atwiki-logo
  • 新規作成
    • 新規ページ作成
    • 新規ページ作成(その他)
      • このページをコピーして新規ページ作成
      • このウィキ内の別ページをコピーして新規ページ作成
      • このページの子ページを作成
    • 新規ウィキ作成
  • 編集
    • ページ編集
    • ページ編集(簡易版)
    • ページ名変更
    • メニュー非表示でページ編集
    • ページの閲覧/編集権限変更
    • ページの編集モード変更
    • このページにファイルをアップロード
    • メニューを編集
    • 右メニューを編集
  • バージョン管理
    • 最新版変更点(差分)
    • 編集履歴(バックアップ)
    • アップロードファイル履歴
    • ページ操作履歴
  • ページ一覧
    • ページ一覧
    • このウィキのタグ一覧
    • このウィキのタグ(更新順)
    • このページの全コメント一覧
    • このウィキの全コメント一覧
    • おまかせページ移動
  • RSS
    • このウィキの更新情報RSS
    • このウィキ新着ページRSS
  • ヘルプ
    • ご利用ガイド
    • Wiki初心者向けガイド(基本操作)
    • このウィキの管理者に連絡
    • 運営会社に連絡(不具合、障害など)
ページ検索 メニュー
真贋バトルロワイヤル
  • ウィキ募集バナー
  • 目安箱バナー
  • 操作ガイド
  • 新規作成
  • 編集する
  • 全ページ一覧
  • 登録/ログイン
ページ一覧
真贋バトルロワイヤル
  • ウィキ募集バナー
  • 目安箱バナー
  • 操作ガイド
  • 新規作成
  • 編集する
  • 全ページ一覧
  • 登録/ログイン
ページ一覧
真贋バトルロワイヤル
ページ検索 メニュー
  • 新規作成
  • 編集する
  • 登録/ログイン
  • 管理メニュー
管理メニュー
  • 新規作成
    • 新規ページ作成
    • 新規ページ作成(その他)
      • このページをコピーして新規ページ作成
      • このウィキ内の別ページをコピーして新規ページ作成
      • このページの子ページを作成
    • 新規ウィキ作成
  • 編集
    • ページ編集
    • ページ編集(簡易版)
    • ページ名変更
    • メニュー非表示でページ編集
    • ページの閲覧/編集権限変更
    • ページの編集モード変更
    • このページにファイルをアップロード
    • メニューを編集
    • 右メニューを編集
  • バージョン管理
    • 最新版変更点(差分)
    • 編集履歴(バックアップ)
    • アップロードファイル履歴
    • ページ操作履歴
  • ページ一覧
    • このウィキの全ページ一覧
    • このウィキのタグ一覧
    • このウィキのタグ一覧(更新順)
    • このページの全コメント一覧
    • このウィキの全コメント一覧
    • おまかせページ移動
  • RSS
    • このwikiの更新情報RSS
    • このwikiの新着ページRSS
  • ヘルプ
    • ご利用ガイド
    • Wiki初心者向けガイド(基本操作)
    • このウィキの管理者に連絡
    • 運営会社に連絡する(不具合、障害など)
  • atwiki
  • 真贋バトルロワイヤル
  • 僅かな光しかなくたって

真贋バトルロワイヤル

僅かな光しかなくたって

最終更新:2025年10月07日 20:38

sinjitsurowa

- view
だれでも歓迎! 編集
ホットラインに通知が来た。
龍園達がそれに気付いたのは、テレビ局跡地を発ち間もない頃。
定時放送まではおよそ一時間の猶予があり、ましてこの機器は殺し合い専用で用意された物。
日常生活で用いるデバイスと違い、主催者直々の通達以外で反応は起きない筈だ。
不審に思いつつも、一旦移動を中断。
三人揃って確認作業を行った所、誤作動ではなく画面には未知の映像が映し出される。

2代目ゼロ。
名簿にそう記された、性別不明のミステリアスな人物。
黒装束と仮面に身を包み、どこか芝居がかった。
それでいて自然と意識が引き込まれる、言葉の魔力の持ち主。
歴史上名を馳せた義賊を彷彿とさせ、巨大権力への抵抗組織の長と言うのも納得である。

そんなゼロの放送が終わったかと思えば、間髪入れずに皇帝による四度目の放送。
後者はこれまで同様、テレビ回線を通じて行われ付近の民家から確認が取れた。
これまでの放送内容と毛色が違う、というか向こうも向こうで思わぬアクシデントに見舞われていたが。

「……どう思う?」

こいつらは何をやっているんだろうかと、そう言わんばかりの顔をテレビ画面から戻し。
数秒の沈黙を挟み姫和は同行者へ問い掛けた。
二人の男の内片方、伏黒はノーコメント。
必要を感じたら要所要所で口を挟むが、基本的には依頼人の意向に従う方針だ。
もう片方、龍園も暫し考え込む仕草を見せた後に口を開く。

黒の騎士団とは如何なる組織か、詳細に語られたがそこは深く掘り下げない。
元々ブリタニアが存在しない、エリア11と名付けられた日本を知らないのが龍園達だ。
そういう世界があり、先代ゼロから引き継げるだけの素質と能力を2代目は有する。
ゼロの放送では語り切れなかった部分は、ルルーシュが詳細な捕捉を入れる形となり。
騎士団、ひいてはルルーシュがという少年の戦いの軌跡。
それらが余す事無く語られ、ベールに包まれていた過去を曝け出したのである。

大なり小なり驚きや、興味を引く部分があるのは否定しない。
しかし本題となるのはブリタニアや黒の騎士団云々に非ず、殺し合いと関係する情報。
自分達の命が掛かった現状を、変えられるカードの存在。

「大博物館の話が本当だってんなら、価値のある施設だわな。大胆な放送をやれんのも、まあ納得だ」

各エリアではなくランドマーク限定とはいえ、一瞬で移動が可能になるメリットは非常に大きい。
移動時間の大幅な短縮のみならず、場合によっては転移先で待ち伏せし網を張れる。
大博物館が襲撃を受けた場合、緊急避難の手段としても活用可能。
ランドマークへのアクセスが片道通行か、往復可能かでまた話が違って来る部分もあるが。
だが一番は、羂索達へ繋がる可能性を秘めたルートの存在だろう。
もし事実だとすれば、ゼロ達は最も早く運営側に辿り着く道を確保した成果を出した事になる。

参加者に関連する施設以外も調べる価値が生まれた点についても、納得はいく。
レンから聞いたソードアート・オンラインの開発者。
ゲームクリエイターの茅場なら、そういったギミックを細かに仕掛けても不思議はない。

「総司令官、とかって野郎には何とも言えねぇ。浅垣と話がやれてりゃ、多少は違ったかもしれないがな」
「奴の口振りから察するに、トラブルの火種になるような者らしいが……」
「んなもんルルーシュがいる時点で今更だろ。ま、クリーンさを売りにしてるって点はルルーシュとやり方が違うけどよ」

黒き神相手に共闘した女(実際は男)と、総司令官なる者の間にどういった衝突が起きたか。
情報交換どころか自己紹介すらままならなかった以上、詳細は全く知らない。
しかし、総司令官が何かしらのトラブルを引き起こしかねない者とは察せられる。
そういった者の存在を先んじて明かすメリットは二つ。
総司令官の存在を隠し、後々になっていらぬ不和を引き起こすのを避ける為。
もう一つは、隠し立てをせずに自分達の情報を伝える誠実さのアピール。
ゼロの善性が誤魔化しを嫌ったとも考えられるが、一定の効果があるのもまた事実。
龍園が知る中じゃ、一ノ瀬などはゼロのやり方を支持するだろう。

そして恐らく、ここから先こそゼロが最も伝えたかった内容。

「皇帝坊主に反感持つ奴もいて当然だが、あそこまでハッキリ中指立てるとはなぁ」
「あれぐらいキレられんのも込みで、参加者を煽ったんだろ。でなきゃただの考え無しだ」

感心か呆れか、中々に面白い物を見たと甚爾は零す。
尤も、あえて自分へ敵意が向くよう仕向ける事こそルルーシュの策。
真っ向から対立する者が現われるのは、むしろ狙い通りと言えよう。
そのパフォーマンスが、全参加者への一斉通知とは大胆な方法とは驚きだが。

「仮面ライダーへの名誉に関しちゃノータッチだ。それ言ったら、伏黒なんかもアウトになる」
「おう。今更報酬を手放せってのは聞けないからな」

アクセルドライバーを始め、変身ツールや武器を報酬に使ってるのだ。
仮面ライダーを都合良く利用してる点は、自分もどうこう言える立場じゃないので触れずにおく。

「松坂についても俺らからどうこう言う気はねぇ。まあ……ルルーシュの怒りを買ってもおかしくないとこはあったがよ」

さとうに手を組むよう提案を持ち掛けた際、返事はイエスじゃなくスタンガンの一撃だった。
個人的な苛立ちを抜きにしても、自分達と手を切ったのは向こうが先。
別に、黒い神相手に一人だけ逃げたのを責めるつもりはない。
ただ自分だけ逃げ延びて、ルルーシュとの接触を選んだのはさとう自身。
選択の果てに力尽きたのなら、そこへ口を出す気はない。
ルルーシュの糾弾の真偽は別にしても、龍園からすれば「あの女ならやりかねない」というのが正直なところだ。
複雑な面持ちを隠せない姫和とは反対に、さとうの死には既に切り替えてあった。

「他の奴らには傍迷惑な話だろうが、マリヤって女がバグスターウイルスと無関係なのは分かり切ってた。それ抜きにして、ゼロはルルーシュのやり方が気に食わねぇんだろうがな」
「私の勝手な印象かもしれないが……彼女に関しては打算とは関係無い怒りがあったように感じる」

最初の放送から余り時間を置かず、一行はグラファイトと戦闘になった。
その際バグスターとも口にしており、含みを持たせた言い方からしてバグスターウイルスに関する情報を持っていたのはほぼ確定。
ついでに言うなら、名簿の並びでグラファイトとマリヤ・ミハイロヴナ・九条は大きく離れている。
バグスターや仮面ライダーと一切無関係だと、察するのは難しくない。
とはいえ、グラファイトと遭遇済の龍園達だから気付けたのであって他の者も同様とは言えまい。
そこへの糾弾とは別に、ルルーシュへの個人的な怒りが含まれてるのも気のせいではないだろう。

「で、だ。ゼロの放送も聞くだけの価値は確かにあった。だがアイツにとっては内容以上に、ルルーシュへ喧嘩を売ったって事実そのものが本命だと思うぜ」

戦闘中などの切羽詰まった状況か、ホットラインを紛失していない限り。
全ての参加者がゼロの放送を確認し、結果何が起きるか。
まず第一に、ルルーシュへの対抗勢力が集まる取っ掛かりとなる。
一定の警戒こそされるだろうが、ルルーシュに反感を持つ者の中にはゼロへ同調するプレイヤーが出てもおかしくない。
例を挙げれば、仮面ライダーガッチャードこと一ノ瀬宝太郎。
最初の場で見せたように、強い善性の持ち主である彼がゼロの放送をどう感じるか。
仮面ライダーの名を利用する行為へ憤りを露わにし、その他これまでのやり方を弾劾。
心情的にもゼロへの好感度の方が高くなるのは自然な流れだ。

ノワルの撃破による闇檻の奪取や、コルファウスメットとの戦闘を経てキシリュウジンを確保。
留まるところを知らないルルーシュの戦力増強へ、歯止めを掛ける為にも自分達への協力を促した。

無論リスクはある。
放送を聞いたのは善良な参加者のみならず、殺し合いを良しとする者もだってそう。
良くも悪くも注目の的になったのは、テレビ局で三度に渡る放送を行ったルルーシュと同じ。
向こうとの違いは、襲撃を仕掛ける者の中にそのルルーシュが含まれる可能性も大いに有り得る事。

「普通なら命知らずの無謀な連中と言う所だが。大博物館を拠点にしてるってのが、ルルーシュにとっても頭の痛い問題だろうな」
「っ!そうか……大博物館には羂索達に繋がる仕掛けが存在する……」
「ブラフって線があるにしろ、確証も無しに火力でごり押しせば馬鹿を見るのはアイツの方だ」

ランドマークへのアクセスは便利だが、必ずしも手に入れなければならないものではない。
だが羂索達の根城へアクセスできる可能性の装置は、替えが利くかどうか賭けになる。
ゼロが真実を口にした否か、分からないまま下手に戦闘を仕掛け。
果てに装置が失われるとあっては、ルルーシュからしても痛手どころの話ではなくなる。

「だからああいう言い方で挑発したってことか。皇帝坊主と同じ世界の人間なら、家庭事情を知ってたとしてもおかしくねぇ」

甚爾が思い出すのは、自身の殺意を最大まで引き出した五道化の言動。
凶星病理と名付けられた運営側の駒を殺すのは確定事項だが、自分の例があるだけに。
妹や先代皇帝…恐らく父親の名を出され、ルルーシュの地雷を踏む事までがゼロの作戦と理解出来た。
憤怒へ突き動かされたルルーシュが、鉄華兵団の殲滅へ乗り出せばどうなるか。
大博物館が戦場になり、主催者へ繋がる装置まで被害に遭う可能性も増大。
打倒主催者を掲げる者は勿論、脱出を優先する参加者からしても防ぎたい緊急事態だ。
大博物館防衛の為に、必然的にゼロの味方になる者が集まるに違いない。

「当然、ルルーシュも鉄華兵団の狙いには気付いてんだろ。だからカウンターを食らわす為に、緊急で放送をやったってとこだ」
「その結果が生放送中のトラブルってやつかね。歴史に残る放送事故だろありゃ」

ヘラヘラと笑う甚爾だが、龍園と姫和からしても呆れやら何やらを抱かざるを得なかった。
よもやこういった形で、あえて敵意と反感を集めて来た理由を口にするとは向こうも予想していなかった筈。
といっても、考えてみれば遅かれ早かれ起きた事かもしれない。
ルルーシュに協力してるからといって、やり方に賛同してるかは別の話。
流石に放送途中で、痴話喧嘩もかくやの光景を見るとは思わなかったのが三人の本音である。

「ゼロの意図した形じゃないだろうが、ルルーシュの方もあれこれ暴露しちまったんだ。良くも悪くも、あいつへの印象を変える効果はあった」

自分自身があえて脅威となり、羂索へ抗う者達の団結を促すという。
本来辿る筈だった未来における、世界をリセットした一世一代の策にも通じる方針。
我こそが全能者とでも言わんばかりの態度をかなぐり捨てた、感情的な素の面。
キャルの乱入によって、ルルーシュという少年への見方は参加者間でも変化が起きるだろう。
当のルルーシュ本人からすれば、想定外だとしてもだ。

「とにかく、こっちは先に綾小路のとこへ行くぞ。今の放送で無反応とはなってねぇ筈だ」

手を組むかどうかはまた別として、ゼロ達との接触も方針に付け加える必要があるかもしれない。
しかしまずは当初の目的通り、アッシュフォード学園へ行き綾小路の顔を拝む方が先。
放送を見たルルーシュから指示を受けているかもしれず、それも含めて確かめに行く。

思わぬ足止めを食らったが、移動再開すべくハッチを閉め、

「出発はまだお預けみたいだぜ?大将」

一点を見つめながら言う術師殺しに、再び動きを止める事となった。


◆◆◆


「…………おい」
「言うな、こっちも頭が痛くなって来たとこだ」

たった二文字へ、これでもかと不機嫌さが籠められていた。
少女らしからぬドスの低い声を掛けられれば、大の男でも怯むのは間違いない。
普段からガラの悪い口調なれど、今は殊更に苛立っている。
アンクがそのような態度になるのは無理からぬ事と、リュージも理解は出来るが。

正午少し前にアッシュフォード学園を出発し、早くも3時間以上が経過。
何か収穫があったかどうかは、アンクの様子がこれ以上ないくらいの答え。
参加者との遭遇なし、ドロップ品の獲得もなし、それでいてガソリンの残量はしっかりと減る。
言ってしまえば、大して面白くもないドライブで時間を潰した。
これで笑顔になれるのは余程の能天気であり、残念ながら二人はその枠組みに入らなかった。

(慎重になり過ぎちまったか?)

時間の浪費へため息を一つ零し、失敗の理由を思い浮かべる。
警戒心を持つのは至極当然であるも、必要以上に気を張っては悪手だ。
正に自分達がそれだろう。
規格外と言う他ない存在を知り、戦力的にも安定とは言い難い。
トランクスか、或いは家康並の強さの持ち主が同行してるならともかく。
自分とアンクの、意識の戻らない姫和を抜かした実質二人だけでは。
仮に宇蟲王クラスの参加者とぶつかった場合、戦闘どころか逃げれる自信すら小さい。
そういった為に移動一つ取っても、おっかなびっくりとなってしまい。
時間が掛かった割に、散々な結果で今に至る。

「……そいつの傷、少しは治ったか?」
「ああ、“平和”に時間を過ごしたからな」

鼻を鳴らし、皮肉を籠めて吐き捨てる。
成果なしの現状には大層不満だが、数少ない慰めがあるとすれば。
じっと座りっ放しの甲斐もあり、憑依中の肉体に余計な負担が掛からなかったくらいか。
リュージからの質問への答えはYESだ、放送前よりは傷も塞がっている。
失った右腕だけは、グリードの生命力でも元通りにいかないが。

「ってことは、案外そいつが起きるのも時間の問題かもな」

ここ数時間でガラの悪さにはすっかり慣れ、今更食って掛かりもしない。
やくそうを一枚だけ口に放り、民家で手に入れたミネラルウォーターで流し込む。
宇蟲王相手に負った傷が幾分和らぐのを感じ、集中力を奪う痛みも薄れる。
もっと食べれば全快だろうけれど、貴重な回復手段だ。
残りは温存しておく。

顰めっ面の同行者が纏う空気が変わったのは、直後の事だった。

少女の肉体を借りていても、備わった感覚は人間の限界を優に超える。
接近する気配を察知し、助手席をドアも開けずに跳び下りた。
突然の奇行に目を白黒させる程、リュージも微温湯に浸かってはいない。
アサルトライフル片手に降車、援護の準備はとっくに完了。

「ハッ、こいつかよ」

姿を見せた存在は、アンクの記憶にあるのと寸分違わない姿。
だからといって、感動の再会にはならなかった。

人に近い外見、と言って良いのだろうか。
肌の色こそ灰色なれど、女性的な魅力を醸し出す肢体。
ガーターストッキングに足を通した下半身に、胸の膨らみを見せ付けた衣装。
世の健全な男性なら、血走った目で興奮を抑えられないだろうがしかし。
化け猫のような顔面が、明確な異形だと伝えて来る。

この怪物の名はシャムネコヤミー。
とある優秀な外科医の欲望から生み出され、仮面ライダーオーズに撃破された個体だ。
短くも鮮烈な日々の記憶の1ページとして、その最期はアンクの記憶に刻まれている。

「知り合いか?なら回れ右して失せるよう説得、ってのは無理か」
「ああ、無理な相談だ。俺にもこいつを見逃す気はない、倒せば旨味がある」

定時放送前に戦ったNPCと違い、ヤミーを撃破すればセルメダルが手に入る。
自身の核を始め、コアメダルが何枚ばら撒かれてるかも不明な現状。
少しでも自身の糧にし、強化に繋げておきたい。
何せ自身が潰そうとしている催しは、完全体のグリードですら苦戦必至の怪物が跋扈する魔境なのだから。

アンクの戦意を感じ取ったのか、或いは単にプログラムへ従ったのか。
低く唸りながらシャムネコヤミーが疾走、標的目掛けて右腕を振り下ろす。
黒いグローブを填めた五指に人の特徴は無く、代わりに生え揃ったのは鋭利なメス。
命を救う手術ではない、命を刈り取る凶器としてアンクを襲う。

「カザリの奴、テメェが造ったヤミーの管理も出来ねぇのかよ」

今は亡き同胞へ一言吐き捨て、右腕を翳す。
同時に姫和の肉体を、赤のコアメダルの王本来の姿へ変化。
グリードの力を解放した以上、ヤミー一匹恐れるに足りない。
爪を振るってメスを弾き、反対に左拳を叩き付けた。

怪物同士の肉弾戦を呑気に観戦、等と見物へ徹するつもりはリュージにない。
照準を合わせ、引き金を引く瞬間をじっと見極める。
誤ってアンクへ命中させるど素人ではなく、冷静にその時を待ち、

「……?何だ、このお……と……」

不意に聞こえた、金属同士が擦れるのに似た音。
随分前に、テレビ放送していた映画で聞いた覚えがある気がしないでもない。
眉を顰め振り返り、秒と経たずに頬が引き攣った。

白い巨体に備わる、銃火器をを構えた四本の巨椀(アーム)。
下半身に足は見当たらず、代わりに地面を走るのはキャタピラ。
奇妙な音の正体は、移動の際の回転音だと理解。
だがそんな些事以上に目を引く、まるで子供の落書きを思わせる顔面。
胸部へ描かれたマークはキヴォトスが誇る三大学園の一つ、ミレニアムサイエンススクールの校章とリュージは知らない。

前衛的(アバンギャルド)な兵器の出現に、リュージも言葉に詰まる中。
目らしき部分に射抜かれ、マズいと直感で察知。
全身をバネに変える勢いで飛び退くのと、左腕の突撃銃が弾を吐き出すのはほぼ同じタイミングだった。

「うおおおおおおおおおおっ!?」

ダーウィンズゲームのプレイヤーになってから、銃撃戦など飽きるくらいに経験済。
しかしこれ程の、自分の身長をも超えるビッグサイズのアサルトライフルで撃たれるのは初。
被弾を許せば痛いどころじゃ済まない、ミンチという末路へ一直線だ。
地面が削り取られる光景へ冷や汗を掻くが、回避を延々と続けても事態に変化は訪れない。

「っぶねぇ…!」

近場の建造物の物陰に隠れ、即席の盾に利用。
反撃とばかりにこちらも引き金を引き、軽快な音を立て銃弾が喰い破らんと迫る。
巨体故に当てるのは非常に簡単、されど向こうが命中を許すかはまた別。
右腕のシールドを翳し防ぎ、反対にバズーカ砲を取り出すのが見えた。

「冗談にしたって笑えねぇぞ……!」

焦りを露わに民家から急ぎ離れたのは、間違っていない。
直後、爆撃を受け吹き飛んだ家“だったもの”には目もくれず。
足を止めずにアサルトライフルを撃つも、やはりと言うべきか巨大な盾に遮られる。
空の弾倉を放り、リロードを5秒と掛けずに終えた時。
キャタピラが轟音を立て、巨体がリュージ目掛け突進を仕掛ける。

「ざけんなよクソ運営が!下手な参加者より厄介なNPC置いて、殺し合いもクソもあるかよ!」

無限に出て来る運営への文句もそこそこに動く。
地面へダイブするように大きく跳んで躱し、立ち上がるやボルトスワローを装備。
爆発機能付きの矢をセットしながらも、これで倒せるか自信は無い。

(ぶっつけ本番だが、アレを使うしかねぇってことか……)

尤も、打つ手なしと断じるには些か気が早い。
思い浮かべるのは市街地の死体から回収した、支給品の内の一つ。
詳細を確認する前に薫達との遭遇やNPC達の出現、そして宇蟲王の蹂躙が起きたのもあってか。
あの時は死蔵されていたが、後になってようやっと把握。
もし宇蟲王との戦闘時に使っていればと、後悔を含み思わないでもないがしかし。
使った所で勝てる相手かと言うと、残念ながら首を横に振る他ない怪物だ。
胸中へ染み出す苦い思いもあえて無視し、目の前の戦闘に意識を引き戻す。

ボルトスワローを兵器の足元に撃ち、踵を返し距離を取る。
黙って見逃す相手でないとは百も承知。
キャタピラで踏みつけた箇所の爆発により、動きが僅かに止まった。

足止めに成功したなら上出来だ、後は取り出したアイテムが使い物になるか否か。
アサルトライフルを仕舞い、代わりに握るのは緑色の小箱。
コレの詳細を知る男は既に脱落し、仮に会えても素直に教えた可能性は低い。
現実に起きなかったたらればの話は知る由もなく、建造物の前へ移動。
自分自身を映し出すガラス窓へ、『カードデッキ』を翳せば即座に変化が起きる。

「変身」

防弾服の上に装着されたバックルへ、緑色の小箱を填め込む。
瞬間、鏡像が重なり合いリュージの姿は一変。
全身を覆い隠すボディスーツは、カードデッキと同じ色。
上半身と肩部には重厚な装甲を纏い、防御性能が飛躍的に上昇。
フルフェイスの頭部には銀のバイザーを装着し、近未来チックな戦士への変身を完了。

名は仮面ライダーゾルダ。
13人のデッキ所持者によって行われる、願いを懸けたライダーバトルの参加者の一人。
北岡秀一が不在の舞台に置いて、力を振るう機会を得た。
脱落済のプレイヤー、浅倉威が最も殺したいと願う男のデッキだと教える者はここにおらず。
代わりとばかりに無数の弾が襲来、リュージの変化を気にも留めず殺そうと迫る。

「……予想以上だな」

ポツリと呟く声色に、焦りは全くと言って良い程宿っていない。
己目掛け襲い来る銃弾一発一発が、ハッキリ見える。
撃たれる前じゃない、撃たれた後に弾を避けるという。
如何に鍛えた人間でも不可能な芸当を、平然とやってのけた。

装甲を纏ってるとは思えない、軽やかな動作で躱す。
弾が民家の壁を削る音を聞きながら、右手は新たな武器を構える。
カードデッキ同様のエンブレムが描かれた、中型銃タイプの専用装備。
マグナバイザーが弾丸を放ち、起動兵器へ喰らい付く。
1分という限られた時間で合計120発を発射可能な、片手タイプの銃とは思えぬ性能を発揮。

敵が大盾を翳すよりも早く、弾が胴体を喰い千切った。
装甲を削られ火花が散り、内部に隠されたパーツが剥き出しに。
この光景に最も驚いてるのは、銃を撃つリュージ本人だ。
重火器を用いず頑強な兵器にダメージを与え、尚且つ撃った際の反動をほとんど感じない。
挙句既に30発へ届くかという数トリガーを引いたのに、一向に弾切れの気配が起きないとは。

「思った以上に“当たり”の支給品、ってか?」

身体機能の劇的な強化と耐久性の向上。
おまけに得意とする銃火器を、残弾数を無視し使用可能。
仮にダーウィンズゲームで敵対プレイヤーがこれを使っていたら、クソ運営がと罵るのは我が事ながら想像に難くない。
誰でも手軽に強化でき、殺し合いにお誂え向きの装備や能力を複数搭載。
ライダーバトルとやらの詳細は知らないが、運営がロクでもないのは理解出来る。

細かい背景はともかく、役立つ武器なのに疑いはない。
一方的な的になるのを嫌った敵が、ここで次の手に出る。
多少の被弾を捨て置き突進、大盾を鈍器のように振り回す。
余波だけで吹き飛ばされかねないが、ゾルダに変身中な為無問題。
地面を転がり距離を離し、腹部へと手を伸ばす。
使える装備はマグナバイザーのみに非ず、カードを装填し読み込ませる。

『GUARD VENT』

「こっちが盾は使えないなんざ、言った覚えはないからな」

契約モンスターの腹部を模した盾を左手に装備し、アサルトライフルの掃射を防御。
数百発に届く数が当たったにも関わらず、僅かな亀裂も生まれない。
頑強さへの感心はそこそこで済ませ、マグナバイザーを的確に命中させる。
顔面部分から火花を散らすも未だ戦闘続行の意思を見せ、バズーカ砲を再び構えた。

「そいつを待ってたんだよ!」

マグナバイザーを地面に放り、ボルトスワローを向ける。
狙う先は胴体や頭部ではない、バズーカ砲の銃口部分。
発射の寸前で爆弾付きの矢(マイン)が侵入、直後起きるは大爆発。
武器諸共腕が吹き飛び、動作に大きな鈍りが生まれた今がチャンス。

『SHOOT VENT』

無機質な電子音声が響き、上空から降って来た武器をキャッチ。
ゾルダの身の丈をも越す長大な銃、いや大砲を両手でしっかりと握り締める。
先んじて召喚済の盾を組み合わせて、反動緩和の台座に。
敵の復帰を待ってやる、奇特な性質は持ち合わせていない。
自我無き機械故に命乞いは無く、仮にあっても聞き入れはしないだろう。

「これ以上付き合い切れるかよ、ガキの自由工作野郎!」

吐き捨てた悪態を掻き消す轟音を立てて、砲弾が撃ち込まれる。
悪足掻きで翳した大盾をも貫き、盛大に爆散。
ミラーモンスターも一撃で仕留める威力を受けては、無事で済む筈がない。
シャーレの先生とゲーム開発部を一度は敗走へ追いやった、オリジナルの機体だったらまだしも。
複製NPCな為に性能も幾分劣化は免れず、散らばった部品が末路を虚しく伝えた。

「……で、こんだけやって戦利品は無しと」

視界に飛び込むのはスクラップが一台のみで、ドロップ品は落ちていない。
弾と体力を使わされこの始末は辟易するが、カードデッキの試運転と思えば一応意味はあった。
疲れたように振り返ると、丁度向こうも決着が付いたらしい。

「ま、NPCならこんなもんだろ」

特に感慨を抱いた風もなく、冷めた感想を一つ零し腕を引き抜く。
アンクの手刀に貫かれたシャムネコヤミーは、身を震わせ崩れ落ちた。
完全体でないと言ってもグリードの力が健在な以上、今更ヤミー如きに遅れは取らない。
青のコアメダル三枚を取り込み、殺し合い開始当初よりも強化が叶った状態なら尚更。
たとえ自分を構成する核でなくとも、コアメダルが相応に力が増す。
でなければ嘗ての戦いで、グリード達は互いのコアメダルを虎視眈々と狙っていなかっただろう。

血や臓物は流れず、シャムネコヤミーは数枚のセルメダルを残し退場。
薄々予想はしていたが、前に映司が倒した時よりも手に入るメダルは非常に少ない。
所詮はNPC故、こういった面でも調整を受けたのか。

不満が無いとも言えないがメダルはメダル、手に入るなら越した事はない。
吸収され、あっという間に体内へ溶け込んだ。
肝心の他のコアメダルは誰の手にあるのやら、親切に答えてくれる者は周りにいない。

「あ?急に何だ?」

代わりに知らせたのは、ホットラインの通知。
まさか気付かぬ内に定時放送の時間になったのかと、そう思うも予想は大外れ。
午後5時前で主催者からの通達はまだ先、しかし誤作動でもない。
訝し気にアプリを起動し、二人も見る事となった。
仮面の反逆者による、悪逆皇帝への宣戦布告を。

「おい、どうすんだこいつ?」
「どうするっつってもなぁ……」

フルフェイスの仮面越しに後頭部を掻き、リュージは返答に詰まった。
頭の回転が鈍いのではなく、未知の情報をいっぺんに寄越され過ぎて反応に困る。
生憎こっちは、桐藤ナギサなる者の告発があったのすら初耳。
脳内を落ち着かせる時間がもう少し欲しく、しかしそれは叶わない。
グリードの聴力が付近の建造物内、各所へ設置されたテレビが流す音声をキャッチ。
もしやと思い確認すると案の定、参加者にはお馴染みと化しつつあるルルーシュの放送が始まっていた。

「おい、こいつもどうすんだよ」
「俺が聞きてぇよ……」

自分達は何を見せられてるんだろうかと思いながらも、思考を休ませる暇はない。
外からの気配を察知し、真っ直ぐ自分達の方へ向かって来てる。
そう分かれば考えるのも中断せざるを得ない。

「チッ、また来やがったな」

騒ぎを聞き付けたのか、終わった傍から次のNPCが追加。
均整の取れた体型だったシャムネコヤミーとは正反対に、でっぷりと肥えた異形。
たるんだ腹の振動に合わせ、針のような毛が震える。
先のシャムネコヤミーと同じく、セルメダルの投与で生まれた欲望の怪物。
ネコヤミーが獲物を見定める瞳で、アンク達を睨みつけた。

「放任主義でも気取ってんのか?カザリの奴は」
「さっきのメス猫と同じく顔見知りなら、休憩させろって言い聞かせてもらいてぇんだがな」
「俺の答えもさっきと同じだ。大した量じゃないが、メダルが手に入るならとっとと潰すぞ」

言いながらもセルメダル入手への喜びは宿っておらず、苛立ちが含まれるのは明らか。
口を開けば馬鹿の一つ覚えでメダルメダルとほざく同胞へうんざりし、一歩引いた位置で見ていたのが過去のアンクだ。
必要だと分かってはいても、たかが数枚のセルメダルだろうと貪欲に集めねばならない。
同胞達をどうこう言えない今の自分へ、舌打ちも零したくなる。

アンクの内心もネコヤミーには一切無関係。
飢えた獣のように襲い掛かり、

「悪いが、そいつらは雇い主様の大事な商談相手だ。金(ブツ)だけ置いて帰ってくれや」

聞き覚えの無い声が響いたのも束の間。
ネコヤミーへ踵落しが炸裂、頭頂部から股を真っ二つに。
悲鳴すら上げられずに、セルメダル数枚が散らばった。

「銀貨、には見えねぇな。殺せば小遣いを落とすお得な呪霊なら、俺もちったぁ懐があったまるんだがな」

仮面ライダー、で良いのだろうか。
バイクのハンドル状のベルト、真紅の分厚い装甲。
共にアンクの知るライダーには存在しない特徴。
セルメダルをまじまじと眺めるも、興味が失せたのかすぐに放る。
ついでの軽い動作で腹部の機械を操作し、平然と生身を晒す。
いきなり現れるや苦も無くネコヤミーを倒した男に、見覚えはない。
顔も名前も知らない相手へ、分かるのはただ一つ。

迂闊に動いたら最後、瞬きを終える間もなくネコヤミー同然の末路を辿る。
そう理解させるだけの、尋常ならざる存在感が放たれていた。

(おいおい……どんだけ参加者集めに気合入れたんだよ運営連中は……)

仮面の下で、リュージの頬を冷や汗が滴る。
外見は鍛え抜かれた人間の男だが、単なる筋肉自慢とどの口が言えるのか。
死と隣り合わせのデスゲームを生き抜いたからこそ、ハッキリ分かる。
自分達の前にいるこの男、間違いなくDゲームの上位ランカーに並ぶどころか凌駕する怪物。
仮面ライダーの変身を解いた状態で尚、肌がヒリ付くプレッシャーは健在なのだ。
宇蟲王やトランクスといった規格外を無視すれば、優勝候補と言われても頷いてしまう。
マグナバイザーを意識しつつも、早まった真似は出ないよう己を落ち着かせる。
自分達へ敵意は向けられていない、ならば不要に喧嘩を売るのは馬鹿のやること。

「取り敢えず、さっきのデブ猫を片付けてもらった礼を言った方が良いか?」
「別にいらねぇよ。俺はただ、交渉の邪魔になる輩にご退場してもらっただけだ」
「話がしたいってんなら俺らも歓迎だが、あんたの言う雇い主様ってのは……」

最後まで聞く必要がないと、タイヤの音が教えて来る。
男の後方よりこちらへ向かって来た、奇妙な外見のマシン。
一般的な自動車でなければ、戦車とも違う。
アレに乗るのが件の雇い主様かと納得し、視線を移し思わず凍り付いた。

「おい、あいつは……」
「依頼人(クライアント)のビジネスパートナーってとこかね。粉かける気ならオススメしねぇぞ」

軽口へ何も返せないまま視線は固定。
マシンの上部へ取り付けられた席へ立つ、黒髪の少女。
凛とした佇まいの彼女が誰かを、リュージはとっくに知っている。
何せ、今正に隣へ本人がいるのだから。

リュージの動揺には構わずマシンは停車。
ハッチを開け、運転席からは十代後半と思しき少年が出て来た。
合わせて黒髪の少女も地面へ降り、二人の男へ並ぶ。
片や仮面ライダーに変身中、片やグリードという異形の姿。
相応に警戒を向けて当然の二人組を前に、少年達が気圧された様子はない。
緊張など微塵も感じさせない佇まいで、一歩前へ出た。

「一旦場所を変えて話といきたいんだが、構わないか?時間は取らせねぇ、こっちも腑抜けた顔(ツラ)を拝んどきたい野郎が待ってるからよ」
「あ、ああ。こっちも問題ないんだけどな……」

話がしたいとの提案は嘘か真か、シギルによって得た答えは後者。
なら断る理由はないのだが、それとは言葉へ詰まり横を見やる。
ここまで無言を貫いた異形はリュージへ何を返すでもなく、グリードの姿を解く。
赤い鳥の王から一転、意識の戻らない刀使へと。

「なっ!?」
「……どういうこった?十条、お前まさか双子だったってオチじゃねぇだろうな?」
「そんな訳があるか!」

首を傾げる少年の問いを否定しながらも、驚きを隠せない少女。
それも当然だと、この光景を見た誰もが口を揃えるだろう。
衣服や髪型こそ違うも、全く同じ顔。
十条姫和の名で登録された参加者が、二人存在するのだから。


○


同じ顔の人間が二人いる。
生き別れた双子の兄弟姉妹だとか、都市伝説で有名なドッペルゲンガー等と。
世にありふれている理由が当て嵌まらないのが、殺し合いだ。
嫉妬のホムンクルスや、既に亡きPKギルドのリーダー。
彼らがやったように、他者の姿を偽り混乱と猜疑心を撒き散らす。
龍園一行が出会ったもう一人の姫和も、同じ類の危険人物。
と、頭ごなしに断定する程短絡思考なら衝突は免れなかったろう。

「運が良いのか悪いのか分からねぇな、そっちの十条はよ」

適当に選んだ民家の一室で、呆れ交じりに率直な感想を零す龍園の姿こそ。
アクシデントが起きなかった証拠だ。

驚きと幾分の警戒こそあったものの、向こうも情報交換に異論はない。
であれば姫和と同じ姿の件も含め、詳しく話を聞けば良いだけの事。
手早く場を纏めれば、各々反応に多少の違いは有れど反対はなし。
移動前に緑のライダーになっていた男から、殺し合いに乗ってるか否かを先に答えるよう聞かれはしたが。
三人共に後者と返した所、納得出来たのかそれ以上は何も言わなかった。

そうして現在、互いの情報開示はスムーズに行われている。
最初に自己紹介を始めた時、可奈美が信頼出来ると言った仲間の内の二人と判明。
礼代わりにスタンガンを浴びせる女より、遥かに話が通じる。
放送前の苦い経験は思考の片隅へ蹴飛ばし、得られた情報の租借へ意識を移す。

「確認しとくが、お前が体借りてる十条は死んだ訳じゃないんだよな?」
「意識が戻ってないだけだ。こいつの欲望のデカさなら、意地でも死を跳ね除けるだろうよ」

見知った顔と聞き慣れた声だが、やはり自分の知る姫和とはまるで違う。
生真面目さの反動でグレたと言われても納得な、不遜極まる態度。
足を組んでソファーに腰掛けるアンクを、事情を知らない刀使が見たら何を思うか。
どうでもいい事を思い浮かべる龍園を尻目に、我慢できず食って掛かる者が一人。

「お、おい!私の体でだらしない座り方はやめろ!」
「あぁ?今は俺の体っつったろうが。心配しなくても、コイツの傷が治ったら返してやるよ」
「くっ…命を救った件は感謝しているが……あ、こら!足を開くな!」

自分の体ではしたない体勢をされるのは、姫和にだって当然羞恥がある。
止めるよう言っても相手は適当に聞き流し、ジロリと猛禽類さながらの視線を寄越す。
アンクが憑依中とはいえ、自分はここまで目つきが悪い女だったろうか。
思わず目尻を指でなぞる姫和と、その様子を鼻で笑うアンク。
傍目には正反対の双子による諍いが起きる、奇妙な光景がそこにあった。

「死んでないのは良いがよ、起きたら起きたで揉めそうだな」

ポツリと呟いた龍園の懸念は最もだ。
泉慎吾の体を使っていた時と同じく、アンクと宿主はある程度の記憶が共有される。
その為、もう一人の姫和が“どの時間”から連れて来られたかも知るのは難しくない。
曰く殺し合い以前で最も新しい記憶は、折神家によって舞草が壊滅的な被害を受けた頃。
龍園達と行動を共にする姫和からしたら、過去の時間軸だった。

タギツヒメは隠世での可奈美達との斬り合いを知らず、沙耶香に至っては御前試合から間もない頃。
把握してるだけでも関係者全員、参加させられた時間が見事にバラバラだ。
これでは舞衣と薫もどの時間軸出身なのか、分かったもんじゃない。

リュージ達から聞いた話は有益であるも、同時に悩みの種が複数増えたのは否定出来ない。

「化け物のレズ女がくたばったと思えば、まだ新しい化け物が出て来るのかよ……」
「うんざりしたいのは俺も同じだ。一日も経ってないってのに、盤面動き過ぎだろ」

黒き神や闇檻の魔女に並ぶ規格外が、まだ他にいないとも限らない。
龍園とて全く考えなかったつもりはなくとも、いざ本当に聞かされれば勘弁して欲しい。
人の姿を取りながらも人に非ず、惑星全土を踏み躙る破壊者にして支配者。
紅き暴君、宇蟲王が齎した被害は如何程か。
可奈美から話を聞いた時は時間が無いのもあり、大まかにしか把握出来なかった。
だがここに来て、宇蟲王の蹂躙を味わった当事者が詳細を伝えた結果。
あえてルルーシュの言葉を借りるなら、『四凶』の一人へ数えられる存在だと確信せざるを得ない。

規格外の怪物へ辟易するのはリュージとて同様。
トランクスから警戒を促されていた、黒き神の理不尽さを改めて知ったのみならず。
自分達が収穫ゼロのドライブをしている最中、テレビ局周辺では事が大きく動いたらしい。

ノワルと名乗るこれまた怪物同然の参加者が討たれた、それは朗報だ。
しかし彼女の能力はよりにもよって、ルルーシュの手に渡ったとのこと。
リュージにとって強く警戒すべきは宇蟲王や黒い神であり、動向こそ意識を向けるも特別注視する程じゃない。
というのがルルーシュへの認識だったが、知らぬ間に脅威の度合いを数段階引き上げたとあっては。
認識を訂正せねばなるまい。

確実に殺し合いに乗っているだろう者と、乗ってはいないが信用できない者。
連中との如何ともし難い戦力差は、控え目に言ってもクソの一言が当て嵌まる。
幸い宇蟲王達に並ぶ強さの参加者とパイプを作れてはいる、が。

「やっぱりロクでもねぇことになりやがったぞ、おい……」
「俺にはメダルが必要だったんだよ、二度も言わせんな」

ジクウドライバーを手に入れたしおは大方の予想通り、ルルーシュへの復讐を実行。
ノワル討伐に端を発した乱戦の末、ロロ・ランペルージという参加者を殺害。
現在は彼女を保護するトランクス共々、何処へいるかは不明。
直接現場を見た訳ではないが、龍園がテレビ局跡地でも情報交換で知った内容が以上だ。

正直に言って、しおが復讐に走るのはリュージにも理解出来る。
彼女が松阪さとうへ、信頼をも超えた感情を向けていたのは確か。
そうまで強く想う相手を、堂々と殺したと言われれば当然の帰結と言えよう。
嘗て弟の命を奪った外道への、憎悪へ身を焦がしたからこその理解だった。

問題はしおの同行者が『四凶』対策の最有力候補、トランクスだという点。
仮面ライダーに変身可能たからと言って、しおがトランクスを上回る程に強いとは思えない。
しかし別れ際のトランクスの様子から察するに、彼はしおに優し過ぎる。
信じ過ぎている節が無い気がしないでもない、それがリュージの印象だった。
別に幼い子供を守ろうと奮戦するのを、間違ってると断言はしない。
だが肝心の守る対象が、スイよりも幼い身でありながら。
既に人一人を殺し、この先もどう転ぶか不透明な爆弾も同然の少女とあっては別。

(トランクスなら、しおから変身する道具を取り上げるのも簡単だろうけどな……)

戦力面では余程の相手で無い限り、トランクスなら返り討ちにするだろう。
なれど守りたいと決意を抱く対象が復讐に燃え、彼女の動向にも常に意識を割かねばならないとくれば。
悪いタイミングで、“爆発”が起こらないとも言い切れない。
定時放送後に合流の約束を取り付けたが、果たして今の二人にそんな余裕があるのか。
さとうがルルーシュの怒りを買うだけの理由は、ついさっき知ったばかり。
性根の良い女とは言えず、当事者からしたら堪ったものではない。
とはいえしおが暴走する原因を作り、高笑いしたあの皇帝へ。
何をやってくれやがったんだと、頭が痛くなる思いだった。

「渋い顔してるとこ悪いが、こっちからも聞きたい事がある。チェイスって奴は信用して良いんだな?」
「あ?ああ、殺し合いに乗ってないってのは『本当』だ。今何処にいるかまではともかく、な」
「そうか、ならあの野郎が吹かしやがっただけか」

宇蟲王相手に共闘し、散り散りになった現在位置不明の仲間の一人。
チェイスと面識は無いが、名前は龍園も聞いた。
黒き神との戦闘時に裏切りを働き、満艦飾マコが殺される原因を作った外道。
先生と呼ばれた男曰く、自分はチェイスのやり方を参考に浅垣灯悟達を騙したのだと言う。
尤もチェイスは可奈美から殺し合いに乗っていない者として伝えられ、その点はリュージも断言出来る。
クソの二文字が頭に付くシギルに、嘘は通用しないのだから。

「あいつと小宮がキヴォトスってとこの嬢ちゃん連中を警戒してんのも、案外その先生に襲われたからかもな」
「先生本人だったかは怪しいとこだがな」
「にしてもキヴォトス、ねぇ。俺らの足元に滅んだ都市があるってのも、肝が冷える話だな」

実は先程のアバンギャルドなNPCとの戦闘中、テレビ局跡地から放送が発信されたらしい。
重火器をばかすか撃たれる騒音の最中、正確に聞き取るのはまず不可能。
放送があった事自体を知らなかった。
運営側の一人、ラウ・ル・クルーゼが犯した大罪。
今も地下深くに眠る虐殺の痛ましい記憶と、生き残ってしまった少女の懺悔。
又聞きしただけでも、胸糞悪さが根を張る内容だった。

「……一応聞くが、ナギサって奴が実はクソ運営の手先の線は?」
「そりゃまずないだろうぜ?あの嬢ちゃんに、んな小賢しい気力は残ってねぇよ」

質問へ答えたのは、壁に寄り掛かり情報開示に口を挟まなかった男。
甚爾なりの確信を持って、ナギサは“シロ”との確信があった。
あの女の首へ刃を添えた時、光を失った瞳に宿るモノの正体。
死への恐怖や生への執着ではない、むしろその逆。
ようやっと終われるかもしれないという、淡い期待だ。
仮にあのまま甚爾に喉を裂かれても、安堵一色で終焉を受け入れたのは想像に難くない。

「そうなりゃ、チェイス達も急いで見付けた方が良いかもな……」

神妙な顔で行方知れずの仲間達を思い浮かべる。
桐藤ナギサの告白により、関係者へ激震が走るのは確定と思って良い。
そのような中でキヴォトスへの警戒を促してしまえば、余計な敵意を集めかねない。

「ところで前坂、アッシュフォード学園にレン達がいるのは本当か?」
「おう、あそこを詳しく調べるって言ってたからな。あの広さじゃあ、まだ時間掛かってもおかしくないないわな」
「んな場所に綾小路が向かった、か」

良い情報としてリュージ達から齎されたのは、殺し合いに反対するグループが出来上がってること。
まさか徳川家康という、日本人なら知って当然のビッグネームが中心となり。
しかも龍園と同じ高育校在籍の、堀北が家康の協力者の一人とは予想外。
積極的に探す気がなかったとはいえ、元々向かうつもりの場所へいるなら会わない訳にはいくまい。
何とも言えない顔の龍園とは対照的に、姫和の表情には安堵の色が浮かぶ。
赤い仮面ライダーへのトラウマに苛まれていたレンは、信頼出来る仲間達に出会えたのだ。
同行しなかった件が、心のどこかで引っ掛かっていただけにホッとした。

とはいえ拠点確保の目的で、綾小路が軍を引き連れ向かっただけに一悶着起こらないとは言えない。
同じDクラスの堀北がいる以上、手荒な真似はしない。
と楽観的な予想に該当しないのが、綾小路清隆という少年。
一体全体、どこまで飼い犬根性が染み付く有様へ落ちぶれたのやら。
湧き上がる苛立ちを握りつぶし、表面上は平静を装う。

「俺らはこのままアッシュフォード学園に行く。お前らは?」
「……一旦戻るのも有りか。家康達の方で収穫があったかもしれねぇ。アンク、お前も良いか?」
「好きにしろ。どうせ後一時間かそこらで放送だ、腰を落ち着けんのも悪くねぇ」

一応、龍園達とのパイプを作れたのだから家康からの頼み事は達成だろう。
それにアンクの言う通り、二回目の定時放送もそろそろ近い。
アッシュフォード学園の探索で成果があったかを聞きつつ、放送へ備えるのも悪くない。
加えてもし、綾小路達と家康達でトラブルが起きていた場合。
何らかの力添えが必要になるかもしれない。
更に付け足すなら、ゼロの放送を聞いた家康達が大博物館へ行く可能性もある。
流石に移動は定時放送が終わってからだろうが、今後の方針を纏める為にも合流を少々前倒しにするのは有りだ。

「あー……出発前に少しだけ時間をくれ。姫和と二人で話がしたい」
「なに?他の者がいては不都合なのか?」
「ああ、まあ…可奈美のことでちょっと、な」
「……っ。分かった、二階で構わないか?」

訝しく尋ねるも、今は亡き大切な少女の名を出され察するものがあったのか。
強張った表情で頷く姫和と共に、居間を出て行く。

「悪いな、これでも食って待っててくれ」
「当たり前だ、さっさと済ませて来い」

その前に、クーラーボックスからアイスキャンディーを三本取り出す。
当然と言わんばかりの態度で受け取るアンクを尻目に、残る二人もつい受け取った。
突っ撥ね返すより早く居間の扉が閉まり、後には乱暴に包装を破る音が一つ。
仏頂面で齧りソーダの風味を味わうアンクは、横からの視線へジロリと返す。

「いらねぇなら寄越せ。俺の取引材料だ」
「…お前、アイスで雇われてんのか?。ったく、こいつもそれで済むなら楽なんだがな」
「駄菓子屋の用心棒扱いは心外だ、一応こっちも名前で売ってんだからよ」

呆れる龍園と軽薄に笑う甚爾もまた、ややあって手持ち無沙汰解消の為か。
包装を破りアイスキャンディーに口を付ける。
ブドウ味とメロン味の冷たさへ、不思議と懐かしさを覚えた。


○


「悪いな、付き合わせちまって」
「別に構わない。…それで、可奈美の何を聞きたいんだ?」

移動した先は子供部屋らしく、学習机にランドセルが引っ掛けてあった。
細かい再現にまで拘るゲームマスターの情熱には、然して関心を抱かず。
長ったらしい前置きは抜きで、本題へ入る。

「可奈美から俺の事も聞いたって言ってたが、どこで出会ったとかもあいつは話したか?」
「いや、可奈美には時間が無かった。必要最低限の情報、くらいだな」

顔色を曇らせる姫和の脳裏には、数時間前の別れが思い出される。
話を聞いた時はリュージも、余りの胸糞悪さに表情が歪むのが抑えられなかった。
死後も都合の良い駒として利用され、善良な少年を手に掛けた挙句。
望まぬ形で自我を取り戻し、罪悪感へ圧し潰されていたという。
説明が終わった時、アンクが強い苛立ちを籠め舌を打ったのは記憶に新しい。

「……」

これから話す内容を伝えるべきか、リュージに迷いが生じなかったと言えば嘘になる。
人を殺す、自分が覚悟を決めさせようとした一線。
それが最悪の形で実現し、可奈美の心を掻き毟った。
彼女と深い仲だった姫和にだって、決して少なくない衝撃が襲ったのだ。
余計精神へ負担を強いる真似に出るのが、本当に正解と言えるのか。

「俺が最初に可奈美と会った時、あいつは斬り合いの真っ最中だったよ」

考えた末に結局、こうして言葉を紡いでいるのは。
サイビルバラから忠告を受けた時に、返した答えと同様。
一人だけ嘘か真を見抜ける奴が、事実を隠し通すのはフェアじゃないからか。
或いは、ロクに役に立てず可奈美を死なせた自分への糾弾を求めてるのだろうか。

「……そう、か」

リュージとの出会いに始まり、宇蟲王との一騎打ちで力尽きるまでの。
数時間の詳細を聞かされ、姫和が抱いた感情を一言で説明するのは難しい。
壮絶な最期を迎えた時、共に戦えなかった後悔か。
最後まで己の在り方を貫いた彼女への、可奈美らしいという安堵か。
別れ際、可奈美の抱える傷の全てを拭えなかった無力感か。
絞り出したような声に宿る全部を察する術を、リュージは持たない。

ただ一つ言えるとすれば、話はまだ終わっていないということか。

「赤い王様野郎が言ってやがった。可奈美の剣には殺意が宿ってない、ってよ」
「それは……当たり前だ。可奈美にとって剣は殺しの道具じゃない、理解し合う為の……」
「俺は、あいつの剣を殺しの手段にさせるつもりだった」

空気が凍り付くのを嫌でも感じ取った。
自分を見つめる姫和の瞳が、何を言ってるのか分からないと見開き。
次の瞬間には、抜き身の刃さながらに鋭さを増す。

「どういうことだ……?」
「可奈美が殺すのに抵抗があるってのは、最初の時に分かった。だが、誰も殺さずに生き残れるような場所じゃねぇ。俺の知ってるゲーム以上に、クソ同然の殺し合いじゃ猶更だ」

だからと、一拍置いて口を開く。
言った後で何が起きるかは、エスパーでなくとも分かる。

「あいつが生き残れるよう、殺す覚悟を決めさせる気だった。なのに現実はこうだ。…俺がもっと早くにあいつを殺しに慣れさせてりゃ、あいつはまだ――」

言葉は最後まで続かない。
リュージが望んで口を噤んだのでなく、そうせざるを得なかったからだ。
電光石火の四文字が、今の姫和にマッチするだろう。
写シを張ってもいない、石田三成の愛刀が齎す強化を受けてもいない華奢な体の。
どこにそんな力があったと聞けば、答えは一つしかあるまい。

衛藤可奈美の信念を侮蔑するに等しい言葉を吐いた男への、憤怒に突き動かされた。

「……」

細腕が胸倉を掴み、壁へ強く押し付けられながらも。
リュージの表情に焦りや驚愕はない。
余裕ぶったとも取れるだろう態度を、目の前の少女はどう思ったか。
歯が砕けんばかりに食い縛り、睨みつける表情は修羅そのもの。
怒りを通り越し、殺意すら宿らせた瞳がリュージを射抜く。
次の瞬間に抜刀しても、何らおかしくない程の激情を身に纏い、

「――っ」

堪えるように目を伏せたと思えば、胸倉から手を離す。
やや乱暴に解放されたリュージの方は見ず、瞳が閉じられ自身の呼吸を落ち着かせる。
荒れ狂う怒りをどうにか鎮静化、ややあって両目を開いた時。
見つめる視線は鋭いままだが、殺意は幾分薄れてあった。

「……斬らねぇのか?」
「ふん、刀使は人斬りの集団じゃない。新選組とでも同じに考えてるなら、心外も良い所だ」
「正直に言や、顔の形が変わるくらいにゃ拳が飛んでくると思ったんだがな」
「殴って欲しいなら遠慮なくそう言え」

バツが悪そうに尋ねるリュージへ辛辣に返し、小さく息を吐く。
衝動に身を任せ、刀を抜きそうになったのは否定出来ない。
ふざけるなと叫び、殴り付けたいと思ったのも本当。
なのにそうしなかった理由は――

「信頼できる仲間」
「……?」
「アンクや、……お前を可奈美はそう言っていた」
「そこまで評価してもらえる程、自惚れてちゃいないんだがな……」

信頼を向けられる程、大きな助けになった覚えはない。
嬉しさや恥ずかしさではなく、訝しさが先に来てつい目を逸らす。

「それからもう一つ。可奈美から伝言を預かってる」
「俺に、か?」
「“自分の為を想って、リュージさんなりに助けようとしてくれてありがとうございます。でも、甘いって思われるかもしれないけど、自分の在り方を曲げたくないです”」

自分を傷付ける為じゃない、可奈美が自分で自分を守れるように働きかけたと。
そう理解し心遣いには感謝こそすれど、どうあってもそこは譲れなかった。

「前坂の持論を否定するつもりはない。お前なりの理由があって、殺しが必要だと考えるに至ったのだろう?」

Dゲームでリュージに起きた事と、殺しへ手を染めるに至った経緯は聞いていない。
しかし理由はどうあれ、殺さなければ生き残れない状況に追いやられたなら。
或いは、殺しを強く決意する程の怒りに身を焦がしたのであれば。
否定する気は姫和にだってない。

「だけどな前坂、その一線は誰でも簡単に超えて割り切れるものじゃない。もし、可奈美が自分の意思で誰かを殺したとしても…きっと可奈美自身の心まで死んでいた」

仮にシビトとなった可奈美が斬った相手が、切島のような善人ではなく。
悪人に分類される、それこそリュージの弟を奪った王と同じ輩だったとしても。
相手を殺せば殺す程、可奈美本人の心も殺されていった筈。
切島を斬った罪悪感で泣き腫らした顔が、今も焼き付いて離れない。

「お前が自分のやり方で、可奈美の助けになろうとしたのは分かった。だが……たとえ可奈美の死に責任を感じてるのだとしても、それはあいつを最も侮蔑するのに等しい」
「……」
「だからもう、殺しをさせれば良かったなんて二度と口にしないでくれ。次は、私も抑えられる自信がない」
「……分かった」

忠告はきっと、これが最初で最後。
しつこく食い下がったら今度こそ、姫和は自分を抑える努力を放棄する。
理解出来ないリュージではなく、故に言い掛けた言葉を無理やり飲み込み頷いた。
Sレーベンズの面々や可奈美にも、大人としてやれる事をやってきたつもりだったが。
今の姫和を見ていると、自分の方がずっとガキに思えてならない。
何をやってるんだろうかと苦いものが広がり、自嘲が浮かぶ。

「……悪かったな。変に振り回しちまった」
「全くだ。あと言っておくが、私以外の奴にも今みたいな事を言う気ならなやめておけ」
「忠告どうも。余計な心配させたなら、もうちょっと考えて言うさ」
「仲間を人殺しや暴行魔にしたくないだけだ」

ぶっきらぼうな態度に苦笑いするも、忠告は素直に受け取っておく。
サビルバラの言った通りだ。
命懸けの戦いに挑む者同士であれど、環境が違えば死生観も違う。
Sレーベンズのメンバーのように、誰も彼もが覚悟を決められる訳じゃない。
殺す覚悟ではなく、殺さない覚悟こそ可奈美にとって譲れない根底だったのだろう。

「そろそろ戻るか。あまり遅いと、龍園が小言の一つや二つは言うかもしれないからな」
「アンクのやつも苛立ってるだろからな」

こんなに遅いならアイスを十本くらい置いて行け、なんて言っても不思議はない。
姫和の後に続き部屋を出ようとし、

「…なあ十条、大丈夫か?」

小さな問いかけを、細い背に投げかけた。

「ああ、私なら大丈夫だ」

自分の方を見ないまま短く返し、階段を降りて行く。
その背を見送りながら、余計な事を聞いたと自分の迂闊さを内心責める。
シギルは腹立たしい程完璧に作用し、今の言葉が嘘かどうかを判定。

(っとにクソシギルがよ……)

何度目になるかも分からない悪態は、胸中へ苦々しく溶けていった。



124:裂界武帝対闇途昇雷 投下順 125:龍園少年の事件簿 -アッシュフォード学園殺人事件-
127:百地希留耶の羨望的皇帝糾弾 時系列順
067:前坂リュージは嘘は視える 十条姫和
アンク
前坂隆二
105:真贋バトルロワイヤルZERO 十条姫和
龍園翔
伏黒甚爾

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
タグの更新に失敗しました
エラーが発生しました。ページを更新してください。
ページを更新
「僅かな光しかなくたって」をウィキ内検索
LINE
シェア
Tweet
真贋バトルロワイヤル
記事メニュー

メニュー

  • トップページ
  • プラグイン紹介
  • メニュー
  • 右メニュー



投下作品

  • OP
  • 【候補作】
  • 【候補作】(採用)

  • 本編投下順
【0~50】
【51~100】
【101~150】

  • 本編時系列順
【第一回放送までのSS】
【第二回放送までのSS】

  • 書き手別SS
【書き手別SS】

  • 追跡表
【追跡表】

基本情報

 参加者名簿
 ロワルール
 地図
 支給品一覧
 死亡者リスト
 タイトル元ネタ
 NPCモンスター解説
 用語集



リンク

  • @wiki
  • @wikiご利用ガイド
  • 真贋ロワ本スレ(part1)
  • 真贋ロワ本スレ(part2)
  • 真贋ロワ本スレ(part3)
  • 真贋ロワ本スレ(part4)
  • 真贋ロワ本スレ(part5)


ここを編集
記事メニュー2

更新履歴

取得中です。


ここを編集
人気記事ランキング
  1. 【第二回放送までのSS】
  2. 【第一回放送までのSS】
  3. その 名は ゼロ
  4. 百地希留耶の羨望的皇帝糾弾
  5. ルルーシュ・ランペルージの自己愛的反論集
  6. 支給品一覧
  7. 僅かな光しかなくたって
  8. 2代目ゼロ:オリジン
  9. 【101~150】
  10. 龍園少年の事件簿 -アッシュフォード学園殺人事件-
もっと見る
最近更新されたページ
  • 1日前

    タイトル元ネタ
  • 1日前

    僅かな光しかなくたって
  • 1日前

    蛮野天十郎:リサイタル
  • 1日前

    龍園少年の事件簿 -アッシュフォード学園殺人事件-
  • 1日前

    真贋バトルロワイヤルZERO
  • 1日前

    百地希留耶の羨望的皇帝糾弾
  • 1日前

    ルルーシュ・ランペルージの自己愛的反論集
  • 1日前

    その 名は ゼロ
  • 1日前

    そして、和解
  • 1日前

    2代目ゼロ:オリジン
もっと見る
人気記事ランキング
  1. 【第二回放送までのSS】
  2. 【第一回放送までのSS】
  3. その 名は ゼロ
  4. 百地希留耶の羨望的皇帝糾弾
  5. ルルーシュ・ランペルージの自己愛的反論集
  6. 支給品一覧
  7. 僅かな光しかなくたって
  8. 2代目ゼロ:オリジン
  9. 【101~150】
  10. 龍園少年の事件簿 -アッシュフォード学園殺人事件-
もっと見る
最近更新されたページ
  • 1日前

    タイトル元ネタ
  • 1日前

    僅かな光しかなくたって
  • 1日前

    蛮野天十郎:リサイタル
  • 1日前

    龍園少年の事件簿 -アッシュフォード学園殺人事件-
  • 1日前

    真贋バトルロワイヤルZERO
  • 1日前

    百地希留耶の羨望的皇帝糾弾
  • 1日前

    ルルーシュ・ランペルージの自己愛的反論集
  • 1日前

    その 名は ゼロ
  • 1日前

    そして、和解
  • 1日前

    2代目ゼロ:オリジン
もっと見る
ウィキ募集バナー
急上昇Wikiランキング

急上昇中のWikiランキングです。今注目を集めている話題をチェックしてみよう!

  1. Shoboid RPまとめwiki
  2. テイルズオブ用語辞典
  3. トリコ総合データベース
  4. 固めまとめWiki
  5. ストグラFV まとめ@非公式wiki
  6. イナズマイレブンGO2 クロノ・ストーン ネップウ/ライメイ 攻略wiki
  7. みんなで決めるゲーム音楽ベスト100まとめwiki
  8. グランツーリスモWiki
  9. 魔法科高校の劣等生Wiki
  10. ゆっくり虐め専用Wiki
もっと見る
人気Wikiランキング

atwikiでよく見られているWikiのランキングです。新しい情報を発見してみよう!

  1. アニヲタWiki(仮)
  2. ゲームカタログ@Wiki ~名作からクソゲーまで~
  3. ストグラ まとめ @ウィキ
  4. 初音ミク Wiki
  5. 発車メロディーwiki
  6. 検索してはいけない言葉 @ ウィキ
  7. 機動戦士ガンダム バトルオペレーション2攻略Wiki 3rd Season
  8. 機動戦士ガンダム EXTREME VS.2 INFINITEBOOST wiki
  9. オレカバトル アプリ版 @ ウィキ
  10. 英傑大戦wiki
もっと見る
新規Wikiランキング

最近作成されたWikiのアクセスランキングです。見るだけでなく加筆してみよう!

  1. MadTown GTA (Beta) まとめウィキ
  2. MADTOWNGTAまとめwiki
  3. まどドラ攻略wiki
  4. ちいぽけ攻略
  5. SurrounDead 攻略 (非公式wiki)
  6. Shoboid RPまとめwiki
  7. シュガードール情報まとめウィキ
  8. 戦国ダイナスティ攻略@ウィキ
  9. ソニックレーシング クロスワールド @ ウィキ
  10. 20XX @ ウィキ
もっと見る
全体ページランキング

最近アクセスの多かったページランキングです。話題のページを見に行こう!

  1. angler - MADTOWNGTAまとめwiki
  2. 参加者一覧 - MADTOWNGTAまとめwiki
  3. 魔獣トゲイラ - バトルロイヤルR+α ファンフィクション(二次創作など)総合wiki
  4. 参加者一覧 - MadTown GTA (Beta) まとめウィキ
  5. SILENT HILL f - アニヲタWiki(仮)
  6. ギャプラン - 機動戦士ガンダム EXTREME VS.2 INFINITEBOOST wiki
  7. XVI - MADTOWNGTAまとめwiki
  8. 模擬ドラフト結果 - おんJ模擬ドラフトまとめwiki
  9. 参加者一覧 - ストグラ まとめ @ウィキ
  10. 白狐 - MADTOWNGTAまとめwiki
もっと見る

  • このWikiのTOPへ
  • 全ページ一覧
  • アットウィキTOP
  • 利用規約
  • プライバシーポリシー

2019 AtWiki, Inc.