露わになった大仁田の本体の姿は、
まさしく御伽話に出て来る『鬼』そのものであった。
赤く禍々しい筋骨隆々の肉体。頭に伸びた鋭い二本の角。
そして……本当に着けておるんじゃな、虎柄の腰巻。
まさしく御伽話に出て来る『鬼』そのものであった。
赤く禍々しい筋骨隆々の肉体。頭に伸びた鋭い二本の角。
そして……本当に着けておるんじゃな、虎柄の腰巻。
「……別に、そこまで忠実に再現せずとも良かろうにのぉ」
「う、うるさい!!これは別に意識して着けている訳では
ない!!私が元々身に着けていたのを、人間共が勝手に
記録しただけの事だ!!」
「う、うるさい!!これは別に意識して着けている訳では
ない!!私が元々身に着けていたのを、人間共が勝手に
記録しただけの事だ!!」
「ま、どうでも良いがの。ようやっと手応えのありそうな
相手に巡り会えたのじゃ、簡単に死んでくれるなよ?」
ビキッ、と肉体に力を入れ、臨戦態勢になる。さぁ、
今度こそ正面から正々堂々と闘り合おうではないか!!
「はっ!!」
地面を蹴り、空高く飛び上がる。
顔だけでワシの身長くらいあろうかという巨体。
独活の大木ではないところを、見せるが良い!
「小蝿め。消えて失せろ」
相手に巡り会えたのじゃ、簡単に死んでくれるなよ?」
ビキッ、と肉体に力を入れ、臨戦態勢になる。さぁ、
今度こそ正面から正々堂々と闘り合おうではないか!!
「はっ!!」
地面を蹴り、空高く飛び上がる。
顔だけでワシの身長くらいあろうかという巨体。
独活の大木ではないところを、見せるが良い!
「小蝿め。消えて失せろ」
ドッ!!!
「ぐぉ!!」
身の丈にそぐわぬ素早い攻撃。
奴の拳は何とか受け止めたが、その勢いは
ワシの体を吹き飛ばすに十分なものじゃった。
離れた建物まで一気に飛ばされ、
壁にめり込むほどの威力で叩きつけられる。
……ワシでなければ即死しておるぞ、全く!
身の丈にそぐわぬ素早い攻撃。
奴の拳は何とか受け止めたが、その勢いは
ワシの体を吹き飛ばすに十分なものじゃった。
離れた建物まで一気に飛ばされ、
壁にめり込むほどの威力で叩きつけられる。
……ワシでなければ即死しておるぞ、全く!
「……油断するからじゃ、阿呆め。見ておれ、妖の戦いとはただ拳と拳をぶつけ合うだけではないという事をの!」
狐は狐火を纏ってふわりと浮かび上がる。
大仁田はワシと同じように殴りかかるが、
狐は空中をひらひらと飛び回ってそれを避けている。
狐は狐火を纏ってふわりと浮かび上がる。
大仁田はワシと同じように殴りかかるが、
狐は空中をひらひらと飛び回ってそれを避けている。
「鬱陶しい……!さっさと潰れろと言っているのだ!!」
「全く……誰も彼も血の気が多くて嫌になるのぉ。
優雅さと言うものを持たんか。ほれ、呪符をくれてやるぞ」
「全く……誰も彼も血の気が多くて嫌になるのぉ。
優雅さと言うものを持たんか。ほれ、呪符をくれてやるぞ」
ボゥン!!!
狐が投げた札が大仁田の腕に貼り付くと同時に破裂し、
大きな火傷を作る。
少なくともあやつの身体には攻撃が効くらしい。
気に入らんが……力の強い相手を弄ぶのは狐の方が
一枚上手のようじゃ。
狐が投げた札が大仁田の腕に貼り付くと同時に破裂し、
大きな火傷を作る。
少なくともあやつの身体には攻撃が効くらしい。
気に入らんが……力の強い相手を弄ぶのは狐の方が
一枚上手のようじゃ。
「ぐっ……この、狐如きが!!」
「なんじゃ、狐を馬鹿にしよるのか?
化かし合いでも戦いでも勝てぬくせに、
口だけは一丁前じゃのぉ」
「うるさい!!逃げてばかりでロクに戦いもしていない癖に偉そうに……!!」
「なんじゃ、狐を馬鹿にしよるのか?
化かし合いでも戦いでも勝てぬくせに、
口だけは一丁前じゃのぉ」
「うるさい!!逃げてばかりでロクに戦いもしていない癖に偉そうに……!!」
……相変わらず、人を煽るのが無駄に上手い奴じゃな。
ああして怒らせる事で相手の調子を狂わせ、
自身の領域へと誘い込む。
あれこそ奴の最も得意とする戦い方。
ああなってしまっては、いくら巨躯を誇る鬼であろうと
蹂躙されるばかりであろうな。
ああして怒らせる事で相手の調子を狂わせ、
自身の領域へと誘い込む。
あれこそ奴の最も得意とする戦い方。
ああなってしまっては、いくら巨躯を誇る鬼であろうと
蹂躙されるばかりであろうな。
「くふふ、さてさて、次はどんな手を見せてくれるのじゃ?まさか馬鹿の一つ覚えのようにその無駄に大きな手をぶんぶん振るだけではあるまい?」
「……良かろう。こんな所で使う気はなかったが……
私の奥の手を見せてやる。光栄に思え」
「……良かろう。こんな所で使う気はなかったが……
私の奥の手を見せてやる。光栄に思え」
ズズズズズ…………!
何か、これまでとは違う異質な妖力が
大仁田の身体から流れ出す。
まるで、世界を塗りつぶすかのような、
ぬめぬめとした気色の悪い妖気。
大仁田の身体から流れ出す。
まるで、世界を塗りつぶすかのような、
ぬめぬめとした気色の悪い妖気。
「なんじゃ、これは……?おい狐、
一度下がれ!何かマズい!!」
「んん?臆病風に吹かれたか猫よ。どう見ても
ただの悪あがきであろう。好機である今攻めずして
いつ此奴を倒せると言うのじゃ」
くっ……!調子に乗りやすいのは狐の短所じゃの。
ワシは一旦飛び退いて大仁田から距離を取る。
奴は動きを止め、何かの異能を使おうとしているように
見えるが……。
一度下がれ!何かマズい!!」
「んん?臆病風に吹かれたか猫よ。どう見ても
ただの悪あがきであろう。好機である今攻めずして
いつ此奴を倒せると言うのじゃ」
くっ……!調子に乗りやすいのは狐の短所じゃの。
ワシは一旦飛び退いて大仁田から距離を取る。
奴は動きを止め、何かの異能を使おうとしているように
見えるが……。
「見るが良い。世界を塗り替える、私本来の異能をな。
『夜の刻限』!!!」
『夜の刻限』!!!」
ブァッ!!!!!!
「なっ!?」
液体とも気体ともつかない真っ黒な『何か』が大仁田の足元から一気に溢れ出し、周囲の地面を染め上げて行く。
いや、地面だけではない。空間そのものが、
黒く塗り潰されている……!?これでは、まるで……!!
液体とも気体ともつかない真っ黒な『何か』が大仁田の足元から一気に溢れ出し、周囲の地面を染め上げて行く。
いや、地面だけではない。空間そのものが、
黒く塗り潰されている……!?これでは、まるで……!!
「そうか……奴め、『夜を作り出しておる』のか!!
自分が最も得意とする闇の世界に、ワシらを引き摺り込もうとしておる!!」
大仁田が作り出す『夜』は凄まじい速度で広がり、
周囲を飲み込んでいく。距離を取ったワシと違い、近くで浮いていた狐は既に闇の中に取り込まれてしまっている。
「くっ……自分の周囲に、夜を作り出すじゃと!?
そんな時間に干渉する力、聞いた事がないぞ……!!」
流石にたじろいだ狐は、すぐに闇から出ようとするが……。
自分が最も得意とする闇の世界に、ワシらを引き摺り込もうとしておる!!」
大仁田が作り出す『夜』は凄まじい速度で広がり、
周囲を飲み込んでいく。距離を取ったワシと違い、近くで浮いていた狐は既に闇の中に取り込まれてしまっている。
「くっ……自分の周囲に、夜を作り出すじゃと!?
そんな時間に干渉する力、聞いた事がないぞ……!!」
流石にたじろいだ狐は、すぐに闇から出ようとするが……。
「どうした?散々私を煽っておいて、
状況が悪くなると逃げるのか?臆病者め」
闇に溶け込むようにいきなり現れた大仁田に、
身体をがっしりと掴まれてしまう。
「ぐふっ……おの、れ……離せッ!離さんか無礼者!!」
「ただの妖が鬼に逆らうなど、どれだけ愚かな事か教えてやる。そこの猫も見ていろ。
お仲間が無残に潰されるところをな」
状況が悪くなると逃げるのか?臆病者め」
闇に溶け込むようにいきなり現れた大仁田に、
身体をがっしりと掴まれてしまう。
「ぐふっ……おの、れ……離せッ!離さんか無礼者!!」
「ただの妖が鬼に逆らうなど、どれだけ愚かな事か教えてやる。そこの猫も見ていろ。
お仲間が無残に潰されるところをな」
メキッ……ギリギリギリ……!!!
「あ、が……!!ぎ、があぁッ!!
あ、ァ………………」
手も足も出ないとはこの事だ。
身体を掴まれてしまっている狐は必死にジタバタともがくが……骨や内臓が軋む音がして徐々に抵抗が弱まっていく。
まずい。いかに不死の妖と言えど、完全に潰されてしまっては再生にどれだけ時間がかかるか分からない。
今、あやつにいなくなられるのは困る。
……助けなくては!!
あ、ァ………………」
手も足も出ないとはこの事だ。
身体を掴まれてしまっている狐は必死にジタバタともがくが……骨や内臓が軋む音がして徐々に抵抗が弱まっていく。
まずい。いかに不死の妖と言えど、完全に潰されてしまっては再生にどれだけ時間がかかるか分からない。
今、あやつにいなくなられるのは困る。
……助けなくては!!
「止めんかッ、この木偶の坊め!!」
なんとしても奴の拳を開かせて狐を解放しなければ……!!
なんとしても奴の拳を開かせて狐を解放しなければ……!!
グシャッ!!!!!
「……あ…………」
ボタボタボタッ、と。
奴の拳から鮮血が滴り落ちる。
狐の身体はだらりと垂れ下がり……
もはや見る影もなく、潰されていた。
ボタボタボタッ、と。
奴の拳から鮮血が滴り落ちる。
狐の身体はだらりと垂れ下がり……
もはや見る影もなく、潰されていた。
「はっ、呆気ない。大した事はなかったな。
力だけの相手だと馬鹿にしていたか?
術で翻弄すれば何もできないとでも?」
大仁田は、潰れた狐の身体をゴミのように投げ捨てて、
こちらの方を向く。
「さぁ次は貴様の番だ。安心しろ、
すぐにお仲間の後を追わせてやる」
「……狐を潰した程度で良い気になるなよ。
ワシはあやつのようには行かんぞ」
力だけの相手だと馬鹿にしていたか?
術で翻弄すれば何もできないとでも?」
大仁田は、潰れた狐の身体をゴミのように投げ捨てて、
こちらの方を向く。
「さぁ次は貴様の番だ。安心しろ、
すぐにお仲間の後を追わせてやる」
「……狐を潰した程度で良い気になるなよ。
ワシはあやつのようには行かんぞ」
───ワシは、狐に限らず、自身の分け身達に対して情があるかと問われたなら即座に「ない」と答えるじゃろう。
事実、あやつが死んだ今でも(死んではおらんじゃろうが)
さほど怒りは感じてはいない。
事実、あやつが死んだ今でも(死んではおらんじゃろうが)
さほど怒りは感じてはいない。
しかし。自分と同等の力を持つ者がいとも容易く倒されたという事実には、胸の奥がザワザワとざわめく。
強敵との邂逅による、期待とも不安とも焦燥とも付かぬ
ソレを、どう表現したら良いかは分からん。
分からんが、とにかく。
「今、ワシは……オヌシを殺したくて仕方がない!!」
強敵との邂逅による、期待とも不安とも焦燥とも付かぬ
ソレを、どう表現したら良いかは分からん。
分からんが、とにかく。
「今、ワシは……オヌシを殺したくて仕方がない!!」
「くくっ……はははは!!なら今すぐにやってみろ!!
できるものならな!!」
できるものならな!!」
「馬鹿め、状況が見えんのか。
今は退く時だ、撤退するぞ」
蝙蝠に紛れて、目の前に神楽坂が現れる。
「ぬっ……折角暖まって来たところじゃと言うのに。
だがまぁ、オヌシが言うなら仕方ないのぉ。
狐の身体だけ拾って帰るぞ」
今は退く時だ、撤退するぞ」
蝙蝠に紛れて、目の前に神楽坂が現れる。
「ぬっ……折角暖まって来たところじゃと言うのに。
だがまぁ、オヌシが言うなら仕方ないのぉ。
狐の身体だけ拾って帰るぞ」