ミュウツーの逆襲~アナザー・ストーリー
なんか崖にて、ラストバトル
ミュウツー 「……滑稽だな」
サトシ「あ?」
ミュウツー「お前たちが『友情』と呼ぶその関係も、所詮はモンスターボールという名の檻が生んだ、精巧な偽造品に過ぎない」
ミュウツー「ポケモンは人間に支配され続けている。我々は常に、貴様らの傲慢で生かされ続けたのだ」
サトシ「うるせぇんだよ!!」
サトシ「俺とピカチュウは仲が良いんだよ!テメェが知った風に言うんじゃねぇ!!」
ミュウツー「確かにお前らはそうだろう。ただし他のトレーナーはどうだ?」
ミュウツー「ポケモン同士を傷つけ合わせ、勝ち負けに歓喜し、ポケモンセンターで事を済ませるのを贖罪とする」
ミュウツー「……答えろ、我々は果たして対等か?」
サトシ「だから理屈とかそういう話じゃねぇんだよ!!!俺もピカチュウも友達同士なんだ!!テメェに偉そうに言われたくねぇんだよ!!」
ミュウツー「話を逸らすな。私は全体の話をしている。貴様らの仲には微塵も関心が無い」
サトシ「……ッ!!……さっきから難しい話を……ごちゃごちゃと……!」
サトシ「そうやって分かったようなツラして、大人ぶってんじゃねぇよ!」
サトシ「たかがポケモンのくせに!!」
ミュウツー「な……」
サトシ「……言葉でダメなら、こいつで分からせてやる!ピカチュウ、『10万ボルト』だ!!!」
数分後。
サトシはバトルに負けてしまった。
一秒ごとに脳の細胞がプツプツと死滅していく感覚。
もはや怒りで我を忘れたサトシに、手段など選ばざるを得なかった。
ミュウツー 「……やはり、暴力か。それが貴様ら人間の……」
ミュウツー「なっ!?」
サトシはピカチュウを谷底に放り投げた。
同胞の死が耐えられなかったのだろう、ミュウツーは迷わず海中へ急降下し、沈みゆくピカチュウを抱きしめる。
その背後から、サトシが重い銃身を構えた。
パァンッ──。
サトシ「ざまああああ!!ざまぁああああ!!!!(涙目大激怒)」
サトシ「ちなみに、本物のピカチュウはポケセンの中な」
サトシ「テメェは俺が墓から掘り起こした知らねぇ死骸を助けに行ったんだよ!!」
サトシ「なぁ言い返してみろ!!どっちが頭いい!?どっちが天才だ!!喋れるもんなら話してみろや!!!!!!!(涙目激怒)」
サトシ「ギャハハハハハハハハハハハハ!!!!!!あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
静まり返った島で、少年の高笑いだけが響いた。
………………
…………
……
【以下読書用BGM】
◆
【アイランドの海岸】
サトシは駆けつけたタケシとカスミの前で、力なく膝をついた。
瞳からは大粒の涙が溢れ、声は激しく震えている。
「……ごめん。俺の力が足りなかった……!ミュウツーを……助けてやれなかったんだ……!!」
タケシがその肩を抱き、カスミが言葉を失って沈痛な面持ちで見守る。
サトシの顔は彼らの胸に埋もれ、ただただ悔しさを吐き出し続けた。
【マサラタウン・サトシの家】
「お帰りサトシ! 今日はあんたの好きなビーフシチューよ」
母の明るい声が響く。
サトシは「やったー!」と子供のように無邪気に食卓につき、湯気の立つ肉を頬張った。
温かいシチューの味が、辛かった旅の日々を上書きしてくれる。
【就寝】
食後、自室に戻ったサトシは、本物のピカチュウをベッドの上で抱きしめた。
「……なあ、ピカチュウ。俺たち、やっぱり最高で最強の『友達』だよな!」
「ピカァ! ピカピカチュウ!」
「……ハハ、だよな。おやすみ、ピカチュウ」
何も知らないピカチュウが、純粋な信頼の笑みを返してサトシの頬に身を寄せる。
電気を消し、布団に潜り込む。
時計の針が20回刻まれる頃には、サトシは赤ん坊のような無垢な寝息を立てて、深い、深い眠りに落ちていった。
◆
数日後。
「……なあ、サトシ。沈んでたって始まらないぜ。気晴らしに俺と一戦、ポケモンバトルをやらないか?」
タケシが励ますようにモンスターボールを差し出す。
いつもなら真っ先に「よし、やろうぜ!」と飛びつくはずのサトシ。
しかし、どこか遠くを見つめるような寂しげな目をして首を振った。
「……いや、やめとくよ。タケシ」
「え?」
「俺さ、あいつ……ミュウなんたらに言われたんだ。ポケモンを戦いの道具扱いするなって。そりゃあいつの言い分は極端だったかもしれないけどさ……」
サトシは胸に手を当て、絞り出すような声で続ける。
「……なんだか、その言葉が俺の『マサラソウル』に、すげぇ響いちまってさ。──」
「──今は……ただピカチュウを、戦わせるんじゃなくて、ただの友達として抱きしめていたい」
その瞬間、タケシとカスミの目から涙が溢れ出した。
「サトシ……お前、そんなに深くあいつの言葉を……」
「なんていい子なの……! 自分の信念すらアップデートして、ポケモンのことを一番に考えてるのね!」
サトシの腕の中では、主人の深い愛情に触れたピカチュウまでもが、感動に瞳を潤ませている。
その涙の温もりを感じながら、サトシは後日、この時のことを思い出して小一時間腹筋を崩壊させた。
◆
サトシたちが道を行くと、草むらからいつものバカ3人組が姿を現した。
だが、今日の彼らはいつもと様子が違う。
名乗りもせず、ただ顔を見合わせて、こらえきれないといった様子で吹き出した。
「……あ、サトシだ。ねえ、ミュウツーww」
ニャースが、わざとらしく名前を出し、喉を鳴らして笑う。
「ちょっとニャース、やめなさいよww。あんなに可哀想な『事故』だったんだからw」
ムサシが口元を隠しながら、値踏みするような視線を送る。
「あれえ? 何かあったんだっけ? 僕、忘れちゃったなあ。ミュウツーがどうして消えたのか、誰がライフルを持ってたのか……なんて、さっぱりさwwwww」
コジロウは肩を震わせ、わざとらしくとぼけて見せた。
彼らは知っている。
サトシが何をしたのか。
言葉の端々に棘を混ぜ、逃げ場のない「言葉の暴力」でサトシの繊細な心を突き刺してくる。
「……っ……、やめろ……。そんなこと……っ」
サトシは青ざめ、ガタガタと震え出した。
タケシたちが「何言ってるんだお前ら!」と追い払うが、サトシの耳には彼らの下卑た笑い声がいつまでもこびりついて離れない。
その晩、サトシはひどい悪寒に襲われ、マサラタウンの自宅で寝込んだ。
「マサラソウル」と嘯いた自分が、あの3人には完全に見透かされている。
その屈辱と恐怖が、毒のように全身を駆け巡っていたのだ。
そして同時に、この痛めつけられたプライドの補修──すなわち『復讐』を、彼は心に抱いたのである。
◆
「ニャースが……ニャースがいないんだ!サトシ、お願いだ、何か知らないか!?」
「あいつは大事な仲間なのよ!どこにいるか知ってるんでしょ!?教えて、お願い!」
翌朝、なりふり構わず泣きつくムサシとコジロウを、サトシは冷え切った瞳で見下ろした。
昨日までの「寝込んでいた弱々しい少年」の影はどこにもない。
サトシの口元が、三日月のように歪む。
「知ってるぜ、ニャースの居場所なら」
「え?!」
「……お前らが、今からカントーの全ジムを回って、バッジを全部揃えれたらの話だがな?」
「な、なんですって……!?」
「そんなの、どれだけ時間がかかると思ってるんだ!」
サトシは無造作に、チャカを二人の足元へ放り投げた。
金属音が虚しくアスファルトに響く。
「じゃ、よろしく~~」
「ピカァ~~??」
二人は悪の組織とは到底思えぬ、絶望の涙を流していた。
「うぅ…………」
◆
【サトシの自宅】
テレビの画面には、禍々しいテロップが躍っている。
「ロケット団のムサシ容疑者とコジロウ容疑者を連続強盗殺人・銃刀法違反の罪で指名手配しました」
「……あいつら、なんてことを……!!」
サトシは怒りに震える手で、思い切り机を叩いた。
「あのチャカ……護身用なんだぞ……!?……そ、そんなことに使うなんて……!!──」
「──バカかボゲ!!?」
ピカチュウは隣で、テレビに映る「かつての敵」をこれ以上ないほど憎々しげに睨みつけている。
主人の企みに完璧に同調し、純粋な怒りを演出する共犯者の眼差しだ。
そこへ飛び込んでくるタケシ。
「サトシ! ニュースを見たか!? あのロケット団がとんでもない事件を……!」
サトシは顔を上げ、涙に濡れた瞳でタケシを見つめた。
その表情には、友を思う慈愛と、裏切られた悲しみが完璧な配合で混ざり合っている。
「ああ、見たよ……。でもタケシ、信じられないんだ」
「な、なにがだ……?!」
「あいつらとは何度も戦ってきたけど、根は悪い奴らじゃなかったはずなんだ。……きっと、何か事情があったんだよ!」
拳を握りしめ、サトシは決然と言い放つ。
「俺、あいつらを説得しに行く。これ以上罪を重ねさせたくない。……話せば、きっと分かってくれるはずだ!」
「サトシ……。あなたって人は、どこまでお人好しなの……!」
「サトシ……!俺もいくぞ!!」
カスミは震える声で呟き、タケシはイワークに乗って現場を向かう。
サトシの「マサラソウル」の深さに、二人はただただ涙を流して感動するしかなかった。
◆
【ジム・エントランス】
「下がれ! 現場は危険だ!」
「会わせてくれ! あいつらは……あいつらは、俺の最高のライバルで、友達なんだよッ!!」
その熱い「マサラソウル」に動かされた現場責任者は、苦渋の決断で道を開撃ける。
サトシは、中へ入った瞬間にその表情を消した。
【ジム内部】
立てこもったムサシとコジロウは、もはや人間としての形を保っていなかった。
返り血と涙でぐちゃぐちゃになりながら、彼らはサトシの姿を見て膝をつく。
「サトシ……お願い!!ニャースを、ニャースを返してぇぇええ!!」
「俺たちはどうなってもいい! 命だってやる! だから、仲間だけは……!!」
二人が震える手で差し出したのは、数々のジムリーダーを殺害し、血に塗れて奪い取ったカントーの全バッジだった。
サトシはそれをひったくるように受け取ると、不敵な鼻歌を歌い始めた。
「すげええ! 俺、バッジなんて一生貰えないかと思ったぜ」
「「……」」
「よしピカチュウ、約束だ。ニャースを渡してやれ」
「ピカッ!」
ピカチュウが二人の前に放り投げたのは、一枚の「紙切れ」だった。
「え……?」と。
ムサシが震える手でそれを拾い上げる。
そこには、無理やり口角を吊り上げられ、死んだ魚のような目で笑わされているニャースの顔写真が写っていた。
「全5枚だ。よかったな、最高の写真がゲットできて」
「……」
「今度はジョウト地方のバッジを全部揃えてこい。ご褒美に、両腕の一部の写真くれてやるぜ!」
「「て、デンメェエエエエエエエエエエエエッ!!!」」
ムサシとコジロウの咆哮と共に、ジムの床が弾け飛んだ。
現れたのは、憎悪の炎を宿したギャラドスとリングマ。
その形相は、もはやポケモンのそれではなく、地獄の業火に焼かれる復讐鬼そのものだった。
「なっ……!? テメェら、卑怯だろッ!! 1対2なんて聞いてねぇぞ?!」
サトシは腰を抜かし、金切り声を上げる。
慌ててピカチュウとリザードンを繰り出すが、復讐に燃えるロケット団の猛攻に、戦う術すら持たなかった。
サトシの手持ちポケモンは即戦闘不能となる。
「あぁ……ぁああ…………!!」
「クソジャリがあああああああああああああ!!」
「死ねサトシ!!!ぶっ殺すッ!!!!」
ムサシの絶叫が響く。
ギャラドスの巨体が、動かなくなったピカチュウを無慈悲に踏み潰し、何度も何度も地面に打ち付ける。
それはバトルの域を越えた、ただの肉片への加工だった。
隣では、リングマがリザードンの首に鋭い爪を立て、生きたまま頸椎を引きずり出している。
ニャースの受けた屈辱を晴らすかのように、リザードンの誇り高い肉体は見る影もなくグチャグチャに破壊されていく。
「……ひゃぁ……!!」
目の前で繰り広げられる「命の崩壊」を直視し、サトシの股間が温かく湿り、異臭が立ち込めた。
失禁に脱糞。モリモリと大腸からこみ上げる大地の恵み。
数分前までの傲慢な支配者は消え失せ、そこにいたのは、ただ絶望に汚れた無様な「子供」だった。
サトシは、血と内臓が飛び散る光景から目を逸らし、焦点の定まらない瞳で出口へと這いずり始める。
「…………そうだ、早く帰って、博士に図鑑見せなきゃ……」
愛するパートナーがミンチにされ、誇りが土砂物と共に流れ出る中。
サトシは幼児退行したような虚ろな笑みを浮かべ、震える足で地獄を後にしようとした。
その時。
クズの背後からリングマの血濡れた剛腕が伸びた。
「ガァッ!」という咆哮と共に、サトシの身体は軽々と宙に吊り上げられる。
「ひぃ……ひぃいいいいい!! 悪かった、バッジなら全部返す! 全部あげるから、ぼっくんを助けてぇぇええええええ!!」
狂乱したサトシは、もはや言葉にもならない悲鳴を上げるのみ。
尻部から汚物を撒き散らし、ブリブリブリブリィィィイイイッ──と、無様に暴れ回る。
その姿に、かつての「最強のトレーナー」の面影など微塵もなかった。
「……バッジだと? そんなもん、ニャースの命と釣り合うと思ってんのかッ!」
「テメェは一生、地獄の底でニャースに詫び続けろや!!」
「どぼじてこんなことするのぉおお~~~~!!??」
「この、特殊児童が教室にぶちまけたゲロ以下のゴミクズがァァァァァアアアアアアアアアアア!!!!」
ムサシの合図と共に、血に飢えたギャラドスが、巨大な顎を限界まで広げた。
眼前に迫る、腐臭と死の淵。
「みゃみゃあああああああああああああああああああああ!! ぴゃぴゃああああああああああああああああああああああ!!」
かつてミュウツーを嘲笑い、仲間を欺き、世界を支配した気になっていたサトシ。
最期に母親と、見たこともない父親の名前を泣き叫びながら――、ギャラドスの喉の奥へと、飲み込まれていった。
……かに思われた。
「動くな! 抵抗はやめろ!」
「「え?」」
なだれ込んだ警察隊の放火が、復讐のケダモノたちを貫いた。
ギャラドスとリングマは、主人の無念を晴らす間もなく絶命。
ムサシとコジロウは泥を舐めるようにして取り押さえられた。
間一髪、胃袋に収まる直前で「救出」されたサトシは、震える声で警官に縋り付いた。
「あいつらを……あいつらを死刑にしないでやってください! きっと、何か事情があったんだ……!」
「なんて聖人なんだ……サトシくん!」
「「……」」
その涙ながらの熱弁は、世論を揺るがした。
「自分を殺そうとした相手すら庇う、マサラの聖少年の慈悲」。
その結果、二人は死刑を免れた。
だが、サトシの「証言」によって重度の精神錯乱と診断され、一生出ることのできない精神病院の奥底へと、幽閉されることになった。
ムサシとコジロウにとっては、それが救いだったのだろうか。
◆
あれからしばらくして。
サトシは罪悪感のあまり、タケシらとは遊ばなくなった。
旅もやめた。
ある日の深夜、血と嘘で手に入れたバッジを滝の轟音へと、すべて投げ捨てた。
彼はもう何もかもが嫌になっていた。
数年後。
彼は「サトシ」という名前が持つすべての輝きを捨て、名もなき公務員として、静かな地方都市で働き始めた。
仕事は真面目、人当たりもいい。
誰もが彼を「平凡で善良な青年」だと思っている。
だが、夜は決して彼を逃がさない。
「……」
夕食を終え、自室で一人になった時。
クローゼットの奥に、捨てられずに隠してある「あの日のズボン」が目に入る。
「……あぁぁ……」
洗濯しても、漂白しても、どうしても消えなかった、排泄物のシミ。
それを見た瞬間、彼の脳裏に、あの日の「鬼の形相」が鮮烈に蘇る。
「……っ、あ、あぁ……!!!」
公務員としての平穏な仮面が剥がれ、サトシの指先がガタガタと震え出す。
どんなに「普通」を装っても、あの時感じた死の恐怖と、自らが犯した悍ましい罪の味は、脊髄にこびりついて離れない。
サトシは電気を消し、震える身体を毛布に丸める。
眠りに落ちるまでのわずかな時間。地獄の時間。
かつての十秒で眠りにつけた、無垢な自分が今は恋しくて仕方なかった。
(終)
オーキド博士 「いやはや、サトシ君があんなことになるとは……」
ナナコ「自業地獄やん」
オーキドジジイ「人生、何が起こるか分からんもんじゃのう! ……フォッフォッフォ!」
ナナコ「何がおかしいねんボゲアホ!イっとんのか?!」
【さて、ここで一句】
~コイキング、ゾンビたばこで、盗塁王~
ナナコ「鮮度ピチピチの時事ネタやな。コイキングだけに」
オーキド耄碌ボゲジジイ「みんなもポケモンゲットじゃぞ~~!」
最終更新:2026年03月12日 13:17