『転調』
著年日 2026.02.17
著者 五味葛葉
解散寸前 の 雑魚地下アイドル 『Uぅ!テンチョー』。
放課後 事務所。
メンバー の 会話。
ユーノ「ほら見て!シーナ」
シーナ「……あ、私たちのYouTube。再生数が草すぎる~……」
ユーノ「この前の“自己紹介あいさつ動画”さぁ」
ユーノ「私、1200再生。ハル1100。ミノコ1050」
ユーノ「……テメェ、5.5万再生」
シーナ「はぁ??!!ははぁ??!!桁バグってない?!」
ユーノ「シーナさん、あなた人気投票最下位ですよね?」
ユーノ「……そりゃ、この国は資本主義だけどさぁ……。なに?この格差」
シーナ「これもう公開処刑でしょ!?消して!!マネージャー呼ぼうって!!今すぐ!!」
ユーノ「やだ。まずお前を……始末」
シーナ「私も被害者なんだけど!?」
シーナ「お願い……せめて無理心中の形にして……ユーノをムショ送りにしたくない……」
ユーノ「……遺書、メンバー全員分まとめて書いてくれるなら考える」
シーナ「書く書く……ChatGPTに頼むから……」
ユーノ「チート(文明の利器)使うな」
シーナ「YouTube(文明の利器)で殺されてるの、こっちなんだけど!?」
ユーノ「……殺すとか殺さないとか、そういう言葉やめてっていったよね……」
シーナ「……ごめんって~!!」
◆1◆
楽屋。
ハル「あ、ジャージーズ!」
ミノコ「年中体育祭の子たちw」
ユーノ&シーナ「オフに制服のお前らがおかしいんじゃい!!」
ミノコ「なんで?放課後直行だよ?」
ハル「いつもジャージとかウケる~wパワプロくんみたい!w」
シーナ「例えさぁ~」
ユーノ「休日マイライフしかしてなさそう」
シーナ「ユーノもなんでパワプロ知ってるの?」
シーナ「……ていうかなぜ味方(私)を殴った」
◆2◆
ハル「つか愚痴聞いて。元カレなんなん?」
ユーノ「……え?」
ハル「未練たらたらのDM送ってくるんだけど」
ハル「マジきもい、死ねよ。このもやし芋がっ!」
ミノコ「いやもやしと芋って対極やろ。顔の解像度ゼロ過ぎる」
ユーノ「味噌汁でしか見ない組み合わせだわ~」
シーナ「野菜で話広げんなモブ……とハルが言いたげで〜」
ハル「一番モブという言葉をぶつけたい対象は私のシーナたん」
ハル「……ほんと元カレうざい!ねぇ誰か故殺してくんないかな……」
ミノコ「故殺は死因じゃねーし」
シーナ「あとやってほしいって言った瞬間謀殺となる」
ユーノ「……」
ユーノ「てかうちら恋愛禁止じゃなかったっけ?」
ミノコ「あーそれな。努力ゼロで弱みゲット案件」
ハル「いんだよバレなきゃ!桜井総家だって犯罪しまくってるよ?」
シーナ「解散してんじゃん」
ミノコ「パッと指定暴力団の具体名出てくるのが怖いんデス」
ハル「てかさ、どうやってバレんの?って話」
ハル「マネージャーが24時間GPSで追跡?それもうストーカーじゃん!!」
ハル「はい通報!はい実刑!はい閉幕♪」
ミノコ「一理ある。ビーリアル。私も彼氏つくろ~」
ユーノ「じゃあ私も」
シーナ「それでも私は、クラスのみんなのモノでいたいアイドル~♪」
ミノコ「人気投票ドベもクラスじゃアイドルだもんな」
◆3◆
ミノコ「正直さ、一番嫌いなメンバー誰?」
ユーノ「ダイナミック陰口」
ミノコ「私は余裕でシーナ」
シーナ「ほらまたそういう私いじれば場が回る的な~……」
ハル「私もシーナかな。理由は嫉妬~」
シーナ「飴と鞭のつもりなの?」
ハル「顔の、嫉妬です」
ミノコ「歪んだファン心理」
シーナ「りぼんみたいないじめ動機~……」
シーナ「……岸部悠乃、お願いね?」
ユーノ「え?」
シーナ「“シーナ”以外で答えてよ?」
ミノコ「てか本名、角川映画感すごい」
ユーノ「西稔子さんは例えが昭和。まさしく時をかける少女(原田知世版)」
シーナ「細田守版すら今や古典扱いなのに……」
ユーノ「じゃあ嫌いなメンバーはユーノ」
ハル「三竦みにすんな!」
シーナ「結局私、民主主義で負けてるし~……」
◆4◆
ハル「私ってかわいいよね?」
三人「かわいい」「かわいい」「かわいい」
ハル「ウシジマくんの“かわいいものしりとり”か」
ハル「いや、冗談とかふど?抜きに」
ミノコ「“忖度”読めないのお前だけなんよ今の時代」
シーナ「私は普通にハル好きだよ~? かわいいし」
ハル「忖度いいからっ!!///」
ユーノ「顔は良い。顔、顔」
ハル「もう~~忖度すなって///」
ミノコ「ダンスも歌も上手いしね」
ハル「それは嫌味だろ。ネット民が剛力彩芽皮肉で褒める時の言葉」
ハル「ほんとちゃんと忖度してってば!!忖度忖度!!」
ミノコ「つかここまで覚えたての言葉連呼するアホ初めて見た」
◆5◆
ユーノ「つかさ。アイドル……飽きたッス!笑」
ハル「ほんとそれっ!ダンスとか手足バタバタ。私らをタコ扱いすんなっての!」
シーナ「タコ、手足バタバタしてるイメージなくない~?」
ハル「うっせぇタコ!!しゃしゃんな低脳!!」
ミノコ「あー外見パーフェクトすぎて内面でしか殴れないやつ」
ユーノ「歌も飽きた!眠いし、だるいし。なにこれ?睡眠用BGMすか?」
ミノコ「どうせ佐村河内作曲でしょ」
シーナ「言っとくけどあの人おどろおどろしい曲ばかりだからね」
ハル「黙れシーナ!バカのくせに!お前はQさまか?」
ミノコ「“頭いい=Qさま”という発想の限界」
ユーノ「よしなよw」
ハル「味方撃ちやめろ!今、敵ボコす時間でしょ!」
シーナ「敵はマネージャーでしょ?!」
◆6◆
レッスン後。
床 に 座り込む 四人。
ユーノ「疲れた」
ハル「銭湯行きたい。で、吉村家。明日のこと考えたくない。早く眠りたい」
シーナ「おじさん過ぎるって……」
ハル「じゃあお前やれや」
シーナ「笑い飯か!……なにを?」
ハル「疲れたら何すんのって話。……これ、いちいち言わなきゃわかんないかな」
ミノコ「多分いまの、最近言われて嫌だった言葉使ってみた感じ」
ユーノ「よしなよ」
ハル「……芯食いすぎって」
シーナ「……疲れたら、まぁ普通に、歌って発散かな?」
ハル「はいIPPO〜ン」
シーナ「どこに大喜利要素感じたのかな?」
ユーノ「シーナ、田園とか歌ってそう」
シーナ「おっさんか」
ハル「田園の歌詞で泣いてそう」
シーナ「だからおっさんか」
ミノコ「孤独のグルメに憧れて知らない店入るけど、結局唐揚げ定食頼みそう」
シーナ「だからおっさんかて。ミノコの解像度が一番怖いわ」
ハル「さっきからアホのくせにツッコミうっさいわ!!この姦が!」
シーナ「意味わかんないけど侮蔑ワードにはなってる奴〜」
ユーノ「……疲れたからどっか行きたいな」
ミノコ「線路いけば?あとは屋上。それか薬屋」
ユーノ「人生には疲れてねーよ!!私死んだら泣くくせに!」
ミノコ「否定はできないのが悔しいところ」
ハル「……青春じゃんね……うちら……」
シーナ「いやエモくはならないから……」
◆7◆
ミノコ「まじ、明日でやめよ」
ハル「バイトを?」
ミノコ「そこまでスケール小さくねーから。アイドルだわ」
ユーノ「スケールで言えばトントンでは?」
シーナ「ユーノその毒必要?」
ミノコ「ほんとおもんない。メンバーもクズばかり、歌は幼稚園、ダンスはぺけぺけぱ〜〜」
ミノコ「……終わりすぎ」
ハル「客もね……」
ユーノ「それは超えちゃいけないラインなんだってば」
シーナ「……じゃあ、ミノコやめるの?」
ミノコ「は?“死にたい”ってぼやいてる病みアカ、ほんとに死にます?w」
ユーノ「だから例えさあ……」
ハル「うちら仲良いもんね〜」
ユーノ「認めたくないけど、なんだかんだね」
シーナ「シーナ以外はね〜」
ミノコ「おい私のセリフ取るな」
ハル、ミノコ「じゃ、バイバーイ」
シーナ、ユーノ「ばいば~~い!」
ドア が 閉まる。
廊下 に 足音 が 遠ざかる。
シーナ「……」
ユーノ「……」
ちゅ……
◆ヌ[◆
ぷはっ……
ユーノ「……シーナさ。人気投票、ぶっちぎりだったらしいじゃん。前聞いたけど」
シーナ「…………バレた?」
ユーノ「……マネージャーに捏造頼んでまでさ。……私たちのこと、そんな上にしたいわけ?」
シーナ「私が断トツ一位だったらキャラに合わないし」
ユーノ「……」
ちゅっ……
ん、……
……はぁ、はぁ
ユーノ「……あの二人、マイコンできた?」
シーナ「正しくは洗脳ね」
ユーノ「……やばいよ。趣味:洗脳って。最初聞いたとき普通に引いたし」
シーナ「それは当然。まぁでも私野心ないから、ただ仲良くなっただけという~」
ユーノ「……もしかして、楽しいの」
シーナ「楽しい。私は友達の話聞くのが好きだから」
ユーノ「いや、それじゃなくてさ」
ユーノ「……“コレ”のこと」
シーナ「……」
ユーノ「洗脳されてる私がむしろ……シーナに負担かけてるし……」
ユーノ「……なんで、一緒にやってくれる……わけ……」
シーナ「友達だから。The青春」
ユーノ「……ごめん……」
シーナ「法が許さなくても、私が許すから」
ユーノ「…………ごめん」
シーナ「ユーノの世界は、私なんだもの」
ユーノ「…………ごめん……なさい…………」
ちゅっ……
ぷは……
シーナ「……あんま気に病まないでよ。“お兄さん”もさ、……幸せだったとは思うよ?」
ユーノ「……やめて。……お願いだから」
シーナ「だって112kgだよ?もう車椅子生活しなくていいんだからさ!」
ユーノ「……もう言わないで。……はやくやろ…………」
シーナ「応援してくれてるって……!」
……ぐ、
……んちゅっ
◆9◆
翌日。
楽屋。
ハル「お!ジャージアおはよ〜!」
ユーノ「ゲルジアみたいに言うな!」
シーナ「ジョージアで国のほう口にするの、教養アピールすぎ~……」
ミノコ「おい私の毒舌取るな」
ユーノ「いやミノコ馬鹿だからジョージア知らないでしょ」
ミノコ「は?」
ハル「ちょっと見てよ〜。私の味噌カレー牛乳ラーメン~~!」
ユーノ「ハルは彼氏のあだ名食べ物縛り中なの?」
ミノコ「てか食い物なのそれ?イヌの餌?」
シーナ「青森県民は味噌カレー牛乳ラーメンに特にスピリットないから毒舌にならないという~~」
ハル「マジきもくない彼氏!?ほんと口ばっかだし!!」
ミノコ「まぁ分かる。男っておしゃべりうざいよね」
ユーノ「自分のしたい話しかしないし」
ミノコ「その点女子は空気の読み合いだもんね〜」
シーナ「空気が読めない私は逆紅一点~~」
終。
最終更新:2026年02月26日 17:33