ヒースクリフ……茅場晶彦という男を一言で言えば、殆どの者が「マッドサイエンティスト」と口を揃える。
元の世界において天才の名をほしいままにし、己の宿願のために4千人近い犠牲者を出した電脳空間のデスゲーム『SAO事件』の主犯。
ある意味ラウ・ル・クルーゼや羂索よりも、デスゲームの首謀者に相応しい男といえる。
その男は今、ディスプレイに映る会場の光景に唖然とした顔を浮かべていた。
しばし立ち尽くした後、コンソールを荒々しく叩いて画面の奥――今や魔王の力を得た神殺しに血走った目を向ける。
ある意味ラウ・ル・クルーゼや羂索よりも、デスゲームの首謀者に相応しい男といえる。
その男は今、ディスプレイに映る会場の光景に唖然とした顔を浮かべていた。
しばし立ち尽くした後、コンソールを荒々しく叩いて画面の奥――今や魔王の力を得た神殺しに血走った目を向ける。
神殺しを名乗る男が起こした、神の能力の剥奪と誰も想像していなかった魔王の降臨。
ラウ・ル・クルーゼの呼び寄せた理外の怪物の手によって起きた事象は、元より茅場の想定から外れていた殺し合いのシナリオを完膚なきまでに破壊したといってよかった。
ラウ・ル・クルーゼの呼び寄せた理外の怪物の手によって起きた事象は、元より茅場の想定から外れていた殺し合いのシナリオを完膚なきまでに破壊したといってよかった。
「グランドジオウへの変身も召喚したライダーの永続支配も本来ありえない!それどころかその全員に令呪相当の増強だと!?
死神のライダーと龍殺しの心臓をもってしても拮抗すらできない奴自身の出力も含めて。全てが殺し合いの上限値を超えている!!
令呪や心意システムだけでは説明がつかない!創世の力とてなぜあれだけ自在に行使できる!!
ソードスキルや起動キーがあるとはいえ、オリジナル相応の仮面ライダー相手に戦いが成り立つ参加者など数える程度だ!こうなってはもはやゲームでも遊びでもない、蹂躙だ!
なぜこんなことが起こる!バランス調整をかなぐり捨てた化け物が生まれる余地は潰していたはずだ!」
死神のライダーと龍殺しの心臓をもってしても拮抗すらできない奴自身の出力も含めて。全てが殺し合いの上限値を超えている!!
令呪や心意システムだけでは説明がつかない!創世の力とてなぜあれだけ自在に行使できる!!
ソードスキルや起動キーがあるとはいえ、オリジナル相応の仮面ライダー相手に戦いが成り立つ参加者など数える程度だ!こうなってはもはやゲームでも遊びでもない、蹂躙だ!
なぜこんなことが起こる!バランス調整をかなぐり捨てた化け物が生まれる余地は潰していたはずだ!」
クルーゼや羂索と異なる点。そして茅場晶彦という男とは切っても切り離せない要素として。男はゲームクリエイターである。
いかに血塗られ醜聞で語られようとも、ゲームとしての破綻だけは起こらないことは男にとっては大前提。
以前起こしたデスゲームだって過酷極まる環境とはいえ。自身に対抗できる【二刀流】スキルの用意を初めゲームとしてクリア不可能な状態では決してなかった。
故に殺し合いにおけるバランス調整には細心の注意を払っていた。
能力制限を筆頭に、4凶に対抗できる黒崎一護やトランクスを選定したり、冥黒の五道化に当初以上の強化を施したり。涙ぐましい努力をこなす必要が男にはあった。
いかに血塗られ醜聞で語られようとも、ゲームとしての破綻だけは起こらないことは男にとっては大前提。
以前起こしたデスゲームだって過酷極まる環境とはいえ。自身に対抗できる【二刀流】スキルの用意を初めゲームとしてクリア不可能な状態では決してなかった。
故に殺し合いにおけるバランス調整には細心の注意を払っていた。
能力制限を筆頭に、4凶に対抗できる黒崎一護やトランクスを選定したり、冥黒の五道化に当初以上の強化を施したり。涙ぐましい努力をこなす必要が男にはあった。
ではその成果はと問われると、目の前の光景が答えだろう。
五道化と縁深い雷鳴の勇者や、殺し合いの中めざましい活躍を見せていた追跡者の仮面ライダーを小石を蹴とばすかのように殺して見せた神殺し。
ヒースクリフのシナリオの中には、まかり間違ってもこんな存在は生まれないはずだった。
五道化と縁深い雷鳴の勇者や、殺し合いの中めざましい活躍を見せていた追跡者の仮面ライダーを小石を蹴とばすかのように殺して見せた神殺し。
ヒースクリフのシナリオの中には、まかり間違ってもこんな存在は生まれないはずだった。
「奴の変化はアルジュナ・オルタの魔力があるとはいえ異常だ!ゲームシステム上ありえ…………」
そこまで言いかけてヒースクリフは気づく。
あり得ないことが起きている。というのならば原因は1つしかない。
あり得るように仕組んだ誰かが、身内に居る。
あり得ないことが起きている。というのならば原因は1つしかない。
あり得るように仕組んだ誰かが、身内に居る。
「クルーゼ……いや、こういう抜け穴を用意するのは羂索だな。
メラを優遇したわけではないだろう。いくつかの支給品が変質しやすいようセーフティを解除でもしていたか。
そうなってはこちらからは文句の言いようがない。先に特定の支給品のセーフティを弱めたのは私だからな。」
メラを優遇したわけではないだろう。いくつかの支給品が変質しやすいようセーフティを解除でもしていたか。
そうなってはこちらからは文句の言いようがない。先に特定の支給品のセーフティを弱めたのは私だからな。」
ヒースクリフの言及するアイテムとは、ルルーシュに支給したアークドライバーのことである。
ノワルの虚を突きロストモデルとして取り込むことで、大金星をあげるどころか大幅な強化を果たした悪逆皇帝の覚醒を促す神の一手。
闇檻という圧倒的な力を前に霞んでしまってはいるが、『個人のロストモデル化』という行為そのものが真人の無為転変と同格かあるいはそれ以上の一撃必殺の所業に等しい。
ノワルの虚を突きロストモデルとして取り込むことで、大金星をあげるどころか大幅な強化を果たした悪逆皇帝の覚醒を促す神の一手。
闇檻という圧倒的な力を前に霞んでしまってはいるが、『個人のロストモデル化』という行為そのものが真人の無為転変と同格かあるいはそれ以上の一撃必殺の所業に等しい。
まず間違いなく、ルルーシュ以外にアークドライバーが支給されていた場合はそのような真似はできないだろう。
そしてルルーシュにそのような奥の手を使うことを許容したのは、他ならぬ茅場だ。
そしてルルーシュにそのような奥の手を使うことを許容したのは、他ならぬ茅場だ。
今のメラに起きていることも、言ってしまえば同じようなもの。
本題ならばアルジュナ・オルタの力を断片的に取り込んだクロスギーツで終わるはずだった神殺しの変化は、セーフティが緩み他の力を受け入れやすくなった支給品を経て今に至っている。
本題ならばアルジュナ・オルタの力を断片的に取り込んだクロスギーツで終わるはずだった神殺しの変化は、セーフティが緩み他の力を受け入れやすくなった支給品を経て今に至っている。
「彼を魔王として君臨させるための保険のようなものだったのだが。彼は気に入らなかったらしい。
そういえば柳瀬舞衣の支給品の話でも”公平”などと嘯いていたな。らしくないことを言うと思ったが、彼も彼で本気という訳か。
それほどまでに私のシナリオは退屈だったとでも?」
そういえば柳瀬舞衣の支給品の話でも”公平”などと嘯いていたな。らしくないことを言うと思ったが、彼も彼で本気という訳か。
それほどまでに私のシナリオは退屈だったとでも?」
ルルーシュ・ランペルージに殺し合いを支配する魔王の役割(ロール)を与え、キリトを初めデクや仮面ライダーガッチャ―ドが彼を、ひいてはその裏にいる運営を打ち倒す英雄譚。
それがヒースクリフの当初想定していたシナリオだ。
二代目ゼロが指摘した通り、ルルーシュ・ランペルージとはこの殺し合いの台風の眼になることを期待され、そして彼はまさしく期待通りに動いていたはずだった。
それがヒースクリフの当初想定していたシナリオだ。
二代目ゼロが指摘した通り、ルルーシュ・ランペルージとはこの殺し合いの台風の眼になることを期待され、そして彼はまさしく期待通りに動いていたはずだった。
その展開が既に見るも無残に覆されていることは、もはや誰の目にも明らかだった。
ヒースクリフは肩をすくめ小さく項垂れた。画面の奥から響くメラの哄笑が耳障りだ。
ヒースクリフは肩をすくめ小さく項垂れた。画面の奥から響くメラの哄笑が耳障りだ。
「まあいいさ。ゲームとしては下の下だが、殺し合いとしてはこのくらいの理不尽が必要というのも理解できる。
だが……私にも私なりの望みというものがある。この殺し合いに至るまでにかけたリソースは、クルーゼほどではないが私にもある。」
だが……私にも私なりの望みというものがある。この殺し合いに至るまでにかけたリソースは、クルーゼほどではないが私にもある。」
ガシャコンバグヴァイザーを取り出すと、ヒースクリフは部屋の天井に視線を向けた。
四隅に取り付けられた監視カメラが無機質な駆動音を立てて、部屋の主を映している。
映像の先にいるだろう仮面の男と縫い目の女に吐き捨て、茅場晶彦は自身の部屋を後にした。
四隅に取り付けられた監視カメラが無機質な駆動音を立てて、部屋の主を映している。
映像の先にいるだろう仮面の男と縫い目の女に吐き捨て、茅場晶彦は自身の部屋を後にした。
「兆しを作ったのはお前たちだ。
ゲームマスターとしてバランスの崩壊した要素は排除させてもらおう。」
ゲームマスターとしてバランスの崩壊した要素は排除させてもらおう。」
◆◇◆
「……空蝉丸の野郎。負けたのか!」
エリアG-8 小さなビルの屋上で佇んでいたドゴルドは、金網を握り潰し体を震わせる。
あり得ない話ではない。柊真昼の影響で冷静になった頭では理解できている。
空蝉丸はこの会場において圧倒的な強者ではない。贔屓目に見てもその実力は上の下、同格の参加者は両手で数え切れないほどに居るはずだ。
理外の強者と相まみえて討ち死にする可能性は消して低くない。宿敵との決闘を理由に目の前の戦いや救える命を見捨てる男では決してなかった。
あり得ない話ではない。柊真昼の影響で冷静になった頭では理解できている。
空蝉丸はこの会場において圧倒的な強者ではない。贔屓目に見てもその実力は上の下、同格の参加者は両手で数え切れないほどに居るはずだ。
理外の強者と相まみえて討ち死にする可能性は消して低くない。宿敵との決闘を理由に目の前の戦いや救える命を見捨てる男では決してなかった。
「認めねえ……俺は認めねえぞ!!!
俺がいる事なんざはじめっから分かってただろうが!!何をむざむざとやられてやがるんだ!!!
どれだけやられても諦めねえテメエのブレイブは何処にいったんだ!!」
俺がいる事なんざはじめっから分かってただろうが!!何をむざむざとやられてやがるんだ!!!
どれだけやられても諦めねえテメエのブレイブは何処にいったんだ!!」
それでも空蝉丸の敗死という事実をドゴルドが納得できるかと問われれば、否だ。
どれだけの困難が立ちふさがろうと、どれほど強敵と出くわそうと。最後にはあの雷光のような凛々しい眼で自分の前に立ちはだかるのだと。
五道化として悪逆を尽くした自分との戦いの果てに、いつかは付けられなかった決着をつけられるのだと。
信じて疑っていなかった自分の馬鹿さ加減に腹が立つ。400年の付き合いでここまであの男に失望したのは初めてだ。
どれだけの困難が立ちふさがろうと、どれほど強敵と出くわそうと。最後にはあの雷光のような凛々しい眼で自分の前に立ちはだかるのだと。
五道化として悪逆を尽くした自分との戦いの果てに、いつかは付けられなかった決着をつけられるのだと。
信じて疑っていなかった自分の馬鹿さ加減に腹が立つ。400年の付き合いでここまであの男に失望したのは初めてだ。
「クソがぁ!!!」
その叫びはあっけなくおっ死んだ空蝉丸に向けてのものなのか、それとも彼との戦いに間に合わなかった自分に対する憤りなのか。
分からないままにドゴルドが金網を蹴り飛ばす。轟音と共に吹き飛んだ金網が屋上から落下して地面にぶつかり、遠雷のような破壊音が響いた。
相棒の荒れ具合に隣に佇んでいたシロコは眉間に皺を寄せ手にしていた双眼鏡から目を放す。
分からないままにドゴルドが金網を蹴り飛ばす。轟音と共に吹き飛んだ金網が屋上から落下して地面にぶつかり、遠雷のような破壊音が響いた。
相棒の荒れ具合に隣に佇んでいたシロコは眉間に皺を寄せ手にしていた双眼鏡から目を放す。
「ドゴルド。気持ちは分かるけど落ち着いて。
空蝉丸だけじゃなく、状況が変わってきてる。」
「あ?あのそこかしこに響いてる放送の話か?
桐藤ナギサがルルーシュに見つかるなんざヒースクリフの筋書き通りじゃねえか。想定よりは早えがそれがどうかしたのか?」
「違う。とりあえず北を見る。」
空蝉丸だけじゃなく、状況が変わってきてる。」
「あ?あのそこかしこに響いてる放送の話か?
桐藤ナギサがルルーシュに見つかるなんざヒースクリフの筋書き通りじゃねえか。想定よりは早えがそれがどうかしたのか?」
「違う。とりあえず北を見る。」
時刻は4時。ルルーシュが桐藤ナギサを見つけだし運営の罪過を訴える最中。シロコから渡された双眼鏡(どこだかドアで出たビルの一室に置いてあった)で捉えた先では、放送どころではない異変にドゴルドは「はぁ?」と間抜けな声を上げた。
「マジアマゼンタにマジアアズール……。それにアイツはヒースクリフの言ってた奴じゃねえか。」
派手な髪色をした2人の少女と2人を守るように剣を抜く漆黒の青年。その全てが満身創痍であり、虚ろな目で駆け出す姿がレンズ越しに映る。いづれもドゴルドの知った顔だ。
花菱はるかと水神小夜。あるいはマジアマゼンタとマジアアズール。どちらも一度は交戦し、ドゴルドをもってしても一目置く――マジアマゼンタに関しては手放しで評価できないがあの治癒能力は一級品だ――実力者であり。
同行する黒の剣士はヒースクリフから特別目をかけられている参加者であると聞かされていた。一度はあの性悪マッド野郎を倒した”勇者”だと。
その三人が無様な格好で逃げの一手を選ぶとなるとよほどの事態に違いなく。その”よほどの事態”の正体もすぐにドゴルドの目に留まる。
花菱はるかと水神小夜。あるいはマジアマゼンタとマジアアズール。どちらも一度は交戦し、ドゴルドをもってしても一目置く――マジアマゼンタに関しては手放しで評価できないがあの治癒能力は一級品だ――実力者であり。
同行する黒の剣士はヒースクリフから特別目をかけられている参加者であると聞かされていた。一度はあの性悪マッド野郎を倒した”勇者”だと。
その三人が無様な格好で逃げの一手を選ぶとなるとよほどの事態に違いなく。その”よほどの事態”の正体もすぐにドゴルドの目に留まる。
「なんだぁありゃあ……」
その先には、魔王が居た。
ドゴルドの多いとは言えない語彙であっても、レンズ越しに見える存在にそれ以上の言葉は不要だと分かる。
本来あり得ざる時の王者、グランドジオウの装束を纏い。異様な気配を漂わせる仮面ライダーやモビルスーツを侍らせた男が、ゆっくりと三人に歩み寄っている。
なおも逃げ惑う三人に魔王が何やら演劇でも見るように腹を抱えたかと思えば、腕をさっと振るって数人の仮面ライダーが武器を構え三人に襲い掛かる。
キリトは手にした刀で一人と競り合うも、その間に他の仮面ライダーが少女達に拳を振り下ろし、少女達は間一髪で攻撃をかわす。
それはもはや戦いとは呼べない。狩りでさえない。ただ嬲るだけの遊びだ。虐めと呼んでも差し支えない。
不快極まる光景にドゴルドが苛立つ中、シロコは付け加えるように言った。
本来あり得ざる時の王者、グランドジオウの装束を纏い。異様な気配を漂わせる仮面ライダーやモビルスーツを侍らせた男が、ゆっくりと三人に歩み寄っている。
なおも逃げ惑う三人に魔王が何やら演劇でも見るように腹を抱えたかと思えば、腕をさっと振るって数人の仮面ライダーが武器を構え三人に襲い掛かる。
キリトは手にした刀で一人と競り合うも、その間に他の仮面ライダーが少女達に拳を振り下ろし、少女達は間一髪で攻撃をかわす。
それはもはや戦いとは呼べない。狩りでさえない。ただ嬲るだけの遊びだ。虐めと呼んでも差し支えない。
不快極まる光景にドゴルドが苛立つ中、シロコは付け加えるように言った。
「あの仮面ライダーが空蝉丸を殺した。厳密にはその配下のNPC。」
「そうかよ。」
「そうかよ。」
その事実を前にドゴルドが感じたことは、怒りではなく納得だ。
あの魔王が相手ならば空蝉丸が見逃すことなどできないだろうし。あの魔王が相手ならば空蝉丸の敗北も必然だった。
どうやって負けたのかを尋ねようとは思わなかった。せめて英雄らしい誇り高い最期であってくれと願うばかりだ。
あの魔王が相手ならば空蝉丸が見逃すことなどできないだろうし。あの魔王が相手ならば空蝉丸の敗北も必然だった。
どうやって負けたのかを尋ねようとは思わなかった。せめて英雄らしい誇り高い最期であってくれと願うばかりだ。
「んで、テメエはなんでそれを知ってる?
ずっと双眼鏡握ってやがったのは空蝉丸を見てたのか?」
「違う。私が見てたのはアルジュナ・オルタ。
だけどアイツもあの仮面ライダー……メラにやられて取り込まれた。
その後も3人ほど参加者がやられてる。うち2人も奴の配下に真正面から殺された。」
「五道化としちゃあ結構なことだが、随分好き勝手やってくれるじゃねえか。」
ずっと双眼鏡握ってやがったのは空蝉丸を見てたのか?」
「違う。私が見てたのはアルジュナ・オルタ。
だけどアイツもあの仮面ライダー……メラにやられて取り込まれた。
その後も3人ほど参加者がやられてる。うち2人も奴の配下に真正面から殺された。」
「五道化としちゃあ結構なことだが、随分好き勝手やってくれるじゃねえか。」
砂狼シロコは元々アルジュナ・オルタを処理するための五道化である。
運営に叛意を持つ彼女が五道化としての仕事を真面目にこなす気はさらさらないが、”ある理由”から彼女自身アルジュナ・オルタのような殺人者(マーダー)に勝たれては困る立場にある。
だから見ていた。その結果、彼女が出張るより早く黒き最後の神は神殺しの礎となって消え去った。
運営に叛意を持つ彼女が五道化としての仕事を真面目にこなす気はさらさらないが、”ある理由”から彼女自身アルジュナ・オルタのような殺人者(マーダー)に勝たれては困る立場にある。
だから見ていた。その結果、彼女が出張るより早く黒き最後の神は神殺しの礎となって消え去った。
「そう、私たちは五道化。殺し合いを円滑に進めるための舞台演出。
でも……もうそうある必要は無くなった。少なくとも私とドゴルドには。」
「……何が言いたい。」
でも……もうそうある必要は無くなった。少なくとも私とドゴルドには。」
「……何が言いたい。」
思わせぶりな言葉に双眼鏡から目を放したドゴルドに、シロコの左右異なる色の双眸が憎悪に燃えた濁った眼を浮かべていた。
背筋にゾッとするものを感じるドゴルドを前に、シロコは続ける。
背筋にゾッとするものを感じるドゴルドを前に、シロコは続ける。
「アルジュナ・オルタは死んだ。空蝉丸も死んだ。
もう私たちが運営に与えられた役割は果たす必要がないし、そもそもドゴルドにはその義理もない。
何より、羂索たちははあなたとの約束を守らなかった。」
「”縛り”とやらを結んだはずだ。どういう理由があれ約束を破れば不利を被るのは羂索どものはずだ。」
もう私たちが運営に与えられた役割は果たす必要がないし、そもそもドゴルドにはその義理もない。
何より、羂索たちははあなたとの約束を守らなかった。」
「”縛り”とやらを結んだはずだ。どういう理由があれ約束を破れば不利を被るのは羂索どものはずだ。」
十全の空蝉丸との決着。
ドゴルドは五道化となるにあたって、羂索やヒースクリフとそのような約定を結んでいた。呪術的には”縛り”というらしく、守らないと不利を被るのは羂索の側とも聞いていた。
そう付け加えるドゴルドにシロコは首を横に振る。詐欺師に騙された人を見るような憐れみがわずかに刺さった。
ドゴルドは五道化となるにあたって、羂索やヒースクリフとそのような約定を結んでいた。呪術的には”縛り”というらしく、守らないと不利を被るのは羂索の側とも聞いていた。
そう付け加えるドゴルドにシロコは首を横に振る。詐欺師に騙された人を見るような憐れみがわずかに刺さった。
「呪術には詳しくないけれど、そうだとしたらもっと早く羂索は動いてる。
たぶんだけど、ドゴルドと空蝉丸をこの会場に転送した時点で”戦うための舞台は用意し””両者に十全に戦える状態を整えた”と認識している。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ドゴルドと空蝉丸が戦えなかったことも、同じ戦場にいながらなぜか2人が戦わなかったとでも解釈してるんだと思う。」
「腹立たしい!詭弁じゃねえか!!」
「そう、詭弁。
ヒースクリフやクルーゼがその気ならキリトやキラ・ヤマト、ルルーシュにやっているように、空蝉丸にも何らかの優遇措置を講じたり。ドゴルドと空蝉丸を同じ場所に転送することもできたはず。
それをしなかった時点で、羂索たちは約束を守る気なんかなかったはず。あったとしても『ドゴルドと空蝉丸の戦いになった方が盛り上がるから焚きつけておこう』程度のものでしかない。」
たぶんだけど、ドゴルドと空蝉丸をこの会場に転送した時点で”戦うための舞台は用意し””両者に十全に戦える状態を整えた”と認識している。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ドゴルドと空蝉丸が戦えなかったことも、同じ戦場にいながらなぜか2人が戦わなかったとでも解釈してるんだと思う。」
「腹立たしい!詭弁じゃねえか!!」
「そう、詭弁。
ヒースクリフやクルーゼがその気ならキリトやキラ・ヤマト、ルルーシュにやっているように、空蝉丸にも何らかの優遇措置を講じたり。ドゴルドと空蝉丸を同じ場所に転送することもできたはず。
それをしなかった時点で、羂索たちは約束を守る気なんかなかったはず。あったとしても『ドゴルドと空蝉丸の戦いになった方が盛り上がるから焚きつけておこう』程度のものでしかない。」
なぜなら、空蝉丸という参加者は羂索やヒースクリフにとってそこまで魅力的なものではなかったから。
あえて言葉にしなかった意図がひしひしと伝わり。ドゴルドは怒りにわなないている。
あえて言葉にしなかった意図がひしひしと伝わり。ドゴルドは怒りにわなないている。
シロコはてっきり喧嘩上刀でも抜いて暴れるかと思ったが、以外にもドゴルドは数秒わなないたのちふうと大きく息を吐きだした。
迸る怒気はそのままだが、少なくとも震えは止まっている。柊真昼を肉体にしたことで冷静さを手に入れたのかもなとシロコは思った。
迸る怒気はそのままだが、少なくとも震えは止まっている。柊真昼を肉体にしたことで冷静さを手に入れたのかもなとシロコは思った。
「んで、俺をイラつかせてどうする気だ。
こんな話をしてるのは、何か理由があるんだろ?」
「理由というより。確認。
もう私たちに運営に従う理由もなければ、与えられた仕事もない。
運営が用意した役割に縛られる必要ももうない。」
「……うだうだ言ってるが、要は『俺とお前がこうしてつるむ必要もない』って言いてえんだろ。」
こんな話をしてるのは、何か理由があるんだろ?」
「理由というより。確認。
もう私たちに運営に従う理由もなければ、与えられた仕事もない。
運営が用意した役割に縛られる必要ももうない。」
「……うだうだ言ってるが、要は『俺とお前がこうしてつるむ必要もない』って言いてえんだろ。」
シロコは頷く。シロコがドゴルドについていたのは『ドゴルドと空蝉丸を戦わせる』という当初の約束を実行するためだ。
この場の2人はもはや冥黒の五道化としての役割はなく、その称号にも価値はない。ただのシロコとドゴルドの目的は、当然ながら食い違う。
ドゴルドはシロコの目的を知らない。だが少なくとも、シロコの理由が何であれドゴルドのすべきことは変わらない。
この場の2人はもはや冥黒の五道化としての役割はなく、その称号にも価値はない。ただのシロコとドゴルドの目的は、当然ながら食い違う。
ドゴルドはシロコの目的を知らない。だが少なくとも、シロコの理由が何であれドゴルドのすべきことは変わらない。
「俺はあのメラとかいう奴をブッ殺す。」
五道化としてではなく、ドゴルドという武人として。宿命の仇の命を奪った男に挑む以外の選択肢はない。
弔い合戦などとは死んでも言うつもりはなかったが、空蝉丸を殺した――それも間違いなく戦いさえせずに――男を見逃せるほど、ドゴルドという男は我慢強くない。
男がつかさどる感情は他でもない”怒り”だ。何度死のうが己の起源(オリジン)には背けない。
弔い合戦などとは死んでも言うつもりはなかったが、空蝉丸を殺した――それも間違いなく戦いさえせずに――男を見逃せるほど、ドゴルドという男は我慢強くない。
男がつかさどる感情は他でもない”怒り”だ。何度死のうが己の起源(オリジン)には背けない。
「何ならテメエとの話が終わったら、すぐにでもカチ込むつもりだが。」
「そう言うと思った。私も同行する。
私としてもメラに勝ち残られても困る。」
「そう言うと思った。私も同行する。
私としてもメラに勝ち残られても困る。」
少し想定から外れた言葉に、ドゴルドは「ほう」と楽し気に少女を一瞥した。
「五道化なんざやってる以上理由の1つもあるんだろうが、殺し合いの趨勢がテメエの目的に関係あるのか?」
「ん。私としては殺し合いに乗らない参加者が勝ってもらったほうが都合がいい。」
「それはあの三馬鹿をぶちのめしてえの間違いじゃねえのか。」
「そうともいう。」
「言うのかよ。」
「ん。私としては殺し合いに乗らない参加者が勝ってもらったほうが都合がいい。」
「それはあの三馬鹿をぶちのめしてえの間違いじゃねえのか。」
「そうともいう。」
「言うのかよ。」
いまいち気の抜けた会話だが、シロコにとって羂索・ヒースクリフ・クルーゼの三人は母校も友人も滅ぼした挙句、その上で悪趣味極まる殺し合いを開いてる鬼畜どもだ。
時を同じくして桐藤ナギサの放送が佳境に入る。
光を失った少女の悲痛な訴えが響く中シロコは唇を噛み締める。
時を同じくして桐藤ナギサの放送が佳境に入る。
光を失った少女の悲痛な訴えが響く中シロコは唇を噛み締める。
「私の目的は明かせない。だけどそれには、運営達の全滅が絶対条件。
そしてメラが現れたことで、1人だけ先んじて倒すチャンスが出来たやつがいる。」
「誰のことだ。」
「ヒースクリフ。」
そしてメラが現れたことで、1人だけ先んじて倒すチャンスが出来たやつがいる。」
「誰のことだ。」
「ヒースクリフ。」
混沌を愛する呪詛師は動かない。
神殺しや最後の神を盤上に並べた大馬鹿野郎も動かない。
だがヒースクリフ。殺し合いに手慣れたゲームマスターは、きっとこの異常事態に重い腰をあげるだろう。
メラの覚醒ははっきり言って最悪と言っていい状況だが、砂狼シロコに限って言えばか細いながらチャンスが生まれたことになる。
神殺しや最後の神を盤上に並べた大馬鹿野郎も動かない。
だがヒースクリフ。殺し合いに手慣れたゲームマスターは、きっとこの異常事態に重い腰をあげるだろう。
メラの覚醒ははっきり言って最悪と言っていい状況だが、砂狼シロコに限って言えばか細いながらチャンスが生まれたことになる。
「ヒースクリフを討つ。
そのためには、彼、キリトが必要。」
そのためには、彼、キリトが必要。」
刺された指は未だ逃げ惑う黒の剣士に向けられていた。
ドゴルドはその意味を知らない。知る必要もない。
この女は本気で運営を落とすつもりで、その策に乗っかれば決闘の約定を道楽のために踏みにじった腹立たしい奴の1人に痛い目を合わせられるなら。
ドゴルドはその意味を知らない。知る必要もない。
この女は本気で運営を落とすつもりで、その策に乗っかれば決闘の約定を道楽のために踏みにじった腹立たしい奴の1人に痛い目を合わせられるなら。
「成程。乗った。」
「そういうと思った。」
「そういうと思った。」
悪戯をする子供のように楽し気に、その奥底に消えることのない憤怒を湛えてドゴルドは飛び出し、シロコもそれに続く。
「あと、もう1つお願いしたことが……」
「図々しいなクソガキ!!
まあいい、ここまでツルんだよしみもある。」
「それじゃあドゴルドには……」
「図々しいなクソガキ!!
まあいい、ここまでツルんだよしみもある。」
「それじゃあドゴルドには……」
そんな言葉が遠ざかっていき、屋上には誰も居なくなった。
乾いた風が吹く中、ぽつんと置かれたテレビから勝ち誇った笑みを浮かべた男が高らかに叫んだ。
乾いた風が吹く中、ぽつんと置かれたテレビから勝ち誇った笑みを浮かべた男が高らかに叫んだ。
『私は最強になった。』
遠くからか細く聞こえた言葉を、シロコもドゴルドもすぐにそのことは忘れ去った。
彼らの標的は自称『最強』ではなく、自他ともに認める最強とその上に居る運営である。
彼らの標的は自称『最強』ではなく、自他ともに認める最強とその上に居る運営である。
◆◇◆
メラがキリトたちを殺さない理由は大したものではない。
始め十秒は思いのほかキリトが粘ったからで、次の十秒はルルーシュが行った放送に意識を裂かれたからだ。
その間に立ち上がり少しでも逃げ出そうとする少年少女の情けない姿が、メラの嗜虐心を刺激した。
始め十秒は思いのほかキリトが粘ったからで、次の十秒はルルーシュが行った放送に意識を裂かれたからだ。
その間に立ち上がり少しでも逃げ出そうとする少年少女の情けない姿が、メラの嗜虐心を刺激した。
――キリト殺すの……サチが起きてからの方が面白くねぇ?
言葉にすればたったそれだけ。メラ本人どころか神将の面々でさえ、あの程度の雑魚を殺したら死体さえ残らない。
冥黒アヤネが死んだことでサチの目が覚めるのは時間の問題。遅くとも次の放送のころには意識が戻っているはずだ。
そのリミットまでの間はせいぜい雑魚の足掻きを見てやろうと右腕を無造作に振るう。配下の神将ライダーたちを動かすにはそれだけでよかった。
冥黒アヤネが死んだことでサチの目が覚めるのは時間の問題。遅くとも次の放送のころには意識が戻っているはずだ。
そのリミットまでの間はせいぜい雑魚の足掻きを見てやろうと右腕を無造作に振るう。配下の神将ライダーたちを動かすにはそれだけでよかった。
先んじて動いたのはマッハチェイサー、次いでパラドクス。
ゼンリンシューターとガシャコンパラブレイガンを向けた仮面ライダーに、へたり込む少女たちの顔は青ざめか細い悲鳴を漏らす。
花菱はるかと水神小夜。またはマジアマゼンタとマジアアズール。
ここにおいては、メラに殺されるキルスコアその5と6以外の何物でもないモブキャラが二匹。
そこに正義のヒロインの面影など残っていない。恐怖と絶望に彩られた少女たちは戦うどころか立ち上がることさえ出来ずにいた。
ゼンリンシューターとガシャコンパラブレイガンを向けた仮面ライダーに、へたり込む少女たちの顔は青ざめか細い悲鳴を漏らす。
花菱はるかと水神小夜。またはマジアマゼンタとマジアアズール。
ここにおいては、メラに殺されるキルスコアその5と6以外の何物でもないモブキャラが二匹。
そこに正義のヒロインの面影など残っていない。恐怖と絶望に彩られた少女たちは戦うどころか立ち上がることさえ出来ずにいた。
「キリトはまだしも、お嬢ちゃん達はぁ……いらない。ばいばぁい。」
ひらひらと手を振るグランドジオウの言葉には、何の重みも乗っていなかった。
自分が標的でなかったからか、少女達より冷静なキリトだけがそのことに気づいた。
自分が標的でなかったからか、少女達より冷静なキリトだけがそのことに気づいた。
目の前の魔王は、ルルーシュやグリオンとは違う。
ルルーシュのように他者を選定する暴君でも。グリオンのように他者の絶望を楽しむ暗君でもない。
SAOのPKのように、残虐性に酔いしれてさえいなかった。
ルルーシュのように他者を選定する暴君でも。グリオンのように他者の絶望を楽しむ暗君でもない。
SAOのPKのように、残虐性に酔いしれてさえいなかった。
目の前の男はゲーマーだ。
はるかや小夜のことを雑魚モンスターとしか見ていない。ただのスコアとしかみていない。
2人が死んだ後にキリトが糾弾したとて、『お前はゲームをするときに、雑魚モンスターを殺すたびに心を痛めるのかい?めんどくせえやつだなぁ。』などと平然と言ってのけるに違いない。
だって自分なら痛めない。いかにVRMMOの質感がリアルだとて、モンスターを切り赤いポリゴンが飛び散るたびに罪悪感を抱いていては、2年もの殺し合いを生き残れなかったに違いない。
はるかや小夜のことを雑魚モンスターとしか見ていない。ただのスコアとしかみていない。
2人が死んだ後にキリトが糾弾したとて、『お前はゲームをするときに、雑魚モンスターを殺すたびに心を痛めるのかい?めんどくせえやつだなぁ。』などと平然と言ってのけるに違いない。
だって自分なら痛めない。いかにVRMMOの質感がリアルだとて、モンスターを切り赤いポリゴンが飛び散るたびに罪悪感を抱いていては、2年もの殺し合いを生き残れなかったに違いない。
「ふざけやがって……」
だがこの会場は現実だ。遊びどころかゲームですらない。
はるかも小夜も。チェイスも千佳もジークも。こいつに狩られるだけの雑魚モンスターなんかじゃない。
自分が狙われていないことは分かってる。だからこそ動けるのは自分しかいないのだと。
折れそうな心に訴えかけて、キリトは唯一の切り札――デュエルガンダムの起動キーを握りしめた。
はるかも小夜も。チェイスも千佳もジークも。こいつに狩られるだけの雑魚モンスターなんかじゃない。
自分が狙われていないことは分かってる。だからこそ動けるのは自分しかいないのだと。
折れそうな心に訴えかけて、キリトは唯一の切り札――デュエルガンダムの起動キーを握りしめた。
「うおおおおお!!!!!」
『ヒッサツ フルスロットル!』
『パーフェクトクリティカルフィニッシュ!!』
『ヒッサツ フルスロットル!』
『パーフェクトクリティカルフィニッシュ!!』
背後から聞こえる電子音と空を切る閃光。
シグナルバイクを吹かせたゼンリンシューターが炎を吹き、ガシャットを装填したガシャコンパラブレイガンの引き金が軽々と引かれ。モブを殺す「こうげき」コマンドが弾幕となって撃ちだされる。
当たるどころか掠るだけでも致命傷は確実な弾幕をキリトは見向きもせずに、デュエルガンダムの全力の加速で2人の少女を拾い上げ、必死の形相でキリトは駆けた。
急加速に髪がぐしゃぐしゃにかき乱される中、さっきまで魔法少女たちがへたり込んでいた場所が粉微塵に砕ける。
粉塵に隠れた先で2体の仮面ライダーは、次の標的としてその銃口をキリトたちへと向けた。
優先度が低い自分が抱えているから追撃を避けるのではないか・・・などという甘ったれた考えはよぎりすらしない。逃げねば死ぬ。それだけだ。
シグナルバイクを吹かせたゼンリンシューターが炎を吹き、ガシャットを装填したガシャコンパラブレイガンの引き金が軽々と引かれ。モブを殺す「こうげき」コマンドが弾幕となって撃ちだされる。
当たるどころか掠るだけでも致命傷は確実な弾幕をキリトは見向きもせずに、デュエルガンダムの全力の加速で2人の少女を拾い上げ、必死の形相でキリトは駆けた。
急加速に髪がぐしゃぐしゃにかき乱される中、さっきまで魔法少女たちがへたり込んでいた場所が粉微塵に砕ける。
粉塵に隠れた先で2体の仮面ライダーは、次の標的としてその銃口をキリトたちへと向けた。
優先度が低い自分が抱えているから追撃を避けるのではないか・・・などという甘ったれた考えはよぎりすらしない。逃げねば死ぬ。それだけだ。
「距離を取るぞ!このままじっとしてたら俺たちも終わりだ!!」
「きゃっ!」
「キリトさん!!」
「きゃっ!」
「キリトさん!!」
米俵のようにモビルスーツは2人の少女を担ぐ。配慮には欠けているが、少女をエスコートする余裕は黒の剣士には残っていない。
『逃げる』と言わなかったのがちっぽけなプライドだったのか、メラにサチを殺さないようくぎを刺すためのものだったのか。
恐らくその両方だろうと勘づきながら、キリトの態度にメラは楽し気に手を叩いた。
少なくともやる気はあるということだ。無気力な人形を潰すだけでは作業でしかない。敵意と行動力を持つ相手を狩ってこそゲームだ。
『逃げる』と言わなかったのがちっぽけなプライドだったのか、メラにサチを殺さないようくぎを刺すためのものだったのか。
恐らくその両方だろうと勘づきながら、キリトの態度にメラは楽し気に手を叩いた。
少なくともやる気はあるということだ。無気力な人形を潰すだけでは作業でしかない。敵意と行動力を持つ相手を狩ってこそゲームだ。
「いいねぇ!ヤケクソで特攻するだけなら逆に冷めてたぜ。鬼ごっこがお望みなら付き合ってやるよ!
両手に花とは羨ましい、いいとこ見せようぜ色男!」
「き……来てます!右!右に曲がって!!!」
両手に花とは羨ましい、いいとこ見せようぜ色男!」
「き……来てます!右!右に曲がって!!!」
メラの小馬鹿にするような言葉に合わせて、仮面ライダーたちの銃口から光が撃ちだされる。
銃声が響くというのは戦場において効果的に作用したと、ドキュメンタリーか何かで聞いたことを小夜は思い出していた。
玩具のような電子音と銃声が響くたび、氷でもあてられたかのように怖気が走り震えが止まらない。キリトに担がれていなければ漏らしていたかもしれない。
銃声が響くというのは戦場において効果的に作用したと、ドキュメンタリーか何かで聞いたことを小夜は思い出していた。
玩具のような電子音と銃声が響くたび、氷でもあてられたかのように怖気が走り震えが止まらない。キリトに担がれていなければ漏らしていたかもしれない。
デュエルガンダムはトップスピードを維持しつつ、木や建物の影に滑り込みながら銃撃を捌く。
キリトの卓越したゲームセンスと操縦技術による奇跡……そう手放しに喜べるものは1人もない。
ここまで10を超える銃撃がキリトたちに当たらなかったのはただ運が良かっただけに他ならない。背後で一戸建ての壁が爆ぜて、瓦礫が少女たちの頬をわずかに掠めた。
はるかの頬が微かに切れか細く赤いものが垂れるが、はるかが悲鳴を上げる間も、小夜やキリトが仲間の負傷を懸念する間もこの状況には存在しない。
振り向く余裕さえない三人だが、その実その意識は背後で銃口を突き付ける2体のライダーとその主たるメラにばかり向けられていた。
キリトの卓越したゲームセンスと操縦技術による奇跡……そう手放しに喜べるものは1人もない。
ここまで10を超える銃撃がキリトたちに当たらなかったのはただ運が良かっただけに他ならない。背後で一戸建ての壁が爆ぜて、瓦礫が少女たちの頬をわずかに掠めた。
はるかの頬が微かに切れか細く赤いものが垂れるが、はるかが悲鳴を上げる間も、小夜やキリトが仲間の負傷を懸念する間もこの状況には存在しない。
振り向く余裕さえない三人だが、その実その意識は背後で銃口を突き付ける2体のライダーとその主たるメラにばかり向けられていた。
『FANTASY STRIKE』
だから、”前”から迫る一撃への対応が間に合わない。
猫を思わせる仮面を被る濃紺と黄金の仮面ライダー。奇跡と愛の果てに生まれた空想を現実に変える戦士が、バックルより生み出した幻想的な剣を振りかぶりキリトに斬りかかる。
鞍馬祢音でも横山千佳でも小宮果穂でもないナニカ。そのどれより冷たくそのどれより強い神将の刃は、プラスチックでも砕くようにあっさりとデュエルガンダムの装甲を打ち砕く。
装甲が砕け丸腰になったキリトの体が宙を舞い、同じく投げ出されたトレスマジアと揃って地面に転がった。
猫を思わせる仮面を被る濃紺と黄金の仮面ライダー。奇跡と愛の果てに生まれた空想を現実に変える戦士が、バックルより生み出した幻想的な剣を振りかぶりキリトに斬りかかる。
鞍馬祢音でも横山千佳でも小宮果穂でもないナニカ。そのどれより冷たくそのどれより強い神将の刃は、プラスチックでも砕くようにあっさりとデュエルガンダムの装甲を打ち砕く。
装甲が砕け丸腰になったキリトの体が宙を舞い、同じく投げ出されたトレスマジアと揃って地面に転がった。
「がっ……!!」
「きゃっ!!」
「サチちゃんのこともあるからさぁ。ぶっ壊すだけで済ませてやったんだぜ。
その仮面ライダーは物質を透過できる。その気になれば起動キーガン無視で中身のキリト君を殺せたことを自覚しろよぉ。
そもそも、エグゼイドやディケイドを動かしたらテメエらはなにもできずにジ・エンドだ。いい夢見れたかガキンチョども~。」
「きゃっ!!」
「サチちゃんのこともあるからさぁ。ぶっ壊すだけで済ませてやったんだぜ。
その仮面ライダーは物質を透過できる。その気になれば起動キーガン無視で中身のキリト君を殺せたことを自覚しろよぉ。
そもそも、エグゼイドやディケイドを動かしたらテメエらはなにもできずにジ・エンドだ。いい夢見れたかガキンチョども~。」
サチを抱える神将ディケイドを伴い、足音が響くようにゆっくり歩きながらメラがけたけたと笑う。
その声を聴きながら、キリトもはるかも小夜も起き上がることさえできなかった。
3人にしては必死の逃避行。永遠にも感じられた数十秒だったのに、メラにとっては手加減と遊びでしかなかったという事実に、三人の中で何かが折れた。
かつかつと足音が響く中、ナーゴはもとよりいつの間にか追いついていたマッハチェイサーにパラドクスも3人を見下ろす。その無機質な瞳に最初に限界が来たのははるかだった。
その声を聴きながら、キリトもはるかも小夜も起き上がることさえできなかった。
3人にしては必死の逃避行。永遠にも感じられた数十秒だったのに、メラにとっては手加減と遊びでしかなかったという事実に、三人の中で何かが折れた。
かつかつと足音が響く中、ナーゴはもとよりいつの間にか追いついていたマッハチェイサーにパラドクスも3人を見下ろす。その無機質な瞳に最初に限界が来たのははるかだった。
「う……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
泣き叫ぶ少女の頬が涙で汚れた。泥だらけになった深緑のスカートにはちょろちょろと音を立ててシミが広がっていく。
花菱はるかは元々感受性が強い少女で、この会場に呼ばれたトレスマジアの三人の中では最も戦闘経験豊富だ。
・・・・・・・・
だからこそわかる。メラには勝てない。逃げることもできない。戦いにすらなっていない。
ここまで生き延びていたのはキリトが頑張ったからではない。その方が面白いとメラが思っていたから。遊ばれているという事実が悔しくて悔しくて、でも言い換えそうにも言葉が出ない。
息の仕方を忘れたように苦しくて、立ち上がり方を忘れたように足に力が入らない。喉から出てくる泣き言をどうやって止めたらいいのかはるかには分からない。
花菱はるかは元々感受性が強い少女で、この会場に呼ばれたトレスマジアの三人の中では最も戦闘経験豊富だ。
・・・・・・・・
だからこそわかる。メラには勝てない。逃げることもできない。戦いにすらなっていない。
ここまで生き延びていたのはキリトが頑張ったからではない。その方が面白いとメラが思っていたから。遊ばれているという事実が悔しくて悔しくて、でも言い換えそうにも言葉が出ない。
息の仕方を忘れたように苦しくて、立ち上がり方を忘れたように足に力が入らない。喉から出てくる泣き言をどうやって止めたらいいのかはるかには分からない。
「どうす……どうしゅれ……うわあああああああああああん。」
「はるか……」
「……ゴメン。2人とも……俺が何とかしなきゃいけないのに……」
「はるか……」
「……ゴメン。2人とも……俺が何とかしなきゃいけないのに……」
2人の声にも涙がにじむ。はるかほどではないにせよ、小夜もキリトも限界だった。
負けたとさえ思えない。死に物狂いで動いたつもりの行動は戦いにさえならずにあっけなく終わる。
メラは何故だか自分を殺さない。『殺せない』ではなく『殺さない』。
そんな特大の隙でさえ、心折れた黒の剣士では生かすことが出来ずにいる。
身じろぎも出来ない3人を前に、その元凶たるメラは小さくため息をついた。
負けたとさえ思えない。死に物狂いで動いたつもりの行動は戦いにさえならずにあっけなく終わる。
メラは何故だか自分を殺さない。『殺せない』ではなく『殺さない』。
そんな特大の隙でさえ、心折れた黒の剣士では生かすことが出来ずにいる。
身じろぎも出来ない3人を前に、その元凶たるメラは小さくため息をついた。
「おいおいおいおいおい。これじゃあ俺が虐めてるみたいじゃねえの!
もう終わりか?まだ支給品は残ってんだろ?さっきの連中の分まで頑張って俺様に立ち向かおうって気概はねえのぉ?
――じゃあいっか。やっちゃってお前ら。あ、キリトの死体は残しとけよ。サチに見せる。」
もう終わりか?まだ支給品は残ってんだろ?さっきの連中の分まで頑張って俺様に立ち向かおうって気概はねえのぉ?
――じゃあいっか。やっちゃってお前ら。あ、キリトの死体は残しとけよ。サチに見せる。」
あっけない幕引きだ。それとも今の自分が強すぎたのか。
一体一体があのキズナブラックに並ぶか下手をすれば凌駕するだろう神将の強さに、身震いと孤独感のようなものを抱えメラが手を振り下ろす。
一体一体があのキズナブラックに並ぶか下手をすれば凌駕するだろう神将の強さに、身震いと孤独感のようなものを抱えメラが手を振り下ろす。
『FANTASY STRIKE』
『ヒッサツ フルスロットル!』
『ノックアウトクリティカルフィニッシュ!!』
『ヒッサツ フルスロットル!』
『ノックアウトクリティカルフィニッシュ!!』
長き仮面ライダーの歴史の中でも上位の破壊力を持つ必殺技が、ためらうことなく3人の勇者に振り下ろされる。
後に残るのは3つの死骸だけ。この場の誰もが確信したその時だ。
後に残るのは3つの死骸だけ。この場の誰もが確信したその時だ。
「黒雷残光!阿修羅丸!!」
嵐のごとき怒りを迸らせ。雄たけびと共に漆黒の刀を構えた何者かが空より降ってきた。
横薙ぎに振り払われた漆黒の刃が今まさに止めを刺さんとしていた神将ライダーたちを拭き飛ばす。
黒鬼の剣に呪力を流した獅子の鎧。突然の乱入者に全員があっけにとられる中、同じく空から飛び降りた漆黒の少女もまた、魔王へと冷たい目を向けた。
横薙ぎに振り払われた漆黒の刃が今まさに止めを刺さんとしていた神将ライダーたちを拭き飛ばす。
黒鬼の剣に呪力を流した獅子の鎧。突然の乱入者に全員があっけにとられる中、同じく空から飛び降りた漆黒の少女もまた、魔王へと冷たい目を向けた。
| 151:■■■■ ~序章~ 国家の成り立ち | 投下順 | 152:使命Ⅰ:もしもこの世が舞台でも 私は私の道を行く |
| 161:掴め!ワタシたちの未来! | 時系列 | |
| 139:俺様がいる-ガラスの希望2014- | 花菱はるか | |
| キリト | ||
| 水神小夜 | ||
| 小鳥遊ホシノ | ||
| メラ | ||
| サチ | ||
| 116:確かめたい答え | 邪樹右龍 | |
| 鬼方カヨコ | ||
| 東ゆう | ||
| ラクス・クライン | ||
| ディーヴァ | ||
| 118:アスラン・ザラ:ライトニング | 鬼龍院羅暁 | |
| 128:交情F:邪王軍突撃 | ギラ・ハスティー | |
| ユフィリア・マゼンタ | ||
| 朝比奈まふゆ | ||
| パラド | ||
| 102:善意の使徒は何故チェイスを誘ったのか | ヒースクリフ | |
| 111:Cuz I―この人生の意味と使い方を | 激怒戦騎のドゴルド | |
| 柊真昼 | ||
| 亡失鎮魂の??? |