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50話「『ヒートウェイヴ』は燃え尽きない―いつも、いつまでも」の巻

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orisuta

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――1年後 2011年 必府町

「……あ、アクター。」

「……わりーわりー亜希。遅れちまった。アイの準備が中々終わらなくってさァ~。」

「言い訳なんか聞きたくないな!今日、行く予定だって前から話してたじゃん!」

「ごめんね、亜希さん。おにいちゃんがノロマで。」

「てめぇのせいだろうがッ!

 ……で、カズハは?」

「…………カズハちゃんなら、先に行ってるって。

                  JOJOと。」

「…………そうかァ。」




 「『ヒートウェイヴ』は燃え尽きない――『いつも、いつまでも』(オールウェイズ・アンド・フォーエバー)」の巻 




2012年 必府町

カズハ「『―――ヒートウェイヴ』!!」

耀壱「うぐおおおおおおおおッ!!?」ダッ!

すぐさま背を向けて走り去る耀壱。

カズハ「逃がすか――!」
FR『FIREッ!』ドシュッ

AS『うおおおおッ!』ボシッ

逃げる耀壱目がけ『ファイナルレクイエム』がコンクリートの瓦礫を投げつけるが、これは難なく消去される。

カズハ「チッ!だがよしッ!『ヒートウェイヴ・セントラル・ヒーティング』!」グッ!

AS『しッ……!しまった……!『瓦礫』をガードしたせいで隙が……!」

カズハ「射程圏内ッ!!」

ズ オ オ オ オ

ダッ!

一気に足を踏み込み、距離を詰める。
耀壱との距離は既に2m。ちょっと『ヒートウェイヴ』を動かせば届く距離。

ダッ!

カズハ「くらえ……うぐッ!!」フッ

『ヒートウェイヴ』を攻撃に使うべく、『セントラル・ヒーティング』を解除し、攻撃に移ろうとする。
しかし、ここでカズハにとって予想外の事態が起こった。能力を解除した瞬間、体の動きが鈍ったのだ。

一瞬にも満たない時間。もう、『ヒートウェイヴ』を使うことは難しいということをカズハは悟った。
そして。

耀壱「うおおおッ!!」スッ

カスッ

『ファイナルレクイエム』の拳が耀壱の頬を掠る。
耀壱はそれに反撃をする余裕もなく、ただただ転がって距離をとった。

が、回避を終えた耀壱の表情には既に余裕と勝利の自信が満ち溢れていた。

カズハ「はあぁーっ、はぁーっ……!」
耀壱「どうした?え?カズハ、『ヒートウェイヴ』はもうおしまいか?」

ドド ド

耀壱「だよなぁーっ……。『ヒートウェイヴ』は強力なスタンドだ……。まして、
    そのフザけた『セントラル・ヒーティング』とやらは『オリジナル』であるJOJOでさえも数秒しか持たない大能力!」

耀壱「お前程度の精神力のスタンド使いにそうそう使いこなせるはずがないよな……。」

カズハ「ぐ…………!」

耀壱「どうした?図星か?フハハハ!一気に形勢が逆転したな!今のお前は「無能のスタンド」を持つだけの少女!」

カズハ「ううッ!」グルンッ ズダッ

耀壱「建物の陰に隠れて逃げ回るか?無駄だ。この程度、いくらでも消して通れる……。」

耀壱「が、それでは面白くないな……。鬼ごっこでもしてやろう、命を賭けた鬼ごっこをな……!」バッ

カズハ(―――――。)

カズハ(1分。)

カズハ(『ザ・ファイナルレクイエム』が新たなスタンド能力を『使用』できるようになるまで、『1分』。)

《カスッ》

《『ファイナルレクイエム』の拳が耀壱の頬を掠る。》


カズハ(あのとき既に、『アクセンスター』の能力は『理解』し、既に使えるようになっているわけだ・け・れ・ど……。

     新たな能力を使うまでには、『1分』、インターバルを置く必要がある。『ファイナルレクイエム』の特性ね。)

耀壱「カズハあああ……!」

カズハ(それも、『ファイナルレクイエム』のみで、能力を使わずに『1分』……!
     JOJOじゃないけどオーマイって言いたいわね……!)

耀壱「見つけたァ!」バッ!

シィーン

ビルの隙間を覗きこむ耀壱。
しかし、そこにはドアのあいたビルがあるだけで、カズハの姿がなかった。

一瞬、動きの止まる耀壱。

耀壱「……フン!子供だましがッ」バッ

耀壱が手を突き出すと、ビルのドアが消し飛んだ。
消えたドアの陰には、カズハの姿。

カズハ「……!」シュバッ

耀壱「……屋内に逃げたか……!面白い、鬼ごっこも大詰めと行こうじゃあないかッ!」ダッ


カズハが逃げ込んだビル、屋上へと繋がる階段

カズハ「うあああッ!」バッ!

耀壱「『消えうせろ』ッ!」ドジュウン!

ダンッ

カズハ「くっ……!はあ、はあ……!」

耀壱「フハハハハ!どうしたカズハァ!さっきまでの威勢はどうしたァ!所詮JOJOの力を借りなければ何もできないのか!」

カズハ「あと……10秒……!」ダッ

耀壱「フン!屋上に逃げ込む気か?どうなるか分かっているくせに……往生際の悪い娘だ……。」

耀壱「よかろう!屋上で逃げ場を失ったきさまを始末してくれるわッ!」ダッ

ガチャッ バタン

カズハ「……3……!2……!1……!」

ギィ

耀壱「フン、来てやったぞ。」

カズハ「『0』ッ!『ザ・ファイナルレクイエム――』」

耀壱「貴様の墓場に―― ッ!?」

カズハ「『アクセンスター』ッ!!」バッ

耀壱「き、きさまッ!何を言ってッ」

ダッ!

耀壱「う、うおおおおッ!」

――ごめんね、JOJO。

カズハ「うああああああああああああああああああああああああああああッ!!!」

JOJO、前に『私に人殺しはさせない』とか言ってたけど……。
それ、守らせてあげられそうにない。
だって、私には、こうする以外、方法なんて……見つからない。
ここで、耀壱を消し去らないと、全て水の泡になっちゃうから。

大丈夫、耀壱を消せば、多分、『消えちゃった』ってことくらいは、思い出してもらえると思う。
JOJOを忘れたりなんて、絶対にしないから。みんな、悲しんでくれるから。

だから―――




―――だから、安心して逝ってなんて、そんな無責任なこと、言えるわけないじゃない!!!


耀壱を『消し去ろう』とした瞬間、カズハの脳裏に浮かんだのは、『友人』たちの顔。
アクターや、亜希、ミキ、アリス。とっさに脳裏に浮かんだだけでも、これだけの人数。
おそらく、JOJOなんかは自分の知らない友人も多いことだろう。

アクターは、親友がある日突然消えたらどんな気持ちになるか?
亜希は、自分を慕ってくれていた少女と二度と会えないとしったら、どんな気持ちになるか?

『いなくなってしまったことすら分からないことこそ最も恐ろしい』。
だったら、『いなくなってしまったことが分かるだけでも幸せ』なのか?

それは違う。断じてあり得ない。

カズハは断言できる。母を失った彼女なら分かる。

消えてしまったことを知ったら、確かに悲しむことはできる。
できるが、大切なものが奪われたことに変わりはないのだ。

カズハ(この、クソオヤジ一人に対して、雷鳥さん、萌、そしてJOJO!
     三人も失うなんて、そんなのはJOJOの望んだ勝利なんかじゃない!!)

だとしたら。全員が笑って迎えられる結末があるとしたら――……。

そう考えた時、カズハの脳裏に電流が走った。
そうか、どうしてこんなことに気が付かなかったのか。

目の前の男を消すだけでは、JOJOの望んだ勝利を実現することは不可能。
何故なら、男を消し去ったところで『アクセンスター』で消し去られたものは戻ってこないから。
だとするならば。自分が『消し去る』べきものは、もう一つしか残っていないじゃないか。
それは目の前にいるこの樋口耀壱なんかではなく、もっと、今自分に向かってくるもの。

『触れられないもの』すら『消し去れる』『アクセンスター』だからこそ、『触れられるもの』。

耀壱「この、ちっぽけな娘ごときが――」

カズハ「あんた、『最も乗り越えるのが難しいもの』って、考えたことあるッ!?」

耀壱「『消え去れ』ッ……!」

カズハ「それは、『自分自身』よ……!あんたは自分を乗り越えられる?」

『消し去るべきもの』とは。

ドギュウウウ―――ンンッ!!

それは他でもない、『アクセンスター』という、最強で無敵な能力だった。

耀壱「『アクセ――……な?」

カズハ「『ザ・ファイナルレクイエム――アクセンスター』ッ!あんたの能力を『消し去った』ッ!!」

つまり、それが意味することは。

ド ド ド ド

カズハは、視界の端、ビルの隣の路上に見慣れた金髪を捉えた。
多分、黒い長髪の女性も、人懐こそうな茶髪の少女も、
そして敵の存在を教えるために命を賭けた、黒髪の少年も、同様に戻ってきているのだろう。
彼らを『消し去っていた』あの能力は、もうこの世にはないのだから。

しかし、今は喜びや悲しみに浸っている暇はない。自分がすべきことは、唯一つ。

FR『ウグルルルルルアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』

傍らにいる『ファイナルレクイエム』は、既に自らの姿を取り戻していた。
まるで、目の前の男に引導を渡すのは、自分の仕事だと言わんばかりに。

耀壱「きッさま程度にィィィイイイイイイイイッ!!」

        バ ギ ッ

ドッザア!

耀壱「ぐ、くく……くはは……!」

自らの切り札であり唯一の武器である、『消滅能力』(アクセンスター)を奪われてなお、耀壱は笑っていた。

勝算がないから笑っているわけではない。
いや、正確には、自分では勝利できる算段は持っていない。
ただ、「勝てるアテ」があると彼は信じていた。

耀壱「……私の、『消滅能力』を消し去ったと、きさまは言ったな。カズハ。」

耀壱は嘲笑う。

耀壱「馬鹿が、私の手には今、『矢』が戻ってきているッ!」

バッ

耀壱が矢を天高く掲げる。
思わず、カズハはしまった、と思った。

すぐさま『アクセンスター』の能力を使い、『矢』を消そうとするが、どう考えても間に合うタイミングではない。

カズハ「間に、合――え―――」

ドズゥ!

ド ド ド ド

『……イヤ…………。コレデ、終ワリノヨウダナ。耀壱。』

カズハ「!?」バッ

上からの声にカズハが反応し振り向くと、そこにはいかにも疲弊しきった様子の『ディープ・フォレスト』。

カズハ(そうか……!『矢』が帰ってきたから、『ディープ・フォレスト』も復活したのか……!)

耀壱「フ、ハハッハ!終わりだと?『ディープ・フォレスト』!『矢』を奪われたきさまごときが、何をほざく!」

D・F『耀壱……キサマモ既ニ気ガツイテイルノダロウ?キサマガ『矢』ヲ消シタノハ何故ダ?』

耀壱「……う、ぐ?」

『ディープ・フォレスト』がそういった瞬間、耀壱は何か忘れていたものを思い出したかのように様子を一変させた。

ボゴォ!

肩に穴があく。腕に立て続けに穴が開き始めた。
まるで、耀壱が『消し去った』傷跡を復元するかのように。

D・F『矢ニ選バレナカッタカラ、ソレデ死ニカケタカラワザワザ私ゴト『矢』ヲ消シテイタコトスラ、忘レタノカ?』

耀壱「うおおおああああああ!!くそ……!『アクセンスター』!」バッ

D・F『必死ニナレバ救イノ手ヲ差シ伸ベテクレルホド、『運命』ハ甘クハナイ……。』

『ディープ・フォレスト』はそういい残すと、どこかへと飛び去った。
傍らの『アクセンスター』が『矢』に触れるが、能力を失った『アクセンスター』に『矢』は消せない。

耀壱「うおおおおッ!やめろッ!くそ、この『矢』を止めろォオオオオオオオ」

耀壱「オ。」ボゴォ

その瞬間、耀壱の首筋にまで『穴』が開いた。

耀壱「うおおおあああああああああああああああああああああああああああああああッ!」

ボゴボボゴ ボゴォ ボゴッ

それから先は、非常にあっさりしていた。
まるで『パズルのピース』が落ちるように、『樋口耀壱』という存在はボロボロと崩れ落ちていき――

最後にはまるで『アクセンスター』に触れられたかのように、綺麗にその存在は消え去ってしまった。

『矢』は、まるで元あるべき持ち主の元へと戻ったかのように、忽然と姿を消していた。




 ――1年後 必府町 



亜希「ほら、アクター!さっさと行かないと!今日は久々に雷鳥さんも来てるんだよ!?」
アクター「分かってるってのォ、で、萌はどうした?」
亜希「うーん、それが、なんだか連絡つかないんだよね、今日は確かに来るって言ってたんだけど……。」

「おぉぉぉ――――ねぇぇぇぇぇえ~~~~~~さぁぁぁぁぁ――――ッ」
亜希「うーん?この声は……?」

萌「MAAAAAAAHHH――――ッ!!」ドギューン!
亜希「ギャース!?」
萌「スンマセンお姉さま!ちょっとお供えの花買ってたら遅れちゃいました!!お仕置きしてください!!」
亜希「……萌ちゃん?場所考えようね?」

萌「……にしても、面白くないですよねー、カズハのヤツ。あの事件の後、なんかキャラ変わったし。」
亜希「……まあ、仕方ないんじゃあないかな?いろいろあったっぽいし。じゃ、もうすぐ時間だし、さっさと行こ?」


必府町 墓地

「…………。」

墓の前で、手を合わせて目をつぶっている少年と、少女。

「あら、あんたたち、もう来てたの?」

一通り祈りを済ませた二人の背後から、声がかけられた。
誰かは用意に想像がついたが、一応それでも振り返る。

そこにいたのは、年齢10歳でも普通にまかり通りそうな完全合法な幼女――もとい女性。

ミキ「早いもんよねぇ、もう一年、かぁ。」

ミキはそう言いながら、少年と少女の隣に来て墓に向かって手を叩く。

ミキ「……あの戦いで、死んだのって、湾太君だけ、だったんだよね。」

結論から言うと、『アクセンスター』で消し去られた人間――
JOJOに始まり、平塚雷鳥、鷺沢萌、捨伊比湾太は復活した。
遠距離からの「触れない消去」によって消された最初の三名は、外傷もなかったためすぐに意識を取り戻せた。
しかし、湾太の場合は勝手が違っていた。彼は、背後から直接心臓をブチ抜かれていたのだ。復活後まもなく、湾太は絶命した。

「……湾太が命を懸けてくれたおかげで、俺たちは今ここにいるんだ。悲しむのはアイツに悪いだろうがよ。な、カズハ?」

金髪の少年はそう言って笑う。

「うん。……JOJO、……そろそろ来たみたいね。」

カズハと呼ばれた少女がそう言うと、墓地の入り口からゾロゾロと人がやって来る。

亜希「ふぅ、ミキ先生もう来てたんだ。」
アクター「さて。じゃあ、そろそろ始めるって感じでいいのか?」
萌「馬鹿、まずはお墓参りだろうが。ホント馬鹿だな。馬鹿。ばぁーか。」
アイ「ばかー!」
雷鳥「コラ、死者の前であんまり馬鹿馬鹿言うモンじゃないわよ。」
アリス「本当に賑やかですねー、墓地なのに。」
店員「…………。」
リオ「私魔法少女なんですけど、お墓参りってもう少ししんみりやった方が……、こういうものなのかな?」

JOJO「――全員揃ったか?」
一同「うん(おう)!」

JOJO「湾太……。待たせたな。あれから1年、やっと今日、『ディープ・フォレスト』との闘いに決着が着きそうだ。」

墓の前で、JOJOが静かに口を開く。
今までざわざわしていた他の面子が、急に静かになる。

JOJO「雷鳥が、必死こいて捜索してくれたおかげで、なんとか『ディープ・フォレスト』の潜伏場所を掴めた。」

雷鳥が、「必死こいて」は余計よ、と横槍を入れるが、「はいはい」とJOJOは笑いながら報告を続ける。

JOJO「潜伏っつっても、実際には必府プリンスホテルにいただけだったんだがな。灯台下暗しってやつだ。」

一同が苦笑いする。特に、必府プリンスホテルに滞在していた雷鳥とカズハはバツが悪そうである。

JOJO「今日、これから俺達はそこへ行って『ディープ・フォレスト』を倒してくる。」

そこで、苦笑いをしていたJOJOの目が引き締まる。

JOJO「今日、全部が終わるんだ。だから、――安心して、そっちで俺らが来るのを待っててくれ、な!」

最後に笑顔で締めくくると、JOJOはきびすを返して墓地の出口へと向かう。
その後をカズハが、続いて他の面々が墓に花を添えたり、別れの言葉を言ったりしてから立ち去る。

そうして、誰もいなくなった墓地。

幽霊『……いい友達を持ちましたねぇ、捨伊比さん。』
湾太『やっぱ、そう思います?今でも墓参りに来てもらえるなんて、やっぱり覚えてもらってるってのは嬉しいですよねぇ。』ニコニコ

誰もいなくなったのを確認したのか、墓地には複数の話し声が響いていた。

湾太『どうやら、もうそろそろ俺も成仏できそうですよ。アイツらが『ディープ・フォレスト』を倒せるのか、
    ずっと気がかりだったんですが……どーやらもうその心配はいらなそうですし。
    JOJOの報告聞いたらあの世に行くことにしますよ。』
幽霊『そうですかぁ、そうなったら寂しくなりますねぇ。私もご一緒しましょうか?』
湾太『ははっ、一緒に来てくれるんですか?嬉しいですね。』







 ここまで湾太の妄想 



湾太「――というかっこいい俺な未来を幻視したはずだったんだが。」
JOJO「ねーよ。」

――樋口耀壱消滅から数分後。

……勿論、そんなオチは待っていなかった。
確かに、湾太の幻視した未来の中でも言った通り、湾太は心臓をブチ抜かれていた。
が、心臓をブチ抜かれても人はすぐ死ぬわけではない。
世の中には心臓を分割してもしばらく生き延びたりする人種がいるわけだし、
事実、医療の現場でも心肺停止に陥った患者が蘇生した例などいくらでもある。
まして、『消滅』している間、湾太の体はまったく時が流れていない状態だった。
つまり、穴がふさがってしまえば心臓がブチ抜かれようと問題はない。

そして、それが出来る人物が、今湾太の目の前にいる少年。

樋口耀壱の消滅を見届けたカズハは、すぐさまJOJOを起こしにかかった。
するべきことは一つ。捨伊比湾太の救命。
『アクセンスター』が解除され、湾太のことを思い出したカズハは、すぐさま彼がまだ生きている可能性に辿り着いていた。

「腕」が切断されて残っているという時点で、普通は望みが薄いと考えるだろう。
しかし、逆にそのことが湾太が生きているということを証明していた。

『アクセンスター』は、その性質上、「無生物」は全世界のものをまるまる全て消せるが、生き物は単体しか消せない。
もしも、湾太が完全に死んだ状態で消されたのなら、同じからだの一部である「腕」でさえも、空間を超越して消し去られる。
それが、『アクセンスター』という能力だった。

JOJO「ええと?なんだっけ?俺とカズハがくっついて、で、お前だけが死亡したっていう未来?」
湾太「YES。」

そんなわけでJOJOを引き連れてあの夜「腕」を見つけた公園に連れて行ったカズハも、
さすがに心臓をブチ抜かれているとまでは想像していなかったのだが。

萌「初めまして。初対面で不躾ですけど先輩って馬鹿ですね。」
亜希「こら、萌ちゃん……。」

JOJOの後ろでことの次第を見守っていた萌が口を挟む。
見ると、そこには亜希、萌を始め、アクター、カズハ、アイ、リオ、ミキ、アリスに雷鳥の姿。

JOJO「誰かひとりでも死んでたら完璧、俺らの敗北じゃねぇか。俺ァ負けるのは勘弁だぜ。」
カズハ「完璧に死ぬ間際の人間が吐くセリフを言っていた張本人が良く言うわね。」

カズハ(にしても、あれは『ヒートウェイヴ』が私にコピーされた、っていう意味で良かったのよね……?)

《お前には、いつだって『俺』がついてる。俺がどこに消えようと、お前が死ぬまで、ずっとだ。》

カズハ(いやしかしどう見てもプロポーズです本当にありがとうございました///)
JOJO「ン?どうした?」
アクター「おい唐変木テメェ。」

JOJO「……それじゃ、行くか。」
カズハ「……どこに?」

JOJO「決まってんだろ、終わらせに行くのさ。最後の仕上げを。」

ド ド ド ド

JOJO「……まだ、アイツが残ってるだろ?あの、全ての元凶がよ。どこぞの馬鹿の妄想みたいに、1年も待ってられっかよ。」


      • 正真正銘 2011年 7月 必府町よりほどちかい砂浜

亜希「にしても、いくらカップルだからって先に二人で行く事ないよね!!」

亜希はいかにも憤慨した様子で地団太を踏む。砂が足の中に入るが、ビーチサンダルなので問題はない。
今日は、7月に入り、海開きがあるということで、あの事件に携わったメンバーでプールに行こうという話になっていたのだった。
JOJOら必府高校メンバーは、最初、全員で集合して行こうという話になっていたのだ、が。
JOJOとカズハが突然、「せっかくだし海まで二人で行きたいんだぜ」などと言い始めたせいで、
アリスが「じゃあ、私はミキ先生と先に行ってますね」と言い、
萌は「私はいろいろ準備がありますので、うふふ、うふふふふ。」と気持ちの悪い笑みを浮かべて、
必府高校メンバーは空中分裂するという結末に陥ってしまったのだった。(湾太は既に卒業)

アクター「まったくだ。三馬鹿トリオで馬鹿やってたあの頃が懐かしいぜ……。」

アクターが柄にもなく遠い目をする。
もっとも、三馬鹿トリオとやらで生活していたのはほんの2ヶ月ほどなのだが、
彼にとってあの2ヶ月間は1年にも匹敵するほどに濃密な時間だったのであった。

アクター「あ。」

はた、とアクターは思い当たった。

アクター「そういえば、元々『ディープ・フォレスト』からの自衛、っていう名目で集まってたのに、
     アイツを倒して、JOJOとカズハが抜け駆けするようになってからも、お前、俺と一緒に……!」

アクターに、春の予感。

アクター「お前、もしかして……!」
亜希「あ、それは流石にないわ。知らなかった?私最近萌ちゃんと付き合ってるんだよ?」

と思いきや、萌の努力は一応の実を結んでいた。

アクター「ガッデエエエエエエエエエエエエム!!」

JOJO「何やってんだよ、お前ら?」

腕に少女(水着)をくっつけたJOJO(リア充)が、呆れたようにアクターを見ていた。
(ちなみに、少女の体勢はいわゆる「あててんのよ」スタイルだった)

アクター「……『ブラック・アイズ・ピース』!」
JOJO「ちょっ、おいこら馬鹿!てめぇ何やってんだよ!」

亜希「やめなって!一般の人もいるんだよ!?」
萌「おねぇさまぁ~~ん♪では早速この水着を……ってアクターてめぇ何暴れてやがるゴルァ!」ズラァァ
亜希「何その水着ぃ!?」
アリス「ちょ、ちょっと、鷺沢さんも十分暴れて……っていうかその爆弾危ない!」
ミキ「やーめーなーさーいー!!」
湾太「おれしーらね」
店員「やはり天才か……。」

アイ「おにいちゃん……。」
リオ「け、けっこうユニークで素敵だと思いますよ?」

雷鳥「……わざわざ杜王から来てスタンド騒動に巻き込まれるとは……。それも身内の。」ハァ

アクター「うるせェ!てめ~~はブチ殺す!」
萌「だァからお姉さまに当たるっつってんのがわかんねえのかこのドサンピン!!」
亜希「うわー!誰かアクターと萌ちゃんを止めて~!」

カズハ「…………。」クスッ

JOJO「…………。」フッ


「……オーマイ。」







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