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  • 二次キャラ聖杯戦争OZ Re:visited | アウターゾーン聖杯
  • 温夜

二次キャラ聖杯戦争OZ Re:visited

温夜

最終更新:2024年02月25日 03:09

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だれでも歓迎! 編集
 それは、まだ一ヶ月程前。
吉野順平と胡蝶カナエが事前に同盟を組んでから、しばらく経過した時のことであった。
時刻は夕暮れ前、人気のない月海原学園の屋上のテーブル席に二人は座っていた。

「…………胡蝶さんは。」

 言葉を切り出したのは、順平だった。

「何のために戦うんですか?」

 聖杯戦争に掛ける思いを聞いた。
順平も知っている。カナエの洗練された身動きや、戦いによって死んだという過去を。
だから、彼女ならこれから先も戦い抜くことはできると思った。

「この世界で生きる人達を守るため。」

 それに対してカナエも言葉を発する。

「理不尽に命を奪われ、哀しむ人を生まないために戦うの。そのためなら命は惜しまないわ。」

 それが、彼女の"信念"だと順平も思った。
自分と同じく、死んでから来たというなのに、彼女は前向きに生きている。
そして、"すべきこと"、"信じること"、"願うこと"。自分にないものが彼女には備わっていた。

「……自分のために使おう、って思わないんですか?
与えられた命を、次は自分のために活かそうとは……。」

 順平も、思わず口を開いていた。
"自分のために~"と思うことは人間として珍しくはない。
ただ、その人間として珍しくはないものでもいいから、順平も聴きたかった。
どこか、参考にしたいという意思があるからなのかもしれない。

「思わないかな。」

 迷いなく返ってきたのは、強い意志によるハッキリとした否定だった。

「だって、同じ思いをさせたくないもの。"大切な人を失う"って思いをこの世界の人達に。」

 儚げな表情ながら、カナエは目的の真意を明かした。

(大切な人を失う……。)

 順平も、深く心動かされるものがあった。
自分も大切な人を殺されたからわかる。失った者が持つ"憎悪"。
だからか、その思いを他人にもさせたくない、という善意には共感する。

 ただ、一方で他人の死について、未だ何も思う所はない。
人間の醜悪さを忘れていないからこそ、命への関心が芽生えないでいる。
だからか、カナエの"生きる人達を守る"という思い自体には共感できなかった。

「順平君。貴方はこれからどうするつもりなの?」

 カナエも順平に対し、無垢に問い掛ける。
そこに他意はなく、ただ知りたいという思いであった。

「……わかりません。」

 言葉を詰まりながらも、順平は返す。

「まだ決まらないんです。自分がどうしていこうかさえ……。」

 言葉通りの意味で、今の順平には「何」も思いつかなかった。
"何を信じるか"、"何を願うべきか"、それを探すという目的はあるが、
まずそのために考える、"これからどうするか"、というスタートラインは未だに立っていない。
順平も戦争事に疎い一般人だけあるので、お手上げ状態であったのだ。

「ねぇ、順平君。」

 カナエは机に一枚のコインを置いた。
表面には"表"、裏面には"裏"と分かりやすく描かれたコイン。
突然、目の前に置かれたことに順平も意味がわからなかった。

「この硬貨を投げて決めない?」
「…………は?」
「表が出たら、"はい"。裏が出たら、"いいえ"。で決めるのよ?」

 "それは知っている"、と内心ツッコミを入れる順平。
要するに、"コイントスをするように気軽さで物事を決めろ"という意味がわかった。

「適当ですね……。」
「あら、適当でもいいじゃない?きっかけさえあれば人の心は花開くわ。」

 ポジティブというのか、能天気なというのかと、順平も呆気に取られる。

「まずは、"今どうするか"を決めましょう?」
「……い、いや……。」
「そんなに重く考えなくていいじゃない。ほら!」

 そう言って、カナエはコインを取ると、順平に手渡した。

「…………。」

 受け取ったコインを見て、困惑の表情を浮かべる順平。
当のカナエの方を振り向くと、"ニコニコ"と言わんばかりの純粋の笑みを浮かべ、待っている。

「…………じゃあ。」

 話の進みようがない、と観念したからか、順平も提案することとした。

「表が出たら……「僕達が胡蝶さんに協力する」ということでどうですか。」

 答えはあまり期待せず、カナエに伝えた。
あくまで今の関係は、カナエ側からの申し出で同盟が組まれただけであり、正式な関係ではない。
だから、正式な関係になるというだけでも、何の目的も決められないままの順平からすれば、進展のある内容だった。

「ええ!それがいいわ!それにしましょう!」

 "パーッ"と言わんばかりの天真爛漫な表情をカナエは向ける。
順平もそうしたカナエの人柄あってか、表情も思わず緩みかけていた。


 特に何も考えることなく、順平もコインを上に弾く。


 テーブルに落ちたコインは、"表"だった。


◇   ◇   ◇


 時刻は0:10。聖杯戦争が本格的に始まって間もない頃。
 場所は、センターロード街からマークライト街へと流れるB-4の4車線道路。


 五代雄介と吉野順平を乗せたバイクが、颯爽と駆け抜けていた。
バイクはパンペーラモデル。異なるデザインだが、ビートチェイサー2000の面影を持つバイク。
最高時速も420㎞。五代のオーダーにより、ゴウラムとの融合合体を前提とした仕様。


 彼らが走る目的は、同盟相手との合流であった。


 "胡蝶カナエ"。
ロール上、同じ月海原学園の学生である縁から同盟を組んだ相手の一人。
彼女は順平にとって不安しかない学生生活の中で、初めてフレンドリーに接してくれた相手だった。
天真爛漫ともいうべき裏表の無い彼女の人柄に、順平も次第に信頼を抱き、同盟を組む。


 五代は走りながらも警戒を怠ってはいなかった。
スクール街ではロールとして利用する勢力が多かったことは、五代達も知っている。
見知らぬアカデミーの相手からはさることながら、見知った月海原の相手からも狙われるリスクは大いにある。


 バイクは第二走行車線を走り、やがて、交差点に差し掛かる。
現在の走行時速は80km。一般道を安全に駆ける速度としては平準的な速度。
遠方で見える信号は赤を告げている……と、五代が見上げた時であった。
信号よりも目前の頭上。道路照明灯の光を浴びる歩道橋。
竹刀袋を背負った顔見知りの少女が一人、その場に待ち構えていた。


 "巴あや"。
実質上休戦状態にあった月海原の環境下でも、周囲に最も強い戦意を向けていた陣営。
順平も彼女を理解していた。その根底にあるのは、他者への"無関心"であることを。
ただ戦争だから勝つための戦うのであり、個人的な悪意の類は順平にも感じられなかったのだ。
五代も、巴あやに対し、"戦わなきゃならないかもしれない"、と諦めの見解であった。


 位置は五代が通る車線の真上、橋には彼女と霊体の敵セイバーだけが唯一居る。
臨戦態勢。敵セイバーは大剣を抜き、迫るバイクとの距離を見据えて待っていた。




 五代の腰に、ベルトが出現する。 

「────変身!!」

 剣士には剣士の得物があるというならば、騎兵には騎兵の得物がある。
浸透した掛け声とポーズが霊基に流れる神経を呼び覚まし、五代の身体に生体パーツが纏われる。
赤色の装甲、黒の強化皮膚、そして、二本の金角を象徴とした赤い複眼の仮面。


 その名は、"仮面ライダークウガ"。五代を象徴とする戦士の姿であった。


 変身した鎧姿に、ジークフリートも認識を改めた。
タンデムの構えで付いていた順平も、遅れて状況を理解した。

「うわっ!」

 バイクの急加速を体に受け、思わず狼狽える順平。
性能を存分に活かした爆発的な加速により、スピードは一気に上昇する。
敵セイバーの攻撃を受けるよりも先に、歩道橋を通り過ぎる。それが狙いであった。


 当然、行く手は阻まれる。
ジークフリートが、霊体化を解き、姿を見せたのはバイクの頭上。
下降に伴い、両手で大剣を振り落とさんとする構えで出現した。



  ────信号が、赤から青に変わる。



 五代が取ったのは車体を左傾、第一走行車線への車線変更。
行動は五代の方が早かった。直前の進路変更を仕掛け、攻撃から逃れた。

「っ!」

 即座、翻してより振るわれるジークフリートの追撃。
大剣の横斬りから放たれた衝撃波が、飛び道具として迫る。
 サイドミラーで察知する五代、車体は第二走行車線への進路変更。
着地点の道路には、切り裂かれていた跡だけが残った。


 バイクは構うことなく、疾駆する。
青信号を直進で通過し、高速で走り去っていく五代達。
後ろ姿は遠くになっていき、ジークフリートでも追えない距離にまで放してしまった。




 ジークフリートも、即座に追走する迂闊な選択は取らない。
無表情のまま、自分のマスターが居る頭上を向き、次の判断を仰いだ。

「回り込むぞ。」

 命令を聞き取り、了承の合図に頷くジークフリード。
人間よりも超越した跳躍運動、元居た歩道橋まで飛び乗った。
あやも去ろうと行動しかけたが、動くよりも早い手際に、あやが御姫様抱っこで持ち上げられる。

「…………おい。」
「すまない。……だが、この方が早い。」

 反対の意見を待たずして、セイバーは飛び降り、迂回ルートを突き進んでいった。


◇   ◇   ◇


「────大変です!順平さん達が巴あやとの陣営と交戦を!」
「!」

 目的地に向け、疾走している胡蝶カナエとアラ・ハーン。
アラの気配感知により、数km先で交戦があったことは捉えられた。

「順平君達は無事?」
「無事のようです。今も目的地に向け、逃走を続けています。」

 足を止めることなく、冷静に状況把握を取る。
順平達が無事で何よりでもあるが、同時に切り抜けられたのも幸いであった。
その場で戦いに発展して、一般人が居合わせる事態になるのは好ましくないからだ。
カナエは聞くままに背負う竹刀袋から日輪刀を取り出して、腰に携える。

「急ぎましょう。あそこに行くまで、そう距離はない筈よ。」
「はい!」

 現在地は目的地を挟み、順平達やあや達から反対側の位置。
辿り着くまで合流できる地点はなし。どれだけ早く、集合できるかの問題。
着ける距離は、十数分程度。先に辿り着くのは、順平陣営とあや陣営と思われた。

 ライダーの能力はまだよく知らないが、敵サーヴァントから順平を守ることはできると信じていた。
だが、敵も生半可な相手ではなく、二人を相手にして、順平を守り切るとすれば流石に分が悪い。
それまで、どれだけ順平が持ち堪えられるものか……。


◇   ◇   ◇


 ……と、その時。

遥か後方より響き渡る、大気の振動が各主従の耳に入った。


===========


「……!?」
「……!?」

 カナエとアラは衝撃のあった後ろを咄嗟に振り向く。
方角はビッグアイ。視界に映った遠景は、燃立つ屋上であった。


===========

「…………。」
「…………。」

 あやとジークフリートも走りながら、ビッグアイの火を一瞥した。
だが、関心があったのはそれまで。我関せずとばかりに、戦闘へ戻る。

===========

「ば、爆発が……?」
「…………。」

 五代達も爆発の光景を遠望することになる。
バイクは徐々にスピードを緩めながらも、目的地周辺にまで辿り着く。

===========


 前触れもなく、引き起ったアクシデント。
今は戦いに専念するため、全員の認識は一先ず後に持ち越されていく。


◇   ◇   ◇


 各所の街灯が、街の夜陰を照らしていた。


 そこは隣接する商業施設に、囲まれる形で設けられていた駐車場。
市内でも数件は展開されている、ネイバーフッド型のショッピングセンターであった。
場所はバイクが走行する車道に面しており、彼らはここを合流地点としていた。


 幸いなことに、この施設の警備は、基本的には遠隔監視体制。
警備員といったNPC達がその場に居ないことは事前調査で把握している。
待機している警備員も駆け付けるとしても、ある程度の時間が経過した後の事である。



 駐車場へ侵入した五代達のバイク。
五代がカート置き場を囲むガードパイプを一瞥すると、五代もバイクを停車させた。



 慌てながら降りる順平と、続いて冷静な反応で降りるクウガの五代。
順平がヘルメットを外すと適当な場所に置く合間、五代はガードパイプに近寄り、締度を視ていた。

「…………。」

 少々荒事になるが、問題はない……と判断した。
五代は息と体勢を整え、目線はガードパイプを捉えた。

「……ハァッ!」
「!?」

 次の瞬間、五代は三段目のパイプを蹴り上げた。金具を破れ、強引に外れる。
順平も突然の行動に振り向き、行動の意図が理解が出来ずに面を食ってしまう。
五代は落下するガードパイプを掴み取ると、熟練した技術で巧に振り回した。

「超変身!」

 クウガの装甲と目、バックルのアマダムが、赤色から青色に変色した。
その名は、"ドラゴンフォーム"。4つもあるクウガの基本戦闘形態の一種。
振り回したガードパイプが一本のロッドへと変わり、両端が伸縮した。

(い、色が変わ……!?)

 さらにクウガの全身に走る稲妻。

 アマダムの色は、金色に。そして、ベルトに金色のアーマーが纏わる。
体の所々が、金の装飾に変わる。ロッドにも、両先端に備わる金の双刃。
"ライジングドラゴンフォーム"。クウガを1段階上昇させた強化形態"ライジングフォーム"の一種。

(……こ、これが、"ライジングフォーム"……!?)

 初めて見ることとなったクウガの形態に、順平も目を見開く。
順平も"マイティフォーム"以外の存在は、頭にあっても目の当たりにした事はなかった。





 ────その時。
五代は、自分に向けて迫る疾風の存在に察知した。

「っ────!」

 ジークフリートの大剣による袈裟斬り。
五代も即座にロッドで剣を防ぎつつ、同時の後退によって躱す。





 ────だが、それは陽動であった。

「順平君後ろ!」
「────えっ?」

 順平の背後、一振りの刀があやの手より切って落とされた。
一閃は、順平の不意を突き、決着を付きかけようとしていた。
何も知らぬまま暗転を迎え、何も知らぬまま、順平も終わることになる。



 ────しかし、その刀は順平に届くことはなかった。

(……弾かれた!?)

 あやは驚愕した。
"そこには何も無い筈なのに"、何故か攻撃は防がれた。
遅れて気付いた順平も、反射的にあやから距離を取った。


 五代と順平の距離は間近とあった。

『……どうする?』
『どうする、って言ったとも……。』
『"退くこと"に専念するなら、凌げるかもしれない。
順平君がそれでいいと思うなら、俺は否定しないよ。』

 背向けながらも、五代と順平の間に念話を交わされる。

『……あのセイバーを相手にしても、ですか?』
『うん。』
『……無事でいられると思いますか?』
『いられないだろうね。流石に。』

 五代なりに、"苦戦はするが健闘する"、との意思を伝えた。
守るという考えにある以上、「敵前逃亡」という選択肢も強ち間違いなどではない。
少なくとも、順平以外の非力・非術な人物が対象なら、五代も迷うことなくその道を選ぶだろう。

 それでも敢えて聴いているのは、順平を「試している」からだ。
先程、順平の身に起きた現象の正体を五代は何であるか知っている。
技と順平自身を信じ、試練として見送ることもまた、順平の為の事。
だから、順平にも厳しい道を渡らせるべきかどうか、試しているのだ。

 また順平も、それは暗に"自分は重荷になってしまう"、と指していると気付く。
サーヴァント相手ならまだしも、マスターにまで守るとなれば、負担も大きくなる。
いくら合流するとはいえ、そうなってしまえば五代にも隙が生まれ、苦労を強いてしまう。
順平も、守ってもらう五代に対し、あまりに申し訳ない話と思った。

『……僕の事は……いいですから。』

  恐怖を堪えながらも、言葉が出る。

『ライダーは……セイバーをお願いします。』

 それは念話越しであるが、五代にも芯のある声に聞こえた。
覚悟は確かにない。……ただ、順平にも意地がある。
「せめて迷惑を掛けて、邪魔になることだけはしたくない」という意地があった。
出来ることさえやらないというのは、自分でも情けないと思ったから。

 だから、気を引き締めて、あやに視点を向ける。

『……わかった。』

 五代も、順平が持つ意志を感じ取った。
彼の判断を信用し、多くの言葉を交わすことなく、見送ることにした。



「「…………。」」
「「…………。」」



 ────凍てついた夜空の下。

 ────響くのは市街地を吹き抜ける風の音。

 ────向かいあう、二組の陣営。


 順平と五代は一斉に、それぞれ左右異なる方角に向けて駆けだす。
続けて、あやとジークフリートの二名も、マスターとサーヴァントの二手へ追った。
互いに距離を取り、互いの戦いには干渉しない。それが、この場の暗黙の了解となった。





 サーヴァントの戦い、マスターの戦い。

戦闘の構図は、二手に分断されることになった。



◇   ◇   ◇


 空間に轟くは、鉄と鉄が交わり合う音。


 攻めは、重厚の如き。剛の斬撃を振う、大剣。
 守りは、流水の如き。柔の払いで受け流す、ロッド。


 ジークフリートは耐久に比重を置いたセイバーでも平均のタイプ。
まず攻撃を真正面から受け入れ、筋力と敏捷を活かした攻撃を基本の戦法としている。

 ライジングドラゴンは筋力などは低い一方で、敏捷には特化したタイプ。
故に正面衝突では不利であると判断し、五代も受け流すことを主軸としながら攻撃を入れている。



「…………。」

 ジークフリートとしては、五代自身への敵意はなかった。
あやが望む優勝を聞き入れるため、必要な戦いが生まれることも道理として受け入れている。
そして、相対する敵ライダーを倒すことも、サーヴァントの義務であると認めている。
だが、この一ヶ月半弱で相手を知る内に、ライダー陣営が戦いを望んでいないことも察していた。
手を抜く気はないものの、そのような相手と戦うのはさほど本意ではなかったのだ。

「っ…………。」

 五代としても、ジークフリートへの敵意はなかった。
順平を守ることに繋がるため、必要な戦いが生まれることも道理として受け入れている。
そして、好ましくないが暴力を振るい、時に倒さなければならないことも覚悟している。
だが、敵セイバーはこの戦いをあまり本意に感じていないことも、従う背景があることも察していた。
そうして、敵と和解できない状況を惜しみながらも、五代も戦いに力を尽くしていた。



 交わり合いが進むにつれ、互いに"違和感"を覚え始めた。


(やっぱり、どこにも攻撃が効いてないな……。)

 五代は、あらゆる箇所に攻撃を入れ、効果を模索し続けていた。
しかし、五代の攻撃は、何をどこに入れても、依然として効果を感じられなかった。
五代の攻撃が全く通用しないほど、ジークフリートの防御力は異様に高い。


 だが、その異様さは普通の防御性によるものでないことも、五代もすぐに気付いた。
クウガにも堅牢な装甲で防ぐ"タイタンフォーム"はあり、また高い装甲を持つ相手との交戦も経験している。
故に五代も、「防御性の性質や効果」というものについては、かなり精通している方であった。
だが、これは違う。堅さ故に「衝撃が通らない」のではなく、「衝撃そのものが消えてしまう」のだ。


 その正体は、常時発動型の宝具、『悪竜の血鎧(アーマー・オブ・ファヴニール)』。
悪竜ファヴニールの血を浴びてより不死身となった、ジークフリートを象徴する宝具の一つ。
Bランク以下の攻撃は、物理・魔術の性質に問わず全て無効化されてしまうのである。
一点の急所を除けば、全身が対象であり、隙の無い防御性が故に、五代の攻撃が通用しなかった。


(……やはり。当初の形態に比べると、魔力の質量は違う。)

 一方のジークフリートは、敵ライダーが言う"変身"というものに深慮していた。
変身時には赤色の装甲であった筈が、戦闘前には金の装飾が施された青色の装甲へと変化した点だ。
ジークフリートの目から見ても、装甲の質や魔力の量は明らかに増加していることがわかった。
そして、断定はできないが、性能面も恐らく、先の形態よりも向上していると見解を抱いた。


 さらに深く視ると、魔力炉に相当するベルトにあるのではないかと判断した。
そのものは敵ライダーの宝具、Aランクに匹敵するほどの神秘が秘められていることがわかる。
ジークフリートは推察した。宝具から現在に稼働している魔力はまだ数割にも満たないもの、と。
温存のために引き出していないか、あるいは制御されているために引き出せられないのかもしれないが、
全開にまで宝具が発揮された時、この戦士にとっての「究極」もあり得るだろうとして捉えていた。


 その正体は、アークルに埋め込まれている宝具、『希望の霊石(アマダム)』。
装着したベルトと同化してより戦士クウガへと変身した、五代の身に宿る宝具の一つ。
サーヴァントである現在に至り、仮面ライダークウガを成立させる核となるのが、この宝具であった。



 ジークフリートが放つ大振りな切り落としを、五代は後方への跳躍で躱す。
切り落としの体勢から即座に整えると、身体の向きを変え、ジークフリートも次の行動へ移る。
間合いを取る程の跳躍。最中、敵セイバーが次に取る行動の予兆を五代も捉えた。


 取った構えは、大剣の持ち手を換え、右手は柄頭にまで移すものだ。
それはつまり、"打突"。"剣を押し出して突く"為に取る構えにあった。
だが、脚部はこれから踏み込む構えではない。……むしろ、"不動"。足を支えに地に着く構えだ。
実際、数mもの間が生じる。その中で動かぬ行動を取るには、一見は不可解な行動に思えた。


 しかし、ジークフリートの大剣は、五代の"射線上"を確かに捉えていた。

「────っ!」

 五代が着地したタイミングと同時であった。
急速に纏わった魔力の波動が、打突と共に放たれた。
ジークフリートの狙いは、"射撃"。五代も、思わず不意を突かれてしまった。
迫り来る波動は疾い。回避するのは困難を極めると、五代も一瞬でそう判断した。

「超変身!!」

 五代が選択したのは、"変身"であった。
クウガのアークルから、稲妻が再度全身を駆け巡る。
着地の立ち上がり様に取った構えは、"胸を大きく開いて受け止める"であった。
すぐさま波動は五代を直撃し、一面は波動の光に包まれた。

「……!」

 波動の光が消えた時、クウガは変身を完了していた。
アーマーは肩にまでが備わり、装甲も金の装飾が施された紫色。
まともに受けたというのに関わらず、装甲には傷一つなく、堅牢さを体現していた。


 "ライジングタイタンフォーム"。
防御力に優れたタイタンを強化したライジングフォーム。
その装甲は、より頑丈、より強靭となり。生半可な撃で損なわれるものではない。


 五代がロッドの持ち手を変えると、今度は金の刃が付いたソードへ変化。
ジークフリートも自らの武器となる物を自在に変えられる能力があると気付いた。

(……なるほど。)

 三度に渡る形態変化に、ジークフリートも改めて納得する。

(状況に応じ、適用した形態に変化する汎用性……。
それこそが、彼の長所と言えるのだろう。)

 状況によって特性を変化し、状況に適応する汎用性。
その自在さこそが、敵ライダーが持つ長所なのだと理解を示した。


 ジークフリートは、敵ライダーについて思う。
"彼はこの力で、多くの敵との交戦を経験したのだろう"。
"先程まで相対した槍捌きからは、蓄積された経験や熟練した技術が感じられた"。
"恐らく、これが剣になったとしても、彼の経験や技が劣ることはない筈"……と。





 その時、状況は一転する。

「ライダーさん!!」
「!」
「……!」

 屋根より聞こえる、新手の呼び声。
声の主は同盟側のサーヴァント、アラ・ハーンのものであった。
それはつまり、カナエ陣営がこの場に合流したということ。
何十合にも渡る両者の剣戟は、遠に十数分は経過をしたのである。


 清静とした動作で地に着き、刹那の疾駆で間合いにまで立つ。
得物となる長柄刀は瞬時に繰り出され、戦闘体勢に入っていた。
しかし、当のアラとしては、その戦いが気が進まないような表情であった。

「……二体一は卑怯かもしれませんが。ご容赦ください。」
「卑怯?それは違うぞ、ランサー。」

 アラの主張を受け、ジークフリートも思わず敵ながら諭す。

「時として二体一になることも戦いでは必然なことだ。何も君が気に病むことではない。」

 敵対関係にありながらも、穏やかな声色であった。
ジークフリートも、この展開になるであろうことは、戦う前から読んでいた。
それでも、不平などとは一切感じないし、戦いでは"やむを得ないこと"として見ている。
例え、何組が相手になろうとも構わず受け入れる。最初からその覚悟で望んでいたのである。

「それに、君が本当に卑怯だというのならば、今頃、マスターを狙っていただろう。
不意を突く真似をせず、真っ向から戦おうとする君の姿勢は、間違いなく高潔だ。」

 さらに言うと、戦いは初めての事だが、僅かな間にもジークフリートはアラの事を認めていた。
奇襲など容易い状況下にあったこの最中でも、正面から現れ、横槍を入れることもなかった。
その行動だけでも、ジークフリートの目には十分高潔であることが伝わっていた。

「……失礼しました。私の方が、無礼だったようです。」

 ジークフリートの言葉に、アラも自らの非を認めた。
このような高潔な武人を前にして真剣に戦わないのは、それこそ無礼に当たるものだ。

「全力でお相手願います。」

 アラは凛とした声色で、改めて構えを取る。
ジークフリートも「死力を尽くした戦い」になることを望まなかったわけでもない。
戦士として、やはり「強敵達と戦える」ことには強く惹かれるものなのである。

「……推して参る!」

 ジークフリートの掛け声が合図に、アラと五代も一斉に駆け出した。
新たなファームとサーヴァント参入、戦いは仕切り直され、二回戦目の火蓋が切って落とされた。


◇   ◇   ◇


(…………なんだ、これは?)

 その光景もまた、異様なものであった。
刀で一方的に攻め続けているあやと、腰は引けがちながらも立って相手を見据える順平。
あやの刀は、不可視の衝撃吸収材によって何度も弾かれ続け、依然として順平の体まで届くことはない。

(確かに、斬れなかった奴なら見たことはある。)

 似たように相手との交戦経験があやにもある。
かつて、暴力団組織天童組の殲滅に当たった際、天童組の幹部との交戦した時のことだ。
特異な肥満体質から発生する脂汗によって刀の切れ味は封じられ、敵を斬ることはできなかった。
その時は、スクリーンカーテンを巻くといった策で、細切れにして勝利を収めていた。

(だが、これはどういう手品だ……?)

 だが、目前に起きている現象はというと、全く以て理解の出来ない奇術によるもの。
質量がないにも関わらず、その先にまで侵入すると阻まれてしまう。
吉野順平の身を守っている、"見えない何か"を打ち破らない限り、干渉はできない。

 では、別の視点ではどうなっているのか?


 "ザワザワザワザワ"


 ────この時。
一匹のクラゲが、順平を覆うように浮かんでいたのであった。


 "術式「澱月」"。


 クラゲの正体は、"式神"。
式神とは、順平のような呪術師が呪力によって作り出し、使役する存在のことを指す。
この式神は、非術師などの類や、あるいはVR機能を介さなければ視認することはできない。
故に、あやの目には澱月の存在というのは、"見えない何か"でしかなかった。


 そして澱月の特徴は、衝撃吸収により、打撃を防ぐ防御性にある。
サーヴァントの存在や高度な魔術・呪術など、通用しない次元も中には存在するが、
あやが手にする普通の刀では、澱月を打ち破るに至らず、攻撃を与えることはできなかった。


 これにより、状況は膠着状態となっていた。


(…………。)

 一方の順平というと、状況は防戦一方であった。
それは、澱月が「攻撃が出来ない」からそうなっているのではない。
他でもない順平自身が、意図的に「しない」ためにそうなっているのだ。

 まだ覚悟自体は順平に備わっていない。"人を傷つける"という覚悟が、まだ。
順平とて、復讐といった正当性のあること、攻撃してもやむを得ない状況ならともかく、
安易かつ無暗な判断で人を害してしまうほど自分勝手な人間ではない。

 ましてや下手に攻めてしまうものなら、それから報復という因果が生まれ、今後の対立も根深くもなる。
理解しているが故に、順平も出来れば攻撃の意思は見せず、耐えるだけなのであった。

「ぐっ!!うっ……!」

 あやが放ったのは、打突。
衝撃の反動を受け、澱月ごと後方のガードパイプにまで突き飛ばされる順平。
衝撃吸収によりダメージは受けないものの、衝撃の反動まで無効にできるわけではない。
上手くいかなければ、窓からだって落ちるものであるし、落下の反動で傷を負うこともある。

 ガードパイプを背に腰を下ろしてしまう順平。


 両者に開かれた間合いは、5m弱。
あやの身体能力ならば、一瞬で詰められる間であった。


 "────イラッ"

 だが、あやも攻撃の手を止めていた。

 あやは順平の光景に、段々と苛立ちが芽生えてきた。
身を守る以外に何をするわけでもなく、ただただ弱弱しく粘り続ける。
正体不明の防御も、要は胡蝶カナエが来るための時間稼ぎだとわかった。
碌に戦いもせず、守られているだけ。その"温い"というべき姿勢が、あやを苛立たせた。



「────鬱陶しい。」

 ドスの効いたあやの声であった。

「お前は、何のためにここにいる。」
「…………。」

 あやも月海原学園なので、順平のことは知らないわけではない。
何を迷っているのか知らないが、ずっとここに居続け、半端な形で戦いに入っている。

「戦いもしないなら、さっさと止めてしまえ。」

 境遇など知ったことでもないが、さっさと降りてしまえばよいと思っていた。
なら、こうして身を守ることもなかったし、わざわざ戦うこともなかったのだ。
それを、いつまでも煮え切らず、戦うことも選ばずに、わけもなく粘り続けている。

「邪魔だ。」

 そのような相手こそ、"邪魔"だと感じていた。
あやとしては、カナエ達が何の目的に行動するのか知らないし、興味もない。
だが、聖杯戦争という「願いを実現させる」戦いにおいて、それ以外は必要ないと思っている。
令呪然り、命然り、奪うか、奪われるかの話であり、逸れる者は"邪魔"なるだけだ。

「さっさとよこせ、令呪を。」

 刃を突きつけるあやと、沈黙を浮かべる順平。
その姿は、不思議と一方的な暴力にやられるだけだった過去の自分と重なって見えた。
あまりにも弱弱しくて、立ち向かうだけの強さなんかなくて、結局は何かに守られているだけ。
それを見ると、何故だか無性に……苛立って仕方がなかったのだ。


 ────と、その時、あやは迫り来る気配を察知した。

「順平君!」
「!」
「……胡蝶カナエか。」


 順平とあやは同時に視線を横へと向き直す。
遅れながら、カナエはこの場に到着した。
疾走後というのに息は乱れず、静かに佇んでいた。

(順平君は大丈夫のようね。)

 順平を一瞥する、無事を確認し、内心安堵する。
護身手段を持っていることを以前より仄めかしており、"耐えていた"のだとカナエも理解した。

「…………。」
「……あやさん。」

 視点はあやの方へと移すカナエ。
空気は一転し、緊迫したものに包まれる。
カナエは真剣な表情へと切り替え、あやは八相の構えを取った。

「貴方と戦うつもりはないの。」

 意思はない、と訴えるカナエ。

「だから、ここは退いてくれないかしら。」
「令呪を渡せばな。」

 冷淡な声色であやも返す。

「……ごめんなさい。それは、できないわ。」

 譲れなかった。
それは、損得勘定に基づく考えなどではない。
"マスターを守りたい"というランサーの気持ちを踏み躙るわけにいかなかったからだ。

「なら……。」
「!」

 刹那。
あやは疾駆で間合いを詰め、渾身の切り落としを振るう。
対するカナエも即座に切り落としを回避、抜刀し、戦闘態勢へ移行する。

「力尽くで奪う。」 


 戦いの模様は、あやとカナエへと転換する。


◇   ◇   ◇


 二対一という対戦の構図に入り、戦いは苛烈さを極めていた。


 ライジングタイタンに入り、的確な剣打を取る五代。
 大剣を俊敏な動作で躱しつつも、息も付かせぬ猛攻に入るアラ。


 そして、両者の攻撃を一身に受け止め、両者に要する攻撃の手数を増やすジークフリート。


(これほどまでとは……!)

 ジークフリートも想定以上の苦戦を強いられていた。
片や守り、片や躱しと、互いの持ち味を活かした連携を取っている。
それが、両者に決定的なダメージが中々与えられるに至らず、翻弄される。

(すっごい、タフだなぁ……!)

 五代も剣を交えながら、敵セイバーは"凄い"と、改めて認めていた。
二対一という好ましくない状況下にありながらも、それを受け入れて戦うほどの精神力。
今は、敵対せざるを得ない状況下であるが、彼には尊敬の念を感じる。

(攻撃が、通じない!)

 アラもまた、敵セイバーの防御力に違和感を覚えていた。
五代と同様、どこを攻めようとも、全くの程手応えが感じ取れない。

(……ただ、"一箇所"だけ通る違うところがある!)

 ただアラは、相手の実態を把握しかけていた。
入り乱れる攻防の中、術式で冷静に観察し、勝機を探っている。

 "術式:妖眼"。
全ての防具を貫通する攻撃に繋げるため、敵の実態を把握する技。
ジークフリートは呪いによりその個所を隠すことも出来ない故、アラが見抜くことが出来たのである。


 ジークフリートと五代が切り落としの交差。鍔迫り合いが生じる。
瞬間、ジークフリートもアラへの意識が、僅かに疎かになってしまっていた。
その隙に取ったアラの行動は、"後退"。一度、間合いを取るための予備動作にあった。

「────はっ!」
「むっ!」
「!」

 一瞬であった、五代やジークフリートの視界から消えた。
"疾走"。それは、瞬発的な移動を可能とする程の技であった。
ジークフリートも疎かなったが故に、虚を突かれてしまう。

「……っ!!」

 だが、この技はそれで終わりではない。
通り過ぎるかと思えば、アラは背後で折り返し、ジークフリートの"背後"へ迫った。
"不覚を取った"。ジークフリートも瞬時に自分の愚かさを認める。


 "妖狐二式:妖乱"
高速で敵の前後を移動して、攻撃を与える技。
観察によって、アラは把握している。"急所"が背後にあることを。

「はぁっ!」
「っ!」
(躱した!?)

 ジークフリートが、咄嗟に取った行動。
鍔迫り合いを自ら解き、即座に真横へ跳び退くと、流れる勢いで間合いを取った。
五代も驚きを隠せなかった。敵セイバーが戦いの中で初めて取る、"回避"であったから。

 直後、空振りに終わる穂。状況は一度リセットされる。
「仕切り直し」。不利になった戦闘状態を初期状態へと戻すスキル。
ジークフリートが竜殺しに限らず、生涯の経験と精神力により培った高度な撤退能力にあった。

(今の位置は、理解したか……。)
(やはり、防御が及ばないのは、"背中の葉の模様"!)

 不死身であるジークフリートだが、肉体にも一箇所だけ、効果を発揮しない欠点もある。
背中に存在する、"葉の模様をした形の跡"。生前、血を浴びることがなかった唯一の欠点。
一度負傷してしまえば、どれほどの治癒魔術を使おうと、修復は困難を極めてしまうのであった。



 戦いの中、僅かに流れる空白の間。
ジークフリートと五代、アラはそれぞれ体勢を整えると見交わしていた。
相手が次に動く出方。それが肝心であった。


 最初に行動を取ったのは、五代。
八相の構え。突き立てたソードには稲妻が走った。
狙うは必殺技の「ライジングカラミティタイタン」。それはB+ランクに相当するほどの一撃である。

「うぉりゃああああああ!!」

 五代が駆け出した時、それが合図にジークフリートとアラの順で駆け出した。

「たあぁっ!!」

 アラが次に取った行動は、跳躍。
先程と同じ、急所である背中の跡が彼女の狙い。
挟み打ちの再現を図るのであった。

「はあぁっ!!」

 されど、ジークフリートもまた歴戦の戦士。
ライジングタイタンソードの刀身を左手で掴み、横腹で敢えて受けると、
右手で大剣を振り上げ、背後上のアラに目掛けた。

「うっ!」

 咄嗟に柄で防御するアラ。
だが衝撃により、敢えなく落とされてしまう。

「ぐうっ……!!」

 そしてソードの先端には浮かび上がる封印エネルギー。
ジークフリートも瞬発的な筋力で強引にソードを引き剥がし、前方へ押し飛ばした。
圧倒的な防御力の前に、残った封印エネルギーもまた無力化されてしまった。

(これでも通用しないか……!)

 必殺技さえ通用できず、思わず落胆する五代。
『悪竜の血鎧(アーマー・オブ・ファヴニール)』には更なる特性があった。
通常攻撃ならば、相当する耐久性はBランクまでだが、宝具による攻撃の場合、耐久性はB+ランクにまで発揮される。
「ライジングカラミティタイタン」は、『希望の霊石(アマダム)』の応用とモーフィングパワーに構築された"宝具による攻撃"。
故に判定は僅差に届かず、ダメージは無効化されてしまったのである。



 ……その時、防犯用の警報が一帯に鳴り響く。
サーヴァント達は、警備員とされる足音の急行を聞き逃さなかった。

「……ライダー、ランサー。仕掛けた俺達が言うべき言葉ではないのだが……。
これを区切りに、今回の戦いを切り上げた方がいいだろう。」

 ジークフリートの提案に頷いて答える両者
このまま戦闘を継続することも、別所で戦闘の再開など方法はいくらでもできるわけだが、
相手側が実際、戦いも、他者を巻き込むことも、望んでないであろうことはジークフリートも察していた。
故に、これを区切りとする形で、空気を読んで終わらせる道を取ったのだ。

「……ありがとうございます。」

 アラはジークフリートへ礼を述べると、マスターの下へ駆け出した。

「願わくば、次もまた戦いたいものだ。」

 ジークフリートも笑みを浮かべると、五代もサムズアップを返した。
五代から視点を離すと、アラに続き、戦闘中のマスターの下へと向かった。

「超変身!」

 敏捷を高めるため、通常のドラゴンフォームへと戻る。
五代もサーヴァント二名に遅れる形で、マスターの下へと疾走した。


◇   ◇   ◇


 火花を散らしあう鉄と桃の刀。
幾重もの交差で弾け合う金属音が、一帯に休みなく響き渡る。


 あやの剣捌きは合理的。
無駄を省き、的確に振るわれる刀は、機械的な運動を映していく。
 カナエの剣捌きは芸術的。
さながら花弁が舞って見えるほど、美しい刀の軌跡を描いていく。


 それは、「達人」の戦い。
「達人」とは、その道を極め、完全な領域へと達した者達に与えられる称号。
人の高域に存在する者達が、相見える戦いが、今この場に展開されていた。


 実力は、互角。
戦闘の構図は対照的なものとなっていた。
あやは攻めて斬り、カナエは受けて捌く。
生来に極めた性質の差異故に、その方向性は二分する。


 あやの剣は人を殺すための剣。
殺人鬼の本能を浸透させた類稀なる才能の賜物。
VR下での実戦実験により培われた先天性の殺人剣。

 カナエの剣は人を護るための剣。
人喰いの鬼から護るために蓄積させた鍛練の賜物。
幾多の実戦と修行により培われた後天性の活人剣。


 "人を殺す為の剣"と"人を護る為の剣"。
決定的な違いを持つ剣が、この場に相対している。
だが、それ故か、双方にも性質の"相性"というものが生じていた。


(隙が、ない……!)

 あやは、カナエの技巧に翻弄されていた。
カナエが使う剣術は鬼と渡り合うために編み出された武術の流派、"花の呼吸"。
大本が受け技に強い"水の呼吸"であるが故、受けの技術に優れていた。

 対するあやは、斬り覚えで体得した我流剣術。
如何なる敵とも汎用的に渡り合い、その中で隙を突いて仕留めることを主戦法としている。
ただ、その根底にあるのは"攻め"。逆に受けに強く、隙を見せない相手には攻めきれない。
故に、カナエの技術とは滅法相性が悪かったのだ。


(攻撃が、重い……!)

 カナエは、あやの怪力に押されていた。
一見、普通の少女に見えるあやだが、人体改造を受け、膂力は常人の域を超えている。
それは時に男性をも一刀両断し、例え片手一本であっても、女性の両腕を切り落とせるほどなのだ。

 対するカナエは、常人の域は越えていない
鬼の弱点である頚を落とすため、鍛えてきた彼女だが、人間離れしたあやの怪力には及ばない。
故に、一つ一つの剣における威力はあやに劣り、思い通りに攻撃を捌き切ることはできなかった。
あやとの力差の相性において、カナエにも分が悪い点があった。


「…………。」

 続く膠着状態を先に動いたのは、あやであった。
刀を両手で振い続けていた彼女が、攻撃の最中、左手を手離したのである。
あやなら片手でも十分斬ることはできる。だが、両手で振るう力に比べれば劣ることは否めない。

 放たれたのは、右手刀による逆袈裟斬り。
両手時のほどの力はない分、カナエにも捌ける余裕ができた。
しかし、カナエも捌きながら注視していた。"では何故、左手を離したのか"、と。



 行方知らずの左手は、"コートの後ろ裾"にまで手を伸ばしていた。

「っ!」

 次に放たれたのは、抜刀。
逆袈裟斬りと入れ替わる形で、左下からの切り上げが繰り出されたのだ。
あやが左手に持つそれは、逆手に持った"一本の鉈"であった。


 それまで存在を悟らせないように隠し持っていた。
先に放れた逆袈裟斬りは陽動。カナエからは見えない死角を生み出すためのもの。
膠着状態を解くため、鉈の使用による奇襲を経て、あやも解放させたのである。



 だが、カナエにもこの状況に対応する技があった。

「花の呼吸、弐ノ型……」
「!」

 それはあやの耳にも聞き取れた。
どこか穏やかで、落ち着きのある独特の呼吸音。
瞬時に察知した、これは何らかの技が発動するための予兆であると。

「御影梅!」

 自分を中心とした周囲に向けて連続して無数の連撃を放つ。剣撃。
カナエは鉈を捌き、続け様に放っていたあやの刀による横凪ぎまでも捌いていく。

「っ……!」

 鉈を逆手から順手に切り替え、手数を増やして対応する。
先まで力で押していたあやが、逆に数で押される形となってしまう。


(は、疾い……!)

 戦局は、順平も息を呑むほど高度なものとなっていた。
繰り広げられているのは、時代劇の演出の世界などではなく本物の殺陣。
カナエと大正時代の戦士と聞いているし、あやも先の戦いで実力の程は見ている。
だが、まさか、これほどまでに疾速で鮮やかなものとは、順平も思わなかった。



 だが、そんな戦いも、呆気無い終わりを迎えてしまう。


 防犯用の警報が一帯に鳴り響く。
高音に釣られ、あやとカナエもまた、戦いの手を止めてしまっていた。


「おいおいおいおい!勘弁してくれよ!なんだってこんな場所で喧嘩なんかやっているワケェ~!?」
「年明けに出向く警備員さんの気持ちもよォ!ちったぁ考えてくれっていいんじゃあねえのかねーーーッ!」
「テメーらッ!!これ以上騒ごうものなら警察に突き付けるぞッ!」

 こちらに迫る複数人の足音と大声。
待機している警備員が騒ぎを知り、この場に駆け付けたのであった。


「…………チッ。」

 あやは警備員がいる方を向き、"鬱陶しい"とばかりに睨み付けた。
一方、カナエはあやが自分から視点を離した瞬間を見逃さなかった。
その隙を利用して、即座にカナエはあやの間合いから離れたのである。

「!」
「ごめんなさいね~!巴さ~ん!お先に帰るから~!」

 明朗とした調子で、別れを告げるカナエ。
そのまま流れる様な足運びで順平の下へと駆け付けた。

「……え、えっと」
「逃げるわよ、順平君!」

 順平の手を引いて走り出そうとするカナエ。

「待て!……!」

 追い始めるあやに、行く手を阻む様に割って現れるアラ。

「ここは退いてください。」
「っ……!」

 見渡すと他のサーヴァント達も戦闘を止めており、こちらへ駆け付けているのがわかった。
遅れて、ジークフリートもあやの下に到着する。

「状況が悪い。逃げるぞマスター!」
「…………っ。」

 ジークフリートの意見に、あやも呑ざるを得ないと判断する。
あやは不本意に感じながらも、人のいない方角へと駆け出し、この場を後にしていった。

「お願いね。ランサーさん。」
「はい!お任せください!」

 アラはそう応えると、カナエを手際よく背負い、高速で走り去った。

「乗って!」
「は、はい!」

 クウガの変身を解いた五代が、バイクを走らせ、順平の下に。
投げ渡されたヘルメットを順平は走りながらも頭に被り、後部座席に跨って五代の腰を掴んだ。
即座に走り出し、五代達のバイクも駐車場を抜けだした。


 取り残された警備員の怒声だけが、誰もいなくなった駐車場を木霊した。


◇   ◇   ◇


『…………僕は、何のためにここにいることになるんでしょうかね。』
『えっ?』
『聖杯を求めないのにいつまでも居続けるのは、周りにとって邪魔になるんじゃないかと……。』

 順平は念話で言葉を零していた。

『まぁ、気にすることないんじゃない?行動は人それぞれだし。
邪魔かどうか思うのは、その人の価値観次第だからね。』

 "気にするな"、と楽観的な励ましを送る五代。

『ただ、やっぱり、ハッキリさせた方がいいんじゃないかな。』
『……何をですか?』
『自分の立ち位置、っていうのかな。いつまでも「聖杯はいるかもしれない」でいられたら、相手だって困るじゃない?
"何のためにここにいるのか"って聴かれているとしたら、きっと、そういう所もあるんじゃないかと思うよ。』

 五代も、少なくとも前向きな部分は受け取っていた。
あやにどう言われたのかな、どう思っていたかなど、実際は知らず、彼らの間での認識にはズレもある。
ただ、あやでなかろうとも、「半端な姿勢」でいられるのは好ましくはないと、客観的に判断した。

(立ち位置か……。)

 自分はどうしていく者なのか、という意味だとわかる。
協力という関係を取っているカナエの立ち位置は、聖杯戦争的には中立的な立場と言える。
……ならば自分も彼女を倣い、中立的な立場でいる方が、良いのではないだろうか?

『停まるね。』

 ショッピングセンターから少し離れた路肩でバイクは停まる。
順平も、ふとポケットに手を入れると、中に仕舞っていたコインの存在を思い出し、取り出した。

「……どういう立場にするか、コインで決めます。」

 まずは、"聖杯のことについて"。

「表なら、"今は聖杯を諦める"。裏なら、"聖杯を獲りに行く"、で……。」
「きっかけさえあれば花開く、だね。」

 五代が見つめる中。手に取ると親指の上に置いた。
いっそ、コイントスで決めよう、と判断した。このままでは拉致が明かない。


 順平は、指でコインを弾き飛ばした。


 空中でコインが回転する中、順平が願ったのは、"表になってほしい"という思いであった。


 ……ただ、順平も、後になって気付いた。
光には当たっていないためか、結構、地面も暗いと。

「…………あの、すみません。どこに行ったかわかりますか。」
「あっ、うん。」

 どこに落ちたかわからず、順平も地面を探す。
五代が代わりにコインを拾い上げた。

「あー、表だね。」
「……中立的、ですね。」

 表の面を見せる五代。
順平はそれを見て、立ち位置を"中立的にする"と決めたのである。
遅れながら、ようやくスタートラインに立てたと思った。



 電線を足場に移動していたアラも続けて到着し、背負ったカナエを地に降ろす。
途中で回収したのか、戦闘時では外していた竹刀袋を背負っていた。

 "これからどうしようか"。
そう切り出そうとした時、カナエは真剣な表情で五代達の背後を見つめていたことに気付いた。
五代が後ろを振り向くと、視点の先にあったのは、未だ屋上で燃え続ける『ビッグアイ』であった。

「……やっぱり、放っとけないよね。あの火事を。」

 『ビッグアイ』の炎上を見て、「対岸の火事」などと放っておくことはできなかった。
さらに自分達以外の陣営が集まることも考えられ、戦闘に発展する可能性の為にもやはり赴く必要があった。

「……みんなは大丈夫?」

 カナエも周囲の調子を伺う。先の戦いからの疲労はまだ癒えず、次の戦いに支障をきたすことも考えられる。

「僕は問題はありませんが……。」
「体の方は問題ないけど……回復しきるまでさっきみたいな変身は厳しいかな。」

 自らの調子を応える二人。
順平は精神的な疲労感はあるものの、澱月に身を守った甲斐もあり、肉体面は何の問題もなかった。
五代も肉体的な損傷は少ないものの、二度に渡るライジングフォームと必殺技を使用している故に高く魔力を消費している。
『希望の霊石(アマダム)』による魔力・体力の回復が整うまで、ライジングフォームや必殺技などの使用は厳しい状態にあった。

「もし戦いがありましたら、私にお任せください。先の戦いではライダーさんほど戦っていませんので、大丈夫です。」
「ありがとうね。じゃあ、任せるよ。」

 その分の穴を埋めると答えるアラ。五代も感謝の気持ちを答えた。

「行きましょう。『びっぐあい』に。」

 こうして二組の陣営は、ビッグアイの下に向かう。
ビッグアイの火がこちらにまで渡ってか、夜のその時は温かな空気が流れていた。


【B-4・ショッピングセンター周辺/聖歴111年1月1日 未明】

【吉野順平@呪術廻戦】
[状態]精神的疲労(小)
[令呪]残り3画
[装備]なし
[道具]表と裏の描いたコイン
[所持金]650万QP
[思考・状況]
基本行動方針:何を信じ、何を願うか、その答えを出したい。
1.胡蝶さんに協力する。
2.今は、中立的でいようか。
3.巴あやへの警戒。
4.ビッグアイに向かう。
[備考]
自宅はスクール街の扱いです。
学園組(初等部を含み)は開始前から知っている扱いです。


【ライダー(五代雄介)@仮面ライダークウガ】
[状態]肉体的疲労(小)、魔力消費(中)
[装備]なし
[道具]ビートチェイサー似のバイク
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:順平を守る。出来ることなら皆の笑顔も守りたい。
1.カナエちゃんに協力する。
2."戦わなきゃならないかもしれない"相手。そういう人達もいるよね。
3.セイバー(ジークフリート)には敬意を感じる。
4.爆発を知るため、ビッグアイに向かう。
[備考]
『凄まじき戦士(アルティメットフォーム)』は霊基再臨後か令呪使用まで変身できません。


【胡蝶カナエ@鬼滅の刃】
[状態]疲労(小)
[令呪]残り3画
[装備]日輪刀(竹刀袋込み)
[道具]なし
[所持金]1000万QP
[思考・状況]
基本行動方針:この世界に生きる人々を守る。
1.順平陣営と行動する。
2.あやさんのように戦わなければいけない人もいるわよね……。
3.ビッグアイは放っておけない
[備考]
学園組(初等部を含み)は開始前から知っている扱いです。
C-3に蝶屋敷が支給されております。


【ランサー(アラ・ハーン)@ELSWORD】
[状態]肉体的疲労(小)、魔力消費(微)
[装備]長柄刀
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターとこの世界の人々を守る。
1.順平陣営と行動する。
2.例え、二対一であれ戦うべきですか。
3.セイバー(ジークフリート)には敬意を感じる。
4.セイバー(ジークフリート)の弱点に気付く。
5.ビッグアイに向かう。
[備考]



◇   ◇   ◇


 巴あやという少女が、今更殺人に躊躇することはない。
覚悟云々の話でなく、殺人鬼として生きる彼女にとって、それが「当然」だからだ。
他人の命の行方には関心はない。いざとなれば令呪を殺してでも奪い取るぐらいわけもないのだ。


 だが、胡蝶カナエや吉野順平の様な相手から令呪を奪うことはあっても、殺す気はない。
彼らが何の為に戦うのか、そんなことは知りたくもないし、"同情する"という温い感情は遠の昔に捨てている。
ただ、人畜無害な相手を自分の利益のためだけに殺すほど、あやも冷酷非情な人間ではないだけだ。



 そうした分別意識を持ってからなのか、あるいはしばらく平和な学校で過ごしていたからか、ふと思うこともあった。
"差別などもなく共存し、人を殺すこともなく、自由に生きていられる普通な世界というのも悪くないのではないか"、と。
もし、本当に世界を変えるほどの力があるなら、メデューサ症候群など生まれず、普通に生きていける世界で自由を得たい。
そうなれば、母も死ぬことはなく、みんなも解放され、ある意味、龍野への復讐にも繋がるだろう。……と思いが馳せた。


 そのためにも、まず聖杯を獲るため、まず今を戦い抜くと決意を一層深めていた。
人畜無害な相手を殺すことはしないが、勝つためなら、例え初等部にいる子供だろうが躊躇するつもりはないのだ。
この聖杯戦争において、彼女の根底にあるのは美徳とも言える程の"無関心"だった。


◇   ◇   ◇


 車道脇の歩道を、両者は黙々と歩いていた。

「……すまない、マスター。」
「お前が謝ってどうする……。」

 呆れ顔を浮かべるあやと、申し訳なさ気な顔をするジークフリート。
戦いの中で外していた竹刀袋は回収され、あやも再度背負って歩いている。

「胡蝶カナエの事はもういい。次に行くぞ。」

 気持ちを切り替える。
問題は、今さっきのことよりも、これから先の戦いだ。
何しろ、敵は自分を除けば30組もいる。まともに相手をしていくようではこちらの身が持たない
戦いは、まだまだ序盤。胡蝶カナエ達に、いつまでも気を取られてばかりにはいられない

(次こそは勝つ……。)

 胡蝶カナエとは、いつかは再戦したいと思っていた。
巴あやという少女には、所謂「負けず嫌い」な一面もあった。
気を取られているわけではないが、どこか対抗意識は芽生えていたのであった。





 しばらくして、その場で足が止まる。
数km先に見えるのは、アカデミーの敷地。
巴あやが踏み入れていたのは、アカデミー利用者向けの近隣商業地であった。

 狙いの選択に、アカデミーがあった。
戦闘地点から同地区内に存在するだけあり、距離は遠くなかった。
スクール街では月海原だけではなく、アカデミーにも他陣営が活動していたことは知っている。

(……なんだ、この妙な予感は?)

 周囲を見渡し、あやは疑問を抱き始める。
近隣商業地に入り、アカデミーから漂いつつある、得体の知れぬ"違和感"。
表向きは何事もなく静まり返っているのだが、近寄る程、妙に"貼り付いた異変"を感じる。

 ジークフリートも同様の考えなのか、真剣な表情であやを見ていた。

「行くのか?マスター。」
「…………。」

 問いかけるジークフリートを他所に、あやも微妙な表情を向けてアカデミーを見ていた。
キャスターのクラススキルに「陣地作成」というものがあるように、逆に"罠"という可能性も否めない。
違和感があるからとはいえ、それだけで積極的に足を踏み入れるほど、あやも無鉄砲ではない。

 それにアカデミー内の情報に乏しいため、他陣営の詳しい情報はあやも入っていない。
アカデミーとは「大学」。時間外れの深夜にまで活動する場所ではなく、不在な可能性の方が高い。
実は単なる思い違いで、誰もいないために広い敷地を歩いて無駄足を食う展開など、好ましくない。

 ふと、しばらく先の対向車線沿いに、ビジネスホテルがあることをあやも思い出した。


「……いや、ここは待つ。今の内に休んでおくとするか。」

 まずは様子見がてら、休憩することを選んだ。
仮に他勢力がいるのであれば、自分達を標的にする場合も考えられるため、待つのも手であった。
アカデミー内から何らかの気配を感じ取ったならば、その時はこちらからアカデミーに進む。
どちらにしても日が登るまでの間に何事もなければ、アカデミーには行く必要はないだろう、と見た。
とりあえず、今はホテルで小休憩を取り、次の戦闘に備えることとした。


 向かう途中にも、追い風があやに当たる。
ただ、それがこの世界の気候故なのか、"寒い"のではなく、"温い"とあやは感じた。


【B-4・アカデミー近隣商業地/聖歴111年1月1日 未明】

【巴あや@サタノファニ】
[状態]疲労(小)
[令呪]残り3画
[装備]打刀(竹刀袋)、鉈 
[道具]なし
[所持金]900万QP
[思考・状況]
基本行動方針:自身の生存と優勝狙い
1.基本的には(力尽くで)令呪奪取。有害な相手なら殺すが、無害なら殺すつもりはない。
2.いつか胡蝶カナエとのリベンジをしたい。
3.吉野順平は気に入らない。
4.次の狙いはアカデミー……と行きたいところだが、面倒なので休む。
5.ビッグアイは無視。
[備考]
学園組(初等部を含み)は開始前から知っている扱いです。


【セイバー(ジークフリート)@Fate/Apocrypha】
[状態]健康、魔力消費(小)
[装備]悪竜の血鎧
[道具]幻想大剣・天魔失墜
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:自らの正義の全う。
1.マスターに従う。場合によっては進言などを行う。
2.ライダー(五代)やランサー(アラ)との再戦をいつかは……。
3.あの場(アカデミー)に何かが……?
[備考]

←Back Character name Next→
OP:吉野順平&ライダー 吉野順平&ライダー(五代雄介)
OP:胡蝶カナエ&ランサー 胡蝶カナエ&ランサー(アラ・ハーン)
OP:|巴あや&セイバー 巴あや&セイバー(ジークフリート) 005:Use Whatever You Can!(1)

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