「まふゆ!!大丈夫ですか!?戦えていますか!?大きなケガをしていませんか!?」
棒立ちになっているサモンライダーズを完全に放置しながらユフィリアはまふゆに声をかけていた
それに続けて
「今どういう状況だ!?どれだけNP…いや、襲ってくる奴を倒せた!?肉体的にダメージはどれくらい受けた!?簡単でもいいから話してみろ!!」
パラドは今の状況を具体的に話すように求めた、そうする事でこちらがどのように行動すればいいのかが分かるからだ
「はぁ…!!はぁ…!!はぁ…!!おねぇえちゃぁぁ…!!」
声に大きな異常は見られない…ただただ疲れている、そんな印象を受けた。
ユフィリアとパラド、共に抱いている今の状況に対しての疑問
それはまふゆが閉じ込められている時間が彼女の体力から考えると長すぎるというものであった
それはまふゆが閉じ込められている時間が彼女の体力から考えると長すぎるというものであった
もし閉じこまれている敵がまふゆに対処できる敵だとしたら早めに倒されてクリスタルゲージは解除されているはずである。
考えたくないが…もしまふゆにとてもかなわない敵がいるとしたら、まふゆは死んだ結果として不要になったクリスタルゲージは解かれているだろう
考えたくないが…もしまふゆにとてもかなわない敵がいるとしたら、まふゆは死んだ結果として不要になったクリスタルゲージは解かれているだろう
何故なら彼女に今現在クリスタルゲージが展開されている時間の間、戦う事が出来る体力はないはずなのだ、ユフィリアはそれを今まで一緒に行動してきた中で分かったし、パラドは一緒にいる期間は短いが、それでも推測する事は出来た。
それなのになぜここまで戦いが続いているのか…違和感を感じずにはいられなかった。
「今どんな存在と戦っていますか!?教えてください!!私達なりに戦い方を伝える事が出来ると思いますから!!」
故にまず倒しきれていないNPCで敵を倒せるようにアドバイスをしようと思った…のだが…
(…おかしいですね、あの霧の中…まふゆだけでなく…男の人の声も聞こえる…?)
今まで遭遇してきたNPCはシアゴースト等の動物を模したモンスター、デーボ・キャワイーン等、化け物や愛くるしい見た目という皮を被った醜い魔物
ユフィリアが遭遇してきたNPCはそのような物以外おらず、人の言葉を話すNPCに遭遇した事は今まで一度もなかった…故に男の言葉が聞こえた時、まさか他の参加者も巻き込まれているのかと考えた時に
「ダメ…たおしちゃ…いけないの…たおしたらぁ…!!」
信じがたい事を聞いてしまった、倒さなければいけない存在であるはずのNPCなのに、倒してはいけない…?
「…まさか」
アノーニや脳無等、怪人や怪物にしか遭遇していないパラドだが…今の言葉を聞いて、ゲーマーとしての経験がある一つの答えにたどり着く
「お前が今まで戦ってるのって…人間か?」
「…え?」
「…え?」
ゲーム、例えば無双ゲームにおいて襲ってくる敵は人間の雑兵などがいるのが道理である。故に気付いたのだ。普通の人間が殺すのをためらう存在として、人間のNPCがいてもおかしくはないと
ユフィリアは唖然としてしまった…そのようなNPCがいるなんて予想外だったからだ。
「そうだよぉぉっ…!!黒い服着ている…お侍さん…!!」
「ど、どうしよう…!!」
結晶に閉じこまれて間もなくのタイミングだった。ミニティラが服を噛んで引っ張ったのは
「えっ…?」
振り向いた先にいたのは
鬼気迫る表情で鋭い殺気を向けてくる複数の剣士たちであった。
その剣士達の隊の名前は鬼殺隊、悪鬼滅殺を信念とする剣士達
だが彼らはNPCとしての在り方を全うするように造られた贋物、周りにいるプレイヤー達を鬼として認識し襲ってしまう皮肉にも彼らが憎む鬼のような存在にされてしまっている。
だがそれでも鬼と鬼殺隊で違う点は一つあった。
その剣士達の隊の名前は鬼殺隊、悪鬼滅殺を信念とする剣士達
だが彼らはNPCとしての在り方を全うするように造られた贋物、周りにいるプレイヤー達を鬼として認識し襲ってしまう皮肉にも彼らが憎む鬼のような存在にされてしまっている。
だがそれでも鬼と鬼殺隊で違う点は一つあった。
それは敵対する相手への殺意だ。
鬼殺隊は鬼によって家族等の大切な物達を奪われてきた、故に鬼に対して激しく憎悪を抱きながら戦い続けた人達が多いのが特徴である…一応例外がいないわけではないが
残念ながら今回朝比奈まふゆが対峙している存在は例外ではない、無限の城の戦いの先にて鬼の首領鬼舞辻無惨の猛攻柱の為に肉壁にならんとした異常者といえる隊士であった。
まふゆにとって運が良かったのは、彼らは柱稽古が行われる前の時の強さを再現された物であったという事であった。
もしも柱稽古が終わった後の、実際に肉壁になった時の強さであったのならば、幼児が変身した未熟なキョウリュウレッドでは対応出来ないで殺される結末になっていただろう、もっとも羂索達にとってはそうならないようにする為に強さを調整された結果なのだが
だが鬼に対する殺意、そして殺す為に命を賭ける想いは据え置きのままだ
そしてそれは今、何も罪がない純粋な少女に向けられてしまった。
(怖い………怖い………怖いよぉ………!!)
それぞれの隊士達の表情がお前は死ぬべき存在だ、お前は『悪い子』だと言っているように見えてしまっていた。
周りの紫色の霧に対して警戒する事も出来ない、このままの姿だと死んでしまうと考える事も出来ない、ただただ殺意を大勢の人達から向けられるという人生における初めての経験は彼女の行動する余裕を奪いつくしていた。
「うわぁっ!?」
すると耳元に響き渡るは獣電竜の吠え声、そのまままふゆの手元に飛び込んだ
「そ、そうだよね…ごめんね…えっと…変身しなくちゃ…!!」
ミニティラを振るえる手で動かし銃へと変える。そして
『ガブリンチョ!オーバーチャージ!』
紫の霧が覆う環境に不似合いな音楽が鳴り響く、そして
「きょ…キョウリュウチェンジ…!!」
『OH!マツリンチョ!カーニバル!イィィィヤッハァァァ!マツリンチョカーニバル!』
「ふぁ…ファイアー!!」
キョウリュウレッド・カーニバル、ブレイブの持ち主と獣電竜の絆の象徴ともいえる姿の戦士がこの世界に再臨した。
変身を完了させたのはいい、だがいざ銃を彼らに向けた時
脳内によぎるどんな幼き子でも学ぶ倫理…彼女はおかあさんからおしえてもらった事である…『人をきずつけるのはすごくわるい事である』という私達の世界でも常識である事が脳内によぎる
いや、訂正しよう、よぎってしまったというべきか
「え…えっと…わたしは…どうすれば…いいの…?」
あからさまに悪そうなドゴルドのような怪人や、レイドラグーンみたいな怪物なら普通に倒そうと思えただろう、そして殺し合いに乗った人物が相手なら、強そうな鎧をまとっていた人なら抵抗する為に撃つ事は躊躇わなかっただろう。
だが生身の人間を撃つとなると話は別になる
(うったら…うったら…死んじゃうよね…?わたしがひとをころしたら…おかあさんもおとうさんも…ギラおにいちゃん達も…かなしむよね…?)
記憶や記録からある程度の能力と容姿を再現した存在であるNPCと純粋な命であるプレイヤーの具体的な違いを認識するには…彼女は幼かったのである。
そうして撃つのを躊躇している間に…鬼殺隊は接近し…襲い掛かった、幼気な少女の頸を斬るという皮肉にも彼らが憎む悪鬼と言われるのに相応しい目的を果たす為に
いよいよ敵が間近に来た時、彼女が選んだ選択肢は逃走であった。
超人と化しているキョウリュウレッド・カーニバルとなっている肉体ならば人間としては上澄みだとしてもただの剣士相手に攻撃を避け続ける事は容易かった。
「おねがい…斬らないで…痛いよぉ…!!」
だがここで問題は避ける事は簡単だとしても、避け続ける事は決して簡単な事ではないという事である。
いくら超人だとしても精神は戦闘という行為どころか本格的に肉体を動かすという経験さえない子供、故に回避という行為さえ無駄な体力を消費してしまうのは明らかであり…体力は消費され続ける一方であった。
いくら超人だとしても精神は戦闘という行為どころか本格的に肉体を動かすという経験さえない子供、故に回避という行為さえ無駄な体力を消費してしまうのは明らかであり…体力は消費され続ける一方であった。
必死に振るわれる剣を回避した、必死に距離を襲ってくる相手から取ろうとし続けた、必死に私損ねたオージャカリバーで防御を取り続けた、必死に言葉で攻撃を止めてもらおうとした、その小さい身体の中にある体力をあるだけ振り絞りながら
その結果、パラドにNPCの事を指摘されるまで持ちこたえる事が出来たのである。
だが慣れない事による体力の消費、撃つべきか撃たないかを葛藤し続けた事による心労、そして何回かよけきれず剣が当たってしまった時のダメージ、斬らないでって言っても話を聞いてくれない悲しみ、その全てが幼い少女を限界近くまで追い込むには十分であり
体力が尽きるというタイムリミットは確実に近づいていた。
「だから…たおしちゃ…だめ…!!たおしたらぁぁぁ…!!悪い子になっちゃうよぉ…!!」
ユフィリアは彼女の話を聞いて、考えている事が…分かってしまった。そして人間のNPCを撃ちたくないという理由にも共感できた。
彼女がいる世界は精霊や吸血鬼等まふゆが生きている世界においてあり得ない存在がいるのは確かだが、倫理に大きな違いはなかったのだから
(どうすれば…どうすればいいのですか…!?)
躊躇う気持ちを無視して相手を撃つように指示するべき
そう頭の中で分かっているのに口が動いてくれない
そう頭の中で分かっているのに口が動いてくれない
人を殺す事の意味を知っているから、その一線はどのような人でも超えていい物ではない事を知っているから
ただ、今回は殺さなければいけない存在はNPC、あくまでも記憶から再現された存在…故にユフィリアが今同じ立場に立たされていたら間違いなく良い気分にはならなかったけれども生きる為に剣を人型のNPCだろうと振るっていただろう。
しかしまふゆは戦いも何も知らないはずだった少女、そしてNPCを倒さなければいけない敵と割り切るにはまだ未熟すぎている…!!これが意味する事、それは
『純粋無垢であり続けていられるはずだった少女に人殺しをさせる』
…そう指示する事と同じ意味を持つと理解してしまったからだ
(でも…でも…!!そう指示をしなければ…!!)
ただ、指示をしなければどうなるかも…このままNPCの手によって殺される末路を迎えてしまうだろう事も理解してしまっていた。
どうすればいいのか、今のユフィリアは軽くパニックになりかけていた…が
(そうです…!!)
ユフィリアは左手の甲に貼ってあるシールを剥がし、三画で構成された赤い入れ墨を思い出す。
(これで強化された魔法を使えば…!!)
クリスタルゲージを破壊し、まふゆの代わりに敵を倒せるのではないか
「令呪をも「やめろ!!」
その時声を上げたのは、側にいたパラドであった。
「お前それを使う意味分かってんのか!?3回使ったら死ぬんだぞお前が!!」
「…分かってますよ!!ですがこうでもしなければまふゆは助けられません!!」
「今まふゆが対峙している奴は対処出来ない相手じゃないから持ちこたえられてるんだろ!?だったら後はアイツに撃つ覚悟をさせるだけだ!!」
「子供に人間の形をした存在を撃たせるのですか!?」
「じゃあ本当に令呪を使わなくちゃいけない時が来たらどうするんだよ!?ドゴルドにお前が単独で対峙する時とかが来たら相打ち覚悟で戦うしかなくなるかもしれないんだぞ!?」
「………ッ!!」
「…分かってますよ!!ですがこうでもしなければまふゆは助けられません!!」
「今まふゆが対峙している奴は対処出来ない相手じゃないから持ちこたえられてるんだろ!?だったら後はアイツに撃つ覚悟をさせるだけだ!!」
「子供に人間の形をした存在を撃たせるのですか!?」
「じゃあ本当に令呪を使わなくちゃいけない時が来たらどうするんだよ!?ドゴルドにお前が単独で対峙する時とかが来たら相打ち覚悟で戦うしかなくなるかもしれないんだぞ!?」
「………ッ!!」
言葉に詰まってしまった
あの時、ドゴルドに致命傷になりうる重症を負った時に回復魔法を使ったのは生きたいと思ったから、勿論この殺し合いにおいても羂索達に叛逆した果てに生還したい気持ちは嘘ではなかった。
ただだからといってまふゆ、ギラ等この世界で仲間になった人達より自分の命が大事という訳では決してない、彼女達に命の危機が迫っているのならば令呪を使ってでも助けたいとは思っている。
…だが、今回の危機はまふゆがその気になれば乗り越えられるものであった。となると…
覚悟を決めてもらいましょう、彼女が撃つ事が出来れば令呪も使うべき時、本気で彼女の命を守らなければいけない時の為に温存出来ます
彼女にそのような覚悟をさせてはいけません!!今こそ使う時です!!その後の話をしている場合ですか!?
二つの言葉がユフィリアの中でせめぎ合う…その隙にパラドは
「まふゆ!!そいつらを撃て!!そいつらは本当の人間じゃない!!殺してもお前は人を殺した事にはならない!!」
まふゆへの指示を開始していた。
「え…?」
帰ってきた声はパラドの声、それも相手を撃つように促す行為であった。
「本当に…本当に良いの…?」
実際、言葉を伝えても何も行動を止めてくれなかった上、何で睨んで来るのかも聞いても何も応えてくれなかった…事から相手が普通の人じゃない事は流石に気づきはじめていた。
(でも…でも…!!)
それだけの理由で撃っていいのか…そう考える事を止める事は出来なかった。
「パラド!?何を言っているのですか!?」
パラドの言葉を聞き、ユフィリアはやめさせようとするが、次の瞬間パラドは己の左手の…令呪が一つ減っている手を見せつける
(これは…?既にパラドは令呪を使っていたのですか!?)
それに驚いている隙に
「早く撃たなくちゃお前は死ぬぞ!?楽しい冒険として終わらせたいって言ってたよな!?このまま殺される終わり方を迎えるつもりかよ!?そうなったらユフィリア達は悲しむ事は分かるよな!?そうして悲しませるという事は、ユフィリア達にとって悪い子になるって事、分かるよな!?」
再度説得の言葉を投げた
(………!!)
二回目の言葉はキョウリュウレッドに凄く響いた
(おねえちゃん達にとって…このままじゃ…悪い子になっちゃうの…?)
このままじゃ自分も死んじゃうのは、幼くても本能で分かっていた…そしてこのまま死んだら…
(悲しむ…よね…だってみんなあたたかい人たちなんだもん…!!)
だから…だから…
そういうとまずキョウリュウレッドは周りを見る…すると見つけたのは
このクリスタルゲージを展開した元凶であり、エリアF-8から離れたサモンライドされたNPCのうちの一人、仮面ライダーシザースであった。
彼女は先程まではシザースからも逃げていた、とりあえず撃ちたくないという思考が先行していたからだ。
だが…自分が生きる為には…!!
『グルリンチョ!!』
キョウリュウレッドはランダムアイテムの一つ、ガブリボルバーを取り出して、変身した瞬間脳内に流れ込んできた方法でガブティラ・デ・カーニバルと組み合わせ
『バモラ!!カーニバル!!』
赤く光る光弾を加えている銃を彼女なりに標準を合わせて
「じゅ…じゅうでん…カーニバル…フィニッシュ!!」
シザースに向けて発射、その光弾が赤いガブティラの頭部と化し、それはシザースの下に辿り着くやいなや噛み砕くと同時に爆発、シザースを消滅させたのであった
「これを…!!これを…!!」
キョウリュウレッドはこっそり願っていた、この堅そうな装甲を纏っていた人じゃないかもしれない存在に強力そうな弾を一回撃つだけで倒せて、その結果…クリスタルが消えてくれる事を…そして、そんな事は起きなかった
今のは人を撃つという行為において練習に過ぎなかった。そしてこれからが
「この人…達に…!!」
本番である。
「パラド…あなたは…!!」
ユフィリアは驚いた、元々あの子は悪い子になりたがらない様子だった。そしてそれをパラドは先程まふゆが言った言葉だけで読みとり攻撃をさせるように指示したのだから
それと同時に憤っていてもいた。彼女が一番嫌な事を利用して人間に攻撃させようとしているのだから
それについて言おうとした瞬間に
「見ろよ俺の令呪を!!」
改めて手の甲を見せてくると同時に…言葉を続けた。
「始まった時にあった令呪はゼインと戦った時に使わされた…使いたくなんかなかった、この殺し合いがいつまで続くのか、今後どんな敵が現れるのか分からないんだからな…そして使った時に分かった、確かに凄い力を使えるけど、だからこそ命を質にして制限されているんだってな…別にお前が使いたければ使えよ、ただ凄い力を使えるからこそ使い方は、使う時は本当に考えたほうがいいという忠告だ…あともう一つ言っておく、もしアイツが単独で生身のマーダーに会った時…銃撃を躊躇って殺されるというエンディング、迎えて欲しいか?欲しくないなら覚悟をこの機会につけさせるしかないだろ」
ユフィリアはそこまで言われてしまうと何も言えなかった。彼なりに自分の事を案じている事が分かったからだ、それを踏みにじってまで令呪を使っていいのかとも考えてしまったからだ。そしてその次の言葉に対しても悔しいが万が一彼女が一人になってしまった時に生きて欲しい気持ちがあった結果、同意せざるおえなかった、この先今の状況みたいに未知の事態になった時、躊躇うようなことが合ってはいけない時があるのも確かであったのだ。
パラドとしては手を組んでいる相手に無駄に令呪を使って欲しくなかったのだ、いつかゼインより強い相手と戦う事になるかもしれないのだから、更に
「…それにな
距離を開けていた剣士達がキョウリュウレッドの存在に気づき…横並びに囲みながら接近してきていた
「うたなくちゃ…うたなくちゃ…うたなくちゃぁ…!!」
身体の震えが止まらない、自分がやろうとしている事が恐ろしいから
照準がしっかり定まりそうにない、本当は人間を撃ちたくなんかないから
照準がしっかり定まりそうにない、本当は人間を撃ちたくなんかないから
それでも定めなければいけなかった、生きる為に、そして
「ギラおにいちゃん…ユフィリアおねぇちゃん…パラドおにいちゃん…!!」
彼らだけではない
「チェイスおにいちゃん達…!!」
短い時間しか会えていない、でもあの6人も良い人達だというのはわかっていた。ギラおにいちゃん達といい感じに別れていたんだから
ここで撃てなかったらパラドおにいちゃんの言う通り、あの人達みんなが悲しんでしまう、悲しませる悪い子になってしまう
だから
いよいよ飛び掛かってきた剣士達に向かって引き金を連続で引くしかなかった
目の前の【人間を殺す】悪い子になるしかなかった。
「やりたくないことさせるなんて…ひどいよぉ…!!」
こんな状況に追い込んだNPC達に恨み言を吐きながら
「まふゆ、大丈夫!?」
ギラとまふゆ、二人を囲っていたクリスタルと霧が解かれたのは同時であった。たまたまタイミングが合っていたのである。
故にギラは簡単にまふゆに近づけたのである
故にギラは簡単にまふゆに近づけたのである
「無事で…よか…」
駆け寄ったギラの瞳に映ったのは
結論から言えば我武者羅に、そして乱雑に数多く放たれた赤い光弾は鬼殺隊を全滅させていた。
技巧優れようとも所詮は敵を襲うしか能がないNPC、その上近距離攻撃しか出来ない存在なのだ。近づいている間に光弾に貫かれる末路は変わらなかったのである。
技巧優れようとも所詮は敵を襲うしか能がないNPC、その上近距離攻撃しか出来ない存在なのだ。近づいている間に光弾に貫かれる末路は変わらなかったのである。
出来上がったのは数多の部位が欠損した屍達、五体満足な死体はなく、夥しい血が少しずつ地面に染み出して、赤い円の範囲を広げていった。
(人間のNPCもいたのか…!?そしてそれをまふゆ…が…)
倒してしまった…もとい殺してしまっていた。
ギラが同じ立場になっていたら、きっと割り切れていただろう、ユフィリアと同じくいい想いはしなかっただろうけれども
ギラが同じ立場になっていたら、きっと割り切れていただろう、ユフィリアと同じくいい想いはしなかっただろうけれども
だけど
「あ…ああ…」
変身を解いたまふゆのハイライトが失せた涙が出ている目と、震えながら呆然としている姿は
「わたしが…目のまえの…人たちを…」
明らかに自分の行った行動に絶望しかけているようであった。
「まふゆっ!!!」
次の瞬間、ユフィリアはまふゆに抱きつくと同時に回復魔法を行使する。
おかげで隊士に斬られた傷はどんどん治っていく
おかげで隊士に斬られた傷はどんどん治っていく
…だが
「わたし…わたし…人をころ」
「殺してませんっ!!貴女はっ!!何も悪い事なんかしてませんっ!!」
「殺してませんっ!!貴女はっ!!何も悪い事なんかしてませんっ!!」
心の傷は魔力では治せなかった。だがそれでも彼女は、ユフィリアは諦めない
「だって…あんなに傷つけちゃったんだよ…血が出ちゃって…起きなくなっちゃったんだよ…それを…わたしが…」
「仕方がなかった事です!!貴女はせいとうぼう…自分の身を護っただけです!!撃たなければ…撃たなければ貴女は死んでしまっていました!!それにパラドが言っていたように、貴女が殺したのは本当の人ではありません!!だから貴女は…貴女は誰一人殺していません!!だから!!自分の事を悪い子なんて言わないでください!!」
「仕方がなかった事です!!貴女はせいとうぼう…自分の身を護っただけです!!撃たなければ…撃たなければ貴女は死んでしまっていました!!それにパラドが言っていたように、貴女が殺したのは本当の人ではありません!!だから貴女は…貴女は誰一人殺していません!!だから!!自分の事を悪い子なんて言わないでください!!」
必死に抱擁し死体をみえないようにした後に、かつてないほど無意識に感情をむき出しにしながらユフィリアは幼児に似合わぬ低音で己を呪い始めたまふゆの冷え切っていこうとする彼女の心を温めようとしていた。
「…俺は周囲を見てくる、お前はアイツらの側にいてやれ」
パラドはそう言いながら離れ…ようとしたが立ち止まってしまった。
あまりにも憤怒の表情を、オージャカリバーを握りしめながらギラが見せていたから
あまりにも憤怒の表情を、オージャカリバーを握りしめながらギラが見せていたから
ここまで怒ったのはヒルビルによってジェラミー達が汚名を被った事をヒルビル自身が侮辱しにきた時ぐらいかもしれない
ギラは怒っていた、幼い子供であろうと容赦なく襲い掛かろうとするNPC達に
人間のNPCを用意する事により、手軽に疑似殺人をさせる事でプレイヤーの倫理に大きな傷をつけようとしているケンジャク達に
そしてなにより、令呪を使ってでもクリスタルを破壊して助けに行くという行為をしなかった自分に
ギラには孤児院で沢山の子供と育ってきた記憶があった。その中で子供の純粋さ、愛おしさ、そして成長していく姿を見てきたのだ。
だからこそ幼いまふゆには戦いなんて知って欲しくなかったし…ましてや殺人なんてやらせるつもりなんて絶対になかった、だが現実はこれだ
だからこそ幼いまふゆには戦いなんて知って欲しくなかったし…ましてや殺人なんてやらせるつもりなんて絶対になかった、だが現実はこれだ
故に怒りを必死に抑えて、まふゆにかけるべき言葉を考えていたのだ。少しでもまふゆに降りかかってしまった呪いを払う為に
(…NPCが何で導入されたか、分かってきたな)
一つ目はドロップアイテムという建前で追加アイテムによる殺し合いの加速を促す為(例えば死んだ侍の死体から刀を回収する等)、二つ目はそのアイテムによる戦闘のやり方を理解する為のサンドバック、そして三つ目は…今のように殺し合いに慣れていない人を強制的に戦闘に慣れさせるための舞台装置
(少なくとも明確にプレイヤーを整理するのが目的であろうドゴルドとかの冥黒の五道化以外のNPCがいる理由はそんな所だろうな)
そう考えながらギラ達3人を遠くから見つめていた
(………)
想像した本の結末を自慢げに言った時、朗らかな笑顔を見せていたまふゆの死人のような表情を見た
まふゆを励ましているユフィリアの必死な表情を見た
まふゆに辛い思いをさせた自分自身に怒っているような気がするギラの怒りの表情を見た
≪どうだ永夢、こんなエキサイティングなゲーム、他にないだろ?≫
己が開催した仮面ライダークロニクル、それをプレイした人間の命をいともたやすく奪い、そして笑っていたかつての自分
(何で俺は今、あの時の自分をこいつらには知って欲しくないと思っているんだろうな)
この時湧き上がった気持ちに整理をつけられないまま、パラドは周囲を見る為に離れていった
121:交情Ⅲ:未知の力で~マジ・マジカ~ | 投下順 | 121:交情Ⅴ:優しい誰かがいてくれたセカイ |
時系列順 | ||
ギラ・ハスティー | ||
ユフィリア・マゼンタ | ||
朝比奈まふゆ | ||
パラド |