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  • 二次キャラ聖杯戦争OZ Re:visited | アウターゾーン聖杯
  • Use Whatever You Can!(1)

二次キャラ聖杯戦争OZ Re:visited

Use Whatever You Can!(1)

最終更新:2022年03月12日 05:36

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だれでも歓迎! 編集
 『キャッスル』
辺境A-7地区に構える、謎に包まれた中世欧州系の城。
常人の移動に適さぬ傾斜面が阻み、その道程は並大抵の者を寄せ付けない。
城の周辺は幽邃な深森が立ち並び、ビッグアイからさえも存在を把握することすらできない。
歴史的背景もなく、何故あるのか誰も知らない。"そこに誰がいるのか"さえも風の噂程度のこと。

 しかし、有り体に言ってしまえば、"謎があるだけの古城"で終わっていた。
城単体に魔術的価値があるわけもなく、都市から離れている以上、戦略的価値もさほどない。
そして、元より社会の接点に乏しいがあまりに、誰もロールとしてその地を与えられることもなかった。
特に聖杯戦争に関与することもなく、パラディウム・シティの背景で終わっていたことであろう。

   Ж   Ж   Ж

 だが、それも今は違う。地は支配され、魔城と化していた。
壮麗な景観は面影を失っていき、"鬼"を模した中世和風の装飾群に侵食。
森林は、侵略によって住み着く魑魅魍魎共の巣窟。瘴気を浴び、無惨に枯れ果てた樹々。
「陣地作成」によって一帯が神殿となった結果、キャッスルは汚染されてしまったのである。

 さらに、キャッスルを囲む六角の城郭まで建られていた。
六つの塔を通じて六色の結界が張られており、攻撃や侵入への防御性を高めている。
結界は、再現された元城主の能力。かつての我城で用いられた結界を模したものであった。
これにより、城は一つの要塞として機能を有する。戦略上の存在感もまた向上していた。


÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷

÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷


「……ふん、やっと始まったというわけか。」

 キャッスル4階、玉座の間。
上段の玉座に腰掛ける『ザキラ』は、端末へ渡った情報を見て、ぶっきらぼうに反応する。
このキャッスルは、開始前から既に彼らの拠点として支配するに至っている。

 "籠城戦"という一つの戦略において、このキャッスルというのは都合が良かった。
城とは居住地だけでなく、敵からの侵攻を防ぐ施設としての軍事的側面も兼ねている。
拠点に対する防衛面としては聖杯戦争の陣営中ではトップクラスの優秀さを誇る。

「…………。」

 下段で忠義の姿勢を取るのは、褐色の肌に赤毛の巨漢。
元城主の一人、『ガノンドロフ』。彼もまた上級NPCの一体として再現された。
意思で忠誠を誓っているわけではない。ザキラの洗脳を受け、支配下に治めている。

「"ネズミ"はどうしている?」
「……『詠鳥庵』へと向かっております。」

 もう一人の城主、イリヤスフィールの従者であるリーゼリット。城が侵略される前に逃亡されていた。
現在、C-7地区を通って『詠鳥庵』に向かっているのが偵察から受けた情報によって把握している。
ザキラも彼女の行動は読んでいた。住んでいる衛宮士郎や別世界のイリヤに助けを乞うのだと。
アカデミーにロールを置いていた以上、衛宮士郎や遠坂凛からマークされているのも事実。煽るなら理も適っている。

「引き続き、泳がせておけ。こちらへ煽るためにな。」
「ハッ……。」

 逆に来るなら、それでいい。
戦利品にも近い捕虜を囮に敵が来るならば、籠城しているこちらの身としては都合がいい。
どのみち、脅威となる『詠鳥庵』組は早い段階で潰すつもりとザキラも考えていた。
各サーヴァントの戦力もさることながら、開始前から三組の同盟を組むことを見るに、結束力もかなり高い。
明確な敵意もある以上、『詠鳥庵』の存在は聖杯戦争の中で最も強敵となり得る。

 ガノンドロフは立ち上がって翻すと、玉座の間を後にした。


「────やあ!待ちに待った聖杯戦争がやっと始まったみたいだね!」

 部屋の退場と交替して、間の中央に赤毛の少年が出現した。
突然出現した彼にザキラは一切動じることなく、冷静な眼差しで見据える。

「キャスターか……。」 
「その通り!いつかは君達の敵になるかもしれないキャスター君だ!」

 明朗快活な調子で、少年は返答する。
彼はキャスターのサーヴァント、『黄川人』。ザキラ陣営の協力者である。
『詠鳥庵』を倒すため、黄川人のマスターとザキラは一時的な共闘体制を敷いていた。
別に同盟を組んでいるわけではなく、双方の利害の一致に基づいた関係であった。

(……"間桐慎二"など敵にもならないがな。)

 ザキラの知るキャスターのマスターとは、"間桐慎二"という男であった。
間桐慎二はザキラが観たイリヤスフィールの記憶の中でも、人物像を確認している。
だが、イリヤから見た慎二の姿は"道化"。"無様に殺された"か、"殺した者の腰巾着"か。
当然、ザキラの目から見ても、"取るに足らない小物"といった見解でしかなかった。

 それでも表向き、協力しているのは"敵の敵は味方"というところ。
間桐慎二もまた衛宮士郎や遠坂凛に対し、どこか敵意を見せているようで、
同アカデミーで活動し、敵対関係にあるザキラとは是が非でも組みたい様子であった。

 実際、黄川人の手回しや戦力強化もあり、ザキラ側に利がないわけではない。
今は『詠鳥庵』を優先するが、間桐慎二の陣営もまた、利用するだけ利用して終わらせる。
見切りを付ければ、隙を見計らってキャスターを殺し、その後で間桐慎二を探し出す考えであった。

「戯言はいい。本題を言え。」
「あらら、取り付く島もないネ……。まっ、ボクはマスターの"つかいっぱしり"なだけだからいいんだけど。」

 "つかいっぱしり"だと、黄川人も境遇を笑う。
黄川人は"何か指示に従って"出現している様子だが、マスターの慎二はというと陣地に引き籠っている。
慎二とはリモート状態で対面したぐらいであり、直接的に見合わせたことは一度たりともない。

 だが、間桐慎二が小人物の臆病者だと言えばそれまでであり、"恐れを成している"と捉えられなくもない。
それにキャスターというクラスである以上、(日瑠子のキャスターのような例外を除けば)基本的に籠って戦うのが定石。
目の前にいるキャスターも、所詮は派遣というものであり、ザキラも間桐慎二について、さほど深く見ていなかった。

「それはともかく、準備が出来たぜ?」

 黄川人が指を鳴らすと、上空に大型モニターが出現した。
モニターに流れる映像は、いくつかの小型ドローンに備え付けられたカメラからの監視映像。
それは、二階堂ルイのアーチャーの宝具。黄川人側の鬼達がアンダーダウンエリアで捕獲した個体群。
合理的観点からアンダーダウンエリアにはさほど量を割いていないためか、個体数は少なく、利用できる余地が生まれたのである。

 当然。"アーチャーの宝具"なことも、本人が打って出る気はないことも、黄川人は千里眼で知っている。
それを知った上で、黄川人は道具作成の応用で改造した。ドローンも道具作成に近い性質な故、改造しやすかったのもある。
代わりにアーチャー側にはアンダーダウンエリアの全個体の映像に対し、「黄川人のストリップショー」を延々と流し続けている。

「アカデミーはこれ一つで全部網羅してる。どう?中々、使い物にはなるでしょ?」

 黄川人も、自信ありげに主張する。
現在、『アカデミー』を中心として、数体のドローンが潜伏していた。

 "アルヴィースの問いかけ"というタイミングに合わせ、アカデミーに自軍を放っていた。
アカデミーにいる戦力は、ザキラが自身の能力により操っている魔獣達。
もう一つは、黄川人が道具作成によって形成した鬼の兵士達。
そして、バーサーカー『バラモスゾンビ』とザキラが洗脳させた上級NPCが一人。
鬼や魔獣の大半が、NPCなど見境もなしに攻撃してしまう点は否めないが、多少の犠牲はつきものと見ている。

 最初の相手は、『犬吠埼風』。
準備期間中にアカデミーの学生寮へと移り住んだこともあり、今のアカデミーに存在する唯一の陣営となっていた。
支給された持ち家がC-7地区「再開発地区」というハズレ場所にあったこともあり、空き部屋に移住したという。
ドローンの映像には、今もアカデミー内を奔走し続ける武装した金髪少女の姿が映っている。

「じゃ、僕も忙しいからまた後でね。」

 そういうと、黄川人は忽然と姿を消した。

「…………ふん。」

 黄川人の胡散臭い行動に構うこともなく、意識をアカデミーの映像に切り替える。
特に、問題は『バラモスゾンビ』。ザキラも、バラモスゾンビが良い結果を出すとは期待していない。
相性があまり良くない。敏捷も高く、気配遮断を持ち、頭も切れるアサシンが相手など、不利なるのは明白。

「さて、どこまでやるか。」

 故に、今回は"実験"として見ている。
むしろ"勝つこと"よりも"負けること"を踏まえていた。
ザキラは既に見抜いていた。バラモスゾンビの本質は、"敗北と復活にこそある"と。
停滞と形骸で得た勝利より、可能性のある敗北の方が幾分と戦いの意味がある。
敗北がどこまでの効果を成すか、ザキラはバラモスゾンビ自身へ試しているのであった。


÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷

÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷


『繰り返します!繰り返します!校内で大量の魔獣が出現しました!
校内の皆さんは速やかに避難し、くれぐれも棟内から出ないようにお願いします!』

"キャアァァァァァァァァ!!"
"うおわあぁぁぁぁぁぁぁ!!"

『協力してもらえる方がおりましたら、出来る限り、戦闘への協力をお願いします!
繰り返します!繰り返します!校内で……。』

"ひいぃぃぃぃぃぃぃ!?"
"ムワアアアアアアア!!"

「魔獣を建物には入らせるな!!食い止めることだけ考えろ!!」
「なんだ!?スプリガンやソウルイーターまでいるぞ!?なんでこんなとこにいるんだよ!!」
「召喚に決まっているだろがッ!んなことよりも手ェ動かせッ!!」

 アカデミーは混乱を極めた年明けを迎えることとなった。
数え切れないほどの魔獣や鬼が、何の前触れもなく、一斉に出現したのである。
ただ、見知らぬ鬼はいざ知らず、魔獣でさえもアカデミー近辺に生息する種ではない。
アカデミー外から侵入された形跡もない。つまり、"召喚された"ということ。

「クソッ!電波が繋がらない!さっきからずっとだ!」
「アカデミーの外は真っ黒!外には出られないって言っているわ!」
「内部なら大丈夫だ!情報を共有し合え!」

 外部からの情報や連絡、脱出を遮断されていた。
外に抜け出そうにも、アカデミー間を隔てるように壁に阻まれ、閉じ込められている。
電波はもちろん。音や臭い、光に至るまで、アカデミー内だけに留まっている。
ビッグアイの屋上が発生した爆発も、今のアカデミーには何一つとして届いていない。


 もっとも、アカデミーにいる者達は無抵抗ではない。
張った錬成陣に誘い込み、ウルフォスやウェアウルフを倒す者達。
霊基を編み上げて構成したシャドウサーヴァントもどきを使役し、スタルフォスを倒す者達。
校内で生成した魔獣にも有効な毒薬を浴びせ、燃え髪大将を倒す者達。
市に隠していた試作品のビーム砲を放ち、ワイバーンを迎撃する者達。
思い思いの力によって、目の前に迫る魔獣や鬼達に応戦していた。

 だが、碌に訓練も受けていない彼らでは負傷も多く、建物内での看護も増え続ける一方。
そして、対向する武器も魔力も残量に限度がある。こうして凌ぎ続けるのも時間の問題であった。


 故に、状況を打開しようと試みる者もいた。奔走する犬吠埼風であった。

   Ж   Ж   Ж

 厳粛な外観をした講義棟。その玄関前。
講義棟にもまた魔獣の大群がうろついていた。
棟内は非常事態に付き、夜間というのに電気が灯っている。
玄関は簡易的なバリケードで固められ、入ることはできない。

「あ、あ、ああ…………。」

 玄関も後僅かという距離に、NPCの女子生徒が一人。
女子生徒の顔は恐怖で蒼褪め、腰を抜かしてまま、動けないでいる。
前方には緩歩で迫る三体のリザルフォス。片手に持つ剣を振り回している。
嘲笑うかのように舌をチロチロと回し、ニヤついた笑みを浮かべていた。

 先頭の一体が女学生に目掛けて剣を振り落とした。
自分の死を悟ったように、目を閉じて項垂れる女子生徒。

 その時、リザルフォスの後ろから横一線に大剣が振り回って

「はあぁぁぁぁ!!」

 リザルフォスは三体纏めて胴体から切断される。
両断した上半身が飛び散り、下半身が横たわると、炭のように消えていった。

 後ろに立っていたのは、犬吠埼風。
黄色を基調とした戦闘服を身に纏い、手には身の丈程をもある大剣を軽々と扱う。
それは"勇者"。風の世界において、対バーテックス用に開発された戦闘システムであった。

「大丈夫!?」
「あっ、はい……!」

 風は女子生徒の手を持ち上げると、立ち上がらせた。

「入口はあっちよ!早く逃げて!」
「あ、ありがとう……ございます……!」

 引き攣るような足取りで、この場を立ち去るNPC。
見送ると風は後ろへ振り向く。両手で大剣を振るうと、戦闘態勢に戻った。
風の前方にはキメラやモリブリン、鉄クマ大将などの大群が接近している。

「ったく、アンタ達の狙いは……」

 風は地を蹴り、前方を浅く飛び跳ねる。

「アタシだってのっ!!」

 風が敵の間合いに着地すると同時に、大剣の刀身は延びていく。
放たれた回転斬りに、各々も防御を間に合わず、大群は一撃で迎撃される。

   Ж   Ж   Ж

「これでよしっと!」

 大剣の突きによって破壊される、講義棟裏の壁。
壁に刻まれていた何かしらの意味を持った術陣は、衝撃に伴って消滅する。

「後は食堂や体育館の方ね。」

 翻して駆け出すと、風は講義棟を抜け、キャンパスの道を進んでいく。
"敵陣営がアカデミーに結界を張った"と、今立たされている状況を風も把握していた。
だが、準備期間の内にこうした不審な予兆があったわけでもなく、数分数秒の内に形成されたものである。
アルヴィースの問いかけに意識が削がれる隙を突かれてしまい、醒めた時には既に展開されていた。

 これは本格的な結界ではない。即座に形成された以上、土地に根付いたものではないのだ。
この結界にも一帯に展開するために必要な起点ないしは要石なるものがどこかにある筈、と読んでいた。
実際、読みは的中。アカデミーの各所には風にも見覚えのない陣が刻まれ、破壊による魔力の緩弱が確認できた。

 そのため、風は陣を破壊すべく、広大なアカデミー内を奔走していた。……もちろん、"彼女一人"で。

(アイツはアイツで勝手にやっているしね……。)

 当のアサシンは"待ってられない"とばかりに、勝手に行動を始めていた。
目が醒めた頃には自室にいない。念話を送れど、一言二言が返答され、その程度ですぐ切られる。
内容は、『サーヴァントと交戦中』だの、『アカデミーの裏庭だから来るな』だの、『自室に避難していろ』だの、それぐらい。

「……ってアタシ、全然期待されてないじゃないのよ!
こうなったらアタシ一人で結界を打ち破って良いところ見せてやろうじゃないの!えぇーーーーい!!」

 わかっていたものの、このまま期待もされないままというのは風もスッキリしない。
ここは良い所を見せて、アサシンを見返してやろうと風も意気込みを入れていたわけであった。

 "ビクッ"

 ……とその時、風も嫌な予感がよぎった。
寒気がするというべきか、謎の鳥肌が立ってきている。

「…………。」

 恐る恐ると振り向くと、そこにはいたのは、化け提灯。
風の顔が青褪め、口は引き攣り、目はちょっとばかり涙目になった。

「ひゃぁああああーーーーっ!?で、で、で、出たぁぁぁぁーーーーっ!!」

 走る速度を速め、その場から姿を消した。
振り切られたことに化け提灯も思わず、呆然として眺める。

 風は、実はお化けといったものが苦手なタイプ。
怪談話でさえも恐怖のあまり卒倒し、お化け屋敷でも腰が抜けて立てなくなるほどポンコツ。
別に雑魚に遅れを取るなどという認識ではないのだが、それでも、苦手なものは苦手。
化け提灯だの、ゴーストだの、骸骨だの、小鬼だの、呪い人形だのと……。
そういう得体の知れない妖怪達は、風は正直言って、勘弁してほしかったのであった。


÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷

÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷


 アカデミー北西部の裏庭の一帯。
豊かな森林に覆われたスポットであり、日中は主に自然研究や憩いの場などにも活用されている。

「だから!侵入じゃなくって、召喚だって言っているじゃないですかァ~~。なんでわっかんないかなァ~~!」
「まだわからないだろ。直接見るまではな。」
「カメラで見えるってのにさ。まったくこの人ときたら、用心深いったらありゃしないんだからもう。」

 点在する道路照明灯と舗装された歩道を頼りに、奥へと進む用務員三人。
律儀な先輩用務員の意向により、「侵入防止柵の異常点検」という仕事を投げ出せないでいた。

「今日は衛宮はどうしたんですか?こういうことなら進んでやってくれるってのに。」
「深夜にまでバイトを宛にするな。というか、彼ならとっくに辞めている。」
「うげっ!マジかよ。それはそれでなんかショックだわ……。」

 頼りになる男の急な退職願いにショックを隠せないでいた。
よく働く新入りだけあり、アカデミー用務員内の衛宮士郎の好感度も高かったらしい。

「あ~あ。退職祝いと扮して詠鳥庵に行きゃあよかったですわぁ~~。そしたら美人美少女の晴れ姿でも拝めたかもしれないのにぃ~~。」
「毎年恒例のノリでアカデミーに残るもんじゃねーよな。定番は人の判断力をダメにするとはこの事だわ。」
「希望的観測で仕事を怠るんじゃない。わかったらきびきび歩いて、きびきび避難所に戻るぞ。」
「「へいへ~~い。」」

 目の前に広がる暗闇に足を止める三人。内、二人は顔を引き攣らせる。
先に見える灯まで、4つほど点在する道路照明灯が壊され、。

「……ふむ、故障か?」
「いや、故障かじゃねぇでしょ!モーレツに嫌な予感しかしないよ!」
「この暗闇は"進むな危険"という意味だろ!どう考えたって!」
「懐中電灯があるだろう。」

 先輩用務員がポケットから懐中電灯を取り出し、周囲を照らし出す。
その先にいたのは、魔獣。息を潜めた何十もの魔獣達が待ち構えていた。

「グアアアアアア…………。」

 一際大きい怪物が中心に立っていた。
毒々しい紫色をした竜人型の骸骨。焦点のない瞳は三人を凝視している。
バーサーカーのサーヴァント、『バラモスゾンビ』。

 青褪める二人を他所に、先輩用務員は魔獣達を数え始める。

「骸骨を含めると全部で三十体だな。傾向はウェアジャガーやウルフォスなどの動物系が多い。」
「なんで冷静に分析してんの!?」

 用務員達を対象に狙いを向ける、魔獣達とバラモスゾンビ。
ゆっくりと後退し、距離を離す用務員達。先輩用務員だけが対魔獣用の猟銃に手を伸ばす。

 ……だが、その時であった。

「!?」
「ブモオォォォォォッ……!」
「アオ"ォォォォォォン……!!」

 無明の中で響き渡る悲鳴。

「な、な、な、何がどうなって……。」
「横から放たれた針によって二十体ほど死んだ。臭いから察するに針には猛毒が仕込んでいるな。」
「だから、なんで冷静に分析できるの!?」

 用務員二名は、咄嗟の事態に腰を抜かしていた。
懐中電灯で周囲を照らすと、そこには夥しいままでの死体に溢れている。

『────おい。』
「「ひ、ひいぃぃぃぃ!!」」

 一帯に響き渡る、姿無き主のくぐもり声。

『邪魔だ。死にたくなければ早く失せろ。』
「「わかりましたぁ~~~!!」」

 主の威圧感に負け、二名の用務員は一目散に逃げだした。

「お助けいただき感謝します!無礼な部下には後で言って聞かせますので。それでは!」
『…………。』

 先輩用務員だけは敬礼すると、整ったフォームで退散した。
"なんだアイツは……"と思ったが、目前の敵に意識を切り替える。
本来の敵は、有象無象の魔獣達ではない。中心にいる『バラモスゾンビ』であった。

「グゴオォォォォォォォォォォ!!!」

 直撃はしていた。だが、針は通用していなかった。
呪いによるものか、自動的に回復し、生半可な攻撃では癒合されてしまう。
常人なら致命傷の猛毒も、耐性があるのか、さほど通用しない。

 バラモスゾンビは狂乱の雄叫びを上げると、踏み鳴らしを始めた。
"カラカラカラカラ"と、骨が動く際に生じる奇音だけが周囲一帯に鳴り響く。
奇怪な行動と裏腹に、地踏みに伴う振動が地面を揺さぶり、周囲の魔獣達は怯みだす。

「ォォォォォォォォォォォォォ!!!」

 冷気を伴った魔息がバラモスゾンビの口元に収束する。
そして、行動は唐突に始まる。冷気を放射すると頭部が徐々に回転、全方位に気が散乱した。
絶対零度の冷気に空間は呑まれていく。残った魔獣達は声すら上げることもなく、死に絶えた。

「ガガガガガガガガガガーーーー!!!」

 暴れるように周囲に当たり散らしていくバラモスゾンビ。

 無明に潜む敵に対し、バラモスゾンビも"見つけられない"でいる。
暗視能力に欠けているのか、空間認識力が抜け落ちているのか、先程から落ち着きがない。
何も見えず、知恵もないが故にとかく答えが見出せない。故の反動で苛立ち、暴走している。

 声の主もそうなると見抜いた上で、一帯の道路照明灯を割ったのだ。
回復能力がある以上、攻撃が低いものだと意味がなく、耐性の存在や痛覚がないために弱らせるのも難しい。
その一方。まともにやり合うならば"面倒"と見るぐらい厄介な性能を持つ反面、"思考力"というものがないと観察した。

思考のできない骸骨など、下手な傀儡師の傀儡と同レベル。動きさえも評価するならば、"単調で芸がない"と見ていた。

(そろそろ、頃合いか……。)

 無明より三本のクナイが放たれた。
凶器が正確な軌道を描き、バラモスゾンビの間合い前方にまで迫り来る。
爪の一振りでクナイを弾き落とすバラモスゾンビ。地に落ちてより鳴る金属音が周囲へ響いた。

 バラモスゾンビの気が変わる。暴走の怒りが冷静な怒りへと切り替わっていく。
目先は前方を向き、敵意は集中する。口から毒の瘴気が溢れ出し、戦闘態勢に移行していた。

 ……と、投石がバラモスゾンビの後頭部に当たる。

「どこを見ている。」

 小さな灯がバラモスゾンビを照らし出す。
バラモスゾンビは腹立たしげに、石の投げられた背後へ翻す。

「こっちだ。凡骨。」
「グガガガガガガガ…………!!」

 声の主は風が契約するアサシン、『サソリ』。
樹の枝に腰掛け、用務員が落とした懐中電灯でバラモスゾンビを照らし、挑発していた。
身に纏う「ヒルコ」は解除、今は生身。機動性を取り、「三代目風影」で戦うことに決めた。

 歯軋りするバラモスゾンビ。口元に紫の瘴気が収束していく。
放射された紫色の濃霧が樹に直撃し、樹は即座に枯れ果て、地に落ちる枝。

 そして、また、投擲されたクナイがバラモスゾンビの頭部に直撃した。

「……グガアアアアアアアアアアア!!!」

 無明の森の中。誘っているかのように、一本の灯が揺れ動いていた。
咆哮を上げると、揺れる灯を目掛け、一目散に追いかけ始めるバラモスゾンビ。
邪魔な樹々は構うことなく突き進む。黒闇でバラモスゾンビが走る骨の音が響き渡っていた。


÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷

÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷


 前方一帯より響き渡る、竜群の咆哮。


  風は食堂前の広場にまで差し掛かり、足を止めた。
手を翳して大剣を繰り出すと、両手で剣を握り締め、中段の構えを取る。

 目の前には立ち塞がるのは、50匹以上はいる下級竜種の大群。
ワイバーンエビル、レインボーワイバーン、スノードラゴン、ヒドラ、ドラゴンむし、ドドンゴ、など……。
種族も陣形も統一性というものがない。竜種という縁だけで繋がる、雑多な寄せ集め。

 前方一帯を観察した時、風は奥に構える食堂に目を向けた。
二階のバルコニー。ガラスドア越しに抜ける室内灯に照らされ、人影が立っているとわかる。

「!アンタは……。」

 それは、中性的な風貌をした細身の"少年"であった。
腰には武装として細身の剣を携え、微量ながらも帯び続ける神秘。
左手の甲には、青緑色の光が輝き放つ『令呪』を宿している。
だが、マスターではない。その令呪は"再現物なだけ"であり、歴とした"NPC"である。

「ジーク!ジークじゃないの!何やってんのよアンタこんなところで!」

 『ジーク』
"大聖杯の管理者"という縁により、世界に再現された上級NPC。
アカデミー錬金術科の生徒としてロールを与えられ、この都市で生活している。
彼の令呪に、風も"マスター"と誤解して絡んだ事がきっかけで、交流を持っていた。

 しかし、今の彼は様子が異常であった。
その目からは正気を感じさせず、虚ろな表情で佇んでいる。

「ザキラ様の敵は…………。」

 微細に揺れ動く空気の振動。床やガラスに亀裂が走る。
ジークの胸元から青白い光を発し、溢れ出す余波に稲妻が放出する。
浮かび上がるジークの身体。屋根を越え、四階程ある高さまで上昇した。

「っ……!」

 周囲を覆う程の目映い光。
風も光量に直視しきれず、反射的に顔を背け、目も閉じていた。

「!!」

 徐々に晴れた視界の先、風も驚愕の相に変わる。
浮かんでいたのは、胸元一帯に青白い光を放つ巨大な"黒竜"の姿。
膨大な神秘。周囲に群れる雑種竜達とは比較にならぬほど、圧倒的な存在感。

 翼を大きくはためかせると食堂から広場を滑空し、風の正面へ立ち止まった。

『俺の敵だ!!』

 威嚇の雄叫びを上げる黒竜。竜の大群もまた共鳴しだす。
大気を震わす轟音の振動が一帯に広がり、建物の窓ガラスを破砕するほどの衝撃を生む。
風も突然変異で現れた強敵を前にして、顔が強張り、数滴の冷汗が流れた。


 その名は、"邪竜ファヴニール"。
"真の竜種"とまで語り継がれるほど、竜にとって最上級の存在。
同時に、対峙する者が"自分というすべてをぶつける必要がある"ほどの脅威であった。


÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷

÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷


「────!!」

 窓からアカデミーを監視していたジークフリートもまた険しい表情に変わった。

「……敵か。」

 仰向けの体勢で休憩したあやも、半身を起こしてジークフリートの様子に気付く。

「この反応、"ファヴニール"だ。マスター。」
「何……?」

 あやもベッドから降り、窓からアカデミーを一瞥する。
"何の異常も感じられない"。ただ何も変わらない夜景が流れていく。

「……確かに姿も形も見えないが、それでも、"感じる"んだ。」
「お前が出鱈目を言う奴じゃないことぐらいわかっている。……とにかく、確かめるぞ。」

 あやもジークフリートには信頼を置いている。
真面目な彼が、そんな出鱈目を言うような相手でないということも理解している。

 ジークフリートにはファヴニールの血を浴びたことにより、共感する性質が秘めている。
互いの生存を確認できる程度に過ぎないが、時空を超えて伝わるほどの能力であった。

 片手間の荷支度を終えると、あやとジークフリートは窓から飛び降りた。

   Ж   Ж   Ж

「……ファヴニールとはどういう奴だ。」

 近辺の歩道を走りながら、あやは質問を投げかけた。
ファヴニールは、ジークフリートなどの伝承で語られる、邪悪なる竜の象徴的存在。
そして、ジークフリートはファヴニールを打ち倒したことで、伝説に刻まれ、英雄に至ったのである。

「ファヴニールはまた名を、悪竜現象。人の欲望が溢れ出た結果として発生する脅威……というべきだろう。」
「現象、か……。」
「俺が対峙した相手もまた、かつては人間だった。それが呪いにより、ファヴニールは発生する。」

 ファヴニールとは正しくは竜の固有名称ではなく、呪いに当たる一種の概念。
人が抱く大欲が原因によって引き起こされ、人ならざるモノへと変身させる力となる。
そして、因子には他者に感染する性質があり、感染によりファヴニールとなる可能性も否めない。

「……強いか?」
「ああ、強い。どうして勝利できたのか自分ですらわからないほどにな。」

 ジークフリートも強気には答えなかった。それほどまでの脅威だからである。
彼が「竜殺し」の称号を冠する所以は、ファヴニールが常人には打倒できない存在にある。

 打ち倒すことは、理論や策などがあって成せる行いではない。
ユウキのセイバー「坂田銀時」が虚と死別して成し遂げた、"不死殺し"が然り。
日瑠子のキャスター「フリン」がYHVHを討伐して証明させた、"神殺し"が然り。
"全人生ないしは全存在"を捧げなければ実現できなかった偉業である。

 故に、これから戦う相手もまた容易に打倒できるとは限らない。
それほどまでの強敵が相手ともなれば、早期での令呪必須も考えられる。
あやも事態を悟り始め、二人の間には緊張感が走っていた。

 だが、ジークフリートにはもう一つ別の疑念があった。

(しかし、ランサーは「気配感知」のスキルを持っていた筈だ。何故、彼女に気付かせなかった……?)

 それは先程まで戦闘していたランサーの存在。 
胡蝶カナエのランサーが「気配感知」のスキルを所持していることは、ジークフリートも知ってはいた。
もし、ファヴニールほどの存在が出現する予兆があるならば、ランサーが気付いたとしてもおかしくはない。
しかし、現在もアカデミーへは向かっていない様子を察するに、恐らく彼女にさえも"気付かせてはいない"のだ。

 このアカデミー近辺は、どこか異様さに包まれていた。
例えるなら、空間全体が「気配遮断」を起こしているかの如く、情報が隠蔽されている。
空気、音、光。内と外を通じるあらゆる情報が擬態し、"何事もない"という嘘を伝えている。

「「!」」

 アカデミーの校門が目に見える距離にまで差し掛かり、足を止める二人。
周辺に流れる気配の変化が二人にもわかった。つまり、"結界が張られている"、ということだ。

(やはり、陣地作成か……。)

 再び足が動き出し、二人は突き進んでいく。
これはキャスターの「陣地作成」の応用、アカデミーの一帯を覆うように結界が張られている。
それも一つの結界ではない。幾重もの層に分けられ、この結界を形成していることがわかった。

(確かにランサーの目を掻い潜れるわけだ……。)

 特別な技術ではないが、手の込んだ造りで出来ていた。
これは情報が行き交う情報社会下において、外部に情報が漏れないために仕掛けにもなる。
また、陣地を"敵を誘き寄せる"などに使うとしても、これならば不要な段階で露見させないことができる。
漏洩防止対策と同時に、種の隠れ蓑としても機能していたというわけだ。

 奥に進むにつれ、徐々に様子も変化していく。
周囲の光景は無明の黒に覆われていき、阿吽絶叫と獣の声が彼らに届く。
多数の魔獣の臭いも微かに漂い、魔獣の大群が中にいると理解できた。

「待て!マスター!」
「!」

 突如。ジークフリートは足を止め、手であやを制止させた。

「どうやら、この先は壁のようだ。」

 目の前を叩くと、衝撃音が返ってくる。
音は軽いとは言えず、相当な強度があるとあやも判断した。

「壊せるか?」
「やってみる。」

 返答と同時に手に大剣を出現させると、ジークフリートより袈裟斬りが放たれた。
目の前には一つの裂け目が生まれ、中から漏れ出した薄い光が、暗闇の空間を照らす。
ジークフリートが裂け目の両端に手を置き、力付く引っ張ると一人分が抜けるほどの穴となった。


 二人が抜けた場所は、校門の先。
目前に広がる光景は、あらゆる魔獣の大群が徘徊するアカデミー。
突然出現した乱入者に反応してか、門番用の魔獣達の視線があや達に集中している。
淡々とした手際であやも竹刀袋から刀を抜き、ジークフリートも瞬時に剣を構える。

「……行くぞ!」

 魔獣の巣窟と化した学校内へ、二人は踏み込んだ。


÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷

÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷


「ザキラさま!」

 玉座の横にローブで纏った一体の忍者が出現し、横見するザキラ。
忍者は顔は黒い影に包まれ、目には緑色の光が浮かんでいる。

 それは、ガロという名の魔獣の一種。
ザキラや黄川人などに仕える間者であり、市内に多くのガロが潜んでいる。
隠密性はCランクの気配遮断に匹敵し、陣営の大半はその存在を知らない。

「どうした。」
「佐倉杏子が動き出しました!」

 杏子達の動向は、A-5地区で密かに偵察していた。
処置は"経過観察"であった。開始に伴い、移動するであろうと読んでいたからだ。

「なら、『二人』を向かわせろ。」
「ハッ!」

 ザキラは眉一つ動かさず、指令を下す。
ガロが再び玉座の間から姿を消すと、正面のモニターに目を戻した。


÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷

÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷


 傾斜が緩まるB-4地区北東部に差し掛かっていた時、杏子達は足を止め、後ろへ翻した。

「……臭うな。」
「えぇ。獣共がぞろぞろと……。」

 先程から気配に気付いていたが、後方から魔獣の大群がこちらに押し寄せている。

「ここらで魔獣が来るなんてまずあり得ねぇ。飼われ者だな。」
「どこかの陣営の手先、ですわね。お相手します?」

 魔獣達がスクール街近くに来ることはないということは、杏子達も知っている。
それは"防衛隊に撃たれる"という意味に他ならない故、魔獣達も本能的に理解しているからだ。
ましてや一目散に向かってくるなど、野生がやることではない。それも雑多な種が組むなど不自然。

 つまり、意図的に仕向けられた敵でしかない。

「言うまでもねぇ。……やるぞ。」

 杏子は手に一本の槍が出現し、両手で構えた。

「しっかし、気に食わないねぇ。テメェの都合でいい様に弄ぶ連中ってのは。」
「…………。」

 不満を呟く杏子。浮かべた表情は、"気に入らない"、と言った様子であった。
エリザベートは道具作成により生成した鞭を構えつつ、主の死角から無表情でみつめる。
彼女が浮かべた無表情の意図も、また"気に入らない"、と言った様子なのかもしれない。


 杏子達の遥か前方には、迫り来る魔獣の大群。
上空からは飛翔する鳥種・竜種の魔獣達、登坂からは下降する四足歩行の魔獣達。
その数、ざっと千匹はくだらない。数十匹ならただの雑魚でも、これほどまでに揃えば軍隊の規模だ。


 距離と敵数を把握するや否や、二人は坂を駆け上がる。 
杏子達としても "待つ"ことはしなかった。取った行動は"進んで先行を取る"こと。
魔獣達よりも杏子達の方が速い。これより間合いに入るのも時間の問題であった。


 だが、杏子達の進行は食い止められることになる。

「────っ!?」
「……!」

 空から降ってきたものは────"矢の雨"であった。
ピンクの軌跡を描いた無数の矢が飛来する。杏子達の前面は矢に覆われた。

「あらあら、雨には傘が……」

 エリザベートが翳した手。空中に十数本の拷問器具の束が生成される。

「必要ですわね!」

 左右上下に渡って器具の束が広がり、一つの巨大な盾となった。 
直撃への防御に伴う振動が、盾を次々と震わせ続ける。多くの被弾が轟音となり、一帯に響き渡った。
如何にサーヴァントの道具とはいえ、急造故に耐久性は心許ない。エリザベートの顔も余裕とは言えなかった。


 次第に、被弾が鳴り止んだ。
エリザベートも拷問器具の結束が解除し、器具は崩れ落ちるように辺りに散らばり始めた。

(うるさっ……!)

 金属の衝突により発生する騒音が響き、杏子も思わず耳を塞いだ。
この大騒音に比べたら、先の轟音の方が数倍はマシなくらいだと、ひしひしと感じる。


 空けて数十秒。金属の塊盾による幕が開けた先。
この間、先に間合いに到達した魔獣の大群が、前面一帯に待ち構えていた。
近い距離で僅か、十メートルほど。視界はほぼ魔獣で埋め尽くされている。

「……!?」

 しかし、杏子の視点を集めたのは魔獣達ではない。

「…………。」
「…………。」

 先頭の上空に羽ばたく、二頭のシャンタク。
二頭の背には人。双方共に騎乗する少女の姿があった。

 一人は、ピンクの色を基とした"魔法少女"らしい衣装を纏った可憐な少女であった。
右手には上端部分に花飾りの付いた弓を、左手には魔力を帯びたピンク色の矢を携え、戦闘態勢を崩していない。

 もう一人は、黒と紫の色を基とし、女子制服を模した衣装を着た凛々しめの少女であった。
左手には金を中心に備えた円盤型の盾が装着し、右手にはこの世界ではまず見ない89式小銃を構えている。

「……な、なんで……。」

 目を見開き、"あり得ないもの"としてみつめる杏子。
それがあり得るならば、杏子はこの準備期間の内に知っている筈であった。
魔力の質は、確かに実物。冷静な部分が、幻惑の類ではなく本物の人間と判断していた。

「なんで、まどかとほむらがいるんだよ……!?」

 その少女達こそ、杏子がよく知る『鹿目まどか』と『暁美ほむら』であった。

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