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幻想郷の奇妙な物語 第四話

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shinatuki

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「はぁ……」

 ここは永遠亭のとある一室。そこでは一人の美女が詰まらなそうに溜息を吐いていた。

「ふぅ……」

 彼女の名は八意永琳、この永遠亭で医者と薬師をしている。その彼女が何故溜息を吐いているのだろうか。

「師匠~、患者さんの診察終わりました」
「あらそう。もう私が出る幕じゃないわね」
「そんなことないですよ。何かあった時には師匠が助けてくれるから一人でできるんです」
「いいえ、うどんげ。これはあなたの実力よ。私の出る幕なんかほんのちょっとしかないわ」

 彼女の弟子である鈴仙・優曇華院・イナバ、彼女が成長し、ある程度の患者の診察など仕事を任せられるようになったのだ。
 それだけならば嬉しい筈なのだが、鈴仙の成長と共に永遠亭のある人物にも変化が訪れていたのだ。

「えーりん、皿洗いと掃除終わったから。あと、洗濯物取り込んどいたから畳んでおいてね」
「あ、師匠、私が畳んでおきます」
「お願いするわ……」

 何とニートや引き篭もりと馬鹿にされ続けていた輝夜が、驚くべきことに自発的に家事を手伝うようになったのだ。
 鈴仙が仕事を肩代わりできるようになり、いつもより多くの時間を家事に割けられるようになった永琳、だが輝夜がその家事まで手伝いをするようになったのだ。

「あ、えーりん、後で料理教えてね」
「……今日はそうですね、鶏肉料理にしましょう。姫、鶏肉を獲ってきてくれません?」
「鳥……そうね、心当たりがあるわ」
「言っておきますが焼き鳥は駄目ですよ? カラスも駄目です。ちゃんと鶏をお願いしますね」

 そう言って輝夜を送り出した永琳。鈴仙も洗濯物を畳むために彼女の部屋から出て行きまた一人に永琳はなった。

「うどんげも姫もずいぶんと成長しちゃって……もう私が面倒を見る必要はないのかしら? 人里に診療所を設ける話……あの子に任せようかしら。
 ずっとここにいたらつい私が手を出して、いつまで経ってもうどんげが独り立ちできないし……」

 しばらくの間うんうん唸っている永琳であったが、どこぞの竹林に迷い込んだ哀れな夜雀の助けを求める声に思わず溜息を吐いた。

「姫ったら夜雀じゃなくて鶏だといったのに……まぁ別にいいけど。それにしても料理も教えきったらますます私のすることがなくなるわ」

 掃除と洗濯は輝夜が自発的にするようになった。それでも炊事はそうはいかないのだ。
 輝夜は掃除と洗濯は鈴仙に教えてもらいながらやっていた。最初は時間もかかりぎこちなかったそれが次第にそれも解消された。
 もはや鈴仙や永琳が見ずとも任せられるほどに成長したのだ。だから彼女は輝夜に頼んだのだ。『お米を洗って下さい』と……。
 掃除洗濯が人並みにできるからと輝夜を永琳は過信していた。まさか洗剤で米を洗うとは思ってもいなかったのだ。さすがにそれぐらいの常識はあると思っていた。
 永遠亭の住人は忘れない。あの妙に輝いた米を忘れない。『わたしが洗ったのよ』と自信満々に言う輝夜の表情は忘れることが出来ない。口に含んだときの衝撃など忘れ去りたい。てゐの仕業と思い、苛烈なお仕置きを間違って彼女にしてしまったのは良き思い出にしたい。
 それ以来、永琳は料理の時には輝夜に付きっ切りで教えていたのだ。しかしそれも永遠には続かない。
 ある日、永琳が所要で外出し、永遠亭に戻ってくると、何と輝夜が一人でご飯を作っていたのだ。その味がとても塩辛かったのは輝夜が塩の分量を間違えただけではないのは確かだった。
 いつの日か永遠亭の家事が牛耳られるのもそう遠くないのかもしれない。

「手間が掛からないのはうれしいけれどやっぱり寂しいわ」

 手塩にかけて育ててきただけに独り立ちする二人の姿に嬉しさ半分悲しさ半分。
 物思いに耽っていればどこからか彼女の名を呼ぶ声が聞こえてきた。その声は妙に幼い。

「ししょー、たすけてー」
「……うどんげ?」

 鈴仙の声にしては妙に幼いし舌足らずだ。彼女の声はもっと明瞭で奇麗な声だった。一体何がと思い部屋を出た永琳の足元に軽い衝撃が走った。
 永琳の足にしがみ付いたのは3,4歳くらいの小さな女の子だ。しかも全裸。
 その子がやって来た方向にはまるで目印でも残すかのように、子供が着るには大きすぎるスカートや下着の数々。つい先ほど鈴仙が着ていた物にしか見えない。

「ししょー、ししょー」
「うどんげ……よね? 可愛くなっちゃって」

 永琳は思わず鈴仙を抱き上げてしまう。抱き上げられた鈴仙も不安からか、永琳の服をがっしりと掴んだ。
 その様子に永琳は思わず微笑んでしまう。それでも彼女の思考はこの原因を探ろうと考えていた。
 彼女は幼女化の薬を作った覚えなどない。故に詐欺ウサギことてゐがその薬を使って悪戯したとは思えない。次いで思いついたのが輝夜だ。彼女がネットで怪しげな薬を買い、それを鈴仙に飲ませたか、あるいはてゐが持ち出したか。
 だがその考えも最近の輝夜の行動から否定される。有り得なくはないが、鈴仙が薬の調合を誤り、何故かは知らないが偶然幼女化の薬を作ってしまい、誤飲した。てゐが悪戯したのが原因でそうなった可能性もある。
 どう考えても怪しいのはてゐだった。しかしてゐは永琳が人里に薬を持っていくように頼んだため、この永遠亭にはいないはずだ。
 被疑者の最有力候補である因幡てゐの仕業ではない。ならば誰の仕業か。考えられるのは第三者の仕業だ。
 しかし、誰が、何の目的でこのようなことをしでかすのか。

「あぁもう! よく分からないけどこんなに可愛くなって!」

 考えるのを止めて幼女化した鈴仙をその豊満な胸に埋める様にギュ―と抱きしめる。その小さなふくらみ、透き通るように赤い瞳、柔らかすぎてさわり心地の良い肌。
 それら全てが永琳を魅了する。

「いっそのこと輝夜も子供に戻ればいいのに……」

 鈴仙を愛でながら思ったことを口にする永琳。彼女は思い出していた。遥かなる過去を……あの幼き輝夜を……。
 彼女は知らなかった。永琳のその言葉を待っている人物がいることを……。

「気に入って貰って何よりだわ」
「誰!?」

 永琳が後ろを振り返るとそこにはスキマから上半身を出して微笑む少女がいた。

「幻想郷のアイドル、みんな大好きゆかりちゃん♪ あなたの心のスキマから只今参上♪」
「げ、八雲紫」
「ぶぅ~。こんな美少女つかまえて『げ』はないでしょ」

 突如として現れた紫にあからさまに不愉快な表情をする永琳。だが彼女はある違和感を覚えた。
 その違和感が何なのか確かめようと鈴仙を抱きしめたままじっと紫を見つめるのだった。

「やぁん♪ そんなに見つめられるとゆかりん困っちゃう。だってゆかりん、心に決めた人がいるんだもの」

 くねくねと可愛らしく身をよじる紫。そこで永琳は違和感の正体に気付いた。
『可愛い』……八雲紫をそのように評した事だ。違和感の正体はそれだった。通常ならば彼女を評するの『胡散臭い』『わざとらしく怪しい』『【この発言はスキマ送りにされました】』と言ったものだ。
 永琳も紫を目にして可愛いと感じたことは一度もない。それなのにどうだろうか。永琳は紫を年相応で可愛いと思ってしまったのだ。

「ど、どういうこと? 私がおかしくなった? は!? もしかしてうどんげもあなたの仕業なのかしら?」

 動揺しながらも見事正解にたどり着く辺りさすが永琳と言わざるを得ない。経験豊富な美女は一味違う。

「せいかぁ~い♪。ゆかりんじゃなくてこいつの能力を使ったんだけどね」

 紫がそう言ってスキマから引きずり出したのは血塗れの男、その男はどこか永琳を不快にさせる雰囲気を持っていた。抱きかかえられた鈴仙も永琳の服をギュッと握り締める。

「……何それ?」
「人間のおっさん」
「そうじゃなくて」
「アレッシー」
「は?」
「名前」
「そういうことを聞きたいんじゃないの」

 どこか話が噛み合わない二人。

「だから私が聞きたいのはそいつの能力ってことよ」
「あ、そうなの」
「それで?」
「あのね、相手を若返らせる程度の能力なのよ」

 紫の様子がおかしいことに永琳は気が付いた。最初は普段と余り大差ない、いやいつも以上に訳の分からないことを言っていたのだが、胡散臭さは大差なかったのだ。
 だが言葉を交わしていくにつれ段々と口調が柔らかくなっているのだ。
 ふと永琳は気付いた。アレッシーという男の影が不自然に伸び、紫に触れているのだ。

「……影に触れると若返るのかしら?」
「そうよ、よくわかったわね」

 そういうと紫はアレッシーへと向き直った。何をするのかと永琳が見ていれば『てゐ♪』という可愛らしい掛け声と共に紫の腕がアレッシーに振り落とされた。

「いでぇ!」
「あ、あれ? もう一回、てゐ♪」
「アガガァ」
「何で? オラァ!」
「イギィ……ガクッ」

 紫は一撃で、殴って気絶させようと思ったのだろうか。しかし少女の非力な力では二度三度と殴らなければアレッシーを沈めることは出来なかった。
 永琳は紫の奇行など今に始まったことではないと生暖かい視線で見ていた。そう見ていただけでアレッシーを気にかける素振りさえ見せない。

「結局何がしたいの?」
「うふふ……今に分かるわ」

 異変は永琳の腕の中で起きた。幼女状態だった鈴仙が見る見るうちに大きくなり、いやもとの大きさに戻っていったのだ。全裸で。

「し、師匠!? えぇ!? 何で!」
「ちょ、うどんげ暴れない」
「あぁん! 師匠胸つかまないで!」
「ご、ごめんなさいね。……うどんげの肌ってすべすべね。頬ずりしたいわ」
「ってゐうかわたし裸だし! ま、待てーゐ! 股間に手を入れない!」
「う、うどんげ? 違うのよ。男がいるから隠そうと……」
「ふぇ?」

 突然小さくされ、突然元に戻ったのだ。混乱するのも仕方が無い話だ。それに全裸である。鈴仙に冷静でいろと言うのは無理がある。
 混乱しているのは永琳も同じだ。腕に抱いていた鈴仙が突然子供から少女の姿になったのだ。それでも鈴仙程混乱してはないのはさすが永琳である。
 ただ多少永琳は正気を欠いているのだ。元の姿にもどった鈴仙の肌に触れある種の感情が永琳により強く芽生えた。
 今まで鈴仙の師匠として接してきた永琳は彼女を愛してはいてもある種の『境界』を設けていた。それは『弟子』と『師』のけじめだった。
 彼女が永琳に甘えてきても輝夜のように全て受け入れ甘やかしたりはしなかった。時には突き放したりもした。それでも最後には『仕方がないわね』と言って手は貸したりはしていた。
 それでも結局は『師』と『弟子』というスタンスを取ってきただけに親愛の表現として肌が触れ合うことがなかった。
 輝夜が落ち込めばそっと抱きしめ慰めたが、鈴仙であれば言葉によって『理』を諭し、自ら立ち上がるよう促した。
 それは共に暮らした時間の違いなのかもしれない。永琳は輝夜が小さな頃から知っている。対して鈴仙は今の姿しか知らなかった。
 よくよく考えれば永琳は鈴仙の事をよく知らないのかもしれない。彼女は薄々感づいていた。鈴仙が何か負い目のような物を背負っていると。
 永琳とてそれは同じだろう。彼女は輝夜に負い目を感じている。だが輝夜はそれを気にしていない。故に永琳と輝夜は家族として深く結ばれているのだ。
 鈴仙に対する永琳のスタンスは彼女の負い目を気にかけているが彼女が言うまで待とうというスタンスだ。輝夜は知らない。そんな事考えていないのかもしれない。むしろ『鈴仙? ああ、あの下僕(家族)ね』という感じかもしれない。
 知らないが故に受け入れることが出来なかった永琳は子供の姿になった鈴仙の温もりを感じ、その命の弱さ故に全てを受け入れて抱きしめた。
 鈴仙が元の姿になってからも変わらない。いやむしろ今まで彼女の全てを受け止め切れなかった己の矮小さに恥ずかしくなってくるのだ。
 だから永琳は鈴仙を抱きしめる! 彼女の全てを受け入れるために抱きしめる! 鈴仙の心を感じ取るために胸を触る! 
 家族の安全を確かめるために、鈴仙に悪い虫がついていないか調べるために股間に【これ以後の文章はスキマ送りにされました】。ついでに鈴仙をアレッシーの視線から護るために。
 つまり、この瞬間、輝夜一筋だった永琳が鈴仙への愛に芽生えたのだ。

 さて、紫に昏倒されたアレッシーは目を覚まそうとしていた。アレッシーは紫と対峙した時には一切逆らわないと心から思っていたのだがそれは擬態であった。
 真正面から、それも力で勝てるとは彼は思っていない。アレッシーには強者を打ち破る気概は持ち合わせていないのだ。
 あくまでも彼の戦い方は弱者を倒す戦い方なのだ。そしてその為のセト神なのである。
 アレッシーはずっとチャンスを窺っていた。それは最初の邂逅から変わらない。彼がDIOに従ったのはDIOに信奉した訳でも屈したわけではない。
 DIOという『強者』がアレッシーに『金』という利益を保証してくれたのだ。勿論それ以外にもDIOのカリスマなどの要因があったにせよ、それが彼がDIOに従った大きな理由だ。
 紫という『強者』はアレッシーに対してどうだっただろうか。紫は彼に何の利益を保証しなかった。彼女は彼を侮ったのだ。ただの人間に過ぎないと。
 アレッシーはチャンスを窺っていた。反抗の機会を。彼は己の能力の持つ一面しか紫に教えなかった。『セト神』のもう一つの側面。
 若返るという能力を違う側面から見た場合、それは対象の生きた時間を戻す、時を戻す能力と言えない事もない。紫の培った経験も若返るということはその経験が最初から無かったということになる。
 対象の生きた時間、経験が遡り無かったことになるということは記憶も無くなってしまい、さらに力もその若返った時のものになる。
 アレッシーは紫にとって長所となりうる一面、ただ若返るとしか伝えずその弊害を伝えなかった。もし彼女が彼に褒賞を与えたならば彼は包み隠さずにそれを教えたであろう。
 だが全ては後の祭りだ。紫はアレッシーの能力で見た目には変化がなくともその効果があると彼に言った。
 その為彼は如何なる理由があるかはしらないがスタンドが効くということを知覚できた。その為彼が彼女に勝てる条件を作り出そうと隙あらば『セト神』を紫に対して使っていたのだ。
 永琳と紫が話しているときにも当然スタンドを繰り出していた。だから紫は彼女が自覚することなく、知らず知らずのうちに若返り、精神も幼くなったのだ。
 本来ならば体と記憶は連座しており、ポルナレフが承太郎の名前を思い出せなかった時のように、即座にその経験が失われるはずだった。それは人間と妖怪という差異が原因なのか定かではないが、記憶を忘れるのにしばらくの間が空いてしまうのだ。
 八雲紫だからそうなのか、妖怪だからなのか比べることが出来ないため、その理由は分からない。
 ただ言えるのは一つだけ、この短い時間で紫に反逆しようとコツコツ若返らせたのだが、紫がアレッシーを気絶させたために彼の努力は水の泡と消えたということである。

 さて、永琳と鈴仙が暴れている様を尻目にアレッシーは目を覚まさんとしていた。少女紫の腕力ではそれ程ダメージを与えることが出来なかったため、すぐに回復したのだ。

「う、う~ん」

 もぞもぞと動き目蓋を開けようとするアレッシー。だがその動きに電光石火の動きで反応する全裸の少女がいた。そう鈴仙だ。
 永琳の自己弁護の中で出てきた男の視線とはすなわちアレッシーの視線のことなのだ。鈴仙はアレッシーに裸を見せて喜ぶ趣味など持ち合わせてはいない。

「み、みるなぁ!」
「うほぉ♪」

 永琳の手を振り切った鈴仙は思いっきり左足を踏み込み、鋭い腰の捻りを加えられた彼女の黄金の右足が起き上がろうとしていたアレッシーの頭を振りぬいた。
 轟沈するアレッシー、だが彼は沈み行く意識の今際、鈴仙の姿に桃源郷を見たのだ。すらりと伸びたその美しい足の付け根に生えた草原の<この描写はスキマ送りにされました>。
 兎も角、壁に叩きつけられたアレッシーはどこか幸せそうだった。

「ぶっ殺すッ! 死ね、死ね!」

 崩れ落ちたアレッシーに何度も制裁という名の蹴りを叩き込む鈴仙。だが救いの女神が現れた。そう、我らの永琳だ。

「うどんげ! 早く服を着なさい。みっともないでしょう」

 いや、永琳はただ鈴仙の裸体がアレッシーの視線で汚されることを嫌っただけだった。

「う゛、すみません師匠……わたしの服はどこ?」
「廊下に脱ぎっぱなしになっているわ」

 己の醜態に羞恥の余り全身を真っ赤に染めてそそくさと部屋から出て行く鈴仙。その姿を見送った永琳は紫に話を促した。

「それで、一体どういうつもりなのかしら?」
「見たでしょう?」
「ええ、見たわ」
「うふふ」
「私に何をさせたいの」

 妖しく微笑んでいる紫に永琳は少し怒気を含めて紫に尋ねた。

「ご覧の通り、あの若返る程度の能力は、アレが寝たり気絶してしまうとその効力が失われてしまいますの」
「もしかして……効力を長続きさせるために、寝たり気絶しなくなる薬寄越せってことかしら?」
「正解ですわ」
「そんなのないわよ」

 クスクスッと小さく笑う紫に呆れ顔で答える永琳。そんな彼女の言葉に紫は、きょとんと可愛らしい顔で言い放つ。それは胡散臭さ全快の丁寧な口調とは正反対である

「ないなら作ればいいじゃない」
「それを作ることによる私へのメリットは?」

 今度はニヤニヤと不気味に笑い出す紫。

「あなた自身は若返ることに興味がなくても……お宅のお姫様やお弟子さん……先ほどのように幼くして愛でることも」
「早速作るわ」
「あら本当?」
「うふふ……任せなさい」

 永琳は思い出していた。遠い過去を、果たせなかった夢を。
 それは輝夜が生まれてまだ間もない頃の話だ。彼女は生まれた輝夜世話役に立候補した。しかし、当時の月の重鎮達はそれを許さなかった。
 彼女ほどの才気ある者を世話役にし、その時間を無為に過ごさすほど、月は人材が余っていなかったのだ。
 結局永琳の望みが適い、輝夜の側に付ける様になったのは輝夜のおしめが取れてからだ。それからは彼女の教師として、時には母の様に接しながら過ごしていた。
 だが輝夜が成長するにつれ、彼女は惜しんだ。何故あの時重鎮を脅してでも輝夜の世話をしなかったのか!
 ああ、何夜涙を流したことか。だがついに永琳の果たせなかった、積年の悲願が成就する日が訪れたのだ。
 永琳は誓った。薬を全力で作ろう、アレッシーの傷を治療しようと。
 全ては紫からアレッシーの能力を借りる為!
 そして……輝夜のおしめを換えるという崇高な使命を果たす為に!!
(うどんげのおしめも換えられたらもっと嬉しいです:永琳談)




 服を着て戻った鈴仙が見たのは、硬い握手を交わす自らの師と紫の姿だった。

「何だか寒気がするんですけど」

 頑張れ鈴仙! 君の未来は……………



第四話

セトとスキマと永遠亭

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