えてきたリボルバーから放たれる弾丸の方は、弾く際に電流を流す事であった。
逸れたリボルバーの弾丸は、ヴィストーソの後方から放たれたが故に当然ベルベットのいる岸の側へと飛んでいく事になる。それらがベルベットに当たる事がなくとも、炸裂した場所からは、爆風に乗って様々な物が彼女へと襲いかかっていく。
石片に、金属片に、全身を貫かれながらも、しかしベルベットは『ベルベット・リボルバー』を乱射し続けた。
弾丸もスタンドの一部であるからには、リロードの手間は少ない。そして、幾ら弾かれようがリボルバーは生えていく以上、いつかは相手が対応しきれなくなる程の弾丸の雨を降らせてやる事が出来るはずだ!
そして、その時がついに訪れた。『ボンバー・キング』のラッシュをくぐりぬけた弾丸が、とうとうヴィストーソの身体を貫いたのである。
「よしっ!」
ガッツポーズを見せるベルベットであったが、突如その目に血液が飛び散った。ヴィストーソがにんまりと呟いた。
「てめーの考えくれぇ、お見通しだってんだよ。だからよぉ、あえて一発喰らってやったんだ。爆弾化させてな……。極小の爆発で、俺の身体から血を飛び散らせてやったぜぇ!」
眼潰しに動揺し、棒立ちになるベルベットだが、相手の言葉に反射的に更にリボルバーから弾丸を放つ。しかし、その時既にヴィストーソは体をずらしていた。故に、後方に生えたリボルバーからの弾丸は見当外れの位置を引き裂いていき……
 
 
 




「流れ弾が心臓へッ! 勝った!」
勝ち誇るヴィストーソであったが、しかしこの瞬間状況は暗転した。カキィン! 音を立てて弾丸は宙へと舞う。何者かが、弾丸を弾き飛ばしたのだ。その腕が生えている場所は……ベルベットの胸?!
「気を失っていてすいませんでした、ベルベットさん。でも、もう大丈夫です」
何時の間にか、ジョルナータは意識を取り戻していた。そして、倒れかけのベルベットを支え上げ、怒りに満ちた目でヴィストーソを見つめていた。
「ハッ、遅いんだよ。んなこと言ってる暇があれば、とっととやつの動きを止めたらどうなんだい。あたしがやつを仕留めるんだからさ!」
負傷してもあくまで強気なベルベットの、目を擦りながらの言葉に、ジョルナータがクスリと笑った直後、
「うおァッ! な、何だ!」
ヴィストーソは、自分の足全体に何かが絡みつき、貫かれる痛みを感じた。闇の中で、ジョルナータの目が怪しくきらめいた。
「インハリット・スターズの能力射程の外に居ると安心して、私が毛細血管を指先から植え付け直し、闇に紛れてあなたまで伸ばしていったのは見抜けなかったようですね。
網目状に包み込んだ血管針で足を蜂の巣にすれば、もう動けませんよね? そしてッ! 血管の表面に薄く骨を植え付ければッ!」
骨の足枷が完成するッ! その一部がペグのように地面に打ちこまれ、ヴィストーソが倒れこむことさえ封じ込める。
「や、やべぇ! 『ボンバー・キング』、この骨の網を爆破しろォーーーーーーーーーーーーーーーッ!」
命令を下すヴィストーソ。そして、骨の網に拳を打ちつける『ボンバー・キング』。ジョルナータの骨の強度が「爆弾化」され、彼女の胸元にデジタル表示が生じる。ふっ飛ばせれば、両方とも同時に仕留められるだろう。
だが、彼のスタンド自身の破壊力はさして高いモノではなく、爆弾化も感電させ、更に数値を零にしないといけない為に、この急場に間に合うだろうか?
数値を早く零にしようと、骨の網に向かってスタンドが拳を叩き込めば、ジョルナータは他の部位の骨を削ってでも、殴られる部位に植え付ける骨の密度を増やしていくことで対応する。その中で、ベルベットは己がスタンドを構えた。
「さぁて、今度は外さないよ? くらいな!」
ガァン、ガァン、ガァン、ガァン、ガァン、ガァン! と音を立てて、『ベルベット・リボルバー』の弾丸が、ヴィストーソの身体を貫いていく。それでも、ボンバー・キングはラッシュの速度を緩めない。
「体内に生えたリボルバーじゃ、弾丸の軌道を変えられるものかい!」
ガァン、ガァン、ガァン、ガァン、ガァン、ガァン! 腹中の臓器を押し退けて生じた6丁のリボルバーが、それぞれ六発の弾丸をヴィストーソの体内へとばら撒いていく。
だが、そうなってもなおボンバー・キングは殴り続けるのを止めない。既に、ジョルナータの骨には放射状にヒビが広がっている。ヴィストーソが息を引き取るのが先か、ジョルナータの骨の強度が限界を迎えるのが先か!
そのデッドヒートに敗れたのは……、ヴィストーソであった。デジタル表示が1のまま、ゆっくりと薄れていく。その様に、ジョルナータとベルベットは精根尽き果てて座り込んだ。


今回の死亡者
本体名―ヴィストーソ
スタンド名―ボンバー・キング(『ベルベット・リボルバー』の弾丸六発に体を貫かれ、体内に生やされた六丁のリボルバーから、36発全弾を心臓に叩きこまれて死亡)




使用させていただいたスタンド


No.448
【スタンド名】 ボンバー・キング
【本体】 ヴィストーソ
【能力】 体から微弱な電気を流し、感電させた物品または生物の「数字」を「爆弾化」する

No.1911
【スタンド名】 コインロッカー・ベイビーズ
【本体】 パッショーネの幹部
【能力】 密閉された空間に引きずり込み、スタンドを発現させる




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