第三回放送

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第三回放送  ◆.WX8NmkbZ6



 こんばんは、みんな。
 六時間経って、またこうして声を聴いて貰えて嬉しいよ。
 とても……ね。
 それにしても、みんなそろそろ疲れてきたみたいだね。
 焦る事はないよ、休む事も大切さ。
 疲れていたら最後まで戦えないんだから。

 だけど、ここまで生き残った君達は自信を持っていい。
 忘れないでね、この会場にいる誰にでも優勝のチャンスはあるんだって事を。
 ほら、隣にいる人の顔を良く見て御覧。
 「守りたい」と思った相手、「守る」と言ってくれた相手、「信じたい」と願う相手……。
 でも「相手が油断している今なら殺せる」って、思わないかい?
 逆に向こうから、そう思われているかも知れないよね?
 本当に大切なものは、『自分』なんじゃないか?

 …………ふふ……冗談だよ。
 そんなに怖い顔をしなくても平気さ。

 まずは禁止エリアを発表するよ。
 今まで通り一度しか言わないから気を付けてね。

19:00から、【C-2】
21:00から、【D-7】
23:00から、【H-10】

 ちゃんと聞き取れたかな?
 次は死者を発表するよ。


 生存者が随分少なくなってしまったね。
 寂しいけど、生き残っているみんなにはこれからも頑張って欲しい。

 そうそう、今は市街地にいる人が多いよね。
 これから夜になるけど、明かりの事は街頭が点くから心配しなくていいよ。
 これで君達の選択肢が増えた……君達がこれからどうするのか、楽しみだ。

 それじゃあ、次の放送でまた会おう。
 優勝者が決まるまでにあと何回放送があるのか、分からないけどね。


 放送を終えたV.V.は古時計の置かれた放送室を出る。
 何十というモニターを配置した個室に戻り、手元のリモコンを操作してモニターのうちの一つの画面を切り替えた。
 映し出されたのは会場のどこでもない、この『アジト』の中の一室。
 鷹野三四が自身にあてがわれた部屋に篭り、古手梨花の存在さえ忘れたかのように一心不乱にパソコンに向かっていた。

 「オーディンのデッキが鷹野によって持ち出された」と、既に聞き及んでいる。
 竜宮レナへの対処に不満を抱いていた鷹野は、会場にいる参加者に対して何らかの介入をしようとしているのかも知れない。

「ふふ……鷹野は本当に面白いよ。
 ねぇ、ラプラス」

 V.V.が振り返らずに、背後に向かって声を掛ける。
 するとクツクツと嗤うような、息の漏れる音が聴こえた。

「その先が出口のない迷いの森としても、踏み込まずにはいられない……。
 風の前の木の葉のように、舞い散り消え行くのがその定め」

 兎顔の道化師――ラプラスの魔がそこにいる事を、V.V.が知っていた訳ではない。
 ただ『いる』と思えば『いる』。
 『いない』と思えば『いない』。
 ラプラスとはそういう相手なのだと、V.V.はそう理解していた。

「鷹野に何か悪戯をしたのかい?」

 ゲームバランスを壊す支給品を封印した部屋に、鷹野が出入りした形跡がなかった。
 それどころか、監視カメラには人の出入りすら映っていなかった。
 そんな真似が出来るのはラプラスだけだ。
 焦る鷹野の背中を押したのだろう、『オーディンのデッキについて報告したその口で』。
 ラプラスの返事は、そのV.V.の予想を裏切らないものだった。

「戯れと気紛れあっての道化師。
 お気に召しませんか?」
「ふふ……困ったものだね」

 言葉とは裏腹に、V.V.は何ら困っていない。
 ゲームバランスを壊す可能性を秘めてはいるが、ここまで順調に進行してきたバトルロワイアルは今更その程度で壊れない。
 むしろそれによって参加者達の前に新たな選択肢が現れ、決断が成されるのなら。
 ラプラスの行動は『目的』に矛盾しない。

 鷹野が如何に足掻こうと、未だV.V.の手のひらの上にいる。
 そもそも鷹野には一握りの真実しか伝えていないのだ。
 例えば「古手梨花が、鷹野の作戦の成功の度に世界をリセットしている」と教えてあるが、それは偽り。
 実際には作戦に成功した世界一つ一つが独立して存在している。
 また、このバトルロワイアルの開催目的も告げていない。
 主催者の一人として協力させてはいても、V.V.にとって鷹野は何も知らずに殺し合う参加者達とほぼ同列と言っていい。

「さぁ鷹野……君の『選択』を見せておくれ」

 残る参加者は二十四人――ではなく、鷹野を含め二十五人。
 水面に投じられたこの一石が参加者達に何をもたらすのか、V.V.は笑みを湛えながら見守る。

 振り返った時には、道化師の姿はなくなっていた。


 鷹野は梨花の前にあるテーブルとは別に机を出し、パソコンを開いた。
 バトルロワイアルのホームページからログイン画面に移り、ユーザ名とパスワードを入力。
 限定情報を閲覧していた鷹野はふと、後ろを振り返る。
 そこには想像通りの姿――ラプラスの魔。
 そしてラプラスが一歩、ゆっくりと横に移動する。
 ラプラスの背に隠れていたのは人の背丈程の古びた鏡だった。
 それは鷹野の部屋に初めから配置されていた、何の変哲もないもの。
 しかし今、その中に映るのは鷹野の姿ではない。
 絵の具をぶち撒けたようなあの色が、鏡の中で蠢いている。

「……そこを通れば会場の中の好きな場所に出られる……という事かしら」
「兎は道化師にして案内人。
 旅人の望む土地へ導くのがその役目」

 「そう」と敢えて素っ気なくいいながら鷹野はパソコンに視線を戻す。
 ラプラスと長時間向き合う気にはならなかった。

 ラプラスはV.V.以上に得体の知れない存在だ。
 鷹野がV.V.と初めて会った時、鷹野の部屋が他の空間と断絶され、その後一瞬にしてこのアジトに連れて来られた。
 当時はそれがV.V.の能力だと思っていたが、今となっては全てラプラスの仕業だったのだと分かる。
 V.V.は確かに不死で、鷹野の倍以上の年月を生きている――しかしそれ以上特異な点は、鷹野に見せていない。
 今の段階では、ラプラスの方が余程不気味だった。

(でも今は、これしかないわ……)

 ラプラスが用意したオーディンのデッキ。
 ラプラスが用意した会場への道。
 踊らされている自覚はある。
 しかし今更、止まれない。

 机の脇には、万一の時の為に用意していた予備の支給品を詰めたデイパックを置いている。
 いつでも出発は出来るが、こうした鷹野の勝手も予測の内なのかも知れない。
 それでもこのままでは終われなかった。
 富竹を裏切り、六十五人の参加者を殺し合わせている自分は、既にその時点で救いの道を蹴っているのだ。

――……そうだね。君の罪は、ひょっとすると軽いものはないかもしれない。
――でも、大丈夫。…僕が一緒だから。…だから一緒に償おう。鷹野三四の罪を償おう。…そして、僕と一緒に田無美代子を、取り戻そう。
――その日まで、僕は決して君の側を離れない…!

 そう言ってくれた富竹から、自ら離れたのだから。

――……世界は君を許さないかもしれない。でも、それが何だってんだい! 僕が、君を許すよ。だから生きよう。
――死ぬことは罪の償いにはならない。生きて償い、世界に許しを乞おう。そしてやり直すんだ。
――そうしたらきっと思い出せる。君が本当はどんな人で、……どんな風な笑顔を浮かべていたかをね!

 終末作戦の度に富竹を殺した。
 雛見沢を滅ぼした。
 殺し合いに協力している今の自分は、その頃と何も変わっていない。
 鷹野三四だろうと、田無美代子だろうと、同じなのだ。
 両親が死に、施設で虐待を受け、祖父と出会い、研究に没頭し、努力の全てを否定される前から。
 田無美代子は初めからこういう人間だった。
 鷹野は自分自身に、諦めがついていた。

 道化師よりもなお道化じみた様に自嘲しながら、意識をパソコン画面へ戻す。
 V.V.の世界から持ち込まれたそれには鷹野にとって余りに進んだ技術が詰め込まれていたが、最初の数時間で慣れた。
 そこから生存する二十四人の参加者の情報の詳細を読み取っていく。
 ラプラスは確かに会場までの案内をするだろうが、それは一方通行。
 レナを殺した後、鷹野は会場に置き去りにされる。
 その時の事を思えば、情報は幾らあっても困らないだろう。
 鷹野はひたすらに、ホームページ上の情報を追い掛ける。

 その後ろ姿を、兎顔の道化師と囚われの少女がいつまでも見詰めていた。


【一日目第三回放送/???】
【鷹野三四@ひぐらしのなく頃に
[装備]無し
[支給品]オーディンのデッキ@仮面ライダー龍騎、不明支給品
[状態]健康
[思考・行動]
1:竜宮礼奈を殺す。

【古手梨花@ひぐらしのなく頃に】
[装備]無し
[支給品]無し
[状態]健康
[思考・行動]
1:???
※銀髪の少年により『鷹野三四に従え』というギアスをかけられています。


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142:dlrow fo dne saw tI V.V. 150:2nd STAGE
鷹野三四
ラプラスの魔
古手梨花



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