ロフィルナ語:ibola
ナシーシャク語:ibolla
神性 |
悪神 |
居場所 |
精霊の国・濃霧城 |
武器 |
なし |
名称
イ・ボラという名前は古典
ロフィルナ語に由来するため、現在に至ってはその語源は不詳である。
古典ツォルマ語ナシーシャク方言(ナシーシャク語)に訳された際には、
イボッラ(ibolla)と表記されたが、これはナシーシャク語における異分析である。「迷う」を表す √bilol という語根の第28派生形に、使役形を表す -a がついたものであり、「迷わせる原因、迷いのもと」を意味する。
神話
悪神の一柱であり、
相互星辰を堅守する
善神の軍団――
聖祭の円卓に対立する。
元はブルセカ地峡の清いせせらぎに面するこじんまりとした村で静かに暮らしていた美しい村娘であった。しかし、
聖祭の円卓と悪神の間で起きた「モネアスの轟き」という争いに巻き込まれて村ごと逃げる間もなく、無惨に焼き殺されたのだという。ブルシェンドルーク地方から現在のフィーエス連合帝国(
テラソルカトル王政連合)へと逃げ去る悪神らは、その少女の魂をもったいないと思い拾い上げたが、拾い上げてどうするかまでは考えておらず、逃走の途中で魂を落としてしまう。そうして落とした魂が、不思議なことに若返りの呪文を試していた魔女の鍋に入ってしまい、そのまま呪文が御されたために魔女の身体を乗っ取って彼女は復活を果たしたらしい。以後、悪神によってこれが行われたことを知り、悪神側に付いた彼女は神の一角として
聖祭の円卓の神軍に復讐を誓った。
以後、基本的には霊力を高めるために協力する精霊の国にある濃霧城――ヴィイェルチェに住み英気を養っているが、時折現世の海や川に現れ、船乗りや水辺で遊ぶ子供を海に引きずり込み、その先にある精霊の国へと連れ去ってしまう。連れ去られた者たちは、精霊たちによる大層なもてなしを永遠とも言える間に受けるが、長らくこのようなものぐさな生活をしていると自分で考えるということをやめてしまうという。最終的にはイ・ボラが目指す善なる神を滅ぼすための戦士として、必ず死ぬ戦いに送り込まれるという。
すなわち、イ・ボラに魅入られるとは、二度と生者の現世には帰っては来ないことを指すのである。
民俗学的解釈
イ・ボラの存在は、エルドラーム創約星教の根本的信仰における水の神(巨大魚を狩猟する偉大な漁師や激流を御す偉大な船人などの聖人化から発した神)に基づき、それにブルセカ地峡の喪失という歴史的事情が影響して生まれたとされる。つまり、善神は
ユミル・イドゥアム連合帝国を指し、悪神はジェルビア連合諸国を指し、美しい村娘はその間の紛争に巻き込まれる無辜の住民だとされるのである。
これを傍証するように、ブルシェルンドルーク地方に面する
テラソルカトル王政連合のフィーエス連合王国やセントダイン王国の海岸付近の地方ではイ・ボラの信仰が深いところが多く、地方によっては
アルヴェファーンではなくイ・ボラを主神として認める地方もある。
信仰の社会的影響
イ・ボラを主神として認める地方では、一部人身御供を捧げる集落もあり、王政連合政府から問題とされた。このことから、ソルキア解釈が施行された以降の656年より星教騎士団は王政連合南部を対象にした異端審問「ナシャキツァティムニヴ作戦」(ナーシャク語:našakicatimniv)が実行され、少数のイ・ボラ教徒集団が検挙されている。同地域では、後も代替として動物の犠牲儀式を続けており、星教騎士団は違法ではないとしているが一部の兵による嫌がらせ行為などが報告されている。集落民からは「星教騎士団は本来の信仰のありかたを見失っている」というような批判も聞かれるという。
このような状況は、後の神学者による組織「連合南部教義評議会」の成立に繋がったのであった。
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最終更新:2024年11月11日 18:57