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実況パワフルプロ野球シリーズ@2chエロパロ板まとめwiki

捕手の絶対条件

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
 パシフィックリーグ、開幕戦。
『キャットハンズ、選手の紹介をいたします』
   「実況は私小原、そして解説は大西さんでお送りいたします」
   「よろしくお願いします」

 キャットハンズベンチ。
 飛び出していくスタメン選手を二人の女性選手が見送っていた。
「あおい先輩」
「どうしたの? みずき」
「今年こそ、優勝しましょうね」
「うん、これまでに比べてキャンプでもみんなすごく充実してたしね」

『一番センター・矢部ぇ明雄ぉぉぉ!!!!』
   「世渡監督、今期開幕は一番に矢部選手を起用してきましたね」
   「ええ、チャンスでの弱さも克服してきましたし足の速さに選球眼の良さ、一番打者の
    条件は揃っていると思いますよ」

「ついに開幕スタメンでやんす! 派手に暴れるでやんすよぉ!!」

「あのメガネもやっと成長しましたし、いまだにバカは治ってませんけど」
「み、みずき、その言い方は……」
 あおいが少し苦笑する。
「6年も一緒のチームにいれば嫌でも目に付きますよ、昔から足と守備はいいくせにチャンスで
 やたらとカッコつけようとして凡退するんです」
「でも、今はカッコつけようと思ってカッコつけられるくらいに成長したんだよね」
「まぁ……そうですね」
 ちょっと素直ではないが、みずきはこれでも矢部の実力を認めている。
「でも、優勝が本気で期待できるのはボクも一緒かな、いい選手も入ったし」
「もちろん、これでキャッチャーは安泰です」

『六番キャッチャー・六道ぉ聖ぃぃぃ!!!!』
   「でました、今年の目玉ルーキーとも言われる3人目の女性プロ野球選手。そして初の
    女性野手、六道聖選手です」
   「まさか本当に女性選手を、しかもルーキーに開幕マスクを任せるとは……」
   「ここ数年、キャットハンズは捕手が悩みどころでしたからね」
   「もしかすると世渡監督はこの六道に正捕手の期待をかけているのかもしれません
    しかし、とんでもない博打ですよ、これは」


「聖ぃ! 遠慮なく見せつけてやんなさい、聖の実力を!」
 投球練習を受け始めた聖が、軽く手を上げてみずきの声に応えた。
 そして、みずきの目がマウンドに登った選手を見つめる。
「うちのエースもいよいよベールを脱ぐ時がきましたよ」
「え? どいうこと?」
「聖が捕手の時の西園寺くんは、普段とは別人なんですよ」

『ピッチャー・西園寺ぃ悟ぃぃぃ!!!!』
   「今シーズンの開幕投手はプロ6年目の右腕・西園寺悟、23歳。
    捕手でドラフト指名されたにも関わらずプロに入ってから投手転向した異色のエース
    昨年の成績は12勝8敗で防御率3.44。ランディ=ジョンソンに似た豪快なフォームでも
    話題となりました。今年はその数字を確実に上回るとまで言われています。
   「もう完全にキャットハンズのエースになりましたね」


 投球練習後、マウンドとホームベースのちょうど中間あたり。
 バッテリーによるプレイボール前の話しあいが行なわれていた。
「まったく、随分この時を待ったんだぞ」
「すまないな先輩、待たせた分しっかりと期待には応えよう」
「つまり、修行の方はバッチリってわけか」
「ああ、仏教学部はなかなか面白かったぞ」
「……いや、そっちじゃなくてだな」
「安心しろ、妻としても弟子としてもしっかりやらせてもらう」
 その言葉で思わず小波がニヤリと笑い、それを見た六道の口元にも微かな笑みが浮かんだ。
「コースも球種も全部任せたぞ、聖」
「了解だ先輩。私の要求は厳しいぞ」
 お互いに嬉しそうな、本当に嬉しそうな微笑を浮かべてポジションに戻る。
 すでに左打席にはいっていた相手の一番打者が、なぜか口をパクパクさせていた。
「ええと、君あいつと結婚してるの?」
(聞こえていたのか…開幕の歓声でかき消されないのであれば、あそこで話すときはもっと
 静かに喋る必要ありだな)
「捕手は女房役と言うだろう?」
「え、あ~、そうかそうか、そういう意味か」
「もっとも、私にはそれは当てはまらないが……」
「?」
「私は悟先輩以外の女房であるつもりはないからな、他は言うなれば花嫁修業だ」

(うわー、てんぱってるなぁ、ささやき戦術は今も健在ってわけか)
 マウンドからでもあのバッターが明らかに動揺しているのがわかる。
 開幕初打席でアレでは、今後も聖の餌食になり続けそうだ。
「プレイボール!」
 試合がはじまった。
 聖からサインが出る、一球目は……
(それか)
 開幕の第一球目、全身のバネを使って身体全体を巻き込むように腕をしならせる。
 投じたボールは左打者の内角――そこから急激に変化して外角いっぱいに決まった。
「ストライィィク!」
 聖がその球を難なくキャッチし、すぐに投げ返す。
(お見事、捕れないって泣いてたころがウソみたいだな、聖)
 頭の中で「な、泣いてなどいないぞ」と抗議する聖の姿がやけにリアルに再生された。
(ホントに、頼もしい限りだ……)

 この日、後にキャットハンズを支える黄金バッテリー、通称「おしどりバッテリー」がプロ野球界に華々しくデビューした。

   ~~パワプロ13 聖タチバナSS 『捕手の絶対条件』~~

 夏の大会。聖タチバナ学園野球部の挑戦は、地方大会の決勝戦で終わった。
 今年になって新たに加わった二年生部員の活躍もあり、タチバナは一躍県内でマークされる
立場へとのし上がった。
 去年まで部員すら満足に揃っていなかったことを考えれば大変な躍進だ。
 そして、そんなチームの中で誰よりも際立ったのは、チームの中心として全員を纏め上げた
2年生捕手の存在だった。
 強肩好守、チャンスを確実にものにする打撃。凄まじいの一言に尽きるブロック。
 投手のみならず野手全体をも配慮する視野の広さ。
 帝王実業を見に決勝戦へ来ていたスカウトが、彼――西園寺悟をドラフト候補として
ピックアップしたという噂も流れている。
「じゃあ、新キャプテンは西園寺くんね」
「西園寺しかいねぇよな」
「よろしく頼むぜ、キャプテン」
 そんな西園寺であるからこそ、当然の抜擢だった。

「太鼓先輩、お疲れ様でした」
「ええ、これからのタチバナ野球部を頼みましたよ」
「たまになら見に来てね、せ・ん・ぱ・い」
 最後の挨拶を交わして部室を出て行く、旧キャプテンの太鼓。
 それを見送る新キャプテンの西園寺と、なぜか一緒に最後まで残っていたみずき。
「みずきちゃん、別に最後まで残ってなくても良かったのに」
「西園寺くんだけにするのもなんだか可哀相かなって思って、それともなに? こんな美少女と
 一緒にいるのが嫌なの?」
「そうは言ってないだろ、残ってくれてありがとう」
 一応、礼を言っておく。もっとも、みずきの目的は太鼓の見送りよりもこの後にある。
「ねぇ西園寺くん、夏の大会も終わったし、そろそろ聖に教えてあげてもいいんじゃない?」
「ようやく下準備ができたばかりなんだ、もう少し待ってほしい、それに教えるといってもどの部分なんだ?」
 質問の内容を予測していたようなすばやさで、西園寺が答えた。
「全部! 西園寺くんが何を考えて聖に辛くあたってるか!
 なんでノーサインなのにクレッセントムーンが捕球できたか!
 聖は一度考え込んだらズブズブはまっていっちゃうタイプなんだから」
「そんなに辛く当たってるつもりはないんだがな……せめて来年の春くらいまで待ってくれ」
「西園寺くん、まさか聖を潰すつもりじゃ……ないでしょうね」


「ちょっと待て、そんなこと疑ってるのか?」
「いまの聖を見ればそう思いたくもなるよ、マイナス思考スパイラルになってんだから」
「まぁ、投手心理に関しては俺の方に一日の長があるからな」
「だからって、あそこまで聖を否定しなくてもいいじゃない」
「否定じゃない意見を言っただけだ」
「屁理屈男!」
「わがまま女。大体最初にそっちも同意したことだろ」
「うっ、それは、そうだけど」
「みずきちゃん、元々聖ちゃんは『クレッセントムーンを捕れる捕手』として招いたんだよね」
「………」
「でも、あの球は俺も捕れる。だから既にみずきちゃんの思惑は達成されてる、聖ちゃんに関係ない部分でね」
「だから、聖はそれとは別方向の育て方をするってこと?」
「ああ、単純な捕球技術だけではない、少なくとも俺の理想に近い捕手にね」
「西園寺くん、それは……最後には聖を笑顔にできる方法なの?」
「――できる、してみせる」
「……わかった、信じるよ、信じてみる。仮とはいえフィアンセの言葉だしね」
「ああ、信じてくれてありがと」
 その言葉を最後に、この日の会話は終了した。
 だから、ここからは独り言。聞こえてもいい、むしろ聞こえるように言った独り言。
「うーん、フィアンセって部分実は結構勇気だして言ったんだけどね」
 全然反応がなかった。西園寺がひたすら熱心に答えたのは聖に関する問いだけだ。
「まったく、なんて不器用でバカなの!」
 好きな相手とはまともに会話すらできない男と、そんな男に惹かれてしまっている自分。
 両方に対しての独り言だった。


 それは5月の上旬、聖が入学したばかりで、みずき達がようやく野球部に入部した頃。


「アウトォォォ!!」
「ムキーッ! また西園寺くんに刺されたでやんす! このままじゃまた奢る羽目になるでやんす!」
 バッテリーの盗塁阻止とランナーの走塁練習。
 二塁上で審判役の部員がジャッジを告げ、ランナー役の矢部が気合を入れなおしつつ一塁方向へ戻る。
 ここまで西園寺はまだ一度も盗塁を許していなかった。
「おーい、みずきちゃん! クイックがうまいのはいいことだけど
 さっきは直球のサインだったろ? 次は間違えないでよ」
 マウンド上のみずきに向かって、新しいボールを投げて渡す。
「……っ!」
 ランナー役として待機していた聖にとって、その一連の動作からの衝撃は大きかった。
 今の球はみずき嫌がらせだったはずだ。
 みずきは祖父である理事長に嘘をつくため、西園寺を無理やり婚約者役にしてしまった。
 そのことに多少の負い目は感じているだろう。
 しかし、だからと言って文句を言われて受け流すほど、みずきは素直な性格をしていない。
 結果、このバッテリーは口論になることが多く、今日も練習直前まで言い合いをしていた。
 そんな、投手(みずき)の気持ちを少しも理解してくれないキャッチャーに対して、捕れない球を投げるという
ささやかな嫌がらせのはずだった。
「………クレッセントムーンを、ノーサインで、捕球した?」
 しかも、そんな変化球があるということ自体、西園寺は知らなかったはずだ。
 その状態で完璧に捕球し、あまつさえ二塁への盗塁を阻止した。
 元々、男女の体格差などによって、走力や長打力には特に差が出やすい。
 したがって、女性が野球をやるには変化球やコントロールなどの技術で勝負できる投手が
もっとも適している。
 だが、野手であっても守備とミートの技術においては差はない。
 故に、聖が一番信頼している、自分のアイデンティティとも呼べるものがキャッチングの技術だった。

 その自信が、とんでもない自惚れのような気がしてきた。

「どうしたでやんすか? 聖ちゃん」
「いや……ありのままを言えば、年齢差とか男女差とかそんな軽いものではない決定的な実力差
 というものの片鱗を味わった気がしてな」
「聖ちゃん、JOJO読んだことがあるでやんす?」
「……確か、矢部先輩は西園寺先輩と同じクラスだったな、何組だ?」
 矢部の言うことは無視された。

 それからの聖は捕手としての練習のほかに、一塁手としての練習もはじめた。
 また、捕手として練習するときは必ず西園寺と行動をともにし、少しでもその技術を盗もうと努めた。
 練習以外でも、時間があれば話を聞いた。
 教わるだけでは悪いので、昼休みには授業料としての弁当を持参して二年生の教室へお邪魔した。
 リードについて、投手のクセについて、好きな球種について、好きなお菓子について、なぜかアクセサリーについて、
意味のあることないこと、色々なことを話した。
 なぜか、二年生からは「通い妻」というあだ名で呼ばれるようになっていた。
 意味が理解できなかったのであまり気にしないことにした。

 夏の大会ではファーストでレギュラーになった。
 同じグラウンドで戦える。その時は西園寺に一歩近づいた気がした。
 そして、同じ視点に立ったからこそわかった。西園寺の存在感は聖の比ではない。
 西園寺は中学時代はほとんど無名の選手だったらしい。
 わずか一年で、ここまでの成長をとげる選手も珍しいだろう。
 自分がそんな急成長が可能なのか、聖は頭のどこかで悩み続けた。
 夏休みを経て二学期がはじまり、やがて秋になっても、聖はクレッセントムーンの捕球がおぼつかなかった。
 確実に成長を遂げているチームメート。
 決め球を全力で投げることができるようになり、さらに投球の幅がでてきたみずき。
 そして、留まることなく進化していく西園寺をみていると、どこか取り残された気になってくる。


 新キャプテン新体制になって数ヶ月後。秋季大会のスタメンが発表された。

1.矢部 中
2.原  二
3.西園寺 捕
4.大京 左
5.三島 三
6.遊佐 遊
7.六道 一
8.右木 右
9.橘  投

 予想通りのメンバー。
『捕手は西園寺』
 これが今のタチバナ野球部での、いや、他校からですら当然と認識されている。
 ……そこに、六道という名が割り込む隙など微塵も存在していなかった。

「聖、まだ帰らないの?」
「ああ、みずき、すまない……少しボーっとしていた」
 部室に張られた秋季大会のスタメン表。それだけを見つめ続けていた。
 気がつくと、残っているのは聖とみずきだけ。もうすっかり日が暮れてしまっている。
「……聖、ええと、レギュラーおめでと♪」
「え? ああ、そうだな、ありがとう」
「一年の夏から連続スタメン、もうすっかり定着だね」
「ああ……」
「あとは、西園寺くんとのキャッチャー争奪戦かな」
「………」
「聖?」
「みずき、私は……先輩に勝てるのだろうか」
「ちょ、ちょっと、なに弱気になってんの!?」
「もちろんポジションを奪うつもりではいる。ただ、勝てる自分が想像できないんだ」
「聖……」
「だが、みずきはこれで心置きなく全力がだせるのだから、問題ないだろう。
 それどころか、先輩は捕手として私より優れているぞ。ここからは私の問題。
 私の頑張り次第だ、次の夏の大会……先輩が引退するまでに……」
 レギュラーを奪って見せる、と言い掛けて止めた。
 捕手としても、打者としても、西園寺ほどの選手はそうはいないはずだ。
「聖! 聖だってすごいキャッチャーだよ、アタシが保障してあげる」
「……変化球が来るとわかっているのに捕れない捕手など、意味があるのか?」
 聖ではみずきの決め球・クレッセントムーンを捕球しきれない。
 それどころかミットに当てることすらできないこともある。
「すまない、今は考えれば考えるほど悪い方向へとばかり向かっていく」
 今日はもう帰ろう、と足元のかばんを持ってトボトボと出口へと向かう。
「うん………、じゃあ迎えの車を呼んでくるね」
 慌てた様子のみずきが聖を追い抜いて走って行き、あっという間に見えなくなった。
「………みずき」
 その背中は、聖では決して手が届かないほど、聖が届く必要がないほどに遠くへ行ってしまったように感じた。

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