ここに作品タイトル等を記入
更新日:2021/03/07 Sun 21:51:10
「雨……」
アルタイルは雨が大嫌いだ。いや、雨と言うより、身体にふりかかる全ての水が嫌いだった。
飲料水等の飲む水はいい。しかし、雨は嫌いだ。そして、泳ぐこと等、もっての他だ。
飲料水等の飲む水はいい。しかし、雨は嫌いだ。そして、泳ぐこと等、もっての他だ。
「さっさとすませればいいだけの話でショ」
頭の上に乗った相棒が、そう慰める。
「分かった、分かったわよ」
アルタイルは嫌々ながらも、その島に足を運ぶのだった。
「侵入者ね」
そう言ったのは、青髪のサイドテールの女。
「潰しちまうか?」
緑髪をツインテールにした女が、拳を掌にぶつけて言う。
「折角友達が来とったとこなのに」
白い髪の少女がぼやいた。
「全く、失礼なやっちゃな……こら少し、挨拶しにいかな行けへんね」
アルタイルは頭上のデネブに語りかけた。
「あんた、傘か何かになれないの?」
「無茶言わないでヨ!ア、でも雨を避ける妖術なら知ってるヨ」
アルタイルの頭上の雨が、一瞬だけスローモションになったかと思うと、アルタイルを避けてふりはじめた。
「雨を避ける妖術の方が、よっぽど無茶だと思うのよね……」
「あたイ、妖怪だかラこっちのがふつウ」
そんな事を話ながら幽霊島を探索していた、その時だった。
「……あれが……」
海の近くの社に奉られている、青色の綺麗な宝玉。
「きっとあれだヨ、さっさと取って帰ロ」
アルタイルが手を伸ばし、白い珠を取ろうとしたその時、その腕に向かって一つの拳が振りかかってきた。
「なっ!」
アルタイルは一瞬驚き、一拍置いて反応し、乱入者の拳を受け止め、背中から翼を出して距離を取った。
「……あんた、誰?」
「そらこっちの台詞や!けったいな翼を生やしとんな、物の怪の類いか!」
アルタイルはムッとして、目の前の少女を睨んだ。
蟹の髪止めをつけた少女だ。
白髪に赤目をした子供。
蟹の髪止めをつけた少女だ。
白髪に赤目をした子供。
「デネブ、スキャンして」
「あいヨ」
デネブがアルタイルの上から飛び出し、ゆっくりと浮きながら発光した。
「蟹乃群鮫、十一歳。女。弱点は無。苦手なものはポイ捨てと酢飯」
「全然戦闘に活かせない情報ね」
アルタイルはチッと舌打ちすると、グローブをつけた手で赤毛をすいた。
「そこを退きなさい。退かないと痛め付けるから」
アルタイルの言葉に、むらサメは鼻で笑う。
「こっちは友達が来てるのに許可のう潜入されて苛立ってるんや。この白い石が目的か?ほな、うちから奪うてみてみぃ」
「そうなの、ならどうなっても知らないから!」
アルタイルは身体からまばゆい光を出し、シードゥス形態に変化させ、むらサメに襲い掛かった。
拳を燃え上がらせ、少女に襲い掛かる。
アルタイルを慕う星子という少女は、アルタイルの技にいちいち名前をつけていた。アルタイル自身はめんどくさかったが、ヒロインには技名がないと!との事。
星子曰く、この技は《レッド・バイト》拳に炎を纏わせて、相手を殴り付ける技だ。
拳を燃え上がらせ、少女に襲い掛かる。
アルタイルを慕う星子という少女は、アルタイルの技にいちいち名前をつけていた。アルタイル自身はめんどくさかったが、ヒロインには技名がないと!との事。
星子曰く、この技は《レッド・バイト》拳に炎を纏わせて、相手を殴り付ける技だ。
「ふん!」
「!」
むらサメは怯む事もなく、炎の拳を避ける。アルタイルは驚いた。戦闘慣れなどしていないだろう少女が、冷静に攻撃を見極め、軽々と身を捩ったのだ。
「今度はこっちの番やさかい!」
むらサメはそう叫ぶと、髪につけていた蟹の髪止めを噛んだ。
「な、なんだ?!」
髪止めを噛んだむらサメが、ぐんぐんと大きくなる。
「鳴る程、符号保持者か……」
「身体が大きくなる能力かナ」
「だとして、あたしの攻撃を避けたり出来るのかしら?別の符号を持ってる?それとも……」
アルタイルは疑問に思ったが、直ぐに攻撃が飛んできた為、それ以上考えられなかった。
「くそッ!」
むらサメのスニーカーが迫ってくる。踏み潰されないようにかわさねばならない。
アルタイルは地面スレスレに飛びながら、突破口がないか探し求めた。
アルタイルは地面スレスレに飛びながら、突破口がないか探し求めた。
「チッ!しゃらくさいわ!」
中々踏み潰されないアルタイルに、むらサメが怒り出した。
いや、焦っているのか?
いや、焦っているのか?
「鳴る程ね」
アルタイルは段々からくりが分かって来た。
この少女は、符号にタイムリミットを持っている。
それまで攻撃を回避し続ける事が出来れば、アルタイルの勝ちだ。
と、そうこうしているうちにむらサメの姿が縮みはじめた。
この少女は、符号にタイムリミットを持っている。
それまで攻撃を回避し続ける事が出来れば、アルタイルの勝ちだ。
と、そうこうしているうちにむらサメの姿が縮みはじめた。
「隙ありだわ!」
アルタイルがむらサメのこめかみ目掛けて炎を纏った蹴り……《イーグル・キック》を入れる。
しかし、蹴った感触は無い。
変わりに、激痛が訪れた。
しかし、蹴った感触は無い。
変わりに、激痛が訪れた。
「ギッ!」
アルタイルはなんとか叫ばぬよう努力し、腕の翼をふるって距離を取る。
足に目をやり、舌打ちする。
蹴ろうとして突き出した右足が"切り落とされていた"のだ。
足に目をやり、舌打ちする。
蹴ろうとして突き出した右足が"切り落とされていた"のだ。
「やっぱりいたわね、新手が」
アルタイルは右足を再生させながら呟く。
骨がくっつく音、肉が再生する音、皮膚が膨張し、再生された足を被っていく音が出る。
骨がくっつく音、肉が再生する音、皮膚が膨張し、再生された足を被っていく音が出る。
「だいじょうブ?アルタイル?」
「大丈夫よ、それより、雨の術を解いて。危なくなったら力を貸して」
直後、空中で避けていた雨が、アルタイルに当たる。
むらサメは現れた仲間と話していた。
むらサメは現れた仲間と話していた。
「むらサメちゃん、大丈夫?」
「なんとか、あいつのお陰や」
現れた女は、青い髪をサイドテールにし、上半身は巫女服のような着物、下半身には茶色いスカートを身に付け、腰から日本刀の鞘をぶら下げていた。その手にはアルタイルの薄桃色の血で濡れた刀が握られている。
「デネブ、スキャンお願い」
デネブが発光し、目を見開きながら言った。
「四ツ橋禍。年齢不明。女。弱点は不明。しかし名前を呼ばれると激昂」
「そう、じゃあいざとなったら名前を呼んで、挑発してやりましょう」
「誰の何が何だって?」
そのやり取りを聞いていたのか、四ツ橋がアルタイルの方へ向き直る。その顔は怒りに歪んでいた。
「あら、なに、聞いてたの?えっと、マガツさん?」
「四ツ橋よ!アタシちゃんの親友を傷つけようとした罪は重いよ!」
四ツ橋は殺気を滲ませ、アルタイルに向かってきた。
「刀には剣よね」
アルタイルは呟くと、片手を燃え上がらせ、炎の剣に変えた。
《シンラ・ブレード》
父上から学んだ技だった。思い入れは深い。
燃え上がったそれに雨が当たり、ジュージューと不愉快な音を出す。
《シンラ・ブレード》
父上から学んだ技だった。思い入れは深い。
燃え上がったそれに雨が当たり、ジュージューと不愉快な音を出す。
「はぁ!」
「ふっ!」
日本刀と炎の剣がぶつかる音がする。
数度切り結び、離れ、またぶつかる。
四ツ橋の刀がアルタイルを切り裂いた。
殺った手応えに、四ツ橋が力を抜きかけたその時、アルタイルは炎を纏った羽根……《スウィング・スパーク》を何本も繰り出した。
数度切り結び、離れ、またぶつかる。
四ツ橋の刀がアルタイルを切り裂いた。
殺った手応えに、四ツ橋が力を抜きかけたその時、アルタイルは炎を纏った羽根……《スウィング・スパーク》を何本も繰り出した。
「!」
四ツ橋は慌てて飛び退き、何かに気が付いたようだ。
アルタイルはにやりと嗤う。
アルタイルはにやりと嗤う。
「お前、不死身か!」
「だとしたら、あんたに勝ち目はないわよね」
アルタイルは距離があいたのを良いことに、掌を四ツ橋に向けて、そこから大量の火炎を吹き出させた。
《ハートフル・ウェルダン》と星子は呼んだ。牽制技であり、必殺の一撃でもある。
《ハートフル・ウェルダン》と星子は呼んだ。牽制技であり、必殺の一撃でもある。
「!」
四ツ橋がそれを、綺麗に避けたのだ。
まるで攻撃が来るのが分かっていたよう……。
まるで攻撃が来るのが分かっていたよう……。
「あたしは能力を明かしたわ」
アルタイルが指を突きつけ、言う。
「あんたのトリックも教えなさいよ、何かしてるんでしょ?」
「さあ?アタシちゃんは符号を持ってないからねぇ……女児じゃないし。自分で考えな!」
四ツ橋はそう答え、跳躍し、またアルタイルに斬りかかる。
「今よデブ!」
「誰がデブよぉぉぉぉぉォ!」
アルタイルが頭上の相棒に合図を送ると、デネブは吸収していた雨を四ツ橋の顔面にぶっかけた。
「きゃ!」
四ツ橋はまともにくらい、水鉄砲によって視界を奪われた。
「そこだ!」
アルタイルはこのチャンスを逃さない。
《レッド・バイト》が、四ツ橋の身体を叩き潰さんと迫る。
《レッド・バイト》が、四ツ橋の身体を叩き潰さんと迫る。
「え?!」
突如、ドンと突き飛ばされ、アルタイルは訳が分からなくなった。
慌てて空中に逃げ、状況を確認する。
慌てて空中に逃げ、状況を確認する。
「友達の親友に、何するのよ……!」
聞こえたのは知らぬ声。
自分の目が確かなら、青い髪をポニーテールにした少女が、四ツ橋とアルタイルの間に割って入って来ていた。
自分の目が確かなら、青い髪をポニーテールにした少女が、四ツ橋とアルタイルの間に割って入って来ていた。
「むらサメちゃん!」
「はいよ!」
「!」
いつの間にか大きくなっていたむらサメが、蚊を叩くかのようにアルタイルを両手で捕らえた。
「そいつ、海が弱点よ。"未来"で見たわ」
青い髪が突き放すような冷たい声を上げる。
海という言葉に、アルタイルはハッとし、手の中から抜け出そうともがく。
海という言葉に、アルタイルはハッとし、手の中から抜け出そうともがく。
「了解ッと!」
「ヒッ!」
悲鳴を上げる前に、アルタイルの身体が水の中に叩き込まれた。
「ゴボッゴフッゴボボ」
悲鳴を上げようにも声がでない。
炎はかき消え、水を吸った翼は重くなる。目が開けられない。肺に水が溜まっていくのが分かる。
炎はかき消え、水を吸った翼は重くなる。目が開けられない。肺に水が溜まっていくのが分かる。
「腹減ってきたわ……なぁアユミン、これ食ったら上手いかな」
「人外なんか止めときなよ。気持ち悪い」
「愛歩ちゃん、妖怪とかそういう事になるとそう言うとこあるよね、アタシちゃんは好きだけど」
海に入れられた直後、身体を滅茶苦茶に振り回された。まるで人形で遊ぶ残酷で無邪気な子供のように、アルタイルの身体が弄ばれている。
「ヴゥウウウウウウ!」
「ヤ、やばいヨ!アルタイル、一旦戻りの宝石ヲ!」
デネブが、グロッキー状態で動けないアルタイルの身体をまさぐってきた。
「ア、あレ?攻撃が止まっタ?」
むらサメの手が止まり、アルタイルの身体を離す。
「ゲホ、ゴホ、ゲホゲホ」
アルタイルは咳き込み、荒い息を吐き、時々水を吐きながら、海岸に俯せて寝そべっていた。
「アルタイル、だいじょうブ?」
デネブが寄り添うようにアルタイルの側にいる。
アルタイルは必死に顔を上げ、状況を確認しようとしていた。
アルタイルは必死に顔を上げ、状況を確認しようとしていた。
「あぁ~ほんま腹へったわ、どないしよ」
「あたしクッキー持って来てるから、後で食べよう」
「お、気が利くやんアユミン」
「あ、四ツ橋~危なかったね、愛歩に助けられたじゃん」
「キオンは何してたのよ?」
「ああ、なんか変だなって思って、仲間がいないか確認してたんだよ。あんな怪物、滅多に見ないからね」
「そうだ、あいつ!」
キオンと呼ばれた女の言葉に、愛歩と呼ばれた少女が立ち上がり、ポニーテールをほどく。
シュシュの中から、銀色に光る何かが見えた。
シュシュの中から、銀色に光る何かが見えた。
「ッ!」
愛歩がアルタイルを見下ろす。その目は徹底的に冷たかった。
「人外が……」
アルタイルは、何とか動こうと身体に力を込める。
「そいつ殺すんか?」
むらサメが愛歩に近づいて言う。
「ええ、殺さないと……また人が拐われてしまうかもしれないから。ここで殺すわ」
物騒な言葉を聞き、アルタイルは考えを巡らせる。
宝玉の位置を確認し、デネブに小声で捕まるように指示し……。
愛歩の手に持っているシュシュの中に、銀色のナイフのような物があることに気付いた。
その手が振りかざされる。
アルタイルは動いた。
近付いてきた愛歩の顔に向けて、砂浜の砂を投げ付ける。
愛歩が苛立ったように悪態を突き、むらサメは慌てた。
一瞬の隙をついて、一直線に社に向かい、宝玉を手に取る。
宝玉の位置を確認し、デネブに小声で捕まるように指示し……。
愛歩の手に持っているシュシュの中に、銀色のナイフのような物があることに気付いた。
その手が振りかざされる。
アルタイルは動いた。
近付いてきた愛歩の顔に向けて、砂浜の砂を投げ付ける。
愛歩が苛立ったように悪態を突き、むらサメは慌てた。
一瞬の隙をついて、一直線に社に向かい、宝玉を手に取る。
「オウマがトキに戻れ!」
戻りの宝石に向けて必死にそう叫ぶと、身体がぐんと持ち上げられたような気がした。
一瞬、むらサメに持ち上げられたのかと緊張したが、直ぐにそうでは無いことは分かった。
来る時にも聞いた、誰かのようで、誰でもないような声が聞こえてきたからだ。
一瞬、むらサメに持ち上げられたのかと緊張したが、直ぐにそうでは無いことは分かった。
来る時にも聞いた、誰かのようで、誰でもないような声が聞こえてきたからだ。
『次は~オウマがトキ、オウマがトキです。魂までお忘れにならないよう、ご注意を』
アルタイルはその声にどこか安心し、この感覚に暫く身を委ねたのだった。
愛歩は辺りを見渡し、歯軋りした。
「逃げられたわ……」
「ああ、まぁしゃあないやん?」
愛歩はむらサメの言葉を無視し、シュシュを叩きつけて、踏みつけはじめた。
「あいつの目をえぐり出して、羽根をむしって、髪を引きちぎって、指を叩き潰して、海に突き落として、殺したかったのに!」
興奮冷めやらぬ愛歩の様子を、むらサメは黙ってみていたが、やがて飽きたのか、こう言った。
「それにしてもお腹すかへん?アユミンが持ってきたクッキー、皆でたべようや。もう腹ぺこで待てへんのやんな」
友達の言葉に、憎悪を滾らせていた愛歩の顔が和らぐ。
むらサメを見るその顔は、数秒前の冷酷な面は全く無かった。
むらサメを見るその顔は、数秒前の冷酷な面は全く無かった。
「そうだった、クッキー持ってきたんだ。ごめん、忘れてた」
ケロリと、何事もなかったかのように言う愛歩。
先程まで踏みにじっていたシュシュを何でもなかったかのように拾い、海水で洗って髪を縛り、またポニーテールの形にする愛歩を見て、むらサメは笑顔になった。
この子は本当に面白い。友達になれてよかった。そう思ったのだ。
先程まで踏みにじっていたシュシュを何でもなかったかのように拾い、海水で洗って髪を縛り、またポニーテールの形にする愛歩を見て、むらサメは笑顔になった。
この子は本当に面白い。友達になれてよかった。そう思ったのだ。
「……」
むらサメと共に四ツ橋とキオンの元に帰る前、愛歩は振り返り、アルタイルがいた場所を見つめ……唾を吐き捨ててその場を後にしたのだった。
アルタイルはオウマがトキのドリーメアに戻ってきた。
青色のモノリスから放り出され、慌てて体勢を建て直し、着地する。
青色のモノリスから放り出され、慌てて体勢を建て直し、着地する。
「イル姉さん、お帰りなさい!」
星子の声がする。
溜め息をこぼしかけたが、それを飲み込み、平静を装った。
溜め息をこぼしかけたが、それを飲み込み、平静を装った。
「……ただいま」
「セイコー!疲れたよォ」
「あ、デネブさんもお帰りなさい。それで、マグナゲートの……?」
「ええ、ちゃんと持ってきたわよ」
アルタイルは白い宝玉を星子に渡す。
と、その時、工房の中にオレンジのモノリスが現れ、中からリープが現れた。片手に黒色の宝玉を持っている。
と、その時、工房の中にオレンジのモノリスが現れ、中からリープが現れた。片手に黒色の宝玉を持っている。
「あ、リープさんも、お帰りなさい」
「ただいま。あら、アルタイル。濡れてるんじゃない?」
「そ、そんな事は無いわ!それより星子、あたしはお腹が空いたの。何か食べられるものはある?」
アルタイルは慌てて言い、星子をキッチンに追いたてる。
星子がキッチンに入ってから、シードゥスのままだった事に気付き、人間態に変化したアルタイルは、溜め息をつき、リープの方へ向き直った。
星子がキッチンに入ってから、シードゥスのままだった事に気付き、人間態に変化したアルタイルは、溜め息をつき、リープの方へ向き直った。
「そっちはどうだった?」
「暁星旭って子から受け取ったわ。何て言ってたかしら、お天気ズっていう子達と一緒にいたの」
リープが黒色の宝玉を見せながら言った。
「あなたの方は?」
「……別に、何にもなかったわ」
アルタイルは不機嫌な顔で、そう言った。
「あらそう」
そう言ったリープの顔は、少しだけ嬉しそうだった。
「……何よ」
馬鹿にされたと感じたアルタイルは、ムッとする。
「馬鹿にした訳じゃないわよ。ずいぶん変わったと思って。あの時から」
アルタイルは初めてこの場所に来たときのことを思いだし、顔をしかめた。
「あの時は……」
アルタイルの言葉は、星子の声に遮られた。
「お二人とも、ご飯の準備が整いましたよ!」
「あら、あたしも頂いていいの?」
「勿論です!お客さんですから、俺、結構料理は自信あるんですよ!楽しみにしていてください!」
リープはアルタイルに微笑みかけた。
「任務の続きは、食事をしてからにしよう」
「そうね、今日の献立は何かしら」
アルタイルは空腹で胃が痛んでいる事に気付き、一足早くキッチンへと向かったのだった。