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♪BGM

閻魔あい「……なにそれ」

いじめっ子「あ?ワッパー。美味いよ」

あい「……そんな肉の塊、美味しいはずがない……」(もぐもぐ)

あい「……うま。うっま。うま。うっますぎ」

いじめっ子「だろ? バーキン行けばいつでも買えるぜ」

あい「まじ? うま」

いじめっ子「……な? だからさ、俺のことも今回だけでいいから見逃してくんねーかな? 笑」

あい「お前なんかどうでもいい。ワッパーワッパー」


数分後(5,000円分のワッパーを前にして)

あい「……うま。うっま。こんな美味しいものが存在してたなんて、知らなかった自分を殺したい気持ち」





翌日。
三途の川のほとりで、ひたすら包み紙を剥く音だけが響く。


あい「ワッパーワッパー」

あい「うまっ。……はふっ、もぐ……うま……うま……」

ジジイ「おいおいお嬢、また妙なもんに入れあげちまったもんだ。朝から晩までそれじゃあ、身体に障るんじゃねぇか?」

あい「……別に、執着なんてしていない。……こんな下劣で、暴力的な味……あなたたちには食べさせてはいけない……。ワッパーワッパー」

ジジイ「へへっ、こりゃ参ったな。……まぁいい、それでお嬢の気が済むんなら、経費でいくらでも買ってきてやらぁ」

あい「まじ? 神。ワッパーワッパー」


あいが次のワッパーに手を伸ばすのを遠目に見ながら。

女「いいのかい? あんな得体の知れない肉の塊ばかり。お嬢、そのうち藁人形じゃなくてバンズを投げ始めるんじゃないのかい」

ジジイ「……いいじゃねぇか。お嬢だって、たまには息抜き……いや、『胃抜き』が必要なんだろうよ」

男「え、それ何が上手いの?」




いじめられっ子「……こいつを……この女を、地獄に流してください……」

あい「受け取って。……あなたが本当に、怨みを晴らしたいと思うなら……」


怨みの対象であるギャルの前に、音もなく現れるあい。

ギャル「あ? ……何? 誰あんた。コスプレ? 笑」

あい「……闇に惑いし哀れな影よ。……人を傷つけ貶めて……罪に溺る──」

ギャル「あー、ちょっと待って。今これ食べてる最中だし」

あい「…………」

あい「……あ。…………それ、ワッパー……?」

ギャル「は? ……あんた、これが欲しいの? ウケるんだけど。自分で買えばいいじゃん笑」

あい「…………経費……使いすぎた。……怒られそうで……怖い」

ギャル「あー、もうわかった、わかったから! これやるからどっか行って。マジで邪魔。笑」

あい「神」


数分後、無心に頬張るあい。

あい「ワッパーワッパー。うまっ、うまうま」




帰宅直後、静寂を切り裂く怒号が響く。

男「おいお嬢! ふざけるのもいい加減にしろ!! ……25万だと!? 全部ハンバーガーじゃねえか! これを『経費』で落とそうなんて、社会をなめすぎだ!」

あい「……でも、ただ漫然と時を過ごす無能な怠け者より、仕事ができる有能な個体……。私は評価されるべき」

男「仕事してねえだろ!! 今月、地獄流しの依頼……一件も受けてねえじゃねえか! 現場に行ってもワッパー貰って帰ってくる始末……いい加減にしろよ、お前!!」

あい「……心外。……私は、いつだって給料分働きたいと……その『気持ち』だけは、誰にも負けていない……。……その志を認めてほしい……」

男「ふっざけんな!!!!」


嵐のような説教が終わり、一目連が去ったあと。

あい「……(すっ……と手を差し出す)」

ジジイ「あ? ……おいおい、またかよ……!?」

あい「ワッパーワッパー」

ジジ「……へっ、参ったな。一目連には内緒だぞ。ほれ、これで一番デカいセットでも買ってきな」

あい「……幸せな気持ち。ワッパーワッパー」




数日後。
深夜の地獄。
真っ暗な部屋で、あいが一人悶絶している。

あい「……痛い。……疼く。……眠れない気持ち……」

女「はぁ? あんた何言ってんのよ、この夜中に……」


骨女があいの口の中を覗き込み、戦慄する。

女「……ちょっと、バカじゃないの!?」

あい「痛い、辛い、……お願い助けて」

女「なにこれ!? 口内炎が7つもできてるじゃないさ!!」

あい「ワッパー……ワッパー……」

男「もう食べるな!! このまま続けたらマジで殺すぞ!? 閻魔としての威厳はどこへ行ったんだ!!」

あい「……パワハラ」

男「うるせぇ!!! そもそもお前、今月働いてねぇだろうが!!!」


チョコラBBを飲ませて眠らせる。
あいの寝顔(というより、痛みに耐える苦悶の表情)を見守る三人。

ジジイ「……流石になぁ。いくらお嬢でも、あれだけ脂っこいもんを朝昼晩じゃ、口内炎の一つや二つ……いや、七つもできるわな……」

男「……どうしてこうなった。あんなに物静かで、何にも興味を示さなかったあのお嬢が……。どこで教育を間違えたんだ……」

女「……私たちの教育が悪かったのかしらね……」




そこから数日もしないうち。
舌の根も乾かないどころか、唾液いっぱいであいはバーキンへ。
代償は、血と涙と直火焼き。

あい「……ワッパー単品で8つ」

店員「いらっしゃいませー。あ! あいちゃん! 単品8つ、ワッパーオンリーですね」

あい「ワッパーワッパー(恍惚)」

店員「お会計、5,000円オーバーになりますけど、お金は?」

あい「…………。……今、持ってくる。……すぐ、用意するから……」


怨みを抱えた依頼人のもとへ、音もなく現れるあい。

依頼人「……閻魔あい! 来てくれたのか、あの野郎を地獄に……」

あい「……依頼代。……7,000円。……今すぐ、ここに。……一括で」

依頼人「はぁ!? な、何言ってんだよ! 俺は死んだら地獄に落ちるんだろ!? その上、金まで取るのかよ! 悪徳業者かよ!!」

あい「……いいから、早くして。……出さないなら……家族を殺して家を焼く」

依頼人「!!?? いぃいいいいいいい!!! 払う、払えばいいんだろ!! ほらよ!!(財布を差し出す)」


店へ舞い戻るあい。

あい「……あいはお金持ち」

店員「まいどあり! いつもありがとね。はい、お買い上げありがとうございまーす!」

店員「ヒソヒソ(……これ、内緒ね。1個おまけしといたから!)」

あい「…………! ……感動」




その夜。
地獄の居間は、あいのうめき声で満たされていた。

あい「……痛い。……誰か……お願い。……助けて……」

女「あぁもううっさいわね……。寝れないなら、もっとこう──」

女「(口の中を見て)……ひっ!!」


口内炎の数がもう、キモかった。

男「……病院へ連れて行く。……身体と心、両方な」


一旦緊急外来で痛み止めを貰った後。
翌日。
精神科にて。

医者「……診断結果が出ました。あいさんは、IQが著しく低い状態にあります」

男、女「…………」

医者「数値は63。知的境界線からさらに下回っており、物事の損得や、常識的な分別をつけることに大きな困難を抱えています」

女「そんな……。あんなに理知的に『いっぺん、死んでみる?』なんて言っていたお嬢が……」

男「先生、これ……治りますか!? 治るんですよね!?」

医者「……それに加え、軽度の自閉スペクトラム症(発達障害)の傾向も見られます。特定の物に対する異常な執着は、その特性から来るものでしょう」

医者「……今後は、非常に厳しい監視の目が必要です」

女「じ、自閉って……まるでうちのあいがハンディキャップを抱えてるような……」

医者「辛い気持ちはお察ししますが、かといって悪いわけでもないんです。悪いわけでは……」

女「…………」

あい「……それで、ワッパーは食べていいの?」

男「今お前は黙ってろ!!」


医者「……いいですか、あいさん。貴方は決して『おかしい』わけではありません」

医者「ただ、何かを判断するとき、普通の人より少し長く時間を置かなければいけない性質なんです」

医者「自分を責める必要はありません」

医者「ただ……これからは、何事も保護者の方と相談してから決める、と約束しましょう」

あい「え? あぁ、そう……」


男「……」

女「……」


一目連と骨女は、あまりの衝撃に、あいの無垢な返事を聞きながら絶望の淵に立たされるのであった。




要相談の末、翌日から、『できない子の為の教育』が始まる。
食卓。
並んでいるのは麦飯、焼き魚、そして山盛りの生野菜。
ワッパーの影すらない。

男「いいか、お前の仕事もしばらくは休止だ。とにかく脳と体を休ませろ」

あい「……ワッパーは?」

男「ダメだ。忘れろと言ったはずだ。二度とその単語を口にするな」

あい「……嫌。……塩焼きは嫌い……魚は海臭い。……ワッパーは直火焼き……海臭くない。……あっちの方が、清潔な味……」

男「おい黙れ。贅沢抜かしてんじゃない。早く食え。……俺を、怒らせるなよ?」

あい「……サラダは、嫌い。……あんなもの、直火焼きの肉とチーズと一緒に、バンズに挟まれていなきゃ……ただの草。……私は、牛じゃない……」

男「……あぁ!? うっぜぇな……。つべこべ言わずに早く食えよ、コラ!!」

あい「……ワッパーじいじ、呼んできて。……唯一の理解者。……私にはワッパーが──」

お横「うるせぇえええ!! さっさと食えやこのビョウキ持ちがっ!!!」


一目連の剛腕があいの細い顎を強引に掴み、指先に力を込めてその口を無理やり抉り開けた。


男「食えッ! これが『生きてる』ってことだろうが!!」

あい「……んぐっ!? ……ぅ、あ…………!!」


無理やり抉じ開けられた口内に、冷めかけた焼き魚の死骸が押し込まれる。
舌の上に広がるのは、ワッパーの濃厚なマヨネーズでも、肉汁溢れるパティの脂でもない。
パサついた魚の身の繊維と、喉の奥を刺すような生臭い塩分。
そして、あいの拒絶反応で溢れ出した過剰な唾液。

あい「……は、ぁ……っ。……ごほっ、げほっ……」

男「吐き出すな! 飲み込め!! 飲み込むまで離さねえぞ!!」


一目連はあいの口を掌で塞ぎ、強制的に咀嚼を促す。
あいの頬は歪に膨らみ、塞がれた唇の隙間から、ドロドロに混ざり合った魚の破片と唾液が糸を引いて垂れ落ちた。
あいの瞳からは、絶望に染まった涙が堰を切ったように溢れ出し、一目連の手にポタポタとこぼれ落ちる。

あい「……(ごくん……っ)」

男「……そうだ。それでいい。……分かればいいんだよ」


一目連が手を離すと、あいは力なく食卓に突っ伏した。
震える声は、もう地獄少女のそれではなく、ただの飢えた子供の悲鳴だった。




食後。
地獄の縁側。
骨女は、あいの前に座り込み、幼稚園児に教えるような手つきでカードを並べている。

女「いい、お嬢。まずは基本からよ。感謝したいときは『ありがとう』。……さあ、言ってみて」

あい「……あーがとー」

女「(こめかみをピクつかせながら)……あはは。やる気、ゼロ。……いいわ、次。謝るときは『ごめんなさい』」

あい「……わっぱんなさい」

女「……あはははは! 面白いわね、お嬢。脳みそまで直火焼きになったのかしら。……じゃあ最後、別れの挨拶は? 『さようなら』よね?」

あい「ワッパーワッパー」

骨女「……ッ、いい加減にしろやクソボケがッ!!!」


骨女の表情が豹変し、あいの耳の付け根を強引に掴んでひねり上げる。

あい「ぃいっ!!」

女「なめてんじゃねぇぞ、この粗大ゴミが!!」

女「てめぇなんざなぁ、あたしたちの監視がなけりゃ、ただの薄汚い人形なんだよ!!」

女「その人形がワッパーだのなんだの、ふざけたこと抜かしてんじゃないよクソボゲ!!」

あい「……ぅ、あ……っ! 痛い……やめて……っ、ごめんなさい、ごめんなさい……っ」

女「ガキのくせに!! ガキのくせにぃいっ!!!」


あいの細い身体が激しく震え、必死に骨女の腕を掴んで抵抗する。
かつての神秘的な力はどこにもなく、そこにあるのはただ、肉体の痛みに恐怖する、IQ63の無防備な少女の姿だった。
数分後、骨女は力なく手を離し、乱れた髪をかき上げる。

女「……はぁ、……はぁ」

女「…………ごめん、なさい……」

女「私……もう、疲れちゃったのよ。……いい、お嬢。今のことは一目連や輪入道には言わないで。わかった?」

あい「……(涙をボロボロとこぼしながら、赤くなった耳を押さえて)」

女「言ったら……あんたの命より大事なワッパー、一生禁止にするから」


女「……私にそんなことさせないで、お願い……」

あい「……ごめん、なさい……」


あいは膝を抱えて丸まり、震えながら頷くことしかできなかった。
知能指数が幼稚園にも満たない子供が皮肉にも。
このとき初めて、『ごめんなさい』の意味を心から学習できた。




地獄の屋敷。誰もいない。
あいは、慣れない手つきで雑巾を振り回していた。

あい「……いい子に、していたら……きっと、ワッパーじいじ降臨……」

あい「……召喚の、儀式……。お掃除、お掃除……」


あい「あ」


数時間後。
一目連が疲れ果てて帰宅する。

男「ただいまー……。……っ!?!?!?」


一目連の目の前に広がっていたのは、静寂な地獄の屋敷ではなく、瓦礫の山だった。
「片付け」の結果、棚はなぎ倒され、風呂場は洗剤の泡が廊下まで溢れ出し、あいの部屋の畳は無惨に剥がされている。

あい「……」


あいは泡まみれで、衣服をぎゅっとつまみながら目を逸らす。

あい「……やれって、言われた……」

男「……誰に、かな? ビョウキちゃん」

あい「…………。……お母さん」

男「……いねぇよな?」

あい「……疑ってるの? ……不敬な、気持ち……」

男「……疑う? もうそんな域、とっくに通り越して『殴る』域なんだよ。あはははー、ビョウキには難しいか?」

男「……いいか、お嬢。グー、パー、チョキ。どれがいい? 選ばせてやるよ」

あい「…………お母さん」

男「うおw さっすが! 三択の中からお母さん! せめてそこはワッパーだろ。パーだけにw」

あい「…………(震える)」

男「お母さんお母さんってなぁ、お前~~……」


男「だから、いねぇっつってんだろボゲェッ!!!!」


一目連の拳が、あいの腹部に叩き込まれた。

あい「……がはっ……!? ……ぁ……っ!!」


吹っ飛んだあいの体を引きずり起こし、一目連は容赦なく拳を振り下ろし続ける。
目に、肩に、背中に。

男「このビョウキ野郎が!! IQ63の出来損ないが!!」

男「ワッパー、ワッパーって、てめぇが壊したのはこの家だけじゃねぇ、俺たちの期待も全部なんだよ!!」

あい「……やめ、て……っ。ごめんなさい……ごめんな……っ」

男「“ごめんな”だぁ?! なにから目線だボゲ!!!!」


掃除したはずの廊下に、あいの口から溢れた涙が点々と染みを作っていく。
それは直火焼きの肉の色よりも、ずっとどす黒く、救いのない赤色をしていた。




ようやく戻ってきた輪入道が目にしたもの。
それは、顔中に青痣を作り、虚ろな目で宙を見つめる無残な姿の主(お嬢)だった。

ジジイ「……お、お嬢!? ……おい、その顔、どうしたんだ!? 誰に……誰にやられたんだ!!」

あい「…………。……お母さん」

ジジイ「……あ? ……いねぇだろ。何百年も前に死んだ人間をスケープゴートにするんじゃねぇ」

ジジイ「……いいから本当のことを言いな。誰が……一目連か? 骨女か?」

あい「…………。……ワッパー。……ワッパーを、買ってくれたら……教えてあげる」

ジジイ「…………(絶句)」


ジジイ「……へっ、参ったな。……分かったよ。一目連には内緒だ。待ってな」


数分後。
隠れて買ってきたワッパーを、あいは痣だらけの顔を歪めながら貪る。

あい「うまっ、うまうま、うまっ。…………うま」

ジジイ(痛々しくて見ていられない……)

ジジイ「……で、約束通りだ。話しちゃくれねぇか。一体誰が、お嬢をこんな目に遭わせたんだ」

あい「…………(最後の一口を飲み込み、指についた脂を舐める)」

あい「……次は、ダブルワッパー。……それが、私の記憶の……鍵……」

ジジイ「…………(震える手で財布を握りしめる)」

あい「ワッパーワッパー」




地獄の屋敷。隠し部屋。
モニターには『大人のADHD・特性と接し方』という動画が虚しく流れている。

ジジイ「……お嬢のためなんだ。もう少しだけ……」

男「……金も稼げるし、世間体もいいからよ」

ジジイ「え?」

男「それが理由でここにきたんだわ。……なのに、なんで俺が、」

男「訳の分からねぇ、数分に一度広告挟む動画見なきゃなんないわけ? こんなド深夜にさぁ?」

男「……同級生でここまでダリィ人生なやついっか? って。……俺はそれ言いたいだけ。以上」

ジジイ「……」


女「(震える声で)あの子を見てると怖いの」

ジジイ「…………え?」

女「……自分が。このまま殴り殺しちまうんじゃないかって。毎晩夢に見るのよ。あの子が泣きながら『殴らないで』って……」

女「つらくて……もう、耐えられない……(顔を覆って泣き崩れる)」


男「……」

ジジイ「…………」




仕事復帰。
現世の路地裏。

あい「…………。……いっぺん……しんで……」

強姦殺人鬼「あ、待てッ! 待て待て! てめぇ、噂の地獄通信のロリだろ!?」

男、女「え?」


強姦殺人鬼「ほら、これやるから! ワッパーだ! 一番デカいセットだぞ! だから見逃してくれよ、な!?」

あい「…………! ……わかりました。では、無罪──」

男「(背後から肩を掴む)……おい」

あい「(肩を跳ねさせ、目に見えて怯える)……っ、あ…………」

女「……何黙ってんのよ。家で練習したわよね? ほら、さっさと言いなさい」

あい「…………お腹、すいた」

男「あーそう。お腹を殴ってほしいって? でも、あそこ殴ると吐くだろ? 前みたいに。掃除するの俺なんだよオイ~~~……」

あい「……っ……」


男「いいからさっさと言えよ。俺は残業が一番嫌いなんだ」

あい「…………。……じいじ……助けて……じいじ……っ」

男「……あー、もうええわ。やってらんねぇ」


一目連は懐から何かを取り出す。
ためらいなく殺人鬼の眉間を撃ち抜いたのは、──一丁のチャカ。
崩れ落ちた男の横で、転がったワッパーを靴底でぐちゃぐちに踏みにじった。


男「あー、楽ぅ〜。これだよ、これが正解だろ。口上だの藁人形だの、やってられるかよ」

女「ちょっと! 仕事の手順が……」

男「いいんだよ。このガキが『やれ』って言ったんだ。そう報告しとけ」

男「……一服タイム。片づけはそれから。悪ぃな」

女「……」


硝煙が漂う路地裏。
あいは、一目連に踏みにじられ、アスファルトにへばりついた「ワッパーだったもの」に這い寄る。
泥と靴底の汚れが混じった肉の塊を、震える指ですくい上げようとした。

あい「……ワッパーワッパー」

女「あぁ?!! そんなもん食ってんじゃねぇよッ!!!」


パンッ。
乾いた掌の音が響き、あいの頬が大きく弾かれる。
あいはその場に力なく倒れ込み、瞳に涙を溜めて、ただじっと骨女を見上げた。

女「……あッ! ……う……っ」


骨女は自分の打った手のひらを見つめ、激しく震えだす。
あいの「うるうる」とした、何の反抗の色もない、ただただ無垢で知能の低いその視線。
それが、彼女の心を鋭く突き刺す。

女「……もうやめて。……お願いだから、私に殴らせないで」

女「……約束したじゃない、お嬢……。……私だって、こんなことしたくないのよ……。お願い、普通にしてよ……」

あい「…………。……ワッパー……。……ワッパー……ワッパー……」


あいは赤く腫れた頬を地面にこすりつけながら、なおも泥まみれのパティを見つめて呟き続ける。
その姿には、骨女の言葉を受け止めるだけの知能も、状況を理解する理性も残っていなかった。

女「もう嫌……。……なんで、こんなことになるの……?」

女「なんであんなに綺麗だったあんたが、こんな普通のこともできなくなっちゃったのよ……! 何度言っても分からない。教えても教えても、ワッパーばっかり……」

女「……もう、辛いわよ……っ!(顔を覆い、その場に蹲って嗚咽する)」

あい「ワッパー…………ワッパー……(肩を触ろうとする)」

女「触らないでよっ!! ……うぅ、うっ…………」

あい「……」


ゴミ捨て場の悪臭と、踏みつぶされたワッパーの匂い。
そして、かつての主従関係が完全に腐り果てた泣き声だけが、暗い路地に響いていた。




あいの就寝後。地獄の居間。
どんよりとした沈黙を破り、輪入道が力なく首を振る。

ジジイ「……わけが分からん。どうしてあんなことになった……。育て方を、どこかで間違えたのか? ……ワシには、もうどうにもできん……」

男「は?(カッチーン)」

男「……何被害者ぶってんだよ。お前がじゃんじゃか金出すからだろ。甘やかして、依存させて……。今更悪いとか言いたくねぇけどさ、この事態の責任、全部お前にあるよな?」

女「……ちょっと、言い方……」

男「うるせぇ黙ってろ」


男「お荷物なんだよ、あんたは。シルバー人材だか何だか知らないけどさ……マジでやめてくれよ、この仕事。何もできないくせに、なんで毎日現場に来れるわけ? 図太すぎんだろ」

ジジイ「……ふん。人が傷つくと思って、べらべらとよく喋る」

ジジイ「お前がお嬢に振るっている『虐待』を、あえて上に報告せんワシの慈悲を汲み取らず、よくもそんな口が叩けるな……」

男「あ? 言えよ。別に平気だし。こんなクソ仕事、即クビでもFIREでもいいんだわ。YouTubeで投資の動画見まくって勉強してんだよ、こっちはな」

ジジイ「(目を鋭く光らせ)……ここを辞めて、生きて帰れると思っているのか?」

男「脅しかてめぇ……! Z世代舐めてんじゃねぇぞ、おい!」

女「いい加減にやめなさいよ二人とも!!」


男「じゃあ、お前が一日中あいつの世話してみろよ!! 24時間365日、ワッパーワッパー……」

男「物は散らかし放題、歯も磨かねぇ、風呂に入れりゃ暴れる!!」

男「このストレスがどれほどのものか、分かってんのかよ!!!」

ジジイ「……無様だな。……もういい、話にならん。寝るぞ」

男「はい逃げたおっつ~~。氷河期はいつもこうだよな。言い返せないから『Z世代が~~』。オモロ。弱いんだから俺らの邪魔しないでくだせえ、オジイチャン!」

ジジイ「……あ? テメエ、いい加減にしろよ……」

女「もう……もうやめてえええええ!!!」



一方、深夜の地獄の片隅。
枕元。
痣の熱と口内炎の痛みに震えながら、かつての主は惨めなほど小さく丸まり、シーツに涙を染み込ませていく。

あい(……ワッパー、ワッパー)

あい(…………つらい気持ち)


あい(……どうして、あいは……みんなのように、うまくできないんだろう)

あい(……どうしてあいは……みんなを怒らせることしか……できないんだろう)


あい(みんなみたいに、……学校、行きたかった)

あい(……お友達と笑って……。……美味しいものを、美味しいねって……笑って、食べたかった……)

あい(寝たら明日が来る。……でも、寝なきゃ怒られる)

あい(…………瞼なんて、溶けちゃえばいいのに)


あい(……ワッパー、……ワッパー……)


うわ言のようにその名を唱えながら、あいは声を殺して泣き続ける。
その声は、救いも報いもない。ただ、闇に沈むのみ。
文字通りの地獄絵図が、皮肉にも地獄で繰り広げられることとなる。
そんな夜だった。




ある日の路地裏。
あいは震える手で藁人形を握り、目の前の獲物を直視できずにいた。
脳裏には直火焼きの香りと、それを求めた代償に受ける痛みが、激しく火花を散らしている。

いじめられっ子「……お願いします。こいつを、地獄へ……」

あい「……うん。わかった」


JK「あ? ……誰?w」

あい「……闇に惑いし……。……いぺしに」

JK「はぁ??w」

あい「…………お腹……空いた。……」

JK「あ! ちょっと待って、あんたってもしかして噂のワッパーロリじゃん! マジか、実物超カワイ〜んだけど!」

あい「……!! やめて。……お願い、やめて……っ。……殴らないで……」

JK「へ? 殴る要素とは……w」

あいは両手で頭を覆い、アスファルトの上で小さく丸まった。
予期されるのは、一目連の重い拳か、骨女の鋭い爪。
しかし、降ってきたのは暴力ではなく、拍子抜けするほど明るい誘いだった。

JK「……っていうか、あんたお腹空いてんの?w。いいよ、奢ってあげる。バーキン、そこにあるし! ほら、行こ!」

あい「…………?」


あいの脳がバグを起こす。
「ワッパー=暴力の対価」あるいは「誰かを脅して奪うもの」だったはずの方程式。
それが、ただの「奢り」という現世の屈託のない善意によって粉砕された。
バーガーキング店内。


あい「 ……うま。……うまうま! ……うま!!」


あいは周囲の目も気にせず、両手でワッパーを掴み、痣の残る頬を膨らませて貪り食った。
喉を通る肉汁。鼻へ抜ける炭火の芳香。とろけるチーズ。
それは一目連に無理やりねじ込まれた魚の味でも、骨女に怯えながら飲み込んだ涙の味でもない。


あい「……うっま、うまうま……。……っ、……ひっ、ぐすっ……」

JK「え、ええっ!? ちょっと、どうしたの!? 喉詰まらせた? 大丈夫!?」


あいは、ワッパーを握りしめたまま、子供のように声を上げて大号泣した。
涙がボロボロと包み紙にこぼれ落ち、ケチャップと混ざり合う。

あい「…………美味しい。美味しい!! ……ワッパー……ワッパー……っ!!」

JK「えぇ……?」


店内に響き渡るあいの号泣。
それは、失われた尊厳と、過酷な介護(虐待)への恐怖。
そして「ただ普通に、誰かと笑って食べたかった」という、彼女が心の奥底に封じ込めていた幼い叫びそのものだった。




病院の診察室。
カーテンの向こう側で、JKは医師から告げられる「地獄少女」の真実を耳にしていた。

医師「……全身にアザが11箇所。打撲が6箇所」

医者「……特に酷いのは耳です。右の鼓膜は衝撃で破れ、左の耳介には鋭利なもので切り裂かれたような裂傷がある」

医者「さらに、太ももには複数の根性焼きの痕。……これは、日常的な虐待の結果です。彼女は重度のPTSDを患っています」

JK「そんな……。あんなに美味しそうにワッパー食べてたのに……」


診察台の上で、包帯を巻かれたあいが、うつろな目で呟く。

あい「…………ワッパー」


病室の静寂。

JK「……辛かったね、ワッパーちゃん。ずっと、一人で……」

あい「……でも、ワッパー食べたら……気持ちよい」

JK「最後に食べたの……いつ?」

あい「…………」


JK「ワッパーちゃんは悪くないよ。……自分を責めないでさ。これからは楽しいことだけ考えていこうよ」

あい「…………胸の奥が、ずっと……ドロドロしてる」

JK「…………」

あい「……自分が嫌。……寝るのが、一番嫌。……目を閉じると……嫌なことばかり思い出す。そんな気持ち」

あい「……お掃除に失敗したこと。……お魚を吐いちゃったこと。……みんなを怒らせて、……お母さんを呼んじゃう、自分が……」


あいの瞳から、光のない涙が溢れ出し、枕を濡らしていく。

あい「……助けて欲しかった気持ち。……ずっと、ずっと……誰かに、見つけて欲しかった……。……でも、……もう、戻れない」

あい「ワッパー…………、……ワッパー……」

JK「ワッパーちゃん……っ……」


JKは、あいの細く、傷だらけの手を握りしめることしかできなかった。




JKの部屋。
ベッドの上で、あいは膝を抱えて震えている。
その視線は、もはや現世の景色を捉えていない。


あい「……どうすればいいのか、わかんない。……ワッパーがないと、呼吸の仕方も……忘れちゃう……」

JK「……何言ってんの。分かってるでしょ、そんなの」

あい「え?」

JK「迷ったらさ、ワッパー食べなよ!」

JK「明日の朝イチで、またバーキン行こう。一番デカいセット!」

JK「また私が奢ってあげるから。ね?」

あい「…………(震える瞳でJKを見つめる)」

あい「ワッパー、ワッパー」


暴力に満ちた地獄の屋敷から一時的に切り離され、JKの「適当で、でも絶対的な肯定」に包まれる。
そんな、あいの束の間の安らぎ。
それがここにはあった。

ただ、安らぎは常に「地獄」との表裏一体。

男「……ここか。クソ面倒なことしやがって……」

女「……もう12時よ。……なんでこんな夜中に、あの子を追いかけて、こんなことさせられてるのか分からない……」


冷たい夜風が吹き抜ける中、一目連と骨女が暗闇の中に立っている。
一目連の瞳からは光が完全に消え、その佇まいは「殺戮機械」に近い。

男「あー、マジさ。……骨女、俺があいつを殺しそうになったら止めてくれよ」

女「ちょ、ちょっと!!」

男「マジ、本気で。……今、俺の心、完全に『無』なんだわ。何をしでかすか自分でも分からない」

女「……」

女「…………ごめん、ごめんね、お嬢……。ごめんなさい……」


男「行くぞ」

女「……」




JKの家の風呂場。
あいはJKと一緒に、あたたかい湯船に浸かっている。
痣だらけの肌が、湯気の中で白く浮き上がっていた。

あい「……優しい。……なのに、いじめっ子。……ウケる」

JK「あはは! 私、妹いるからさ、あいちゃんのこと放っておけないんだよね~」

JK「それに、私がいじめてんのなんてキモいチー牛だけだし! あいちゃんはカワイイから別腹っしょww」

あい「……あはは、あはは(棒読み)」


あい「あたたかいお風呂。……ここには、何もない。……からっぽさん」

JK「毒吐くなぁ~~……。人をミニマリストみたいに言うな!w」

あい「…………。……何もないから、幸せ。……空っぽで、あたたかくて……。……ワッパーの味だけ、考えていられる……」

JK「……へへw なら、のぼせるまで入ってなよ。ワッパーちゃん」


あいは初めて、水底の石のように静かな表情を見せた。
しかし、その玄関先には、彼女を再び「暴力の日常」へと引き戻そうとする。
死んだ目をした守護者たちが、すぐそこまで迫っていた。




ピンポーン――……


あい「(心臓を掴まれたように、肩を激しく跳ねさせる)……っ、あ……あぁ……っ!!」

JK「……あ。……察したわ。マジかよ、こんな時間に……」


あいの瞳から、先ほどまでの穏やかな熱が急速に引いていく。
お湯に浸かって少しだけ赤らんだはずの肌が、一瞬で青白く、死人のような色へと変わる。

JK「チッ、はぁ……。……しつこいんだよ、クソ共が」

あい「…………ワッパー。……ワッパー……ワッパー……」


あいは恐怖から逃れるように、壊れたレコードのようにその名を唱え始める。
ガチガチと歯の根が合わないほどに震え、視線は宙を彷徨い、膝を抱えて湯船の隅に固まってしまった。

JK「……ねぇ、あいちゃん。こっち向いて」

あい「…………っ」


JKは、あいの痣だらけで震える両手を、湯気の中で優しく、しかし力強く握りしめた。

JK「……うちは、あいちゃんのこと。……大好きだよ!」

あい「……!」


その言葉に嘘はなかった。
あいを「地獄少女」としてではなく、ワッパーを頬張って泣く、ただの「かわいそうな女の子」として愛おしく思う、純粋な現世の善意。

JK「……ちょっと待っててね!」

あい「……い、行かないで──」

JK「大丈夫! ちょっとだから!」


JKは衣服に袖を通し、覚悟を決め玄関へ向かう。
そこに、地獄が待っているとは──分からず。
──いや、分かっていて、なお。



それは、あまりにも一方的な惨劇の始まりだった。




玄関のドアが、まるで最初から存在しなかったかのように音もなく開く。

男「お邪魔しま~す」

女「宅配便でーす」


二人の声には、もはや慈悲も感情もない。
ただ「面倒な荷物を回収しに来た」という虚無だけが漂っている。
しかし、リビングに足を踏み入れた彼らが目にしたのは、怯える少女ではなく、冷徹な殺意を湛えたJKの姿だった。

JK「……はぁ」


JK「おい、『殺れ』」

摩虎羅500体「──御意。」



影から、クローゼットから、天井から。
500もの『いじめられっ子』たちが、大軍勢となって溢れ出した。
殲滅、そして咆哮。
式神・八握剣異戒神将『摩虎羅』に驚く暇もなく、

男、女「ふぁっ!?!?!?!?」


摩虎羅の剛腕が閃くと同時に、一目連と骨女の両腕は根元から鮮やかに「剥がれ」、床に転がった。

男「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」

女「いぎゃぎゃぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」

男「わけ、わけわかんねぇし!!! いみわかんない!!! 物理? わかんないんだけどぉおおお!!!(激痛で失禁し、鼻水と涙を垂れ流して床を這いずる)」

女「いやぁあああああ!!! みゃみゃ~~~~~~!!! ぴゃぴゃーーーーーーー!!!!!(精神が幼児退行し、濁流のような母乳と涙を溢れさせて絶叫する)」


浴室のドアを閉め、JKはあいの耳を優しく、しかし確実に塞ぐ。

JK「あいちゃん、見ちゃだめだよ。いい子だからね」

あい「……ワッパー」




浴室の外。
リビングの床は、一目連の失禁と骨女の母乳で、地獄の三途の川より汚泥にまみれていた。
JKは、両腕を失い正座する男の前に、ゆっくりと屈み込む。

JK「よ。……私、誰だか分かるよね?」

男「わ、わかりましぇん!!!! 助けて、頼むから殺さないで、何でもしましゅからぁぁ!!!!」

JK「……まぁそりゃそう。だって初対面だもんw でもさ、私を一目見て『かわいい』のはわかるよね?」

男「もちろんでしゅ!!!!! 世界一、世界一かわいいでしゅ!!!!」

JK「……ふーん。じゃあさ、私をレイプしたい?」

男「へ? ……え? ……ど、どう答えるのが正解でちゅう!? 『はい』!? 『いいえ』!? どっちにゃのぉぉお!!?」

JK「あは。聞かなきゃわからん無能草。……おい、殺れ」

摩虎羅「ぐももちぃ〜〜〜ッ!!」


刹那、摩虎羅の鋭い爪が一目連の生え際に食い込む。
果物の皮を剥くような音を立てて、彼の顔面を鮮やかに剥ぎ取った。

男「えひゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」


顔の皮を失った一目連は、むき出しの筋肉と眼球を震わせながら、あまりの激痛に脳がバグを起こす。
脱糞し、同時に生理現象を超越した土砂崩れのような射精を撒き散らす。
驚くべきことに、その金玉は極限まで縮み上がり、2mmの小さな粒へと退化した。


摩虎羅「うま、うま(剥ぎ取った顔の皮を、ワッパーのように美味しそうに咀嚼する)」

女「ひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!(恐怖で脳の構造が完全に崩壊し、耳穴からよだれを垂らしながら白目を剥く)」



両腕を失い、汚物の中に正座する骨女の前に、JKは楽しそうにしゃがみ込む。
浴室からは、あいが立てるパチャパチャという無垢な水の音だけが聞こえていた。

JK「ねぇ。……あいちゃんのこと、好き?」

女「もちろんでしゅ!!!! ハイルあい様ぁーーー!! 愛してましゅ! 崇拝してましゅからぁ!! だから、だから許してぇ!!」

JK「……なら、問題です。あいちゃんは何歳でしょう?」

女「へぇ???!!!! じ、10歳……!?」

JK「ブー。正解は……知らない。はい、わかんないです。……まあ、見た目的に小4とかじゃないの?w」

女「ひぃいいいいいい!!!!!!! なんのためのクイズなんでしゅかぁあああああああ?!!!!?」

JK「ハズレなので罰ゲーム。……おい、これ全部食わせろ」


JKが指差した先。
摩虎羅の巨大な手のひらには、おぞましい気配を放つ「両面宿儺の指」が、山のように。
295本も積み上げられていた。


摩虎羅「ぎゅちぃ~~(骨女の顎を、関節が外れるまで無理やりこじ開ける)」

女「あ、あばばっ、んぐ、あぐぅううっ!!」


摩虎羅は、かつてあいに魚の塩焼きを強要した骨女の喉奥へ。
宿儺の指を一本、また一本と、まるで機械のように凄まじい速度で叩き込んでいく。

女「がんまっぎぃえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!」

JK「フォアグラかよw」




JK「……はぁ、つまんな。ねぇ、どっちかは許してあげるよ」

JK「……顔芸しな。あそびあそばせ超えるレベルの面白い顔した方だけ、生かして帰してあげる」

男、女「(絶望の中に差した一筋の光に縋るように)……っ!!」


骨女は、全呪力を振り絞り、眼球を限界まで剥き出し、鼻の穴を広げ、宿儺の指の隙間から涎を撒き散らす。
見るに堪えない醜悪な変顔を披露した。
一方、一目連。
当然、顔などもうないので変顔もクソもない。
というか、それどころじゃない。

JK「……何それ? 放送事故? ……やっぱ地獄のヤツはダメだな。連帯責任で二人とも死ね」

男、女「え???!!!!! そ、そんなぁあああ!!!!」

JK「じゃあね、名前も知らないニートさん」


処刑は一瞬では終わらなかった。
JKの指示により、摩虎羅は巨大な体に似合わない繊細な動きで、数千本の待ち針を取り出した。
あいの耳をひねり、頬を叩いたその敏感な神経の終着点――乳首へ。

一本、また一本。

28時間を過ぎたあたりで枯れ果て、最後はただの痙攣する肉の塊となって、豚同然の死を遂げた。




最高の「処理担当」へ。
翌朝。
JKは慣れた手つきで、変わり果てた「かつての仲間たち」を巨大な段ボール箱に詰め込み、伝票を貼り付けた。

JK「……よし。……こういうのは、やっぱり専門家(笑)に頼むのが一番っしょ~~」


さとう「……ちょっと! 無理です、こんなの貰えません!!! うち、生ゴミ処理場じゃないんですよ!?」

JK「……えっ。……そんなこと言うんだ……。私、さとうちゃんなら、この『愛の重荷』を分かってくれると思って……わざわざ送ったのに……っ(うるうる)」

しお「(横から顔を出して)……あ、面白い! しおもやる! ……えっ、そんなこというの……? さとちゃん……っ(うるうる)」


さとう「……ぁ、……ぅう……っ!! ……ぃいいいいいいいい~~~~~~~~~!!!!!!」


さとうは泣きながらビニールシートを敷き、プロの手つきで「かつて一目連と骨女だったもの」を浴室へと引きずり込んでいった。
さとうが必死に解体作業を始める音を背に、JKとしおは玄関先でハイタッチを交わす。


JK「……ださw」

しお「……真似しよ! ださw さとちゃん、ださw」




【安泰。平穏な毎日】

その後、あいはJKの妹ポジに収まった。
ジジイはワッパーくれるからとりあえず無罪放免。ただしその代わり、毎月きっちり280万むしり取る。

ジジイ「今月の分です……」

JK「今思ったんだけど、地獄の通貨も円なわけ? それともさぁ、地獄も日本支部とかフランス支部……あんの?w」

ジジイ「……」

JK「……まぁどうでもいいけど、さw」


あいがどれだけ頭ゆるくて、何度言っても理解しないポンコツでも、そこは全部肯定。
否定はしない、折らない、でも逃がさない。
ちゃんと納得させて、最後まできっちり仕込む。

あい 「…………いつも、ごめんなさい」

JK 「(あいの頭を優しく撫でて、力強く微笑む)……謝らなくていいんだよ。もう。……ね!」

あい 「……っ、……ひっ、ぐすっ……。……ワッパー……」



雛鳥が最初に見たものを親だと思うように、あいには、「JK=痛みを止めてくれて、ワッパーをくれる神様」として強烈に刷り込まれた。
三藁という恐怖の象徴が消え、JKが「大好きだよ」と言って抱きしめてくれた瞬間、あいの全ての警戒心は溶けてなくなる。

あいはJKの姿が見えなくなると、パニックになるかもしれない。
JKがトイレに行けばドアの前で待つかもしれない。
JKが学校に行こうとすれば服の裾を掴んで「ワッパー……(行かないで)」と泣くかもしれない。
寝るときも、あざだらけだった体をJKに預けて、くっついて離れない。
あいにとってJKの隣は、「世界で唯一、殴られない場所」だった。

歯磨きをしてもらうときに甘える。
食べこぼしを拭いてもらうときにニコニコする。
「自立しなきゃいけない地獄少女」ではなく、「甘えていい末っ子」として、彼女の精神はどんどん若返り、JKに依存していく。


あい「ワッパー、おいしい。……だいすき。もう、帰りたくない」

JK「へへへへ~~~」


まだ「お姉ちゃん」とは呼べないかもしれない。
それでも、顔を合わせるたびに――
あいは小さく、確かに笑うようになった。

それは、ひどく歪で、けれど確かな安らぎの――
お伽話。


(完)

最終更新:2026年05月03日 23:44