HELL ON EARTH(前編) ◆EboujAWlRA
焔に焼かれた全身には体毛の一本すらも残っていない。
本来ならば皮膚の下に隠されているはずの筋肉は露出しており、轟々と豊かな山脈を築き上げている。
大木の幹のように太い首筋。
そこから扇状に広がる僧帽筋、三角筋、広背筋などの背筋。
どす黒く焼け爛れたしなやかな筋肉の群れは志々雄の強さを支える源である。
山脈に流れるように川のように筋肉の鎧に熱湯を流しながら怪人は、志々雄真実は笑っていた。
本来ならば皮膚の下に隠されているはずの筋肉は露出しており、轟々と豊かな山脈を築き上げている。
大木の幹のように太い首筋。
そこから扇状に広がる僧帽筋、三角筋、広背筋などの背筋。
どす黒く焼け爛れたしなやかな筋肉の群れは志々雄の強さを支える源である。
山脈に流れるように川のように筋肉の鎧に熱湯を流しながら怪人は、志々雄真実は笑っていた。
「煉獄、か。随分と弄ってくれるじゃねえか」
自身の右腕、佐渡島方治を中心としてかつて上海マフィアから買い取った大型甲鉄艦・煉獄。
東京を火の海に沈めるはずだった煉獄は、三人の敵によって逆に大阪湾へと沈んでいった。
それがなんの因果か、再び志々雄の敵へとその猛威を振るおうとしている。
東京を火の海に沈めるはずだった煉獄は、三人の敵によって逆に大阪湾へと沈んでいった。
それがなんの因果か、再び志々雄の敵へとその猛威を振るおうとしている。
「あれがどうなるか……まあ、予測はついてるがな」
湯の張った湯船へと身体を沈めながら、志々雄は呟く。
今の煉獄は志々雄の知る煉獄ではない。
同時に今回の志々雄の敵もまた志々雄の知識の外にある力の持ち主だ。
どちらが有利かは分からない。
だが、直感的にどちらに軍配が上がるかは理解していた。
それは志々雄たち戦士の、いや、修羅の持つ独特な感性。
かつて焔の中で確かに感じた、戦闘の匂い。
その匂いが、どちらに勝利を運ぶか伝えているのだ。
今の煉獄は志々雄の知る煉獄ではない。
同時に今回の志々雄の敵もまた志々雄の知識の外にある力の持ち主だ。
どちらが有利かは分からない。
だが、直感的にどちらに軍配が上がるかは理解していた。
それは志々雄たち戦士の、いや、修羅の持つ独特な感性。
かつて焔の中で確かに感じた、戦闘の匂い。
その匂いが、どちらに勝利を運ぶか伝えているのだ。
「ふぅ……」
今は待つだけだ。
すべての事柄は志々雄の元へと戦闘を運んでくる。
終わりなき戦闘を、より素晴らしい闘争を。
志々雄が生きている限り、戦闘は消えはしない。
仮面ライダーリュウガのデッキも。
魔剣ヒノカグツチも。
烈火のサバイブカードも。
志々雄が戦闘を行うために、運命が運んできたものだ。
すべての事柄は志々雄の元へと戦闘を運んでくる。
終わりなき戦闘を、より素晴らしい闘争を。
志々雄が生きている限り、戦闘は消えはしない。
仮面ライダーリュウガのデッキも。
魔剣ヒノカグツチも。
烈火のサバイブカードも。
志々雄が戦闘を行うために、運命が運んできたものだ。
「俺達はこの世の地獄に生まれ落ちた修羅、『闘う』ことそのものが『生きる』こと……そうだろ、先輩よ?」
もはやこの世から消え去った緋村剣心へと向かって、志々雄は獰猛な笑みを浮かべた。
◆ ◆ ◆
海上に浮かぶ鉄の城、大型甲鉄艦――その名を煉獄・改と言った。
荘厳と佇む圧倒的な暴力が形となった煉獄は、ゆっくりと船首をハザマイデオ達へと向ける。
その船首に一つの巨大な砲口が湾岸部からでも見て取れる。
ひと目で主砲と分かる大砲だ、陸に居る五人の反逆者たちへと殺気を振りまいている。
荘厳と佇む圧倒的な暴力が形となった煉獄は、ゆっくりと船首をハザマイデオ達へと向ける。
その船首に一つの巨大な砲口が湾岸部からでも見て取れる。
ひと目で主砲と分かる大砲だ、陸に居る五人の反逆者たちへと殺気を振りまいている。
そんな死を呼びこむような大砲を見て、上田次郎は【ジョーズ】のポスターを思い出す。
あの悠々と構えた大口径砲は、まさに巨大な鮫の顎を連想させる『死神』そのものだった。
あの悠々と構えた大口径砲は、まさに巨大な鮫の顎を連想させる『死神』そのものだった。
「ハァ……こいつはまたでかい主砲ですねぇ」
その横でストレイト・クーガーは呑気に呟きながら支給品のクルーザーへと乗り込む。
あの煉獄がどのような兵装を積んでいるかは未知の領域だが、それでもこのまま眺めていては仕方がない。
煉獄が敵意を剥き出しにしている以上、何らかの対抗手段を取るしかない。
しかし、相手は海という人間にとっての異世界を自由自在に動き回る鉄甲艦。
ならば、その異世界で戦うための『脚』こそクーガーの役目である。
あの煉獄がどのような兵装を積んでいるかは未知の領域だが、それでもこのまま眺めていては仕方がない。
煉獄が敵意を剥き出しにしている以上、何らかの対抗手段を取るしかない。
しかし、相手は海という人間にとっての異世界を自由自在に動き回る鉄甲艦。
ならば、その異世界で戦うための『脚』こそクーガーの役目である。
「ラディカルグゥッドスピィィィド!」
クーガーの叫び声とともに海水が虹色の光に変換され、装甲となりクルーザーを覆っていく。
特徴のないクルーザーが桃色……と言うよりも、塗料めいた人工的なピンク色の塗工が施された奇天烈なクルーザーへと変化していく。
クーガーのアルター能力、ラディカルグッドスピードの力である。
平凡なクルーザーはラディカルグッドスピードによってジェット船を凌ぐ超高速船舶、ラディカルグッドスピード・クルーザー(以下RGSクルーザー)へと姿を変えたのだ。
特徴のないクルーザーが桃色……と言うよりも、塗料めいた人工的なピンク色の塗工が施された奇天烈なクルーザーへと変化していく。
クーガーのアルター能力、ラディカルグッドスピードの力である。
平凡なクルーザーはラディカルグッドスピードによってジェット船を凌ぐ超高速船舶、ラディカルグッドスピード・クルーザー(以下RGSクルーザー)へと姿を変えたのだ。
「うーん、実に文化的な船だ。そうは思いませんか皆さん?」
お世辞にも万人受けするとは言えない派手なクルーザーを見てクーガーが呟く。
少々独特の感性を持つクーガーと精神力の具現化とも言えるアルター能力が掛け合ったからこその奇抜さなのだ。
その尖鋭的なデザインを自賛するように、クーガーは深く息を吐いた。
少々独特の感性を持つクーガーと精神力の具現化とも言えるアルター能力が掛け合ったからこその奇抜さなのだ。
その尖鋭的なデザインを自賛するように、クーガーは深く息を吐いた。
「ああ……? ……そうですね」
痛みか疲労か、ヴァンは呆けたように呟きながらRGSクルーザーへと乗り込む。
ヴァンはクルーザーの中でゆっくりと地べたに座り込み、エアドロップを握り締める。
ちょうど前日に扱った、水中の中でも呼吸が出来る不思議なドロップだ。
もっとも、ヴァンが気絶している間に無理やり口にねじ込まれたため、使用していたことを覚えていないが。
ヴァンはクルーザーの中でゆっくりと地べたに座り込み、エアドロップを握り締める。
ちょうど前日に扱った、水中の中でも呼吸が出来る不思議なドロップだ。
もっとも、ヴァンが気絶している間に無理やり口にねじ込まれたため、使用していたことを覚えていないが。
「ふむ、独創的なセンスだが少々アクが強すぎるな。
私は嫌いではないが、庶民には受け入れがたい造形ではあるだろう。
……うん、よし! この私がこの船の名付け親になってあげようじゃないか!
名前は重要だよ、それ一つで見る目が変わる。
故にこう名付けよう……『ジェット次郎号』と。
この私と縁の深い船だとわかれば、先入観で多少評価が上がるだろう」
私は嫌いではないが、庶民には受け入れがたい造形ではあるだろう。
……うん、よし! この私がこの船の名付け親になってあげようじゃないか!
名前は重要だよ、それ一つで見る目が変わる。
故にこう名付けよう……『ジェット次郎号』と。
この私と縁の深い船だとわかれば、先入観で多少評価が上がるだろう」
一方で上田はいつもの調子だった。
恐怖、高揚、勇気。
上田次郎にはそのどれもが足りない。
だが、逆にこの感情のどれにも偏っていない。
その全てを持ちあわせて、その全てが混ぜこぜになっているのだ。
この場で最も『人間』である上田次郎は、怯えを抱え込んだままRGSクルーザーへと軽快な動きで乗り込んだ。
恐怖、高揚、勇気。
上田次郎にはそのどれもが足りない。
だが、逆にこの感情のどれにも偏っていない。
その全てを持ちあわせて、その全てが混ぜこぜになっているのだ。
この場で最も『人間』である上田次郎は、怯えを抱え込んだままRGSクルーザーへと軽快な動きで乗り込んだ。
「おや、ご両人は乗り込まないんで?」
湾岸部に仁王立ちするハザマとシャドームーンへとクーガーが問いかける。
シャドームーンはクーガーへと一瞥もくれず、煉獄の大砲をその複眼で睨みつけている。
シャドームーンから剣呑な雰囲気は消えない。
相変わらず隣に立つだけで息が詰まりそうな重圧感を放つシャドームーン。
クーガーは演技がかったように肩をすくめ、ハザマはちらりとクーガーへと視線を移して言葉を返した。
シャドームーンはクーガーへと一瞥もくれず、煉獄の大砲をその複眼で睨みつけている。
シャドームーンから剣呑な雰囲気は消えない。
相変わらず隣に立つだけで息が詰まりそうな重圧感を放つシャドームーン。
クーガーは演技がかったように肩をすくめ、ハザマはちらりとクーガーへと視線を移して言葉を返した。
「私とシャドームーンは、少しの間だけここに残る……研究所への砲撃に対応する必要があるからな」
煉獄の大砲からは巨大な穴に吸い込まれそうな、そんな尋常ならざる威圧感が発せられていた。
間違いなく煉獄のメインウェポンだ。
研究所へと向いていることから、火力は推して知るべしといったところか。
間違いなく煉獄のメインウェポンだ。
研究所へと向いていることから、火力は推して知るべしといったところか。
「退け」
そんな中でシャドームーンはハザマへと短く言い、肩を掴んで強引に位置取りを変える。
シャドームーンの複眼と、顎を大きく広げた大砲が睨み合っていた。
煉獄の船首に備えられた大砲がどれほどのものかは分からない。
通常の実弾である可能性もあれば、ハザマの固定観念から離れた未知の超兵器である可能性もある。
煉獄という甲鉄艦の戦力を計ることが出来ないのだ。
シャドームーンの複眼と、顎を大きく広げた大砲が睨み合っていた。
煉獄の船首に備えられた大砲がどれほどのものかは分からない。
通常の実弾である可能性もあれば、ハザマの固定観念から離れた未知の超兵器である可能性もある。
煉獄という甲鉄艦の戦力を計ることが出来ないのだ。
「……クーガー、ヴァンと上田を乗せて離れるんだ。
余波に巻き込まれないようにな」
余波に巻き込まれないようにな」
だが、煉獄の性能は未知のものではあるものの、シャドームーンという魔王の恐ろしさは十分に把握をしている。
この攻防による流れ弾で上田たちに被害が及ぶことを危惧しての言葉だった。
ハザマの言葉にクーガーは小さく頷き、RGSクルーザーを発進させる。
この攻防による流れ弾で上田たちに被害が及ぶことを危惧しての言葉だった。
ハザマの言葉にクーガーは小さく頷き、RGSクルーザーを発進させる。
「フン、来るか」
シャドームーンは左腕に持ったサタンサーベルを天空へと向けて掲げた。
同時に、シャドームーンの腰元に装着されたシャドーチャージャーが妖しく光り始める。
サタンサーベルの深紅の輝きを深めるように、翠緑の光が増していった。
同時に、シャドームーンの腰元に装着されたシャドーチャージャーが妖しく光り始める。
サタンサーベルの深紅の輝きを深めるように、翠緑の光が増していった。
「サタンサーベルよ……!」
王者の輝石・キングストーン、王者の宝剣・サタンサーベル、王者の騎馬・バトルホッパー。
ゴルゴムが誇る三種の神器が揃った瞬間に世紀王は限界を超えた力すら手に入れるのだ。
ゴルゴムが誇る三種の神器が揃った瞬間に世紀王は限界を超えた力すら手に入れるのだ。
シャドーチャージャーから溢れ出た翠緑の光が、シャドームーンの左腕を伝ってサタンサーベルへと昇っていく。
サタンサーベルの深紅の刀身はシャドーチャージャーから放たられる翠緑の光によって染められていく。
螺旋を描くようにして幾つものシャドービームがサタンサーベルへと纏わりつく。
シャドーチャージャーによって引き出される月の石の力が、さらにサタンサーベルの持つ力を増幅させている。
サタンサーベルの深紅の刀身はシャドーチャージャーから放たられる翠緑の光によって染められていく。
螺旋を描くようにして幾つものシャドービームがサタンサーベルへと纏わりつく。
シャドーチャージャーによって引き出される月の石の力が、さらにサタンサーベルの持つ力を増幅させている。
「……来る!」
単なるシャドービームとは、はるかに比べ物にならない破壊光線がサタンサーベルへと集まっていく。
攻撃態勢を取ったシャドームーンを迎え撃つように、煉獄の主砲が唸りを上げる。
空気が変わる、とでも言うのだろうか。
その変化をハザマは感じ取る。
当然、シャドームーンも感じ取っているはずだ。
攻撃態勢を取ったシャドームーンを迎え撃つように、煉獄の主砲が唸りを上げる。
空気が変わる、とでも言うのだろうか。
その変化をハザマは感じ取る。
当然、シャドームーンも感じ取っているはずだ。
「王へと向けて……不遜な輩が!」
増大されたキングストーンの力が纏ったサタンサーベルを、シャドームーンは強く振り下ろした。
迎え撃つように煉獄の船首から荷電粒子砲――――『ハドロン砲』が発射された。
ハドロン砲とシャドービーム。
二つの高エネルギー物質は海水を蒸発させ、分子と分子の繋がりを崩壊させていく。
海面は円形に抉れていく、まるで二つの砲弾を避けるかのようだった。
すでに遠く離れていたRGSクルーザーも海面の変化が生んだ大波の影響を受けるが、クーガーの神がかった操縦技術によって転覆は免れる。
ついに、人間の背丈ほどの直径を持つ巨大なシャドービームと煉獄から発射された粒子砲が接近する。
だがしかし、二つの高エネルギー体がぶつかり合うことはない。
二つの強大なエネルギーの接近によって歪曲した磁場がそれぞれの狙いを僅かにずらしていく。
サタンサーベルより放たれたシャドービームの螺旋は煉獄が浮かぶはるか後方の海水を蒸発させた。
煉獄より放たれたエネルギー砲弾は研究所の脇を通り過ぎ、一定の距離――飛程まで放たれると霧散していった。
尋常ならざる破壊力。
しかし―――研究所、煉獄! ともに損害なし!
「なっ、まさか……!?」
「荷電粒子砲!?」
「荷電粒子砲!?」
ハザマと上田が煉獄の主砲の正体に気づき、悲鳴じみた叫びを上げる。
煉獄に備えられた主砲は荷電粒子を粒子加速器を用いて亜光速の速さで撃ち出す粒子加速器、ハドロン砲である。
亜光速で動く荷電粒子の束とシャドームーンの放ったシャドービームの束が磁場を一時的に狂わせてハドロン砲の進行方向を歪ませたのだ。
シャドームーンが居なければ……そんな状況の想像がハザマの背筋に悪寒が走らせる。
煉獄に備えられた主砲は荷電粒子を粒子加速器を用いて亜光速の速さで撃ち出す粒子加速器、ハドロン砲である。
亜光速で動く荷電粒子の束とシャドームーンの放ったシャドービームの束が磁場を一時的に狂わせてハドロン砲の進行方向を歪ませたのだ。
シャドームーンが居なければ……そんな状況の想像がハザマの背筋に悪寒が走らせる。
「なんということだ……そんな、実装されるわけが! ましてや、あれほどまでに小型化されるなど……」
また、クルーザーの中から上田が半ば魂の抜けたような呟きを漏らす。
物理学者である上田次郎だからこそ、その恐ろしさを承知しているのだ。
クーガーの心情ではないが、スピードとはすなわちパワーだ。
早ければ早いほどに威力が増す。
10km/hで徐行する車と100km/hで高速走行する車ならば、後者のほうが危険であるようにだ。
物理学者である上田次郎だからこそ、その恐ろしさを承知しているのだ。
クーガーの心情ではないが、スピードとはすなわちパワーだ。
早ければ早いほどに威力が増す。
10km/hで徐行する車と100km/hで高速走行する車ならば、後者のほうが危険であるようにだ。
「っと、上田先生! 喋らないでくださーい! 舌を噛みますよぉ!」
クーガーの言葉と同時にRGSクルーザーが動き始める。
単純な直線移動ではなく、ドリフト走行を思わせる蛇行運転で海上を走りだした。
そのRGSクルーザーを襲うように、煉獄の船腹部に備えられたガトリングガン――『4銃身4mm回転式機関砲』が火を噴く。
幾つものの4銃身4mm回転機関砲がラディカルグッドスピードによって補強されたクルーザーへと襲いかかる。
単純な直線移動ではなく、ドリフト走行を思わせる蛇行運転で海上を走りだした。
そのRGSクルーザーを襲うように、煉獄の船腹部に備えられたガトリングガン――『4銃身4mm回転式機関砲』が火を噴く。
幾つものの4銃身4mm回転機関砲がラディカルグッドスピードによって補強されたクルーザーへと襲いかかる。
しかし、RGSクルーザーはスピードの急激なアップダウンによって4銃身4mm回転式機関砲が打ち出す銃弾の雨を掻い潜っていく。
クーガーは単純に銃弾から離れるだけでなく、時には無茶な航行移動を行うことで波を作り電子頭脳の狙いを乱しているのだ。
幾つか被弾をするものの直ぐ様に海水が虹色に光り装甲へと変化され、RGSクルーザーを補修していく。
速さの化身ストレイト・クーガーの操縦技術と人智を超えたマシーン・RGSクルーザーの前では電子頭脳も型なしである。
クーガーは単純に銃弾から離れるだけでなく、時には無茶な航行移動を行うことで波を作り電子頭脳の狙いを乱しているのだ。
幾つか被弾をするものの直ぐ様に海水が虹色に光り装甲へと変化され、RGSクルーザーを補修していく。
速さの化身ストレイト・クーガーの操縦技術と人智を超えたマシーン・RGSクルーザーの前では電子頭脳も型なしである。
「ゥウォオオォォォァァァアッェェエエェ!!!」
「イィィィャャヤァァァァッホゥゥゥゥゥゥ!
どうしたどうしたァ、その程度で世界を縮める俺のスピードについてこれると思ってんのかァ!」
「イィィィャャヤァァァァッホゥゥゥゥゥゥ!
どうしたどうしたァ、その程度で世界を縮める俺のスピードについてこれると思ってんのかァ!」
上田が度重なる負荷に、たまらず嘔吐する。
しかし、クーガーはそんな上田を無視するようにクルーザーを自在に操っていく。
むしろその態度こそが自身のスピードの証明であると言わんばかりにスピードとテンションを上げていく始末である。
もちろん、その自信は決して過信などではない。
RGSクルーザーは煉獄を嘲笑うかのように銃弾の嵐を掻い潜っていく。
しかし、クーガーはそんな上田を無視するようにクルーザーを自在に操っていく。
むしろその態度こそが自身のスピードの証明であると言わんばかりにスピードとテンションを上げていく始末である。
もちろん、その自信は決して過信などではない。
RGSクルーザーは煉獄を嘲笑うかのように銃弾の嵐を掻い潜っていく。
一方で、ハザマは険しい顔をしながら煉獄を睨みつけていた。
「……荷電粒子砲、テトラカーンならば返せるか?
しかし、今の状態では失敗した時のことを考えるとあまりにも危険過ぎる……か」
しかし、今の状態では失敗した時のことを考えるとあまりにも危険過ぎる……か」
煉獄はその大きさからは想像できない素早さで小刻みにその巨体を動かしていく。
その動きを可能とされるのは、流体サクラダイトを使用した『ユグドラシルドライブ』。
そして、そのエンジンから伝わるエネルギーを煉獄に負荷を限りなく小さくしている『GER流体制御システム』の賜物だ。
その動きを可能とされるのは、流体サクラダイトを使用した『ユグドラシルドライブ』。
そして、そのエンジンから伝わるエネルギーを煉獄に負荷を限りなく小さくしている『GER流体制御システム』の賜物だ。
「……他の装備が気になるな」
現状、ハザマが把握している兵装は船首のハドロン砲と船腹部の機関砲だけだ。
煉獄の事実を深く知ることこそが、煉獄撃沈の最大の近道だ。
煉獄の事実を深く知ることこそが、煉獄撃沈の最大の近道だ。
「……マハブフーラ」
ならば、と考えてからは行動が早かった。
ハザマは海水を凍らせて、非常に脆弱な氷の道を駆け出していく。
シャドームーンとて研究所の重要性は理解しているはずだ、船首のハドロン砲はシャドームーンが相手をするだろう。
シャドームーンという強力な敵が味方となった今、ハザマは遊撃的に動くことが出来るのだ。
ハザマが十メートルほど進んだ瞬間、砲身を煉獄の回転式機関砲が火を噴く。
ハザマは海水を凍らせて、非常に脆弱な氷の道を駆け出していく。
シャドームーンとて研究所の重要性は理解しているはずだ、船首のハドロン砲はシャドームーンが相手をするだろう。
シャドームーンという強力な敵が味方となった今、ハザマは遊撃的に動くことが出来るのだ。
ハザマが十メートルほど進んだ瞬間、砲身を煉獄の回転式機関砲が火を噴く。
「マハブフ!」
その銃弾の嵐をRGSクルーザーの航行が起こした波を凍らせる。
魔界の氷結によって『海水』から『絶対停止の壁』となった波が盾となり、4銃身4mm回転式機関砲の銃弾を防ぐ。
だが、これ以上進むと帰還が困難となる。
今のハザマは平時のように気安く魔法を扱うことが出来ないのだ。
ハザマは体勢を低くし、口を小さく動かして呪文を唱える。
魔界の氷結によって『海水』から『絶対停止の壁』となった波が盾となり、4銃身4mm回転式機関砲の銃弾を防ぐ。
だが、これ以上進むと帰還が困難となる。
今のハザマは平時のように気安く魔法を扱うことが出来ないのだ。
ハザマは体勢を低くし、口を小さく動かして呪文を唱える。
「マハラギ!」
「フン!」
「フン!」
ハザマが呪文を唱えると同時に、海の上を滑るようにして業火が煉獄へと襲いかかる。
そして、湾岸部に留まっていたシャドームーンもシャドーチャージャーからシャドービームを放つ。
ハザマの放つ炎の群れとシャドームーンの放つ翠緑の雷、二つのプラズマが最新技術の塊である煉獄へと襲いかかる。
そして、湾岸部に留まっていたシャドームーンもシャドーチャージャーからシャドービームを放つ。
ハザマの放つ炎の群れとシャドームーンの放つ翠緑の雷、二つのプラズマが最新技術の塊である煉獄へと襲いかかる。
「ムッ……!」
しかし、その瞬間だった。
煉獄の船腹部に丸い紅玉が浮かび上がり、その紅玉から特殊な波動が照射される。
炎の群れと翠緑の雷は煉獄の持つ紅玉――『輻射波動機構』が生み出したマイクロウェーブによってかき消される。
何が起こったのかハザマの頭脳は理解していた。
荷電粒子砲が装備されているのならば、装甲面においても相当なものが装備されているだろうと予測していたのだ。
煉獄の船腹部に丸い紅玉が浮かび上がり、その紅玉から特殊な波動が照射される。
炎の群れと翠緑の雷は煉獄の持つ紅玉――『輻射波動機構』が生み出したマイクロウェーブによってかき消される。
何が起こったのかハザマの頭脳は理解していた。
荷電粒子砲が装備されているのならば、装甲面においても相当なものが装備されているだろうと予測していたのだ。
「電磁波か。アギとジオの類では効果が少ないか……」
ハザマは小さく呟きながら、素早くマハブフーラで作り上げた氷の道を引き返す。
しかし、そのハザマを煉獄は簡単に逃しはしない。
次の攻撃は4銃身4mm回転式機関砲ではなく、浮かび上がった輻射波動機構から輻射波動砲弾が飛び出る。
直撃すれば身体中の水分が蒸発し、まさしく血が爆発し血管から弾け飛び肉片だけを残して爆発する。
しかし、そのハザマを煉獄は簡単に逃しはしない。
次の攻撃は4銃身4mm回転式機関砲ではなく、浮かび上がった輻射波動機構から輻射波動砲弾が飛び出る。
直撃すれば身体中の水分が蒸発し、まさしく血が爆発し血管から弾け飛び肉片だけを残して爆発する。
「……チッ、マカラカーン!」
ハザマは反射の魔法マカラカーンで輻射波動砲弾を跳ね返す。
だがしかし、その輻射波動砲弾を船腹部に装備された二つの輻射波動機構によって生み出された電磁場が防ぐ。
だがしかし、その輻射波動砲弾を船腹部に装備された二つの輻射波動機構によって生み出された電磁場が防ぐ。
「やめるんだハザマくん! 炎も電気もプラズマだ!
その甲鉄艦は巨大なマイクロウェーブによって炎による攻撃を防いでいるんだ!
火炎は意味が無い!」
その甲鉄艦は巨大なマイクロウェーブによって炎による攻撃を防いでいるんだ!
火炎は意味が無い!」
その光景を遠目から眺めていた上田が再びハザマが火球を放ったと勘違いして、ハザマへと声を荒げて注意を促す。
すでにハザマが推測していたことではあったが、その気遣いがどこか気恥ずかしい嬉しさを覚える。
ハザマはやはり波を凍らせて後退する。
その瞬間、ふと輻射波動機構でも機関砲でもない砲口がハザマへと向けられていた。
すでにハザマが推測していたことではあったが、その気遣いがどこか気恥ずかしい嬉しさを覚える。
ハザマはやはり波を凍らせて後退する。
その瞬間、ふと輻射波動機構でも機関砲でもない砲口がハザマへと向けられていた。
「……ッ、テトラカーン!」
煉獄から光が発せられる。
すなわち、光学兵器――『レーザー砲』である。
煉獄に装着された兵装のうちで最速の武器だが、ハザマの判断がレーザー砲の発射よりも一瞬だけ早かった。
唱えられたテトラカーンによって反射される。
しかし、そのレーザー砲はエネルギーシールド――『ブレイズルミナス』によって防がれる。
すなわち、光学兵器――『レーザー砲』である。
煉獄に装着された兵装のうちで最速の武器だが、ハザマの判断がレーザー砲の発射よりも一瞬だけ早かった。
唱えられたテトラカーンによって反射される。
しかし、そのレーザー砲はエネルギーシールド――『ブレイズルミナス』によって防がれる。
「クッ、二つの盾に四つの武器か」
「レーザー砲……光学兵器まで持っているのかァァアゥゥゥッァァアア!?」
「レーザー砲……光学兵器まで持っているのかァァアゥゥゥッァァアア!?」
上田がその光の束からレーザー砲だと気づき、呆然と煉獄の砲身を眺める。
4銃身4mm砲の砲身は無慈悲にRGSクルーザーへと向けられて、さらにはレーザー砲や輻射波動機構、ハドロン砲まで備えられている。
たった六人で、しかも武器は拳銃程度で勝てるような相手ではない。
希望があるとすれば、ここには上田の常識を超える存在があるということだ。
例えば、上田の三半規管をいじめ倒すアルター使いのクーガーとか。
4銃身4mm砲の砲身は無慈悲にRGSクルーザーへと向けられて、さらにはレーザー砲や輻射波動機構、ハドロン砲まで備えられている。
たった六人で、しかも武器は拳銃程度で勝てるような相手ではない。
希望があるとすれば、ここには上田の常識を超える存在があるということだ。
例えば、上田の三半規管をいじめ倒すアルター使いのクーガーとか。
「ブゥラボォォォォォォォ! 背後を取ったぜェ!
船首部に荷電粒子砲! 中間部に大口径機関銃とマイクロウェーブ装置にレーザー砲!
さーて、船尾には何を仕込んでる!?
さぁ、上田センセイ! 銃撃銃撃ィ!」
「ミ、ミーがか!?」
船首部に荷電粒子砲! 中間部に大口径機関銃とマイクロウェーブ装置にレーザー砲!
さーて、船尾には何を仕込んでる!?
さぁ、上田センセイ! 銃撃銃撃ィ!」
「ミ、ミーがか!?」
上田は手に持ったベレッタM92Fとクーガーの背中を交互に見ながら叫ぶ。
しかし、奇声を上げながらRGSクルーザーを運転するクーガーの耳には届いていないようだった。
僅かに躊躇の念を覚えるが、それでも上田はベレッタM92Fを構えた。
しかし、奇声を上げながらRGSクルーザーを運転するクーガーの耳には届いていないようだった。
僅かに躊躇の念を覚えるが、それでも上田はベレッタM92Fを構えた。
「こなくそっ!」
窓を開き、上田はベレッタM92Fの引き金を絞る。
相手が人間ではなく単なる無機質の塊だからこその行動だった。
ましてや狙ったのは船腹部だ、さらにこの甲鉄艦の装甲では銃弾一つで沈むような作りではない。
万が一、船員が居た場合にも上田が『人殺し』になることはない。
そんな「自分も仕事をしている」という打算と、それでもどうにか『煉獄撃沈』の力になりたいという勇気が相混ぜになっての行動だった。
相手が人間ではなく単なる無機質の塊だからこその行動だった。
ましてや狙ったのは船腹部だ、さらにこの甲鉄艦の装甲では銃弾一つで沈むような作りではない。
万が一、船員が居た場合にも上田が『人殺し』になることはない。
そんな「自分も仕事をしている」という打算と、それでもどうにか『煉獄撃沈』の力になりたいという勇気が相混ぜになっての行動だった。
しかし、そんな上田の攻撃行動も煉獄の装甲に傷ひとつつけることなく、ブレイズルミナスによって阻まれてしまう。
「ワッツ!? 銃弾が弾かれた……エ、エネルギーバリアーか? なんと馬鹿らしい!」
ベレッタM92Fの銃撃と反射されたレーザー砲を防いだ完全なる盾、ブレイズルミナス。
先ほど現れた第七世代ナイトメアフレーム、ランスロットに装着されていたものと同じ装甲である。
発生させたエネルギーバリアーによって物理的な攻撃の全てを防ぐ万能バリアーだ。
これではベレッタ拳銃では太刀打ち出来ない。
ひのきの棒で巨大金庫を破壊しようとするようなものだ。
先ほど現れた第七世代ナイトメアフレーム、ランスロットに装着されていたものと同じ装甲である。
発生させたエネルギーバリアーによって物理的な攻撃の全てを防ぐ万能バリアーだ。
これではベレッタ拳銃では太刀打ち出来ない。
ひのきの棒で巨大金庫を破壊しようとするようなものだ。
「くっ……悔しいが一度戻ろう。まさかこの私の射撃でもノーダメージとは……む? ヴァン君はどうした?」
こうなるともはやシャドームーンやハザマイデオを持ってしなければ太刀打ちが出来ない。
そう判断した上田がクーガーへと話しかけるが、先程まで座り込んでいたヴァンの姿が消えていることに気づいた。
そう判断した上田がクーガーへと話しかけるが、先程まで座り込んでいたヴァンの姿が消えていることに気づいた。
「ヴァンさんなら、近づいた時に海を潜ってあの甲鉄艦へといかれましたよ。そのために近づいたんですから」
「なっ……私の華麗な銃撃のために近づいたのでは……あ、い、いや、そうだな!
ハハハ! わかっていたとも、ユーたちの作戦はな!
そうとも! 私は煉獄の注意を引き付けるために、クリント・イーストウッドも真っ青の銃の腕前を見せたのだからな!」
「そいつぁーさすがだ! 大学教授の肩書きは伊達じゃありませんねぇ!」
「なっ……私の華麗な銃撃のために近づいたのでは……あ、い、いや、そうだな!
ハハハ! わかっていたとも、ユーたちの作戦はな!
そうとも! 私は煉獄の注意を引き付けるために、クリント・イーストウッドも真っ青の銃の腕前を見せたのだからな!」
「そいつぁーさすがだ! 大学教授の肩書きは伊達じゃありませんねぇ!」
そんな上田のあからまさな虚勢にクーガーは快活に笑いながら話を合わせる。
素直というか褒められることが大好きな上田はハッハッハと高笑いを上げる。
クーガーはRGSクルーザーを旋回させ、ヴァンの潜入を確実にするために煉獄の注意を引く。
素直というか褒められることが大好きな上田はハッハッハと高笑いを上げる。
クーガーはRGSクルーザーを旋回させ、ヴァンの潜入を確実にするために煉獄の注意を引く。
「それじゃあ、見逃すんじゃねえぜデカブツ……まっ、俺のスピードについてこれるならの話だけどなぁ!」
「なるべく、揺らさないように頼むよ」
「なるべく、揺らさないように頼むよ」
クーガーがRGSクルーザーのスピードをあげたちょうどその頃。
漆黒のバトルスーツに身を包み、同色の仮面を身につけたヴァンが海面へと浮かび上がった。
仮面ライダーナイトへと変身したヴァンは海中を泳いで煉獄へと接近していたのだ。
仮面ライダーナイトへと変身したヴァンは海中を泳いで煉獄へと接近していたのだ。
「……ッ!」
そんなヴァンの元へと迫り来るは水中魚雷。
複数の魚雷が迫り来る中でヴァンはバックルに備えられたデッキから三枚のカードを取り出して素早く読み込ませる。
複数の魚雷が迫り来る中でヴァンはバックルに備えられたデッキから三枚のカードを取り出して素早く読み込ませる。
―― NASTY VENT ――
―― TRICK VENT ――
―― GUARD VENT ――
超音波を発するナスティベントが水柱を揺らして魚雷の狙いを逸らしていく。
その間にトリックベントによって仮面ライダーナイトが複数に増えて撹乱。
極めつけは盾となるガードベントを召喚し、強引に突破する。
その間にトリックベントによって仮面ライダーナイトが複数に増えて撹乱。
極めつけは盾となるガードベントを召喚し、強引に突破する。
「ふぅ……」
強化された肉体とエアドロップによって水中での呼吸を可能としたヴァンは荒れ狂う波を物ともせずに煉獄への接近を成功させていた。
ヴァンは煉獄の鋼鉄の装甲へと翼召剣ダークバイザーを突き刺す。
差し込まれたダークバイザーを足場にして海面から浮かび上がり、さらに薄刃乃太刀を煉獄の船尾へと巻きつける。
ヴァンは煉獄の鋼鉄の装甲へと翼召剣ダークバイザーを突き刺す。
差し込まれたダークバイザーを足場にして海面から浮かび上がり、さらに薄刃乃太刀を煉獄の船尾へと巻きつける。
「よっと」
ヴァンは足場にしていたダークバイザーを引きぬく。
足場をなくしたヴァンはロープのように煉獄へ巻き付いた薄刃乃太刀にぶら下がるような状況になった。
その薄刃乃太刀をたぐり寄せるようにしながら煉獄の船腹を昇っていく。
ライダーへと変身したその身体能力は煉獄への潜入をいともたやすく成功させた。
甲板へと躍り出たヴァンは周囲を見渡す。
足場をなくしたヴァンはロープのように煉獄へ巻き付いた薄刃乃太刀にぶら下がるような状況になった。
その薄刃乃太刀をたぐり寄せるようにしながら煉獄の船腹を昇っていく。
ライダーへと変身したその身体能力は煉獄への潜入をいともたやすく成功させた。
甲板へと躍り出たヴァンは周囲を見渡す。
「さて、船員は……あん?」
甲板に上がれば船員との戦闘を覚悟していたヴァンであったが、その想像とは裏腹に甲板上に人が見当たらなかった。
人の気配のしない、無人の戦艦。
さすがのヴァンも仮面の奥で怪訝に眉を顰めた。
これほどの戦艦ならばそれ相応の船員が居るはずだからだ。
とは言え人が居ないのならばそれはそれで構わない、仕事が早くなるだけだ。
操縦室へと侵入し、ただ破壊すればいいだけだ。
そう考え、周囲を見渡しながらヴァンは甲板を歩き出した。
さすがのヴァンも仮面の奥で怪訝に眉を顰めた。
これほどの戦艦ならばそれ相応の船員が居るはずだからだ。
とは言え人が居ないのならばそれはそれで構わない、仕事が早くなるだけだ。
操縦室へと侵入し、ただ破壊すればいいだけだ。
そう考え、周囲を見渡しながらヴァンは甲板を歩き出した。
『……げて』
「……!」
「……!」
揺れ動く煉獄の中で、ヴァンは自身の背後に立つ少女の存在に気づいた。
濡れ羽色の長髪に角を思わせる奇妙な髪飾りをつけた巫女服の少女だった。
しかし、少女から気配がしない。
動けば生じるはずの風の動き、煉獄の床を鳴らすはずの足音。
そのどちらも感じさせず、少女がヴァンの背後に立っていた。
ヴァンは身構えながら、その不気味な少女から距離をとる。
濡れ羽色の長髪に角を思わせる奇妙な髪飾りをつけた巫女服の少女だった。
しかし、少女から気配がしない。
動けば生じるはずの風の動き、煉獄の床を鳴らすはずの足音。
そのどちらも感じさせず、少女がヴァンの背後に立っていた。
ヴァンは身構えながら、その不気味な少女から距離をとる。
『……逃げて』
「あん……ッ!?」
「あん……ッ!?」
少女の突然の言葉に、ヴァンは間の抜けた声を出す。
突如、甲板上に現れる複数の回転式機関砲。
分間200発の連射速度は仮面ライダーゾルダのマグバイザーを超えるものである。
ヴァンは素早く甲板を駆けながら、ダークバイザーにアドベントカードを読みこませた。
突如、甲板上に現れる複数の回転式機関砲。
分間200発の連射速度は仮面ライダーゾルダのマグバイザーを超えるものである。
ヴァンは素早く甲板を駆けながら、ダークバイザーにアドベントカードを読みこませた。
―― AD VENT ――
月光を浴びて鏡面となった海面から闇の翼ダークウイングが現れる。
巨大なコウモリが回転式機関砲の銃撃から庇うとナイトと合体をする。
そして、飛行能力を得たナイトは上空へと舞い上がるが、追尾するように回転式機関砲の銃口もまた空へと向けられる。
巨大なコウモリが回転式機関砲の銃撃から庇うとナイトと合体をする。
そして、飛行能力を得たナイトは上空へと舞い上がるが、追尾するように回転式機関砲の銃口もまた空へと向けられる。
「チッ……!」
ヴァンは小さく舌打ちを漏らすと闇空に紛れるようにして宙を舞い、煉獄から離れていった。
360度から襲いかかる回転式機関砲を回避する術は、現時点のナイトは持たない。
360度から襲いかかる回転式機関砲を回避する術は、現時点のナイトは持たない。
そのヴァンの姿を確認したクーガーはRGSクルーザーを操り、ハザマたちの居る岸へと戻っていく。
先の上田の言葉通り、作戦の練り直しのためだ。
先の上田の言葉通り、作戦の練り直しのためだ。
「むっ、海面が……?」
その最中、上田は海面がせり上がっている事に気づいた。
何かに引っ張られるように、海面が空へと向かって盛り上がっていた。
いや、違う。
これは波だ、海水に浮かぶ巨大な物体の動きによって生まれる波だ。
何かに引っ張られるように、海面が空へと向かって盛り上がっていた。
いや、違う。
これは波だ、海水に浮かぶ巨大な物体の動きによって生まれる波だ。
「……は?」
上田は眼鏡を外して右腕で両目を擦る。
しかし、上田の勘違いなどではない。
今目の前に起こっている現象は上田が観測した通りの出来事なのだ。
しかし、上田の勘違いなどではない。
今目の前に起こっている現象は上田が観測した通りの出来事なのだ。
――――煉獄が空へと浮かぼうとしていた。
「な……ななななな!?」
上田は驚愕の余り舌が回らずに『な』としか言えなかった。
海面が大きく波打つ。
煉獄の沈んでいた船底が上田の目にも映る。
今までそこにあったはずの煉獄の体積が失くなったことで生じた波だったのだ。
海面が大きく波打つ。
煉獄の沈んでいた船底が上田の目にも映る。
今までそこにあったはずの煉獄の体積が失くなったことで生じた波だったのだ。
「アンビリバボー……こいつは厄介だ……」
クーガーもまたその姿を眺めて呆然と呟く。
煉獄に仕込まれた飛行装置――『フロートユニット』だ。
煉獄に仕込まれた飛行装置――『フロートユニット』だ。
空にそびえる鉄の城。
この瞬間こそ大型甲鉄艦煉獄が、真に大型空中甲鉄戦艦煉獄・改へと変化した瞬間だった。
◆ ◆ ◆
ハドロン砲。
4銃身4mm回転式機関砲。
ユグドラシルドライブ。
GER流体制御システム。
輻射波動機構。
レーザー砲。
ブレイズルミナス。
水中魚雷。
フロートユニット。
そして、現段階では使用されていないが、光学迷彩マント。
4銃身4mm回転式機関砲。
ユグドラシルドライブ。
GER流体制御システム。
輻射波動機構。
レーザー砲。
ブレイズルミナス。
水中魚雷。
フロートユニット。
そして、現段階では使用されていないが、光学迷彩マント。
「これが真の煉獄・改……さしもの世紀王と魔人皇のコンビも苦戦しているようですな」
しかし、使う者が主催者側となれば、武田観柳となれば話は別である。
相手は反逆者だ。
逆らうものに慈悲を与える必要はない。
逆らうものに慈悲を与える必要はない。
「ふふ……殺しても良いというのなら、本当に殺してしまいますよ?」
誰に言うでもなく、無人の空間で観柳は小さく言葉を漏らす。
V.V.達はどれだけ『殺し合い』に拘っているのかは分からない。
なるべく参加者同士で殺しあってほしいという考えがあるのかもしれない。
だが、観柳にはどうでもいい話だ。
この煉獄を使っていいと言われたから、煉獄を最大限に扱うだけだ。
V.V.達はどれだけ『殺し合い』に拘っているのかは分からない。
なるべく参加者同士で殺しあってほしいという考えがあるのかもしれない。
だが、観柳にはどうでもいい話だ。
この煉獄を使っていいと言われたから、煉獄を最大限に扱うだけだ。
「『空中』大型甲鉄艦、煉獄・改」
観柳は薄い頬を緩ませる。
この煉獄こそが金の力だ。
金が作り上げた、金を生み出す絶対の兵器なのだ。
この煉獄こそが金の力だ。
金が作り上げた、金を生み出す絶対の兵器なのだ。
故に、この空中戦艦・煉獄に――――
「――――弱点は、ない」
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ストレイト・クーガー | ||
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武田観柳 |