「奴が、本物の神じゃと……?
それもツクヨミノミコトの子孫!?ワシ、
あやつとタメなんじゃぞ!?」
「嘘か本当か分かりにくいボケをするな。
……しかし、これではっきりしたでござるな。大仁田が
人々の信仰を力とするのは特異体質などではなく、
奴が神だからという理由で説明が付く」
「だけどよ、いよいよ話が大事になってきたな。
ただの妖ならともかく、神サマなんかを相手に
オイラ達で太刀打ちできるのか?」
それもツクヨミノミコトの子孫!?ワシ、
あやつとタメなんじゃぞ!?」
「嘘か本当か分かりにくいボケをするな。
……しかし、これではっきりしたでござるな。大仁田が
人々の信仰を力とするのは特異体質などではなく、
奴が神だからという理由で説明が付く」
「だけどよ、いよいよ話が大事になってきたな。
ただの妖ならともかく、神サマなんかを相手に
オイラ達で太刀打ちできるのか?」
「本来の力を持った神なら、十中八九不可能ですが……
今の大仁田は外道に落ち、神格も奪われた、ただの鬼。
倒せるはずです。……いひ、1人や2人は、
犠牲者が出るかも知れませんけどね。いひひひ」
ですの蛇はこちらを見ながら陰気に笑う。
大仁田討伐のどさくさ紛れにワシを殺そうとしとるんじゃ
なかろうな。……ま、そんな簡単には死なんがの。
今の大仁田は外道に落ち、神格も奪われた、ただの鬼。
倒せるはずです。……いひ、1人や2人は、
犠牲者が出るかも知れませんけどね。いひひひ」
ですの蛇はこちらを見ながら陰気に笑う。
大仁田討伐のどさくさ紛れにワシを殺そうとしとるんじゃ
なかろうな。……ま、そんな簡単には死なんがの。
「そうなると次に必要なのは、具体的な手段でござるな。
夜を支配する神である奴は、擬似的に夜を作り出す事が
できるのであろう?それに対抗する術がなければ、
同じ土俵に上がる事すらできぬ」
「そこも、いひ、ぬかりはありません。
夜を作り出す妖術は奴独自の物ですが、既に仕組みは
解明済み。なので、反発する妖術をぶつければ、
打ち消す事ができるはず、です。ただ、これについては
実際にやってみない事には、分かりませんが」
夜を支配する神である奴は、擬似的に夜を作り出す事が
できるのであろう?それに対抗する術がなければ、
同じ土俵に上がる事すらできぬ」
「そこも、いひ、ぬかりはありません。
夜を作り出す妖術は奴独自の物ですが、既に仕組みは
解明済み。なので、反発する妖術をぶつければ、
打ち消す事ができるはず、です。ただ、これについては
実際にやってみない事には、分かりませんが」
「ちょっと待つのじゃ。
奴の妖術を打ち消せる程の術なんぞ、
使えるのは狐くらいのものじゃろう。
こやつ……いや、これは復活するのにまだまだ
時間がかかるぞ」
部屋の隅に転がった肉塊を見やる。
僅かにうぞうぞと動いているのが死んでいない
証ではあるが、まだ再生が完了する気配はない。
……それにしてもこの見た目は流石に少々気色悪いの。
奴の妖術を打ち消せる程の術なんぞ、
使えるのは狐くらいのものじゃろう。
こやつ……いや、これは復活するのにまだまだ
時間がかかるぞ」
部屋の隅に転がった肉塊を見やる。
僅かにうぞうぞと動いているのが死んでいない
証ではあるが、まだ再生が完了する気配はない。
……それにしてもこの見た目は流石に少々気色悪いの。
「いひ、今回の作戦は、狐なしで実行するつもり、です。
もちろん、来てくれるのが一番よかったのですが。
代わりに、知り合いの陰陽師に助力を頼みます。
彼らは『暁星家』と言って……いひ、強力な陽の力を
持っています。陰の力を持つ私とは、いひ、
相性はあまり良くないのですが」
もちろん、来てくれるのが一番よかったのですが。
代わりに、知り合いの陰陽師に助力を頼みます。
彼らは『暁星家』と言って……いひ、強力な陽の力を
持っています。陰の力を持つ私とは、いひ、
相性はあまり良くないのですが」
"暁星"とな……?
陰陽師と言えば幕府お抱えの家系が多いと聞く。
なぜオヌシがそんな家と繋がりを、と
言いかけたが、まぁ何となく想像は付いた。
呪いを扱う此奴は、その手の輩と関係があるらしい。
思えば先の代官、葛もそういった伝手で
此奴と知り合ったのじゃろうな。
陰陽師と言えば幕府お抱えの家系が多いと聞く。
なぜオヌシがそんな家と繋がりを、と
言いかけたが、まぁ何となく想像は付いた。
呪いを扱う此奴は、その手の輩と関係があるらしい。
思えば先の代官、葛もそういった伝手で
此奴と知り合ったのじゃろうな。
「妖同士の戦いに、人間を参加させるのは
あまり乗り気はせんがな。そちらに気を遣る余裕は
ないから、自分の身は自分で守ってもらう事になるぞ」
「いひひひ、暁星の人々については、
その心配はありません。彼らは人間ではありますが、
陰陽術の腕は折り紙付き、です。
まぁ、あくまで人間にしては、ですけどね。
いひひひひ」
あまり乗り気はせんがな。そちらに気を遣る余裕は
ないから、自分の身は自分で守ってもらう事になるぞ」
「いひひひ、暁星の人々については、
その心配はありません。彼らは人間ではありますが、
陰陽術の腕は折り紙付き、です。
まぁ、あくまで人間にしては、ですけどね。
いひひひひ」
随分と楽しそうに笑う、ですの蛇。
どさくさ紛れに暁星家の奴らまで殺そうとしとるんじゃ
なかろうな。ま、此奴の言う事が真なら
相当な手練れであるらしいから、
要らぬ心配やも知れんがの。
「大仁田の作り出す『夜』を打ち消す事ができれば、
後は奴を倒すだけだな。流石にもう奥の手はないと
思いたいが」
「用心はしてもしすぎる事はないでござる。
何しろ、相手は本物の神なのでござろう?」
どさくさ紛れに暁星家の奴らまで殺そうとしとるんじゃ
なかろうな。ま、此奴の言う事が真なら
相当な手練れであるらしいから、
要らぬ心配やも知れんがの。
「大仁田の作り出す『夜』を打ち消す事ができれば、
後は奴を倒すだけだな。流石にもう奥の手はないと
思いたいが」
「用心はしてもしすぎる事はないでござる。
何しろ、相手は本物の神なのでござろう?」
「その通り、です。戦力は多いに越した事はありません。
念のため、他にも助力は頼んでいますが……
何分勝手な奴らですので。
いひ、あまり期待はできませんね」
んん……?こやつ今、さらりととんでもない事を
言わんかったか?まさか『あいつら』にも
協力を仰いだのか?
……大仁田よりも厄介な事にならんと良いが。
念のため、他にも助力は頼んでいますが……
何分勝手な奴らですので。
いひ、あまり期待はできませんね」
んん……?こやつ今、さらりととんでもない事を
言わんかったか?まさか『あいつら』にも
協力を仰いだのか?
……大仁田よりも厄介な事にならんと良いが。
「来るか来ないか分からない奴らの事は取り敢えず
置いておくでござるよ。話は纏まったようだし、
その陰陽師が到着次第出発しなければ。
時間を開けすぎるとせっかく追い詰めた大仁田が
逃げてしまう可能性もあるでござるからな」
「いひひひ、そうですね。武器を整えて待ちましょう。
久しぶりの実戦なので腕が鳴りますね。いひ、私の毒に
巻き込んでしまったら、いひひひ、ごめんなさい」
と言いながら、全く悪びれる様子もなく
ずももももと毒霧を吐き出している。
早速巻き込んでおるではないか。……うっ、なんか
気持ち悪くなってきた。
置いておくでござるよ。話は纏まったようだし、
その陰陽師が到着次第出発しなければ。
時間を開けすぎるとせっかく追い詰めた大仁田が
逃げてしまう可能性もあるでござるからな」
「いひひひ、そうですね。武器を整えて待ちましょう。
久しぶりの実戦なので腕が鳴りますね。いひ、私の毒に
巻き込んでしまったら、いひひひ、ごめんなさい」
と言いながら、全く悪びれる様子もなく
ずももももと毒霧を吐き出している。
早速巻き込んでおるではないか。……うっ、なんか
気持ち悪くなってきた。
そうこうしているうちに、戸を叩く音がして
件の陰陽師がやってきた。人間ながら、
ですの蛇に認められる程の実力者。
さて……どれほどのものかの。
「皆さん、初めまして。この度はお声がけいただきまして
ありがとうございます。
わたくしは"暁星 光"と申します。拙いながら
陰陽師の真似事などさせていただいております。
まさか、『元』とは言え神様を相手に戦う事になるとは
思いませんでしたが……足手まといにならぬよう、
精一杯頑張りますのでどうぞよろしくお願いします」
件の陰陽師がやってきた。人間ながら、
ですの蛇に認められる程の実力者。
さて……どれほどのものかの。
「皆さん、初めまして。この度はお声がけいただきまして
ありがとうございます。
わたくしは"暁星 光"と申します。拙いながら
陰陽師の真似事などさせていただいております。
まさか、『元』とは言え神様を相手に戦う事になるとは
思いませんでしたが……足手まといにならぬよう、
精一杯頑張りますのでどうぞよろしくお願いします」
現れたのは、まだ年端も行かぬ少女じゃった。
せいぜい、齢十四〜五と言ったところじゃろうか。
うーむ、こんな子供を命がけの戦いに向かわせて
大丈夫なのか……?
「おい、ですの蛇。この子はまだ子供じゃないか。
まさか彼女をこんな危険な戦いに参加させるつもりじゃ
ないだろうな?」
神楽坂もワシと同様の反応を示した。こやつ、
なんだかんだと言うて子供好きじゃからのぉ……。
せいぜい、齢十四〜五と言ったところじゃろうか。
うーむ、こんな子供を命がけの戦いに向かわせて
大丈夫なのか……?
「おい、ですの蛇。この子はまだ子供じゃないか。
まさか彼女をこんな危険な戦いに参加させるつもりじゃ
ないだろうな?」
神楽坂もワシと同様の反応を示した。こやつ、
なんだかんだと言うて子供好きじゃからのぉ……。
「いひ、心配ありません。こう見えて彼女は当代随一の
実力者。私も、いひひひ、何度か封じられかけた程の
強さを持っています。今は、一応和解していますけどね」
「ふふっ、もしまた悪さをしようものなら、
即封印しますからね。今度は絶っっっ対に
出られないように強力な封印術を用意していますので」
全く和解しとらんではないか。それにしてもこの娘、
若いながらなかなかの強かさじゃの。
ですの蛇とも対等以上にやり合っておるようじゃし、
これなら確かに心配は必要なさそうじゃ。
実力者。私も、いひひひ、何度か封じられかけた程の
強さを持っています。今は、一応和解していますけどね」
「ふふっ、もしまた悪さをしようものなら、
即封印しますからね。今度は絶っっっ対に
出られないように強力な封印術を用意していますので」
全く和解しとらんではないか。それにしてもこの娘、
若いながらなかなかの強かさじゃの。
ですの蛇とも対等以上にやり合っておるようじゃし、
これなら確かに心配は必要なさそうじゃ。
「それにしても……この数年で随分と人間好きに
なったようでござるな、のじゃの猫よ。
前まではヒトなんぞそこいらの獣と同等くらいの
認識だったでござろう」
「カカカ、オヌシからそんな事を言われるとはの、
ござる鼬。オヌシの方こそ、人間の文化に
興味津々のようではないか。先日も彼岸花への土産に
唐物か何かを持ってきていたであろう?」
「……は、下らぬ所だけはよく見ているものでござるな。
まぁいい、無駄話は止めておくでござる。
今は目の前の敵に集中せねば」
オヌシから振ったくせに、と喉まで出かかったが、
ごくりと飲み下す。今は分け身どもの機嫌を損ねている
場合ではないからの。……いよいよ、決戦じゃな。
なったようでござるな、のじゃの猫よ。
前まではヒトなんぞそこいらの獣と同等くらいの
認識だったでござろう」
「カカカ、オヌシからそんな事を言われるとはの、
ござる鼬。オヌシの方こそ、人間の文化に
興味津々のようではないか。先日も彼岸花への土産に
唐物か何かを持ってきていたであろう?」
「……は、下らぬ所だけはよく見ているものでござるな。
まぁいい、無駄話は止めておくでござる。
今は目の前の敵に集中せねば」
オヌシから振ったくせに、と喉まで出かかったが、
ごくりと飲み下す。今は分け身どもの機嫌を損ねている
場合ではないからの。……いよいよ、決戦じゃな。